• 蒼乱

【蒼乱】蒼の世界の殺戮者

マスター:T谷

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/12/13 07:30
完成日
2016/12/24 15:12

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

『おい、定時報告はどうした』
 トランシーバーから雑音混じりの声が聞こえる。しかし、いくら待ってもそれに答える者はいなかった。
 眉間を一発で撃ち抜かれ、血溜まりに沈む見張り員にそれが出来るはずもない。

 連なる破裂音は、一繋がりの轟音と化して響き渡った。
 その音に振り返った者は、体をずたずたに引き裂かれた。咄嗟に逃げようと駆け出した者は、膝を撃ち抜かれて地面を転がった。
 家の中に飛び込んだ者はしばらく震えながら外の音に耳を澄ませていたが、巨大な剣戟の如く圧倒的な物量で薙ぎ払う銃撃によって、家屋ごと真っ二つに切り裂かれた。
 噴き出した血の作る赤い霧と、破壊された建物から舞った土埃が集落を覆う。悲鳴が上がったのは初めだけ。すぐに嵐のような発砲音に掻き消され、ただ痛みと恐怖に呻く声だけが小さく響く。
「うひ、ひひひ……臭いくさぁい、地球、地球人じゃぁないかぁ……バラバラに粉々にぐちゃぐちゃに駆除しなくてはなぁぁぁぁっ!!」
 だがそれも、すぐに消されてしまうだろう。
 硝煙を纏いながらゆっくりと、それは集落の中に足を踏み入れた。


 アニタ・カーマイン(kz0005)はいつもの如く、帝国内難民キャンプの一つで机仕事に追われていた。
「だいぶ減ったと、思ったんだけどねぇ」
 一時期は、難民達もここでの生活に慣れ、だんだんと苦情も相談も少なくなっていた。アニタはこのまま、この管理官という七面倒な肩書きから開放される日が来るのではないかと、密かに期待していたのだが。

 ――地球へと、帰ることが出来るかもしれない。

 この一件により、仕事は激増していた。
 何せ、常識を覆すような出来事だ。せっかく色々と決まり事も増え、人も雇って仕事を分担し、そうやって体制を整えてきたというのに。
「……色々と、変えないとだからねぇ」
 幸いにして、アニタの管理するキャンプから帰還を希望する者は、そこまで多く出なかった。
 即時帰還を望むのは、割合にして大体四分の一。もう四分の一がしばらくの様子見を選択し、残りの半分は――ここでの生活が、妙に気に入ってしまったとのことだ。
 まあそういった住民の多くは、今は無きLH044の出身であったりと複雑なのだが。
 アニタ自身、この一件にそこまで関心があるわけではなかった。地球に帰ったところで、何が待っているわけでもない。どうせまた、各地の戦場を渡り歩く日々に戻るだけだ。それはそれで悪くはないのかもしれないが……そこまで考えると、ふと彼女が面倒を見る二人の子供の顔が頭に浮かんだ。
 溜息をついて、気を取り直す。何にしても、アニタが頭脳労働から解放される日はまだ先だ。ならば余計なことを考える前に、少しでも目の前の書類を減らさなければ――
「ん、緊急通信だと……?」
 そのとき、アニタの籠もる小屋にベルの音が鳴り響いた。
 通常の連絡は全て、通信棟へと繋がるようになっている。ここへの連絡は最低限にしろと、口を酸っぱくして言い含めてあった。
 アニタは努めて冷静に、しかし素早く手を伸ばして受話器を取る。
「何だ、どうし――」
「み、ミスターグラハムが!」
 その一言で、全てを察した。アニタは目を見開き、叫ぶ。
「被害状況!」
「住民は恐らくほぼ全滅! ……奴はっ、負傷者を執拗に殺して回っています!」
 声の向こうで爆音が響く。その状況でも警備兵が細かな報告を続けるのは、恐らくは、自分の最期を悟っているからだろう。
「生き残った者は全力で退避っ、すぐに救援に向かう! ――クソがっ!」
 それだけ指示し、アニタは叩きつけるように通信を切った。
 グラハムの狙いが難民キャンプならば、また別のキャンプへと向かう可能性もある。アニタはすぐに副管理官を呼び出し、警戒レベルを最大に引き上げる。
「非戦闘員は近くの最も頑丈な建物に避難、戦える者はキャンプの警護に! 死んでも守りなっ!」
 ハンターズソサエティに連絡している暇はない。アニタは手早く戦闘準備を整えると、小屋を飛び出してキャンプ唯一の宿泊施設へと向かった。ほんの数日前、ハンター達が泊まりに来ているとの噂を聞いていたからだ。
 あのキャンプまでは、覚醒者が全力で走っても十分はかかる。恐らくは、誰も生き残ってはいないだろう。
 そう確信に近い思いがあっても、アニタは足を止めることが出来なかった。歯の割れるほどに食いしばり、血の出るほどに拳を握りしめ、力の限り地面を蹴る。

