ゲスト
(ka0000)
望む仇
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/12/20 19:00
- 完成日
- 2016/12/26 22:49
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
辺境部族にとって、冬は準備を怠れば死にも繋がる。
降り積もる雪や刺すような冷気をはじめ、秋までに食料や燃料を蓄えて冬を越す……。
命がけの支度を必要とされるが、その支度は春までに約束されるものではない。
●
辺境はとある部族が毎年冬場で過ごす土地に到着した。
暫しの家となるテントを張り、環境を整えていく。
本格的な冬になる前に獲物を捕まえ、保存食として加工するのが冬前の支度としてやっていることの一つ。
その部族にはもうそろそろ成人となる少年と少女がいた。
まだまだ幼い顔の二人は誕生日が二日違いであり、元々、血が繋がっている部族ゆえ、双子のように育っていた。
少年の方は見事に馬を乗りこなし、赤き大地の戦士として修練も積んでいる。
一方、少女の方は料理をはじめ、刺しゅうをはじめとする針子仕事が得意としていた。
「ルックス! 気を付けてね!」
少女がルックス少年へ声をかける。ルックスは軽やかに馬に飛び乗ると、少女の方を振り向いた。
「ああ、大丈夫だって、ストル! でっかいもの取ってきてやる!」
ストルと呼ばれた少女は「いってらっしゃい!」と手を振って見送った。
いつも通り、小さい獲物しか獲れないんだろうなと思いながら。
しかし、今日は違っていた。
数時間後、その部族に悲鳴が起きた。
武装した男達がトナカイが引くソリに乗って襲ってきたのだ。
人数は十二人であり、五台のソリを手分けして乗っていた。
戦える男たちの半数は狩りに出かけており、戦えるものへ投げつけられたのは、傷だらけにされた少年だった。
体中に暴行を加えられただろうか、地に叩きつけられても身動きがなく、外套越しからでもわかるように身体が痙攣している。
顔も血まみれになっていたが、少年が誰なのかその場にいた部族たちはわかっていた。
少年と共に他の大人たちも一緒だったはず、彼を担いだことと、一台のソリに見慣れた武具を一人が見つけている。
「ルックス……!」
悲痛な声を上げたのは天幕から顔を出したストルだった。
「フゥー! ありゃぁ、高値で売れるぜぇ!」
男の一人がストルの顔を見てテンションを上げる。
用途やその時期にもよるが、美しい容姿の女は高値で売れるのは世の常。
「ストル、逃げろ!」
部族の戦士が叫んでも、ストルは恐怖で足が動けなかった。
盗賊の姿よりも、傷ついたルックスの姿を見たのが衝撃的だったのだ。
辺境部族にとって、死とは隣り合わせであり、この生は約束されたものではない。いつ、誰が死んでもおかしくはないと幼いころから身にしみこんでいく。
だが、まだ病気や天寿を全うする死しか見たことがない彼女にとって、このような事態が起きたことに身体と心が追い付いていない。
男はトナカイを走らせ、天幕へと突っ込んでいき、天幕を轢き倒した。
「きゃぁあああああ!」
ストルと中にいた人間の悲鳴が響き、男はストルの顔を一度殴り倒してソリに乗せる。
「俺はひとまず引き上げるぜ!」
少女を奪った男はそのままトナカイを走らせてソリをUターンさせて走り去っていった。
「スルト!」
部族の一人が叫ぶと、その横から盗賊に殴られて吹き飛ばれた。
それが皮切りとなるかのように盗賊達が部族を嬲り殺しにしていく。
戦える者も、老人、子供は容赦なく凶刃に倒れていき、若い女は縛られてソリに乗せられて連れ去られしまった。
粗方息の根止めいった残りの盗賊たちは雲行きの危うさに気づく。
「ち、吹雪そうだな」
「まぁ、売れる物を品定めしながら待とう」
男たちはそうだなと一つの天幕へと入っていった。
予測通り、数時間後には雪が降り、死に絶えた部族の死体を隠していく。
天幕の中で温まっている盗賊達の一人が何かに気づき、天幕の外を見る。
「やっぱり、吹雪やがった」
寒さから逃げるように男は天幕を閉めた。
そして、降り積もった雪から微かに動く姿が見える。
ゆっくりと、ゆっくりと凍える体を動かし、その場を離れていった。
この吹雪ではすぐにその動いた跡は消えてしまうだろう。
●
辺境部族の中でも有力部族の一つであるスコール族の族長補佐であるカオン・スコールは厳しくなるにつれる冬の中でも鍛錬を欠かさない。
族長であるファリフは今、大幻獣であるトリシュヴァーナと共に歪虚討伐に身を賭して戦っている。
時折手紙は来ては近況を伝えてくれていた。
その中で安心したのは、彼の赤き大地の戦士、シバの愛弟子であるテトがツキウサギの眷属であるユキウサギを守るために立ち上がっていたという話だった。
カオンもまた、テトの憔悴ぶりは知っており、心配していたのだ。
一時期は部族なき部族を保護していたが、春より大巫女のところに身を寄せていた。
立ち直ったとは言えないが、テトは少しずつ、生来のお調子もの……明るい様子を見せているという。
「ホント、よかった……」
ファリフからの手紙を読んで安堵の表情を見せるカオンに彼女と同じくらいの青年がカオンを呼ぶ。
