• 初心

【初心】図書館戦闘?

マスター:cr

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/11/25 07:30
完成日
2016/12/04 01:57

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「この山は……大丈夫ですね」
「ふう、やっと終わりか。流石に多かったな」
 ここは極彩色の街、ヴァリオス。そのある店の軒先で、男女が会話をしていた。
 二人の周囲にはうず高く積まれた本、本、本。どうもこの本の検品をしていたようだ。
「旦那様、あとは馬車に積み込むだけですね」
「そうだな、モア。もうひと仕事だ!」
 淡々とした口調で語っている女性の方がモア・プリマクラッセ(kz0080)。この店の番頭であり、ハンターオフィスの受付嬢も務めている。
 そしてヒゲを生やした男のほうがバロテッリ。この店、バロテッリ商会の会頭だった。


 二人を中心に商会の者達は本をどんどん積み込んでいく。そんな時、慌てて駆け込んでくる男が居た。
 モアはその男を呼び止め、二、三言会話を交わす。
 そして会話を終えた彼女はバロテッリにこう話しかけた。
「旦那様、魔術師協会の方が見られました。取引は中止です」
「はぁーーー?! 何だと?!」
 バロテッリの大声がこの街中に響き渡っていた。


「一体全体どういうことなんだ、モア!」
「どうも魔術師協会の図書館で大規模な崩落があり、とても新しい書物を受け入れられる状態ではないとのことです」
 崩落と言っても、山が崩れて岩が降って来たわけではない。魔術師協会の図書館といえばこのクリムゾンウェストの中でもトップクラスの蔵書数を誇っている。蔵書がそれだけあるのはいいのだが、当然それを何処かに収めなければいけない。結果信じがたいほど高い本棚が幾つも用意され、そしてその高い本棚が一つ崩れればドミノ倒しの要領で蔵書がぶちまけられる、とこういったことだった。
「おいおい、勘弁してくれよ……ともかく、この本を一刻も早く受け入れてもらわねぇとな。とてもじゃないが商会で全部預かっておける量じゃねぇぞ」
 物をただ置いておくだけでその場所でできたはずの商売ができなくなり、損失が生じる。商人というのは金銭にシビアなのだ。
「……旦那様、それではこうしましょう。蔵書を元に戻すサービスも付けましょう。もちろんサービス料も頂きますが」
「まあ確かにそうすりゃ解決だが、それを誰がやるんだ? あそこの書物は魔術師協会の連中によって下手に扱ったら酷い目に合う仕掛けが施されてるんだろ?」
「幸い、ハンターオフィスには新規登録されたハンターの方も沢山います。そういった方々にこの仕事はちょうどいいのではないでしょうか」

 こうしてハンターオフィスに魔術師協会図書館の蔵書の棚卸しという仕事が貼り出されたのだった。
 しかしこの仕事がとんでもないことになるとは、このときは誰も予想できなかったのであった。

リプレイ本文


「……久々の仕事だが、厄介事の予感がするな」
 ジーナ(ka1643)は目の前にそびえ立つ象牙の塔を見て、そう呟いていた。
 彼らの目の前にあるのは魔術師協会が誇る知の殿堂、附属図書館である。この古今東西のありとあらゆる本が収められた場所で起きた問題。それを解消するためハンター達は集められたのである。
「本の棚卸、大変な事になっているみたいですね。私も以前、研究所の鉱石棚を倒してしまった事がありますけど一人で全部元に戻すのに3日もかかってしまいました……」
 ノワ(ka3572)は自分の経験を皆に語る。だが、彼女は周囲を見渡しこう力強く付け加えた。
「でも、今回は十人もいますからきっと大丈夫ですね!」
 そんな彼女の仲間たちだが、目の前の仕事よりその館の中身の方に興味津々な者が四名ほどいるようだ。
「書は宝だよ。先人の研鑽でもあるから」
「これだけ本があれば、面白いモノも有るだろうな。上手く行けば、何か見つかるかも知れないと思うと楽しみだ」
 花(ka6246)とリズレット・ウォルター(ka3580)はその数々の書に思いを馳せている。
「協会の図書館だ。読みたい本があるけど、今回は我慢かな」
 一方ソラス(ka6581)は自分たちは仕事でここに来たのだと、読みたい気持ちを押し殺していた。そんな彼に同じエルフの雨を告げる鳥(ka6258)は独特の口調で語りかけた。
「私は協力する。崩落した本棚と散乱した本の整理に。文献は先人たちの叡智の結晶である。この惨状を見過ごすわけにはいかない。無事に整理できれば、詳しく読ませてもらおう」
 そうなのだ。課せられた仕事を終えれば時間はあるだろう。今は崩落の関係で関係者以外の立ち入りは禁止されているが、本来協会員の為に開放させれている施設である。崩落さえ片付ければ、その先には豊かな蔵書の海が広がっている。ハンター達はこれから始まる仕事とその先で起きることに思いを馳せ図書館の中に入っていった。


