ゲスト
(ka0000)
【CF】聖夜の祝福を一抱え
マスター:佐倉眸
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/12/15 09:00
- 完成日
- 2016/12/22 01:31
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
一仕事終えてリゼリオのあるオフィスへ向かったハンターに一杯のスープが差し出された。
見れば近くのテントで、赤い帽子を被った少年少女が煉瓦を組んだかまどで寸胴を煮ている。
白い湯気が昇り食欲をそそる芳ばしい匂いが広がってきた。
「寒い中お疲れ様です」
彼等はハンター達の労いに集まったボランティアだと言う。
コボルトに畑を荒らされたり、ゴブリンや雑魔に襲われたり。
ハンターに助けられたからと、指の悴む寒い中でも頑張っているハンター達の助けになりたいと、空のカップを受け取りながら少女は微笑む。
赤い帽子は聖輝節のこの季節だけ。
彼等には帽子の形が上手く伝わらなかったのか、赤いニット帽や、キャップの姿も少なからず。
眼前の少女もまた、赤いベレー帽を斜めに被っていた。
●
モテないのが辛い。モテる奴らを恨むのも疲れた。
どうせボクは一生独りなんだ。
暗く退屈な人生を一人きりで過ごしていくんだ。
そう思って凹んでいた少年に、彼と同じ落胆を経て新たな思想に目覚めた男が声を掛けた。
その思想こそ、自由の鐘。
少年は拳を突き上げて言い放つ。
「恋人優遇を許すな! 愛の再分配を!」
さて。
こうして自由の鐘に加わった少年だが、彼はまだ全く無力だった。
親しくなった団員に鍛えられながら街を走り回る彼等の後を転がるように付いていくのが精一杯。
仕方ないから鍛えてやる、と誰かが行った。
他にも何人か呼ぶから、目印になる格好をして来いと言う。
少年は目印の赤いベレー帽を被って、待ち合わせ場所で同じ装いの団員を待っていた。
●
その日も、ボランティアの少年少女達は集まっていた。
ベレー帽を斜めに被った少女がふと目を遣ると、所在なく佇む赤いベレー帽の少年を見付けた。
「ねえ、そんなところでどうしたの? 早く来て、手伝ってよ。今日は南瓜のスープよ」
少女は無造作に少年の手を掴むと、引き摺る様にテントへ連れて行った。
人違いだと少年のぼそぼそと籠もった声は聞き流され、少女の指はしなやかに、互いのベレー帽を指す。
「ほら、君も今日はちゃんとお揃いの赤い帽子、やる気がある証拠じゃない……君も大変なことがあったんだと思うよ。でも、暗い顔で落ち込み続けるより、私たちと一緒にいようよ。ね?」
少年はたじろいで周囲に視線を泳がせた。
少年の困惑など知らず、鍋から装われたスープが深爪気味の丸い手に握らされた。
「味見してみて。それ、今日ハンターさん達に配るんだから」
一口目は熱くて、思わず肩が跳ねた。
冷ましてゆっくり啜ってから、おいしいです、と答えると少女は嬉しそうに笑った。
さて。
こうして若いボランティア達の集団に巻き込まれてしまった少年は、次の活動の時には少女に恋をしていた。
そして、その一連の諸諸は、集まっていた団員達に目撃され、少年の周囲はじりじりと取り囲まれていく。
●
告白するにはやはり花だろうか。
3度目の活動の前に花屋に寄る。
軒先にはポインセチアの鉢が置かれていた。
一抱え程の大きな鉢。
少し重いがこれだけの大きさなら、思いもきっと伝わるだろう。鉢なら切り花と違って枯れたりしない。
聖輝節にはよく見かけるから告白の贈り物には在り来たりかも知れないが、赤い葉はお揃いだと言ってくれたベレー帽と同じ色だ。
少年はいくつかの鉢を見比べて、大分時間が経ってから1つ選ぶと、店員にこれを下さいと言う。
緊張に引き攣った声で、好きな人への贈り物だと添えながら。
聖輝節らしく鉢を薄紙で包み、赤と緑のリボンを掛けて、リースやソリを摸した装飾のピックが揺れる。
少年の言葉を曲解したのか、抑も告白のためとは思い至らなかったのか。
程よく華やかに飾られたポインセチアの鉢を抱えて少年はテントへと向かう。
少年がテントに付く直前、街路樹や民家の影から飛び出してくる影。
彼等は一時は共に活動した少年のカップル成立阻止のために動いている。
となれば。その腕に抱えられた物は問題だ。
一見するとテントに飾る為の鉢を買ってきたような成りだが、少年と同じ発想を持つ彼等に、それは正しく愛の贈り物であった。
