ゲスト
(ka0000)
【神森】理由なき行軍
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/11/19 15:00
- 完成日
- 2016/12/02 19:32
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「……今度はなんだい?」
案件処理の毎日に追われる第5師団団長、ロルフ・シュトライトの元に、またも報告が届いた。
「エルフと村人が小競り合いを起こしたってよ。今は仲裁されたみたいだけど」
「またか……一体どうしたっていうんだ?」
「さぁ。俺だって教えてほしいぜ……」
疲れた表情を浮かべるオットー・アルトリンゲン兵長。彼の報告を聞いて、ロルフは今日何度目かの深いため息をつく。
急激に増えるエルフハイム近辺での騒動。第3師団ほどではないだろうが、第5師団にも多くの案件が持ち込まれていた。
「それと、エルフハイム近くの村から連絡があったんだけど……なんか兵を動かすようなことあったっけ、団長」
「……いや?」
「じゃあおかしいな」
そういってオットーはその内容を見せる。
そこには、武装した帝国兵10数名が村に入り休息を取ったということが書かれていた。用向きを聞いたら極秘だと返されたため、それ以上追及しなかったが、目的地はエルフハイムであることは聞けたらしい。
「ふむ……別の師団が動いてたらもう報告が入っていてもおかしくないね」
「じゃあニセモノってことか。よっしゃ! ここは俺に任せてくれ団長!」
「却下」
急にやる気を増大させたオットーだったが、即NGが出た。
「だから言ってるだろ? この状況で兵を動かすとまずいんだよ。それにもしかしたら、まだこちらに報告が来ていないだけで、正規兵かもしれない。あるいは極秘活動している部隊とか」
「だからさ。俺が一人で行って様子を……」
「一人で、ということに関して、今の状況で僕が許可を出すと思うのかい?」
結局、オットーは不満そうだったがこの件はハンターに託されることになった。
●
「なぜ我々がこんなことをしなければならないのですか?」
エルフハイムへ向かう途上にある帝国兵。その一人が先頭を歩くリーダー格の男に疑問を投げかける。
「わからない。だが、これも命令だ」
「だからって……我々『錬金術教導団』がこんな……『ヴルツァライヒ』の手伝いみたいなことを……」
「命令だからだ。それ以上のことは考えるな」
そう、この帝国兵たちは本物の帝国兵ではない。
正体は錬金術教導団に属する機導師である。そしてその目的は帝国兵としてエルフハイムに侵入すること。それによりエルフハイムからの帝国に対する信頼を損なわせる。さらに帝国軍側には実際に出兵を行っていないことからこれが虚偽であることがわかる。これにより帝国からエルフハイムにも不信感が募る。こうして、エルフハイムと帝国の間に生じた亀裂をより深く、より大きくしようというのだ。
だが、これは本来錬金術教導団がやるような行動ではない。
どちらかといえばもう一つ名前の挙がった組織。帝国で最も有名な反帝国組織ヴルツァライヒがやるようなことだろう。実際、このヴルツァライヒの支援を目的としたものであると、教導団員には話が伝えられていた。
別段錬金術教導団とヴルツァライヒにつながりがあるというわけではない。だからこそ、教導団員はこういった行動を取る理由が分からなかった。ヴルツァライヒに恩を売るためなのか、あるいは何らかの取引を行った結果なのか……もしかしたらこれは教導団にも利益のあることなのか。それすらもわからない。
「……あれは! 誰か追ってきている!」
最後尾を歩いていた機導師が双眼鏡でその姿を捉える。それは、接近してくるハンターたちの一団だった。
「とりあえずやり過ごすぞ。見た目は帝国兵にしか見えないはずだ」