「『知識の敗北』って言葉が出てくる光景です……」
 しかし建物に入った彼らが見たのは目を覆いたくなるような光景だった。蔵書が一帯に撒き散らされ、その中心で巨大な本棚が連なるように倒れている光景に百々尻 うらら(ka6537)は思わずそう漏らす。
「整理整頓はメイドの嗜みです」
 だが、メイド服に身を包んだ奈良田 小夜(ka6569)はこの光景を見ても心が折れることはなかった。メイドとしてこれだけの状況を相手にしても仕事の範疇なのだ。気負いすぎる必要もない。
 そしてソアラ(ka6583)は腕まくりをしながら改めて仲間のハンター達に挨拶をした。
「あたしはソアラ。よろしくね!」
 その声が、作業開始の合図となった。


「あの~、それでどういう仕掛けが施されているんでしょうか~」
 うららは部屋の片隅である人物に話しかけていた。彼はこの図書館の司書。彼ならどの本にどのような仕掛けがあるのか知っているだろうという事だった。
「すみません、我々も全部を把握しているわけではないのです。そのような本は重篤な情報が書かれているが故、基本的には協会上層部しか取扱方法を伝えられていません」
 がっくりと肩を落とすうらら。見れば同じように話を聞いていたレインも表情こそ変わらないものの、肩を落としていた。
「ただ、基本的には人を殺めるようなものではなく、機動術と魔術を組み合わせたショックを与え、麻痺させるような仕掛けだと聞いています。だからこそ我々でも本の持ち運び等は可能なわけです」
「では、あのように崩落の際に開いた本については……」
「文章を読もうとしなければ大丈夫です」
「これは面白い、自分の大事なものに応用できるな」
 ソラスは司書の話を興味津々に聞いていた。
 一方、残った者達は実際の作業を始めていた。雪都(ka6604)は持ち込んだロープを本棚の上に絡ませる。
「この惨状は……頭を抱えたくなりますね」
 小夜はそれを手伝いながら散らばった本を見てため息を付いていた。
「ああ、もうこんなに散らかして」
 そんな彼女の視線の先ではソアラが本を慎重かつ丁寧に拾い上げ、軽く叩いて埃を落とす。そうして少し広まった場所へと運んでいく。まずは本棚を起こす事からだが、その作業をするには散らばった蔵書で文字通り足の踏み場も無い状況だ。気が遠くなるような作業だが、彼女はテキパキと仕事を進めていく。
 ノアも同じように散らばった本を拾い上げて整理に勤しむ。彼女の場合まず他の本の下敷きになった本から取り出していく。このまま放っておけば本の重みで下になっている方にダメージがかかる。それを防ぐため、彼女はまず下の方から救出していく。
「この重さの分だけ、中身が深いと考えたいな」
 リズもまた、本の回収を行っていた。本を両腕に抱えれば、ずっしりとした紙の重さが両腕にかかる。この重みが、彼に仕事をしているやりがいとその書が持つ知の深さを教えてくれるように感じていた。

「先ずは棚からだね」
 本を一通り片付ければ、次は本棚を起こす。ロープは架け終わって準備万端。しかしかなりの重さだ。ロープを引くだけではなかなか起きない。
 それを見かねた花は椅子を持ってきて側に倒し、本棚の隙間に持ってきていた斧の柄を突っ込む。さらに柄の先に手ぬぐいを当て傷がつかないようにして、斧に体重を掛けるとぐいっ、と持ち上がった。てこの原理を利用すればこのようなこともできる。
 いよいよ起こそうとした所で、ソアラがそれを止めた。てこで浮かせたままの本棚を少しずらし位置を合わせる。起き上がった所で別の本棚にぶつかれば元の木阿弥、いや、もしまた倒れれば起こしたはずが倒れた本棚のほうが多いという計算の合わないことになる。慎重に最終確認を終えた所で、ようやく引き起こされる。
 てこで押し上げた本棚に、逆方向から一同がロープを引く。全員の力がかかるとやがて本棚はゆっくりと起き上がり、そして静かに元の姿に戻っていった。作業は成功だ。
 一つ目が終われば次の本棚。やがて次々と本棚は起き上がっていき、小一時間経ったころには本棚は綺麗に立ち並んでいた。しかし、未だ棚の中身は空っぽのままである。次はここに本を並べていく作業だ。


