ゲスト
(ka0000)
スライム凍結中
マスター:からた狐

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~20人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2016/12/27 12:00
- 完成日
- 2017/03/12 16:37
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
冬到来。寒風に吹かれ、厚い雪に覆われ、人の行き来さえままならない。
本来であればクリスマスを待ち、新年を得て、やがて訪れる雪解けまでを、暖かな家の中で家族と静かに暮らすものだ。
けれど、今年のゾンネンシュトラール帝国ではやや事情が異なる。
以前から確執あったエルフハイムがついに動いたのだ。森に住むエルフたちは、帝国各地に散ると、街や村を焼き、人を殺し、子をさらっていった。
ハンターたちにも声がかかり、エルフハイムは戦場と化す。されど、その状況も長引きそうではなく。死闘を数々繰り広げ、事態は解決に向かって進みつつあった。
その一方で、放っておけないのは各地で襲撃された町村だ。
命はあっても、それだけで無事とは言えない。焼け落ちた家、傷ついた家族。明日の生活も分からないままに、冬将軍はやって来る。
焦げた壁で寒風を塞ぎ、残された食料を口にする。けれども、これからの冬を越すには厳しすぎる。
早急な支援が必要。帝都は勿論、無事だった近隣の街からも必要な物資をまとめて送り、あるいは家を失った人を引き受けたりはしているのだが。
問題というのはいつだって起きる。
●
ハンターオフィスにハンターたちが集められる。
ある地域に向けて、支援物資が届けられない状態になっているという。
「とある街道にて、スライムが凍っています。道幅十m、距離は百m程でしょうか。その間に隙間なくみっちりと。単純に考えて千体ほどが集まっている計算になります」
係員からの説明に、思わず耳を疑うハンターたち。痛むのか頭を押さえつつ、係員は説明を続ける。
「おそらく最初はもっと少数だったと推測します。それが分裂再生を繰り返して増え、さらにここ最近の寒さのせいで固まってしまった……としか……」
何かの罠かと他の存在も警戒したが、その気配も全く無く。推測の域は出ないが、それ以外に考えようもなかった。
固まったアイススライムたちは、少々の事では動かない。というより動けない。
かといって、上を通り抜ける訳にもいかない。つるつるに凍っているので下手に踏むと滑る。凹凸もあるので、まっすぐにも進みづらい。さらに通過中、何かの弾みでスライムたちが動き出せば、奴らに取り囲まれた上、軟体に絡みつかれて強酸で溶かされてしまう。
迂回ルートも確認はしたが、すでに一帯には雪が降りつもっている。多数の物資を運び込める道は限られる。定期的に物資を運んだり緊急事態に対応するにはやはりその街道を確保しておく方が良いと判断された。
放置して、天気がいい日に溶けてこの数が動き出せば、近隣被害も恐ろしい。
「至急現場に赴き、雑魔たちを退治してください。道の安全を確保次第、中断している物資支援を再開したいと思います」
雑魚とはいえ、馬鹿みたいに数が多い。おまけに凍って硬くなり、刃で斬るのは難しい。
下手に溶かせば、大量のスライムたちが一気に動き出す。動いたスライムが攻撃に出るか、逃げるのか。それはスライムにしかわからない。……スライム自体にも分かるかどうか。
「面倒くさいとしか言えない依頼ですが。お願いします」
物資が届かなければ、焼け出された人々が凍えたまま。近隣だけの支援もまた限界がある。
本来であればクリスマスを待ち、新年を得て、やがて訪れる雪解けまでを、暖かな家の中で家族と静かに暮らすものだ。