影に気付いた少年は、弾かれたように逃げ出した。
一仕事終えてリゼリオのあるオフィスへ向かったハンターに一杯のスープが差し出された。
見れば近くのテントで、赤い帽子を被った少年少女が煉瓦を組んだかまどで寸胴を煮ている。
白い湯気が昇り食欲をそそる芳ばしい匂いが広がってきた。
「寒い中お疲れ様です」
彼等はハンター達の労いに集まったボランティアだと言う。
コボルトに畑を荒らされたり、ゴブリンや雑魔に襲われたり。
ハンターに助けられたからと、指の悴む寒い中でも頑張っているハンター達の助けになりたいと、空のカップを受け取りながら少女は微笑む。
赤い帽子は聖輝節のこの季節だけ。
彼等には帽子の形が上手く伝わらなかったのか、赤いニット帽や、キャップの姿も少なからず。
眼前の少女もまた、赤いベレー帽を斜めに被っていた。
●
モテないのが辛い。モテる奴らを恨むのも疲れた。
どうせボクは一生独りなんだ。
暗く退屈な人生を一人きりで過ごしていくんだ。
そう思って凹んでいた少年に、彼と同じ落胆を経て新たな思想に目覚めた男が声を掛けた。
その思想こそ、自由の鐘。
少年は拳を突き上げて言い放つ。
「恋人優遇を許すな! 愛の再分配を!」
さて。
こうして自由の鐘に加わった少年だが、彼はまだ全く無力だった。
親しくなった団員に鍛えられながら街を走り回る彼等の後を転がるように付いていくのが精一杯。
仕方ないから鍛えてやる、と誰かが行った。
他にも何人か呼ぶから、目印になる格好をして来いと言う。
少年は目印の赤いベレー帽を被って、待ち合わせ場所で同じ装いの団員を待っていた。
●
その日も、ボランティアの少年少女達は集まっていた。
ベレー帽を斜めに被った少女がふと目を遣ると、所在なく佇む赤いベレー帽の少年を見付けた。
「ねえ、そんなところでどうしたの? 早く来て、手伝ってよ。今日は南瓜のスープよ」
少女は無造作に少年の手を掴むと、引き摺る様にテントへ連れて行った。
人違いだと少年のぼそぼそと籠もった声は聞き流され、少女の指はしなやかに、互いのベレー帽を指す。
「ほら、君も今日はちゃんとお揃いの赤い帽子、やる気がある証拠じゃない……君も大変なことがあったんだと思うよ。でも、暗い顔で落ち込み続けるより、私たちと一緒にいようよ。ね?」
少年はたじろいで周囲に視線を泳がせた。
少年の困惑など知らず、鍋から装われたスープが深爪気味の丸い手に握らされた。
「味見してみて。それ、今日ハンターさん達に配るんだから」
一口目は熱くて、思わず肩が跳ねた。
冷ましてゆっくり啜ってから、おいしいです、と答えると少女は嬉しそうに笑った。
さて。
こうして若いボランティア達の集団に巻き込まれてしまった少年は、次の活動の時には少女に恋をしていた。
そして、その一連の諸諸は、集まっていた団員達に目撃され、少年の周囲はじりじりと取り囲まれていく。
●
告白するにはやはり花だろうか。
3度目の活動の前に花屋に寄る。
軒先にはポインセチアの鉢が置かれていた。
一抱え程の大きな鉢。
少し重いがこれだけの大きさなら、思いもきっと伝わるだろう。鉢なら切り花と違って枯れたりしない。
聖輝節にはよく見かけるから告白の贈り物には在り来たりかも知れないが、赤い葉はお揃いだと言ってくれたベレー帽と同じ色だ。
少年はいくつかの鉢を見比べて、大分時間が経ってから1つ選ぶと、店員にこれを下さいと言う。
緊張に引き攣った声で、好きな人への贈り物だと添えながら。
聖輝節らしく鉢を薄紙で包み、赤と緑のリボンを掛けて、リースやソリを摸した装飾のピックが揺れる。
少年の言葉を曲解したのか、抑も告白のためとは思い至らなかったのか。
程よく華やかに飾られたポインセチアの鉢を抱えて少年はテントへと向かう。
少年がテントに付く直前、街路樹や民家の影から飛び出してくる影。
彼等は一時は共に活動した少年のカップル成立阻止のために動いている。
となれば。その腕に抱えられた物は問題だ。
一見するとテントに飾る為の鉢を買ってきたような成りだが、少年と同じ発想を持つ彼等に、それは正しく愛の贈り物であった。
影に気付いた少年は、弾かれたように逃げ出した。
リプレイ本文
●
華やかに飾られた通り、星を頂く樅の枝に釣られたオーナメントが冷たい風に揺れると、磨かれたボールは陽光をきらきらと映し、鮮やかな赤と緑のリボンが誘う様に靡いた。
賑わいに顔を背けるように受け取ったスープで指を温め、ドゥルセ・H・ルシエンテス(ka6473)は落ち付かないと呟いて肩を竦めた。
