• 蒼乱

【蒼乱】カンパネッラの夜

マスター:葉槻

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~50人
サポート
0~0人
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2017/01/01 07:30
完成日
2017/01/14 01:51

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●砂漠の宵は青い
 人の瞳がそう見せるだけだと言うが、この宵の口の青さがイズン・コスロヴァ(kz0144)が南方大陸に来て最初に気に入った風景だった。
 風が砂を運ぶ音以外には何も聞こえず、掻いた汗が直ぐ様蒸発するほどだった気温は日没と共にぐんぐんと下がっていく。
 見渡す限りの砂の世界。まるで1人取り残されてしまったような錯覚さえ覚えるこの瞬間が、イズンには神聖なものに思えた。
 約4ヶ月をここで過ごしてきた。軽い足音が背後から聞こえるが、それが青の一族の王となったケンの物だと振り返らずともわかる程の時間を。
「イズン殿、相談がある」
 この王は王となった後も、従者に頼らず己のことは己でしようとする傾向があった。
 ゆえに玉座に座っている時間より方々へ出掛けていることの方が多く、時折従者達が慌てて探していたりするのを見ることもある。
「ちゃんと私と会いに行くと側近に声は掛けましたか、王」
「あぁ、伝えてから来たよ」
 先日、早朝から数人の側近を連れて唐突に出掛けて行ってしまい、夜になっても帰ってこないことから本拠地は蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。
 深夜になって帰ってきたケン王を問うと、『ちょっと竜の巣を見てきた』などと言うものだから、更にコボルト達は悲鳴を上げて『無茶をしないでくれ』と懇願したという出来事があったばかりだ。
 本拠地へ帰ろうと踵を返したイズンに、ケン王はここで良いとイズンを引き留めた。
「先日は、我々を救世主様の拠点に招いていただいた。そのお礼に、今度は救世主様を我々が招きたいのだが……如何すれば良いだろうか」
 その申し出に、イズンは翡翠の瞳を瞬かせて、相貌を崩したのだった。



●助言は思わぬところから
「すかいらんたん?」
「まぁ、空飛ぶ小型の熱気球だな。小型の固形燃料の上に紙風船を被せて飛ばす。
 周囲に木があったりすると出来んが、砂漠なら燃える物もないから飛ばせるんじゃないか?」
 工房で何やらカンカンと細工を施しながらヴァーリが言った。
「昔、一度だけ見た事がある。中々ロマンチックで美しい光景だったぞ」
 油汚れが染みついた無骨な指先、何日帰宅していないのか……いや、何日風呂に入っていないのか判らないぼさぼさでフケだらけの頭皮。
 ロマンとはかけ離れたこのドワーフこそ第六師団師団長だったりするのだが、この指先が生み出す細工は繊細で美しく、審美眼だけは折り紙付きだ。
 ヴァーリが美しいと言うのであればそれはきっと本当に美しいのだろう。
「魚介類なら採れるんだろ? ちょっとした焚き火で魚介類を直焼きして、腹を満たしつつ、空気が冷えたところでランタンを飛ばせばいい」
「なるほど」
「固形燃料も素となるマテリアル鉱石はあの地下遺跡の地下から掘れる。ほぼ元手ゼロでやれるだろう」
 ヴァーリに礼を言って工房を後にする。
 イズンは、そのまま転移門を抜けるとケン王の下へと急いだ。

リプレイ本文

●Blue
 蒼に染まる砂漠の中で、ただただ広く続く地平線を望みながらHolmes(ka3813)は相棒であるイェジドのВасилийとくつろいでいた。
「人々の行き来する路地や屋根で狭まれた空は良く目にするけど、こうして何もない場所で空を見上げるというのは、久しぶりな気がするよ」
 そう独りごちて隣を見れば、Василийもまた黒曜石のような瞳で空を見上げている。
 もともと普段より自身の身だしなみに気を遣うようなイェジドだ。この美しい風景に目を奪われているのも無理は無いのだろうとHolmesは微笑んだ。
 ここ暫くは彼に無理をさせることも多かった。共に戦場を駆る相棒に対して謝ることなど無いが、こうしてのんびりさせるのも悪くない。
 徐々に藍を濃くする夜に包まれながら、HolmesとВасилийは2人静かな時を楽しんでいた。


「ね、凄いでしょ」
 キヅカ・リク(ka0038)の声も届かないほど、エイル・メヌエット(ka2807)はその光景に言葉を失っていた。
 日中からこの南方大陸をキヅカと巡り、さっきまで夕焼けの金色に染まった砂漠を見ていたはずだった。
 徐々に傾く夕陽に染まった砂漠も美しかったが、この蒼い砂漠は見た者を圧倒する。
 滅多に見られないエイルの不思議そうに驚いている表情が見れたのが嬉しくて、キヅカも微笑んで視線を蒼い砂漠に向ける。
「うわぁっ!」
 2人並んで青に染まる神秘的な砂漠を見ていると、突然イェジドのソルフェがキヅカに飛び掛かった。
「もー、なんだよ-!」
「ソルフェがリクくんに遊んでほしがっているからお願い」
 エイルがお願いするまでもなくキヅカは全力でソルフェと戯れ始める。
「……あ、そんなに全力疾走すると見失……まあいっか」
 ついには輝き始めた一番星に向かって全力ダッシュし始めてしまって、エイルは蒼い砂漠に1人取り残されたのだった。


 ディーナ・フェルミ(ka5843)は岩の下を静かに静かに見つめていた。
「そこぉっ!!!」
 岩の下を突いて引っ張り出したのは、サソリ……の雑魔。
「いやー! ちがうのーっ!!」
 ガゴンッとクロイツハンマーを振り下ろして昇天させると、次のサソリを探して再び奇岩の間をうろうろと彷徨う。
 大量のサソリをゲットしてディーナが戻ったのは蒼い砂漠が夜に沈もうという頃。
「スカイランタンを見ながらコボちゃん達とサバイバル料理ステキなの。頑張って楽しく参加するの」
 あまりの量にコボルド達はびっくりしてディーナと籠の中のさそりを見比べているが、そんな事はお構いなく、ディーナは持参した鍋に油をを入れて、油が温まるのを待っている。
「そーい!」
 ばじゃじゃじゃじゃっとサソリを鍋に放り込み、次々に素揚げにしていく。
 その手際の良さにコボルド達は「おぉー」と言わんばかりに見入っている。
「はい、出来たのー! コボちゃん一緒に食べよう?」
 何を隠そうコボルド達、普段はサソリを食べていたりするのだが(大事な蛋白源だ)、まさかヒト側から調理済みサソリを提供されるとは思っていなかった。
「いただきまーすなの」
 ディーナはその頭からがぶりと噛みついた。素揚げにされたサソリはカニっぽいようなエビっぽいような、甲殻類な味がしてそこそこに美味しかった。