ともあれ、ここまで来てしまったからには任務を放棄することも出来ない。教導団員は疑問を思考の外に投げ出して目の前の事態に対応することとした。
「……今度はなんだい?」
案件処理の毎日に追われる第5師団団長、ロルフ・シュトライトの元に、またも報告が届いた。
「エルフと村人が小競り合いを起こしたってよ。今は仲裁されたみたいだけど」
「またか……一体どうしたっていうんだ?」
「さぁ。俺だって教えてほしいぜ……」
疲れた表情を浮かべるオットー・アルトリンゲン兵長。彼の報告を聞いて、ロルフは今日何度目かの深いため息をつく。
急激に増えるエルフハイム近辺での騒動。第3師団ほどではないだろうが、第5師団にも多くの案件が持ち込まれていた。
「それと、エルフハイム近くの村から連絡があったんだけど……なんか兵を動かすようなことあったっけ、団長」
「……いや?」
「じゃあおかしいな」
そういってオットーはその内容を見せる。
そこには、武装した帝国兵10数名が村に入り休息を取ったということが書かれていた。用向きを聞いたら極秘だと返されたため、それ以上追及しなかったが、目的地はエルフハイムであることは聞けたらしい。
「ふむ……別の師団が動いてたらもう報告が入っていてもおかしくないね」
「じゃあニセモノってことか。よっしゃ! ここは俺に任せてくれ団長!」
「却下」
急にやる気を増大させたオットーだったが、即NGが出た。
「だから言ってるだろ? この状況で兵を動かすとまずいんだよ。それにもしかしたら、まだこちらに報告が来ていないだけで、正規兵かもしれない。あるいは極秘活動している部隊とか」
「だからさ。俺が一人で行って様子を……」
「一人で、ということに関して、今の状況で僕が許可を出すと思うのかい?」
結局、オットーは不満そうだったがこの件はハンターに託されることになった。
●
「なぜ我々がこんなことをしなければならないのですか?」
エルフハイムへ向かう途上にある帝国兵。その一人が先頭を歩くリーダー格の男に疑問を投げかける。
「わからない。だが、これも命令だ」
「だからって……我々『錬金術教導団』がこんな……『ヴルツァライヒ』の手伝いみたいなことを……」
「命令だからだ。それ以上のことは考えるな」
そう、この帝国兵たちは本物の帝国兵ではない。
正体は錬金術教導団に属する機導師である。そしてその目的は帝国兵としてエルフハイムに侵入すること。それによりエルフハイムからの帝国に対する信頼を損なわせる。さらに帝国軍側には実際に出兵を行っていないことからこれが虚偽であることがわかる。これにより帝国からエルフハイムにも不信感が募る。こうして、エルフハイムと帝国の間に生じた亀裂をより深く、より大きくしようというのだ。
だが、これは本来錬金術教導団がやるような行動ではない。
どちらかといえばもう一つ名前の挙がった組織。帝国で最も有名な反帝国組織ヴルツァライヒがやるようなことだろう。実際、このヴルツァライヒの支援を目的としたものであると、教導団員には話が伝えられていた。
別段錬金術教導団とヴルツァライヒにつながりがあるというわけではない。だからこそ、教導団員はこういった行動を取る理由が分からなかった。ヴルツァライヒに恩を売るためなのか、あるいは何らかの取引を行った結果なのか……もしかしたらこれは教導団にも利益のあることなのか。それすらもわからない。
「……あれは! 誰か追ってきている!」
最後尾を歩いていた機導師が双眼鏡でその姿を捉える。それは、接近してくるハンターたちの一団だった。
「とりあえずやり過ごすぞ。見た目は帝国兵にしか見えないはずだ」
ともあれ、ここまで来てしまったからには任務を放棄することも出来ない。教導団員は疑問を思考の外に投げ出して目の前の事態に対応することとした。
リプレイ本文
●
「さて、どうにも裏で戦いを望んでいる者たちがいるようだが……」
「この前も国境近くでの救出依頼があった。そして、今回は国境近くにニセ帝国兵とは……何が起きている?」
