ゲスト
(ka0000)
彷徨う巨人
マスター:蒼かなた

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/26 07:30
- 完成日
- 2014/10/06 23:21
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●辺境に生きる一族
要塞都市ノアーラ・クンタウにほど近いとある辺境の地。
そこには大きなテントが張られその中からは鉄を打つ音や、魔導機械の作動音が聞こえる。
その中で一際大きなテントの一つに大柄の男が一人入っていく。
「族長、食料の仕入れのほうは完了しましたぜ」
テントの中には無駄なものはほぼなく、ただ少し古びているが高価そうな机が一つあり、その向こうに一人の女性が座っていた。
黒いロングヘアーに同じく黒、いや見方によっては濃い青色に見える瞳をした女性だ。
背は低く小柄ながらもしっかりついた筋肉が見て取れ、見る人が見ればその女性がドワーフであることが分かるだろう。
しかし族長と言われるには随分と若い姿をしていた。年齢は行っても20代の後半だろうか。そのか細い指でくるりとペンを回すと入ってきた男へと視線を向ける。
「そうか、ご苦労だったね。となると偵察に行かせた奴等が帰ってきたら出発するとしようか」
「了解、他の奴等にも伝えてきます」
そう言いニィっと笑みを浮かべた男は一礼だけしてテントを出て行った。
それを手をひらひらと振って見送った女は手にしていたペンを置き、立ち上がるとぐっと伸びをしながら自分もテントの外へと出る。
周囲のテントからは歓談の声と共に鉄を打つ音が響いて聞こえてくる。
彼女達はヴァルカン族――炎を崇め、鍛冶を極めんとする一族だ。
この辺境の地で暮らしながらも物を作ることを生業とし、上質な鉱石や珍しい素材を求めて各地を転々とする流浪の者達。
作られた武具やアクセサリなどは部族間での物々交換や、今回のように要塞都市ノアーラ・クンタウで取り引きを行って資金を得ているのである。
「うん、今日もいい鍛冶日和だね」
そして彼女がそのヴァルカン族の族長であるラナ・ブリギットである。
歳若いながらも一族をまとめこの辺境の地を渡り歩く強き女性だ。
っと、そこで少し慌てた様子で先ほどテントに来ていた男が走り寄ってきた。
男の何やら焦った様子にまた面倒事かなと察し、ラナは頬を掻きながら男が目の前にやってくるのを待つ。
「それで、今度は何が起きたんだい。まさかまた炉に無茶させすぎて爆発寸前ってことはないよね?」
「その件はこの前こっぴどく叱りつけたから大丈夫だって。そんなことより偵察の奴等が戻ってきたんだ」
男の言葉にラナはおやっと首を傾げる。
「確かあいつ等の戻りは明後日の予定だろう?」
「ああ、けど戻ってきてるんだ。つまり問題発生ってことだよ」
男の言葉を聞いてラナは人目も憚らず大きな溜息を吐いた。
部族にとっての問題事を解消するのが族長の務め。ラナは気を取り直して男の報告に耳を向ける。
その情報によると、なんでもこれから向かおうとしていた鉱山への道中でジャイアントを発見したらしい。
偵察してきた者の言葉によると簡素ながら武具を纏って狩りの真っ最中のようだったという話だ。
「そいつは困ったね。私ら人にはあんまり襲ってこないけど家畜達は思いっきり狙われるからな」
ラナはうぅんと唸る。ヴァルカン族にはそもそも戦士と呼べる者がいない。覚醒者も少なからずおり戦えない訳ではないが本職ではないのだ。
だから危険は可能な限り回避するのが常なのだが、今回はそのジャイアントがいる道を通らないと目当ての鉱山まで行けないのだ。
「しょうがない。今回はハンター達に頼るとしようか」
●ハンターオフィス
とあるハンターオフィスの一室にてハンター達が集められていた。
今回、辺境で出没したジャイアントの撃退依頼を受けたメンバーである。
「それでは皆さん。こちらをご覧ください」
オフィスの職員がそう言って部屋の大型スクリーンに映像を表示させる。
そこにはどこか粗野な印象を受ける大柄な男の絵が映っている。しかも服装は動物の毛皮を纏っただけの格好だ。
「ご存知の通り今回の相手はジャイアントになります」
オフィスの職員がそう言うとハンターの目の前に小さなウィンドウが開きジャイアントの簡単な説明が表示される。
身長は約3メートルほど。その大きさ以外の姿形はほぼ人間と似通っている。
その体格に見合うだけの怪力を持っており、また多少の知恵もあり武具などで武装することもある。
ただ頭の回転は鋭くなく、それに見合った原始的な生き方をしている亜人だ。
「今回確認されている個体は3体。どれも簡素ながら武装しており注意が必要です」
表示される映像が差し代わり、棍棒を振るい細めの木を殴り倒すジャイアントが映し出される。