●Colorful
「コボルトさんたち……前よりもずっと元気になって良かったです……」
 せっせと貝の身を貝から剥がし、魚に串を刺しと“おもてなし”の準備に勤しんでいるコボルド達を見てマルカ・アニチキン(ka2542)は胸が熱くなるのを堪えきれなかった。
 コボルド達との出逢いを経て南方大陸が過酷なまでに生物に凄く厳しい環境だと身を持って知ったと同時に、ここでしか見られない風景・住む生き物達が見せる生命力の輝きに眩しく魅せられた。
 以来、マルカは積極的にコボルド達と交流を持ちつつ、彼らと共に戦ってきた。
 イェジドのコシチェイがくつろげる場所をセッティングし、コボルドから貰った焼き魚をコシチェイ用に皿にとる。
 『くるしゅうない、ワシは満足じゃー』と言わんばかりに豪快に食事をしていたコシチェイが近付く足音に気付き顔を上げ、一瞥すると会釈する。
「よー、くつろいでるか?」
 貝串を咥えながらジルボ(ka1732)が声を掛けると、マルカはわたわたと立ち上がった。
「今挨拶に伺おうと……!」
「そそ、折角だからぐるっと回ってこようかなって。何? マルカも行く?」
「はい! お供いたします!」
 一応コシチェイにも声を掛けたが、彼は来る気が無いらしく食事に戻ったので、2人は連れ添って歩き始めた。
「グリムバルドさん、お久しぶりです」
「よー、元気?」
「あぁ、そっちも変わりないか?」
 コボルド達と戯れていたグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)を発見し声を掛ける。
 ジルボとグリムバルドは最初の船旅から顔を突き合わせていた。
 最初はどんな航海になるのかとワクワクして、慣れない海での戦闘に四苦八苦し、何日何ヶ月の航海になるのかと不安と期待でいっぱいだった。
 それが、たった一日で着いて、当時はまだ王ではなかったケンと出会って一気に物事が動いた。
 あの時、ケン達と会えていなければ『始まりのオアシス・アウローラ』も無かったかもしれない。
「あ、グリムバルドさんにジルボさん、マルカさんも発見!」
「あ、枢さん、お久しぶりです」
 イズン・コスロヴァ(kz0144)と歩いていた央崎 枢(ka5153)が3人を発見して駆け寄ってきた。
 枢もまた、ジルボ、グリムバルドとは航海から一緒だった1人で、マルカも含んで『始まりのオアシス・アウローラ』の関係者だ。
「あれ? いいの? 会議と書類で大変って噂聞いたけど?」
 ジルボがイズンに問えば、イズンは幽かに苦笑して頷く。
「一応、私がこの企画のアドバイザーも兼ねていますから」
「そりゃご苦労さん」
 その時、焼けた貝串を持って駆け寄ってきたコボルドからみんなで1本ずつ串を受け取る。
 思えば、この3ヶ月以上の時を一緒に過ごしたお陰か、イズンの表情もだいぶ柔らかくなったような気がする。
「……実はイズンさんってコボルドとかパルムとか大好きだよね?」
 枢に指摘されて柔らかかったイズンの表情が一瞬険のある物に変わるが、そこに他意がないことに気付いてすぐにいつもの冷淡な表情に戻る。
「嫌いと言った覚えもありませんが」
「もう少し笑ったらいいのに。なー?」
 食べ終わった串を回収しているコボルドにグリムバルドは同意を求めるように話しかける。
 するとよく話しのわかっていないコボルドは、首を同じように傾げながら「わふっ」と笑うように応えたものだから、イズン以外の4人の笑い声が響いた。
「あ、皆さんこんなところに」
 今辿り着いたのか、金目(ka6190)が早足で5人の元へと近寄る。
「おー、お疲れさん」
「金目さん、お久しぶりです」
 この5人は『始まりのオアシス・アウローラ』の拠点整備で一緒だった。半ば同窓会のような賑やかさになるのも無理からぬ事だ。
 あの時はあぁでもないこうでもないと話し合い、限られた時間と人手の中で最善を目指し様々な手を尽くした。
 今、オアシスの周囲には新たに植物が芽吹き始めたと報告があったとイズンが告げると5人はそれぞれに喝采を上げて喜んだ。
「あぁ、それで思い出した。イズンさん」
 金目の真面目な声に、イズンは表情を引き締め向かい合う。
「ソサエティの上層部や各国が、この土地をどうするつもりなのか、結論は出ましたか?」
「えー。金目、こんな時にまでその話?」
「あ、それ俺も気になる」
「あ、俺も」
 ジルボが口をへの字にして見せるが、枢が興味を示し、話しを聞きつけた岩井崎 旭(ka0234)が軽く挙手しながら金目の質問を支持して飛び込んで来た。
 枢と金目、グリムバルドと旭の4人は先日この青の一族と呼ばれるコボルド達に武器の扱いを教えたばかりだ。
 『守るために』と教えはしたが、それが『人から』であるとすれば由々しき事態だ。
「基本的には不可侵です。覚醒者以外はまだこの大陸には近づけませんし、強欲王を倒したとは言え、まだ歪虚が闊歩するような地域ですから」
 かといって、この世界全土の負を背負うマテリアル火山を持つこの地を放置するわけにも行かない。
「今はそれ以上も以下もありません。また何か動きがあれば必ず皆さんにお知らせします」
 イズンの言葉にひとまず4人は胸を撫で下ろす。
「あぁ、皆さんが指導してくれたコボルド達なら、この北の方のブロックで“おもてなし”を頑張っている筈ですよ」
「お、じゃぁ様子見に行こうかな」
「あ、僕も行きます」
「じゃぁみんなで行こう行こう」
「ちゃんとサボらず走り込んでるかなー?」
 わいのわいのと話しながらグリムバルド、金目、枢、旭の4人は彼らの“生徒”達の元へと向かって行く。
「では、私も行くところがありますので」
「おー、またなー」
「イズンさん、お疲れ様です」
 一礼して去って行くイズンを見送って、ジルボとマルカは顔を見合わせた。
「……戻るか」
「コシチェイが待ちくたびれていそうです」
 笑って2人はコシチェイの元へと戻っていった。