呼ばれた家に入ると、家の主がカオンを手招いた。
「如何されました……な……っ!」
はっとなったカオンが見たのは、怪我と凍傷に苦しむ少年の姿。
寝具よりはみ出して見える装飾品には見覚えがあった。
炎のような色の鳥の羽根を装飾品としているのはエーノス族を示す。
エーノス族は移動部族であり、四季ごとに移動をしていた。今の時期はスコール族に近いところに移住している。
話を聞くのは、彼の回復を待ってからにしようとカオンは部族の者達に通告した。
しかし、少年の身体には人為的な外傷も見られ、カオンは部族でも調査能力に長ける戦士にエーノス族の調査を頼んだ。
スコール族の戦士が調査した内容は部族の天幕が倒されたものがあり、トナカイに繋がれたソリが数台あった。
超聴覚を使えば、盗賊のものであることを知った。
盗賊たちはまだここにいるようなことを言ってる。
スコール族の戦士はそのまま気づかれないように部族へ戻った。
カオンが報告を受けると、可憐な表情から一変し、烈火のごとくに盗賊へ怒りを顕わにする。
「ハンターを呼びます。手配を」
厳しい族長補佐の声にスコール族の者たちは急ぎでハンターオフィスに依頼をかけた。
降り積もる雪や刺すような冷気をはじめ、秋までに食料や燃料を蓄えて冬を越す……。
命がけの支度を必要とされるが、その支度は春までに約束されるものではない。
●
辺境はとある部族が毎年冬場で過ごす土地に到着した。
暫しの家となるテントを張り、環境を整えていく。
本格的な冬になる前に獲物を捕まえ、保存食として加工するのが冬前の支度としてやっていることの一つ。
その部族にはもうそろそろ成人となる少年と少女がいた。
まだまだ幼い顔の二人は誕生日が二日違いであり、元々、血が繋がっている部族ゆえ、双子のように育っていた。
少年の方は見事に馬を乗りこなし、赤き大地の戦士として修練も積んでいる。
一方、少女の方は料理をはじめ、刺しゅうをはじめとする針子仕事が得意としていた。
「ルックス! 気を付けてね!」
少女がルックス少年へ声をかける。ルックスは軽やかに馬に飛び乗ると、少女の方を振り向いた。
「ああ、大丈夫だって、ストル! でっかいもの取ってきてやる!」
ストルと呼ばれた少女は「いってらっしゃい!」と手を振って見送った。
いつも通り、小さい獲物しか獲れないんだろうなと思いながら。
しかし、今日は違っていた。
数時間後、その部族に悲鳴が起きた。
武装した男達がトナカイが引くソリに乗って襲ってきたのだ。
人数は十二人であり、五台のソリを手分けして乗っていた。
戦える男たちの半数は狩りに出かけており、戦えるものへ投げつけられたのは、傷だらけにされた少年だった。
体中に暴行を加えられただろうか、地に叩きつけられても身動きがなく、外套越しからでもわかるように身体が痙攣している。
顔も血まみれになっていたが、少年が誰なのかその場にいた部族たちはわかっていた。
少年と共に他の大人たちも一緒だったはず、彼を担いだことと、一台のソリに見慣れた武具を一人が見つけている。
「ルックス……!」
悲痛な声を上げたのは天幕から顔を出したストルだった。
「フゥー! ありゃぁ、高値で売れるぜぇ!」
男の一人がストルの顔を見てテンションを上げる。
用途やその時期にもよるが、美しい容姿の女は高値で売れるのは世の常。
「ストル、逃げろ!」
部族の戦士が叫んでも、ストルは恐怖で足が動けなかった。
盗賊の姿よりも、傷ついたルックスの姿を見たのが衝撃的だったのだ。
辺境部族にとって、死とは隣り合わせであり、この生は約束されたものではない。いつ、誰が死んでもおかしくはないと幼いころから身にしみこんでいく。
だが、まだ病気や天寿を全うする死しか見たことがない彼女にとって、このような事態が起きたことに身体と心が追い付いていない。
男はトナカイを走らせ、天幕へと突っ込んでいき、天幕を轢き倒した。
「きゃぁあああああ!」
ストルと中にいた人間の悲鳴が響き、男はストルの顔を一度殴り倒してソリに乗せる。
「俺はひとまず引き上げるぜ!」
少女を奪った男はそのままトナカイを走らせてソリをUターンさせて走り去っていった。
「スルト!」
部族の一人が叫ぶと、その横から盗賊に殴られて吹き飛ばれた。
それが皮切りとなるかのように盗賊達が部族を嬲り殺しにしていく。
戦える者も、老人、子供は容赦なく凶刃に倒れていき、若い女は縛られてソリに乗せられて連れ去られしまった。
粗方息の根止めいった残りの盗賊たちは雲行きの危うさに気づく。
「ち、吹雪そうだな」
「まぁ、売れる物を品定めしながら待とう」
男たちはそうだなと一つの天幕へと入っていった。
予測通り、数時間後には雪が降り、死に絶えた部族の死体を隠していく。
天幕の中で温まっている盗賊達の一人が何かに気づき、天幕の外を見る。
「やっぱり、吹雪やがった」
寒さから逃げるように男は天幕を閉めた。
そして、降り積もった雪から微かに動く姿が見える。
ゆっくりと、ゆっくりと凍える体を動かし、その場を離れていった。
この吹雪ではすぐにその動いた跡は消えてしまうだろう。
●
辺境部族の中でも有力部族の一つであるスコール族の族長補佐であるカオン・スコールは厳しくなるにつれる冬の中でも鍛錬を欠かさない。
