ゲスト
(ka0000)
火山火口付近調査依頼
マスター:T谷

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/11/26 19:00
- 完成日
- 2016/12/05 02:04
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ベキベキ、バリバリ、ジャリジャリと、喉の奥から異音が響く。
それは、とても望んでいるものではない。目指す場所からほど遠く、またかと私は肩を落とす。
『いつまで、そんなものに拘っているのだ』
横柄に、居丈高に、その声は頭に響く。おまけに人を辟易させる嘲笑付きだ。
だが、言い返そうにも肝心の言葉はやはり、形にならない。
『下らん感傷だ。そんなものが何になる』
何とでも言え。せめてもの抵抗に、脳内で吐き捨てる。
『未だ人にあるつもりか』
当たり前だ。人を憎み、滅ぼすことなど、人であっても出来ることだ。
私は人であることを、やめるつもりはない
『ふん、まあ良い。貴様が我の望みを叶える限り、貴様の趣向に口出しはせん』
それきり、声は聞こえなくなった。
再び練習を始める。
思い出し、頭の中で出来る限り精細に浮かべ、割り、削り、磨き、組み立て。出来る限りの工夫を凝らす。
既に試行回数は千を超える。そろそろ、少しでも成果が出てくれるといいのだが――
「――……ァ……」
そのとき、無数に響く雑音の中で、ほんの一つが確かに響いた。
●
第二師団都市カールスラーエ要塞。その程近くに、標高およそ二千メートルの名もなき火山が聳えている。
良質な温泉の湧き出るその山に、マテリアル鉱石の大きな鉱脈が眠っていると発覚したのは最近のことだ。ハンター達の協力を得なければならない過酷な環境ではあったが、それでも鉱脈は確かに存在することが確認され、都市のエネルギー問題は俄に解決の一途を辿っていた。
だが、それから数ヶ月。ドワーフによれば掘り尽くすのに一週間も要らない程度の鉱脈は……しかしほんの少しも、採掘することが出来ていなかった。
――ほんの数分目を離した間に、入り口が塞がっていた。
火山でドワーフと共に採掘の準備に携わっていた師団員の報告は、簡素なものだった。
足場の組み立て、トロッコレールの敷設、作業員の休憩小屋設置と準備を終え、さあ始めるぞというときの話だ。何の前触れもなく洞窟は消え、そこにあったのはただの山肌。閉じ込められた数人の団員とドワーフがどうなったのか、考えるまでもないだろう。
掘り返そうという努力は、全て徒労に終わった。
ただの崩落ではない。――岩盤の下から、急に分厚い結晶の層が顔を出したのだ。それはツルハシを跳ね返し、爆薬や覚醒者の力でもってしても破壊に非常な手間を要するものだった。
ハンター達の遭遇した溶岩の兵士。これが偶然発生した歪虚なのか、それとも何かの目的によるものか。
疑問は尽きぬまま、師団は警戒を厳にした。
「……それで、温泉が突然熱湯に変わったと」
「はい。浴場の扉を開けたお客様二名が、中に充満していた高温の蒸気に当てられて大火傷を」
要塞近くに建てられた、知る人ぞ知る観光スポットである温泉施設。そこの管理者が、ほとほと困惑した表情で第二師団受付に現れた。
「幸い、大事には至らなかったのですが……このままではとても営業を続けることができないので……」
第二師団にとっても、観光収入の低減は看過できるものではない。早速と、調査隊が組まれることになった。
湯を機械で沸かしている訳ではない以上、原因は限られる。地殻変動か何かで、地下水と地熱の元との関係が変化したか。若しくは、何者かの介入があったのか。
となれば、調べられる場所も多くはない。
そして推測を裏付けるように火山からの噴煙が確認されたとあれば、疑う余地はなかった。
第二師団は、報告にあった溶岩兵、発見されていない未知の歪虚の存在も考慮して、ハンター達の助力を得ることに決める。
火山内部へと続く洞窟は消えてしまい、また別の入り口も発見されていない。残るは火口への直接的なアプローチのみ。どんな危険が待っているか分からない以上、応用力に長けるハンターの存在は不可欠だ。
それは、とても望んでいるものではない。目指す場所からほど遠く、またかと私は肩を落とす。
『いつまで、そんなものに拘っているのだ』
横柄に、居丈高に、その声は頭に響く。おまけに人を辟易させる嘲笑付きだ。
だが、言い返そうにも肝心の言葉はやはり、形にならない。
『下らん感傷だ。そんなものが何になる』
何とでも言え。せめてもの抵抗に、脳内で吐き捨てる。
『未だ人にあるつもりか』
