ゲスト
(ka0000)
或る少女の相談
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~13人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/12/31 07:30
- 完成日
- 2017/01/09 22:19
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ここは自由都市リゼリオの擁するハンターズ・ソサエティ。
自由都市同盟の中に基盤を建てながらも、独立した組織として機能し、各地のオフィスを連絡するネットワークを維持しながら、ハンターへの依頼斡旋を行っています。
また、ハンターズ・ソサエティの大切な機能の1つには、大精霊との契約を行い一定以上のマテリアルの保有者を覚醒者に導くことも挙げられます。
覚醒の方法は、後でお話し致しますが、とても簡単……らしいですよ。
覚醒者の中でも、ソサエティに所属する者を特にハンターさん……失礼、ハンター、と呼びますが、無所属の覚醒者も、あるいは、覚醒していないながらにソサエティに所属して歪虚と戦おうとする者もいます。
私たち受付や、他のオフィスの職員もそれに近いものと思って下さい。
さて、覚醒者がマテリアルを扱う方法には様々ありますが、今は10系統に分けられてまして、この一つ一つをクラスと呼びます。例えば……
蟀谷を押さえ、眉間に皺を刻んで。目を回しそうな顔で項垂れた少女を前に受付嬢は口を噤む。
彼女は今し方ここ、ハンターズ・ソサエティのドアを叩いたばかりなのだから。
●
彼女との出会いは不思議なものだった。
今日も1日頑張るぞ、と、ドアを開け、朝日を浴びていると、地図を見詰めて首を傾げながらあっちに、こっちにと歩き回る少女を見かけた。
迷子、だろうか。
そう思って声を掛けようとした瞬間、少女の身体が、跳ねた。
「きゃっ」
声を上げて、彼女はきょろきょろと周囲を見回して溜息を吐く。しかしすぐにソサエティの看板を見付け、有った、と嬉しそうに叫んだ。
出迎えた受付嬢に少女は名乗るでも無く、自身の長くない半生が如何に失敗続きで出来そこないかと情感を込めて懇切丁寧に語り、
「――それでも、私には……こんなにダメな私を助けてくれる友達がいる……みたいなんです。だから、あのっ」
よろしくお願いします。
そう言いながら、頭を下げた。
まるで何かに叩かれたみたいな勢いで。
それは、正しく、叩かれていたようで、垂れた彼女の頭には淡い緑に発光する不定形の精霊が飛び跳ねていた。
「…………ともだち?」
「……だと、いいなぁって……」
それから彼女に幾つか質問をした。
まずは名前、年齢、ここへ至るまでの悲観的な心情を含まない経緯。
彼女は自身をマーガレット・ミケーリ、メグと呼ばれている14歳だと名乗り、ポルトワール出身で魔術協会に属する学院に通っていたと答えた。
しかし、才能に恵まれずに中退し帰省。その折ハンターの世話になり、最近、彼女に友好的らしい精霊の存在に気付いたようだ。
精霊は、常に彼女の死角に隠れ、それでいて困ったとき、主に道に迷ったときには肩や頭にぶつかって道を示すのだという。
成る程、朝のあれも。と、受付嬢は頷いた。
●
そして話しは冒頭へ。
「かくせい、とか、けいやく……えっと、はんたー、に、なるんです?」
受付嬢の説明の半ばで目を回し始めたメグの頭上、その混乱を意に介さず、精霊は穏やかに揺れて寛いでいる。
「そうですね、簡単に言うと、その精霊さんと、今よりもっともっと仲良くなって、道案内以外でも力を貸して下さいって、お願いするって事……ですかね?」
今は頭の上にいますよ。受付嬢の言葉に上を向いたメグの髪の毛に捕まるように、精霊は毛先に垂れて視線から逃れる。
「そうだ! 現役のハンターさんにお話聞いてみませんか?」
思い付いたと手を叩くと、受付嬢は精霊を探そうと見回すメグに微笑んでホールを見回した。
彼女を助けてくれそうなハンターさんはいないかしら?
