アマリリス~可変魔導アーマー

マスター:深夜真世

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/11/29 22:00
完成日
2016/12/13 00:19

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「可変型……魔導アーマー?」
 蒸気工業都市フマーレ郊外の旧グリス・オム邸執務室で、アマリリス商会代表の少女、アマリリスことアムアリス・マッケレルが怪訝そうに聞いた。隣に控える執事の青年、バモスが「続けてください」と先を促す。
「はい。簡単に言うと、魔導トラックとして滑らかに長距離移動できる利点と、工事現場などで人型の魔導アーマーに変形して各種作業できるという利点を併せ持った機体です」
 執務席に向き合う男は背を低くして揉み手をしつつ説明する。
「……それ、変形する利点はあるの?」
 アム――アマリリスは偽名であり、さらに本名は家出をして捨てているため仲間内ではこの名前を名乗っている――は、半ば呆れたように鋭く突っ込んだ。
「我らの工房の技術力の高さを示すことができます!」
「いや……現場の実務レベルで、利点はあるの?」
 売り込みに来た男はそう力説するが、アムとしては問題はそこではない、と指摘する。
「現場の作業員たちの士気が上がります。働く男はこういうのが好きです。さらに変形する様子は見る者に与える心理的影響が多大で、きっと働く者たちも意気に感じるでしょう」
 ぐぐぐ、と拳を固めて力説する販売員。アムとしては、はー、とため息をつくしかない。
「……まあ、故障や事故発生時も考慮すれば魔導トラック一台と魔導アーマー一台の方が利便性は高いでしょうね」
 バモス、冷静にアムの胸中を代弁する。
「それとも、二台を保有するより可変型一台の方が大幅に運用コストがかからないのかしら?」
 アムも最大の問題を指摘した。

 アムたちアマリリス商会は、フマーレ山中で新たに開発したセル鉱山を保有している。
 最初は別の開発者が、CAM増産などを背景に需要の高まる鉄鉱石を産出するために手を付けたが、良質な鉄鉱石は採掘できなかった。開発を進言した山師が別の鉱山から持ち込んだ良質な鉄鉱石をここで掘り出すことができたと虚偽の報告をして事業継続をそそのかせたことで事業が破たん。開発者は自殺し、山師は鉱山街の金を盗賊とともに持ち逃げした。
 アマリリス商会は、農村からの密造酒を安く納入することで事業参画していたが、後から割り込んだためほかの業者から煙たがられ鉱山街の警備に追いやられた。付近のゴーレムや吸血鬼歪虚退治をすることで逆に現場の指揮権を掌握。開発者自殺後の家族の夜逃げと、山師と盗賊から持ち逃げされた資金を奪還したことで遺族から事業権を獲得した。
 膨大な赤字があったが、後ろ盾となる闇の密売人「ベンド商会」から増資を受け急場をしのぐ一方、CAMなどの光学レンズに使う「蛍石」とコンクリート利用できる「珪石」の産出に切り替えることで黒字に転換していた。
 魔導トラックと魔導アーマーの運用は、条件次第で考えてもいい状況である。

「コストは……ほぼかかりませんっ!」
 ばん、と執務机に両手を叩きつけて男が言葉を絞り出した。
「ほぼ……かからないとは?」
「こちらでみます。こちらの技師の人件費と、格安の一定金額さえ払っていただければ!」
 慎重なバモスの言葉に、男が挑むように睨んだ。そういう意味ではないのに、とため息のアム。
 それには気付かず男はまくしたてる!
「我々は下請けの部品工場の集まり。もう、大手発注元の言いなりはごめんだ。……技術は、ある。証拠が可変魔導アーマーだ。後は必要なのは、実績」
「なるほど」
 バモス、頷いた。
「どういうこと?」
「自社内でいくら稼働させてもそれは試作品の段階で、商品実績ではありません。形として外部に売ったとし、彼らとはまったく関係ないセル鉱山で動かせば、商品として稼働実績となります。実績があれば周囲からの目も変わるでしょう」
 部品工場から製造販売の道を行くにしても、部品工場に留まるとしても、とバモス。
「大手の発注元に売り込めばいいじゃない」
「奴らはそれまで見下していた我々からの提案なんざ跳ねのけますよ。……跳ねのけといてちゃっかり自分たちだけの手柄にするに決まっている!」
 面倒ね、とため息をつくアム。男は必死に食い下がる。
「ま、あり得る話です。ですがわたくしどもで実際に導入するかは金額と……その、安全性の保障されないもので貴重な人材を失うわけにもいきませんから……」
「わしらが誇りをかけて造ったもんじゃ。わしらも生活が掛かっとる。安全性は折り紙付きじゃ!」
 バモスの言葉に反論する男。口調が変わったのは、慣れない売り込みではなく専門分野の話になったからだ。バモスも分かっている。
「じゃ、見ましょう」