リプレイ本文

「襲撃されたキャンプの近場に、リアルブルー出身者の多いキャンプはないの?」
 魔導バイクの上から結城 藤乃(ka1904)が叫ぶように尋ねれば、龍崎・カズマ(ka0178)と戦馬に相乗りするアニタは横に首を振った。
 ハンター達は馬とバイクで併走し、道のりを全力で駆ける。
「うちのキャンプ以外までは、結構な距離がある」
「別なキャンプを襲いたけりゃ、この道でかち合う可能性が高いってことか」
 カズマが忌々しげに吐き捨てる。そうなれば既に、一つのキャンプを滅ぼし終えたということだ。
「次の被害が出る前に、なんとしても止めないと……!」
 だからアメリア・フォーサイス(ka4111)は、知らず手綱を握る手が白む程に力を込めていた。
「ワイヤーなんかは気を付けろよ、首を持って行かれちまう」
 瀬崎・統夜(ka5046)は注意深く正面に目を凝らす。
「あんのイカレポンチに、そんな頭残ってるのかねぇ」
「気を付けるに越したことはないと思います。……あたし達が無事に辿り着かないと、助けられるものも助けられませんから」
「ま、そりゃそーだ」
 へらへらと笑う鵤(ka3319)と対照的に、水城もなか(ka3532)は言葉の端々に怒りを滲ませていた。

 幸いにも、罠の類いが仕掛けられていることはなかった。
 道すがら、目的のキャンプから離れた木立にバイクと馬を停め、徒歩へと切り替える。
「っかー派手にやっちゃってまぁ……元気そうで何よりだねぇ」
 皮肉気に鵤が呟く。
 狙撃を警戒し遮蔽物を使いながら近づく毎に、キャンプの様子が詳らかになっていった。遠くからも昇る煙はよく見えたが、その惨状は見るに堪えない程だ。
「……ちっ、いかれてやがる」
 統夜は思わず舌を打つ。
 戦闘に綺麗も汚いもない、それは知っている。しかし分かっていても、苛立ちは隠しきれなかった。
「トールマンの情報ってのは、何かないのか?」
「何も。もうあたしの知ってることなんて、役に立ちゃしないさ」
 周囲を、特に『他の視線』を感じられないか見渡しながら尋ねたカズマに、アニタは無感情に言葉を返した。
 ハンター達は腰を屈めて次の遮蔽、藪へと走る。グラハムの姿は見えない。角度の問題か、もうここにはいないのか。
 キャンプ内部に入ればいくらでも身を隠せるが、更に近づくには、一度完全に体を晒さなければならない。声を出すことすら躊躇われ、ハンター達はハンドサインで走り出す方向、タイミングを各々に決め、