けれど、今年のゾンネンシュトラール帝国ではやや事情が異なる。
以前から確執あったエルフハイムがついに動いたのだ。森に住むエルフたちは、帝国各地に散ると、街や村を焼き、人を殺し、子をさらっていった。
ハンターたちにも声がかかり、エルフハイムは戦場と化す。されど、その状況も長引きそうではなく。死闘を数々繰り広げ、事態は解決に向かって進みつつあった。
その一方で、放っておけないのは各地で襲撃された町村だ。
命はあっても、それだけで無事とは言えない。焼け落ちた家、傷ついた家族。明日の生活も分からないままに、冬将軍はやって来る。
焦げた壁で寒風を塞ぎ、残された食料を口にする。けれども、これからの冬を越すには厳しすぎる。
早急な支援が必要。帝都は勿論、無事だった近隣の街からも必要な物資をまとめて送り、あるいは家を失った人を引き受けたりはしているのだが。
問題というのはいつだって起きる。
●
ハンターオフィスにハンターたちが集められる。
ある地域に向けて、支援物資が届けられない状態になっているという。
「とある街道にて、スライムが凍っています。道幅十m、距離は百m程でしょうか。その間に隙間なくみっちりと。単純に考えて千体ほどが集まっている計算になります」
係員からの説明に、思わず耳を疑うハンターたち。痛むのか頭を押さえつつ、係員は説明を続ける。
「おそらく最初はもっと少数だったと推測します。それが分裂再生を繰り返して増え、さらにここ最近の寒さのせいで固まってしまった……としか……」
何かの罠かと他の存在も警戒したが、その気配も全く無く。推測の域は出ないが、それ以外に考えようもなかった。
固まったアイススライムたちは、少々の事では動かない。というより動けない。
かといって、上を通り抜ける訳にもいかない。つるつるに凍っているので下手に踏むと滑る。凹凸もあるので、まっすぐにも進みづらい。さらに通過中、何かの弾みでスライムたちが動き出せば、奴らに取り囲まれた上、軟体に絡みつかれて強酸で溶かされてしまう。
迂回ルートも確認はしたが、すでに一帯には雪が降りつもっている。多数の物資を運び込める道は限られる。定期的に物資を運んだり緊急事態に対応するにはやはりその街道を確保しておく方が良いと判断された。
放置して、天気がいい日に溶けてこの数が動き出せば、近隣被害も恐ろしい。
「至急現場に赴き、雑魔たちを退治してください。道の安全を確保次第、中断している物資支援を再開したいと思います」
雑魚とはいえ、馬鹿みたいに数が多い。おまけに凍って硬くなり、刃で斬るのは難しい。
下手に溶かせば、大量のスライムたちが一気に動き出す。動いたスライムが攻撃に出るか、逃げるのか。それはスライムにしかわからない。……スライム自体にも分かるかどうか。
「面倒くさいとしか言えない依頼ですが。お願いします」
物資が届かなければ、焼け出された人々が凍えたまま。近隣だけの支援もまた限界がある。
リプレイ本文
現場は吹く風冷たく、遮る物は枯れ木ばかりで役には立っていない。
空を見上げれば晴天だが、降り積もった雪で地面はまぶしい。街道の雪はきれいに取り除かれているので、ここまではさほど苦労も無かった。
ただ、ここからはそうもいかない。雪は同じくない。ただ、凍り付いている――大量のスライムごと。
「これだけいるとさすがに壮観ではあるわね」
呆れるやら感心するやら。コントラルト(ka4753)はただ見たままの感想を口にする。
「逆に清々しくもある」
チマキマル(ka4372)が目を細める。凍り付いたスライムたちも反射して眩しい。ある意味綺麗な光景だ。とても凶悪な群れには見えない。
が、これが溶けると大変なことになる。
「このままにしておくと沢山の人に迷惑がかかるの。だから積極的に駆除すべきだと思うの」
