ゲスト
(ka0000)
【初心】死神の荒野
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- LV1~LV20
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/11/22 19:00
- 完成日
- 2016/12/06 00:20
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
少年は大きくもなく、小さくもない村の農家に生まれ健やかに育った。
秋の果実の収穫も一段落付き村全体が人心地ついた時、親に呼ばれた。
曰く、「お前も一人前になった。そろそろええじゃろう」。
にこやかな両親の背後には、一人の娘が隠れて少年を見上げていた。
「お前も知っておろう。隣村の子じゃ」
「この子が大きくなたら、ね?」
娘、はにかんだ。
その後、少年は娘の両親とも会った。とてもにこやかだった。家柄もともに似合いである。
似合いであるが、しかし――。
少年は後日、馬を借りて遠駆けした。
あてはない。
ただ、走る馬と流れる風景。そして肌を撫でる風が心地よかった。
(悪い娘ではない)
少年、思う。
むしろ思い遣りのありそうな眼差しをする、良い娘である、と。
少年。
幼い頃から実家を一生懸命手伝った。肌は日に焼け、体は大きくなった。
それだけではない。
丸顔は成人らしくたくましくなり、面差しに責任が宿るようになった。どこか監視していた父の目が、最近そうではなくなった。何より、掛けられる言葉の数が減った。
もう、青年といってもいいのかもしれない。
あるいは――。
「大人、か……」
つぶやいて、改めて分かった。馬の速度を上げる。
気持ちが少し晴れたが、まだ足りない。
走る道に覚えがある。
「知ってる。親父と来た道だ!」
果たして、そこに価値はあるのか?
「俺は、もっと違うことがやれる!」
家に保護され育ち、この先待ち受けるそのままの人生を振り払うように……。
道を外した!
――道は先人の築いた信頼だ。そこ以外を通る時は細心の注意を払え。
加速し唸るように耳を騒がせる風の音に、いつか聞いた父の言葉が蘇る。
「分かってる。注意すればいいんだろっ!」
ちょっとした冒険。反抗。
構わず走らせる。
やがて、草が少なくなり地肌が覗く不毛の土地に差し掛かる。
――特に荒野は危険だ。馬の脚にも負担が掛かる。
「分かってる!」
風に負けじと叫ぶ。そして馬に拍車を掛ける。
もちろん注意は怠らない。馬のためにも、自分のためにも……。
「はっ!」
異変に気付いたのはこの時だった。
「何だ、あの影は……」
遠くに黒い何かの塊を発見した。
影、と言ったがそうではないのは自覚している。
黒い何かの布だろうか。それが地面で沸き立つようにもぞもぞとうごめいている。
ひょう、と風が吹いた。
黒い影の近くに、枯草の塊がころころと通って行った。
その時。
――がばっ。
「あっ!」
少年、目を見張った。
地に伏したようにうごめいていた黒い布が起き上がると、中からギラリとした巨大な鎌を出し、枯草の塊をすっぱりと両断したのである。ただの黒い布だと思ったものはフード付きの襤褸を纏ったような姿になっている。
ただ、枯草が形を崩して転がることがなくなると、元の布きれに戻った。ご丁寧に死神の鎌は布の下に隠している。
いや、違う。
地面に横たわることなく、わずかに宙に浮いて漂っている。
ここで気付いた。
そんな罠のような黒い影が、周囲に五つ――合計六つほどあったようで、それがすべて浮いて……。
「こっちに……来てる?」
少年、馬首を返し一目散に逃げた。
●
「村に戻って話すと、住民は早速偵察に行きました。少しずつ、村に近寄っているようですね」
「ほへぇ……」
ハンターオフィスで係員の説明に目を丸くする南那初華(kz0135)。
その、他人事みたいな様子に係員がムッとした。
「初華さん、自分がどうしてここに呼ばれているか分かってないでしょう?」
「ほへ? う、うん」
「いまハンターは大規模作戦で大動員をして手薄なんです。この死神型雑魔退治が村から寄せられたんですが、確実に人員を確保するため新人依頼にしたんです。そこで初華さんには、バックアップをお願いしたいんです」
「ま、また?」
ついうっかり聞いてしまった初華。係員、眉の根を寄せる。
「……初華さん、大規模作戦に参加してないですよね? でもって、商人ルートから魔導トラックを動員できますよね? 今回の敵の強さはまったく分からないから、撤退する場合に備えてほしいんですけど」
「強さが分からないって……」
「安心してください。強ければすでに大被害が出ているはずです。待ち構え型ですので討伐失敗してもひとまず大被害が出ることはありません。敵の情報から、ある程度敵については類推が可能です。新人が看破して対応できるかどうかも見ておいて、ダメなら初華さんが倒してもいいですし、撤退してもいいです」
ぴら、と敵の目視情報の書類を見せる係員。そこには、敵の持つ死神の鎌と柄のつなぎ目には大きなキャッツ・アイのような宝玉がはまっていた、フードの中に顔はなかったなどの記述があった。
「討伐した後は村でピザとワインを用意して待っているそうです。村の人や参加者同士で話をしたり楽しむといいでしょう」
一転、にこりと係員は付け加える。
とにかく退治してくれる人、求ム。
少年は大きくもなく、小さくもない村の農家に生まれ健やかに育った。
秋の果実の収穫も一段落付き村全体が人心地ついた時、親に呼ばれた。
曰く、「お前も一人前になった。そろそろええじゃろう」。
にこやかな両親の背後には、一人の娘が隠れて少年を見上げていた。
「お前も知っておろう。隣村の子じゃ」
「この子が大きくなたら、ね?」
娘、はにかんだ。
その後、少年は娘の両親とも会った。とてもにこやかだった。家柄もともに似合いである。
似合いであるが、しかし――。
少年は後日、馬を借りて遠駆けした。
あてはない。
ただ、走る馬と流れる風景。そして肌を撫でる風が心地よかった。
(悪い娘ではない)
少年、思う。
むしろ思い遣りのありそうな眼差しをする、良い娘である、と。
少年。
幼い頃から実家を一生懸命手伝った。肌は日に焼け、体は大きくなった。
それだけではない。
丸顔は成人らしくたくましくなり、面差しに責任が宿るようになった。どこか監視していた父の目が、最近そうではなくなった。何より、掛けられる言葉の数が減った。
もう、青年といってもいいのかもしれない。
あるいは――。
「大人、か……」
つぶやいて、改めて分かった。馬の速度を上げる。
気持ちが少し晴れたが、まだ足りない。
走る道に覚えがある。
「知ってる。親父と来た道だ!」
果たして、そこに価値はあるのか?