「……っ、上だ!」

 高所に目をやっていた統夜の声に、全員が咄嗟に顔を上げる。
 黒いもの。それが放物線を描いてキャンプからこちらへと飛来し――ハンター達から少し離れた場所で黒い光を放って炸裂した。轟音と共に地面が抉れ、土砂を周囲にまき散らす。
「気付かれたっ?」
「だとしたら、精度が低すぎます!」
「あれ、あぶり出されちゃったかなー?」
 次の瞬間、ハンター達は一斉に走り出した。直後、次々に飛来した弾頭が、至る所で爆発を起こす。今度は確実に、彼らの位置を狙っての攻撃だ。
 固まらないよう距離を取って、遮蔽を盾にしながら全員がキャンプへと飛び込む。
「ぐは、はははは地球人かなあああ!」
「あれが……!」
 この惨状を作り出した人物。集落の中央に陣取って、口が裂けんばかりの笑みを浮かべてこちらを見ている半裸の男が目に入った。
 もなかの目は俄に細められ、グラハムの周囲に転がる住人の死体を見る。
「少しでも早く、終わらせないと……!」
 爆撃が続く。
 もし生存者がいるならば、一刻の猶予もない。
 崩れかけた家屋の陰に滑り込み、もなかは仲間の位置を確認する。
 少し後方で、藤乃はグラハムの姿を確認。完全に後手に回ったと判断し、味方の安全を第一に断続的な射撃で敵の動きを阻害する。
「……あんなもの、前は装備してなかったわよね」
 グラハムの左肩に乗った、五十ミリはあろう口径の銃身。その後部には、背負った箱から同じく口径の弾帯が繋がっている。以前には存在しなかったものだ。
「グレネードランチャー?」
「ま、それにしか見えないよねぇ。装備のアップグレードとか、上等じゃないの」
 その横で鵤が、呆れたように鼻を鳴らした。同時に、機導の徒を発動。敵の動きや癖、兵装を見極め弱点を探る。
「襲った場所でのんびりとはね」
 包囲するべくキャンプの入口とは別方向に走りながら、統夜は牽制の銃撃を仕掛ける。それと共に、別の可能性を考えていた。
 誰かが武器を与えたのなら、見届けようとしてもおかしくない。体を隠しながら、周囲を一瞥。高台などが存在しないか確認する。
「何故、リアルブルー人にそれほど執着するかは分かりませんが……!」
 同じく味方とは別方向、瓦礫の山に身を隠したアメリアが、構えたライフルにマテリアルを込めた。複数方向から狙うことで、敵の注意を散漫化する作戦だ。
 甲高い破裂音。冷気を纏う弾丸は、仲間の射撃を回避する動きの先を狙い澄ます。
 だがグラハムの動きは不規則で、唐突な移動に躱される。
「カズマさん、気を付けて!」
「ああ!」
 その行き先には、最も接近していたカズマがいた。
「ひゃああははあああっ!」
 グラハムは尋常ではない速度でカズマに接近。両腕の巨大な銃身を、鉄槌の如く振り回した。
 カズマが飛び退く。直後、背を預けていた石垣が爆散する。
「なんつー威力だ!」
 銃身をナイフか何かと勘違いしているかのように、高速の打撃が振り回される。カズマは籠手でそれを受け流すが、余りの連撃にたたらを踏む。
「凍っちまえ!」
 統夜は一気に駆け寄りながら、冷気の弾丸を叩き込んだ。
 グラハムはカズマを叩く反動で後ろに跳びそれを回避。次いで大きく目を見開きながら、銃口を統夜に向けた。
 統夜は咄嗟に横に飛ぶ。その体を掠めるように、豪雨のような弾丸が空間を薙いだ。
「……私自身の意思で引き金を引く、その第一歩になって頂戴な」
 藤乃もまた冷気の弾丸を放つ。その攻撃はグラハムの足下を凍結させ、僅かに体勢を崩させる。
「アニタさんには悪いですが、殺害するつもりで行かせて頂きます」
「ああ、当然だね。あれはもう、殺すべき化け物さ」
 鞭を片手にもなかが飛び出す。身を低く、マテリアルを込めた足で地面を蹴って死角からグラハムの懐へと一直線に潜り込んでいった。
 彼女を追ってアニタも走り出す。グラハムをきつく睨め付け、ライフルの引き金を力強く引き絞る。
 動きを阻害されたグラハムの回避を、もなかはさらに鞭で制限する。そしてその隙に、手にしたダガーを急所に突き立てようと飛びかかり、