当たり前だ。人を憎み、滅ぼすことなど、人であっても出来ることだ。
私は人であることを、やめるつもりはない
『ふん、まあ良い。貴様が我の望みを叶える限り、貴様の趣向に口出しはせん』
それきり、声は聞こえなくなった。
再び練習を始める。
思い出し、頭の中で出来る限り精細に浮かべ、割り、削り、磨き、組み立て。出来る限りの工夫を凝らす。
既に試行回数は千を超える。そろそろ、少しでも成果が出てくれるといいのだが――
「――……ァ……」
そのとき、無数に響く雑音の中で、ほんの一つが確かに響いた。
●
第二師団都市カールスラーエ要塞。その程近くに、標高およそ二千メートルの名もなき火山が聳えている。
良質な温泉の湧き出るその山に、マテリアル鉱石の大きな鉱脈が眠っていると発覚したのは最近のことだ。ハンター達の協力を得なければならない過酷な環境ではあったが、それでも鉱脈は確かに存在することが確認され、都市のエネルギー問題は俄に解決の一途を辿っていた。
だが、それから数ヶ月。ドワーフによれば掘り尽くすのに一週間も要らない程度の鉱脈は……しかしほんの少しも、採掘することが出来ていなかった。
――ほんの数分目を離した間に、入り口が塞がっていた。
火山でドワーフと共に採掘の準備に携わっていた師団員の報告は、簡素なものだった。
足場の組み立て、トロッコレールの敷設、作業員の休憩小屋設置と準備を終え、さあ始めるぞというときの話だ。何の前触れもなく洞窟は消え、そこにあったのはただの山肌。閉じ込められた数人の団員とドワーフがどうなったのか、考えるまでもないだろう。
掘り返そうという努力は、全て徒労に終わった。
ただの崩落ではない。――岩盤の下から、急に分厚い結晶の層が顔を出したのだ。それはツルハシを跳ね返し、爆薬や覚醒者の力でもってしても破壊に非常な手間を要するものだった。
ハンター達の遭遇した溶岩の兵士。これが偶然発生した歪虚なのか、それとも何かの目的によるものか。
疑問は尽きぬまま、師団は警戒を厳にした。
「……それで、温泉が突然熱湯に変わったと」
「はい。浴場の扉を開けたお客様二名が、中に充満していた高温の蒸気に当てられて大火傷を」
要塞近くに建てられた、知る人ぞ知る観光スポットである温泉施設。そこの管理者が、ほとほと困惑した表情で第二師団受付に現れた。
「幸い、大事には至らなかったのですが……このままではとても営業を続けることができないので……」
第二師団にとっても、観光収入の低減は看過できるものではない。早速と、調査隊が組まれることになった。
湯を機械で沸かしている訳ではない以上、原因は限られる。地殻変動か何かで、地下水と地熱の元との関係が変化したか。若しくは、何者かの介入があったのか。
となれば、調べられる場所も多くはない。
そして推測を裏付けるように火山からの噴煙が確認されたとあれば、疑う余地はなかった。
第二師団は、報告にあった溶岩兵、発見されていない未知の歪虚の存在も考慮して、ハンター達の助力を得ることに決める。
火山内部へと続く洞窟は消えてしまい、また別の入り口も発見されていない。残るは火口への直接的なアプローチのみ。どんな危険が待っているか分からない以上、応用力に長けるハンターの存在は不可欠だ。
リプレイ本文
季節はもう冬に入る頃合いだ。だというのに、火山麓に集まったハンター達はうっすらと汗をかいていた。
暑い。じわじわと、足下から熱が這い上がってくるようだ。どうやら辺り一帯が、地熱のようなものを発しているらしい。
「それに、微振動もあるみたいだね」
時音 ざくろ(ka1250)が地面に手を当てる。ほんの僅かだが、地面が震えているのを感じた。
振り返れば、遠く山の頂上から空に向かってもうもうと、灰色の噴煙が立ち上っている。
「噴火の兆候……なのかな?」
「寒さなら、どうということもないのですが……」
ざくろの側でアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)が、やや辟易したように呟いた。
「これは、色々と持ってきて正解だったな」
ザイルや杭など、ロニ・カルディス(ka0551)はある程度の道具を揃えていた。流石にリアルブルー製のしっかりしたものは難しかったが、これが役に立つ場面も多いだろう。
「ここって、元々こんなに暑い山なんすか?」
「いや、ちょっと前までは普通だったんだが……」
額を拭いながら骸香(ka6223)が師団員達に尋ねると、彼らは首をかしげている。
「うーん、急に火山活動が活発になったんすかねぇ」
明らかな異変。やはり、自然現象が原因だとは思えなかった。
「まず、件の入口は見ておきたいわね。案内、してもらえる?」