「必ずしも全てを倒す必要はありません。しかしただ追い払うだけではすぐに戻ってくるでしょうし討伐することが最良の選択肢になると思います」
その巨躯と怪力を持つジャイアントを相手にするには新米や駆け出しのハンターでは少々厳しい相手だろう。
それを倒すとなれば骨が折れることは間違いない。
「説明は以上です。皆さんの健闘を祈ります」
要塞都市ノアーラ・クンタウにほど近いとある辺境の地。
そこには大きなテントが張られその中からは鉄を打つ音や、魔導機械の作動音が聞こえる。
その中で一際大きなテントの一つに大柄の男が一人入っていく。
「族長、食料の仕入れのほうは完了しましたぜ」
テントの中には無駄なものはほぼなく、ただ少し古びているが高価そうな机が一つあり、その向こうに一人の女性が座っていた。
黒いロングヘアーに同じく黒、いや見方によっては濃い青色に見える瞳をした女性だ。
背は低く小柄ながらもしっかりついた筋肉が見て取れ、見る人が見ればその女性がドワーフであることが分かるだろう。
しかし族長と言われるには随分と若い姿をしていた。年齢は行っても20代の後半だろうか。そのか細い指でくるりとペンを回すと入ってきた男へと視線を向ける。
「そうか、ご苦労だったね。となると偵察に行かせた奴等が帰ってきたら出発するとしようか」
「了解、他の奴等にも伝えてきます」
そう言いニィっと笑みを浮かべた男は一礼だけしてテントを出て行った。
それを手をひらひらと振って見送った女は手にしていたペンを置き、立ち上がるとぐっと伸びをしながら自分もテントの外へと出る。
周囲のテントからは歓談の声と共に鉄を打つ音が響いて聞こえてくる。
彼女達はヴァルカン族――炎を崇め、鍛冶を極めんとする一族だ。
この辺境の地で暮らしながらも物を作ることを生業とし、上質な鉱石や珍しい素材を求めて各地を転々とする流浪の者達。
作られた武具やアクセサリなどは部族間での物々交換や、今回のように要塞都市ノアーラ・クンタウで取り引きを行って資金を得ているのである。
「うん、今日もいい鍛冶日和だね」
そして彼女がそのヴァルカン族の族長であるラナ・ブリギットである。
歳若いながらも一族をまとめこの辺境の地を渡り歩く強き女性だ。
っと、そこで少し慌てた様子で先ほどテントに来ていた男が走り寄ってきた。
男の何やら焦った様子にまた面倒事かなと察し、ラナは頬を掻きながら男が目の前にやってくるのを待つ。
「それで、今度は何が起きたんだい。まさかまた炉に無茶させすぎて爆発寸前ってことはないよね?」
「その件はこの前こっぴどく叱りつけたから大丈夫だって。そんなことより偵察の奴等が戻ってきたんだ」
男の言葉にラナはおやっと首を傾げる。
「確かあいつ等の戻りは明後日の予定だろう?」
「ああ、けど戻ってきてるんだ。つまり問題発生ってことだよ」
男の言葉を聞いてラナは人目も憚らず大きな溜息を吐いた。
部族にとっての問題事を解消するのが族長の務め。ラナは気を取り直して男の報告に耳を向ける。
その情報によると、なんでもこれから向かおうとしていた鉱山への道中でジャイアントを発見したらしい。
偵察してきた者の言葉によると簡素ながら武具を纏って狩りの真っ最中のようだったという話だ。
「そいつは困ったね。私ら人にはあんまり襲ってこないけど家畜達は思いっきり狙われるからな」
ラナはうぅんと唸る。ヴァルカン族にはそもそも戦士と呼べる者がいない。覚醒者も少なからずおり戦えない訳ではないが本職ではないのだ。
だから危険は可能な限り回避するのが常なのだが、今回はそのジャイアントがいる道を通らないと目当ての鉱山まで行けないのだ。
「しょうがない。今回はハンター達に頼るとしようか」
●ハンターオフィス
とあるハンターオフィスの一室にてハンター達が集められていた。
今回、辺境で出没したジャイアントの撃退依頼を受けたメンバーである。
「それでは皆さん。こちらをご覧ください」
オフィスの職員がそう言って部屋の大型スクリーンに映像を表示させる。
そこにはどこか粗野な印象を受ける大柄な男の絵が映っている。しかも服装は動物の毛皮を纏っただけの格好だ。
「ご存知の通り今回の相手はジャイアントになります」
オフィスの職員がそう言うとハンターの目の前に小さなウィンドウが開きジャイアントの簡単な説明が表示される。
身長は約3メートルほど。その大きさ以外の姿形はほぼ人間と似通っている。
その体格に見合うだけの怪力を持っており、また多少の知恵もあり武具などで武装することもある。
ただ頭の回転は鋭くなく、それに見合った原始的な生き方をしている亜人だ。
「今回確認されている個体は3体。どれも簡素ながら武装しており注意が必要です」
表示される映像が差し代わり、棍棒を振るい細めの木を殴り倒すジャイアントが映し出される。
「必ずしも全てを倒す必要はありません。しかしただ追い払うだけではすぐに戻ってくるでしょうし討伐することが最良の選択肢になると思います」