「まぁこれでも飲んでみなよ」
 折角の年末だし、綺麗なものを眺めてゆっくりしたい。
 そんな思いで参加したエリオ・アスコリ(ka5928)は持参したシードルを平たい杯に注ぐとコボルドに手渡した。
 不思議そうに眺めたり、すんすんと臭いを嗅いだりしていたが、ぺろっと舐めて……全身の毛を逆立てた。
「あはは! ダメだった? 美味しかった?」
 コボルドは少し困ったように耳を倒して首を横に振る。どうやら彼(多分、彼)の口には合わなかったらしい。
 他のコボルドにも勧めてみたいんだと告げれば、彼が傍を通りかかった一体を呼び止める。
 そのコボルドもまた、ふんふんと臭いを嗅いだ後、ぺろりと舐めて……ぱぁっと瞳を輝かせた。
「お、いけるクチかな? 美味しい? もっと飲んで良いよ」
 勧められ、嬉しそうに音を立ててあっという間に杯の中を空にするのを見て、エリオは笑った。
「いい飲みっぷりだね!」
「エリオさんはススメ上手なんですね」
 エステル・クレティエ(ka3783)とルナ・レンフィールド(ka1565)がその様子を見ながらくすくすと微笑う。
「あ、これ、使ってみませんか?」
 基本的に味付けは天然の塩だけ。エステルはハーブソルトを持参して焼けた魚に振りかけた。
「どうぞ」
 手渡されたコボルドはハーブの臭いに少し躊躇しながら、それでもぱくりと一口かぶりつく。
 耳と尻尾をピン! と立てたコボルドは、がっつくようにあっというまに魚を食べ尽くした。
「気に入って貰えたようで良かったです」
 ニコニコと微笑むエステルに、コボルドも嬉しそうに尻尾を振り返す。
 【EC】のメンバーが集まったここは、コボルド達による“おもてなし”というよりは、お互いがお互いをもてなし合うように穏やかな空気が流れていた。
「おー! やったー! ついに出来たのじゃっ!!」
 奇岩の陰でなにやらこそこそとコボルドの子どもと遊んでいたディヤー・A・バトロス(ka5743)が一体のコボルドを引き連れて戻ってきた。
「皆、見ていてくれ」
 そう言うと、一体のコボルドと向き合う。その表情は今から重大な勝負でもするのかと言うほど互いに真剣だ。
「行くぞ!」
 ディヤーのかけ声と共に互いに手を打ち合い、腕をクロスし合い、最後に両手でハイタッチを決めた。
 その流れるような動作、時間にして3秒ほど。
「どうじゃ! これぞ異文化交流! 名付けてぴしぱしぐっぐのハイタッチじゃ!」
 一同はおー! と感嘆の声を上げてディヤーとコボルドに拍手を贈った。


 浅黄 小夜(ka3062)は蒼い砂漠を堪能したあと、受け取ったものを見て首を傾げていた。
「どうして、これが空飛ぶんやろう……」
 タダの紙袋と糸と竹……のようなものをつなぎ合わせたランタンを手渡され、1人ぽつねんと立ち尽くす。
「あの、これが飛ぶ仕組み、とか……教えて貰えんやろうか?」
 コボルドにそう声を掛けるも、コボルドも困ったように首を傾げ、耳を倒してしまう。
(あぁ、かわええなぁ)
 猫派だが、犬も含め動物全般が好きな小夜は、くるくると表情の変わるコボルド達を見て自然と顔がほころんでしまう。
「何か、困りごとか?」
 そこに人の言葉が話せるコボルドが現れて、小夜に声を掛けた。
(あ、砂漠の国の神様みたいや)
 ピンと立ったろうそく耳に黒毛のシャープな顔立ちは、社会の教科書でちらりと見かけた古い絵の写真を思い出させた。
 それゆえだろうか蒼い布を身に纏ったそのコボルドは言葉を話せるという以外にも他のコボルドに比べて知的な感じがする。
「どうして、これが空飛ぶんやろか……って、わかりますか?」
「……ふむ。私も専門的な事は分からぬが……聞いた限りを教えよう」
 そういって砂に指先で図を書き始める。
 固定された燃料が燃え、紙袋の中に熱を送る。熱せられた紙袋の中の空気がは周囲より軽くなるため、空を舞う。
「……何故、熱せられた空気が軽くなるのかはわからん。だがそういうものらしい」
「そうなんや……ありがとうございました。えぇと」
「あぁ、我が名はケンという。今日はゆるりとして行かれよ、小さき救世主」
 ケンと別れたあと、金目を見つけた小夜は挨拶の後、先ほど逢ったケンというコボルドの話をし、そこで始めてケンが一族を纏める王だと知ったのだった。


「コボルトの皆さん、お招きいただき、ありがとうなのです」
 ぺこり、とお辞儀をしたUisca Amhran(ka0754)につられるようにして、向かえてくれたコボルド達も各々ぺこんぺこんと頭を下げた。
 案内された焚き火の前でイェジドのクフィンと共に暖を取っていると、次々にコボルド達が焼けた魚や貝を運んできてくれた。
「クフィン、一緒に戦ってくれて、ありがとう♪ これからもよろしくね」
 本来の好みは肉なのだが……と、ちらっと主人を見て、周囲の臭いからも肉の臭いがしないことに諦めの溜息を吐いてクフィンは魚を食べ始めた。
「そうだ。このお漬物、お魚にも合いますよ?」
 どうですか? と勧めると、最初は臭いで鼻の頭にしわを寄せていたコボルド達も、一口食べて、好き派と嫌い派に見事割れた。
 特に酸味が強い物は苦手なコボルドが多いらしい。
 この辺にも個性があるのかとUiscaは笑って周囲のハンター達にも振る舞った。


 火椎 帝(ka5027)は酷く感動していた。
 帝国にあるブラストエッジ鉱山。ここでコボルドとの戦いがあった。
 それ以来コボルドの事が気になっていた大の犬好きな帝にとって、コボルド達が友好的に接してくれるなんて、嬉しくて仕方が無かった。
 そしてついに意を決した帝は自分に魚を勧めてくれたコボルドに問いかけた。
「ねぇ、俺たち人間のこと、好きになってくれた?」
 きょとんとした茶色い目を覗き込みながら、どくどくと煩い心音を押し込むように生唾を飲み込んだ。
「わふっ!」
 茶色い瞳はキラキラと輝きながら、彼らの尻尾ははたはたと上機嫌に揺れる。
「あぁああああ!! 有り難うっ!!!」
 コボルドの手を取ってぶんぶんと大きく振る。
 砂を含んでいるとはいえ、やわらかな毛並みに対し、その手のひらは今までこの厳しい砂漠ばかりの環境で生き抜いてきた歴史を思わせる固い手のひらだった。
 その硬さと柔らかな毛並みの対比に帝はさらに胸を熱くしながら、コボルド達と笑い合ったのだった。