族長であるファリフは今、大幻獣であるトリシュヴァーナと共に歪虚討伐に身を賭して戦っている。
時折手紙は来ては近況を伝えてくれていた。
その中で安心したのは、彼の赤き大地の戦士、シバの愛弟子であるテトがツキウサギの眷属であるユキウサギを守るために立ち上がっていたという話だった。
カオンもまた、テトの憔悴ぶりは知っており、心配していたのだ。
一時期は部族なき部族を保護していたが、春より大巫女のところに身を寄せていた。
立ち直ったとは言えないが、テトは少しずつ、生来のお調子もの……明るい様子を見せているという。
「ホント、よかった……」
ファリフからの手紙を読んで安堵の表情を見せるカオンに彼女と同じくらいの青年がカオンを呼ぶ。
呼ばれた家に入ると、家の主がカオンを手招いた。
「如何されました……な……っ!」
はっとなったカオンが見たのは、怪我と凍傷に苦しむ少年の姿。
寝具よりはみ出して見える装飾品には見覚えがあった。
炎のような色の鳥の羽根を装飾品としているのはエーノス族を示す。
エーノス族は移動部族であり、四季ごとに移動をしていた。今の時期はスコール族に近いところに移住している。
話を聞くのは、彼の回復を待ってからにしようとカオンは部族の者達に通告した。
しかし、少年の身体には人為的な外傷も見られ、カオンは部族でも調査能力に長ける戦士にエーノス族の調査を頼んだ。
スコール族の戦士が調査した内容は部族の天幕が倒されたものがあり、トナカイに繋がれたソリが数台あった。
超聴覚を使えば、盗賊のものであることを知った。
盗賊たちはまだここにいるようなことを言ってる。
スコール族の戦士はそのまま気づかれないように部族へ戻った。
カオンが報告を受けると、可憐な表情から一変し、烈火のごとくに盗賊へ怒りを顕わにする。
「ハンターを呼びます。手配を」
厳しい族長補佐の声にスコール族の者たちは急ぎでハンターオフィスに依頼をかけた。
リプレイ本文
ハンター達はスコール族の使いの青年の案内にてちらつく雪の中を歩いて行った。
吹雪に見舞われることがなかったのは僥倖である。
「族長補佐は……」
スコール族に到着し、シャリファ・アスナン(ka2938)が尋ねると、女性がハンター達を案内してくれた。
奥へ案内されると、スコール族の戦士だろうか、屈強そうな男達数人とその真ん中に儚げな美少女がいた。
見知ったハンターがいることに気づいたカオンは緑の瞳を細め、シン(ka4968)は「また、お願いします」と返した。
「雪の中の強行して頂き、感謝します」
まずは依頼に応じてくれたことにカオンは感謝する。
「賊はまだエーノス族のところに?」
セリナ・アガスティア(ka6094)はやんわりとした口調で本題へ入る。
「はい。女達を連れ去ったという情報から、エーノス族の財産で金目の物をより分けている可能性があります」
本題に入った途端、カオンの様子が一変し、厳しい表情となった。
「全部は持っていけないってことか」
目を眇めるアニス・テスタロッサ(ka0141)に「そうでしょうね」と霧島 キララ(ka2263)が頷いた。
「やっつけるなら、早く動かないと」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が言えば、全員が頷く。
「向かう前に、ルックスさんに会いたいです」
そう言ったのはキララであり、カオンは立ち上がった。
「皆様が到着される前に目を覚ましてました。案内します」
カオンが案内した先にエーノス族の生き残りであるルックスが手厚い看護のもと、横たわっている。
無意識で起き上がろうとしていたが、まだ身体は痛むようであり、苦しそうに顔を顰めた。
「少しでも身体が動くのは悪い事ではないが……無理はするな……」
キララがルックスの傍らに膝をついてその背を支える。
まだ自由が利かない身体を見て、彼がどのような状態でスコール族へと来たのか察したセリナが目を細めた。
「……よく、頑張ったわね。ここから先は、任せて頂戴」
穏やかなセリナの言葉の後、アニスが口を開く。
「一つ、聞きたいことがある」
静かに落とされたアニスの言葉にルックスの視線が向けられる。
「落とし前を自分でつけたいか」
その言葉にルックスは困惑した表情で一度瞬き、次の言葉を待つ。
「一人くらいなら、連れてこれる」
アニスの真意はすぐにルックスへ伝わり、困惑から驚きへと表情を変え、歯を食いしばったルックスはアニスを見上げた。
「お願いします」
この好機を手放したくはなかったのだろう。
「待ってて」
シャリファが言えば、ハンター達はカオンを促し、賊がまだいるだろうエーノス族のところへと向かった。
今回の討伐にはカオンが道案内役も兼ねて同行してくれた。
空模様は雪は降っていないものの、まだ厚い雲があり、いつ降るかわからない。
「早く行くのです! 盗賊達、ホント許せない!」
可愛らしく頬を膨らませて急かすのはルンルンだ。
「ええ、参りましょう」
ルンルンの言葉に頷いたカオンが前に出る。
エーノス族までは片道数時間の道のり、特に困難な道ではないという。
平坦ゆえ、見通しはお互い丸わかりだとカオンは説明した。
「構わねえよ。どうせ、やっちまうんだから」
静かにアニスが言い放つ。