見上げるように微笑むカーミン・S・フィールズ(ka1559)に、師団員達は勢いよく首を縦に振った。
「……これ以上は、難しいわね」
がりがりとタイヤが石を踏む。マリィア・バルデス(ka5848)の跨がる魔導バイクが、悲鳴を上げているようだった。
この辺りで、およそ三合目といったところか。無数の岩石、地面の段差、ひび割れ。傾斜もよりきつくなっていく。登山道もない自然の山を登るには、二輪バイクでは荷が重いようだ。
仕方なく、マリィアは味方に合流するべく後方に向けハンドルを切った。
●
急に塞がったという洞窟の入口の周りには、結晶を破壊しようとした跡が残っていた。細かな結晶がキラキラと、辺り一帯に飛び散っている。
「確かにこれは、頑丈そうね」
「ただの現象と言うには、明らかに不自然だな」
山肌に顔を見せる巨大な結晶の壁。カーミンやロニは軽くそれを叩き、調べている。
「少し、掘ってみましょうか」
アデリシアが、洞窟から少し離れてワイヤーを振るう。風を切った鋼線は岩盤を切り裂き――そして三十センチも掘れば、そこにもまた結晶の壁が現れた。
「うーん、謎が謎を呼ぶね!」
砕けた欠片を拾って入れ物代わりの水筒に入れながら、ざくろは冒険者としての血が騒ぐのを感じていた。
しかし結局ここで分かったことは、結晶がかなり分厚いこと、どれだけ地面の下に埋もれているか想像もつかない、ということだけだった。
「今回の行方不明者は、何かトラブルを抱えていたのかしら。それと、これまでにこの山で事件などは?」
マリィアが、師団員達に尋ねる。
「いんや、そういう話は聞いてねえな。調べちゃいるだろうが、まだ分かってねえんじゃねえか?」
返事に対し、マリィアは不満そうに溜息をつく。
この山がこうなった原因。それが歪虚の可能性が高い。ならば、そこに怨恨などもあるかと思ったが。
「でも、まだ敵はいないみたいだね」
骸香の言うとおり、ここまで登っても聞いていた溶岩兵の姿は見ていない。それどころか鳥や虫の一匹も見ないのは……この暑さを考えれば当然だろう。
洞窟周辺の足跡も調べてみれば、そこには作業員のものと、もういくつか。焼け焦げた楕円の窪みが残っていた。
●
洞窟を後にし、一行は進んでいく。
道程を半分も過ぎれば、植物の一切を見なくなった。山肌は硬い岩へと変わり、立ち上る熱気もより強くなっていく。噴煙はまだ障害にはならないが、肌に吹き付ける強風はどこか埃っぽく、時折砂が混じっているようだ。
道が整備されていない山は、歩くことの出来る場所を探すだけでも一苦労だった。時には切り立つ崖を登ることも必要で、
「じゃあ、行ってくるね!」
ざくろがブーツの底からマテリアルを噴射して、高く飛び上がる。そのまま壁を数度蹴り上まで上がると、ロープの端を投げ下ろした。
それを受け取るのは、崖の中程まで登ったカーミンと骸香だ。
「こっちは大丈夫っす!」
「ん、はいオッケー! じゃ、一人ずつ登ってきてー」
重力のないように壁に張り付く彼女達が、用意してきた杭でロープを固定。登りやすいように道を整えていった。
そんなことを繰り返すうちに、ようやく頂上が近く見えてくる。徐々に噴煙が辺りを覆いだし、地面も降灰によって凹凸をなくしている。細かい地形が、見目に分かりづらくなっていた。一行はスコップやワイヤーで都度足下を調べ、警戒しながら進む。
「……敵は見当たらないな。静かすぎて、不気味なくらいだ」
双眼鏡を覗き周囲を警戒するアデリシアは、すでに戦闘態勢に入っていた。しかし、脅威は見つけられない。
「流石に、何もいないとは考えづらいが。どちらにせよ、虎穴に入らずんばだ」
肌を焼く風を外套で防ぎながら、味方全員を視界に納められる一歩後方からロニは辺りを見渡している。
「ハンドサインを決めましょう。何かあったとき、困らないようにね」
マリィアの提案で一行は、簡単なものだが合図を決めることにした。
この暑さの中での登山は、想像以上に体力を削る。だがそれも、師団員がハンター達の荷物を肩代わりしてくれたことで、少しはマシになっていた。その代償に、師団員達は息も絶え絶えだ。
「大丈夫? 私の飲んだので良ければ、水飲むー?」
「え、ああいやいや大丈夫だ!」
「おおう、まだまだ行けるぜ!」
しかし、カーミンの差し出したペットボトルを前に、師団員達は目を泳がせながらも腕を振り上げて見せた。
「やっぱり頼りになるぅー♪」
――その頑張りも偏に、清涼剤あればこそ。
●
見上げれば農灰色の噴煙が、頭上を覆わんばかりに立ち上っている。その根元に見えるのは、目映いオレンジの光だ。
山頂はすり鉢状に広範囲が抉れ、その中心に火山内部へと続く穴が開いているようだ。噴煙はその穴から、次から次へと溢れている。