「俺は、もっと違うことがやれる!」
家に保護され育ち、この先待ち受けるそのままの人生を振り払うように……。
道を外した!
――道は先人の築いた信頼だ。そこ以外を通る時は細心の注意を払え。
加速し唸るように耳を騒がせる風の音に、いつか聞いた父の言葉が蘇る。
「分かってる。注意すればいいんだろっ!」
ちょっとした冒険。反抗。
構わず走らせる。
やがて、草が少なくなり地肌が覗く不毛の土地に差し掛かる。
――特に荒野は危険だ。馬の脚にも負担が掛かる。
「分かってる!」
風に負けじと叫ぶ。そして馬に拍車を掛ける。
もちろん注意は怠らない。馬のためにも、自分のためにも……。
「はっ!」
異変に気付いたのはこの時だった。
「何だ、あの影は……」
遠くに黒い何かの塊を発見した。
影、と言ったがそうではないのは自覚している。
黒い何かの布だろうか。それが地面で沸き立つようにもぞもぞとうごめいている。
ひょう、と風が吹いた。
黒い影の近くに、枯草の塊がころころと通って行った。
その時。
――がばっ。
「あっ!」
少年、目を見張った。
地に伏したようにうごめいていた黒い布が起き上がると、中からギラリとした巨大な鎌を出し、枯草の塊をすっぱりと両断したのである。ただの黒い布だと思ったものはフード付きの襤褸を纏ったような姿になっている。
ただ、枯草が形を崩して転がることがなくなると、元の布きれに戻った。ご丁寧に死神の鎌は布の下に隠している。
いや、違う。
地面に横たわることなく、わずかに宙に浮いて漂っている。
ここで気付いた。
そんな罠のような黒い影が、周囲に五つ――合計六つほどあったようで、それがすべて浮いて……。
「こっちに……来てる?」
少年、馬首を返し一目散に逃げた。
●
「村に戻って話すと、住民は早速偵察に行きました。少しずつ、村に近寄っているようですね」
「ほへぇ……」
ハンターオフィスで係員の説明に目を丸くする南那初華(kz0135)。
その、他人事みたいな様子に係員がムッとした。
「初華さん、自分がどうしてここに呼ばれているか分かってないでしょう?」
「ほへ? う、うん」
「いまハンターは大規模作戦で大動員をして手薄なんです。この死神型雑魔退治が村から寄せられたんですが、確実に人員を確保するため新人依頼にしたんです。そこで初華さんには、バックアップをお願いしたいんです」
「ま、また?」
ついうっかり聞いてしまった初華。係員、眉の根を寄せる。
「……初華さん、大規模作戦に参加してないですよね? でもって、商人ルートから魔導トラックを動員できますよね? 今回の敵の強さはまったく分からないから、撤退する場合に備えてほしいんですけど」
「強さが分からないって……」
「安心してください。強ければすでに大被害が出ているはずです。待ち構え型ですので討伐失敗してもひとまず大被害が出ることはありません。敵の情報から、ある程度敵については類推が可能です。新人が看破して対応できるかどうかも見ておいて、ダメなら初華さんが倒してもいいですし、撤退してもいいです」
ぴら、と敵の目視情報の書類を見せる係員。そこには、敵の持つ死神の鎌と柄のつなぎ目には大きなキャッツ・アイのような宝玉がはまっていた、フードの中に顔はなかったなどの記述があった。
「討伐した後は村でピザとワインを用意して待っているそうです。村の人や参加者同士で話をしたり楽しむといいでしょう」
一転、にこりと係員は付け加える。
とにかく退治してくれる人、求ム。
リプレイ本文
●
「さあて、そろそろ死神歪虚がいるかもね~」
魔導トラック「オート三輪」を運転する南那初華(kz0135)が荒野を見渡す。
「だったらしっかり探すとしますかねぇ」