エーノス族がいた場所にあったのは地に打たれた杭に繋がれたソリ付きのトナカイが報告通りの数がいた。
「何故、彼らは留まっているのだろうか」
ぽつりと、シンが呟く。
「確かに、本来ならばすぐに退散してしまえばいいのですし」
シンの言葉に反応したセリナも頷く。
「奴らの移動手段はソリつきのトナカイなんだよね」
思い出したように確認したシャリファが問うと、カオンが「その通りです」と肯定した。
「逗留しているということであれば、何かを待っている可能性でしょうか」
ふむと考えるキララが言うと、全員の脳裏に浮かんだのは援軍の単語。
声が静まり、遠くで吹いている風の音だけとなると、アニスが口を開く。
「まずは奴らを引きずりだすぞ」
引きずりかけた思考を戻した一同へアニスはテントの近くに罠がある可能性を示唆していると、テントの中から人が出てくる。
外套を巻いただけではわからないが、にじみ出る雰囲気と人相ですぐにわかったようで、ルンルンがきりりと眉をつりあげる。
「あの人たちですね!」
盗賊達はハンター達を見て少し驚いたようだった。
「なんだ?」
「女ばっかりだ」
「男もいるが、まだ子供じゃねぇか」
なんの集団なんだと首を傾げていた盗賊達だが、女子供が現れたので、緊張が抜けたようだった。
「女を売ろうってのはあなた達かしら?」
くすり……と艶然に唇を笑みに似た形に引いたセリナが声を投げた。
「……ここにいるわよ、とびっきりの上玉がね!」
符を発動させると、赤色に輝き、盗賊達が身じろぐ。
彼らに見えるのは今の季節に見られない桜の幻。
「くっそ! こいつら、覚醒者だ!」
「ジュゲームリリカル……」
懐から取り出した雪の結晶模様が浮かぶ白銀の呪符を扇状に開いたルンルンが詠唱をはじめる。
扇符「六花」がマテリアルに反応して淡く輝く。
「ルンルン忍法土蜘蛛の術! カードを場に伏せてターンエンド」
ルンルンの言葉に眉を顰める盗賊達だが、ハンター達は思考をさせてる暇を与えなかった。
「とりあえず2人生かしとけ。一人はもう片方に吐かせる為に使う」
早く動くハンター達に声をかけたのはアニスだ。
「小娘が!」
賊から見て、アニスの外見は十代後半だろう。
はぁ……と、一つ吐息をついたアニスは何一つ躊躇うことなく引き金を引いた。
連続射撃による制圧射撃に賊達が身を竦める。
「ウゼェ」
赤い瞳を細めたアニスが一つ吐き捨てる。
「額に目玉入れる穴増やされたくなきゃ大人しくしてな」
その表情から伺える感情は怒り、厭悪といったもの。
賊全員への殺意を押し殺しているようにも見えるアニスは足止めを目的にもう一度引き金を引いた。
後方へと下がり、間合いを図ろうとした猟撃士の腕へキララが放った弾丸が当たった。猟撃士はキララの方向を探り当ててその方向へと矢を放つ。
相手の動きはすぐに察することができたが、キララは本能的に危機を感じる。
キララへと向けられる矢はマテリアルの付与によっての高加速射撃だった。何とか躱したものの、キララの太ももを掠った。
相手も馬鹿ではないということを理解したキララは通常の人間にはない縦長瞳孔の赤い瞳を猟撃士を捉え、マテリアルを込める。
一瞬鈍く輝くキララの瞳が猟撃士を捕らえる。
「逃がす気はない」
静かなキララの声は猟撃士には聞こえないだろう。
上空の厚い雲から微かに零れる太陽の光が「レスティヒクーゲル」の金色のパーツを反射し、猟撃士が気づいたがもう遅かった。
キララの弾丸は猟撃士の腹へ当たり、銃弾を受けた衝撃でよろめいたが、何とか立っていた。
異変を感じたのはその後だ。撃たれた腹部から冷気が送られて体温を奪われる。
苦悶の表情を浮かべ、猟撃士はその場に倒れた。
「それでも、あの子の苦しみは解らないだろうがな」
低く吐き出されるキララの言葉は受けた銃弾よりも冷たかった。
目を眇めるアニスが見据えるのは機導士だろう男。
デルタレイを発動させてアニスを狙い撃ちにしていた。
だらりと垂らされるアニスの左腕と右足の一部は焼けたような傷があり、血がにじむ。
「く……っそ」
見開かれたアニスの瞳に映るのは超重練成で巨大化された武器が眼前に迫っていた。
何とか直撃は逃れたが、衝撃はひどかった。
一度深呼吸をしたアニスは機導士を見据える。
「もう終わりか」
動かないアニスを降伏とみなしたのか、機導士は再び光の三角形を中空に浮かばせたが、その三つの光線は発動されなかった。
轟音が響き渡り、機導士が額に穴をあけ、煙と血を吹き出して仰向けに倒れこんだ。
後頭部から流れる血が雪原を汚す様を見たアニスは苛立った表情を浮かべて死を確認した。
前線にいたシンはカオンと共に戦っていた。
シンが前に出ると、ぎゅっと、雪を踏みしめて一歩前に出る。
雪は水分を含んだ雪で、あまり滑らないのがありがたい。円舞を使用してもあまり滑らなかった。
二人と対峙していたのは槍使いの闘狩人と剣使いの霊闘士。
シンが横へ薙いだ剣の切っ先で槍の穂先を払いのけ、カオンの剣が無防備になるシンを守るように剣使いの霊闘士の攻撃を防いだ。
二人とも、身の丈ほどの剣を使っており、お互いの攻撃のタイミングを見計らって攻撃を繰り出していた。
他の賊が他の後衛に意識が向いている事に気づいたカオンは「一度ひきつけます」とシンに告げる。
「お願いします」