「やはり、敵は見当たらないな」
「隠れてるのかなぁ」
「敵がいるなら、壊せばいいんだけどねぇ」
アデリシアに続き、ざくろや骸香も、すり鉢の外縁に立って目を凝らす。
視界はかなり悪いが、それでも溶岩兵がいるなら光で分かるはずだ。
「煙の裏側にいるのかも……ちょっと、見てくるね。連絡はこれで」
トランシーバーを手に、カーミンがマテリアルを纏い、気配を消す。平地と違いただでさえ噴煙により視界が悪い中では、隠行は完璧に近いところまで彼女の姿を隠してくれた。
「気を付けなさいね。溶岩兵は、端末かダミーを疑うような弱さだったわ。本体がいないとも限らない」
マリィアは離れていくカーミンを見送ると、先頭に立って斜面を降りていく。
「さて、何が出るか……」
一行はそれに続いて、火口へと足を進める。ロニは火口以外に火山内部へと続く道があるかと辺りを見渡したが、そういったものは見当たらなかった。灰に埋もれているかもしれないが、この広い場所でそれを探すのは現実的ではないだろう。
火口周辺は、途轍もない熱気が渦巻いていた。一般人なら素肌を晒せばそれだけで、酷い火傷を負うだろう。だから師団員には、離れた場所で待機して貰うことにした。
切り取ったような縁から身を乗り出し、火口の内部に視線を落とす。
「……鉱山の入口が消えた理由、分かったわね」
マリィアは悔しそうに、ギリと歯を噛んだ。以前に訪れた内部の構造と照らし合わせれば、一目瞭然だった。
火山内部に充満する、黄金色に輝く溶岩。それが、
「すごく、増えてる……?」
調査のためカメラで撮影しながら、ざくろが呟いた。
もはや、以前歩いた岩場はどこにも見当たらない。全て溶岩の海に沈んでしまっているようだ。
「温泉の異常も、これが原因か。なるほどこれだけ活発になっていれば、地下水への影響もあるのだろうな」
「……そうね」
ロニの言葉に、マリィアは短く答えた。行方不明者を連れ帰るのは不可能だろうと、思考を次へ切り替えながら。
「あ、そこに降りられそう……ざくろ入口がないか調べてくるね」
火口の壁面を指さして、ざくろが振り返る。
「では、ロープを用意しよう」
カーミンのものを含む仲間のロープを集め、それらを束ねると、アデリシアは燃えないように水で濡らした後に杭で地面に固定する。
「うちも行こうかな」
骸香は下を眺めながら、改めてマテリアルを集中させた。
ざくろがマテリアルの噴射で速度を殺しながら、ロープを命綱に火口へと身を躍らせる。骸香は壁に張り付きながら、慎重に降りていった。
「ここで敵に遭遇なんてしたら、最悪よなぁ」
身を乗り出した瞬間に感じた、別次元の熱さ。もはや炙られているのと同じだ。こんなところで戦闘などしようものなら、立ち所に体力を奪われてしまうだろう。
「何か、見つかるといいけど」
「深追いはしないようにな。情報を持って帰らなければ意味がない」
ざくろにマリィアが続き、最後にロニとアデリシアは殿を勤め全体を見渡す。不意の変化、不測の事態に、真っ先に対応できるように。
「うーん、ここには何もなさそうだね」
ざくろは一番に、断崖に降り立った。人が立てる程度の隙間はあるが、入口などは見当たらない。彼が手を振って、仲間に合図を送り。
「何だ、あれは」
それを待ち構えていたかのように、溶岩の放つ光が、一層強く輝いた――
●
「もっと強そうなサイズとかあるでしょ」
あの位置から見えなかった噴煙の裏側には、数体の溶岩兵がうろうろと歩いていた。その姿に、カーミンは思わず呟く。
人型だが、かなり小さい。個体によってはカーミンよりもだ。
カメラを取り出し、溶岩兵へ向けてシャッターを切る。彼女の気配は、全くといっていいほど気付かれていないようだ。かなり近くからの写真も、撮ることが出来た。
「紋章は……見当たらないかー」
鎧に兜、剣に盾と、確かに一通りは帝国兵のような格好をしている。だが、全く精巧ではない。むしろ造形は雑の一言で、辛うじて体裁を取っているという程度だ。
「帝国兵の姿を、真似たいわけじゃないのかな?」
そのとき、腰に下げたトランシーバーが、突如反応を示した。
「――っ!」
その音に、溶岩兵がぐるりと顔をこちらに向ける。
気付かれるまでの短い時間、カーミンはトランシーバーの音に耳を凝らしていた。雑音が酷い。だが、辛うじて聞き取れた。
――逃げろ、と。
その直後、大きな震動が足下を突き上げた。
●
爆風が、圧力を伴って下から叩きつけられる。それは恐らく、巨大なものが動くと共に押し出された空気の塊だ。
「まずい、ざくろさん早く上がって!」
アデリシアが声を張り上げる。彼女の視線の向こう、火山の底で、溶岩が一息に盛り上がった。