「本が大事っていうのはわかるのよ。あたしだって本は好きだしね。でもだからってさー、トラップなんて仕掛けるとか何考えてるのかしら……? むしろ本を蔑ろにしてる気がするんですけどー……」
 本を並べる作業を前にソアラは盛大に愚痴っていた。これから中を確認し並べる上で、トラップが出てくることが予めわかっている。わかってはいるが、だからといって手加減してくれるわけではない。
「ま、言っててもしゃーないわよね。頑張ってやりますか」
 しかし愚痴ってても何も始まらない。ソアラはもう一度腕まくりをして本の整理に取り掛かる。物量も多いし何よりマンパワーが必要だ。一同総出で行うことになる。
 ノワの指示に従ってハンター達は二つに別れ、それぞれで整理を始める。
「此方の種類は、こっちへ。其方はあっち、だ」
 リズは背表紙だけでまず大まかに種類を分けていく。最終的な位置は中の確認が必要だが、彼の知識を使えばその前の整理までは出来る。
 もう一方のグループに視線を向ければ、そちらではレインが同じように分類をしていた。彼女の魔術知識はこういう時に役に立つ。
 そしてその時は突然訪れた。大体の分類を終えたリズが一冊を手に取り開く。その瞬間まばゆい光が一帯を覆う。目も開けられないほどの激しい輝き。ジーナは慌てて盾を構え何が起きても彼をかばえる様に前に立つ。そんな二人を、そしてこの部屋を白い光が包み……そして何も起こらなかった。
「……トラップ付きの物ほど価値が高いのだろうな」
 光が晴れ、視界が戻ってくる。ここまで強烈な光が起これば悪意を持って本を開いたものはしばらく目が眩むだろうし、周囲もきっと大騒ぎになる。なるほど、防犯のためと考えれば意味はある。もっとも最初から狙っている者に対しては無力だろうが。
「ああ、ビックリした。まあ流石に図書館にある本に爆発とかそんな頭の悪いのは仕掛けない……わよね?」
 ソアラはこんなこともあろうかと用意していたゴーグルを外しながらそう言った。

「罠に充分気をつけて」
 もう一方のグループでは、花が周囲にも警戒を払いながら本をチェックしようとしていた。そんな中、レインはおもむろに本を広げようとしていた。
「私は推測する。防犯用の仕掛けであれば、麻痺や睡眠の効果を与えるものが多いだろうと。それらは甘んじて受けても効果が切れるまで安全な場所へ搬送すれば問題ないと考える」
 つまり罠は受けても被害が広がらなければいいという考えである。しかし、そんな彼女にうららは大きな袋を取り出してみせた。
「この袋の中で開けば、被害は広がらないと思うんですよ~」
 そう言いながらうららは本を一冊袋の中にしまい込む。
 そして二人は本を開いた。次の瞬間轟く雷鳴、稲光が走る。この本に仕掛られていたのは開いたものに電気ショックを与える仕掛けだった。もろに電撃を受け、体が痺れるレイン。彼女はしばらく動けそうにない。
 一方のうららはと言うと。
「ほら~、やっぱりうまくいったたたたたたたたたた!!」
 袋一枚では電撃を抑えるのには無理があったようだ。ビリビリと痺れしばらく硬直するうららであった。
「ああ、これがトラップ。本当に出てくるんだな……あ、いや、それだけの事をしなければいけないくらい重要な物ばかりって事だよな」
 雪都はその光景を見て一人納得していた。
「ふう、助かった……」
 一方そのころ、ソアラが開いた本からも電気が放出されていた。だが、彼女はこんなことも予想して分厚い手袋をつけていた。それがちょうどいい絶縁体になって彼女を助けたのであった。備えあれば憂い無しとはこのことだった。
 小夜はどう開こうものか思案していた。司書に聞けばトラップを回避して開く方法が分かるだろうと思ったのだが、司書曰く自分たちにも教えられていないとのこと。どうも開いたものを即殺める様な物騒なものは仕掛けられていない様だが……しかし開かなければ仕事にならない。結局奥付から見れば大丈夫かと考え開く。
 その瞬間、小夜の身体は光に包まれた。そして程なくしてその光は消え失せ、後には何も残らなかった。彼女の姿は忽然と消え失せた。
 と思ったらすぐに再び光が現れ、そしてそこには本を持った小夜の姿が現れていた。一体何が起こったのか、彼女自身も周りもよくわからず目を白黒させている。
「ああ、なるほど。つまりこの本に掛けられた仕掛けは本を開いた者を本ごと図書館に転移させるものだったんだ」
 ソラスははたと気づき手を打った。
「確かに盗まれることは防げますね」
 と転移した小夜も納得したようだ。
「これも一種の結界か……よく考えられているよ」
 そして花も納得して一人呟いていた。


