リーゼのために

マスター:西尾厚哉

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/12/13 19:00
完成日
2016/12/24 15:33

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 妻のリーゼロッテは、よく笑う女性でした。
 彼女は屋敷の裏手にある林を抜けて湖に行くのが好きで、夏場はよく2人でそこにお弁当を持って出かけました。
 彼女はドレスの裾を持ち上げて白い足を水に浸し、まるで子供のようにはしゃぎました。
 娘のクレスツェンツを授かったのは結婚して2年目のことです。
 クレスツェンツは妻によく似た黒髪で、彼女もまたよく笑いました。
 妻と娘の笑い声を毎日聞くことが私の幸せであり、家族の幸せでもありました。
 でも、その時間はあっという間に砕け散りました。
 その日のことは今でも忘れられません。
 娘は湖で、まるで眠っているような表情で漂っていました。

 妻は笑顔を見せなくなりました。
 湖に足を運ぶこともなく窓の鎧戸を開けることさえしません。
 私はいろいろ考えた挙句、ある決心をしました。
 材料を集め、少しずつ部品を作り、一年かけて小さな女の子の人形を作りました。
 もともと何かを創ることは好きだったのです。
 錬金術師のようなわけにはいきませんでしたが、その人形は少々ぎごちなくも足を折り曲げて小さな淑女のようにお辞儀をしました。
 妻は最初驚いた顔をしましたが、喜んでくれました。
 人形にクレスツェンツと名付け、娘と同じように可愛がりました。
 あの日まで。

 妻はクレスツェンツを窓辺に座らせたようです。
 外の景色を見せたかったのかもしれません。
 ほんの束の間、妻が窓辺を離れた時クレスツェンツは落ちました。
 3階という高さはクレスツェンツを粉々にするのは充分で、妻は狂気の悲鳴をあげました。
 自分も後を追おうとする彼女を必死に押し留め、私は妻に言いました。
『大丈夫。クレスツェンツは必ず帰って来るから』
 部品をかき集めて修理するつもりだったのです。
 でも、うまくいきませんでした。
 妻は疲弊し、半年後亡くなりました。
 私はクレスツェンツを作ってやれなかった自分を責めました。
 でも、ある日ふと思ったのです。
 もう一度作ってみよう、と。
 そして出来上がったのは、妻の姿をした人形でした。

 私は毎日人形の妻に語りかけました。
 返事はなくとも、妻が傍にいてくれるような気がしました。
 でも、次第にいらだちを覚えるようになったのです。
 これは人形で妻ではない。
 そしてようやく気づきました。
 人形のクレスツェンツを私に与えられた妻の気持ちに。
 遂に気持ちが限界にきて、妻の姿をした人形を窓から突き落としました。
 ばらばらになった彼女の姿を見て悟りました。
 クレスツェンツは誤って落ちたのではない。
 妻が落としたのだと。


「それで……その壊してしまった人形を修理して欲しいと?」
 ギルド職員は目の前の男の顔を見る。
 彼は依頼主自身ではなく、屋敷の使用人であるらしい。
「はい。旦那様は人形師でも錬金術師でもありませんので、やはり技術のある方にと」
「でも、それならハンターでなくても……」
「それが旦那様の望みですので……。それに、人形の部品はまだ庭に散らばったままなのです」
「拾っていない?」
「ええ。もう一年以上になります。足らない部品も出て来ると思いますので、それは新たに作っていただきたいと」
「素朴な疑問なのですが、なぜ今になって修理しようとお思いに?」
「旦那様は自分が二度奥様を殺したとお思いなのです」
 男はうなだれた。
「一度目はお嬢様の人形を作った時。二度目はご自身が奥様の人形を窓から突き落とした時です」
「ふむ……」
 そんなに思い悩むこともないのでは、と職員は思うが、それはよそ様の事情なのでもちろん口には出さない。
「旦那様は結局あれから具合が悪くなり、療養所と屋敷を往復する日々です」
 ずずっと鼻をすすりあげる。
「屋敷の鍵は預かっておりますし、旦那様も一度戻ると仰っていますので、どこかでご挨拶させていただけるのではと思います。よろしくお願いします」
「わかりました。ではお手伝いできるハンターが集まるまでお待ちくださいね」
 はい、と使用人は頷いて席を立った。
 その後ろ姿を見送りながら職員は思う。
『なんだろうなあ……歪虚の気配は……ないみたいだけど、んー……』
 何か奇妙な違和感を職員は感じていたのだった。