慣れ親しんだものと似て、どこか違う。例えばスープを渡した少女の帽子の格好だとか。
「世の中が浮かれまくってるってのに、ボランティアたぁ頭が下がるね」
カップに唇を寄せる。白く温かな湯気を吐息で散らすと広がったスパイスの芳ばしい香りが食欲をそそる。
美味いなと言って労うと、少女は嬉しそうに微笑んだ。
聖輝節の賑わいの中ユイ・エーテリウム(ka3102)と金寺・緋色(ka6369)は手を繋いで歩いていく。
マーケットに興味を惹かれては走ったり、立ち止まって眺めながら、白い息を弾ませて街を、買い物を楽しんでいた。
どこも賑やかで楽しそう、見回す2人の隣を親しげな男女が行き過ぎていく。
恋人がいないのは少し寂しいと、目を見合わせてくすくすと笑い合う。
「……でも、ユイさんと買い物は……って、なんでしょうか」
「あっちでは大勢で追いかけっこしてる!」
友人との買い物も楽しいと和む表情が強張る。
黒い視線を険しく周囲を見回すと、耳を澄ませたユイが楽しそうと笑いながら足音の方を指す。
2人の眼前を少年が転がるように走って横切り、僅かな間を置いて数人がそれを追いかけていく。
鬼ごっこ、とユイははしゃぐが、金寺にはそうは思えなかった。
「ユイさん、アレはきっと事件ですってば!」
「えっ? 違うの?」
行きましょうと金寺に手を引かれ、ユイも走り出すと2人は少年と彼を追う集団を追った。
その頃、婆(ka6451)も年の瀬の支度を積んだ荷車を水牛に引かせ、街を歩いていた。
「おう、おう、街もにぎわっておるのう……のう、べこや」
ゆっくりと歩く水牛の背を撫でて、眦の皺を濃く目を細める。
この時期の空気は、いつでも、どこでも変わらぬものだと、しみじみと頷くと、忙しない足音を聞いた。
かっと瞠った黒い眼が捉えたのは、飾り付けたポインセチアの鉢を抱えた少年とそれを追う集団。
そして、少年を助けんとするユイと金寺の姿だった。
ドゥルセが寛いでいるともう2人、ハンターが通り掛かった。
親しげに腕を組んだトリス・ラートリー(ka0813)とアルベルト・ラートリー(ka2135)。
2人がスープを受け取ったとき、ボランティアの1人が怪訝そうに指差した。
それを見た少女の手が震えた。
「どうされたのでしょうか?」
少女は首を傾げるともう一度通りを見る。
ボランティアの1人が追われていたみたい。そう、心配そうに答えて溜息を零した。
追っていったのは自由の鐘のメンバーらしいと。
気を惹いてみましょうと、トリスがアルベルトの腕に腕を絡めた。
不安そうにする少女を他所に、アルベルトは静かに微笑んで頷き、トリスの細い腰に腕を回す。顎を引いて視線を絡めると、トリスはカップを返して腕をアルベルトの背に回して抱擁に応える。
「ん……大丈夫ですよ。ボクには頼りになる人が、いつも傍にいてくれるもの、ねえ?」
その本人へ囁く様に問いかけると、勿論、甘い声が返された。
手を取り合って、自由の鐘を誘いに向かった2人に続き、ドゥルセも籠手に拳を打って小気味良い音を立てる。
彼を助けてくれるのかと問う少女に、口角を上げてみせる。
「オレみてえな素人は、ヴォイド退治より人助けのが向いてんだ」
素人には見えない。と、少女は笑ってドゥルセを見送った。
●
トリスとアルベルトが追い付いた自由の鐘の最後尾、アルベルトは彼等にも聞こえるように声を上げてトリスを呼ぶ。
「トリス。寒いからもっと近くに寄って」
数人がその声に足を止めて振り返り、構える。
「はい! アル……温かいですか?」
その視線を一瞥すると、トリスはアルベルトに手を伸ばした。
小さな手がアルベルトの手に、顔に触れる。冷えた指を包む様に、滑らかな頬を撫でる様に。
大粒な緑の瞳が輝いて、人前だと恥ずかしいですと頬を赤らめると、その頬を隠すように柔らかなマフラーが巻かれた。十分に余る端はアルベルトの首にも掛かり、屈んで首の高さを合わせるとマフラーが撓まぬ様に、触れ合う程近くに顔を寄せた。
「ほら、こうすれば寒くないだろう」
トリスの小柄な身体を抱き込むように、耳許で囁きながら集まってくる敵へ視線を向けた。
その光景に、更に足を止める者が増える。少年を追い続けていた者達も、こっちだと声を掛け合って見つめ合う2人の服を脱がそうと手を伸ばす。
始めに手が掛かったのは2人を結ぶマフラー。
咄嗟に反撃に転じるトリスはマフラーを撓め、辺りの石を投じて接近を妨げる。