ここは自由都市リゼリオの擁するハンターズ・ソサエティ。
自由都市同盟の中に基盤を建てながらも、独立した組織として機能し、各地のオフィスを連絡するネットワークを維持しながら、ハンターへの依頼斡旋を行っています。
また、ハンターズ・ソサエティの大切な機能の1つには、大精霊との契約を行い一定以上のマテリアルの保有者を覚醒者に導くことも挙げられます。
覚醒の方法は、後でお話し致しますが、とても簡単……らしいですよ。
覚醒者の中でも、ソサエティに所属する者を特にハンターさん……失礼、ハンター、と呼びますが、無所属の覚醒者も、あるいは、覚醒していないながらにソサエティに所属して歪虚と戦おうとする者もいます。
私たち受付や、他のオフィスの職員もそれに近いものと思って下さい。
さて、覚醒者がマテリアルを扱う方法には様々ありますが、今は10系統に分けられてまして、この一つ一つをクラスと呼びます。例えば……
蟀谷を押さえ、眉間に皺を刻んで。目を回しそうな顔で項垂れた少女を前に受付嬢は口を噤む。
彼女は今し方ここ、ハンターズ・ソサエティのドアを叩いたばかりなのだから。
●
彼女との出会いは不思議なものだった。
今日も1日頑張るぞ、と、ドアを開け、朝日を浴びていると、地図を見詰めて首を傾げながらあっちに、こっちにと歩き回る少女を見かけた。
迷子、だろうか。
そう思って声を掛けようとした瞬間、少女の身体が、跳ねた。
「きゃっ」
声を上げて、彼女はきょろきょろと周囲を見回して溜息を吐く。しかしすぐにソサエティの看板を見付け、有った、と嬉しそうに叫んだ。
出迎えた受付嬢に少女は名乗るでも無く、自身の長くない半生が如何に失敗続きで出来そこないかと情感を込めて懇切丁寧に語り、
「――それでも、私には……こんなにダメな私を助けてくれる友達がいる……みたいなんです。だから、あのっ」
よろしくお願いします。
そう言いながら、頭を下げた。
まるで何かに叩かれたみたいな勢いで。
それは、正しく、叩かれていたようで、垂れた彼女の頭には淡い緑に発光する不定形の精霊が飛び跳ねていた。
「…………ともだち?」
「……だと、いいなぁって……」
それから彼女に幾つか質問をした。
まずは名前、年齢、ここへ至るまでの悲観的な心情を含まない経緯。
彼女は自身をマーガレット・ミケーリ、メグと呼ばれている14歳だと名乗り、ポルトワール出身で魔術協会に属する学院に通っていたと答えた。
しかし、才能に恵まれずに中退し帰省。その折ハンターの世話になり、最近、彼女に友好的らしい精霊の存在に気付いたようだ。
精霊は、常に彼女の死角に隠れ、それでいて困ったとき、主に道に迷ったときには肩や頭にぶつかって道を示すのだという。
成る程、朝のあれも。と、受付嬢は頷いた。
●
そして話しは冒頭へ。
「かくせい、とか、けいやく……えっと、はんたー、に、なるんです?」
受付嬢の説明の半ばで目を回し始めたメグの頭上、その混乱を意に介さず、精霊は穏やかに揺れて寛いでいる。
「そうですね、簡単に言うと、その精霊さんと、今よりもっともっと仲良くなって、道案内以外でも力を貸して下さいって、お願いするって事……ですかね?」
今は頭の上にいますよ。受付嬢の言葉に上を向いたメグの髪の毛に捕まるように、精霊は毛先に垂れて視線から逃れる。
「そうだ! 現役のハンターさんにお話聞いてみませんか?」
思い付いたと手を叩くと、受付嬢は精霊を探そうと見回すメグに微笑んでホールを見回した。
彼女を助けてくれそうなハンターさんはいないかしら?
リプレイ本文
●
朗らかに微笑む受付嬢に声を掛けられた八原 篝(ka3104)が首を傾がせて向ける視線の先、広いテーブルには既にフィリテ・ノート(ka0810)とアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)、ナグモ(ka6677)そして依頼人だと紹介される少女の姿があった。
「今は暇だからいいけど」
テーブルへ向かい椅子に手を掛けると、少女の傍に揺れる精霊が目に入った。
こんな場所で珍しいわねと瞬いて腰掛ける。
「何かあんの?」
張り出されている依頼を眺めていた浪風 白露(ka1025)もテーブルを見て呟いた。
ティータイムの様な和やかな雰囲気を受付嬢に尋ね、空席の一つに腰掛ける。
ミグ・ロマイヤー(ka0665)も少女の幼気な挙措に幼い家族が思い浮かぶのか、柔らかく目を細め手招く受付嬢に頷いてテーブルへ向かう。
「おうおう、まるでミグの玄孫くらいのとしごろじゃ、めんこいのう」
玄孫。と聞き返し、世代を指折り数える少女に、ミグは冗談じゃよと微笑んだ。