●Orange
 鷹藤 紅々乃(ka4862)は胸のドキドキがばれないように必死だった。
 というのも、紅々乃の中で気になる殿方ナンバーワンの久我・御言(ka4137)と二人っきりというシチュエーションだからだ。
 ……いや、周囲にコボルド達はいるし、他の参加者もいるのだが。
「この貝はもう食べ頃だそうだよ? 如何かな?」
「はい! いただきます!!」
 焼き串を手渡して貰う際に、触れる指先。
 紅々乃は思わずびくりと手を引っ込めてしまい、驚きにまあるくなった御言の瞳がふわりとまた細められた。
「大丈夫、ここを持てば熱くないよ」
「あ、はい、すみません……あの、久我さん、今日はお付き合い頂いてありがとうございます」
「なに、さしたる用事も無かったのだし礼など不要だよ。それに、君の様な可愛いお嬢さんの誘いを断る理由の方がない」
 御言の微笑に、今度は紅々乃が双眸をまあるくして、ぼふっと顔から煙を吐いた。
「あのっ、久我さん、緑茶は如何ですか? お魚か貝のお代わり、頂いてきましょうか?」
「有り難う。でももうだいぶお腹はいっぱいかな。鷹藤くんは如何かな?」
「私も、もうお腹いっぱいです」
 お腹というより胸の方がいっぱいなのだが。
「彼は……おや、どうやら満足して貰えたらしいね」
 紅々乃の横でお腹がいっぱいになったリーリー、夜芸速彦はくるんと丸くなってすやすやと眠りに就いている。
「はい、お魚をたくさんコボルドさん達にいただいたので」
 一緒にその幸せそうな寝顔を見て、御言と紅々乃は微笑み合った。
「……さて、そろそろランタンを飛ばせる時間かな?」
 御言が立ち上がり、つられて紅々乃も立ち上がった。
「良ければ手を拝借できるかい? はぐれない様にね」
「久我さん、手を繋いで良いですか?」
 2人同時に手を差し伸べながら口にして、2人は思わず笑い出した。
「では、失礼して」
 恭しく紅々乃の手を取った御言の手は大きく、力強い。
 御言のエスコートで2人は焚き火から少し遠ざかり、ランタンの灯り以外は届かないところで火を入れた。
 暖かな橙色の火は紙袋を膨らませるとふわりと紅々乃の手を離れ浮いた。
 舞うランタンに紅々乃は静かに祈りをのせる。
「……何を、祈っていたのかな?」
「……蒼乱で傷付いた命、全てが癒されますように、と」
「鷹藤くんらしいね」
 再び手を繋いでランタンを見送っていると小さく紅々乃がくしゃみをした。
「おや、大丈夫かね? しまったな、上着の一枚でも持ってくるべきだったか」
「あの、もっと、くっついても良いですか?」
「もちろんだとも、こちらの方が風下だろう」
 風除けになろうとしている御言を見て、紅々乃は『そうじゃない』と思いつつも、自分がやはり御言には異性として見られていないのだろうかと消沈する。
「大丈夫かね? 風邪を引く前に帰ろうか」
 口数が減った紅々乃を心配して御言が声を掛ける。それに首を横に振って否を告げて紅々乃は決死の思いで御言を見上げた。
「……御言さん、ってお呼びしても良いですか?」
 御言は軽く目を見張って3度瞬き紅々乃を見る。
 星と月以外の灯りがない砂漠では、御言には紅々乃の顔色こそ見えないが、そのきらきらとした綺麗な双眸が真剣に自分を見ているのを感じた。
「構わないとも。では私も名前で呼ばせて貰うが構わないかね?」
 御言の言葉に紅々乃は弾けんばかりの笑顔で応えた。
「喜んで!」
 その後、2人はもう一度手を繋ぎ直すと、次々に浮かぶランタンを見つめ続けたのだった。


「亜人の習慣や文化を見に行くが、一緒に来ないか」
 そう兄である久延毘 大二郎(ka1771)に誘われて、南方大陸へやってきた久延毘 羽々姫(ka6474)だったが、亜人を見ると言いつつ料理を受け取ると、さっさとあまり人やコボルドが来ない隅へと行ってしまった大二郎を見て首を傾げた。
 恐らく味付けは天然の塩だけなのだろう、磯の香りと優しい塩味がする串焼きの魚にかぶりつきながら羽々姫は大二郎に物言いたげな視線を送る。
「今回みたいな作戦に出るのは初めてだろ。どうだった?」
 大二郎がようやく重い口を開いたのは、もうすっかり夜も更けて、気の早い参加者達がランタンを灯し始めた頃だった。
「どう、って……うーん……」
 漠然とした質問に腕を組んで答えを探す。
「まあ……少し甘く見てたな。やばい歪虚は出て来るわ、兄貴も大怪我するわ……人同士の戦いもあったって聞くし……訳わかんなかったよ」
 言いつくろった所でこの頭の良い兄にはばれるのだ。率直な言葉で答えた。
「こんな戦いは過去に何度もあった。近い内、また似たようなのが起こる筈だ。俺もお前も、次は怪我じゃ済まないかもな」
 羽々姫の方を見ないまま紡がれる脅すような言葉に、羽々姫はまなじりを上げた。
「羽々姫、ハンター辞めんなら今の内だぞ。仕事が不安なら俺の学者稼業の助手してくれれば良い」
「あたしはハンターを辞めないよ、兄貴」
 即答だった。あまりに早い返答に面食らったように大二郎が羽々姫を見た。
「危険でも、死ぬかも知れなくても……この世界が頼れるのはあたし達しか居ないんだから」
 義理人情に厚い姉御肌タイプの羽々姫には、今更な脅しだ。
 突然転移して、訳もわからないところを助けてくれたのは親切なこの世界の人々だった。
 そして死んだと思っていた大二郎と再会し、この世界のことを教えて貰って決めたのだ。
 『今がこの世界の危機ならば、自分も一肌脱ごう』と、もう腹を括ってしまったのだから、仕方が無い。
「それに、何だかんだやってて楽しいからさ、この仕事」
 カラリと笑って腰に手を当てて胸を張る。
「……ま、こっちの方が一番辞めたくない理由なんだけど」
 そんな羽々姫を、眉を八の字にしながらじぃっと見つめ……大二郎は根負けしたように溜息を吐いた。
「そうか……なら俺はこれ以上何も言わんよ……どれ、ランタンでも飛ばすか」
 立ち上がってランタンに火をくべる。
 熱を孕んで膨らんだ紙袋は暖かな光りを纏って浮かび始めた。
「ねえ兄貴…やっぱり、あたしの事心配?」
 空へと舞い上がっていく2つのランタンを見送りながら、羽々姫が大二郎を見上げるように問うと、いつもの兄とは思えない程弱気な声が返ってきた。
「……迷惑か?」
「ったく……そんな事ウジウジ考えてんじゃないよ」
 約10cm上の頭を両手で掻き乱す。
「ばか! やめんか!」「うっさい、らしくないのよ!」なんて言い合っていると、両手首を大二郎に掴まれついに止められた。
「向こうに居なかった分、少しは兄らしい事言わせてくれ」
 ずれた眼鏡を直しながら、拗ねたように言われて羽々姫は破顔した。
「……ありがとな」