助手席に乗る安藤 ツバメ(ka6579)が身を乗り出し、窓枠に腰掛けて遠くを見る。
「ち、ちょっと。箱乗りは危ないよぅ!」
ががん、と慌てる初華。もちろん元気いっぱいなツバメは「大丈夫だって」と、周りを見るのに夢中。というか、風が気持ちいい。
「……運転、しっかり」
「あ、分かってる分かってる」
二人に挟まれ真ん中に座るネヴェ・アヴァランシェ(ka3331)の呟き。初華、仕方なく運転に集中する。
そんな運転席の様子に、荷台の四人は。
「箱乗り……ですか?」
運転席のすぐ後ろに座っていた月雪 涼花(ka6591)が言葉少なに首をひねる。
「窓を開けて上半身を出して、窓枠に腰掛ける乗り方だよ」
崎代星(ka6594)がのんびりとこたえる。
「詳しいですね」
「お父さん、自動車整備士だったから……」
危ない乗り方なのですね、と理解する涼花が礼代わりに微笑する。星、ふわりとした笑みで応じた。
「目線は比較的高くなるのが利点、か」
「だったらこうすればまだ目線が高くなるよね、アーくん」
呟いたアーク・フォーサイス(ka6568)の横で、レム・フィバート(ka6552)が運転席の天板に腰掛けた。目線は高くなったが後ろ向きなので、ぐいっと半身で腰をひねっている。
「あれじゃないか?」
「あ、私が座ろうとしてるうちに!」
あっさりと異変を発見し遠くを指差すアーク。確かに地面で黒くうねる物が見える。レムは機嫌を損ねて天板から下り抗議したり。
「発見したみたい、かな」
二人を見ていいなぁ、な感じの星。自分は行方不明の父を探しているのだがうまくいってなかったりするが、これは余談。
「初華さん、左方向のようです」
「うん、分かった。左に左折~っ♪」
涼花が運転席に伝え、初華がハンドルを切る。
「左に左折……」
二重表現じゃないかな、みたいな感じのネヴェ。
「左に左折? いやっほぅ~」
かくん、とトラックは曲がる。ツバメ、がくんと落ちそうになったが箱乗りしたまま。むしろ楽しそう。変わらず元気だ。
●
「では初華さん、行ってきます」
振り返って一礼して、涼花が行く。前にはすでに仲間が遠くでうごめく黒い襤褸に向かい歩を進めている。隣では星が「これで殺れたら上々…かなぁ」と、投具「コウモリ」を弄っている。
「ネヴェさん、行かなくていいの?」
初華はこちらに残ったネヴェを心配した。
ネヴェ、こくりと頷く。
「少し、見てる」
ぼーっとしたような雰囲気のまま、それだけ。何か物思いにふけっているようでもある。
「一体一体倒していくんだし、後ろから見てて後から助けてくれるってものアリだよね!」
前ではぱしん、と手の平に拳を打ち付けたツバメがネヴェに理解を示していた。
そしてふと真顔になる。
人の接近を感じ取り前方で襤褸が人型に起き上がっていたのだ。
その数、六体。
いずれも大きなキャッツ・アイの装飾がある死神の鎌を構えている。
「フードの中には何も無い…? 本体は別ってことか」
ツバメの横でアークが警戒し、歩みを止めた。
「空洞、だね……あのやけに豪華な鎌に何か秘密があるのかなぁ?」
ツバメも頷き止まった。
「怪しいよ……ねっ!」
レム、気のない様子で白い帽子を目深に被ったが、次の瞬間大地を思いっきり蹴った!
敵に一直線に向かっていったぞ。
「涼花さん、私がこっちで……いい?」
「ええ。お任せします」
最後尾の星が左に開き、頷く涼花が右手に移動した。
「いきなり……まあ、長い付き合いだから驚きもしないが」
「いいね。どんどんちょっかい掛けていこう!」
アークとツバメが突っ込むレムに続いた。
で、レム。
「先手必勝! そこって弱点でしょ!」
星型模様の大型手甲で固めた拳で一体の敵の持つ鎌の――大きな宝玉を狙った!