「まだ偽とは決まってないが……確かにおかしい」
ロニ・カルディス(ka0551)と仙堂 紫苑(ka5953)は第5師団からの依頼内容を思い起こす。エルフハイムと帝国は今までも順風満帆ではなかったが、それでもなんとかやってこれた。それが、この時期になって一気に悪化していく。そこには何らかの意思が介入しているのは明らかなように思われた。
「……何とかして、その尻尾を掴みたいところだ」
「確かに、ヴォイド側の浸透工作と考えることができる……のか? まぁどっちにしても俺のやるべきことに変わりはないが」
「そういうこと……これ以上関係をこじらせるのも、ねぇ」
バイクに跨るキャリコ・ビューイ(ka5044)に答えながら、ルーン・ルン(ka6243)はクスリと小さく笑みを浮かべた。
「謎の帝国兵……正体を探って企みをつぶさないとね!」
「そのためにも、周辺の地形確認などは念入りにしましょうね、お時ちゃん」
時音 ざくろ(ka1250)と八劒 颯(ka1804)はそう言って地図を広げる。間違ってこちらがエルフハイムの領域に入ってしまっては元も子もない。
「まずは調査……しかるのちに対処、だな」
「あぁ……敵であれば一人として逃がすわけにはいかない」
バイクに乗るザレム・アズール(ka0878)。それに答えるのはロンと名付けられたゴースロンに乗るヴァイス(ka0364)だ。
こうして8人は出発、先行する帝国兵らしき集団を追い始めた。
●
「それじゃ、気を付けてね颯!」
「了解! はやてにおまかせですの!」
そう言って颯は一団から離れていく。ルートを離れて先回りするように動き、実際に戦闘になったときその逃げ道をふさぐつもりだ。
ルーンとキャリコは逆にやや後退。全体の後ろにつく。
「突発的に戦闘になる可能性もあるものねぇ。確認などは皆さまにお任せするわ」
「俺もルーンと後方からついていかせてもらおう」
一網打尽になるのを避けたい判断だろう。その判断は正しいように思われる。
こうして分散したハンターたちは、すぐに目標としていた一団……帝国兵らしき集団に追いつくことができた。
「そこの帝国兵、少し訪ねたい!」
ヴァイスは前を歩く帝国兵を呼び止める。
(まずは、帝国兵であるかの確認。これだ)
ロニが考える基本方針はほぼ全体の方針といえる。まずは目前の標的、それが帝国兵であるかどうかをしっかり確認することだ。依頼主であるロルフも言っていた通り、もしかしたら彼のあずかり知らぬところで他の師団が動いている可能性が……万が一を超えて億が一の可能性かもしれないが、ある。であれば問答無用で攻撃するわけにもいかないのだ。
「お勤めご苦労様です」
ざくろはバイクから降りると、笑いながらそう帝国兵に声をかける。
「この付近に不審者の集団が出没するという報告を受け、それを調査している」
「最近いろんな事件が多いですからね。念のため、こうして確認して回ってるんですよ」
ヴァイスとざくろが自分たちのことを説明する。そうすることで、あくまで目の前にいる彼らが帝国兵であると勘違いした様子を崩さない。ざくろとヴァイスの行動で、とりあえず相手の警戒は和らいだように思われる。だが……
(接触時の態度があまりにもおかしい)
ロニはこちらが声をかけた時の警戒具合。それにこちらの用向きを伝えるとほっとしたような態度を見逃さなかった。これは正規の帝国兵ではない可能性が高い。
「この辺りにはどういった任務で?」
「わ、我々は極秘任務の最中だ。任務の内容も申し訳ないが明かすことはできない」
「へー。実は俺たちも、第5師団の依頼で警邏中なんだ。俺たちのこと聞いてない?」
紫苑の質問への回答をごまかす集団。だが、そこでザレムが機転を利かせる。
「あ、ひょっとして第3師団のクヴァール師団長の命令かな? そう言ったものがあるって聞いてるけど」
(クヴァール?)