素早くシンが答えて闘狩人の槍を弾いた。
カオンは大きく長剣を振り、大きな声を出す。
「我が名はカオン・スコール! スコール族長補佐! この身欲しければ倒してみろ!」
ブロウビートに乗せてとはいえ、可憐な娘とは思えない大きな声は辺境戦士のもの。そして、スコール族の名は賊たちも知ってるようであり、警戒で動きが鈍る。
「……スコール族……!」
大斧を持った霊闘士が怯んで一歩下がったのを見たルンルンがにまりと笑う。
「そこでトラップカード発動です!」
ルンルンの声と同時に霊闘士の足が雪に捉われてしまい、滑ってしまう。
先ほどルンルンがターンエンドで仕掛けた地縛符が発動したのだ。
さぁ、ここでルンルンのターンとなる。
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル、ルンルン忍法五星花! 煌めいて星の花弁☆」
くるっと、ターンを決めたルンルンは扇符で五色光符陣を発動させた。
まるで五つの花びらのような光に襲われた霊闘士は視界を奪われ、声もなく倒れる。
シャリファは一人、迂回して賊たちの背後に回っていた。
超聴覚持ちがいると聞いたが、連中の意識はハンター仲間へと向かっていて、シャリファは隙を見て駆け出す。
セリナが桜幕符を発動させており、賊は視界を奪われていた。
好機を逃す気はないシャリファが短剣を構えて駆け出す。賊の一人に短剣を突き刺そうとしたが、空気が震える音がした。
籠手でガードしたが、その衝撃は強く、シャリファは雪に足を滑らせてダメージを軽減させる。
「後ろから来やがってたか」
怒気を含ませた苛立たせて、霊闘士は鞭をしならせてシャリファへと向けた。
アニスの射撃に身を竦めていた闘狩人がシン達を盾にするように立ち回る。
シンとカオンの向こうでアニスが舌打ちすることが聞こえた。
「こちらが飛び道具ではないから安心とでも」
低く囁かれるシンの言葉の後に重い衝撃が闘狩人へ襲い掛かる。
剣を構えて攻撃を受け止めたが、腰より低いところからカオンが剣を槍のように構えて足を突き刺してきた。
痛みで動けない闘狩人の後ろから槍の穂先がシンの肩を突き、穂先がそのまま胸から腹へと下る。
槍使いが後ろに隠れてシンへ攻撃を加えていた。
「……はっ!」
突かれた苦しさを気合で堪えようと大きく声を上げたシンは大きく剣を横に振り、闘狩人の胴を防具ごと叩き切る。
そのまま止まることをせずにシンは次の攻撃を仕掛けた。
カオンは自身の長剣で闘狩人の身体をなぎ倒し、槍使いの姿が見える。
槍使いはこの状態を想定していただろうが、セリナが発動させた桜幕符までは予想が行きつかなかっただろう。
シンの剣が大きく振り上げられ、槍使いはその剣を受けて倒れこんだ。
鞭使いと戦っていたシャリファは素早い動きで襲ってくる鞭を回避していたが、一際鋭い音にシャリファは回避が間に合わなかった。
相手は祖霊の力を鞭に込めて思いっきり振りぬく。
迫りくる鞭の先端をシャリファが捉えたが相手が速かった。
「……う……っ」
雪中に身体を埋めてしまったシャリファが雪ではない何かに多い被さってしまったことに気づく。
人の腕のようなものがあり、エーノス族の印の首飾りが見えた。
もう一度シャリファへ振りぬかれた鞭が背へ叩き込まれる。
本来ならば、彼らはこんなところで死ぬわけがなかったのだ。
辺境部族を放っておきたくはない気持ちの一心でシャリファは立ち上がる。
「まだ立ち上がるか!」
迫ってくる鞭の先端を見極めたシャリファがドッジダッシュを発動させて鞭の先端につま先を乗せてそのまま大きく跳躍して間合いをとる。
着地の間に霊闘士の膝が地に落ちた。
冷気を見たシャリファはキララの援護だと気づく。
「殺してやる」
怒気から殺気へと変えたシャリファは霊闘士へと駆け出す。
「こっちの台詞だ」
霊闘士が鞭をしならせてシャリファへと目標を定める。
シャリファがフェイントをかけていて霊闘士が振りぬいた鞭をあらぬ方向へと向けてしまった。
攻撃の後の隙をぬって、シャリファは一撃を腹部へ突き、反転して抉って、内臓をかき分けるかのように切り裂いた。
とりあえず、二人の賊を捕えることに成功したので、スコール族へ戻ることにした。
スコール族につくと、厳戒態勢が整えており、部族の土地の中でも奥の方へと連れていく。
岩山の奥へと連れていくと、洞穴の中でスコール族の戦士達に支えられるようにルックスがいた。
一人は猿轡を取られ、連れ去られた女の居場所を詰問する。
「さぁな、今頃買われてるだろ。客の事なんか知らねぇよ」
唾を吐きつけられたアニスは銃を握りしめた状態で賊を殴ったが薄ら笑いを浮かべてハンター達を見上げるだけだ。
「なんてことを!」
ぷんすか怒るルンルンの隣にいたセリナが前に出ると、符を一枚取り出した。
「では、お仲間を燃やしましょうか」
そう言ってもう一人の賊の背に貼る。
「まじないかよ」
符を貼られた賊もせせら笑う。
「本気です」
淡々と告げるセリナは符を発動させた。
背を焼く炎は本物であり、賊は痛みを堪え切れずに叫んだが、カオンが自身の短刀を賊の口の中に突っ込み、声を殺した。
しかし、賊達は口を割らず、消耗していくばかりであった。
「意外と、堅いな」
考え込むキララにシンが「仕方ありません」とため息をついた。