リプレイ本文

「なんだか……」
 言いかけてアイシュリング(ka2787)はためらう
 床に並べた人形の部品はどことなく人骨の雰囲気に見えなくもなかった
 荒れた庭を抜けた先にある屋敷は立派な建物だったが、重く軋む扉の奥は静まり返り、冷たく黴臭い匂いがした
 通された広間で動かせる家具を動かし床に布を敷く
 その上に人形の部品と思しきものを並べていくことにした
 作業は長丁場……そう考えていたのだが、正午を回る頃には集め並べた部品がおぼろげながらも人の形をした状態となる。
 人形の身長は140cmほど。
 星野 ハナ(ka5852)が提案した球体関節はそれらしき部品が見つかったので元々の人形もそうであったようだ。
 ただ、頭部がまだ見つかっていない。
 マキナ・バベッジ(ka4302)が書き留めたリストを元にナンバーリングを行い、部位ごとに修理担当を決める
「足らない部品は作り始めましょう」
 月雪 涼花(ka6591)が鞄に詰めてきた工具と木材や薄い金属板を広げ、そして視線を巡らせた
「奥様のお姿の確認ですよねぇ? 写真か肖像画がないかなって、使用人さんにお聞きしたいんですけどぉ……」
 星野も顔を巡らせる。
 屋敷の鍵を開けてハンター達を広間に通してから使用人の姿が見えなくなっていた
 広間から次の間へは扉がある。
 クラン・クィールス(ka6605)が試しに把手に手をかけてみるが、やはり鍵が閉まっている
 フィーナ・マギ・ルミナス(ka6617)が、クランの脇をすり抜けて扉の鍵穴に顔を押しつけた
「何か見えるか?」
 クランの問いにフィーナはふるふると首を振る。
 その彼女の大きな目がいきなり見開かれて上を見上げたので、クランは思わず身構える。
「音……」
 呟く彼女の視線を追って視線を上に
 全員で意識を凝らした時

バアン!

 背後の扉が開いた。
「みなさま、昼食です! ミートパイとお茶と!」
 訝し気な視線を気にする風もなく、使用人は盆を置くと部品が並べられた床を覗き込み、
「もうこんなに。さすがハンター様!」
 満足そうな笑みを浮かべる。
「奥様のお姿の確認をさせてください。肖像画か写真はありますか?」
 月雪が尋ねると彼は「はい」と胸を反る
「ございます。1階と2階に肖像画が。今夜旦那様がお戻りになられますから、奥を開く許可をいただきましょう。あ、それと作業部屋として使っておられた地下室はいろいろ材料が残っていると思います」
「あのっ。ご主人がお帰りになるなら、私達もご挨拶したいですぅ。ええと……お名前……」
 星野の言葉に初めて使用人は気づいたようだ
「あ、これは失礼いたしました。旦那様はヘンドリック・ブルーメン様、私はゾルゲと申します」
 強そうな名前の割には目の前のこの男の顔は凡庸だ
「遅くなると仰っておられましたので、皆さま今夜は宿でお休みになってください。地下室、行きますか? あ、パイを先にお召し上がりになったほうがいいですね。冷めてしまいます」
「あの……」
 マキナが慌てて声をかけた。勢いよく顔を向けられて一瞬たじろぐ。
「できればここに泊まらせていただけませんか。作業の時間を増やしたいんです……」
 ゾルゲの表情が一変した
「もう宿賃は払っております。私が旦那様に叱られます」
 しょんぼりする。
 あまりのしょぼくれようにマキナが戸惑っているとクランが助け舟を出した
「じゃあ、今夜は宿に行く。その後はこちらで失礼がないようキャンセルするよ」
「はあ……」
 ゾルゲは渋々頷いたのだった