話を聞いていたざくろを始め全員が疑問符を浮かべる。が、すぐに全員が気づく。これが狂言だと。
「そ、そうなんだ。気づかれたなら仕方ない。クヴァール師団長から……」
その瞬間、空気が変わった。
「……師団長の名前を間違える兵がいるかよ」
ザレムがそう言って杖を構える。
「攻撃しろ!」「来るぞ!」
敵のリーダー格と同時に、ロニの声が響く。帝国兵。いや、今は敵だ。敵が攻撃を仕掛けてくる。全員が同時に放ったのは、デルタレイ。機導師とみえる。
「アルケミだ。麻痺スキルに注意しろ」
「やはり敵、か」
盾によりデルタレイを防いだヴァイス。ザレムの声を聞きながらもロンを逃がし、同時に剣を抜く。そこにはすでに蒼い炎が宿っていた。
●
「始まった。やっぱり敵だったな」
「そうみたいね。敵ならば……消してしまいましょう♪」
そう言って動き出すキャリコとルーン。その間にも戦闘は激化していく。
「やっぱり偽物か……」
デルタレイを防御したざくろ。運悪く一発いいのをもらってしまったが、この程度ではやられない。
「お返しだよ! 拡散ヒートレイ!」
バイクにまたがりながら、ざくろは拡散ヒートレイを使用。赤白く輝く無数の熱線が放射され、広範囲をまとめて攻撃する。
敵はすぐにばらけ、攻撃範囲から抜け出す。
「逃がさない! 何度だって打ち込むよ!」
そのまま走りだすざくろ。逃げ道をふさぐような動きを見せながら、さらに拡散ヒートレイを使用していく。
一方、ばらけたうちの一人に接近しながらヴァイスは剣を振りあげる。それを敵も確認し、デルタレイを打ち込んで牽制。
「遠距離攻撃が主体か。ならば、近接戦は不向きとみる」
ヴァイスはすかさず盾で防御し、ダメージを軽減。そのまま剣の間合いへと踏み込むと、旋風による攻撃。腰から腕、そこから武器へ。無駄なく伝わるエネルギーは流麗な一撃となって機導師を切り裂く。
「散ってしまったから一網打尽とはいかないか……まぁいい。確実に一人ひとり戦闘不能にしていこう」
「なるべくなら、殺さずに捕縛したいところだが……」
一歩引いた位置にいたロニは前進。手近な敵をフォースクラッシュで攻撃する。
(できれば情報源として連行したいが……)
そうすることが後の為になるのは明らかだ。だが、だからと言って手加減してこちらがやられたら元も子もない。それに、逃がしてしまうわけにもいかない。
ロニはさらにフォースクラッシュを使用。ヴァイス同様確実に倒していく。
「あくまで可能な限りに留めよう。こっちがやられるわけにはいかない」
ザレムはそう言いながら後退。攻性防壁を警戒しての動きだ。そのまま距離を取りつつデルタレイを使用して攻撃してく。
「こっちだ。来い!」
バイクから降りた紫苑は、敵の目を自身に向けるように大きく声を張り上げる。
(引き付けている間に味方が各個撃破してくれればそれでよし。だけど、拘束のことも考えないとな)
紫苑は鎖の杭を使用して手近な敵の拘束を狙っていく。
「人間相手でも、やることは変わらない」
キャリコはバイクを止めた状態でシャープシューティングを使用。命中精度を高める。当初はバイクによる高速かく乱を考えていたが、シャープシューティングを使うのであれば動くことはできないし、近接寄りの味方が多いことから、射撃支援を優先した。
(エルフと全面戦争……その引き金を引かせるわけにはいかないな)
さらに武器にマテリアルを籠める遠射と、射撃時にマテリアルを込め弾速を上げる高加速射撃を使用。スキルによる強化を最大限行った射撃で攻撃を開始する。
「1人当たり……2人ってところ?」
自身と、その乗馬に加護符を使用したルーンは、正面切っての戦闘を避け、側面に迂回。
「正面衝突だなんて趣味じゃないね」