ところが。
――くるん、ぶぉん……。
「え?」
レム、空振りしてたたらを踏む。鎌はまるで狙われると分かっていたかのように軽やかにかわしていた。
「逃げられた? うわっ!」
「違う。突撃をかわして攻撃するつもりだ」
振り向くレムを鎌がざっくりと斬る。
さらにもう一撃来るが、身体を入れてアークが叫ぶ。敵の、レムの後背を狙った一撃は抜刀した太刀「鬼神大王」で受け止めていた。
「あっ! やっぱり狙われてるの分かってるね」
横ではツバメがレムのように別の敵の宝玉を狙って「流星砕き」の異名を持つナックルで正拳突きをしたが、やはり回避されていた。もっとも、ツバメの体勢は崩れていない。次の死神の攻撃をひらりと回避した。
「……私の役割は相手の隙を作る事」
身を沈め、牽制するための攻撃を繰り出す。
黒髪が跳ね羽織ったシャツの端がひらめく。
「ハンター初陣だけど、まあなんとかなるよね!」
これでレムの右側からの敵包囲行動は阻害した。
一方、左側。
「間に合って……」
星がレムの突撃に合わせ、彼女より左にいる死神歪虚にコウモリを投擲。
もちろん、鎌の宝玉を狙ったが外れ。もっとも、敵は星から狙われていると知り包囲行動から離脱。星の方に向かってきた。その横の敵もだ。
そして気付いた。
「……敵の宝玉、武器の先端にあるからすっごく動くんだね」
つまり、狙いにくい。
投擲攻撃を諦め、ナイフ「リッパー」を構え直すのだった。
●
こちら、右に開いた涼花。
「止まってもらいますよ」
ツバメを囲もうとする敵に突っ込んだ。
手には金色のトンファー。
――ひゅん……ばすっ。
「やはり空洞」
黒い襤褸にあえてトンファー、旋棍「疾風迅雷」をぶち込んだが手ごたえはない。もう一体寄って来た死神からの攻撃は前腕に添えたトンファーでがっちりと防ぐ。打ち込んだ敵からの攻撃は身を引くことで回避。
これで、右大外でツバメ・涼花組が三体を担当。左後方遠距離の星が敵を誘い二体を引き離しに成功した。
中央では、アークとレムが一体と戦っている。
まず、ここに数的有利を作った。
ところがっ!
レムへの追撃を防いだアークだっだか、ここで想定外の事態に陥っていた。
――ばさーっ!
「何?!」
何と死神。鎌を止められた体勢から体をひねり、アークを巻き込むように襤褸をひらめかせたのだ。
結果、アークが中身が空の死神装束を身にまとうことになっていた。
「アーくん?」
これにはレムも言葉を失った。
そして目を見開く。
――ぶおんっ!
「ぐっ!」
死神、鎌の切っ先を自分に向けて突き刺したッ!
死神の切腹である。
もちろん、大ダメージを受けたのは死神本体ではなく、取り込まれたアークのみ!
「アーくんっ!」
レム、怒りの鉄拳。
狙う宝玉はアークが鎌を抜いた後で持っているため動かない。今度こそ真っすぐ行ってぶっ飛ばす!
――ぱきっ。
砕けるキャッツアイ。同時に死神は衣装も鎌もぱったりと地に落ちた。
「アーくん、大丈夫なのかっ!」
「ああ……俺は別に戦いが好きなわけじゃ、ない」
ゆら、と倒れそうになったところをこらえ太刀を構え直す。瞳が……瞳孔が獣を思わせる縦割れの形へ変化した。
「だが……剣心一如、『剣は人なり、剣は心なり』!」
集中すると、だっ、と大きく躍り上がり踏み込んだ。
「捕ったぁ!」
ちょうどそこには、ツバメがショットアンカー「スピニット」で敵の鎌を絡めとっていた。
「疾風剣!」
間髪入れずに横薙ぎで砕くアーク。
「まだだ!」
続いてツバメを狙っていたもう一体に電光石火!
●
時は若干遡る。
「死神に……取り込まれる?」
戦場をくまなく意識して時間をかける戦闘を心掛けていた涼花が、死神衣装に巻き込まれたアークを見て愕然としていた。しかも、自傷攻撃ともとれる、確実な攻撃を繰り出しているではないか。
予想外の展開に激しく狼狽した。
狼狽したが……。
(はっ)
故郷の屋敷での教えを思い出していた。次期当主として育てられた日々の事だ。
「ニュートラル」
眼の光彩が金になり、平常心を保つ。
決して、場の空気に飲まれないように。
アークはレムの攻撃を誘い敵を粉砕したのが分かった。
もう、心配はいらない。
一瞬狭まっていた視野は広くなった。
改めて対峙した敵との距離を取る。
すると、ツバメの方に行った。ツバメは敵を奥の手で絡めとっていた。
そこに、アークが来て粉砕。ついでに今ここにいた敵にも切り掛かるが……。
「わたくしの役目でしょう」
アークの電光石火を回避したところに、震撃の踏み込み。最短距離で到達したトンファーが敵宝玉を砕いた。
「ギリギリだったけど、おかげで敵の隙も誘えたねっ!」
ツバメの方はもう一体に斬られていたが、その分宝玉も狙いやすかった。ぴぴん、と跳ねた獣耳髪をしっかり立てて思いっきり伸身しての右ストレート。後ろに残った右踵が高く浮いてしまうほどの一撃がきれいに宝玉に入っていた。
この時、星。
「移動してきてくれた分時間稼ぎにはなったけど……」
もう、敵二体が迫っていた。
――ぶおん。
「んっ…」
初撃はかわすが、もう一体の鎌に捕えられた。
(え?)
やられた、と思ったが運良くスケイルメイルの一番頑丈な所に当たっていた。思ったより被害は少ない。
敵も感じたか、鎌を引くと一瞬動揺して止まった。
瞬間、眼光鋭くなる星。猛禽類の様な笑みを浮かべ、黒い靄を発する。
「……殺れる」
思い切りよく、手にしたナイフをノーモーションスロー。
――ぱきん……。
見事に命中させるが、最初の敵が振り返っているぞ!