その巨躯と怪力を持つジャイアントを相手にするには新米や駆け出しのハンターでは少々厳しい相手だろう。
それを倒すとなれば骨が折れることは間違いない。
「説明は以上です。皆さんの健闘を祈ります」
リプレイ本文
●巨人の徘徊する荒野へ
要塞都市ノアーラ・クンタウの転送門を使い、そこから城壁外へ暫く歩いたところにあるヴァルカン族のキャンプ地へとハンター達は集まった。
そこでハンター達を迎えたのは黒く長い髪を風に揺らすドワーフ族の女性、このヴァルカン族の族長であるラナ・ブリギットだった。
「やあ、お前達。よく来てくれたね」
にこやかな笑みを浮かべてラナはハンター達を歓迎する。
「いえ、これもハンターの仕事です」
元連合宙軍に所属していたセレスタ・レネンティア(ka0874)は凛とした態度でそう応える。
「なに、そっちが仕事だとしても私達が助かるのに変わりはないからね。感謝してるよ」
かんらかんらと笑いながらラナは着いて来なとハンター達を一つのテントに誘う。
カンテラの灯で照らされた室内でラナはノアーラ・クンタウ近くの辺境の地図を広げハンター達に巨人の目撃情報があった場所を伝える。
「道を塞ぐ巨人か……人には危害を加えないようだが、家畜に手を出すならそれを狩るのは猟師の領分だな」
元の世界リアルブルーでも猟師を生業としていた三船・啓司(ka0732)は己の本分となる仕事に意気を高め帽子の鐔を掴み被りなおす。
「巨人ですか……相手にとって不足はありませんね」
ハンターオフィスの職員にも言われたがジャイアントは危険な生き物だ。
だが戦神を信仰するシスターであるアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)はそれを知ってなおジャイアントとの戦いに喜びを見出していた。
「しかし巨人か。確かジャパンのマンガにああいったのと人類が戦ってるのあったな」
今は遠き故郷の異国のサブカルチャーを思い出しティーア・ズィルバーン(ka0122)は思いに耽る。
「ティーアさん、何か考え事ですの?」
ティーアが突然思いに耽っているのを見て隣にいたシェリア・プラティーン(ka1801)が不思議そうに訪ねる。
「ああ、いや。何でもない」
「ならいいのですわ。けど、亜人とはいえ命を奪うのは正直気持ちの良いものではありませんわ」
その心優しさからか、シェリアはジャイアントを狩るということに若干の抵抗を持っていた。
彼らもまた生きるために動物を襲い食しているだけ、それを悪と断じることはできないのだろう。
しかしジャイアントは見境なく人の生活にも害を及ぼす。そして言葉を交わせない以上相容れることはない。
「悩むのはいいがそれは今回の依頼が終わってからにしな。戦闘中に迷ったら死ぬぞ」
「むっ、それくらい分かってますの。大丈夫、私はちゃんと戦えますわ」
ティーアの言葉にシェリアはツンケンとした態度で答える。ティーアはそれならいいと肩を竦めてみせた。
「あたしは楽しみだがなぁ。巨人相手ってのも骨がありそうだしな」
大斧を担いだレーヴェ・クレティウス(ka1525)はニィっと口元を上げて笑みを浮かべる。
今回がハンターとして初めての仕事だがやる気は十分。巨人をぶっ飛ばす気満々である。
「あたしもあたしもー♪ ジャイアンちゃんってマジタフだって聞くジャン? やっべー、嬲るのマジ楽しみなんですケド♪」
高めのテンションではしゃぐリオン(ka1757)はサドッ気の強い台詞を口にしながらこれからの戦闘を思い描きゾクゾクと身体を震わせている。
「さて、説明は以上だ。それじゃあお前達、任せたよ」
「はい、精一杯頑張ります。皆さん、行きましょう」
ラナの言葉にリュカ・レインクロイツ(ka2322)は一つ頷く。
そしてハンター達は巨人の待つ荒野へと足を向けた。
ハンター達は一同揃い荒野に程近い雑木林へと向かう。そこで罠を張り優位に戦おうという算段だ。
しかし、荒野の中でも起伏の激しい丘を進む中で運の悪いことにジャイアントと鉢合わせをしてしまった。
事前に偵察しておけば避けられたかもしれないが今更後悔しても意味はない。ハンター達はそれぞれの役割をこなす為に散開する。
「ハーイ、注目~☆ 君達の相手はあたしだぞ♪」
囮役を買って出たリオンは小型拳銃をジャイアントに向けて発砲する。
その弾丸は命中はしなかったもののその音に反応してジャイアントはリオンに注目する。
「ここはお任せ下さいませ。皆さんは林で罠の準備をお願いしますの」
「了解。無茶はするなよ」
シェリアの言葉にティーアが応え、2人を残してハンター達は雑木林へと走る。
幸いなことにリオンとシェリアの前に立ちはだかるジャイアントは1匹。他のジャイアントはどうやら別の場所にいるようだ。
だがここで戦闘していればそのうちその音を聞きつけてやってくるだろう。
