• 初心

【初心】ボーン・アロー・レイン

マスター:馬車猪

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/12/24 22:00
完成日
2016/12/28 04:31

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 青空に汚れた白が生じた。

 先端は黄ばんだ骨の鏃。
 中程は細い指骨の連なりで。
 末尾には矢羽根のかわりに乾いた髪が生えている。

「敵襲!」

 矢が目視可能な距離に到達。
 騎馬の列が機敏に散開。
 騎士が鋭く得物を振り抜いた。

 磨き抜かれた刃が骨の矢に衝突。骨は衝撃に耐えられず粉塵となる。
 戦馬が主に導かれてゆらりと進路を変え。見た目以上に鋭い鏃が、堅い地面にめり込んだ。

「歪虚……雑魔か」

 小隊長は意識して落ち着いた声をつくる。
 現時点で死傷者は皆無。
 物理的な被害で最大の物は、矢を防いだ際に汚れた盾くらいのものだ。

「隊長!」

 若手の騎士が一点を指さす。
 そこにあるのは手入れのされていない森と、緑に飲み込まれつつある墓石のみ。
 否。
 風雨による汚れが目立つ骸骨が十体、骨製にしか見えない弓に矢をつがえていた。

「はっ」

 若手の騎士が不敵に笑う。
 敵の気配は歪虚としては最小といっていいほど弱い。
 最初の奇襲さえ防げば、後は彼一人でも蹂躙可能だと考えた。

「逆方向も警戒しろ」

 小隊長の声には焦りも侮りもない。
 中堅騎士が街道の左に素早く目をやると、そこには右の十体より見つけづらい骸骨が弓を構えていた。

 左右から矢が降り注ぐ。
 動揺した若手が回避にも受けにも失敗。
 弾着し汚れた煙が発生。
 若手は胸部装甲の厚さに助けられ、軽い打ち身程度で済んでいた。

「隊長! 俺、私が突撃して仕留めます」

 兜の下の顔が赤くなっている。
 王国騎士と比べれば雑魚同然の雑魔に、たった1人だけ傷を負ったことで矜恃が大いに傷つけられたようだ。

「任務を優先する」

 しかし小隊長は部下の進言を受け入れない。
 反論を許さず舞台に前進を命じる。
 矢が2方向から飛んで来るが、奇襲ではないので損害らしい損害も発生しない。
 奥歯を噛みしめる若手も、無言で再度の奇襲を警戒する中堅も、前線に到着するまで一言も喋らなかった。


●討伐依頼
 ハンターオフィスの隅に3Dディスプレイが浮かんでいる。

「以上が歪虚についての情報だ」

 兜を脇に抱えた壮年の騎士が、視線を逸らす姿勢で映し出されている。

「隊長、カメラはこちらです」
「うむ? む……」

 あっちを向いて、こっちを向いて、なんとか正面を向こうとしたのだがまだずれていた。

「現地は小さな谷と山が……山というより丘だな。谷と丘が連続する、洗濯板風の地形だ」

 画面が2分割される。
 片方には壮年の騎士が今まで通りに映し出され、もう一方には詳細な地図が新たに表示される。

「敵は雑魔だ」

 地図が小さくなる。空いた空間に骸骨と各種数字が現れる。
 1割で躱し、弓(ボウ)を使う、力も技も並以下の敵だ。

「諸君なら犠牲無しに打倒可能だと判断している。問題は」

 敵の逃亡だ。
 生物を見つけるとどちらかが滅ぶまで向かって来る歪虚もいるが、不利になれば逃げ散る歪虚もいる。
 今回の戦場は凸凹が多く逃げ易く隠れ易く、万一逃がしてしまうと後で被害が出かねない。

「確実に全滅させるのが難しいことだ。我らとハンターの共同作戦が可能なら……いや、忘れてくれ」

 内心ため息をつく。
 部下は皆突撃癖持ち、新入りは戦意過多、己は部下を教育しきれない二流以下の指揮官だ。
 共同作戦をすればハンターの足を引っ張ることになるだろう。