乗馬からチャクラムを投じ援護を行う。狙いは敵の目や手足の腱。これで動きを抑えようというつもりだろう。動く馬上からではやや狙いづらそうだが、狙っていると相手に意識させることだけでも意味がある。
ハンターたちの戦闘力は非常に高かった。数の上では勝っていた敵集団だったが、抗戦を断念し逃げようとするものもあらわれた。
「逃げられないのですよ!」
だが、そうはいかない。こういう時の為に先回りしていた颯がタイミングよく向かってきた。
(今更人間VS人間の実践にひるんだりはしませんよ)
敵の進行方向に出ることで逃げ道をふさぐ颯。初めての依頼を思い出しながら、颯はそのまま突っ込んでいく。
「びりびり電撃どりる!」
バイクの速度とドリルの威力を合わせ、一撃必殺の攻撃を食らわせる。
一撃必殺の言葉通り、機導師の胴を一撃で貫いたどりる。狙って殺すつもりは無いが、あまり時間をかけるとエルフハイム側に気取られ、状況がやっかいになる。
「運がなかったとあきらめてくださいな」
敵の範囲攻撃を警戒し、高速移動を止めない颯は、そう呟きながらも次の目標へ向かう。
「こうなったら勝負は決まっただろう。降参したら命は保証する」
「……分かった。全員降伏しろ!」
ザレムのトンファーで叩き伏せられたリーダー格の男。威圧され、戦意が挫けたのだろうか、そう声を張り上げた。
●決着
「終わったな……必然たりえない偶然は無い。お前たちがこうして捕まっているのも必然ということだ」
そう呟いたキャリコはバイクから降り、拘束の手伝いをする。死者は無し。重体レベルのダメージを受けていたものもいたが、そこは覚醒者。息はあるようだ。
「手加減したつもりはありませんけど……」
そこまで弱い相手でもなかったということか、と颯は思う。それを圧倒できるあたり、この依頼の参加者たちが優れていたということだろうが。
「……来たな」
不意にロニがつぶやく。同時に、ハンターたちは身構える。後方から馬車が接近してきていた。
「大丈夫だ。手配しておいた馬車だ。連れていくのにこのままでは都合が悪かったからな」
「なんだ……でも、歩いて帰らせなくてよくなったのは助かったね」
警戒を解いてホッと息を吐くざくろ。戦闘に気づいて今にも誰か来るのではないかと注意していたのだが、これならすぐに撤退できそうだ。
「さて、戻ったら徹底的に尋問させてもらう……」
「いや、その必要はない。全部話す」
ザレムが威圧も兼ねてそういったが、敵の機導師は予想外の一言を発した。
「私たちの所属は錬金術教導団……いわゆる反帝国組織の一つだ」
「あら。随分あっさり話しちゃうのね」
怪我人にヒールポーションを渡しながらルーンが言った。
「……今回の行動は上に命令されたものだが、納得がいくものではなかった。もう、組織を信用することができない。そういうことだ」
尤も、随分前からそうだったがな、と……半ば自嘲的に話すリーダー格の男。
「……どの組織にも何かしらあるということか……」
「考えるのは後だ。急いでここを離れるとしよう」
やれやれと首を振る紫苑を促すようにヴァイスが言った。
こうして、馬車に教導団員を乗せると、ハンターたちはその場を後にする。
エルフたちの動きに呼応したこういった動きは各地で発生しており、戦争は避けられない状況になっていく。
だが、とりあえずこの場における問題は解決した。依頼は大成功と言っていいだろう。
「さて、どうにも裏で戦いを望んでいる者たちがいるようだが……」
「この前も国境近くでの救出依頼があった。そして、今回は国境近くにニセ帝国兵とは……何が起きている?」
「まだ偽とは決まってないが……確かにおかしい」