 結局、可変魔導アーマー三台を導入した。
 機体は、まさにトラックに手足の付いたような不格好な外観。トラック時は手足が荷台に収まり箱型になる。トラックエンジン一基、アーマーエンジン一基を搭載し、操縦は段差のある複座式の前後シートに一人ずつが座り前席でトラックとアーマーの両足を、後席でアーマーの両腕と腰の回転などを担当する。それぞれ左右に一人用のシートがあるため、合計六人が搭乗できる。
 ネックは、トラック時は荷台満載状態でほかに大きな荷物が運べない点、アーマー時にはトラックを背負って動かしているのとほぼ同じため重量がかさみ燃費が悪い点がある。

 とにかく、二人一組で三台に搭乗し、セル鉱山付近の木々を伐採し新たな道を造りつついろいろ試してもらえるパイロット、求ム。

リプレイ本文


 セル鉱山街の広場に、手足を折りたたんで荷台に乗せているような魔導トラックと機体の前後にタイヤのついた魔導アーマーがあった。
「あんたらの商会が面白いモン導入したって聞いたが……」
 見上げるジャック・エルギン(ka1522)が一瞬言葉を失った。隣にはアマリリス商会の現地組、モータルとメイスンがいる。
「ぷきっちょなモンだな」
「まあ、リアルブルーにいるお兄ちゃんなら凄く喜びそうかな? 男の浪漫は感じるよ!」
 言葉とは裏腹にいい笑顔をするジャックに、天竜寺 詩(ka0396)がぽんとモータルたちの腰を叩いて「久しぶり!」とあいさつしつつジャックの言葉に理解を示す。
「タイヤがむき出しなのがいかにも可変型って感じだよね? それより早く変形させてみて!」
 クレール・ディンセルフ(ka0586)が懐中時計を取り出して早く早くと急き立てる。
「変形操作はどっちだ?」
 ここで、レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)が鋭く聞く。
「運転席側だ。ドライバーがアクセル踏み込んでんのにパイロットが勝手に変形させちゃアブねぇだろ?」
 一緒に魔導アーマーなどを見ていたフマーレの下請け部品工房技術者が説明した。
「成程な……考えられてるもんだな」
 感心するジャック。
「それはそうと、工房の名前は?」
 メルクーア(ka4005)が素朴な疑問を口にした。
「まだない。こいつを造った工房集団としてはな……ようし、まずはトラックからアーマーに変形させてくれ」
「あいよ、ガリアさん」
 どうやら工房責任者の名前はガリアというらしい。ハンターたちに操作手本を見せるため乗り込んでいる作業員が車窓から親指を立てて了解の合図を出す。
 同時に、がこんどしんと何かが外れ大地の鳴る音が響いた。
「きゃ~っ! 変形はロマンね~!」
「ちょ……みんなもうちょっと下がるんじゃ」
 メルクーアが歓声を上げるが、すぐさまガリアの促す声。近くで見入っていたハンターを後ろに下がらせる。
 そこでモータルが気付いた。
「あ」
 後方に陣取っていたアリア・セリウス(ka6424)に気付いて手を振ったのだ
 アリア、表情はあまり変えずに軽く手を振り返す。
 魔導トラックはその間も、車体底部から足裏を大地に着きぐんぐんとトラック荷台部分から脚を伸ばし背を高くしていた。
「何だよ、あまり速くねーじゃねぇか」
「勢いよく立ち上がって上に何かあった時の悲劇は知っておろう」
 見上げるジャックのヤジに真面目に答えるガリア。
「つまり、もっと速くしようと思えば速くなるってことだね!」
「兵器にするならあまり時間かかってちゃ駄目だし。振動は思ったよりしないね」
 懐中時計とにらみっこしながら計時するクレールに、その様子を覗き込み観察する詩が声を弾ませる。
「荷台から両足がなくなったところで両肩が開いて腕が出るのかー」
「……発想は悪くない」
 メルクーアが変形第二段階にうきうきしている横で、レオーネがぽそり。
「コンパクトに折りたたむことができるってことは、関節の可動域が広いってことだ」
「詩さん、ジャックさん。これ、かなりいいですよね? 正直、車か人型か分からない中途半端なものかと思ってたけど、しっかり身長あるし」
 静かに指摘するレオーネの向こうでは、モータルが馴染みの二人にまくしたてている。
「……モータル君もすごく喜ぶとはね」
「まあ仕組みも分からんCAMに比べりゃ、面白そうじゃあるし可能性もある、か」
 もちろん詩とジャックもまんざらではない。
 変形はもう完了だ。
 トラックの形の色濃く残った魔導アーマーが二本の足で大地に立ち、両腕を構える。
「……二十秒未満、ってとこかな?」
「もうちょっと速くならない?」
 計測結果に視線を落とすクレール。すかさず歌が聞いてみる。
「初動の勢いの部分をなんとかすりゃ、な。人だって『よっこいしょ』だろ?」
「終わったら分解していいかなっ!?」
 ガリアの横からお目めキラキラさせたメルクーアが両こぶしを口元に添えておねだり。「故障したらな」となだめられるが。
「次は降着だ」
 続けてトラックへの変形に。
 こちらもゆっくりとさっきと逆の動き。
「やっぱり変形速度ね……」
「ありだと思う。問題は山積みだけど、オレは気に入ったぜ」
 ため息のクレールに、ポンと肩を乗せるレオーネ。
「運用は微妙らしいけど、何とかこの業者さんたちを応援したくはあるんだよ」
 横でモータルが声を掛け盛り上げている。
 周りのハンターたちもおおむね好意的だ。
「心地いいわね」
 一歩引いてこの様子を眺めていたアリアが呟く。
(……この地に吹く心情と矜持の風は、とても)
 ざっ、と大地を踏みしめる。
「今回は危ない橋はないけれど、できるだけをやりましょう」
 一歩を踏み出し、皆に近寄る。
「……理想、夢、全力。風のように、音色のように……或いは」
「んじゃ、早速組み分けだな」
「動かしていいのっ!? ひゃっほーい! アリアさん、一緒にどう?」
 びくっ、とアリア。ちょうどジャックが仕切りメルクーアが喜んだところ、引き込まれた。
 とても自然に。
「試運転で完成度の確認と問題点の洗い出し。後は……名前だな」
 レオーネの言葉でまずは名前決めが先になったが。