「武運を祈る」

 騎士は部下と共に己の戦場へ戻っていく。
 とある村と村を繋ぐ街道の安全は、ハンターの手に委ねられた。

リプレイ本文

●強力な囮
 東條 奏多(ka6425)が駆けている。
 短距離走の営巣的なフォームで、無人の街道を疾走している。
「授業の内容が役立つとはな」
 引き締まった口元に苦笑が浮かぶ。
 右から飛び出してくるスケルトンを無視して最高速を維持。
 南東および南西方向から飛来する骨矢を確認。頃合いを見て急減速して矢の雨に備えた。
 前方1から7メートルの場所に多数の矢が弾着する。
 衝撃に負けて白い粉塵となり薄く広がっていく。
 未だ空中にある5本の矢の進路を推測。
 1本は頭上を飛び越えると判断し、残る4本に備えて竜尾刀を剣形態で構えた。
 受けて、弾いて、弾いて、受ける。
 矢の残骸が左後方に抜け、残る1つが比較的装甲の薄い脚部に命中する。
 北西方向から軽装のスケルトンが向かって来る。
 矢の第2射が空に向かって打ち出されている。
 全力移動はこれで終わり。
 足にマテリアルを集中させ矢と骨の拳を回避。端の一体を切り捨てるつもりで竜尾刀を振るうが、慌てて立ち留まるスケルトンに躱された。
「悪くない」
 滑るようにすり足で横へ。
 包囲を仕掛けたスケルトンを躱して再度の斬撃。強靱なはずの頭蓋骨を割って挽回不能の損傷を与える。
「さあ、今回も、お前ら成長の糧になれ」
 数十の雑魔を前に、彼は恐れではなく遠くて近い背中を意識していた。
「気を抜くなよ?」
 スケルトンの胸から巨大な刃が生える。
 骨が落ちる途中で消えて、赤い刃の巨大斧を引き戻すソレル・ユークレース(ka1693)が現れる。
「来るぞ」
 奏多は目だけで礼を言う。剣の間合いにあるスケルトンを無視して横へ跳ぶ。
 第2射が到着する。
 ハンターにとって不運なことに、ソレルに直撃する進路の矢が4本もあった。
「人の事は言えねぇな」
 ソレルは鎧は装備しているが手足は剥き出しだ。
 複数当たれば戦闘不能な傷を負う可能性すらあった。
 焦りもせずに、戦斧「ガルグイユ」をぐるりと一振り。
 脆い矢が強靱な刃に砕かれ宙に舞う。
「ソル、また無茶をして」
 前衛2人の後方で、細身の中性的美男子が憂いの濃い表情を浮かべていた。
 敵の弓兵はなんと20体もいる。
 不運が連続すれば熟練のハンターでも万一がありえる。
「ルースは打たれ弱いってのに囮をやろうってんだから、心配にもなるだろうが」
 ソレルは止まらない。
 側面は奏多に、背後はリュンルース・アウイン(ka1694)に任せて南西へ突撃。
 迎撃に向かってきた、スケルトン集団の中で最も骨が太く体格もよい1体に戦斧を振り下ろす。
 攻撃に集中した構えと動きは隙を生じさせる。
 第3射がソレルと仕留めようと彼に集中し、それだけでなく後衛であるリュンルースに向かって2本が飛んでいく。
「ソルは心配しすぎだよ。私だってハンターだし、何度だって一緒に戦っているでしょう?」
 リュンルースの体を緑の風が撫でた。
 1本が風にずらされ街道に当たり、もう1本は躱すまでもなく手前数メートルに当たって砕ける。
「お前に何かあったら俺が困るんだっての」
 相手に聞こえない音量でひとりごち、ソレルは最後に残った非装備スケルトンを粉砕した。