 アルバ・ソル(ka4189)は妹であるエステル・ソル(ka3983)と共にスカイランタンの灯の下を歩いていた。
 沢山の光りが舞う幻想的な中で、不意に立ち止まったエステルがアルバを呼んだ。
「お兄様、わたくし覚えています。前にお兄様と一緒にキャンドルポットを作りました」
「あぁ、勿論覚えている」
「あの時のわたくしから、今のわたくしはちょっとだけ成長しました」
「そうだね。あの時から思えばエステルは大分成長してる……泣き虫な所はまだ若干不安はあるけれど、ね」
 そう微笑みながらアルバが言うと、むくれた表情になったエステルがアルバの手をぶんぶんと乱暴に振った。
「そうじゃなくて!」
 いつにない真剣な表情に、アルバも思わず言葉を飲み込んだ。
「……お兄様にも大切なお姉さまが出来ました」
 あの日。アルバの姿を見つけた途端、泣きながら抱き付き、来ないかと思ったとぐずったエステル。
 けれど、あの時よりも大切なものを抱くように優しさと強さを伴った腕がアルバの背に回された。
「わたくし、お兄様が大好きです。お兄様の一番がお姉さまになって、わたくしの一番がお兄様でなくなっても、
ずっとずっと大好きなお兄様です!」
「エステル……」
 アルバは目を見張る。妹がこんな事を考えていたなんて思いもしなかった。
「ああ。ボクにとってもお前は大事だよ。大事な妹だ」
 アルバはこの年、恋人が出来て、大きく変わった年になった。
 さりとて、エステルが大事な妹であることには変わりはない。
 願わくば、彼女が幸せである様に、と祈りを込めてアルバはエステルを強く抱きしめ返したのだった。


「んっ! 魚美味い!!」
「うん、優しい味ね」
 全身を砂だらけにしてキヅカとソルフェが戻ってきたのはそれからたっぷり1時間後。
 その間、エイルはコボルド達とコミュニケーションを取りながら一緒に調理などをしていたが、帰ってきたキヅカとソルフェを見て少し頬を膨らませた後、「おかえりなさい」と迎え入れたのだった。
「僕の持ってきたお肉も食べてね?」
 コボルド達に差し入れをしつつ、2人はコボルド達との食事を楽しんだ。
「はい」
 僅かに肌寒さを感じたエイルにキヅカは自分の上着を肩に羽織らせた。
 陽が沈むと途端に気温が下がる。砂漠に来るのが初めてのエイルには驚くことばかりだ。
「ありがとう」
 微笑めば、キヅカは照れたように視線を逸らした。
「突然、砂漠を見に行こうって言われたときにはびっくりした」
「無理やりでも引っ張ってこないと姉さん絶対に休んだり遊んだりしないから」
「だって、まだ色々片付けなきゃ行けない事があったんだもの、それを放ってなんて」
「もー、こうでもしないと自分の事全然優先しないでしょ、姉さん」
「うん、でも来て良かった。こんな世界もあったのね」
 嬉しそうに微笑むエイルを見て、キヅカは多少強引にでも連れてきて良かったと微笑み返す。
 エイルもまた、いつも彼方此方で危険な戦場を駆け抜けているキヅカを間近で見ている分、今日はゆっくりして欲しいと願う。
 2人はのんびりと語らいながら時が来るのを待った。
「そろそろかな?」
 配られたランタンに『遍く命に幸いあれ』。そう記したエイルは火をくべてそっと手を離した。
(来年もまたこうして二人で一緒に年が越せますように)
 願いをのせてキヅカも少し遅れて手を離す。
 寄り添うように天上へと昇っていく二つのランタンを目で追えば、周囲のランタンと合わさり、夜空いっぱいに暖かな灯火を見た。
 一心に夜空を見上げているエイルの横顔が今にも泣きそうに見えて、キヅカはそっとその手を握った。
 その手の温もりにエイルはキヅカを見るが、彼の視線はその時は既に夜空にあった。
「僕も帰る場所……になれるかどうかわからないけど、独りにはさせないから……また、来ようね」
 こちらを見ずに告げる少年の横顔に、エイルは小さく微笑んで握られた手を握り返した。
「ありがとう」
 ――どうか、リクくんに、皆に、優しい明日を。
 エイルの願いは乾いた砂漠に雫となってこぼれ落ちた。


「ダッチオーブンがあればケーキもローストビーフもパエリヤも野外で作れますけどぉ、冬の砂漠の夜の寒さを考えると汁物の方が喜ばれるかと思いましてぇ」
 そう考えた星野 ハナ(ka5852)はビーフシチューとポトフを作っていた。
 野菜満載なポトフはコボルド達に大変好評で、あっという間に完売御礼となった。
 ビーフシチューも辛うじて自分の分は確保して配りきり、ようやく後片付けを終えたハナはほぅと一息吐いて、空を見上げた。
「昔の写真で天灯を見ましてぇ、すっごく憧れてたんですよねぇ。コロニーじゃああいうのはご法度でしたからぁ。もう本当にワクワクですぅ」
 だいぶ気温が下がってきた。そろそろかな、と思っていたら一つ、二つと橙色の灯りがホタルのように浮かび始め、ハナはぱぁあと目を輝かせて、次々に浮かび上がる光景に見入った。
「……くちゅん。こんな……こんなロマンチックな状況で独り自分の肩を抱えてるなんて寂しいにもほどがありますぅ 。慰めてくださいぃ、コボルトさぁん」
 ハナの料理をずっと手伝ってくれていたコボルドにしがみつくと、最初はくすぐったそうにじたばたしていたコボルドも、次第によしよしとハナの頭を撫でてぎゅうっと抱き返してくれた。
 すこし砂っぽいのは環境上仕方が無い。だがそれ以上に伝わる温もりに、ハナは目一杯甘え、癒やされたのだった。