「……作戦に従う」
「真っすぐ行ってぶっ飛ばす!」
おっと、運がいい。
初華と控えていたはずのネヴェが戦線到着。敵の攻撃を受けて止めると、星を追い越し最前線からレムが戻って来た。助走十分で宝玉に拳をぶち込むのだった。
●
「いやあ、さすがハンターさん。専門家に任せるもんだねぇ」
村に戻って完全討伐を報告すると、やんやの騒ぎに巻き込まれた。
「せっかく来てくれたんだ。ピザを焼いたから食ってってくれよ」
どうやら気のいい人ばかりのようだ。
「ほへ、いいの? んじゃ、お言葉に甘えちゃおっかな~」
というわけで、初華以下ハンターは好意を受けることに。
「ツバメさ~ん、何がいい? ピザもワインもいろいろあるよ?」
「あっ、私は普通のトマトソースのピザに赤ワインを頂くよ」
初華の呼び掛けにツバメが慌てて答える。
「……どうしたの?」
「いや、実はお酒はあまり飲んだ事がないんだよね」
聞いたネヴェにあははと答えるツバメ。
「なら、俺は通常トマトソースと……たまには白ワインをもらおうかな」
「私もアーくんと同じのをー!」
静かに注文したアークに、はいはいと元気なレム。
「……酒だが、いいのか?」
「へへー、戦いの後だし。……というか、アーくんこそお酒だよ?」
確認したアークに、逆に詰め寄るレム。
「……ちょっと飲みたくなっただけだよ」
「なら、私もちょっと飲みたくなっただけ。いっぱい食べれると良いねぇ!」
やれやれ、とアーク。
「星さんはどうします?」
「私は……激辛トマトソースのピザと葡萄ジュースをお願いしましょ」
その横では涼花の問い掛けにぽわわん、と答える星。
「よーし。それじゃ、村の安全を祝って乾杯するぞー!」
村人の陽気な掛け声。おー、と杯を掲げるのを見て習うハンターたち。
「乾杯!」
斉唱と同時にかちんとグラスを合わせる音。ぐいっと飲み干す姿があちこちで。
やがて楽器を取り出した村人の一部が陽気に演奏を。
「どうですか? ワインは地方によって癖が違ったりしますから、お口に合うか……」
涼花、これまでの知識を生かし周りに聞いてみる。
「こういう雰囲気に合うのがいい」
「合うのがいいのだー」
静かに言うアークに、きゃっきゃと復唱するレム。
「……赤ワインって、もうちょっと甘いかと思ってた」
ツバメは舌を出して苦み走った表情だったり。
「赤ワインは、そうですね。渋みやボディで好みが分かれるようですし」
「葡萄ジュースは苦くない……」
説明する涼花。ネヴェはグラスを両手で持ってごくごく。
「あっ。でもこのピザと一緒ならチーズの味もあって大丈夫だよ」
どうやらツバメは飲む量より食べる量の方が多くなりそうで。
「んあっ!」
おっと。初華が涙目になっているぞ。
「どうした?」
アークが初華に聞く。
「激辛トマトソース、すんごく辛い……」
「葡萄ジュースをたくさん飲めば?」
そう言う星も激辛トマトソースのピザを食べている。確かにジュースと一緒なら少しは違うはず。
「うう……私、白ワインにしちったの」
「これ、口当たりいいけど油断すると酔うね」
人前で酔わないようにしなくちゃ、と自分に言い聞かせているアークがしみじみ。隣でレムがあはははは。すでに酔っているような?
「……ジュースも美味しいですが、そんなに辛いでしょうか?」
涼花、激辛トマトソースピザを食べているが涼しい顔だ。
「そこ! トウガラシがそのまま乗ってるでしょ?」
「乗ってますが、何か?」
一番辛いところを食べても涼しい顔の涼花だったり。
「うちとこのピザは辛いからねぇ。ジュースもお代わりしてしっかり飲んでな?」
「あ。ねえ、私、人探しをしてるんだけど……」
給仕に回って来た村人に、星がそんなことを聞く。
どうやら父親捜しらしい。
ほかにも、村人とやり取りする姿が。
「キミがあの歪虚を見つけたんだよね?」
ツバメが、発見者の少年と話していた。
「その……ハンターって、やりがいがありますか?」
少年、思い詰めたように聞いてきた。
聞けば、村でこのまま生活するより外の生活にも興味があるとの事。
「このまま家を継いでいいのか……もっと可能性があるように思うんです」
ツバメ、くすりと微笑した。
「キミは進みたい道があるのかな? 私はやりたい事があったから、普通の道を飛び出したよ」
少年、目を見張った。
「それが、良いか悪いかは分かんないけどね。出たとこ勝負よ」
「やりたいこと……」