息を白くさせながら、ファリス(ka2853)も気合いを入れる。ただ、トレンチコートをきっちり着込むのは忘れていない。
「防寒着を着ているからって体温が上がらない訳でもないしな、この気温だし」
防寒具を着込んだ龍崎・カズマ(ka0178)は、集めた木々を道の脇に積み上げる。
安全と移動に便利な距離を置いて、葛音 水月(ka1895)はティピーを設置。野営用テントの中に薪を組むと、チマキマルがリトルファイアで火をつける。
こうも寒いと体温も下がって効率も悪くなりそうだ。考えることは皆同じで、暖をとれる場所を確保する。
赤々とした炎に、さっそくアルスレーテ・フュラー(ka6148)が身を寄せ手をかざす。
「それでは早速かかりましょう。大量のスライムを片っ端からどかどかッっとです」
借りられる暖ならありがたく、と水月もここまでで冷えた体を温める。のんびりとした口調ながらも、振り回す得物は巨大なパイルバンカー。
しかし、テントの外はやっぱり冬だ。
「さっむ……。一応、ちゃんとした防寒着を着て来るべきだったわね」
アルスレーテの身震いは単なる自然現象。
中は風よけも出来て暖かい。が、一歩でも出れば白衣が風で翻る。上着代わりで、何も無いよりマシだが、あくまで無いよりは、だ。
「斯くなる上は、さっさと終わらせるに限る! のだけど……本当に数が多いわね」
煌めくスライムロード。その数はざっと千はいるらしい。
動かない雑魚相手なのだからと、ハンターの数はわずかに六名。確かに動かないスライムに負ける気はないが、自然相手にはくじけそうだ。
けれどそこでじっとしたままでは、仕事にならない。早く帰って温まろう、と早速退治に乗り出していく。
●
氷漬けスライムに近付いても相手は動く気配はない。試しに、カズマが適当に一体を殴りつけてみる。
魔導ガントレット「チャンドラヴァルマン」は巨大な拳として、氷ごとスライムを砕く。
「通常攻撃は十分可能。このまま殴りつけて殲滅も出来るだろうけど……な?」
カズマは仲間たちへと目を向ける。雪を握って状態を確かめるに、今のままなら勝手に雪が溶けてスライムたちが逃げるなんてこともなさそうだ。
しかし。ちまちま叩いていくにはやはり範囲が広すぎる。
代わって、前に出たのはコントラルト。カズマも身を引き、他の者もまずは様子見と手を出さずにいる。
「まずは、ファイアスローワーで!」
コントラルトがマテリアルを集中させると、扇状に炎が広がった。
冷たい物には熱い物。凍り付いたスライムに火を仕掛けようという考えは間違いでもないだろう。
範囲にあった雪を溶かし氷が砕け。それで退治できたスライムは一体のみ。まずは試しで、加減する。
火がどの程度効果があるか、あるいは効果が出過ぎてスライムたちの活動を許してしまうのか。それを見極める為に、あえてスライムの塊の中でも端の方のみを相手にした。
その手ごたえは……。
「火属性が有効か以前の問題だな。……実に普通だ」
「ただの氷に、弱っちいスライムだから、当然といえば当然の結果なのね」
破壊の痕を確認して、チマキマルは頷く。複雑な表情でコントラルトもスライムを見直していた。
凍り付いたのは単なる自然の猛威。スライムたちもそもそも雑魚でしかない。魔法が効かない心配はないが、特別有効という訳でもないらしい。
火の結果を見て、ファリスも考えだす。
「魔法も無効じゃないの。だったら、なるべく多くの敵を一まとめで撃破できるよう、お互いの着弾点を考える必要があると思うの」
なんせ範囲も広い。効率よく考えていかなければ、寒空の下で長々と震えていなければならない。
手ごたえとして、一撃か、あるいは取りこぼしても次の一手で十分退治可能。
相談もわずか。
まずは範囲でまとめて砕くべく、ファリスがメガフレアを、チマキマルもファイアーボールを放つ。
白い六枚の羽を広げて光に包まれるファリスに対し、チマキマルは骨や金で幻影のローブを纏い、骸骨のような相貌を覗かせる。