仲間達がどれだけ早く罠を仕掛け準備を整えてくれるか。それによって彼女達への負担が大きく変わる。
「さてさて、シェリアちゃん。用意はいいかなー? 私はバッチリ☆」
「はい、わたくしも問題ありませんわ」
2人が意気込んだところでジャイアントは手にしていた大きな木の棍棒を振り上げる。
それを見てシェリアはすぐさま馬を走らせ、リオンも後ろに大きく跳んだ。
「ウオオォォ!」
唸り声と共に振り下ろされた棍棒が地面に叩きつけられると、大地をへこませ荒野に土埃が舞う。
「わぁお! 流石ジャイアントちゃん。パワフルジャン♪」
でも当たらなかったら意味はないよねと軽い身のこなしでリオンは近くの丘の上に降り立つ。
ジャイアントは今の攻撃で舞った土埃の所為で2人を見失ったのか辺りをきょろきょろと見渡している。
「さあさあ、鬼さんこちら♪ 捕まってはあげないけどね☆」
リオンはそのジャイアントの後頭部に向かって小型拳銃を向け、再度引き金を引いた。
●雑木林の罠地帯
雑木林へと到着したハンター達は用意していたロープを取り出し木々の間に張り巡らせていく。
しかし相手はあのジャイアント。これまでそんな大きな獲物を相手にした罠など誰も作ったことはないだろう。
「これくらいでいいか? ……いや、もう少し高い位置がよさそうだ」
啓司はこれまでの狩猟での勘を活かし、先ほど見た巨人の大きさを考えてロープを張る高さを調整する。
一本だけではそのまま引き千切られる可能性も考え、ロープを二重にして頑丈にしておく。
「……」
その隣でティーアが無言で作業をしている。だが時折雑木林の外へと視線を向けて少し眉を顰める。
「ご友人が心配ですか?」
そんなティーアにヴァルカン族から借りてきたスコップを手にしたアデリシアが声をかける。
心配かと聞かれれば否とは言えない。だがそれを口にするのも少し憚られティーアは無言のまま困った表情をする。
「何だ、心配なら早いとこ罠を完成させることじゃん。そうすりゃあっちの負担も減るからなぁ」
木にロープを縛りつけながらレーヴェもその話に乗る。
レーヴェの言うとおり、罠をいち早く完成させることが囮役をしている2人にとっては一番の支援だろう。
「そうだな。急ごう」
ティーアもいつの間にか遅くなっていた手を早め、ロープの手前に浅めながらも落とし穴を掘っていく。
「もうすぐ完成だな。いよいよ巨人狩りの時間だ……」
ロープをきつく縛り終えた啓司は肩にかけていた猟銃に目をやる。
ジャイアントの力がどの程度なのかは未知数だが、勝てない相手ではない。
どちらが狩り、どちらが狩られるか。その勝負の時が近づいてきていた。
一方その頃、ジャイアントに対して囮役となったリオンとシェリアは今2体のジャイアントに追い回されているところだった。
その巨体からジャイアントの歩幅は大きい。そして何度も言うがジャイアントは別段鈍重ではない。その為に2人は何度も追いつかれ執拗にその手にしている武器の攻撃に晒されていた。
「ひゅー! 今のは危なかったね!」
振り下ろされた棍棒を横っ飛びをして避けて地面を転がったリオンが胸元を押さえて息を吐く。
その向こうではもう一体のジャイアントが馬に乗るシェリアを追いかけ掴み取ろうと何度も手を伸ばしている。
「着かず離れず、難しい距離ですわ。もう少し頑張ってくださいね」
シェリアは後ろを振り向きながらジャイアントとの距離を測りながら馬の手綱を捌く。
左右にと揺れながらジャイアントを撹乱し上手く時間を稼いでいる。
「けどこのままじゃジリ貧だよねー。わたしの銃は当たってもあんまり効いてないし」
「罠が完成するまでの辛抱ですわ。そろそろ連絡があると思いますから頑張りましょう」
と、丁度その時である。2人の持つ魔導短伝話に通信が入った。
『お二人ともご無事ですか? こちらの準備は整いました』
魔導短伝話の先からアデリシアの声が聞こえてくる。どうやら待ちに待った時間がやってきたようだ。
だがしかし、それと同時にリオンとシェリアは何かが大きな足音と共に近づいてくる音を耳にする。
「まずいですわね。このタイミングでもう一体が来てしまったようですわ」
2対2で逃げに徹してなんとか拮抗を保っていた状態だ。ここで敵が増えるとそれも難しい。
と、その時である。ジャイアント達の雄叫びや足音に紛れ遠くから馬の嘶きが聞こえてきた。
そちらに視線をやると一頭の馬がこちらに向かって駆けて来ている。
「悪い、待たせたな」
「ティーアさん……本当に遅すぎですわ。でも、助かりましたわ」
馬に乗り駆けてきたティーアが今しがた現れたジャイアントの気を引きに掛かる。
これで実質3対3、なんとか均衡は保たれた。
「オッケー☆ それじゃああたしがこの子を連れてっちゃうね♪」
そこで軽い身のこなしで丘の上から飛び降りたリオンがティーアとシェリアの2人に手を振る。
リオンは振り下ろされる棍棒を跳んで避け、地面に手をつくとバネのように跳ねてジャイアントを雑木林へと誘導していく。