●攻撃開始
 イツキ・ウィオラス(ka6512)は細く鋭く息を吐き、細い指を緩く曲げて無骨な格闘武器を横に動かした。
 骨の矢を払う。
 矢の狙いが狂い、勢いが失せ、馬の防具に当たって凹ませることもできず土の上に落ちた。
「こう言う事をお仕事として請け負うのは初めてですが」
 当初予定から変更した進路をさらに敵弓兵寄りにする。
 かなり近づかれたことに気づいたのだろう。街道を狙っていたスケルトン弓兵の数体がイツキを狙いを変更した。
 これでイツキを狙う敵は7体だ。
「厳しい依頼です」
 街道にいる監督役が聞けば、歪虚を20体以上相手にする依頼は滅多にないしそんな依頼を初心者向けにする職員の頭がおかしい、と主張するはずだ。
「一体も逃さず、誰も怪我をせず、監督役の方に認めて貰える様に頑張ります」
 真っ青になっている監督役よりずっと理想が高い。
 そして高いのは理想だけではなかった。
「どうしました。そんなことでは私に届きませんよ」
 体内のマテリアルを動かし腕と特に手の甲に集中。
 重装馬とタイミングをあわせて鉤爪を振るい、自身の近くまで届いた矢の全てを叩き落とした。
 イツキと弓兵との距離が縮まる。
 南側の弓兵10体もイツキに気づいて向き直る。
 イツキはわざと目立つ動きで、わざと速度を落とし、敵にとっての魅力的な目標であり続けた。
 そしてその時が来た。
 イリアス(ka0789)が弓を引く。
 彼女を乗せた馬は自発的に呼吸を抑えて自然に溶け込んでいる。
 イリアスの気配はさらに希薄で、矢を放つまで誰にも気づかれなかった。
 矢が風に乗る。
 木々と枝と緑の葉の間を矢がすり抜けて、汚れて骸骨の後頭部から抜けて鼻から飛び出した。
 骨製の弓が落ちる。
 負のマテリアルに強制的に動かされていた亡骸が開放され、存在する力全てを奪われた骨が消滅する。
 両脇の弓兵スケルトンが左右を警戒する。
 イリアスは無言のまま第2、第3の矢をつがえて放つ。
 2体目が倒れ、3体目が悪運に恵まれて奇跡的に回避し、第4射に射貫かれたところで生き残りの弓兵がイリアスに気づく。
 南側弓兵の生き残り7体がイリアスに向き直る。
 咄嗟に3体が矢を放つがイリアスの手前十数メートルに落ちる。
「最初に下がって正解でした」
 囮班の活躍を見て、彼女は彼我の射程が大きく違うことに気づいた。なので当初予定より距離をとった上で攻撃していた。
 これではスケルトン弓兵は逃れられない。
 徒歩では騎乗したイリアスには追いつけず一方的にやられるだけなのだ。
 だから、歪虚は最後の予備戦力であるスケルトン5体を動かした。
 イリアスは即座に愛馬へ後退を指示。
 土地で汚れたスケルトンが5体、イリアスに向かって突進を開始する。
 最高速はイリアス主従が上でもイリアスは攻撃しならの後退でスケルトンは全速移動だ。距離があっという間に縮まった。
「そこか!」
 荒れた森を騎馬武者が駆け抜ける。
 紅の当世具足で身を固め、八尺越えの黒槍を構え、一切速度を緩めずスケルトン隊に突っ込んだ。
 穂先が吸い込まれるようにスケルトンを貫き、キリエ(ka5695)が軽く振るっただけで内側から弾けた。
 舌打ちする。
 敵が予想より脆い。キリエ目から見ると槍の動きが鈍い。
 牛刀割鶏とまではいかないが小型の武器でもよかったかもしれない。
 スケルトン隊の残りは4体。
 1体はキリエを向くものの、残る3体は行動を変えずにイリアス目がけて走り続ける。
 キリエは前のめりな攻撃の直後なので守りが乱れている。
 骸骨の拳が鎧を打って、キリエの筋と骨に衝撃が伝わる。
「逃げる敵を逃がさないよう殲滅するにゃどうすりゃいいか。その戦法の実践を今、だな」
 獰猛に笑って全身のマテリアルを活性化。
 熱を持たない炎が、鎧と剥き出しの角を炙った。
 2体が反転する。
 1体が相変わらずほとんど聞かない拳を繰り出す。
 キリエは槍で以て骨を払いのけながら、北に視線を向け眉を跳ね上げた。
 南側のスケルトン弓兵数体が、抵抗を諦め弓を投げ捨てていた。
「油断すりゃ取り逃がす可能性がある。なら」
 今至近距離にいる獲物は後回しだ。
 背後からの攻撃を覚悟した上で、徒歩の歪虚には真似出来ない速度でスケルトン弓兵の元へ向かう。
「イリアスさんは逃走する敵を狙ってください。ここは、私が防ぎます」
 激情を理性で押さえ込み天宮 結愛(ka6622)が叫んだ。
 目の前に歪虚がいる。
 形は骸骨でリアルブルーで見たものとは異なる。
 しかし纏う気配は同じだ。肉親を餌食にした歪虚とも、全く同じだ。
「お前達がっ……! 存在しているせいでっ……!!っ」
 理性の枷が激情に耐えきれず吹き飛んだ。
 愛馬から降りるなど時間の無駄としか感じられない。
 腕を突き出す。
 鋭い穂先が高速でスケルトンに迫る。
 亡骸が生前に鍛えていたのだろうか。2本の腕が十字に重ね合わされ、結愛の刺突を受けて防いで滅びから逃れようとしていた。
 ぱん、と。
 鉄程度の堅さがあった骨が衝撃に負けて弾けた。
 結愛の槍は止まらない。
 穂先は肋骨と肋骨の間を抜けるが、黒柄が肋骨を複数砕いた上で背骨を押し折る。
 スケルトンが力を失い崩れていく。
 収まらない怒りにマテリアルが反応し、白い首筋に美しくも禍々しい紋様が浮かぼうとしていた。
「っ……!!!!」
 言葉にならない呼気と共に長柄武器を真横へ。
 細腕からは想像もできない速度と力でスケルトンに迫り、腰骨から鎖骨に至るまでの全てを穂先で切り裂いた。
 軽い音とを立てて骨の欠片が地面に転がる。
 頭を振る。
 艶のある髪が揺れ、艶のある唇から熱のある息が漏れる。
「ふぅ~……落ち着け~、落ち着け私~」
 体格の良い馬が悠然と歩く。
 討ち減らされたスケルトンでは追いつくことも包囲することもできない。
「これくらい簡単に倒せないと今後戦ってなんて、強い歪虚の相手なんて出来ない」
 刺突に特化したグレイブを構え直す。
 戦場に散らばるハンターと歪虚の位置を観て、作戦を改めて脳裏に浮かべる。
「だから、やるしかないんだ、私」
 合図も何もないのに、愛馬が踏み出すタイミングと結愛が突くタイミングが完全に同期し、スケルトンに一切回避も防御も許さずこの世から退場させた。
 いつの間にか、結愛の肌は本来の白さを取り戻していた。