 鉱山街傍の森林に、ドラミングゴリラのマークが施された魔導トラックがきききと横付けした。
「ここが現場か……詩さん、よろしく」
 後部パイロット席から青い瞳とポニーテールの顔が覗く。レオーネだ。
「オッケー。ビルドムーバー01・ドラマー、ビルド・オン!」
 前部トライバー席の詩がハンドルを前部に押し上げるようにすると左右からレバー付き操作盤がスライドして手元に来た。同時にがこん、と振動があって車体が浮き上がるのを感じた。
「……なるほど、ビルドアップしている感じだ」
 重々しい動きで視線が高くなる高揚感に、思わず表情の緩むレオーネ。
「レオーネさん。名前、ごめんね」
 下から詩の声。
 名称は結局、この可変魔導アーマーと開発プロジェクトを「ビルドムーバー」と名付けた。メルクーアの発案だ。詩の提案した「ドラマー」が一号機についていた。
「いいさ。ちょうどいま、『キーウィ』の変形を見させてもらっているし」
 レオーネはそう言って横を向く。
 そちらでは。

「ビルドムーバー03・キーウィ、ビルドアップ異常なし。……アリアさん、どう?」
 三号機の「キーウィ」を駆るメルクーアがハンドルからレバーに持ち手を変えて後部を気にして声を掛けていた。すでに変形は完了。鳥のキーウィの識別マークとともに高くそびえた。
「……その、詩を……口ずさんでも、いい? ゆっくりした詩」
「もっちろん。これから作業だもの楽しくいきましょ~」
 後部パイロット席のアリアは不安そうだったが、明るい声を聞いて安堵のため息ができた。