依頼を探しに訪れていた夢路 まよい(ka1328)、マキナ・バベッジ(ka4302)、鞍馬 真(ka5819)も受付嬢に招かれてテーブルへ向かう。
少女が、あ、と声を上げた。
「あ、前にポルトワールまで届けてあげた人だ」
「お久しぶりです」
「……こんな格好ですまないな」
夢路がはしゃぐように小走りに近づいて、マキナも懐かしそうに軽い会釈を。
死闘の跡が覗える包帯やそこかしこに貼られたガーゼを隠しようもなく、怖がらせていないかと鞍馬は少女を覗う様に首を傾げた。
久方振りの再会に賑わう声にザレム・アズール(ka0878)も気付きテーブルに加わった。
ザレムが声を掛けようとすると、少女は慌てたようにポケットから小さなお守りを取り出して見せた。
お友達、そうなりたいと思っている精霊も甚く気に入っているようだと。
彼等の話を聞いていたフィリテは、精霊に懐かれている子がいるという妹の話を思い浮かべる。
その子が彼女かは分からないが、少女の傍に揺れる精霊は淡い緑色の光りを震わせ、楽しそうにしている様に見えた。
「よろしくね」
少女に声を掛けると、少女の頭がぺこりと深く垂れた。
「緊張してる?……それとも不安?」
手を出して、とザレムが少女の手にマカロンを1つ乗せる。残りは皆でとテーブルに置くと、美味そうだなとナグモが目を輝かせた。
これも良かったらと、取り出した桃とナッツのパイが切り分けられて行き渡る頃、少女は漸く口を開いた。
「初めまして……お久しぶりです。メグといいます。よ、よろしくおねがいします」
●
辿々しい言葉で精霊が傍にいるらしいが自身には姿を見せてくれないことと、その精霊に助けられているらしいこと、仲良くなりたいと思っていること、そしてその手段として契約を考えていると話すとメグは深々と溜息を吐く。沢山喋ったのは久しぶりだと肩を竦めた。
「どうやって契約したんですか?……それから、ええと、契約して、覚醒すると、どんな力を使えるんですか?」
メグの問いに、先ずは年長者からと笑ってミグがカップを置いた。
「――大精霊と会話したのう」
会話の中身はと促されると呵呵と笑う。歳があれだとか、いろいろ難癖付けてきおったから理詰めで説得したんじゃよ、と。
「気負う必要などないのじゃよ。それで、一日を有効に使える力が手に入るのじゃ」
長く起きていられる様な気さえする。頷きながら語って、参考になったかと首を傾げた。
次はとフィリテが続いて、応えられる範囲になるけれどと前置きをする。
フィリテ自身のことを思い出しながら静かに瞼を伏せた。
「あたしの場合は、魔術ね。えっと……マテリアルって」
メグが遮るように、魔法使いにずっと憧れていたと言う。炎や氷の使い方を習ったが身に付かなかったと。
フィリテは目を細めて穏やかな声で続けた。
「ハンターの力は基本的に傷つけちゃう方が多いんだけど、使い方次第で護ったり料理にも使えるのよ」
炎も氷も。そこが面白い部分の一つだと。
「……あなたは、あなたに合った方法、みつけてね」
どんな力が使えるのだろうとメグは首を捻って考え込む。使える力があるのだろうか。
「君は、どんなことが不安なのだろうか?」
ザレムがメグに視線を向けた。メグはお守りを握り締めているが、精霊はその傍で楽しそうに揺れている。
彼女がその存在に気付き、絆を結ぶつもりになったことが嬉しく、自然と頬が綻んだ。
家の習いに従うつもりの無かったザレムにとって、精霊との契約は独り立ちの好機だった。
大勢の先達に囲まれたメグに過去の自身を重ねる様に目を細める。
「俺も教会やハンター組織に相談して心の準備をしたよ。うん、今の君のようだね」
「契約かは分からないけどオレ、……私は身体の中に精霊の力があるんだよなぁ……」
椅子の背にもたれきるように浪風は天井を眺め懐かしそうに呟いた。吊された灯りに手を伸ばし透かす様に揺らす。
大精霊も見守ってくれてさえいるように感じ、恐れなど無かったと首を横に揺らした。
かたんと椅子を鳴らして座り直しメグを見る。
「精霊って元々から私の周りに存在してるから怖がる理由もないと思うけど?」
そこにいるんだろう、と淡い緑を見遣るがそれは浪風の示す先をメグが気付く前に隠れてしまう。
「契約って思わないで約束事を決めるって思えば良い気もするし」
約束事、とメグが首を傾がせた。
「お友達になりたいんでしょ」
夢路が楽しそうに言う。
影から覗く精霊に、気付いて貰えてたんだねと祝うように。
八原の手から受け取ったクッキーを持って嬉しそうにパルムが跳ねる。2匹とも気に入ったらしい。
滓を払った指を遊ばせていると巡ってきた順番に、わたし、と確かめる様に顔を上げた。
「わたしが契約したのは青い火の玉みたいな姿だったわね」