●寄せ
 細すぎる手足に一生懸命力を込めて、フィーナ・マギ・ルミナス(ka6617)がバイクを押す。
 近くに歪虚は見えない。
 エンジンはずっと停止したままで音は目立たず。
 座席に座っていないので騎乗したハンターよりずっと目立たず。
 しかも歪虚は他のハンターとの交戦で手一杯なのでフィーナは全く気づかれずに戦場奥深くまで到着した。
「ぎゃーっ」
 悲鳴と、板金鎧に着弾する音と、足を踏み外して茂みに倒れる音が連続して聞こえて生きた。
 フィーナがそうっと幹から顔を出す。
 妙に体格の良いスケルトンが複数、北中央にいるはずの監督役に飛びかかるところだった。
「……イリアスさんと」
 炎の矢が生じてフィーナの胸元に浮かぶ。
「……はぐれた気が」
 隠密活動のため別行動をとったことにしよう、と考えた瞬間矢が消えた。
 黄ばんだ骸骨の後頭部に紅の尾羽が生える。
 額から突き出した炎の鏃に気づき、監督役が尻餅をつく。
 スケルトンの上半身が炎の矢を中心に吹き飛んだ。威力がありすぎたのかもしれない。
「………死ね」
 十数度向きを変えて第2の矢を放つ。
 葉と枝の間をすり抜け、幹を盾にして逃走中だった元弓兵スケルトンを貫いた。
「にがさない」
 さらに数度向きを変更して第3の矢を。
 小柄なスケルトンは身の軽さを活かして前転して回避。受け身はとれずにしまった地面に骨を打ち付けた。
「……おお」
 フィーナが第4の矢を発動させる前に、倒れたスケルトンの足から腰まで見事に絶たれてばらばらになる。
「手入れされていない。これでは豊かな森が台無しだ」
 スケルトンを挟んだ反対側で、光の魔法陣に囲まれたリュンルースがため息をついていた。
 地面には腐った葉がたっぷり、幹と幹の間は汚れた蔦や蜘蛛の巣でいっぱいだ。
 何より問題なのは、視界が遮られてスケルトンを探す邪魔になることだ。
「早めに仕留めましょう」
 陣の一部が光量を増す。
 風が動いて刃となる。
 しかしスケルトンが木の陰に飛び込むのに気づいてリュンルースは発動前に止めた。
「左から来る。ルース避けろ!」
 リュンルースが馬の背中に触れ、馬が前に飛び出すと同時に茂みから骸骨が飛び出してきた。
 巨大な斧が旋回。
 葉も枝も骨までまとめて砕いて宙で静止する。
「まずいな」
 ソレルは呼吸を抑えて意識を研ぎ澄ます。
 スケルトンが見当たらない。
 けれど微かに気配を感じる。
「ソル」
 たった一言で意思と気合が伝わる。
「他に手はないな。あんたも協力してくれ」
 監督役に要請する。1体でも雑魔を逃がせば、無防備な村が襲われ大きな被害が出かねない。
 重装備なクルセイダーは素直にうなずきその場に留まり警戒を始めた。
「残りは3体くらいだと思うのだけどね」
 リュンルースがポーションの瓶を弄る。
 最悪の場合は9人がそれぞれ手分けして長時間の調査と追撃を行うことになる。
「ルース」
 無言でうなずく。小声に杖の動きだけて答えて風のマテリアルを集める。
 薄汚れたスケルトンが這うようにして北に向かっている。
 視界を完全に遮る茂みに潜り込もうとして、背後から迫る風刃に切り捨てられた。
「待て!」
 戦場の西。奏多の声は興奮で上擦っていた。
 連続しようする移動系スキルは有効に働かず、弓を捨てて逃げる骨との距離がじわじわと広がっていた。
「追い込んだ。巧くやれ」
 敵に届かない小声でつぶやく。
 先程の演技とは違い、感情は完全に制御されていた。
「………まか、せる」
 氷の矢が頭蓋骨の頭頂を掠めて西に抜ける。
 スケルトンは止まらず駆ける。
 術の間合いから逃れたところで、スケルトンは己の存続と己がもたらす被害の拡大を確信する。
 が、東からのエンジン音に確信は砕かれた。
「運が悪くても、数撃てば、当たる」
 頭蓋が消し飛ぶ。
 フィーナはバイクを止め、無言で拳を突き上げた。