ロニ・カルディス(ka0551)と仙堂 紫苑(ka5953)は第5師団からの依頼内容を思い起こす。エルフハイムと帝国は今までも順風満帆ではなかったが、それでもなんとかやってこれた。それが、この時期になって一気に悪化していく。そこには何らかの意思が介入しているのは明らかなように思われた。
「……何とかして、その尻尾を掴みたいところだ」
「確かに、ヴォイド側の浸透工作と考えることができる……のか? まぁどっちにしても俺のやるべきことに変わりはないが」
「そういうこと……これ以上関係をこじらせるのも、ねぇ」
バイクに跨るキャリコ・ビューイ(ka5044)に答えながら、ルーン・ルン(ka6243)はクスリと小さく笑みを浮かべた。
「謎の帝国兵……正体を探って企みをつぶさないとね!」
「そのためにも、周辺の地形確認などは念入りにしましょうね、お時ちゃん」
時音 ざくろ(ka1250)と八劒 颯(ka1804)はそう言って地図を広げる。間違ってこちらがエルフハイムの領域に入ってしまっては元も子もない。
「まずは調査……しかるのちに対処、だな」
「あぁ……敵であれば一人として逃がすわけにはいかない」
バイクに乗るザレム・アズール(ka0878)。それに答えるのはロンと名付けられたゴースロンに乗るヴァイス(ka0364)だ。
こうして8人は出発、先行する帝国兵らしき集団を追い始めた。
●
「それじゃ、気を付けてね颯!」
「了解! はやてにおまかせですの!」
そう言って颯は一団から離れていく。ルートを離れて先回りするように動き、実際に戦闘になったときその逃げ道をふさぐつもりだ。
ルーンとキャリコは逆にやや後退。全体の後ろにつく。
「突発的に戦闘になる可能性もあるものねぇ。確認などは皆さまにお任せするわ」
「俺もルーンと後方からついていかせてもらおう」
一網打尽になるのを避けたい判断だろう。その判断は正しいように思われる。
こうして分散したハンターたちは、すぐに目標としていた一団……帝国兵らしき集団に追いつくことができた。
「そこの帝国兵、少し訪ねたい!」
ヴァイスは前を歩く帝国兵を呼び止める。
(まずは、帝国兵であるかの確認。これだ)
ロニが考える基本方針はほぼ全体の方針といえる。まずは目前の標的、それが帝国兵であるかどうかをしっかり確認することだ。依頼主であるロルフも言っていた通り、もしかしたら彼のあずかり知らぬところで他の師団が動いている可能性が……万が一を超えて億が一の可能性かもしれないが、ある。であれば問答無用で攻撃するわけにもいかないのだ。
「お勤めご苦労様です」
ざくろはバイクから降りると、笑いながらそう帝国兵に声をかける。
「この付近に不審者の集団が出没するという報告を受け、それを調査している」
「最近いろんな事件が多いですからね。念のため、こうして確認して回ってるんですよ」
ヴァイスとざくろが自分たちのことを説明する。そうすることで、あくまで目の前にいる彼らが帝国兵であると勘違いした様子を崩さない。ざくろとヴァイスの行動で、とりあえず相手の警戒は和らいだように思われる。だが……
(接触時の態度があまりにもおかしい)
ロニはこちらが声をかけた時の警戒具合。それにこちらの用向きを伝えるとほっとしたような態度を見逃さなかった。これは正規の帝国兵ではない可能性が高い。
「この辺りにはどういった任務で?」
「わ、我々は極秘任務の最中だ。任務の内容も申し訳ないが明かすことはできない」
「へー。実は俺たちも、第5師団の依頼で警邏中なんだ。俺たちのこと聞いてない?」
紫苑の質問への回答をごまかす集団。だが、そこでザレムが機転を利かせる。
「あ、ひょっとして第3師団のクヴァール師団長の命令かな? そう言ったものがあるって聞いてるけど」
(クヴァール?)