「こちらでも点けるぞー」
 ディヤーのリトルファイアで点火した【EC】の4人は互いに顔を見合わせた。
「せーの!」
 十分に膨らんだランタンは暖かな輝きを放ちながらふわりふわりと浮き上がる。
「わぁ」
「おぉ、本当に浮いておる!」
「……」
 言葉を失って見上げるエステルにルナは笑いかけた。
「何を考えてる?」
「……あんな風に声が広がればいいなって」
(私達の伝える形で。ルナさんが広げてくれて、ディヤーさん達が応えてくれた)
 【EC】として戦うみんなの助けが出来たらと、先の大きな戦いでエステル達は奔走した。
「音楽も、ルナさんの愛する音楽がそれを聞いた人の笑顔が、広がりますようにって」
「じゃぁ、ここで一曲どうでしょう?」
 見上げるエステルにルナがリュートを片手に提案すれば、もちろん、とエステルは答えてフルートを取り出した。
 2人の奏でるハーモニーは高く広く光りと共に舞い上がり響き合う。
「我が師は、魔法も道化も音楽も、全ては人の笑顔のための手段じゃと言うような人でな」
 エリオの横に腰掛けたディヤーがエステルとルナを見つめながら口を開いた。
「そういう意味で、二人は、我が師とよう似ておるよ」
 音魔同源。心を伝える術として。
(我が姉よ見て居るか、聞こえるか)
 生き別れとなった姉に、この風景が伝わるように、と願いながら宛先のないエレメンタルコールを飛ばす。
 2人の演奏が余韻を残し終わる。
 パチパチという拍手は方々から広がるが、その中の一つに見知った少女を見つけてエステルが微笑んだ。
「小夜さん」
「フルートとリュートが聞こえたから……きっとお二人や……って。エリオのおにいはんも、お久しゅうです」
 腰掛けているエリオにぺこんとお辞儀をすると、エリオは片手を上げて返した。
「うん、小夜さんも変わりない?」
 はい、と答えて小夜はルナ、エステルと顔を見合わせると次いで空を仰いだ。
 満天の星空、それよりも明るく揺れる橙色のランタンの灯。
 砂漠も砂漠の夜もランタンも……全部今日初めて小夜が見て触れた物だ。
 この世界でなければ見られなかった物、触れられなかった物をまた一つ知ることが出来た。
 小夜はまだ飛ばしていなかった自分のランタンに灯を入れて貰って、そっと手を離した。
 ケンが教えてくれたとおり、それは熱いくらいの熱を孕むとふわふわと浮いてあっという間に小さくなってしまった。
 その後、エステルの誘いによりみんなでホットミルクを飲むことになった。
 リキュール入りのちょっぴり大人味。
 しんと冷え込む砂漠で飲むそれはとても特別な感じがして、エリオもディヤーも大事そうに両手で抱えて飲んだ。
「ルナさん、皆、大好き。来年もどうぞ宜しくお願いします」
 エステルの言葉に皆微笑んで。
「私もエステル大好きー」
 ルナの抱擁を全力で抱き留めつつ、エステルも声を上げて笑ったのだった。


 金目はコボルド達の接待を存分に受けながら、酒を呷った。
 振り返れば随分と遠くまで来たものだ。
 ハンターになると決めて、実際に動き出したのは冬の終わり頃。
 一年も経たないうちに、いろんな事があった。
 出会いも、別れも、既知の顔も増えてきた。
 そのどれもがあのまま工房に籠もっていたなら交わらなかった縁。
 辛い夜もあった。哀しい別れもあった。怖い思いもしたし、戦いたくないと思う中でも戦う以外の選択肢がなかったこともあった。
 それでも、それ以上に知り合った友の笑顔、依頼人の笑顔の方が思い出せるのは幸せなことかも知れない。
「そう、あなたたちとの出逢いも」
 そういって隣のコボルドに笑いかけるとコボルドははたはたと尻尾を振って応える。
 ふと気付けば頭上には浮かび上がった数々の灯り。
「あぁ、綺麗だ」
 こんな細工が造れたら。そう思った金目の耳には優しいフルートとリュートの旋律が聞こえた。
 良い夜だ。
 願わくば来年も、この場所で、こんな景色を見れますように。
 金目は空へ杯を掲げると、残っていた酒を飲み干した。


「よ、元気だったか?」
 旭が声を掛けると、彼の槍の“生徒”だったコボルド達が一斉に駆け寄った。
「あはは、元気そうだな! 今日は一緒に飯食おうと思って……」
 ごそごそと取り出したのはキャベツに人参にピーマン……と様々な野菜だった。
 それを見たコボルド達は目を丸くして……そして物凄く瞳を輝かせた。
「……お?」
 旭は失念していたが、ここは砂漠だ。まず、緑がほぼ無い。あってもオアシスの周囲にちょろっとか、サボテンぐらいなものだ。よって彼らにとって野菜というものはとんでも無く特別で、生涯食べることが出来ないかも知れないぐらいの高級品なのだ。
「なんだ、そんなに喜んでくれるならもっと持ってくれば良かったかな……よーしじゃぁ、飯作るか!」
 ……どちらがもてなす側なのか分からない程、旭の周りは大いにコボルド達によって盛り上がり、十分に腹も満たされた。
「うーん」
 その後、色々思い出しながらペンを握っていたら、へたくそなドラゴンらしき何かが出来上がっていて、旭は思わず笑ってしまった。
「ははっ。そうだな。散って行った赤龍の眷属に祈るニンゲンがいたっていいだろ」
 お互い大変だったもんな。お疲れさん。そう思いながら火を入れたランタンを手放した。
 ゆらりと浮かび上がったランタンと頭上の星を見て、この半年を振り返る。
(俺は砂漠が多かったけど、世界をまたいであっちこっちで大騒ぎだったよなぁ)
 宇宙戦に死に掛けの星、エバーグリーン。そして故郷でもあるリアルブルー。
「機械物苦手なの、なんとかしなきゃかなー」
 来年の目標かなーなんてのんびりと構えて、旭は天上の星に手を伸ばした。


 ジルボは1人昇っていく灯りを見つめていた。
 願い事や祈願というのは好きではない。
 欲しいものは自分で勝ち取るものだと思っている。
 だから、ランタンには何の祈りも願いものせずに空へと放った。
「歪虚も人も……死んだ奴等の魂もこんな感じで空に帰るのかね」
 ぽつりと呟いて、うーんと首を傾げた。
「ま、死んだ後も旅は続くだろうし」
 そう言って取りだしたのはハーモニカ。
 お次は楽しい旅になる様な、そんな曲をと思って吹き始めたのは、吟遊詩人が良く演奏しているある航海士の冒険譚。
 幾つもの荒波とハプニングを乗り越え、仲間との出逢いと別れを繰り返しながらも見事目的を達成するという子どもにも人気のストーリー。
(死んだ後にも楽しみがあったっていいだろ?)
 『bon voyage!』――良い旅を!


 どこからか聞こえるハーモニカの音に枢は自分のここまでの足取りを思い出す。
 宇宙、海、砂漠、どれも初めての戦いだった。
 たどたどしい言葉しか操れないと思っていたケンは、神霊樹が復活し翻訳がされるようになって口調が全然違ってびっくりしたこと。
 そして今は王としての風格を身につけてきていること。
 想い返せばコボルド達も自分達も大きな変化を向かえた半年だった。
 手放したランタンはゆらゆらと漂いながらも真っ直ぐに天上を目指し昇っていく。
「この地が栄えていくこと、切に願うよ」
 いくつもいくつも昇っていくランタンの灯を見送りながら枢は強くその光景を眼に焼き付けた。