 その夜遅くまで作業を続けたが、ゾルゲに半ば追い出されるようにして屋敷を出る。
 宿のカウンターにいた女性はクランが事情を話すと快く了承してくれた
「ブルーメンさん、良くなったの?」
 宿賃をクランに渡しながら女性は言う
「お会いになったことが?」
 女性はかぶりを振った。
「母が奥様の葬儀に参列したのを聞いたの。母はあの湖畔の屋敷をお宿にすれば、ってブルーメンさんに薦めてたみたい。このへん宿が少ないし、人が集まれば塞ぎ込むこともないからって」
「お母様にお話し伺えますぅ?」
 星野が身を乗り出したが
「ごめんなさい、母はもう亡くなったの」
 ちょっとがっかりする。
 夜半で誰もいない食堂に向かい、残っていた冷えた食事と共にテーブルを囲んだ。
 マキナが細かくチェックが入った人形の全体像を描いた紙を広げる
「小さいお人形にお辞儀をさせる部分は明日僕とクィールスさんで。……それで夜には二体とも完成するかと……」
 ゾルゲが案内してくれた地下室は埃とクモの巣まみれだったが、残っていた工具も資材も問題なく使える状態だった。
 髪に利用する絹糸と染粉も見つかり、肖像画を見てアイシュリングが染める。
 作業場の奥にあった扉の奥の箱の中から古びたドレスもいくつか見つかった。
 それもアイシュリングとフィーナで人形に合わせて繕い直すことに。
 人形の腱用にと星野がゴースロンの尻尾の毛を一房用意し、肖像画で色を確認してから彼女は絵画スキルを使って眼球の虹彩を描く。
 何かの細工に使うつもりだったのか金と銀の大きな塊も見つかったが、それはそのまま置いておくことにした
「頭は結局見つからなかったですねぇ。だいぶん式神飛ばしたんですけどぉ」
 星野はフォークをぱくりと口に運んで呟く
「池の中もなかったわ」
 と、アイシュリング
 池は屋敷からは少し離れた場所に小さなタイル貼りの水槽になっていて、うっすらと雨水と泥が溜まっていた
「綺麗にしたいけれど、人形の作業のほうに専念するわ」
 明日はたぶん徹夜になるだろう

 翌朝、日の出前に起きて宿を出た。
 まだ人影のない道を白い息を吐きながら屋敷に戻る。
 屋敷の扉を開いた途端、昨日とは全く違う中の様子に呆然とした。
 家具に被せられていた布は取り払われ、昨日は月雪のハンディライトやフィーナのリトルファイアで灯りをとるしかなかったが、今はあちこちに灯された蝋燭の火で明るい。
 閉まっていた奥の部屋の扉は開かれ、大きなテーブルには銀器と共にたくさんのお菓子や果物が乗っていた
「おはようございます!」
 相変わらずゾルゲは皆の背後から登場する
「居心地が良くなりましたでしょう?」
「ブルーメンさん、お帰りになりましたぁ?」
 星野が言ったが、ゾルゲは申し訳なさそうに首を振った
「旦那様は具合がよろしくなく、お戻りになるのを諦めたご様子で。でも、私が手紙をお送りしておきましたから大丈夫です」
 促されて奥に進むが、皆が真っ先に確認したかったのは肖像画だ
「こちらです」
 ゾルゲが指差した壁には大きな絵があった
 肩の上でゆるやかに弧を描く茶の髪に茶色の瞳の女性が微笑んでいる。
「リーゼロッテ様です」
 ゾルゲは得意げに言う。
「2階には旦那様と並んでいる肖像画がございます。3階の東の奥は旦那様の書斎がございますので、そこだけご遠慮いただければあとはご自由に。私は薪の補充をして参ります」
 背を向けたゾルゲを見送って、奥の階段を登り2階へ
 同じように大きなテーブルを置いた広間にその絵はあった。
 口ひげをたくわえた優しそうな男性が恐らくブルーメン。
 リーゼロッテが並び、2人の前に幼い少女が立っている
「サインがないな……」
 クランが絵の下に顔を寄せて呟き、月雪はうーんと首を傾げる
「着ているものが古い感じがするわね。ひと昔前というか……」
 リーゼロッテはいつ亡くなったのだろう。
 そう尋ねようと思ったが、結局ゾルゲはまたその後姿を見せることがなかった