話を聞いていたざくろを始め全員が疑問符を浮かべる。が、すぐに全員が気づく。これが狂言だと。
「そ、そうなんだ。気づかれたなら仕方ない。クヴァール師団長から……」
その瞬間、空気が変わった。
「……師団長の名前を間違える兵がいるかよ」
ザレムがそう言って杖を構える。
「攻撃しろ!」「来るぞ!」
敵のリーダー格と同時に、ロニの声が響く。帝国兵。いや、今は敵だ。敵が攻撃を仕掛けてくる。全員が同時に放ったのは、デルタレイ。機導師とみえる。
「アルケミだ。麻痺スキルに注意しろ」
「やはり敵、か」
盾によりデルタレイを防いだヴァイス。ザレムの声を聞きながらもロンを逃がし、同時に剣を抜く。そこにはすでに蒼い炎が宿っていた。
●
「始まった。やっぱり敵だったな」
「そうみたいね。敵ならば……消してしまいましょう♪」
そう言って動き出すキャリコとルーン。その間にも戦闘は激化していく。
「やっぱり偽物か……」
デルタレイを防御したざくろ。運悪く一発いいのをもらってしまったが、この程度ではやられない。
「お返しだよ! 拡散ヒートレイ!」
バイクにまたがりながら、ざくろは拡散ヒートレイを使用。赤白く輝く無数の熱線が放射され、広範囲をまとめて攻撃する。
敵はすぐにばらけ、攻撃範囲から抜け出す。
「逃がさない! 何度だって打ち込むよ!」
そのまま走りだすざくろ。逃げ道をふさぐような動きを見せながら、さらに拡散ヒートレイを使用していく。
一方、ばらけたうちの一人に接近しながらヴァイスは剣を振りあげる。それを敵も確認し、デルタレイを打ち込んで牽制。
「遠距離攻撃が主体か。ならば、近接戦は不向きとみる」
ヴァイスはすかさず盾で防御し、ダメージを軽減。そのまま剣の間合いへと踏み込むと、旋風による攻撃。腰から腕、そこから武器へ。無駄なく伝わるエネルギーは流麗な一撃となって機導師を切り裂く。
「散ってしまったから一網打尽とはいかないか……まぁいい。確実に一人ひとり戦闘不能にしていこう」
「なるべくなら、殺さずに捕縛したいところだが……」
一歩引いた位置にいたロニは前進。手近な敵をフォースクラッシュで攻撃する。
(できれば情報源として連行したいが……)
そうすることが後の為になるのは明らかだ。だが、だからと言って手加減してこちらがやられたら元も子もない。それに、逃がしてしまうわけにもいかない。
ロニはさらにフォースクラッシュを使用。ヴァイス同様確実に倒していく。
「あくまで可能な限りに留めよう。こっちがやられるわけにはいかない」
ザレムはそう言いながら後退。攻性防壁を警戒しての動きだ。そのまま距離を取りつつデルタレイを使用して攻撃してく。
「こっちだ。来い!」
バイクから降りた紫苑は、敵の目を自身に向けるように大きく声を張り上げる。
(引き付けている間に味方が各個撃破してくれればそれでよし。だけど、拘束のことも考えないとな)
紫苑は鎖の杭を使用して手近な敵の拘束を狙っていく。
「人間相手でも、やることは変わらない」
キャリコはバイクを止めた状態でシャープシューティングを使用。命中精度を高める。当初はバイクによる高速かく乱を考えていたが、シャープシューティングを使うのであれば動くことはできないし、近接寄りの味方が多いことから、射撃支援を優先した。
(エルフと全面戦争……その引き金を引かせるわけにはいかないな)
さらに武器にマテリアルを籠める遠射と、射撃時にマテリアルを込め弾速を上げる高加速射撃を使用。スキルによる強化を最大限行った射撃で攻撃を開始する。
「1人当たり……2人ってところ?」
自身と、その乗馬に加護符を使用したルーンは、正面切っての戦闘を避け、側面に迂回。
「正面衝突だなんて趣味じゃないね」
乗馬からチャクラムを投じ援護を行う。狙いは敵の目や手足の腱。これで動きを抑えようというつもりだろう。動く馬上からではやや狙いづらそうだが、狙っていると相手に意識させることだけでも意味がある。