「仕方ないよ、然るべきところがあるんだから、任せよう」
シャリファが言えば、ルンルンも頷く。
「ルックス」
アニスはルックスの方へと顔を向けると、一歩、壁際へ歩く。
「スコール族長補佐……短刀を、貸してください」
まだ一人では満足に歩けないルックスをキララが支えて賊の前に立つ。
「お前達を殺しても……俺の部族は戻らない……っ」
ルックスの声は苦しそうであり、怒りが止まらない様子だった。
「決して俺はお前たちへの怒りを忘れない」
魂からの怒りに震え、ルックスが振り上げられた短刀の行方をハンター達が見守る。
辺境部族であるエーノス族を襲った賊は然るべきところに引き渡された。
賊の片方の男は耳がなかったという。
吹雪に見舞われることがなかったのは僥倖である。
「族長補佐は……」
スコール族に到着し、シャリファ・アスナン(ka2938)が尋ねると、女性がハンター達を案内してくれた。
奥へ案内されると、スコール族の戦士だろうか、屈強そうな男達数人とその真ん中に儚げな美少女がいた。
見知ったハンターがいることに気づいたカオンは緑の瞳を細め、シン(ka4968)は「また、お願いします」と返した。
「雪の中の強行して頂き、感謝します」
まずは依頼に応じてくれたことにカオンは感謝する。
「賊はまだエーノス族のところに?」
セリナ・アガスティア(ka6094)はやんわりとした口調で本題へ入る。
「はい。女達を連れ去ったという情報から、エーノス族の財産で金目の物をより分けている可能性があります」
本題に入った途端、カオンの様子が一変し、厳しい表情となった。
「全部は持っていけないってことか」
目を眇めるアニス・テスタロッサ(ka0141)に「そうでしょうね」と霧島 キララ(ka2263)が頷いた。
「やっつけるなら、早く動かないと」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が言えば、全員が頷く。
「向かう前に、ルックスさんに会いたいです」
そう言ったのはキララであり、カオンは立ち上がった。
「皆様が到着される前に目を覚ましてました。案内します」
カオンが案内した先にエーノス族の生き残りであるルックスが手厚い看護のもと、横たわっている。
無意識で起き上がろうとしていたが、まだ身体は痛むようであり、苦しそうに顔を顰めた。
「少しでも身体が動くのは悪い事ではないが……無理はするな……」
キララがルックスの傍らに膝をついてその背を支える。
まだ自由が利かない身体を見て、彼がどのような状態でスコール族へと来たのか察したセリナが目を細めた。
「……よく、頑張ったわね。ここから先は、任せて頂戴」
穏やかなセリナの言葉の後、アニスが口を開く。
「一つ、聞きたいことがある」
静かに落とされたアニスの言葉にルックスの視線が向けられる。
「落とし前を自分でつけたいか」
その言葉にルックスは困惑した表情で一度瞬き、次の言葉を待つ。
「一人くらいなら、連れてこれる」
アニスの真意はすぐにルックスへ伝わり、困惑から驚きへと表情を変え、歯を食いしばったルックスはアニスを見上げた。
「お願いします」
この好機を手放したくはなかったのだろう。
「待ってて」
シャリファが言えば、ハンター達はカオンを促し、賊がまだいるだろうエーノス族のところへと向かった。
今回の討伐にはカオンが道案内役も兼ねて同行してくれた。
空模様は雪は降っていないものの、まだ厚い雲があり、いつ降るかわからない。
「早く行くのです! 盗賊達、ホント許せない!」
可愛らしく頬を膨らませて急かすのはルンルンだ。
「ええ、参りましょう」
ルンルンの言葉に頷いたカオンが前に出る。
エーノス族までは片道数時間の道のり、特に困難な道ではないという。
平坦ゆえ、見通しはお互い丸わかりだとカオンは説明した。
「構わねえよ。どうせ、やっちまうんだから」
静かにアニスが言い放つ。
エーノス族がいた場所にあったのは地に打たれた杭に繋がれたソリ付きのトナカイが報告通りの数がいた。
「何故、彼らは留まっているのだろうか」
ぽつりと、シンが呟く。
「確かに、本来ならばすぐに退散してしまえばいいのですし」
シンの言葉に反応したセリナも頷く。
「奴らの移動手段はソリつきのトナカイなんだよね」
思い出したように確認したシャリファが問うと、カオンが「その通りです」と肯定した。
「逗留しているということであれば、何かを待っている可能性でしょうか」
ふむと考えるキララが言うと、全員の脳裏に浮かんだのは援軍の単語。
声が静まり、遠くで吹いている風の音だけとなると、アニスが口を開く。
「まずは奴らを引きずりだすぞ」
引きずりかけた思考を戻した一同へアニスはテントの近くに罠がある可能性を示唆していると、テントの中から人が出てくる。
外套を巻いただけではわからないが、にじみ出る雰囲気と人相ですぐにわかったようで、ルンルンがきりりと眉をつりあげる。
「あの人たちですね!」
盗賊達はハンター達を見て少し驚いたようだった。
「なんだ?」
「女ばっかりだ」
「男もいるが、まだ子供じゃねぇか」
なんの集団なんだと首を傾げていた盗賊達だが、女子供が現れたので、緊張が抜けたようだった。
「女を売ろうってのはあなた達かしら?」