「これは、あの時の……!」
「うわっ、噴火よりまずいかも!」
マリィアとざくろは、その光景に見覚えがあった。しかし一つ違うのは――その規模が、段違いだということだ。
凄まじい熱風が吹き荒れる。ロープに染み込ませた水はみるみる蒸発し、表面がゆっくりと焼け始める。
ロニ、アデリシアが急いで登り、マリィアも何とかロープが焼け落ちる前に縁へと這い上がった。
「ちょ、ちょっと待って!」
しかし骸香は、壁歩きの性質も相まって素早く登ることが出来ない。必死に手足を動かすが、その速度は溶岩よりも遅く、
「ごめん、掴むよっ!」
そこに、マテリアルの噴射で飛び上がってきたざくろが骸香の手首を掴む。
「……っ、ご、ごめんありがとう!」
骸香の表情が一瞬強ばるが、緊急事態だと何とか自分を落ち着かせ、
「ざくろさん!」
先に上がった三人が、急いで二人を地上へと引き上げた。
同時に、山全体を揺るがすような震動が襲う。地面が無数にひび割れ、その間から赤い光が次々と顔を出す。そして意思を持ったように溶岩が、ひびから持ち上がった。その一つ一つが、ゆっくりと人型を取っていく。
「あなたたち、下がりなさいっ! 急いで!」
マリィアの声に弾かれて、待機していた師団員達が踵を返す。
「俺が足止めをする。撤退だ」
もはや山頂全体にひび割れが及び、そこかしこから溶岩兵が這い上がってくる。ロニは試しにレクイエムを発動するが、どうやら効果はないらしい。これが歪虚ではない、ということはないはずだが。疑問に思いながらも、ロニは盾を構える。
「そのまま凍り付け……フリージングレイ!」
ざくろが退路に向けて、冷凍光線を放った。青白い冷気が一直線に迸り、敵をひび割れごと、出てくる前に凍り付かせる。
「確か、銃は効いたわよね」
追って、マリィアが先頭に躍り出る。両手に構えた二丁拳銃の矛先は、光線を免れた溶岩兵だ。至近で叩き込まれた弾丸は、溶岩の体を次々に貫き穴を開ける。溶岩兵はたたらを踏みながら崩れ落ちていく。
「近寄らせるものか!」
ふらふらと走り近寄ってくる溶岩兵に、アデリシアの魔法が炸裂した。光の弾は正確に溶岩兵を打ち据え、液状の体を弾き飛ばす。
敵は体の一部を失っても動くようだが、頭を撃ち抜けばそのままバシャリと地面に広がった。
「よし、今っすよ!」
仲間が敵の妨害をしているうちに、骸香が師団員を誘導する。進むのは、冷凍された直線だ。マテリアルを込めて素早く動くと、凍った敵の頭を拳で砕き、道を作っていった。
ひび割れから吹き出す蒸気が、辺りの気温を著しく上昇させていく。早く離れなければただでは済まないだろう。
「ごめん、大丈夫っ?」
遅れてカーミンが合流し、逃走先に集まる溶岩兵に手裏剣を投げつけた。風を切って弧を描く刃が敵を切り裂き、吹き飛んだ手足がバシャリと落ちる。
もはや情報は十分に手に入れただろう。ならば後は、それを確実に持ち帰る。
一行は溶岩兵をいなしながら、全力でその場からの脱出を図った。
「――あれは」
そんな中、殿をつとめるロニは見た。火口から現れる巨大な溶岩の右腕と、同じく人の頭のような物体を。
「カルディスさん、急ぐっすよ!」
「いや、少し待ってくれ」
骸香にそう言うと、ロニは火口に向き直る。
「聞きたいことがある。お前の思想は、目的はなんだ!」
あれが知性を持つ物体か、それを確かめるために問いかける。
『――聞くまでもなかろう!』
そして返ってきたのは、頭に直接響くような奇妙な声だった。尊大に、横柄に、しかし確実な憎悪の籠もった。
『滅ぼすのだ、かつて貴様らがそうしたようにな!』
それきり、何も聞こえなくなった。
一行は急いで山を下りる。やがて麓に辿り着いた頃には、振動も熱も、嘘のように消えていた。
暑い。じわじわと、足下から熱が這い上がってくるようだ。どうやら辺り一帯が、地熱のようなものを発しているらしい。
「それに、微振動もあるみたいだね」
時音 ざくろ(ka1250)が地面に手を当てる。ほんの僅かだが、地面が震えているのを感じた。
振り返れば、遠く山の頂上から空に向かってもうもうと、灰色の噴煙が立ち上っている。
「噴火の兆候……なのかな?」
「寒さなら、どうということもないのですが……」
ざくろの側でアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)が、やや辟易したように呟いた。
「これは、色々と持ってきて正解だったな」
ザイルや杭など、ロニ・カルディス(ka0551)はある程度の道具を揃えていた。流石にリアルブルー製のしっかりしたものは難しかったが、これが役に立つ場面も多いだろう。