●討伐完了
 獣道を東に走った末に、高さ3メートルの崖に辿り着く。
 馬がふんと鼻息を吹き跳躍。
 古い街道の残骸に危なげ無く着地し、弓を捨てたスケルトンの行く手に立ちふさがる。
「よくやった」
 馬に賞賛の声をかけた後、キリエは長大な槍を水平に振るう。
 もともと弓射に特化していた雑魔はろくに回避もできない。
 胸が砕かれ首が飛び、地面にばらまかれて消えていく。
「帰りは歩きで構わん」
 遠くの戦闘の気配は、急速に小さくなっていた。
「これで」
 最後。
 イツキはゴーグルに付着した蜘蛛糸を無視してクローを一閃。
 偶然と悪運で生き延びてきたスケルトンが1体、背中から大きく砕かれて前のめりに倒れた。
 虫の音が戻ってくる。
 小動物が木の陰から顔を出す。
 集中して気配を探る必要も無い。この森の歪虚の討伐は完了した。
「お疲れ様」
 振り返って同行者達を見る。
 血の気配は皆無に近い。軽い擦り傷と打撲が数名というところだろうか。
「監督役さんもお疲れ様です。お手を煩わせて……」
 全身鎧が恐縮して手を振り頭も下げてくる。
 不思議に思って詳しく尋ねてみると、どうも依頼の難易度が高すぎると判断して自分も戦うつもりだったらしい。
「次の機会があれば最初から言ってくださいね」
 イツキが柔らかく微笑む。
 全身鎧は照れて頭を掻こうとして兜を掻いてしまい、兜の下の顔を真っ赤にした。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 金糸篇読了
    イリアス(ka0789
    エルフ|19才|女性|猟撃士
  • White Wolf
    ソレル・ユークレース(ka1693
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 道行きに、幸あれ
    リュンルース・アウイン(ka1694
    エルフ|21才|男性|魔術師
  • 豪儀なる槍撃
    キリエ(ka5695
    鬼|27才|男性|闘狩人
  • 背負う全てを未来へ
    東條 奏多(ka6425
    人間(蒼)|18才|男性|疾影士
  • 闇を貫く
    イツキ・ウィオラス(ka6512
    エルフ|16才|女性|格闘士
  • 丘精霊の絆
    フィーナ・マギ・フィルム(ka6617
    エルフ|20才|女性|魔術師

  • 天宮 結愛(ka6622
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/12/23 01:42:05
アイコン 相談卓
イツキ・ウィオラス(ka6512
エルフ|16才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2016/12/24 19:49:52