くすり……と艶然に唇を笑みに似た形に引いたセリナが声を投げた。
「……ここにいるわよ、とびっきりの上玉がね!」
符を発動させると、赤色に輝き、盗賊達が身じろぐ。
彼らに見えるのは今の季節に見られない桜の幻。
「くっそ! こいつら、覚醒者だ!」
「ジュゲームリリカル……」
懐から取り出した雪の結晶模様が浮かぶ白銀の呪符を扇状に開いたルンルンが詠唱をはじめる。
扇符「六花」がマテリアルに反応して淡く輝く。
「ルンルン忍法土蜘蛛の術! カードを場に伏せてターンエンド」
ルンルンの言葉に眉を顰める盗賊達だが、ハンター達は思考をさせてる暇を与えなかった。
「とりあえず2人生かしとけ。一人はもう片方に吐かせる為に使う」
早く動くハンター達に声をかけたのはアニスだ。
「小娘が!」
賊から見て、アニスの外見は十代後半だろう。
はぁ……と、一つ吐息をついたアニスは何一つ躊躇うことなく引き金を引いた。
連続射撃による制圧射撃に賊達が身を竦める。
「ウゼェ」
赤い瞳を細めたアニスが一つ吐き捨てる。
「額に目玉入れる穴増やされたくなきゃ大人しくしてな」
その表情から伺える感情は怒り、厭悪といったもの。
賊全員への殺意を押し殺しているようにも見えるアニスは足止めを目的にもう一度引き金を引いた。
後方へと下がり、間合いを図ろうとした猟撃士の腕へキララが放った弾丸が当たった。猟撃士はキララの方向を探り当ててその方向へと矢を放つ。
相手の動きはすぐに察することができたが、キララは本能的に危機を感じる。
キララへと向けられる矢はマテリアルの付与によっての高加速射撃だった。何とか躱したものの、キララの太ももを掠った。
相手も馬鹿ではないということを理解したキララは通常の人間にはない縦長瞳孔の赤い瞳を猟撃士を捉え、マテリアルを込める。
一瞬鈍く輝くキララの瞳が猟撃士を捕らえる。
「逃がす気はない」
静かなキララの声は猟撃士には聞こえないだろう。
上空の厚い雲から微かに零れる太陽の光が「レスティヒクーゲル」の金色のパーツを反射し、猟撃士が気づいたがもう遅かった。
キララの弾丸は猟撃士の腹へ当たり、銃弾を受けた衝撃でよろめいたが、何とか立っていた。
異変を感じたのはその後だ。撃たれた腹部から冷気が送られて体温を奪われる。
苦悶の表情を浮かべ、猟撃士はその場に倒れた。
「それでも、あの子の苦しみは解らないだろうがな」
低く吐き出されるキララの言葉は受けた銃弾よりも冷たかった。
目を眇めるアニスが見据えるのは機導士だろう男。
デルタレイを発動させてアニスを狙い撃ちにしていた。
だらりと垂らされるアニスの左腕と右足の一部は焼けたような傷があり、血がにじむ。
「く……っそ」
見開かれたアニスの瞳に映るのは超重練成で巨大化された武器が眼前に迫っていた。
何とか直撃は逃れたが、衝撃はひどかった。
一度深呼吸をしたアニスは機導士を見据える。
「もう終わりか」
動かないアニスを降伏とみなしたのか、機導士は再び光の三角形を中空に浮かばせたが、その三つの光線は発動されなかった。
轟音が響き渡り、機導士が額に穴をあけ、煙と血を吹き出して仰向けに倒れこんだ。
後頭部から流れる血が雪原を汚す様を見たアニスは苛立った表情を浮かべて死を確認した。
前線にいたシンはカオンと共に戦っていた。
シンが前に出ると、ぎゅっと、雪を踏みしめて一歩前に出る。
雪は水分を含んだ雪で、あまり滑らないのがありがたい。円舞を使用してもあまり滑らなかった。
二人と対峙していたのは槍使いの闘狩人と剣使いの霊闘士。
シンが横へ薙いだ剣の切っ先で槍の穂先を払いのけ、カオンの剣が無防備になるシンを守るように剣使いの霊闘士の攻撃を防いだ。
二人とも、身の丈ほどの剣を使っており、お互いの攻撃のタイミングを見計らって攻撃を繰り出していた。
他の賊が他の後衛に意識が向いている事に気づいたカオンは「一度ひきつけます」とシンに告げる。
「お願いします」
素早くシンが答えて闘狩人の槍を弾いた。
カオンは大きく長剣を振り、大きな声を出す。
「我が名はカオン・スコール! スコール族長補佐! この身欲しければ倒してみろ!」
ブロウビートに乗せてとはいえ、可憐な娘とは思えない大きな声は辺境戦士のもの。そして、スコール族の名は賊たちも知ってるようであり、警戒で動きが鈍る。
「……スコール族……!」
大斧を持った霊闘士が怯んで一歩下がったのを見たルンルンがにまりと笑う。
「そこでトラップカード発動です!」
ルンルンの声と同時に霊闘士の足が雪に捉われてしまい、滑ってしまう。
先ほどルンルンがターンエンドで仕掛けた地縛符が発動したのだ。
さぁ、ここでルンルンのターンとなる。
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル、ルンルン忍法五星花! 煌めいて星の花弁☆」
くるっと、ターンを決めたルンルンは扇符で五色光符陣を発動させた。
まるで五つの花びらのような光に襲われた霊闘士は視界を奪われ、声もなく倒れる。
シャリファは一人、迂回して賊たちの背後に回っていた。
超聴覚持ちがいると聞いたが、連中の意識はハンター仲間へと向かっていて、シャリファは隙を見て駆け出す。