目的意識の有無。
それが、少年とツバメとの違いかもしれなかった。
「そういえば死神の歪虚」
ここで涼花が思い出したように言う。
「退治しなければずうっと荒野で彷徨っていたのかもしれませんね。これという目的もなく」
他人に干渉するつもりはないのだが、家業継承に関してとなると少し助言もしたくなるようで。
ただ、少年は頭を下げた。
傍に少女がおずおずと近寄って来ると、優しく手を取ったようだ。
「さあて、そろそろ死神歪虚がいるかもね~」
魔導トラック「オート三輪」を運転する南那初華(kz0135)が荒野を見渡す。
「だったらしっかり探すとしますかねぇ」
助手席に乗る安藤 ツバメ(ka6579)が身を乗り出し、窓枠に腰掛けて遠くを見る。
「ち、ちょっと。箱乗りは危ないよぅ!」
ががん、と慌てる初華。もちろん元気いっぱいなツバメは「大丈夫だって」と、周りを見るのに夢中。というか、風が気持ちいい。
「……運転、しっかり」
「あ、分かってる分かってる」
二人に挟まれ真ん中に座るネヴェ・アヴァランシェ(ka3331)の呟き。初華、仕方なく運転に集中する。
そんな運転席の様子に、荷台の四人は。
「箱乗り……ですか?」
運転席のすぐ後ろに座っていた月雪 涼花(ka6591)が言葉少なに首をひねる。
「窓を開けて上半身を出して、窓枠に腰掛ける乗り方だよ」
崎代星(ka6594)がのんびりとこたえる。
「詳しいですね」
「お父さん、自動車整備士だったから……」
危ない乗り方なのですね、と理解する涼花が礼代わりに微笑する。星、ふわりとした笑みで応じた。
「目線は比較的高くなるのが利点、か」
「だったらこうすればまだ目線が高くなるよね、アーくん」
呟いたアーク・フォーサイス(ka6568)の横で、レム・フィバート(ka6552)が運転席の天板に腰掛けた。目線は高くなったが後ろ向きなので、ぐいっと半身で腰をひねっている。
「あれじゃないか?」
「あ、私が座ろうとしてるうちに!」
あっさりと異変を発見し遠くを指差すアーク。確かに地面で黒くうねる物が見える。レムは機嫌を損ねて天板から下り抗議したり。
「発見したみたい、かな」
二人を見ていいなぁ、な感じの星。自分は行方不明の父を探しているのだがうまくいってなかったりするが、これは余談。
「初華さん、左方向のようです」
「うん、分かった。左に左折~っ♪」
涼花が運転席に伝え、初華がハンドルを切る。
「左に左折……」
二重表現じゃないかな、みたいな感じのネヴェ。
「左に左折? いやっほぅ~」
かくん、とトラックは曲がる。ツバメ、がくんと落ちそうになったが箱乗りしたまま。むしろ楽しそう。変わらず元気だ。
●
「では初華さん、行ってきます」
振り返って一礼して、涼花が行く。前にはすでに仲間が遠くでうごめく黒い襤褸に向かい歩を進めている。隣では星が「これで殺れたら上々…かなぁ」と、投具「コウモリ」を弄っている。
「ネヴェさん、行かなくていいの?」
初華はこちらに残ったネヴェを心配した。
ネヴェ、こくりと頷く。
「少し、見てる」
ぼーっとしたような雰囲気のまま、それだけ。何か物思いにふけっているようでもある。
「一体一体倒していくんだし、後ろから見てて後から助けてくれるってものアリだよね!」
前ではぱしん、と手の平に拳を打ち付けたツバメがネヴェに理解を示していた。
そしてふと真顔になる。
人の接近を感じ取り前方で襤褸が人型に起き上がっていたのだ。
その数、六体。
いずれも大きなキャッツ・アイの装飾がある死神の鎌を構えている。
「フードの中には何も無い…? 本体は別ってことか」
ツバメの横でアークが警戒し、歩みを止めた。
「空洞、だね……あのやけに豪華な鎌に何か秘密があるのかなぁ?」
ツバメも頷き止まった。
「怪しいよ……ねっ!」
レム、気のない様子で白い帽子を目深に被ったが、次の瞬間大地を思いっきり蹴った!
敵に一直線に向かっていったぞ。
「涼花さん、私がこっちで……いい?」
「ええ。お任せします」
最後尾の星が左に開き、頷く涼花が右手に移動した。
「いきなり……まあ、長い付き合いだから驚きもしないが」
「いいね。どんどんちょっかい掛けていこう!」
アークとツバメが突っ込むレムに続いた。
で、レム。
「先手必勝! そこって弱点でしょ!」
星型模様の大型手甲で固めた拳で一体の敵の持つ鎌の――大きな宝玉を狙った!