「俺達はもう暫くここで足止めだ。平気か?」
「勿論ですわ。ティーアさんこそ怪我をなされないようにお気をつけて」
騎乗しているティーアとシェリアは目の前に佇むジャイアントを見上げた。
「はぁーい☆ 皆お待たせ♪」
リオンはジャイアントを引き連れて雑木林に飛び込んだ。
木々がひしめく雑木林の中でジャイアントは木の枝を掻き分けながらリオンを捕まえようと追いすがる。
が、次の瞬間。ジャイアントの姿勢が一気に前のめりになる。
獲物を追うのに夢中になっていた所為で足元に張られたロープに全く気づかなかったのだ。
「いかに力が強かろうと知恵が回らぬではな……巨人が退治されるのはつまり、そういうことだ」
何時の間にそこにいたのか――いや、最初からいたのだがジャイアントの視界には映っていなかっただけだ。
アデリシアは今跪くような体勢になったジャイアントに急接近すると棍棒を持つその手に思い切りフレイルを叩きつける。
「ウオオォォ!?」
ジャイアントが咆える。そして手に走る痛みに棍棒を取り落とした。
「よっし、後は攻撃あるのみだな」
レーヴェはジャイアントの背後に回りこむと身の丈以上ある大斧で、丸太のように太いその足に振り下ろす。
大斧の刃は分厚い皮膚に威力を削がれたがしっかりその足元に傷を作る。
痛みに暴れるジャイアント、その巻き添えにならぬようにアデリシアとレーヴェは一旦距離を取った。
「この一撃は、外さない……!」
そこに一発の銃声が鳴り響く。その音とほぼ同時にジャイアントの左目から鮮血が迸った。
ジャイアントは大きくのけぞり、そのまま尻餅をついた。
そこに一つの影が走り、ジャイアントの肩を蹴りつけてそのまま仰向けに倒れこませる。
「おいおォい、まだあたしは何もしてないのに……早いおネンネは厳禁だゾゥ☆」
その影――リオンは倒れこんでいるジャイアントの胸の上に立ちにこりと笑みを浮かべる。
そして握りこんだ拳を振り上げ、ジャイアントの顔の目掛けて振り下ろした。
●巨人は地に伏せて
荒野の戦いが始まって1時間は経っただろうか。ハンター達の戦いはまだ続いていた。
「最後の一匹だ。仕留めるぞ」
地面に掘られた罠にかかり体勢を崩したジャイアントの足を啓司の放った弾丸が貫く。
だが巨人は倒れない。手にしている槍を振るい近づくハンター達を弾き飛ばそうとする。
「防ぎますわ。皆さん、攻撃をお願いしますわ!」
そこで一歩前にでたシェリアが盾を構える。ガンと強烈な衝撃が走り地面を数十センチ削りながら後退させられたが耐え切った。
「はぁーい☆ 君もボコボコに嬲り尽してあげちゃうよ♪」
リオンは地を蹴って飛び上がると、血に濡れたその拳でジャイアントの頬を思い切り殴り飛ばす。
「タフさにも限界があるだろう。いい加減に倒れたまえ」
「銀獣の狩り、とくと味わえ!」
さらにアデリシアのフレイルとティーアの斧がジャイアントの足首に叩き込まれる。
完全に体勢を崩したジャイアントは激しい音と共に地面に倒れこんだ。
「これで、どうだぁ!」
そして倒れているジャイアントの喉元にレーヴェの大斧が叩き込まれる。
ズブリと喉に食い込んだ刃はジャイアントの首を半ばまでを叩き切り、その傷口からごぼりと赤い血が流れ出てくる。
ジャイアントはその一撃でビクンと身体を一度痙攣させると、そのまま息絶えた。
ジャイアントを倒し終えたハンター達はヴァルカン族のキャンプ地に戻ってきた。
「やあ、どうやら無事に退治してくれたみたいだね」
そのハンター達を族長のラナが労う。ハンター達も疲労の色は隠せないが依頼を無事に終えた達成感からか皆一様に顔色は良かった。
「兎も角お疲れ様だ。もう暫くここで休んでいきな」
ラナの言葉にハンター達はその好意に甘え暫しの休息を取る事となった。
そんな中でレーヴェだけが立ち上がりラナの元へと歩み寄る。
「なあ、あたしヴァルカン族の鍛冶が見たいんだけど」
「鍛冶に興味があるのかい? ならちょっとだけ見せてあげるよ」
ラナに連れられレーヴェはヴァルカン族の鍛冶場となっているテントへと向かう。
そこは人間やドワーフ達が鉄を打ち、鎧に細工を施し、とにかく熱気に溢れる作業場だった。
「へえ、皆中々の腕じゃん」
「そりゃそうさ。一族総出で物作りしかできない奴の集まりだからね」
それこそがヴァルカン族の誇り。作って作って世に作品を残すことこそが彼らの喜び。
その為にこの荒野で東西南北どこにでも赴き材料を集め、またハンマーを振るう。
「私達はこれしか出来ないからね。だからまた困った時はお前達に頼らせて貰うよ」
「まあ、あたしは気が向いたらな」
レーヴェの言葉にラナはくすくすと笑う。
ヴァルカン族、炎を祀り鍛冶を誇る一族。彼らはまた今日もどこかで旅をしながら鉄を打つ音を響かせる。
要塞都市ノアーラ・クンタウの転送門を使い、そこから城壁外へ暫く歩いたところにあるヴァルカン族のキャンプ地へとハンター達は集まった。