しかし、数人掛かりで迫る敵の手数には足りず、姿勢を崩した隙にマフラーが解かれ、距離を置いてマテリアルの攻撃が放たれた。その攻撃にコートの身頃がはだけ、嗾けられた猿にブラウスのボタンを引っ掻かれると、払い除けて悲鳴を上げる。
それでも尚、得物の無い状況で、脱がされそうになる度にボタンを、ファスナーを押さえながら、彼等を許すまいとトリスは毅然と反撃を続けた。
婆は水牛を繋ぐと、ぐっと拳に力を込めてマテリアルを昂ぶらせる。
追われる少年の抱える鉢が、婆には希少で美しい花に見えた。
きっと、彼は身を粉にして稼いだ金で買ったそれを売り飛ばさんとする暴漢に追われている。
勘違いを正す言葉も無く、婆は歯を噛み締めて自由の鐘に向かっていった。
「そこな若人よ。……ここは、婆に任せて逃げるのじゃ」
声を張り、駆けつけながら少年の背後、数歩に迫った男へ一発。年季の入った拳を腹に食らうと、受け留めきれずに集団の中へ飛んでいった。
「加勢するぜ」
ドゥルセも、構えてその集団を見回した。
「服を脱がすんだってなあ? 上等じゃねえか。やれるもんならやってみな」
好戦的に笑う。
挑発に乗った1人が飛び掛かってくるのをいなし、少年に行けと視線を送る。
「ここからは私たちが助けてあげます!」
息の上がってきた少年に金寺が隣から声を掛ける。
反対隣はユイが守り、少年のペースで走りながら、周囲や後方を見回している。
「ひーちゃん! あっち」
指差すのは人の行き交う大通り。
「策があるんですね?」
金寺が尋ねると、ユイは確りと頷いた。
イベントで溢れる人混みに追っ手を誘い込んで撹乱する。そして、少年を隠しながら安全な場所まで移動する。
ユイの策を聞きながら、金寺は少年を隠せそうな場所を探す。細い路地が良いだろう。大通りの中程まで視線が辿り、細い路地を見付けた。
追っ手を仲間のハンター達が押さえている内に、そこまで行って隠れよう。
視線を合わせ頷くと、少年を先に走らせて、背を守るように2人も続く。
おい、と2人を呼び止める太い声がした。剣呑な目が2人を見下ろす。
知らぬ振りを貫こうとするが、さらにもう1人近付いて来て挟まれる。
「ボクとひーちゃんに何の用?」
ユイが金寺を庇う様に腕を伸ばして男達を見上げた。
顰めた顔がユイを見下ろす。君たちも、俺たちの敵だろうと言う様に。
ブレザージャケットの胸ぐらを掴まれてもユイは退かずに男を睨み、後ろ手に短杖を構える。
集まってきた男の1人が不意を突いて金森の服を掴んだ。
「ちょっ……わ、私は恋愛経験ゼロなんですっ!」
「ボクのひーちゃんに何やってるの!」
驚いて声を上げた金寺の拳が男の腹を打ち、その手を引き剥がしたユイの短杖の切っ先が喉を狙う。
諸手を上げて後退る男が仲間に囁く事には、リア充じゃ無いなら敵では無いとのことだが、彼の頭を叩いた別の男が、怪しげな構えで服を狙いながら少年の行方を問う。
リア充では無かろうと、リア充を目指すあのガキを庇っているなら、この2人も敵だろう?
男は笑うと、行き交う人々を避けながらその手に抗う金寺のブレザーの裾を捲り上げ、器用にボタンを弾いて袖を脱がせながら絡め取る。
「やめなさーい!」
その手首に短杖が打ち付けられると、金寺は脱がされ掛けたブレザーを抱えてその場を抜け出す。
恥じらいに頬を染め、袖を通してブレザーを着直すと、許さないとその顔面に拳を向ける。
昏倒の寸前まで至った衝撃にふらつく男を残し、2人の姿は人混みに紛れた。
集ってきた集団を打ち倒し、乱れた装いを整える。
開けたシャツのボタンを留め、紐が解かれずり下がった袴を付け直す。アーマーを被り脇の留め具を締め、外された籠手の紐を結び直す。
折り重なって倒れる男たち、まだ辛うじて息の有る彼等を見下ろし、鮮やかな橙の髪を掻き上げて肩を聳やかす。
「自由なカネだか何だか知らねえが、クソくだらねえ。他人様の幸せを祝えねえヤツが馬鹿言いやがって」
衣装も防具も元通りに着けると、ドゥルセは少年を探して通りを見回し合流に向かう。
何が、愛の再分配だ。
漏れ聞こえた彼等の言葉を吐き捨てるように呟いて走り出す。
どさりと人が人の上に落ちる音。婆も辺りの敵を捉えては投げ、投げては次へと暴れ回り、周囲に山を気付いていく。
尚も果敢に向かってきた最後の男を、振り回す腕が突き飛ばし蹌踉めくところを捕まえて投げ、山の頂上に積み重ねる。
「婆はのう……お前さんらのような暴漢が、許せんのじゃ」
唸るような声で言い放つも、それに応える余力のある者は無く。まだいるのか、もういないのかと息を巻いて見回すと荷車を引いて近付いてくる蹄の音を聞く。