「ふう~、ひどい目に会いました~」
 やっと痺れていたのが解け動けるようになったうらら。彼女は電撃にもめげず本のチェックの作業を再開する。再び袋の中に入れ本を開く彼女。その瞬間何かが飛び出してきた。
「でも袋の中ですから~……?!」
 うららは一安心していたが、この袋は先程電撃トラップを防ぎきれなかった袋である。当然のごとく穴が開いていた。本から飛び出したそれがニュルニュルと穴から漏れ出してくる。
「まさかスライムが出るとは……」
 リズの言うとおり、それはまごうことなきスライムだった。こうなると飛び出した後袋から漏れ得たのは幸運だったと言っていい。床に落ちたスライム達の周囲からシュウシュウという音とともに薄く煙が上がっている。スライムに悪意は無いが、その強酸性の体で周囲を溶かしていく。
 放置しておくことは出来ない。ハンター達はすぐに反応する。飛び出していく者達に向けレインは詠唱を開始する。それが完成すると前を行く者達の手にした武器に赤い光が纏われる。
 まず前に出たのはノワだった。彼女は盾で押し込み、すかさずダガーを突き立てる。飛び跳ねた体液が彼女の身体にかかるとそこから傷ついていく。
 だが、それに怯まずスライムを食い止めるため前に出る彼女にジーナが追いついた。
「やはり厄介事だ。中々性質の悪い」
 走り込んだ所にスライムがまとわりつき、彼女の肌を傷つける。だが彼女はそれに耐え手にした鉄扇を構える。この得物は至近距離で戦うとなるとスライムの酸に触れる危険性も高いが、それ以上にこの図書館のような様々な障害物が存在する環境では効果を発揮する。
「――鷹よ、鷹よ。白き鷹よ!」
 そして彼女は祖霊である鷹の力を込めて鉄扇を振り抜いた。それでスライムが一体討ち払われていた。
 しかしそれだけで全てのスライムを抑えきれるわけではない。防衛ラインからはみ出したそれがじわりじわりと床を溶かしながら積み上げた本へと無慈悲に近づいていく。
「女の子にスライムけしかけてんじゃないわよ、ばかー!」
 だが、ソアラは身体を張って守っていた。トンファーで必死に払いながらスライムが本へとたどり着くのを防ぐ。
 さらに本を守るように突如として土壁が現れる。一枚はレインが、一枚はリズが作り出したものだ。魔力によって産み出されたそれにスライムはその身を寄せるが、高くそびえ立つ壁はその半透明の体を決して先には進めさせない。
 しかしその時ソアラにスライムたちがのしかかってきた。
「ひっ」
 涙目になりながら尻餅をつく彼女。押し寄せるスライム。
 その時リズは後ろからスライムに視線を合わせ、意識を集中した。詠唱を続ける。すると手がほんのりと光り、後にエネルギーの矢が形作られる。そして呪文を完成させたときそれはカーブを描いて空を飛び、スライムの一体を貫ぬき、ソアラをスライムの海から救い出していた。
 小夜は拳を握り立っていた。普段の彼女の武器は槍なのだが、回りに本棚が立ち並ぶこの環境では振り回すことは叶わない。スライムが這い寄ってくる。それらは彼女を認識することも特に無く、その身を擦り寄せる。だがそれだけで強酸性の体が彼女の脚を傷つけていく。
 しかし彼女は退かなかった。握りしめた拳を覆う白い手袋。それは作業の際に周囲を汚さず彼女自身の手も守る防具であると同時に、その拳でスライムを殴り倒すことを可能とする武器でもあった。嗜みとして身に付けた格闘術でもって拳を振るえば、スライムはその力に押されぶるぶると震えながら後退する。
「む、このタイミングで……」
 そしていつの間にか花がスライムを挟んで小夜の向こう側まで回り込んでいた。マテリアルを脚に込め、一気に駆け抜けていた。しかしそれだけではスライム達の群れに飛び込んでいくことになる。では如何にして彼はこの位置まで動いたのか。それは壁を利用したものだった。その脚力で持って壁を走り、この地点にたどり着く。
 小夜に弾かれたスライムが今度は花にその体を寄せるが、すかさず彼は鉄扇を広げその身を守る。守ったと思った瞬間には先程まで本棚を起こす際にてことして役立っていた斧が彼の手に収まっていた。その重みに従って斧を振り下ろせば、その刹那に刃は赤熱し、斧の本来の目的通りスライムの体を蒸発させ両断していた。
「本が溶ける? もともとどういう仕掛けだったのでしょう」
 ソラスは疑問を頂いていた。このようなスライムを罠として仕掛けていれば、肝心の守るべき本が溶けてしまう。一体何のためとは思ったが、今はスライムを倒すべき時だ。スライムが出てきたのは本に仕掛けられた魔術が経年による劣化の末に暴走した故だったのだがそのようなことは彼には知る由も無かった。
 ソラスは短く呪句を唱える。すると彼の体を緑の風が覆う。その風はスライムのもぞもぞとした動きから彼の身を守ってくれていた。
 そしてそのスライムに向けて雪都が杖を振り下ろす。振り下ろされていく最中一瞬の内にかれがその身を引き抜くと、中からは銀色に光る刃が現れ、それでもってスライムは斬り伏せられていた。