受ける印象は対照的だが、もたらされる結果は同じ。魔法の範囲に入った物は、氷もスライムもまとめて火に消えていく。
勿論、コントラルトも動く。お試しはもう終わり。容赦なくまとめて仕留めにかかる。
瞬く間に大量のスライムが消失。案外、こんな人数すら用意せずともすぐに片がつくのでは、とも考えたが。
何の加減か、半端に砕けた氷も出てくる。そこから、にょろりとスライムたちが這い出てきた。
「そう簡単にはいかないか」
見つけて、カズマが試しに天然水を撒く。
スライムが避ける動きをしたが、それだけ。かかった所で水のまま。即座に凍るほどの気温でもないし、凍る前にスライムも動いて固めるには至らない。
さっそく獲物を見つけ、ハンターたちへと迫るスライムたち。
「めんどくさいけど、自分で受けたお仕事くらい頑張らないとね」
傍観していたアルスレーテも、白い息を吐きながら動き出す。
全身のマテリアルを練り上げると、蒼く変わった瞳で前方を見据え、一気に放出。走り抜けた青龍翔咬波が一直線にスライムたちを殲滅していく。
「最多を狙うなら、まずはこっちですね」
水月の黒猫のような耳としっぽが寒さに負けず大きく動く。手裏剣「八握剣」にベノムエッジで毒を纏わせると、広角投射で投げつける。大雑把な命中にはなるが、相手の数もまだ多い。完全に外すのもまた難しい話だった。
範囲攻撃でかなりスライムたちは数を減らしたが、同時に足場を邪魔する雪氷も消えている。
足場の確保が出来た所を、カズマが全力で駆け抜ける。脚にマテリアルを集中すると、一気に加速。すれ違いざまに次々とスライムたちを粉砕していった。
ただ、術も使える回数が限られる。範囲攻撃の技が尽きれば、残るは一体ずつこつこつと倒すしかなさそうだ。
「これだけ思いっきり打ちまくれる機会、そうそう無いですからねー」
面倒な状況が残っても、水月は自身の身長を超えるパイルバンカー「アグヘロ」を両手で構えると、大きく振り下ろす。凍り付いたままだったスライムは、その氷ごと破片と打ち砕かれていく。
チマキマルは魔杖「スキールニル」を振り回す。魔法用ではなく、ただの打撃武器。本来の使用用途とは違うのだろうが、役には立っている。
「これは私にとっていい経験になるだろう……」
決して得意とはいえない。気を引き締めて、チマキマルは一体ずつ仕留めていく。
ただ、スライムたちも殴られてばかりでもない。動けないなら仕方がないが、解放された個体は本来の性質にのっとって、身近な獲物――つまりはハンターたちを襲い続ける。
注意していれば簡単に避けられるが、雪や氷に隠れて発見が遅れることもある。
死角から吐き出された酸が皮膚に浸み込むと、それなりに痛い。
命に係わるほどでもないが、愉快なものではない。
「あまり触らない方がいいだろうね」
なるべく距離を置いて、アルスレーテは遠くから気功波を飛ばす。場合によっては、螺旋突で一気にえぐる。
ファリスも魔法の効果を過信せず。デリンジャーによる射撃で、一体ずつ仕留めていく。
軍用双眼鏡を覗き、コントラルトはスライムたちを数えていた。一体でも逃がせば、それがいずれまた増えてしまう。
幸い、スライムたちは力の差など考える頭も無い。我先にとハンターたちに群がろうとして来る。
それもそれでまた面倒ではある。杖から銃に持ち替え、接近する間もなく、コントラルトはスライムたちを打ち抜いていく。
●
近寄っていたスライムの吐き出す酸を躱し、アルスレーテが鉄扇「北斗」で殴りつける。
「これで、ラストかしら」
へこんだスライムが溶けるように消えていく。油断なく構えたまま見渡すが、襲ってくる気配は無い。
念を入れてコントラルトがゴースロンで周囲を見て回る。
「倒した数からして逃げたとしても少数。しかもその痕跡も見当たらないとなると……」