途端、婆の表情が穏やかに、晴れやかに変わる。
「べこや、待たせてしまったのう」
飼い主の不在を寂しがったらしい水牛の背を撫でると、婆は梅を染めた長着の身頃を整え、帯を締め直す。白熊の革鎧を着け、冷たい風に煽られながらポンチョを被る。
支度は出来た。
べこ、と呼べば婆の歩みに合わせるように水牛も街を歩く。
暴れ足りない気もするが。と、振り返り、肩を回し、首を鳴らし。
少年の走って行った方を眺めてにんまりと微笑んだ。
「逃げ切るんじゃよ少年。その花でおっかさんを食べさせてやるんじゃ」
ゆっくりと頷いて、その場を離れる。後は他のハンター達に任せよう、年を越すには色色と入り用だから。
水牛を連れ、婆は街へ戻っていく。時折擦れ違うそれらしい残党を投げ飛ばしながら。
「お、いたなボウズ」
金寺とユイの走った方を途中まで辿り、人混みを抜けたドゥルセは少年を見付けて声を掛けた。
店と店の間で鉢を抱えて蹲り、上がった息に顔を赤くしながら、追っ手に怯えて震えている。
情けないツラだな。ドゥルセが少年の隣で壁に凭れ、青い瞳を伏せ気味に見下ろす。
少年は唇を噛んで項垂れた。
「ユイさん、こちらです。……もう大丈夫ですよ」
「えっ、行き過ぎちゃってた……撒いてきたよ」
小さな足音が反対側から2つ。追っ手を撹乱しながら遠回りしてきたらしいユイと金寺だ顔を覗かせる。
「あの……どうして追われていたんですか?」
その鉢の所為かと金寺が尋ねると、少年は掠れた声で事情を話した。
金寺が少年を案じるような目を由比に向けると、ユイも頷いて少年を見る。
背中を押すような温かな眼差しが向けられた。
「おいボウズ。お前はどうする?」
こんなことになったのだから、痛い思いをしたくないなら逃げても構わない。
ドゥルセの視線が外へ、残っていたらしい自由の鐘を見据える。
「あいつらを更生するのはオレの仕事だ。てめえの出る幕じゃねえ。とっとと行きやがれ。お前の勝負はこれからだろ?」
頑張れよ、そう囁く様に言い残し路地を出て行く。
●
2人に守られるように少年は最初の場所に戻ってきた。
服を直したトリスとアルベルトも待っていたようで、少年の姿を見ると安堵の息を吐いた。
「ねえ。今後のことだけど、一時的にでも匿ってくれるところってありますか? ほとぼりをさまさないと」
彼等はまだ追ってくるだろうから。少年を気に掛けるトリスの言葉に表情が強張り項垂れる。
親族の人、難しいならオフィスでしょうかと首を傾がせ考え込んだ。
「私も、それが安全だと思います」
匿って貰うようにお願いしてみませんかと金寺がユイに尋ねる。
ユイも少年を見ると、危ないんだよねと頷いて金寺に同意を示した。
2人はボランティアのテントに視線を移す。
少年が思いを寄せていた少女はまだいるのだろうか。
揃いの帽子と聞いていたがと、彼等の頭に赤いベレー帽を探した。
あ。と、少年が小さな声を上げた。
その目が見詰める先、少女はハンターらしき青年にスープを差し出し、白い息を弾ませている。
青年が町の方へ向かっていくのを手を振って見送り、少年とハンター達に気付くと駆け寄ってきた。
トリスはアルベルトの腕を引くと、2人の視界を妨げない程度に、ユイと金寺も、頑張ってと少年の背中を押してその場を離れる。
少女は少年の無事と事情を尋ねながらも、安堵に頬を緩めている。
ボランティアのメンバーにも伝えに行こうと少年を促すが、その手を少年が掴んだ。
「待って」
「なあに?」
「……あ、あの日から、ずっと君が好きでした」
ポインセチアの鉢を押し付ける様に差し出すと、少女は戸惑いそれを手に取る。
「ありがとう、でも、ごめんなさい」
私にも、ずっと好きな人がいるの。
落ち込む少年を励まして、けれどここでは立ち止まれない。
追っ手について少女に伝えて警戒を促し、近くのハンターオフィスに少年の庇護を求めに走り。
やがて事態が落ち付いて、騒動の鎮まる頃には少年の傷も癒えるだろうか。
幼い恋と勇気が、淡い色の思い出に変わることを祈りながら。
華やかに飾られた通り、星を頂く樅の枝に釣られたオーナメントが冷たい風に揺れると、磨かれたボールは陽光をきらきらと映し、鮮やかな赤と緑のリボンが誘う様に靡いた。
賑わいに顔を背けるように受け取ったスープで指を温め、ドゥルセ・H・ルシエンテス(ka6473)は落ち付かないと呟いて肩を竦めた。
慣れ親しんだものと似て、どこか違う。例えばスープを渡した少女の帽子の格好だとか。