ひ~よこ、ひよこ 飛べないひよこ
あ~るけ、あるけ 頭を振って


 生まれたてでも頑張る姿を歌い、自らもひよこのけなげさに習う。
「あははっ。ひ~よこ、ひよこ……」
 メルクーアも乗った。
 がっし、がっしとゆっくりリズムよく機体を歩かせる。わざと大股だったり千鳥足だったりするのは、可動域やバランス能力を確認するためだ。
「伐採はこの、魔導鋸「コシュマール」で……」
 アリア、ちゃんと考えていた。回転鋸なので当てるだけでも伐採できる。ばりばり、と手を伸ばし樹木の幹に当てて樹皮を散らす。生木の匂いが立ち込め、やがてどさりと倒れた。
「倒れるぞ~、って呼び掛けてなくてもアーマーに乗ってるから安心だね」
「では、次はこちらの木を……」
「あっ。アリアさん、旋回するのは気を付けてね!」
 いい気分だったメルクーア、突然の旋回に声を大きくした。
 理由は、背中の部分が変形した後もトラックの荷台後部が出っ張って残り、不用意な旋回で周囲の枝に当たるからだ。

 こちら、二号機。
「ジャックさん、宜しくお願いしますっ!」
 前部運転席でクレールが合図とともに、ビルド・オン。
「任せとけ、クレール。んじゃ、行くぜ」
 農耕神の横顔をマーキングしたビルドムーバー02・トールが腕を高々と掲げた。
 そのマニュピレーターに、クレールの持参したダークアックスが握られている。
「腕の振りと腰の回転、だな!」
 ジャック、操縦席ごと腰をひねりつつ、握った右のジョイステックを大きくスライドさせる。
 ぐうん、と腰が回転し……。
 ――どかっ!
「よっしゃ、悪くねぇ!」
 手応えの良さに会心の叫び。
「クレール、次は正面に足を運んでくれ」
「分かりましたっ」
 ジャックのリクエストに応えるべく、右足でアクセルの微調整をしつつ左右のステックレバーをこまめに動かし位置を調整するクレールだった。

 そんなこんなで作業は進む。
「いや~。こっちに来る前を思い出すなぁ。厳しかった家の目を盗んでお友達とゲームセンター行ってさ、大型筐体の体感機をこう……」
 一号機では、詩がもう余裕な感じで運転していた。どうもノスタルジックな気分でもあるようで。
「よし。伐採にはこういうのがちょうどいい」
 パイロット席のレオーネは、魔導鋸槍「ドレーウング」で樹木をばっさり。良好な位置取りと、リーチのある回転鋸で負担が少なく作業が進んだようだ。
「詩さん、そろそろ整地に移ろうかと思う」
「それじゃ、そっちの魔導ドリルで残った根起こしとたたきだね」
 ドリルを使って土から根を掘り起こす。土は返るが、どしどしと巧みなステップワークで詩が踏み固める。

「根っこの掘り起こし? こっちはゴーレムバケット使いましょ」
「心地いいわね」
 メルクーアの提案。アリアが微笑しているのは、バケットの使い心地がいいのもあるが、どうやらメルクーアが全力で依頼に取り組んでいることが感じられるから。アイデア一つが嬉しく楽しい。
 もちろん、アリアもそうは見えないかもしれないが全力だ。
「整地……こちらはこれを使うわ」
「いいアイデア。せっかく出てきちゃったんだもんねぇ」
 切り出した樹木をロープで縛り、アーマーで引く。これをトンボ代わりに使った。

 そして、二号機「トール」。
「二足の安定感は確認、っと。後は……四脚だと、どうなるんだろ?」
 運転席のクレール、補助席から落ちた書類を拾いながら素朴な疑問を口にしていた。
 で、彼女は鍛冶屋の娘。鉄は熱いうちに打て、の染みついた家系だ。
「ジャックさーん、タイミング合わせて「ハイハイ」しません?」
 思い付いたら即実行。ちゃんと打ち合わせするだけ良い娘である。
「お? いいぜ?」
 でもってジャックったら何かあれば頭を突っ込むタイプ。これまで人生そうしてきた。当然、いま止める理由は、ない!
 で、結果。
「せ~のっ!」
「おわっ!」