戻ったコントラルトが、紅茶で暖まりながら報告。入れていた水筒もちょうど空になった。おかわりはもう必要なさそうだ。
「ようやくか。思ったより早かったというべきか」
ほっとしてチマキマルは腕を振るう。杖を振るいすぎて少々だるさも感じる。
片付いたとなると、もはやここに用は無い。
「動いて気にならなくなってたけど、やっぱり寒いんだな」
思い出したように、カズマが体を震わせる。
「はやくはやく。お家の暖かさが恋しいですっ。帰ったらあんなこんなー……」
ティピーを片付けながら、水月の心は家路へと向かっている。暖を取っていた火も消してしまうと、冬の寒さが一段ときつく感じる。
帰宅準備を整える頃にはあっという間に息の白さも戻っていた。
「からだが冷えてしまったの。みんなで温かいモノを食べに行って、暖まるのが、ファリス良いと思うの」
ファリスの提案に、積極的に否を唱える者もいない。
風に追い立てられるように、ハンターたちはその場を後にする。追いかける化け物は無い。
スライムの消えた道は雪も解け、やがては流通も戻る。以前の賑わいが戻るのもすぐだろう。
空を見上げれば晴天だが、降り積もった雪で地面はまぶしい。街道の雪はきれいに取り除かれているので、ここまではさほど苦労も無かった。
ただ、ここからはそうもいかない。雪は同じくない。ただ、凍り付いている――大量のスライムごと。
「これだけいるとさすがに壮観ではあるわね」
呆れるやら感心するやら。コントラルト(ka4753)はただ見たままの感想を口にする。
「逆に清々しくもある」
チマキマル(ka4372)が目を細める。凍り付いたスライムたちも反射して眩しい。ある意味綺麗な光景だ。とても凶悪な群れには見えない。
が、これが溶けると大変なことになる。
「このままにしておくと沢山の人に迷惑がかかるの。だから積極的に駆除すべきだと思うの」
息を白くさせながら、ファリス(ka2853)も気合いを入れる。ただ、トレンチコートをきっちり着込むのは忘れていない。
「防寒着を着ているからって体温が上がらない訳でもないしな、この気温だし」
防寒具を着込んだ龍崎・カズマ(ka0178)は、集めた木々を道の脇に積み上げる。
安全と移動に便利な距離を置いて、葛音 水月(ka1895)はティピーを設置。野営用テントの中に薪を組むと、チマキマルがリトルファイアで火をつける。
こうも寒いと体温も下がって効率も悪くなりそうだ。考えることは皆同じで、暖をとれる場所を確保する。
赤々とした炎に、さっそくアルスレーテ・フュラー(ka6148)が身を寄せ手をかざす。
「それでは早速かかりましょう。大量のスライムを片っ端からどかどかッっとです」
借りられる暖ならありがたく、と水月もここまでで冷えた体を温める。のんびりとした口調ながらも、振り回す得物は巨大なパイルバンカー。
しかし、テントの外はやっぱり冬だ。
「さっむ……。一応、ちゃんとした防寒着を着て来るべきだったわね」
アルスレーテの身震いは単なる自然現象。
中は風よけも出来て暖かい。が、一歩でも出れば白衣が風で翻る。上着代わりで、何も無いよりマシだが、あくまで無いよりは、だ。
「斯くなる上は、さっさと終わらせるに限る! のだけど……本当に数が多いわね」
煌めくスライムロード。その数はざっと千はいるらしい。
動かない雑魚相手なのだからと、ハンターの数はわずかに六名。確かに動かないスライムに負ける気はないが、自然相手にはくじけそうだ。
けれどそこでじっとしたままでは、仕事にならない。早く帰って温まろう、と早速退治に乗り出していく。
●
氷漬けスライムに近付いても相手は動く気配はない。試しに、カズマが適当に一体を殴りつけてみる。
魔導ガントレット「チャンドラヴァルマン」は巨大な拳として、氷ごとスライムを砕く。
「通常攻撃は十分可能。このまま殴りつけて殲滅も出来るだろうけど……な?」