「世の中が浮かれまくってるってのに、ボランティアたぁ頭が下がるね」
カップに唇を寄せる。白く温かな湯気を吐息で散らすと広がったスパイスの芳ばしい香りが食欲をそそる。
美味いなと言って労うと、少女は嬉しそうに微笑んだ。
聖輝節の賑わいの中ユイ・エーテリウム(ka3102)と金寺・緋色(ka6369)は手を繋いで歩いていく。
マーケットに興味を惹かれては走ったり、立ち止まって眺めながら、白い息を弾ませて街を、買い物を楽しんでいた。
どこも賑やかで楽しそう、見回す2人の隣を親しげな男女が行き過ぎていく。
恋人がいないのは少し寂しいと、目を見合わせてくすくすと笑い合う。
「……でも、ユイさんと買い物は……って、なんでしょうか」
「あっちでは大勢で追いかけっこしてる!」
友人との買い物も楽しいと和む表情が強張る。
黒い視線を険しく周囲を見回すと、耳を澄ませたユイが楽しそうと笑いながら足音の方を指す。
2人の眼前を少年が転がるように走って横切り、僅かな間を置いて数人がそれを追いかけていく。
鬼ごっこ、とユイははしゃぐが、金寺にはそうは思えなかった。
「ユイさん、アレはきっと事件ですってば!」
「えっ? 違うの?」
行きましょうと金寺に手を引かれ、ユイも走り出すと2人は少年と彼を追う集団を追った。
その頃、婆(ka6451)も年の瀬の支度を積んだ荷車を水牛に引かせ、街を歩いていた。
「おう、おう、街もにぎわっておるのう……のう、べこや」
ゆっくりと歩く水牛の背を撫でて、眦の皺を濃く目を細める。
この時期の空気は、いつでも、どこでも変わらぬものだと、しみじみと頷くと、忙しない足音を聞いた。
かっと瞠った黒い眼が捉えたのは、飾り付けたポインセチアの鉢を抱えた少年とそれを追う集団。
そして、少年を助けんとするユイと金寺の姿だった。
ドゥルセが寛いでいるともう2人、ハンターが通り掛かった。
親しげに腕を組んだトリス・ラートリー(ka0813)とアルベルト・ラートリー(ka2135)。
2人がスープを受け取ったとき、ボランティアの1人が怪訝そうに指差した。
それを見た少女の手が震えた。
「どうされたのでしょうか?」
少女は首を傾げるともう一度通りを見る。
ボランティアの1人が追われていたみたい。そう、心配そうに答えて溜息を零した。
追っていったのは自由の鐘のメンバーらしいと。
気を惹いてみましょうと、トリスがアルベルトの腕に腕を絡めた。
不安そうにする少女を他所に、アルベルトは静かに微笑んで頷き、トリスの細い腰に腕を回す。顎を引いて視線を絡めると、トリスはカップを返して腕をアルベルトの背に回して抱擁に応える。
「ん……大丈夫ですよ。ボクには頼りになる人が、いつも傍にいてくれるもの、ねえ?」
その本人へ囁く様に問いかけると、勿論、甘い声が返された。
手を取り合って、自由の鐘を誘いに向かった2人に続き、ドゥルセも籠手に拳を打って小気味良い音を立てる。
彼を助けてくれるのかと問う少女に、口角を上げてみせる。
「オレみてえな素人は、ヴォイド退治より人助けのが向いてんだ」
素人には見えない。と、少女は笑ってドゥルセを見送った。
●
トリスとアルベルトが追い付いた自由の鐘の最後尾、アルベルトは彼等にも聞こえるように声を上げてトリスを呼ぶ。
「トリス。寒いからもっと近くに寄って」
数人がその声に足を止めて振り返り、構える。
「はい! アル……温かいですか?」
その視線を一瞥すると、トリスはアルベルトに手を伸ばした。
小さな手がアルベルトの手に、顔に触れる。冷えた指を包む様に、滑らかな頬を撫でる様に。
大粒な緑の瞳が輝いて、人前だと恥ずかしいですと頬を赤らめると、その頬を隠すように柔らかなマフラーが巻かれた。十分に余る端はアルベルトの首にも掛かり、屈んで首の高さを合わせるとマフラーが撓まぬ様に、触れ合う程近くに顔を寄せた。
「ほら、こうすれば寒くないだろう」
トリスの小柄な身体を抱き込むように、耳許で囁きながら集まってくる敵へ視線を向けた。
その光景に、更に足を止める者が増える。少年を追い続けていた者達も、こっちだと声を掛け合って見つめ合う2人の服を脱がそうと手を伸ばす。
始めに手が掛かったのは2人を結ぶマフラー。
咄嗟に反撃に転じるトリスはマフラーを撓め、辺りの石を投じて接近を妨げる。
しかし、数人掛かりで迫る敵の手数には足りず、姿勢を崩した隙にマフラーが解かれ、距離を置いてマテリアルの攻撃が放たれた。その攻撃にコートの身頃がはだけ、嗾けられた猿にブラウスのボタンを引っ掻かれると、払い除けて悲鳴を上げる。