セリナが桜幕符を発動させており、賊は視界を奪われていた。
好機を逃す気はないシャリファが短剣を構えて駆け出す。賊の一人に短剣を突き刺そうとしたが、空気が震える音がした。
籠手でガードしたが、その衝撃は強く、シャリファは雪に足を滑らせてダメージを軽減させる。
「後ろから来やがってたか」
怒気を含ませた苛立たせて、霊闘士は鞭をしならせてシャリファへと向けた。
アニスの射撃に身を竦めていた闘狩人がシン達を盾にするように立ち回る。
シンとカオンの向こうでアニスが舌打ちすることが聞こえた。
「こちらが飛び道具ではないから安心とでも」
低く囁かれるシンの言葉の後に重い衝撃が闘狩人へ襲い掛かる。
剣を構えて攻撃を受け止めたが、腰より低いところからカオンが剣を槍のように構えて足を突き刺してきた。
痛みで動けない闘狩人の後ろから槍の穂先がシンの肩を突き、穂先がそのまま胸から腹へと下る。
槍使いが後ろに隠れてシンへ攻撃を加えていた。
「……はっ!」
突かれた苦しさを気合で堪えようと大きく声を上げたシンは大きく剣を横に振り、闘狩人の胴を防具ごと叩き切る。
そのまま止まることをせずにシンは次の攻撃を仕掛けた。
カオンは自身の長剣で闘狩人の身体をなぎ倒し、槍使いの姿が見える。
槍使いはこの状態を想定していただろうが、セリナが発動させた桜幕符までは予想が行きつかなかっただろう。
シンの剣が大きく振り上げられ、槍使いはその剣を受けて倒れこんだ。
鞭使いと戦っていたシャリファは素早い動きで襲ってくる鞭を回避していたが、一際鋭い音にシャリファは回避が間に合わなかった。
相手は祖霊の力を鞭に込めて思いっきり振りぬく。
迫りくる鞭の先端をシャリファが捉えたが相手が速かった。
「……う……っ」
雪中に身体を埋めてしまったシャリファが雪ではない何かに多い被さってしまったことに気づく。
人の腕のようなものがあり、エーノス族の印の首飾りが見えた。
もう一度シャリファへ振りぬかれた鞭が背へ叩き込まれる。
本来ならば、彼らはこんなところで死ぬわけがなかったのだ。
辺境部族を放っておきたくはない気持ちの一心でシャリファは立ち上がる。
「まだ立ち上がるか!」
迫ってくる鞭の先端を見極めたシャリファがドッジダッシュを発動させて鞭の先端につま先を乗せてそのまま大きく跳躍して間合いをとる。
着地の間に霊闘士の膝が地に落ちた。
冷気を見たシャリファはキララの援護だと気づく。
「殺してやる」
怒気から殺気へと変えたシャリファは霊闘士へと駆け出す。
「こっちの台詞だ」
霊闘士が鞭をしならせてシャリファへと目標を定める。
シャリファがフェイントをかけていて霊闘士が振りぬいた鞭をあらぬ方向へと向けてしまった。
攻撃の後の隙をぬって、シャリファは一撃を腹部へ突き、反転して抉って、内臓をかき分けるかのように切り裂いた。
とりあえず、二人の賊を捕えることに成功したので、スコール族へ戻ることにした。
スコール族につくと、厳戒態勢が整えており、部族の土地の中でも奥の方へと連れていく。
岩山の奥へと連れていくと、洞穴の中でスコール族の戦士達に支えられるようにルックスがいた。
一人は猿轡を取られ、連れ去られた女の居場所を詰問する。
「さぁな、今頃買われてるだろ。客の事なんか知らねぇよ」
唾を吐きつけられたアニスは銃を握りしめた状態で賊を殴ったが薄ら笑いを浮かべてハンター達を見上げるだけだ。
「なんてことを!」
ぷんすか怒るルンルンの隣にいたセリナが前に出ると、符を一枚取り出した。
「では、お仲間を燃やしましょうか」
そう言ってもう一人の賊の背に貼る。
「まじないかよ」
符を貼られた賊もせせら笑う。
「本気です」
淡々と告げるセリナは符を発動させた。
背を焼く炎は本物であり、賊は痛みを堪え切れずに叫んだが、カオンが自身の短刀を賊の口の中に突っ込み、声を殺した。
しかし、賊達は口を割らず、消耗していくばかりであった。
「意外と、堅いな」
考え込むキララにシンが「仕方ありません」とため息をついた。
「仕方ないよ、然るべきところがあるんだから、任せよう」
シャリファが言えば、ルンルンも頷く。
「ルックス」
アニスはルックスの方へと顔を向けると、一歩、壁際へ歩く。
「スコール族長補佐……短刀を、貸してください」
まだ一人では満足に歩けないルックスをキララが支えて賊の前に立つ。
「お前達を殺しても……俺の部族は戻らない……っ」
ルックスの声は苦しそうであり、怒りが止まらない様子だった。
「決して俺はお前たちへの怒りを忘れない」
魂からの怒りに震え、ルックスが振り上げられた短刀の行方をハンター達が見守る。
辺境部族であるエーノス族を襲った賊は然るべきところに引き渡された。
賊の片方の男は耳がなかったという。
依頼結果
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相談卓 霧島 キララ(ka2263) 人間(リアルブルー)|26才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/12/20 02:09:06 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/12/16 02:47:45 |