ハンターたちの戦闘力は非常に高かった。数の上では勝っていた敵集団だったが、抗戦を断念し逃げようとするものもあらわれた。
「逃げられないのですよ!」
だが、そうはいかない。こういう時の為に先回りしていた颯がタイミングよく向かってきた。
(今更人間VS人間の実践にひるんだりはしませんよ)
敵の進行方向に出ることで逃げ道をふさぐ颯。初めての依頼を思い出しながら、颯はそのまま突っ込んでいく。
「びりびり電撃どりる!」
バイクの速度とドリルの威力を合わせ、一撃必殺の攻撃を食らわせる。
一撃必殺の言葉通り、機導師の胴を一撃で貫いたどりる。狙って殺すつもりは無いが、あまり時間をかけるとエルフハイム側に気取られ、状況がやっかいになる。
「運がなかったとあきらめてくださいな」
敵の範囲攻撃を警戒し、高速移動を止めない颯は、そう呟きながらも次の目標へ向かう。
「こうなったら勝負は決まっただろう。降参したら命は保証する」
「……分かった。全員降伏しろ!」
ザレムのトンファーで叩き伏せられたリーダー格の男。威圧され、戦意が挫けたのだろうか、そう声を張り上げた。
●決着
「終わったな……必然たりえない偶然は無い。お前たちがこうして捕まっているのも必然ということだ」
そう呟いたキャリコはバイクから降り、拘束の手伝いをする。死者は無し。重体レベルのダメージを受けていたものもいたが、そこは覚醒者。息はあるようだ。
「手加減したつもりはありませんけど……」
そこまで弱い相手でもなかったということか、と颯は思う。それを圧倒できるあたり、この依頼の参加者たちが優れていたということだろうが。
「……来たな」
不意にロニがつぶやく。同時に、ハンターたちは身構える。後方から馬車が接近してきていた。
「大丈夫だ。手配しておいた馬車だ。連れていくのにこのままでは都合が悪かったからな」
「なんだ……でも、歩いて帰らせなくてよくなったのは助かったね」
警戒を解いてホッと息を吐くざくろ。戦闘に気づいて今にも誰か来るのではないかと注意していたのだが、これならすぐに撤退できそうだ。
「さて、戻ったら徹底的に尋問させてもらう……」
「いや、その必要はない。全部話す」
ザレムが威圧も兼ねてそういったが、敵の機導師は予想外の一言を発した。
「私たちの所属は錬金術教導団……いわゆる反帝国組織の一つだ」
「あら。随分あっさり話しちゃうのね」
怪我人にヒールポーションを渡しながらルーンが言った。
「……今回の行動は上に命令されたものだが、納得がいくものではなかった。もう、組織を信用することができない。そういうことだ」
尤も、随分前からそうだったがな、と……半ば自嘲的に話すリーダー格の男。
「……どの組織にも何かしらあるということか……」
「考えるのは後だ。急いでここを離れるとしよう」
やれやれと首を振る紫苑を促すようにヴァイスが言った。
こうして、馬車に教導団員を乗せると、ハンターたちはその場を後にする。
エルフたちの動きに呼応したこういった動きは各地で発生しており、戦争は避けられない状況になっていく。
だが、とりあえずこの場における問題は解決した。依頼は大成功と言っていいだろう。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 4人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 仙堂 紫苑(ka5953) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2016/11/19 11:16:19 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/16 20:28:55 |