そこでハンター達を迎えたのは黒く長い髪を風に揺らすドワーフ族の女性、このヴァルカン族の族長であるラナ・ブリギットだった。
「やあ、お前達。よく来てくれたね」
にこやかな笑みを浮かべてラナはハンター達を歓迎する。
「いえ、これもハンターの仕事です」
元連合宙軍に所属していたセレスタ・レネンティア(ka0874)は凛とした態度でそう応える。
「なに、そっちが仕事だとしても私達が助かるのに変わりはないからね。感謝してるよ」
かんらかんらと笑いながらラナは着いて来なとハンター達を一つのテントに誘う。
カンテラの灯で照らされた室内でラナはノアーラ・クンタウ近くの辺境の地図を広げハンター達に巨人の目撃情報があった場所を伝える。
「道を塞ぐ巨人か……人には危害を加えないようだが、家畜に手を出すならそれを狩るのは猟師の領分だな」
元の世界リアルブルーでも猟師を生業としていた三船・啓司(ka0732)は己の本分となる仕事に意気を高め帽子の鐔を掴み被りなおす。
「巨人ですか……相手にとって不足はありませんね」
ハンターオフィスの職員にも言われたがジャイアントは危険な生き物だ。
だが戦神を信仰するシスターであるアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)はそれを知ってなおジャイアントとの戦いに喜びを見出していた。
「しかし巨人か。確かジャパンのマンガにああいったのと人類が戦ってるのあったな」
今は遠き故郷の異国のサブカルチャーを思い出しティーア・ズィルバーン(ka0122)は思いに耽る。
「ティーアさん、何か考え事ですの?」
ティーアが突然思いに耽っているのを見て隣にいたシェリア・プラティーン(ka1801)が不思議そうに訪ねる。
「ああ、いや。何でもない」
「ならいいのですわ。けど、亜人とはいえ命を奪うのは正直気持ちの良いものではありませんわ」
その心優しさからか、シェリアはジャイアントを狩るということに若干の抵抗を持っていた。
彼らもまた生きるために動物を襲い食しているだけ、それを悪と断じることはできないのだろう。
しかしジャイアントは見境なく人の生活にも害を及ぼす。そして言葉を交わせない以上相容れることはない。
「悩むのはいいがそれは今回の依頼が終わってからにしな。戦闘中に迷ったら死ぬぞ」
「むっ、それくらい分かってますの。大丈夫、私はちゃんと戦えますわ」
ティーアの言葉にシェリアはツンケンとした態度で答える。ティーアはそれならいいと肩を竦めてみせた。
「あたしは楽しみだがなぁ。巨人相手ってのも骨がありそうだしな」
大斧を担いだレーヴェ・クレティウス(ka1525)はニィっと口元を上げて笑みを浮かべる。
今回がハンターとして初めての仕事だがやる気は十分。巨人をぶっ飛ばす気満々である。
「あたしもあたしもー♪ ジャイアンちゃんってマジタフだって聞くジャン? やっべー、嬲るのマジ楽しみなんですケド♪」
高めのテンションではしゃぐリオン(ka1757)はサドッ気の強い台詞を口にしながらこれからの戦闘を思い描きゾクゾクと身体を震わせている。
「さて、説明は以上だ。それじゃあお前達、任せたよ」
「はい、精一杯頑張ります。皆さん、行きましょう」
ラナの言葉にリュカ・レインクロイツ(ka2322)は一つ頷く。
そしてハンター達は巨人の待つ荒野へと足を向けた。
ハンター達は一同揃い荒野に程近い雑木林へと向かう。そこで罠を張り優位に戦おうという算段だ。
しかし、荒野の中でも起伏の激しい丘を進む中で運の悪いことにジャイアントと鉢合わせをしてしまった。
事前に偵察しておけば避けられたかもしれないが今更後悔しても意味はない。ハンター達はそれぞれの役割をこなす為に散開する。
「ハーイ、注目~☆ 君達の相手はあたしだぞ♪」
囮役を買って出たリオンは小型拳銃をジャイアントに向けて発砲する。
その弾丸は命中はしなかったもののその音に反応してジャイアントはリオンに注目する。
「ここはお任せ下さいませ。皆さんは林で罠の準備をお願いしますの」
「了解。無茶はするなよ」
シェリアの言葉にティーアが応え、2人を残してハンター達は雑木林へと走る。
幸いなことにリオンとシェリアの前に立ちはだかるジャイアントは1匹。他のジャイアントはどうやら別の場所にいるようだ。
だがここで戦闘していればそのうちその音を聞きつけてやってくるだろう。
仲間達がどれだけ早く罠を仕掛け準備を整えてくれるか。それによって彼女達への負担が大きく変わる。
「さてさて、シェリアちゃん。用意はいいかなー? 私はバッチリ☆」
「はい、わたくしも問題ありませんわ」
2人が意気込んだところでジャイアントは手にしていた大きな木の棍棒を振り上げる。
それを見てシェリアはすぐさま馬を走らせ、リオンも後ろに大きく跳んだ。
「ウオオォォ!」