カズマは仲間たちへと目を向ける。雪を握って状態を確かめるに、今のままなら勝手に雪が溶けてスライムたちが逃げるなんてこともなさそうだ。
しかし。ちまちま叩いていくにはやはり範囲が広すぎる。
代わって、前に出たのはコントラルト。カズマも身を引き、他の者もまずは様子見と手を出さずにいる。
「まずは、ファイアスローワーで!」
コントラルトがマテリアルを集中させると、扇状に炎が広がった。
冷たい物には熱い物。凍り付いたスライムに火を仕掛けようという考えは間違いでもないだろう。
範囲にあった雪を溶かし氷が砕け。それで退治できたスライムは一体のみ。まずは試しで、加減する。
火がどの程度効果があるか、あるいは効果が出過ぎてスライムたちの活動を許してしまうのか。それを見極める為に、あえてスライムの塊の中でも端の方のみを相手にした。
その手ごたえは……。
「火属性が有効か以前の問題だな。……実に普通だ」
「ただの氷に、弱っちいスライムだから、当然といえば当然の結果なのね」
破壊の痕を確認して、チマキマルは頷く。複雑な表情でコントラルトもスライムを見直していた。
凍り付いたのは単なる自然の猛威。スライムたちもそもそも雑魚でしかない。魔法が効かない心配はないが、特別有効という訳でもないらしい。
火の結果を見て、ファリスも考えだす。
「魔法も無効じゃないの。だったら、なるべく多くの敵を一まとめで撃破できるよう、お互いの着弾点を考える必要があると思うの」
なんせ範囲も広い。効率よく考えていかなければ、寒空の下で長々と震えていなければならない。
手ごたえとして、一撃か、あるいは取りこぼしても次の一手で十分退治可能。
相談もわずか。
まずは範囲でまとめて砕くべく、ファリスがメガフレアを、チマキマルもファイアーボールを放つ。
白い六枚の羽を広げて光に包まれるファリスに対し、チマキマルは骨や金で幻影のローブを纏い、骸骨のような相貌を覗かせる。
受ける印象は対照的だが、もたらされる結果は同じ。魔法の範囲に入った物は、氷もスライムもまとめて火に消えていく。
勿論、コントラルトも動く。お試しはもう終わり。容赦なくまとめて仕留めにかかる。
瞬く間に大量のスライムが消失。案外、こんな人数すら用意せずともすぐに片がつくのでは、とも考えたが。
何の加減か、半端に砕けた氷も出てくる。そこから、にょろりとスライムたちが這い出てきた。
「そう簡単にはいかないか」
見つけて、カズマが試しに天然水を撒く。
スライムが避ける動きをしたが、それだけ。かかった所で水のまま。即座に凍るほどの気温でもないし、凍る前にスライムも動いて固めるには至らない。
さっそく獲物を見つけ、ハンターたちへと迫るスライムたち。
「めんどくさいけど、自分で受けたお仕事くらい頑張らないとね」
傍観していたアルスレーテも、白い息を吐きながら動き出す。
全身のマテリアルを練り上げると、蒼く変わった瞳で前方を見据え、一気に放出。走り抜けた青龍翔咬波が一直線にスライムたちを殲滅していく。
「最多を狙うなら、まずはこっちですね」
水月の黒猫のような耳としっぽが寒さに負けず大きく動く。手裏剣「八握剣」にベノムエッジで毒を纏わせると、広角投射で投げつける。大雑把な命中にはなるが、相手の数もまだ多い。完全に外すのもまた難しい話だった。
範囲攻撃でかなりスライムたちは数を減らしたが、同時に足場を邪魔する雪氷も消えている。
足場の確保が出来た所を、カズマが全力で駆け抜ける。脚にマテリアルを集中すると、一気に加速。すれ違いざまに次々とスライムたちを粉砕していった。
ただ、術も使える回数が限られる。範囲攻撃の技が尽きれば、残るは一体ずつこつこつと倒すしかなさそうだ。
「これだけ思いっきり打ちまくれる機会、そうそう無いですからねー」