「私の、私が地球人を滅びねばならないぃ!」

 しかしグラハムが叫び、力任せに銃身を大きく振り回した。凍結も行動の制限も無理矢理に引き剥がし、周囲二メートル強を鋼鉄の暴力が薙ぎ払う。
「ぐっ――!」
 もなかとカズマがそれを受け、大きく弾き飛ばされる。
 直後に数え切れない銃撃が、銃身を振り回すままに放たれる。乱雑なようでいてしかし的確に、弾丸がハンター達を襲う。
「おおっと、危ない危ない」
 粉々に砕けた瓦礫を盾で弾き、鵤はグラハムの位置から見えない窪みに腹ばいで転がり込んだ。
「ったく、近づくのも楽じゃねーってか」
 愚痴りながらも、鵤は確実にグラハムへと近づいていく。
 直接触ってみないことには、細かいことは分からない。しかしある程度、表面的なことならば推測することは出来る。
 まず、榴弾の発射には肩の砲下部にある引き金を引く必要がありそうだということ。また狙撃用の細長い銃身が、背負った箱の背部に収納されていることにも気がついた。
「つまり、少なくとも片手を空けないと、あれは使えないってことだ」
 鵤はハンター達に伝える。爆破に狙撃、これはグラハムを視界に入れている限り脅威ではない。
 そしてもう一つ、
「……弾帯を覆う素材が、前と違う気がするんだよねぇ。たぶん、前の損傷を見て背後の誰かさんが、対策しやがったんじゃねえの?」
「だったら、銃口や腕を狙うまでです。そうすれば、扱うのは困難になりますよね」
 アメリアの銃撃が、ダメージを顧みず接近戦を挑むカズマともなか、アニタの隙間を縫ってグラハムを掠める。
 浅い一撃。しかし込められたマテリアルは瞬時に冷気と化し、
「そいつをぶっ壊しゃ、終わりだろうよ!」
 その一瞬の隙に統夜の放った跳弾が、背後の家屋からグラハムを襲う。
 だが見えていたかのようにグラハムはそれを素早く躱し――そして、そこで不意にグラハムの動きが止まった。
「……目、目は……地球の、私の……」
 機銃が腕ごとだらんと落ちて、地面を叩く。ぶつぶつと何かを呟きながら、頭は垂れて下を向く。
 その余りに唐突な動きに、ハンター達はむしろ虚を突かれてたたらを踏んだ。
「これが例の……チャンスだ、今のうちに!」
「はい、あたしも続きます!」
 いつまでこの状態でいるか分からない、カズマはここぞと大きく踏み込み、振りかぶった拳を叩きつける。もなかはその逆から、挟み込むように脇腹へ向けダガーを振るった。
 ――その二つは空を切る。
 ゆらりと揺れたグラハムの動き、それに翻弄されて目測を誤った。カズマの腕が掴まれ、勢いを利用し足をかけられ背後のもなかに叩きつけられる。
 だが、追撃はなかった。グラハムはそのまま、またぶつぶつと何かをつぶやき始める。
「やめろ……やめろ、駄目だ……」
「ねぇ、そんなに私達に、今の貴方を見られるのが嫌なのかしら?」
 そんなグラハムに、藤乃は問いかける。「見るな」と、以前の遭遇で彼が言っていたことへのカマ掛けだ。
「嫌、嫌? 何が……地球の、目の……」
 返事が来たのかも分からない。しかし、反応がないわけではないようだ。
「はいはい、ちょっとごめんよぉ」
「おい、何をする気だい」
「んー、カウンセラーごっこ?」
 遮蔽から飛び出した鵤は、アニタの視線を受け流して一息に中央へ駆け寄った。
 体表をマテリアルの膜で覆い、最大限の防御を施し。
 グラハムへ向けて浄化術を発動した。
「んじゃ、ちょーっと正気に戻ってくれるー?」
 手にしたカートリッジの中に、グラハムに掛かる狂気を取り込み浄化する。
「うう、正気……私は、正気の、正しく地球の……」
 相互にマテリアルが干渉し、鵤は術越しに何かを感じる。
 大海のように渦巻く狂気、彼を蝕むその一端。
 鵤はさらに近づきながら、術を続ける。
「頼んだわよ……!」
 鵤から離れようとするグラハムの動きを、藤乃の弾幕が遮った。
 それにより足の止まったその隙に、鵤は一気に手を伸ばす。そして、グラハムの肩を強く掴んだ。
「……いるんだろグラハム・トールマン。お前の残したいもの残すべきもの、全てよこせ。お前の今日までの抵抗に意味を与えてやる。せめて、お前の敵に一石投じる為の布石となって死ね」
「うあ、おおお……」
 グラハムの様子が変わる。頭を抱え、全身を震わせ、がちがちと歯を鳴らす。
 術はそれほど効いていないはずだ。だとしたら、言葉による反応か。
「あ、あああ……け、けん……き……が、ぁぁっ!」
「おいおい、まずいんじゃねえかっ?」
 カズマの制止に、鵤はにやりと笑った。
「こっからでしょ」
 鵤の手が、グラハムの髪を鷲づかみ、
「全部よこせと、言っているんだ」
 顔を持ち上げ、その目を真正面から覗き込んだ。その瞬間。