唸り声と共に振り下ろされた棍棒が地面に叩きつけられると、大地をへこませ荒野に土埃が舞う。
「わぁお! 流石ジャイアントちゃん。パワフルジャン♪」
でも当たらなかったら意味はないよねと軽い身のこなしでリオンは近くの丘の上に降り立つ。
ジャイアントは今の攻撃で舞った土埃の所為で2人を見失ったのか辺りをきょろきょろと見渡している。
「さあさあ、鬼さんこちら♪ 捕まってはあげないけどね☆」
リオンはそのジャイアントの後頭部に向かって小型拳銃を向け、再度引き金を引いた。
●雑木林の罠地帯
雑木林へと到着したハンター達は用意していたロープを取り出し木々の間に張り巡らせていく。
しかし相手はあのジャイアント。これまでそんな大きな獲物を相手にした罠など誰も作ったことはないだろう。
「これくらいでいいか? ……いや、もう少し高い位置がよさそうだ」
啓司はこれまでの狩猟での勘を活かし、先ほど見た巨人の大きさを考えてロープを張る高さを調整する。
一本だけではそのまま引き千切られる可能性も考え、ロープを二重にして頑丈にしておく。
「……」
その隣でティーアが無言で作業をしている。だが時折雑木林の外へと視線を向けて少し眉を顰める。
「ご友人が心配ですか?」
そんなティーアにヴァルカン族から借りてきたスコップを手にしたアデリシアが声をかける。
心配かと聞かれれば否とは言えない。だがそれを口にするのも少し憚られティーアは無言のまま困った表情をする。
「何だ、心配なら早いとこ罠を完成させることじゃん。そうすりゃあっちの負担も減るからなぁ」
木にロープを縛りつけながらレーヴェもその話に乗る。
レーヴェの言うとおり、罠をいち早く完成させることが囮役をしている2人にとっては一番の支援だろう。
「そうだな。急ごう」
ティーアもいつの間にか遅くなっていた手を早め、ロープの手前に浅めながらも落とし穴を掘っていく。
「もうすぐ完成だな。いよいよ巨人狩りの時間だ……」
ロープをきつく縛り終えた啓司は肩にかけていた猟銃に目をやる。
ジャイアントの力がどの程度なのかは未知数だが、勝てない相手ではない。
どちらが狩り、どちらが狩られるか。その勝負の時が近づいてきていた。
一方その頃、ジャイアントに対して囮役となったリオンとシェリアは今2体のジャイアントに追い回されているところだった。
その巨体からジャイアントの歩幅は大きい。そして何度も言うがジャイアントは別段鈍重ではない。その為に2人は何度も追いつかれ執拗にその手にしている武器の攻撃に晒されていた。
「ひゅー! 今のは危なかったね!」
振り下ろされた棍棒を横っ飛びをして避けて地面を転がったリオンが胸元を押さえて息を吐く。
その向こうではもう一体のジャイアントが馬に乗るシェリアを追いかけ掴み取ろうと何度も手を伸ばしている。
「着かず離れず、難しい距離ですわ。もう少し頑張ってくださいね」
シェリアは後ろを振り向きながらジャイアントとの距離を測りながら馬の手綱を捌く。
左右にと揺れながらジャイアントを撹乱し上手く時間を稼いでいる。
「けどこのままじゃジリ貧だよねー。わたしの銃は当たってもあんまり効いてないし」
「罠が完成するまでの辛抱ですわ。そろそろ連絡があると思いますから頑張りましょう」
と、丁度その時である。2人の持つ魔導短伝話に通信が入った。
『お二人ともご無事ですか? こちらの準備は整いました』
魔導短伝話の先からアデリシアの声が聞こえてくる。どうやら待ちに待った時間がやってきたようだ。
だがしかし、それと同時にリオンとシェリアは何かが大きな足音と共に近づいてくる音を耳にする。
「まずいですわね。このタイミングでもう一体が来てしまったようですわ」
2対2で逃げに徹してなんとか拮抗を保っていた状態だ。ここで敵が増えるとそれも難しい。
と、その時である。ジャイアント達の雄叫びや足音に紛れ遠くから馬の嘶きが聞こえてきた。
そちらに視線をやると一頭の馬がこちらに向かって駆けて来ている。
「悪い、待たせたな」
「ティーアさん……本当に遅すぎですわ。でも、助かりましたわ」
馬に乗り駆けてきたティーアが今しがた現れたジャイアントの気を引きに掛かる。
これで実質3対3、なんとか均衡は保たれた。
「オッケー☆ それじゃああたしがこの子を連れてっちゃうね♪」
そこで軽い身のこなしで丘の上から飛び降りたリオンがティーアとシェリアの2人に手を振る。
リオンは振り下ろされる棍棒を跳んで避け、地面に手をつくとバネのように跳ねてジャイアントを雑木林へと誘導していく。
「俺達はもう暫くここで足止めだ。平気か?」
「勿論ですわ。ティーアさんこそ怪我をなされないようにお気をつけて」
騎乗しているティーアとシェリアは目の前に佇むジャイアントを見上げた。
「はぁーい☆ 皆お待たせ♪」
リオンはジャイアントを引き連れて雑木林に飛び込んだ。
木々がひしめく雑木林の中でジャイアントは木の枝を掻き分けながらリオンを捕まえようと追いすがる。