 あっという間に夜になっていた。
 アイシュリングが染めて干したままだった絹糸の束を急いで暖炉の前で解きほぐす。
「できましたぁ」
 星野がはぁ、と息を吐いて絵筆を片手に立ち上がり、新しく作った頭部の裏側から目を入れた。
 目が入ると人形は一気に命を吹き込まれたように見える。
 マキナとクランが作業を続け、クレスツェンツの人形もほぼ完成に近い。
 星野はブルーメン自身の人形も作りたかったようだが、さすがにそれには時間がかかり過ぎて断念せざるを得なかった。
「ねぇ、あとは2階のあの広間で作業しませんかぁ? そしたらブルーメンさんと一緒になるのですよ」
 星野の提案に皆も同意した。
 繕ったドレスを持ち上げようとして、アイシュリングはフィーナが人差し指を口に突っ込んでいることに気づいた。
「また刺したの? 見せて?」
 手を伸ばす。
「大丈夫……」
 フィーナは無表情に答えた。
 口数の少ないフィーナは表情も少なく黙々と作業を続けるが、ふと向けられる彼女の視線はいつもどこか遠くを見ているようで不思議な気持ちになる。
 注意深く人形を持ち上げ階段を登り、肖像画のあった部屋にもろうそくの火を増やす。
 アイシュリングが時々絵を見上げながら絹糸の髪をカットし、星野が鉄のコテを緩く温めてカールを作った。
 そしてフィーナと月雪で注意深く人形にドレスを着せる。
「やっぱり椅子が大きいですねぇ」
 座らせた人形の足が中途半端に床から浮いているのを見て星野が言う。
「大人用の椅子の座面だけ残して手入れするか」
 クランに同意を求められてマキナが椅子に手をかけたとき、フィーナがはっとして顔をあげた。

バン!

 大きな音が屋敷に響く。
「またゾルゲさん?」
 アイシュリングが顔を巡らせる。
「違うわ。上よ」
 フィーナの視線を辿って月雪が天井を見上げる。
「見て来る」
 クランが踵を返す。マキナと星野もそれに続き、月雪はアイシュリングに「ここをお願い」と後を追う。
「何かいると思います」
 月雪が部屋を出た途端そう言ったフィーナの声にアイシュリングは彼女の顔を見た。
「供養したほうがいいです。このお人形は焼いたほうが。悲劇を繰り返さないためにも」
「でも、私達の依頼は人形の修理よ。ブルーメンさんにはできたものをお見せしないといけないと思うわ。その後は皆で相談しましょう?」
「あなたはどう思う?」
 初めてフィーナが問いかけた。
 彼方を見るようなフィーナの目をアイシュリングは見つめ返す。
「悲劇を繰り返さないよう救いを見出したいわ。みんな同じよ」
 そう答えてアイシュリングはふと気づいた。
 ブルーメンがハンターに依頼した理由はそれなのではないかと。

 3階の部屋を次々に見て回り、残すのは入るなと言われた書斎のみになった
「どうしますぅ?」
「入る」
 星野の声に即答してクランがドアノブに手をかけた。
 光のない部屋の中を注意深く覗き込む。
「窓が開いてる。鍵が甘くなっていたのかしら」
 月雪が息を吐いて半開きになった窓を閉めた
「涼花さーん!」
 星野が小さく声をあげた。彼女が振り向いた時、クランとマキナも『それ』を見つめていた。
 人形の首だ。
「ブルーメンさん……自分で修理しようとしてたんですね……」
 マキナが人形の頬に手を触れて呟いた。
 そしてそれをそっと持ち上げて、いいですよね? と3人に目で尋ねる。
 もちろん誰も反対しない。
 書斎に入ったことを咎められるかもしれないが自分達の作った首は外してブルーメンが作った首をつけ、眼球を嵌めなおした。
「これを葬ってあげましょう、フィーナ」
 アイシュリングが外した首を持ち上げた。
 皆で庭に降り、花壇の真ん中で枯れ葉を集めて首を納めたあとフィーナがリトルファイアで火をつけた。
 白い煙がゆっくりと月夜に立ち昇る。
「次に咲く花が魂を鎮めてくれると思うわ」
 アイシュリングは言った