 スライムの登場という想定外の事態はあったものの、本への被害は特に無くハンター達は片付けることに成功していた。スライムにのしかかられたソアラは涙目だが、ともかく本の確認も一通り終え、後は棚に収めていくのみ。ここまで手はずを整えておけば後は本を次々と入れていけばいいだけだ。
「そこは二冊分開けておいてください」
 そんな中、小夜は何やら紙を手に指示を出していた。彼女が手にしていたのはバロテッリ商会から貰ってきた発注書の写しである。この棚にも商会から納品される予定の本が収まる、となると予めその分の場所を開けておけば後々において更に効率がいい。彼女のメイドとしての準備は万端だった。
 そしてしばし後、本を全て収め終えたハンター達は司書に仕事を終えたことを告げ去っていった。そこに商会から来た馬車が書物を納品していく。司書達がその本を棚に収めるべく館内に入ったとき、彼らが見たのは予め新しい本を入れるべく場所が開けられた本棚だけでなく、綺麗に掃除し終えられ光り輝やく本棚と床の姿だった。小夜のメイドとしての仕事は、真に万事万端において完璧なのであった。

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MVP一覧

  • 仕事が丁寧
    ka6246
  • 雨呼の蒼花
    雨を告げる鳥ka6258
  • スライムと闘うメイドさん
    奈良田 小夜ka6569
  • 知るは楽しみなり
    ソラスka6581

重体一覧

参加者一覧

  • 勝利への開拓
    ジーナ(ka1643
    ドワーフ|21才|女性|霊闘士
  • ドキドキ実験わんこ
    ノワ(ka3572
    人間(紅)|16才|女性|霊闘士

  • リズレット・ウォルター(ka3580
    人間(紅)|16才|男性|魔術師
  • 仕事が丁寧
    花(ka6246
    鬼|42才|男性|疾影士
  • 雨呼の蒼花
    雨を告げる鳥(ka6258
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • ドジッ子
    百々尻 うらら(ka6537
    人間(蒼)|17才|女性|闘狩人
  • スライムと闘うメイドさん
    奈良田 小夜(ka6569
    ドワーフ|17才|女性|霊闘士
  • 知るは楽しみなり
    ソラス(ka6581
    エルフ|20才|男性|魔術師

  • ソアラ(ka6583
    ドワーフ|18才|女性|格闘士
  • チューダの弟子
    雪都(ka6604
    人間(蒼)|19才|男性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 図書館にて(相談卓)
雨を告げる鳥(ka6258
エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/11/24 21:12:25
アイコン 質問卓です
奈良田 小夜(ka6569
ドワーフ|17才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2016/11/23 00:30:49
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/11/22 02:38:15