面倒な状況が残っても、水月は自身の身長を超えるパイルバンカー「アグヘロ」を両手で構えると、大きく振り下ろす。凍り付いたままだったスライムは、その氷ごと破片と打ち砕かれていく。
チマキマルは魔杖「スキールニル」を振り回す。魔法用ではなく、ただの打撃武器。本来の使用用途とは違うのだろうが、役には立っている。
「これは私にとっていい経験になるだろう……」
決して得意とはいえない。気を引き締めて、チマキマルは一体ずつ仕留めていく。
ただ、スライムたちも殴られてばかりでもない。動けないなら仕方がないが、解放された個体は本来の性質にのっとって、身近な獲物――つまりはハンターたちを襲い続ける。
注意していれば簡単に避けられるが、雪や氷に隠れて発見が遅れることもある。
死角から吐き出された酸が皮膚に浸み込むと、それなりに痛い。
命に係わるほどでもないが、愉快なものではない。
「あまり触らない方がいいだろうね」
なるべく距離を置いて、アルスレーテは遠くから気功波を飛ばす。場合によっては、螺旋突で一気にえぐる。
ファリスも魔法の効果を過信せず。デリンジャーによる射撃で、一体ずつ仕留めていく。
軍用双眼鏡を覗き、コントラルトはスライムたちを数えていた。一体でも逃がせば、それがいずれまた増えてしまう。
幸い、スライムたちは力の差など考える頭も無い。我先にとハンターたちに群がろうとして来る。
それもそれでまた面倒ではある。杖から銃に持ち替え、接近する間もなく、コントラルトはスライムたちを打ち抜いていく。
●
近寄っていたスライムの吐き出す酸を躱し、アルスレーテが鉄扇「北斗」で殴りつける。
「これで、ラストかしら」
へこんだスライムが溶けるように消えていく。油断なく構えたまま見渡すが、襲ってくる気配は無い。
念を入れてコントラルトがゴースロンで周囲を見て回る。
「倒した数からして逃げたとしても少数。しかもその痕跡も見当たらないとなると……」
戻ったコントラルトが、紅茶で暖まりながら報告。入れていた水筒もちょうど空になった。おかわりはもう必要なさそうだ。
「ようやくか。思ったより早かったというべきか」
ほっとしてチマキマルは腕を振るう。杖を振るいすぎて少々だるさも感じる。
片付いたとなると、もはやここに用は無い。
「動いて気にならなくなってたけど、やっぱり寒いんだな」
思い出したように、カズマが体を震わせる。
「はやくはやく。お家の暖かさが恋しいですっ。帰ったらあんなこんなー……」
ティピーを片付けながら、水月の心は家路へと向かっている。暖を取っていた火も消してしまうと、冬の寒さが一段ときつく感じる。
帰宅準備を整える頃にはあっという間に息の白さも戻っていた。
「からだが冷えてしまったの。みんなで温かいモノを食べに行って、暖まるのが、ファリス良いと思うの」
ファリスの提案に、積極的に否を唱える者もいない。
風に追い立てられるように、ハンターたちはその場を後にする。追いかける化け物は無い。
スライムの消えた道は雪も解け、やがては流通も戻る。以前の賑わいが戻るのもすぐだろう。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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面白かった! | 4人 |
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/12/23 21:51:58 |
|
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とても寒い相談卓 アルスレーテ・フュラー(ka6148) エルフ|27才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2016/12/27 07:37:28 |