 その夜、夜通しで人形の最後の仕上げをし、最後に庭の整備をと階下へと足を向けた。
「誰かいる?」
 小さな声がした
 不安と警戒心に満ちた茶色い瞳が皆を見上げる。
「貴方たちは誰? なぜここに?」
「私達、ヘンドリック・ブルーメンさんからお人形の修理の依頼を受けたハンターです。……リーゼロッテさん」
 そっと近づきながら月雪が言うと、茶の髪が揺れて彼女は一歩後ずさる。
「そんなはず……。祖父はもう何年も意識が混濁してて……2週間前に亡くなったのよ」

 互いに事情がよく呑み込めないまま彼女を2階に連れて行き、人形を見せて依頼の内容を説明する。
 彼女は信じられないというように人形に触れ、それから絵を見上げた
「さっき祖父、と仰いましたが」
 リーゼロッテによく似た横顔を見つめてクランが尋ねる。
「私は祖母の名をもらったの。この絵の女の子は母のクリスティーネです。クレスツェンツはもっと幼い時に亡くなっていて、その時には母が祖母のお腹の中に……」
 彼女は女の子の人形に愛おし気に触れた。
「母はやっと帰って来ることができたのね……」
 リーゼロッテは人形を見つめたまま首を振った。
「ブルーメンの血筋は私が最後で、屋敷は私が相続を。祖父の療養生活の借金もあるし、売るつもりで確認しに来たの。でも……」
 泣き出すまいと口を押さえ、言葉を失ったリーゼロッテにアイシュリングがそっと声をかけた。
「これからお庭を綺麗にしようと思っているんです。構いませんか?」
 リーゼロッテは無言で頷いた

 春に咲く花を残して雑草を取り去り、池を綺麗に洗って最後にアイシュリングがピュアウォーターで水を張った。
「気持ちが落ち着いたかな……」
 クランが屋敷を見やる
「彼女は屋敷を売ってしまうのかしら。春になれば花が咲くわ」
 アイシュリングが切なそうに綺麗にしたばかりの庭を見回す。
「私達としては引き留めてしまうわよね……でも借金があるって仰ってたし」
 月雪も小さく息を吐く。
「修理した欲目かもしれないけれど、私はあのお人形は身代わりのつもりじゃなかったんじゃないかと思えるのよ」
「あの……」
 マキナがリスト作りに使った残りの紙束を取り出した。
「それがいいですぅ」
 星野がにっこりと笑った。

 一時間後
「ハンターさん、私、売るのは……」
 扉を開けて外に出たリーゼロッテは美しく整えられた庭の真ん中に、ハンターひとりひとりが書き綴った手紙を見つけた。
 アイシュリングは庭の見取り図と植えられていると思しき草花の名前を。
 フィーナは人形の首を供養した場所を。
 月雪はブルーメンに宿にすることを勧めたおかみさんがいた宿屋の名前を。
 マキナは地下室にある金塊と銀塊のことを。
 クランは万が一人手が必要な時にハンターを雇うための方法を。
 そして星野は
『お祖父さまはみんなの幸せを守りたかったんだと思います(はあと)
 今は天に召された方々が、貴方の笑顔を望んでいると思います♪
 リーゼロッテさんに幸せが訪れますように(はあと)』
 涙が溢れて庭に佇む彼女の肩に雪がひとひら落ちた。

 ギルドを介し、ハンター達にリーゼロッテから手紙が届いた。
 感謝の言葉と共に、屋敷は売らずに宿として改装する決心をつけた、と書かれてあった。
「で、ゾルゲは誰だったんだ……」
 と呟いたのはクランで
「幽霊? それとも天使かなっ」
 そう呟いたのは星野だった。

依頼結果

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MVP一覧

  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナka5852
  • クールお嬢様
    月雪 涼花ka6591

重体一覧

参加者一覧

  • 未来を想う
    アイシュリング(ka2787
    エルフ|16才|女性|魔術師
  • 時の守りと救い
    マキナ・バベッジ(ka4302
    人間(紅)|16才|男性|疾影士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • クールお嬢様
    月雪 涼花(ka6591
    人間(蒼)|18才|女性|格闘士
  • 望む未来の為に
    クラン・クィールス(ka6605
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 丘精霊の絆
    フィーナ・マギ・フィルム(ka6617
    エルフ|20才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/12/10 23:27:01
アイコン 相談スレッド
星野 ハナ(ka5852
人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2016/12/13 01:36:45