「はいは~い♪ 所感の交換会兼ねてお弁当にしましょ!」
 クレールが持参したお弁当を持って……。
「魔導アーマーに乗せてなくてよかったですよね?」
 持ってきたのはモータルとメイスンだった。
「ど、どうじゃった?」
 ガリアたち工房技術者もやって来た。
 どうやら小休止どころではなく、ゆっくり休んでじっくり話すという感じになったようで。
「まずはっきりさせておくが、問題は山積みだけどオレは気に入ったぜ」
 レオーネがサンドイッチに手を伸ばしつつぴしゃり。
「あー、面白かった♪」
 詩は無邪気な感想とともにサンドイッチにあ~ん。
「間違いなく面白いんですよね。アムたちはトラックとアーマー別々の方が使い勝手がいいって言い張ってたけど」
 モータルが少ししょんぼりしつつ。
「ま、6台の保管場所が3台分ですむのも地味に利点じゃね?」
「ジャックさんの言い分も分かるんですが、単純に100%稼働時の仕事量は落ちるんですよね~」
 メイスンも少ししょんぼり。
「その通り。冗長性を言うならトラックとアーマーでいいし、ここは長所を伸ばすのがいいと思うぜ」
 レオーネの意見に、アリアが思わず身を乗り出す。本気度の伝わる言い分である。
「そう。あくまでアーマーじゃというのに変形の言葉に引っ張られてあの嬢ちゃんときたら……」
 ガリアが不満をぶちまけた。
「あー。つまり、魔導トラックに使えるんじゃなく、魔導トラックのように安定した高速走行で移動ができる魔導アーマーということねー」
 魔導トラックによく乗るメルクーアが指摘する。
「誤解の元は複座式にもありそうだな……。単座化が必要じゃね?」
 ジャック、サンドイッチを食べて汚れた指先を舐めながら提案。
「それと、両形態でのエンジンの統一」
「技術的な事は解らないけど……できないの?」
 レオーネの言葉に、思わずガリアの方を向く詩。
「開発はまず変形ありきじゃった。手っ取り早いのは二つの機構をできるだけそのままに一つにすること。その段階は終わったといえるから、今後の課題として皆で意識を共有している部分じゃ」
「四脚ができなかったんですけど、何とかなります?」
 答えたガリアに畳み掛けたのは、クレール。
「自分でやったら分かるじゃろうが、歩行となると結構難しい。もし四脚がいいなら最初から四脚歩行で開発せんとな」
 つまり、汎用性の高さは専門性の高さには敵わないということだ。汎用性を伸ばすというレオーネの意見の根差すところでもある。
「じゃ、火器を運用するなら安定性の関係ないものじゃないとね!」
 クレールのこだわっていたのはこの部分だった。
「ま、近接格闘でもいいしな」
「それより荷台部分。出っ張っているからバランスが悪いし旋回中にぶつけそう……」
 個人的な期待を口にするジャックに、メルクーアが別の問題点を指摘した。
「いっそアーマー時はドーザーブレードとして整地に使えればねー」
「分離か……いい考えだ」
 彼女の呟きにレオーネも同調する。
「いや、こだわっておるのは完全変形。ビルド・オフもやってみたじゃろ。分離するとあれが難しい」
 ガリアの説明になるほど、と一同。
「初心者の意見だけど……」
 ここで、アリア。
「座席ではなく私達の足で踏んで操作できるペダルを望むわ」
「単座になれば操作体系も練り直しじゃの」
 ふむ、とガリア。暗い。
 この様子に一同、テンションが下がる。
「まず工房仲間を増やした方がいいんじゃないかって、アムは言ってたよ」
 ここでモータルの言葉。
「そう! 名称案で出ておった『ギボス・ムーン』。あれをわしらにくれんか?」
 ガリア、一転元気よく。
「『十三夜』じゃろう? わしらは零細工房の集まり。これから充実するよう、この名前を工房集団の名前にしたい。満月に向かって満ち満ちるように、力を合わせるシンボルとしてちょうどええ!」
 ビルドムーバー開発を手掛ける製作工房集団「ギボス・ムーン」の誕生である。
「よし。参加工房が足らずに複座式の二基エンジンで造ったが、もっと零細工房を集めて完成度を高めてみようか」
 ガリア、やる気だ。

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MVP一覧

  • 魔導アーマー共同開発者
    レオーネ・インヴェトーレka1441

重体一覧

参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 明日も元気に!
    クレール・ディンセルフ(ka0586
    人間(紅)|23才|女性|機導師
  • 魔導アーマー共同開発者
    レオーネ・インヴェトーレ(ka1441
    人間(紅)|15才|男性|機導師
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • Pクレープ店員
    メルクーア(ka4005
    ドワーフ|10才|女性|機導師
  • 紅の月を慈しむ乙女
    アリア・セリウス(ka6424
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/11/25 13:30:40
アイコン 相談卓だよ
天竜寺 詩(ka0396
人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/11/28 23:24:41