 愛機であるヴェルガンドの肩口に腰掛け、グリムバルドは“あの日”以来持ち歩いていたオルゴールを開いた。
 ぽろんぽろんと奏でられるのは素朴で優しい心安らぐ音色。
「聞こえるか?」
 白竜としてではなく、マシュとマロ、双子竜に届く様にグリムバルドは呼びかけた。
『なんでちかそれ』『ちんこんかでもないでちね』
『『でもいい音でち』』
 そんな二匹の声が聞こえてきたような気がして、グリムバルドは喉の奥がきゅっと鳴った。
「オルゴールだよ。お前達に聞かせてやろうと思ってたんだ」
 強欲竜はみんなやっかいだ。
 今なお北方の星の傷跡に封じられているメイルストロムも。その忠臣だったザッハークも。そして、マシュとマロも。
 彼らは歪虚で負の存在で、人類とは相容れないのに、どこか憎めなくて。
 決して交わることのない平行線上にいるのに、時折そこに心があるように思えてしまって。
 心があるなら、いつか交われるような気がしてしまって。
 コボルド達からしたら天敵だったことに間違いないだろう。事実、いままでずっといたぶるようにあの双子竜に殺されてきたのだから。
 だが『昨日の敵は今日の友』という言葉が無いわけでは無いから、期待してしまう。
 五大龍の一柱である赤龍、メイルストロムが歪虚となったその原因は何だったのだろう。
 そこが紐解かれたとき、何か変わるのだろうか。
 昇りゆく橙の灯り。あの双子竜が見たら喜んで追いかけそうだな、なんて想像してしまったら笑えてきてしまって肩を震わせた。
 そして、そうでありますように、と願い、緩やかに止まったオルゴールのねじを巻いて再び音色を響かせた。


 たくさんのランタンが視界いっぱいに浮かぶ中、Uiscaは自分のランタンを抱えたまま呟いた。
「かつては敵対していたというコボルとさんたちともこうして仲良くなっています。それなら、歪虚さんたちとも仲良くなることはできないでしょうか…?」
 人語を理解出来る歪虚は多い。理性的な思考回路を持っている歪虚とももう何体も出会った。
 なのに、彼らと手を取り合おうとしても拒絶されるのだ。
「歪虚さんが糧にしている負の感情は、人から無くすことはできません。負があるからこそ、正の力も成り立つ……。それならば、歪虚さんたちをすべて滅ぼすことが解決になるとは思えないのです……」
 救えなかった歪虚の双子竜に思いを馳せつつ、ランタンを飛ばす。
 十分に熱を孕んだランタンは真っ直ぐに天上を目指し舞い上がっていく。
 それを見送り、ついに見えなくなったところで、Uiscaは静かに目を閉じた。
 そして焚き火のもとへ戻ると、歓待してくれたコボルト達を労うために巫女の舞を踊り始めた。
 柔らかく優しい舞いは、舞いという文化を知らないコボルド達の心にも直接響いた。
 舞いを終え、熱い吐息を零しながら額の汗を拭うと、Uiscaは輝くような笑顔でコボルド達に手を差し出した。
「この良き関係をこれからも続けていきたいのです。これからもよろしく、なのです」


 イズンはランタンが無事空を舞っているのを見て、ほっと胸を撫で下ろした。
 そして一つに視線に気付き顔を向けると、バチリと視線のあった相手が慌てて頭を下げた。
「あ、えっと……じろじろ見てすみません。綺麗な人だなと思って、つい」
 帝の取り得である素直さがここで大暴走しているが、イズンは首を傾げるのみだ。
「どこかでお逢いしたことが?」
「あぁ!? いえ! 多分初対面ですすみません、あ、僕は火椎帝です」
 平謝りしながら自己紹介をする帝にイズンは「そうですか」と淡々と応じる。
「私はイズン・コスロヴァです」
「あの、その制服……帝国軍の方、ですよね? 僕所属はAPVなんです」
「そうでしたか。私は第六師団で副師団長を拝命しております。今日はコボルド達の誘いに応じて下さってありがとうございます」
「いえ、僕の方こそ素敵な夜に御招待頂き、ありがとうございます」
 互いに頭を下げ、ふと夜空を見上げた。
「僕の世界にもね、こういうお祭りがあって。ランタンの灯りが視界から消える時、苦難も一緒に舞い上がって消えてしまうって、信じられてるんです」
「そうですか。良い信仰ですね。……綺麗に舞ってくれて良かった」
 舞い上がる橙の灯を見つめるイズンの表情は優しい。
 その横顔を見つめ、帝もまた空へと視線を移すと、暫く2人はそのまま橙の灯り舞う光景に見入ったのだった。


(……何だろう、胸がいっぱいになる光景だな……)
 重体の身を推してでも来てよかった、と鞍馬 真(ka5819)は喧騒から少し離れた場所でイェジドのレグルスに埋まるように凭れながら次々とランタンが空へ舞う光景を見つめていた。
 リアルブルーに行って、出会いと別れを経験して、死にかけて……ここ数ヶ月で、本当に色々あった。
(敵としか思っていなかったコボルト達とこうして交流を持てるなんて思ってもみなかったし)
 コボルドに手渡された焼けた魚の串を見て、真は笑みを零した。
 一方でこの数ヶ月は、力不足を感じることも多かったのも事実で。
(縁した人々や種族を、未来を守るためにもっと強くなりたい)
 ぐっと拳と全身に力を入れれば、身体の節々が悲鳴を上げて、真は「いたた」とレグルスの深い蒼色の毛並みに身を再び埋めた。
「そうだ、コボルト達は音楽を理解できるのかな?」
 痛みが落ち着いた頃、ゆっくりと身体を起こし、フルートを取り出す。
 空を舞うランタンのゆらぎに合わせるように、静かで穏やかな曲を奏で始めた。
 その音色に周囲のコボルド達は嫌がる素振りはない。むしろピコピコと耳を動かし、ひこひこと髭をそよがせ聞き入ってくれているようだった。
 一曲終えて、次は少し賑やかな曲調に。
 気がつくと真の周囲にはコボルド達で輪が出来ていて、真による小さな演奏会のようになったのだった。


 志鷹 都(ka1140)は奇岩の一つに腰掛けると、自家製ハーブティーを飲みほっと一息吐いた。
 近くの焚き火の傍ではせっせととコボルド達が串物を焼き、焼けた物をハンター達に配っている。非常に簡素で素朴な料理だが彼らなりの誠意が伝わってきて都は笑顔でそれを受け取ると礼を告げた。
 彼らが強欲竜達と戦っていた頃、都はここでは無く、大渓谷深部での戦いに身を投じていた。
 不安を抱えながら挑んだ初の大きな戦い。一人の少女の為に奔走する中で自分に出来る事、出来ない事に随分思い悩んだのを思い出す。
 それと同時にどれだけ仲間の存在、友の助言に支えられただろう。仲間の温かさ、自分の拙さを痛感した二ヶ月間だった。
 皆で戦い貫いた今回の経験、出逢った仲間、友から貰った記念写真、皆の力を借り得たこの勲章は都にとって生涯の宝物となった。
(みんな、ありがとう……愛する家族と仲間、彼女に幸いがありますように)
 都はそっとランタンから手を離した。
 暖かみのある橙色の灯りは都の祈りをのせて高く空へと舞い上がった。