「ここって、元々こんなに暑い山なんすか?」
「いや、ちょっと前までは普通だったんだが……」
額を拭いながら骸香(ka6223)が師団員達に尋ねると、彼らは首をかしげている。
「うーん、急に火山活動が活発になったんすかねぇ」
明らかな異変。やはり、自然現象が原因だとは思えなかった。
「まず、件の入口は見ておきたいわね。案内、してもらえる?」
見上げるように微笑むカーミン・S・フィールズ(ka1559)に、師団員達は勢いよく首を縦に振った。
「……これ以上は、難しいわね」
がりがりとタイヤが石を踏む。マリィア・バルデス(ka5848)の跨がる魔導バイクが、悲鳴を上げているようだった。
この辺りで、およそ三合目といったところか。無数の岩石、地面の段差、ひび割れ。傾斜もよりきつくなっていく。登山道もない自然の山を登るには、二輪バイクでは荷が重いようだ。
仕方なく、マリィアは味方に合流するべく後方に向けハンドルを切った。
●
急に塞がったという洞窟の入口の周りには、結晶を破壊しようとした跡が残っていた。細かな結晶がキラキラと、辺り一帯に飛び散っている。
「確かにこれは、頑丈そうね」
「ただの現象と言うには、明らかに不自然だな」
山肌に顔を見せる巨大な結晶の壁。カーミンやロニは軽くそれを叩き、調べている。
「少し、掘ってみましょうか」
アデリシアが、洞窟から少し離れてワイヤーを振るう。風を切った鋼線は岩盤を切り裂き――そして三十センチも掘れば、そこにもまた結晶の壁が現れた。
「うーん、謎が謎を呼ぶね!」
砕けた欠片を拾って入れ物代わりの水筒に入れながら、ざくろは冒険者としての血が騒ぐのを感じていた。
しかし結局ここで分かったことは、結晶がかなり分厚いこと、どれだけ地面の下に埋もれているか想像もつかない、ということだけだった。
「今回の行方不明者は、何かトラブルを抱えていたのかしら。それと、これまでにこの山で事件などは?」
マリィアが、師団員達に尋ねる。
「いんや、そういう話は聞いてねえな。調べちゃいるだろうが、まだ分かってねえんじゃねえか?」
返事に対し、マリィアは不満そうに溜息をつく。
この山がこうなった原因。それが歪虚の可能性が高い。ならば、そこに怨恨などもあるかと思ったが。
「でも、まだ敵はいないみたいだね」
骸香の言うとおり、ここまで登っても聞いていた溶岩兵の姿は見ていない。それどころか鳥や虫の一匹も見ないのは……この暑さを考えれば当然だろう。
洞窟周辺の足跡も調べてみれば、そこには作業員のものと、もういくつか。焼け焦げた楕円の窪みが残っていた。
●
洞窟を後にし、一行は進んでいく。
道程を半分も過ぎれば、植物の一切を見なくなった。山肌は硬い岩へと変わり、立ち上る熱気もより強くなっていく。噴煙はまだ障害にはならないが、肌に吹き付ける強風はどこか埃っぽく、時折砂が混じっているようだ。
道が整備されていない山は、歩くことの出来る場所を探すだけでも一苦労だった。時には切り立つ崖を登ることも必要で、
「じゃあ、行ってくるね!」
ざくろがブーツの底からマテリアルを噴射して、高く飛び上がる。そのまま壁を数度蹴り上まで上がると、ロープの端を投げ下ろした。
それを受け取るのは、崖の中程まで登ったカーミンと骸香だ。
「こっちは大丈夫っす!」
「ん、はいオッケー! じゃ、一人ずつ登ってきてー」
重力のないように壁に張り付く彼女達が、用意してきた杭でロープを固定。登りやすいように道を整えていった。
そんなことを繰り返すうちに、ようやく頂上が近く見えてくる。徐々に噴煙が辺りを覆いだし、地面も降灰によって凹凸をなくしている。細かい地形が、見目に分かりづらくなっていた。一行はスコップやワイヤーで都度足下を調べ、警戒しながら進む。
「……敵は見当たらないな。静かすぎて、不気味なくらいだ」
双眼鏡を覗き周囲を警戒するアデリシアは、すでに戦闘態勢に入っていた。しかし、脅威は見つけられない。
「流石に、何もいないとは考えづらいが。どちらにせよ、虎穴に入らずんばだ」
肌を焼く風を外套で防ぎながら、味方全員を視界に納められる一歩後方からロニは辺りを見渡している。
「ハンドサインを決めましょう。何かあったとき、困らないようにね」
マリィアの提案で一行は、簡単なものだが合図を決めることにした。
この暑さの中での登山は、想像以上に体力を削る。だがそれも、師団員がハンター達の荷物を肩代わりしてくれたことで、少しはマシになっていた。その代償に、師団員達は息も絶え絶えだ。
「大丈夫? 私の飲んだので良ければ、水飲むー?」
「え、ああいやいや大丈夫だ!」
「おおう、まだまだ行けるぜ!」