それでも尚、得物の無い状況で、脱がされそうになる度にボタンを、ファスナーを押さえながら、彼等を許すまいとトリスは毅然と反撃を続けた。
婆は水牛を繋ぐと、ぐっと拳に力を込めてマテリアルを昂ぶらせる。
追われる少年の抱える鉢が、婆には希少で美しい花に見えた。
きっと、彼は身を粉にして稼いだ金で買ったそれを売り飛ばさんとする暴漢に追われている。
勘違いを正す言葉も無く、婆は歯を噛み締めて自由の鐘に向かっていった。
「そこな若人よ。……ここは、婆に任せて逃げるのじゃ」
声を張り、駆けつけながら少年の背後、数歩に迫った男へ一発。年季の入った拳を腹に食らうと、受け留めきれずに集団の中へ飛んでいった。
「加勢するぜ」
ドゥルセも、構えてその集団を見回した。
「服を脱がすんだってなあ? 上等じゃねえか。やれるもんならやってみな」
好戦的に笑う。
挑発に乗った1人が飛び掛かってくるのをいなし、少年に行けと視線を送る。
「ここからは私たちが助けてあげます!」
息の上がってきた少年に金寺が隣から声を掛ける。
反対隣はユイが守り、少年のペースで走りながら、周囲や後方を見回している。
「ひーちゃん! あっち」
指差すのは人の行き交う大通り。
「策があるんですね?」
金寺が尋ねると、ユイは確りと頷いた。
イベントで溢れる人混みに追っ手を誘い込んで撹乱する。そして、少年を隠しながら安全な場所まで移動する。
ユイの策を聞きながら、金寺は少年を隠せそうな場所を探す。細い路地が良いだろう。大通りの中程まで視線が辿り、細い路地を見付けた。
追っ手を仲間のハンター達が押さえている内に、そこまで行って隠れよう。
視線を合わせ頷くと、少年を先に走らせて、背を守るように2人も続く。
おい、と2人を呼び止める太い声がした。剣呑な目が2人を見下ろす。
知らぬ振りを貫こうとするが、さらにもう1人近付いて来て挟まれる。
「ボクとひーちゃんに何の用?」
ユイが金寺を庇う様に腕を伸ばして男達を見上げた。
顰めた顔がユイを見下ろす。君たちも、俺たちの敵だろうと言う様に。
ブレザージャケットの胸ぐらを掴まれてもユイは退かずに男を睨み、後ろ手に短杖を構える。
集まってきた男の1人が不意を突いて金森の服を掴んだ。
「ちょっ……わ、私は恋愛経験ゼロなんですっ!」
「ボクのひーちゃんに何やってるの!」
驚いて声を上げた金寺の拳が男の腹を打ち、その手を引き剥がしたユイの短杖の切っ先が喉を狙う。
諸手を上げて後退る男が仲間に囁く事には、リア充じゃ無いなら敵では無いとのことだが、彼の頭を叩いた別の男が、怪しげな構えで服を狙いながら少年の行方を問う。
リア充では無かろうと、リア充を目指すあのガキを庇っているなら、この2人も敵だろう?
男は笑うと、行き交う人々を避けながらその手に抗う金寺のブレザーの裾を捲り上げ、器用にボタンを弾いて袖を脱がせながら絡め取る。
「やめなさーい!」
その手首に短杖が打ち付けられると、金寺は脱がされ掛けたブレザーを抱えてその場を抜け出す。
恥じらいに頬を染め、袖を通してブレザーを着直すと、許さないとその顔面に拳を向ける。
昏倒の寸前まで至った衝撃にふらつく男を残し、2人の姿は人混みに紛れた。
集ってきた集団を打ち倒し、乱れた装いを整える。
開けたシャツのボタンを留め、紐が解かれずり下がった袴を付け直す。アーマーを被り脇の留め具を締め、外された籠手の紐を結び直す。
折り重なって倒れる男たち、まだ辛うじて息の有る彼等を見下ろし、鮮やかな橙の髪を掻き上げて肩を聳やかす。
「自由なカネだか何だか知らねえが、クソくだらねえ。他人様の幸せを祝えねえヤツが馬鹿言いやがって」
衣装も防具も元通りに着けると、ドゥルセは少年を探して通りを見回し合流に向かう。
何が、愛の再分配だ。
漏れ聞こえた彼等の言葉を吐き捨てるように呟いて走り出す。
どさりと人が人の上に落ちる音。婆も辺りの敵を捉えては投げ、投げては次へと暴れ回り、周囲に山を気付いていく。
尚も果敢に向かってきた最後の男を、振り回す腕が突き飛ばし蹌踉めくところを捕まえて投げ、山の頂上に積み重ねる。
「婆はのう……お前さんらのような暴漢が、許せんのじゃ」
唸るような声で言い放つも、それに応える余力のある者は無く。まだいるのか、もういないのかと息を巻いて見回すと荷車を引いて近付いてくる蹄の音を聞く。
途端、婆の表情が穏やかに、晴れやかに変わる。