が、次の瞬間。ジャイアントの姿勢が一気に前のめりになる。
獲物を追うのに夢中になっていた所為で足元に張られたロープに全く気づかなかったのだ。
「いかに力が強かろうと知恵が回らぬではな……巨人が退治されるのはつまり、そういうことだ」
何時の間にそこにいたのか――いや、最初からいたのだがジャイアントの視界には映っていなかっただけだ。
アデリシアは今跪くような体勢になったジャイアントに急接近すると棍棒を持つその手に思い切りフレイルを叩きつける。
「ウオオォォ!?」
ジャイアントが咆える。そして手に走る痛みに棍棒を取り落とした。
「よっし、後は攻撃あるのみだな」
レーヴェはジャイアントの背後に回りこむと身の丈以上ある大斧で、丸太のように太いその足に振り下ろす。
大斧の刃は分厚い皮膚に威力を削がれたがしっかりその足元に傷を作る。
痛みに暴れるジャイアント、その巻き添えにならぬようにアデリシアとレーヴェは一旦距離を取った。
「この一撃は、外さない……!」
そこに一発の銃声が鳴り響く。その音とほぼ同時にジャイアントの左目から鮮血が迸った。
ジャイアントは大きくのけぞり、そのまま尻餅をついた。
そこに一つの影が走り、ジャイアントの肩を蹴りつけてそのまま仰向けに倒れこませる。
「おいおォい、まだあたしは何もしてないのに……早いおネンネは厳禁だゾゥ☆」
その影――リオンは倒れこんでいるジャイアントの胸の上に立ちにこりと笑みを浮かべる。
そして握りこんだ拳を振り上げ、ジャイアントの顔の目掛けて振り下ろした。
●巨人は地に伏せて
荒野の戦いが始まって1時間は経っただろうか。ハンター達の戦いはまだ続いていた。
「最後の一匹だ。仕留めるぞ」
地面に掘られた罠にかかり体勢を崩したジャイアントの足を啓司の放った弾丸が貫く。
だが巨人は倒れない。手にしている槍を振るい近づくハンター達を弾き飛ばそうとする。
「防ぎますわ。皆さん、攻撃をお願いしますわ!」
そこで一歩前にでたシェリアが盾を構える。ガンと強烈な衝撃が走り地面を数十センチ削りながら後退させられたが耐え切った。
「はぁーい☆ 君もボコボコに嬲り尽してあげちゃうよ♪」
リオンは地を蹴って飛び上がると、血に濡れたその拳でジャイアントの頬を思い切り殴り飛ばす。
「タフさにも限界があるだろう。いい加減に倒れたまえ」
「銀獣の狩り、とくと味わえ!」
さらにアデリシアのフレイルとティーアの斧がジャイアントの足首に叩き込まれる。
完全に体勢を崩したジャイアントは激しい音と共に地面に倒れこんだ。
「これで、どうだぁ!」
そして倒れているジャイアントの喉元にレーヴェの大斧が叩き込まれる。
ズブリと喉に食い込んだ刃はジャイアントの首を半ばまでを叩き切り、その傷口からごぼりと赤い血が流れ出てくる。
ジャイアントはその一撃でビクンと身体を一度痙攣させると、そのまま息絶えた。
ジャイアントを倒し終えたハンター達はヴァルカン族のキャンプ地に戻ってきた。
「やあ、どうやら無事に退治してくれたみたいだね」
そのハンター達を族長のラナが労う。ハンター達も疲労の色は隠せないが依頼を無事に終えた達成感からか皆一様に顔色は良かった。
「兎も角お疲れ様だ。もう暫くここで休んでいきな」
ラナの言葉にハンター達はその好意に甘え暫しの休息を取る事となった。
そんな中でレーヴェだけが立ち上がりラナの元へと歩み寄る。
「なあ、あたしヴァルカン族の鍛冶が見たいんだけど」
「鍛冶に興味があるのかい? ならちょっとだけ見せてあげるよ」
ラナに連れられレーヴェはヴァルカン族の鍛冶場となっているテントへと向かう。
そこは人間やドワーフ達が鉄を打ち、鎧に細工を施し、とにかく熱気に溢れる作業場だった。
「へえ、皆中々の腕じゃん」
「そりゃそうさ。一族総出で物作りしかできない奴の集まりだからね」
それこそがヴァルカン族の誇り。作って作って世に作品を残すことこそが彼らの喜び。
その為にこの荒野で東西南北どこにでも赴き材料を集め、またハンマーを振るう。
「私達はこれしか出来ないからね。だからまた困った時はお前達に頼らせて貰うよ」
「まあ、あたしは気が向いたらな」
レーヴェの言葉にラナはくすくすと笑う。
ヴァルカン族、炎を祀り鍛冶を誇る一族。彼らはまた今日もどこかで旅をしながら鉄を打つ音を響かせる。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/21 19:44:38 |
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作戦相談卓 シェリア・プラティーン(ka1801) 人間(クリムゾンウェスト)|19才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/09/26 08:28:33 |