しかし、カーミンの差し出したペットボトルを前に、師団員達は目を泳がせながらも腕を振り上げて見せた。
「やっぱり頼りになるぅー♪」
――その頑張りも偏に、清涼剤あればこそ。
●
見上げれば農灰色の噴煙が、頭上を覆わんばかりに立ち上っている。その根元に見えるのは、目映いオレンジの光だ。
山頂はすり鉢状に広範囲が抉れ、その中心に火山内部へと続く穴が開いているようだ。噴煙はその穴から、次から次へと溢れている。
「やはり、敵は見当たらないな」
「隠れてるのかなぁ」
「敵がいるなら、壊せばいいんだけどねぇ」
アデリシアに続き、ざくろや骸香も、すり鉢の外縁に立って目を凝らす。
視界はかなり悪いが、それでも溶岩兵がいるなら光で分かるはずだ。
「煙の裏側にいるのかも……ちょっと、見てくるね。連絡はこれで」
トランシーバーを手に、カーミンがマテリアルを纏い、気配を消す。平地と違いただでさえ噴煙により視界が悪い中では、隠行は完璧に近いところまで彼女の姿を隠してくれた。
「気を付けなさいね。溶岩兵は、端末かダミーを疑うような弱さだったわ。本体がいないとも限らない」
マリィアは離れていくカーミンを見送ると、先頭に立って斜面を降りていく。
「さて、何が出るか……」
一行はそれに続いて、火口へと足を進める。ロニは火口以外に火山内部へと続く道があるかと辺りを見渡したが、そういったものは見当たらなかった。灰に埋もれているかもしれないが、この広い場所でそれを探すのは現実的ではないだろう。
火口周辺は、途轍もない熱気が渦巻いていた。一般人なら素肌を晒せばそれだけで、酷い火傷を負うだろう。だから師団員には、離れた場所で待機して貰うことにした。
切り取ったような縁から身を乗り出し、火口の内部に視線を落とす。
「……鉱山の入口が消えた理由、分かったわね」
マリィアは悔しそうに、ギリと歯を噛んだ。以前に訪れた内部の構造と照らし合わせれば、一目瞭然だった。
火山内部に充満する、黄金色に輝く溶岩。それが、
「すごく、増えてる……?」
調査のためカメラで撮影しながら、ざくろが呟いた。
もはや、以前歩いた岩場はどこにも見当たらない。全て溶岩の海に沈んでしまっているようだ。
「温泉の異常も、これが原因か。なるほどこれだけ活発になっていれば、地下水への影響もあるのだろうな」
「……そうね」
ロニの言葉に、マリィアは短く答えた。行方不明者を連れ帰るのは不可能だろうと、思考を次へ切り替えながら。
「あ、そこに降りられそう……ざくろ入口がないか調べてくるね」
火口の壁面を指さして、ざくろが振り返る。
「では、ロープを用意しよう」
カーミンのものを含む仲間のロープを集め、それらを束ねると、アデリシアは燃えないように水で濡らした後に杭で地面に固定する。
「うちも行こうかな」
骸香は下を眺めながら、改めてマテリアルを集中させた。
ざくろがマテリアルの噴射で速度を殺しながら、ロープを命綱に火口へと身を躍らせる。骸香は壁に張り付きながら、慎重に降りていった。
「ここで敵に遭遇なんてしたら、最悪よなぁ」
身を乗り出した瞬間に感じた、別次元の熱さ。もはや炙られているのと同じだ。こんなところで戦闘などしようものなら、立ち所に体力を奪われてしまうだろう。
「何か、見つかるといいけど」
「深追いはしないようにな。情報を持って帰らなければ意味がない」
ざくろにマリィアが続き、最後にロニとアデリシアは殿を勤め全体を見渡す。不意の変化、不測の事態に、真っ先に対応できるように。
「うーん、ここには何もなさそうだね」
ざくろは一番に、断崖に降り立った。人が立てる程度の隙間はあるが、入口などは見当たらない。彼が手を振って、仲間に合図を送り。
「何だ、あれは」
それを待ち構えていたかのように、溶岩の放つ光が、一層強く輝いた――
●
「もっと強そうなサイズとかあるでしょ」
あの位置から見えなかった噴煙の裏側には、数体の溶岩兵がうろうろと歩いていた。その姿に、カーミンは思わず呟く。
人型だが、かなり小さい。個体によってはカーミンよりもだ。
カメラを取り出し、溶岩兵へ向けてシャッターを切る。彼女の気配は、全くといっていいほど気付かれていないようだ。かなり近くからの写真も、撮ることが出来た。
「紋章は……見当たらないかー」
鎧に兜、剣に盾と、確かに一通りは帝国兵のような格好をしている。だが、全く精巧ではない。むしろ造形は雑の一言で、辛うじて体裁を取っているという程度だ。
「帝国兵の姿を、真似たいわけじゃないのかな?」
そのとき、腰に下げたトランシーバーが、突如反応を示した。
「――っ!」
その音に、溶岩兵がぐるりと顔をこちらに向ける。
気付かれるまでの短い時間、カーミンはトランシーバーの音に耳を凝らしていた。雑音が酷い。だが、辛うじて聞き取れた。