 コボルドを丁寧にブラッシングしてコミュニケーションを取りながら、ディーナは次々に浮かぶランタンに目を向けた。
 橙色の優しい灯火が次から次へと空へ吸い込まれるように上がっていく。
 自分のランタンにも灯を入れて、そっと手を離した。
 紙袋には直筆のコボルドたちのイラスト。
 それを見送って、またディーナはコボルドのブラッシングへと戻った。


「おぉ、おおおきに」
 レナード=クーク(ka6613)はコボルドから焼けた魚を受け取って礼を告げるとかぶりついた。
「自分ら普段もこんな食事しとるん?
 話しかければ、ちょっと間があった後にこくりと頷きが帰ってくる。
「じゃぁ、主食は魚か」
 そう聞かれて、コボルドはうーん、とちょっと考えるような仕草をした後、すくっと席を立ってどこかへ行ってしまった。
 暫くして戻ってきたその手には、生きたサソリ。
「!?」
 これを逃げないよう足をもいだ後に火に直接放り込み、待つこと数分。
 取り出されたサソリはパリパリに殻が焦げているが、中の身はふわふわに焼き上がっている。
「あ、それが主食なん?」
 そう聞かれてコボルドは嬉しそうに頷いて、美味しそうにそれを平らげたのだった。
「……お、上がり始めたな」
 しばらくしてランタンが昇り始めたのをみたレナードも、自分のランタンに火を入れた。
 浮かび上がる幻想。いくつもの命の灯火が空に還っていくような、胸に迫る光景に暫し言葉をわすれて見入る。
「ほあー……砂漠っていうんは、本みたいな暑い場所やと思っとったけど、こないに綺麗な景色も、見られるんやねぇ」
 満天の星は白く冴え冴えしい分、昇っていく灯が暖かみを持って輝く。
 どこからか聞こえてきたフルートの音色にレナードもまたフルートを取り出した。
「今日は大事な日みたいやから……。特別に……良い、よね。」
 ……久しぶりやから、上手く出来るかはわからないけど。そうコボルドに断って、西方に住むヒトなら誰もが知っている童謡を奏でる。
 その優しい音色にコボルド達も満足そうに聞き入っていて、レナードはほっと安堵しながら演奏を続ける。
(これからの皆やコボルドさん……亜人の人達の平穏を祈って)
 優しい『音』は旋律を伴い、音楽となって周囲を優しく包んだ。


 Gacrux(ka2726)は1人、奇岩の上に腰掛けて次々に昇っていくランタンの灯りを見つめていた。
 先ほど受け取ったランタンに咥えていた煙草で火を入れると十分紙袋が膨らんだところで手を離した。
 ふわりふわりと頼りなさ気に昇っていく灯りと、その向こうで瞬く星々にGacruxは想いを馳せる。
 夢に描いてきたリアルブルーへついに転移が可能になった。
 リアルブルーは辛い現実の中で思いを馳せた特別な世界で、理想郷だと空想に夢見ていた。
(……だが実は、自分が思っている程、理想に満ちた世界では無いのでは)
 薄々感じていた『何かがおかしい』その違和感は、理想と現実との亀裂かと思い至る。
(今や夢は手に届く距離にある。ゆえに夢が壊れてしまう日が来るのだろうか。その現実を知る強さは、今の自分にはあるのだろうか……)
 Gacruxは無数の光が夜空の闇に吸い込まれていくのを見つめ続ける。
 最初は頼りないと思っていた自分のランタンも、ただただ愚直に天上を目指し昇っていく。
 自然と、口元に笑みが浮かんだ。
(……そうだよな。先の事など分からない。今更だろう。今までだって、それを繰り返してきたのだから)
 もう米粒ほどの大きさになっているランタンがついに見えなくなるまでGacruxは静かに見送ったのだった。


 ВасилийはHolmesと共にランタンの昇り行くのを見送る。

 砂は流れ、空を映して蒼く広大。
 角ばる灯、蛍より大きく、鳥より遅く、歪虚より弱く。
 蒼き砂と共に風に乗り、蝶舞う如くは近目の星空。
 黒のかんばせ、朱をさしてなお表情は見えず。
 然れど故に目は瞑らず、終わりの時まで見て送る。

 届かぬ美麗。
 欲する綺麗。
 重厚なる美。
 何時か其となる事を夢見、心を焼きて空とし喰らいて糧とする。



依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 11
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ファイナルフォーム
    インスレーター・FF(ka0038unit001
    ユニット|CAM
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    クフィン
    クフィン(ka0754unit001
    ユニット|幻獣
  • 母のように
    都(ka1140
    人間(紅)|24才|女性|聖導士

  • 新谷(ka1462
    人間(紅)|17才|男性|猟撃士
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • ライフ・ゴーズ・オン
    ジルボ(ka1732
    人間(紅)|16才|男性|猟撃士
  • 飽くなき探求者
    久延毘 大二郎(ka1771
    人間(蒼)|22才|男性|魔術師
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    コシチェイ
    コシチェイ(ka2542unit001
    ユニット|幻獣
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ソルフェ
    ソルフェ(ka2807unit001
    ユニット|幻獣
  • きら星ノスタルジア
    浅黄 小夜(ka3062
    人間(蒼)|16才|女性|魔術師
  • 星の音を奏でる者
    エステル・クレティエ(ka3783
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 唯一つ、その名を
    Holmes(ka3813
    ドワーフ|8才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    ヴァシーリー
    Василий(ka3813unit001
    ユニット|幻獣
  • 部族なき部族
    エステル・ソル(ka3983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • ゴージャス・ゴスペル
    久我・御言(ka4137
    人間(蒼)|21才|男性|機導師
  • 正義なる楯
    アルバ・ソル(ka4189
    人間(紅)|18才|男性|魔術師
  • 友と、龍と、翔る
    グリムバルド・グリーンウッド(ka4409
    人間(蒼)|24才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ヴェルガンド
    ヴェルガンド(ka4409unit001
    ユニット|魔導アーマー
  • 琴瑟調和―響―
    久我 紅々乃(ka4862
    人間(蒼)|15才|女性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    ヤギハヤヒコ
    夜芸速彦(ka4862unit001
    ユニット|幻獣
  • ブリーダー
    火椎 帝(ka5027
    人間(蒼)|19才|男性|舞刀士
  • 祓魔執行
    央崎 枢(ka5153
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 鉄壁の機兵操者
    ディヤー・A・バトロス(ka5743
    人間(紅)|11才|男性|魔術師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    レグルス
    レグルス(ka5819unit001
    ユニット|幻獣
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 緑青の波濤
    エリオ・アスコリ(ka5928
    人間(紅)|17才|男性|格闘士
  • 細工師
    金目(ka6190
    人間(紅)|26才|男性|機導師
  • 雨垂れ石の理
    久延毘 羽々姫(ka6474
    人間(蒼)|19才|女性|格闘士
  • 夜空に奏でる銀星となりて
    レナード=クーク(ka6613
    エルフ|17才|男性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/01/01 03:15:23