ところが。
――くるん、ぶぉん……。
「え?」
レム、空振りしてたたらを踏む。鎌はまるで狙われると分かっていたかのように軽やかにかわしていた。
「逃げられた? うわっ!」
「違う。突撃をかわして攻撃するつもりだ」
振り向くレムを鎌がざっくりと斬る。
さらにもう一撃来るが、身体を入れてアークが叫ぶ。敵の、レムの後背を狙った一撃は抜刀した太刀「鬼神大王」で受け止めていた。
「あっ! やっぱり狙われてるの分かってるね」
横ではツバメがレムのように別の敵の宝玉を狙って「流星砕き」の異名を持つナックルで正拳突きをしたが、やはり回避されていた。もっとも、ツバメの体勢は崩れていない。次の死神の攻撃をひらりと回避した。
「……私の役割は相手の隙を作る事」
身を沈め、牽制するための攻撃を繰り出す。
黒髪が跳ね羽織ったシャツの端がひらめく。
「ハンター初陣だけど、まあなんとかなるよね!」
これでレムの右側からの敵包囲行動は阻害した。
一方、左側。
「間に合って……」
星がレムの突撃に合わせ、彼女より左にいる死神歪虚にコウモリを投擲。
もちろん、鎌の宝玉を狙ったが外れ。もっとも、敵は星から狙われていると知り包囲行動から離脱。星の方に向かってきた。その横の敵もだ。
そして気付いた。
「……敵の宝玉、武器の先端にあるからすっごく動くんだね」
つまり、狙いにくい。
投擲攻撃を諦め、ナイフ「リッパー」を構え直すのだった。
●
こちら、右に開いた涼花。
「止まってもらいますよ」
ツバメを囲もうとする敵に突っ込んだ。
手には金色のトンファー。
――ひゅん……ばすっ。
「やはり空洞」
黒い襤褸にあえてトンファー、旋棍「疾風迅雷」をぶち込んだが手ごたえはない。もう一体寄って来た死神からの攻撃は前腕に添えたトンファーでがっちりと防ぐ。打ち込んだ敵からの攻撃は身を引くことで回避。
これで、右大外でツバメ・涼花組が三体を担当。左後方遠距離の星が敵を誘い二体を引き離しに成功した。
中央では、アークとレムが一体と戦っている。
まず、ここに数的有利を作った。
ところがっ!
レムへの追撃を防いだアークだっだか、ここで想定外の事態に陥っていた。
――ばさーっ!
「何?!」
何と死神。鎌を止められた体勢から体をひねり、アークを巻き込むように襤褸をひらめかせたのだ。
結果、アークが中身が空の死神装束を身にまとうことになっていた。
「アーくん?」
これにはレムも言葉を失った。
そして目を見開く。
――ぶおんっ!
「ぐっ!」
死神、鎌の切っ先を自分に向けて突き刺したッ!
死神の切腹である。
もちろん、大ダメージを受けたのは死神本体ではなく、取り込まれたアークのみ!
「アーくんっ!」
レム、怒りの鉄拳。
狙う宝玉はアークが鎌を抜いた後で持っているため動かない。今度こそ真っすぐ行ってぶっ飛ばす!
――ぱきっ。
砕けるキャッツアイ。同時に死神は衣装も鎌もぱったりと地に落ちた。
「アーくん、大丈夫なのかっ!」
「ああ……俺は別に戦いが好きなわけじゃ、ない」
ゆら、と倒れそうになったところをこらえ太刀を構え直す。瞳が……瞳孔が獣を思わせる縦割れの形へ変化した。
「だが……剣心一如、『剣は人なり、剣は心なり』!」
集中すると、だっ、と大きく躍り上がり踏み込んだ。
「捕ったぁ!」
ちょうどそこには、ツバメがショットアンカー「スピニット」で敵の鎌を絡めとっていた。
「疾風剣!」
間髪入れずに横薙ぎで砕くアーク。
「まだだ!」
続いてツバメを狙っていたもう一体に電光石火!
●
時は若干遡る。
「死神に……取り込まれる?」
戦場をくまなく意識して時間をかける戦闘を心掛けていた涼花が、死神衣装に巻き込まれたアークを見て愕然としていた。しかも、自傷攻撃ともとれる、確実な攻撃を繰り出しているではないか。
予想外の展開に激しく狼狽した。
狼狽したが……。
(はっ)
故郷の屋敷での教えを思い出していた。次期当主として育てられた日々の事だ。
「ニュートラル」
眼の光彩が金になり、平常心を保つ。
決して、場の空気に飲まれないように。
アークはレムの攻撃を誘い敵を粉砕したのが分かった。
もう、心配はいらない。
一瞬狭まっていた視野は広くなった。
改めて対峙した敵との距離を取る。
すると、ツバメの方に行った。ツバメは敵を奥の手で絡めとっていた。
そこに、アークが来て粉砕。ついでに今ここにいた敵にも切り掛かるが……。
「わたくしの役目でしょう」
アークの電光石火を回避したところに、震撃の踏み込み。最短距離で到達したトンファーが敵宝玉を砕いた。
「ギリギリだったけど、おかげで敵の隙も誘えたねっ!」
ツバメの方はもう一体に斬られていたが、その分宝玉も狙いやすかった。ぴぴん、と跳ねた獣耳髪をしっかり立てて思いっきり伸身しての右ストレート。後ろに残った右踵が高く浮いてしまうほどの一撃がきれいに宝玉に入っていた。
この時、星。
「移動してきてくれた分時間稼ぎにはなったけど……」
もう、敵二体が迫っていた。
――ぶおん。
「んっ…」
初撃はかわすが、もう一体の鎌に捕えられた。
(え?)
やられた、と思ったが運良くスケイルメイルの一番頑丈な所に当たっていた。思ったより被害は少ない。
敵も感じたか、鎌を引くと一瞬動揺して止まった。
瞬間、眼光鋭くなる星。猛禽類の様な笑みを浮かべ、黒い靄を発する。
「……殺れる」
思い切りよく、手にしたナイフをノーモーションスロー。
――ぱきん……。
見事に命中させるが、最初の敵が振り返っているぞ!