――逃げろ、と。
その直後、大きな震動が足下を突き上げた。
●
爆風が、圧力を伴って下から叩きつけられる。それは恐らく、巨大なものが動くと共に押し出された空気の塊だ。
「まずい、ざくろさん早く上がって!」
アデリシアが声を張り上げる。彼女の視線の向こう、火山の底で、溶岩が一息に盛り上がった。
「これは、あの時の……!」
「うわっ、噴火よりまずいかも!」
マリィアとざくろは、その光景に見覚えがあった。しかし一つ違うのは――その規模が、段違いだということだ。
凄まじい熱風が吹き荒れる。ロープに染み込ませた水はみるみる蒸発し、表面がゆっくりと焼け始める。
ロニ、アデリシアが急いで登り、マリィアも何とかロープが焼け落ちる前に縁へと這い上がった。
「ちょ、ちょっと待って!」
しかし骸香は、壁歩きの性質も相まって素早く登ることが出来ない。必死に手足を動かすが、その速度は溶岩よりも遅く、
「ごめん、掴むよっ!」
そこに、マテリアルの噴射で飛び上がってきたざくろが骸香の手首を掴む。
「……っ、ご、ごめんありがとう!」
骸香の表情が一瞬強ばるが、緊急事態だと何とか自分を落ち着かせ、
「ざくろさん!」
先に上がった三人が、急いで二人を地上へと引き上げた。
同時に、山全体を揺るがすような震動が襲う。地面が無数にひび割れ、その間から赤い光が次々と顔を出す。そして意思を持ったように溶岩が、ひびから持ち上がった。その一つ一つが、ゆっくりと人型を取っていく。
「あなたたち、下がりなさいっ! 急いで!」
マリィアの声に弾かれて、待機していた師団員達が踵を返す。
「俺が足止めをする。撤退だ」
もはや山頂全体にひび割れが及び、そこかしこから溶岩兵が這い上がってくる。ロニは試しにレクイエムを発動するが、どうやら効果はないらしい。これが歪虚ではない、ということはないはずだが。疑問に思いながらも、ロニは盾を構える。
「そのまま凍り付け……フリージングレイ!」
ざくろが退路に向けて、冷凍光線を放った。青白い冷気が一直線に迸り、敵をひび割れごと、出てくる前に凍り付かせる。
「確か、銃は効いたわよね」
追って、マリィアが先頭に躍り出る。両手に構えた二丁拳銃の矛先は、光線を免れた溶岩兵だ。至近で叩き込まれた弾丸は、溶岩の体を次々に貫き穴を開ける。溶岩兵はたたらを踏みながら崩れ落ちていく。
「近寄らせるものか!」
ふらふらと走り近寄ってくる溶岩兵に、アデリシアの魔法が炸裂した。光の弾は正確に溶岩兵を打ち据え、液状の体を弾き飛ばす。
敵は体の一部を失っても動くようだが、頭を撃ち抜けばそのままバシャリと地面に広がった。
「よし、今っすよ!」
仲間が敵の妨害をしているうちに、骸香が師団員を誘導する。進むのは、冷凍された直線だ。マテリアルを込めて素早く動くと、凍った敵の頭を拳で砕き、道を作っていった。
ひび割れから吹き出す蒸気が、辺りの気温を著しく上昇させていく。早く離れなければただでは済まないだろう。
「ごめん、大丈夫っ?」
遅れてカーミンが合流し、逃走先に集まる溶岩兵に手裏剣を投げつけた。風を切って弧を描く刃が敵を切り裂き、吹き飛んだ手足がバシャリと落ちる。
もはや情報は十分に手に入れただろう。ならば後は、それを確実に持ち帰る。
一行は溶岩兵をいなしながら、全力でその場からの脱出を図った。
「――あれは」
そんな中、殿をつとめるロニは見た。火口から現れる巨大な溶岩の右腕と、同じく人の頭のような物体を。
「カルディスさん、急ぐっすよ!」
「いや、少し待ってくれ」
骸香にそう言うと、ロニは火口に向き直る。
「聞きたいことがある。お前の思想は、目的はなんだ!」
あれが知性を持つ物体か、それを確かめるために問いかける。
『――聞くまでもなかろう!』
そして返ってきたのは、頭に直接響くような奇妙な声だった。尊大に、横柄に、しかし確実な憎悪の籠もった。
『滅ぼすのだ、かつて貴様らがそうしたようにな!』
それきり、何も聞こえなくなった。
一行は急いで山を下りる。やがて麓に辿り着いた頃には、振動も熱も、嘘のように消えていた。
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相談スレッド マリィア・バルデス(ka5848) 人間(リアルブルー)|24才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/11/26 02:35:08 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/22 22:44:37 |