 ――鵤の眼窩から視神経を通って脳に至るまで腐り濁った無数の視線がぐるりと捻れて貫いた。

「ぐ、う、おおおおおっ!」
 グラハムが叫びながら、跳ねるように体を起こした。鵤が、まるで力の入っていないかのように吹き飛ばされる。
「鵤さん!」
「無茶をするわね!」
 アメリアと藤野の射撃が、グラハムに突き刺さって白く凍結させる。
 だが構わず、グラハムは鵤へ向けて巨大な銃身を振り上げた。
 カズマの拳も、もなかのダガーも、統夜の近接銃撃も、その全てが躱されることなく直撃したが、
「何故何故何故何故俺私自分がぁっ!」
 揺らがない。鉄槌は振り下ろされる。
 そして鵤は、全く動くことが出来なかった。

「……ったく、柄じゃねえなおい」

 ――瞬間、地面が割れた。
 爆風と轟音が吹き荒れる。地表がめくれ弾け飛び、莫大な衝撃がハンター達に襲いかかる。
「傭兵にゃ傭兵の矜持ってもんが、あんだろうがよ!」
 叩きつけられる瓦礫を、身を低く心臓を隠し、顔の前に構えた籠手で防ぎながら、カズマは怯むことなく飛び込んだ。
 銃口がカズマを向いた。振り下ろした銃身は完全にへし折れている。だが残った機銃が今まさに回転を始め、
「援護します!」
 アメリアの銃撃が機銃を叩き、その切っ先を僅かに逸らす。
「発煙行くわよ!」
 そしてほぼ同時に投げ込まれた発煙手榴弾により、辺りは瞬く間に白煙に覆われた。
 カズマはその瞬間に軸をずらす。直後弾丸が脇を掠めた。
「おらぁっ!」
 そのまま大きく拳を振りかぶり、力の限り顔面へと叩きつけた。
 振り抜き、勢いを殺さず体を回転。流れるような二撃目が、腹部に突き刺さる。
「仇は、取ってやんねえとな!」
 体勢を崩したグラハムを狙って、統夜は横合いから飛び込んだ。振り回された銃身に弾丸を至近で叩き込み軌道を逸らすと、更に銃口を押し当てるほどに接近し引き金を引いた。
「あなたを、許すわけには行きません」
 もなかの目は、冷たい怒りに染まっていた。冷静に、冷静にと努めても、制御できる感情には限界がある。
 殺意を持ったダガーが、グラハムを切り裂く。二度、三度、振るうたびに血が弾け、確実にダメージを与えていく。

 このまま倒せるか。そう思った矢先、グラハムは銃身の折れた方の腕で肩の砲身を掴むと――自分の足下に榴弾を撃ち込んだ。
「なっ!」
 咄嗟にハンター達は飛び退くしかなかった。爆発が黒い光を撒き散らし、衝撃に全員が目を細める。
「逃げる気ですか!」
 アメリアはその場から離れようとするグラハムに向けて引き金を引いた。しかし尚、その動きは機敏に最小の動きで弾丸を回避する。
 追うにも、グラハムの異様な速度と機銃の掃射、榴弾の爆撃に思うように近づけない。
 鵤を放っておく訳にも行かず、追跡を断念した。だが、あれほどのダメージを受けたのだ。もう、他のキャンプを襲うことは出来ないだろう。


 結果として、生存者はなし。活気に溢れていたキャンプは、ほんの僅かな時間で廃墟と化した。
「……ごめんなさい。あたし達が、もっと早く来ていれば」
 もなかは死者に向けて手を合わせる。どうにか出来たはずだという思いは消えない。
 ハンター達の被害も、小さくはなかった。特に鵤は、複数箇所の骨折に内臓破裂。アニタの応急処置と魔法により一命は取り留めたものの、重傷には違いない。
 だが、数々の情報は手に入れた。次こそはとの思いで、ハンター達は戦場を後にする。

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MVP一覧

  • は た ら け
    ka3319

重体一覧

  • は た ら け
    ka3319

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 生者の務め
    結城 藤乃(ka1904
    人間(蒼)|23才|女性|猟撃士
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • 特務偵察兵
    水城もなか(ka3532
    人間(蒼)|22才|女性|疾影士
  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイス(ka4111
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 【魔装】希望への手紙
    瀬崎・統夜(ka5046
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/12/08 21:18:45
アイコン 【相談用】
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/12/12 23:05:12