「……作戦に従う」
「真っすぐ行ってぶっ飛ばす!」
おっと、運がいい。
初華と控えていたはずのネヴェが戦線到着。敵の攻撃を受けて止めると、星を追い越し最前線からレムが戻って来た。助走十分で宝玉に拳をぶち込むのだった。
●
「いやあ、さすがハンターさん。専門家に任せるもんだねぇ」
村に戻って完全討伐を報告すると、やんやの騒ぎに巻き込まれた。
「せっかく来てくれたんだ。ピザを焼いたから食ってってくれよ」
どうやら気のいい人ばかりのようだ。
「ほへ、いいの? んじゃ、お言葉に甘えちゃおっかな~」
というわけで、初華以下ハンターは好意を受けることに。
「ツバメさ~ん、何がいい? ピザもワインもいろいろあるよ?」
「あっ、私は普通のトマトソースのピザに赤ワインを頂くよ」
初華の呼び掛けにツバメが慌てて答える。
「……どうしたの?」
「いや、実はお酒はあまり飲んだ事がないんだよね」
聞いたネヴェにあははと答えるツバメ。
「なら、俺は通常トマトソースと……たまには白ワインをもらおうかな」
「私もアーくんと同じのをー!」
静かに注文したアークに、はいはいと元気なレム。
「……酒だが、いいのか?」
「へへー、戦いの後だし。……というか、アーくんこそお酒だよ?」
確認したアークに、逆に詰め寄るレム。
「……ちょっと飲みたくなっただけだよ」
「なら、私もちょっと飲みたくなっただけ。いっぱい食べれると良いねぇ!」
やれやれ、とアーク。
「星さんはどうします?」
「私は……激辛トマトソースのピザと葡萄ジュースをお願いしましょ」
その横では涼花の問い掛けにぽわわん、と答える星。
「よーし。それじゃ、村の安全を祝って乾杯するぞー!」
村人の陽気な掛け声。おー、と杯を掲げるのを見て習うハンターたち。
「乾杯!」
斉唱と同時にかちんとグラスを合わせる音。ぐいっと飲み干す姿があちこちで。
やがて楽器を取り出した村人の一部が陽気に演奏を。
「どうですか? ワインは地方によって癖が違ったりしますから、お口に合うか……」
涼花、これまでの知識を生かし周りに聞いてみる。
「こういう雰囲気に合うのがいい」
「合うのがいいのだー」
静かに言うアークに、きゃっきゃと復唱するレム。
「……赤ワインって、もうちょっと甘いかと思ってた」
ツバメは舌を出して苦み走った表情だったり。
「赤ワインは、そうですね。渋みやボディで好みが分かれるようですし」
「葡萄ジュースは苦くない……」
説明する涼花。ネヴェはグラスを両手で持ってごくごく。
「あっ。でもこのピザと一緒ならチーズの味もあって大丈夫だよ」
どうやらツバメは飲む量より食べる量の方が多くなりそうで。
「んあっ!」
おっと。初華が涙目になっているぞ。
「どうした?」
アークが初華に聞く。
「激辛トマトソース、すんごく辛い……」
「葡萄ジュースをたくさん飲めば?」
そう言う星も激辛トマトソースのピザを食べている。確かにジュースと一緒なら少しは違うはず。
「うう……私、白ワインにしちったの」
「これ、口当たりいいけど油断すると酔うね」
人前で酔わないようにしなくちゃ、と自分に言い聞かせているアークがしみじみ。隣でレムがあはははは。すでに酔っているような?
「……ジュースも美味しいですが、そんなに辛いでしょうか?」
涼花、激辛トマトソースピザを食べているが涼しい顔だ。
「そこ! トウガラシがそのまま乗ってるでしょ?」
「乗ってますが、何か?」
一番辛いところを食べても涼しい顔の涼花だったり。
「うちとこのピザは辛いからねぇ。ジュースもお代わりしてしっかり飲んでな?」
「あ。ねえ、私、人探しをしてるんだけど……」
給仕に回って来た村人に、星がそんなことを聞く。
どうやら父親捜しらしい。
ほかにも、村人とやり取りする姿が。
「キミがあの歪虚を見つけたんだよね?」
ツバメが、発見者の少年と話していた。
「その……ハンターって、やりがいがありますか?」
少年、思い詰めたように聞いてきた。
聞けば、村でこのまま生活するより外の生活にも興味があるとの事。
「このまま家を継いでいいのか……もっと可能性があるように思うんです」
ツバメ、くすりと微笑した。
「キミは進みたい道があるのかな? 私はやりたい事があったから、普通の道を飛び出したよ」
少年、目を見張った。
「それが、良いか悪いかは分かんないけどね。出たとこ勝負よ」
「やりたいこと……」
目的意識の有無。
それが、少年とツバメとの違いかもしれなかった。
「そういえば死神の歪虚」
ここで涼花が思い出したように言う。
「退治しなければずうっと荒野で彷徨っていたのかもしれませんね。これという目的もなく」
他人に干渉するつもりはないのだが、家業継承に関してとなると少し助言もしたくなるようで。
ただ、少年は頭を下げた。
傍に少女がおずおずと近寄って来ると、優しく手を取ったようだ。
依頼結果
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サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/18 20:06:56 |
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依頼相談卓 レム・フィバート(ka6552) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2016/11/22 18:43:59 |