「べこや、待たせてしまったのう」
飼い主の不在を寂しがったらしい水牛の背を撫でると、婆は梅を染めた長着の身頃を整え、帯を締め直す。白熊の革鎧を着け、冷たい風に煽られながらポンチョを被る。
支度は出来た。
べこ、と呼べば婆の歩みに合わせるように水牛も街を歩く。
暴れ足りない気もするが。と、振り返り、肩を回し、首を鳴らし。
少年の走って行った方を眺めてにんまりと微笑んだ。
「逃げ切るんじゃよ少年。その花でおっかさんを食べさせてやるんじゃ」
ゆっくりと頷いて、その場を離れる。後は他のハンター達に任せよう、年を越すには色色と入り用だから。
水牛を連れ、婆は街へ戻っていく。時折擦れ違うそれらしい残党を投げ飛ばしながら。
「お、いたなボウズ」
金寺とユイの走った方を途中まで辿り、人混みを抜けたドゥルセは少年を見付けて声を掛けた。
店と店の間で鉢を抱えて蹲り、上がった息に顔を赤くしながら、追っ手に怯えて震えている。
情けないツラだな。ドゥルセが少年の隣で壁に凭れ、青い瞳を伏せ気味に見下ろす。
少年は唇を噛んで項垂れた。
「ユイさん、こちらです。……もう大丈夫ですよ」
「えっ、行き過ぎちゃってた……撒いてきたよ」
小さな足音が反対側から2つ。追っ手を撹乱しながら遠回りしてきたらしいユイと金寺だ顔を覗かせる。
「あの……どうして追われていたんですか?」
その鉢の所為かと金寺が尋ねると、少年は掠れた声で事情を話した。
金寺が少年を案じるような目を由比に向けると、ユイも頷いて少年を見る。
背中を押すような温かな眼差しが向けられた。
「おいボウズ。お前はどうする?」
こんなことになったのだから、痛い思いをしたくないなら逃げても構わない。
ドゥルセの視線が外へ、残っていたらしい自由の鐘を見据える。
「あいつらを更生するのはオレの仕事だ。てめえの出る幕じゃねえ。とっとと行きやがれ。お前の勝負はこれからだろ?」
頑張れよ、そう囁く様に言い残し路地を出て行く。
●
2人に守られるように少年は最初の場所に戻ってきた。
服を直したトリスとアルベルトも待っていたようで、少年の姿を見ると安堵の息を吐いた。
「ねえ。今後のことだけど、一時的にでも匿ってくれるところってありますか? ほとぼりをさまさないと」
彼等はまだ追ってくるだろうから。少年を気に掛けるトリスの言葉に表情が強張り項垂れる。
親族の人、難しいならオフィスでしょうかと首を傾がせ考え込んだ。
「私も、それが安全だと思います」
匿って貰うようにお願いしてみませんかと金寺がユイに尋ねる。
ユイも少年を見ると、危ないんだよねと頷いて金寺に同意を示した。
2人はボランティアのテントに視線を移す。
少年が思いを寄せていた少女はまだいるのだろうか。
揃いの帽子と聞いていたがと、彼等の頭に赤いベレー帽を探した。
あ。と、少年が小さな声を上げた。
その目が見詰める先、少女はハンターらしき青年にスープを差し出し、白い息を弾ませている。
青年が町の方へ向かっていくのを手を振って見送り、少年とハンター達に気付くと駆け寄ってきた。
トリスはアルベルトの腕を引くと、2人の視界を妨げない程度に、ユイと金寺も、頑張ってと少年の背中を押してその場を離れる。
少女は少年の無事と事情を尋ねながらも、安堵に頬を緩めている。
ボランティアのメンバーにも伝えに行こうと少年を促すが、その手を少年が掴んだ。
「待って」
「なあに?」
「……あ、あの日から、ずっと君が好きでした」
ポインセチアの鉢を押し付ける様に差し出すと、少女は戸惑いそれを手に取る。
「ありがとう、でも、ごめんなさい」
私にも、ずっと好きな人がいるの。
落ち込む少年を励まして、けれどここでは立ち止まれない。
追っ手について少女に伝えて警戒を促し、近くのハンターオフィスに少年の庇護を求めに走り。
やがて事態が落ち付いて、騒動の鎮まる頃には少年の傷も癒えるだろうか。
幼い恋と勇気が、淡い色の思い出に変わることを祈りながら。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 金寺・緋色(ka6369) 人間(リアルブルー)|13才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/12/14 22:13:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/12/14 00:09:04 |