目も口も無い、ボール大の何かが宙に浮かんでる様に見えた。それは言葉を喋るのが苦手らしく、八原も黙っている間に契約は済んでいた。
己の瞼の裏に残るその姿を、その時の印象を、感じたままを思い出す様に告げる。
「猟撃士は遠くのものを銃や弓で狙い撃つ事が得意なクラスよ」
力の在り方を考えるより、状況から自分にできる事を考える。
パルム達に遊ばせていた指を離す。2枚目のクッキーを欲しがっている様子を暫し待たせて話を続けた。
「あとはやりたい事をやってるだけよ」
自分のやりたい事を、けれど精霊は彼等の敵である歪虚を倒して欲しいのだろうけれど。
問う様に向けた視線にパルム達は目を見合わせて笠を揺らすように傾いた。
確かに力の使い方は様々だからと、アルトは頷く。
倒す力でも守る力でも、自分を認めさせるため、単なるお金稼ぎの手段として。
君自身の思い描いたように使えばいいと答えるアルトに、メグは項垂れるようにして首を傾げる。
「君自身はどんな風に使ってみたいのかな? それが一番重要だよ」
いきなり何でもは出来ないから、やりたい事、成したい事に向かって努力し続けなければならない。
諭すような凜と静かで穏やかな声に、メグの首が小さく縦に揺れた。
「精霊ともっと仲良くなりたいなど、そういった想いを持って契約に望むのもよいのかもしれませんね」
マキナの目が精霊を探して言う。答えはメグ自身が見付けるだろうが、精霊との仲は良さそうに見えるから。
自身のことを、朧気な精霊の印象を思い出す様に目を閉じる。
「記憶にあるのは緑色をした暖かな光と、時計の針が時を刻む音……」
時間の概念だったのではとマキナは思う。
そして、守る力を貸して欲しいと祈ることで契約が成ったと感じている。
それ故に、自身の力は守る力であり、助ける力であるつもりだと、自身の手に視線を下ろし握り締める。
「力を何に使うか、……から先に考えても良いと思いますよ」
精霊の力を借りれば、魔法も使えるようになるかもしれません。そう言うと、夢路もひらりと手を振った。
魔法は使えるようになると楽しいよと、夢路が自身の力を楽しんでいるという満面の笑みで。
「今度こそ魔法も使えるようになれるかもしれないよ。それに、たくさんいる敵だって、いっぺんにバッタバタ倒せちゃったりするんだから」
夢路の言葉に驚いた様に竦むメグに、依頼には戦わないものもあると鞍馬が、頬のガーゼを擦りながら。この怪我では信じられないだろうがと僅かに眉を垂れて言う。
「契約は淡々と終わってしまって、拍子抜けしたんだ。……力は、私も守るために使いたいと思っているよ」
まだ力不足なのだがと溜息を零すと、メグが首を横に振った。
パイを早々に食べ終えてクッキーを摘まんでは頬張っていたナグモが、ごくんとそれを飲み込だ。
精霊の存在はずっと感じていた、そういう感覚だったのだろうかと過去を思い出す様に視線を投じる。
「結構最近まで傭兵をやっていたんだけどね、その頃から。だから、怖いとかそんな感じはなかったかなぁ」
新しい世界にわくわくしたと言って口角を上げ、歯を覗かせて満面の笑みを。
テーブルに視線を巡らせながら、自身の力は戦う力だと答える。
今まで話してきたハンター達の言葉を、守る力に魔法にと挙げながらクッキーに手を伸ばす。
「色んな人がいて面白いよね」
ああ、と鞍馬も頷いた。
「こうやって話すと、一言にハンターと言っても、精霊も覚醒も、考え方も全く違うことがわかって面白いな」
●
これまでの話しへの礼を、深々と、天板に額が触れそうな程頭を下げて伸べ、メグは訥々と胸中の不安を吐露する。魔法使いを目指したこと、その才能が無かったこと。
そして、これまでの話を聞いて、やっぱり精霊と仲良くなりたいと思ったと告げた。
才能が無くても覚醒者に、ハンターになれるのだろうかと握る手を震わせて尋ねる。
今摘まんだクッキーを食みながら、ナグモがきょとんと首を傾げた。
「んぅ? なれるんじゃないのかなぁ……」
才能など考えたことも無いとからりと笑う。
「なりたいからなるで良いんじゃないかなぁ?……あ、でもボクはハンターになって良かったと思うよ」
食べ物を離した指をそっと組んで、ハンターとしての仕事の中で告げられた感謝の言葉を、共に戦った仲間を思い出す。
傭兵の頃には無かったそれらをくすぐったがる様に頬を綻ばせて、良かったと告げる。
ハンターになるならとメグに視線を向けた。仲間だね、と言うとメグは目を瞠って言葉を詰まらせた。
「私もこの仕事をやりがいがあって楽しいと思っているよ……何でも屋のような仕事で、護衛に戦闘、偶にはパーティーを手伝ったりする」
こんな風に、色々な人とも知り合えるしねと、個性的なハンター達を見回した。
寝ているだけに飽いて、出来そうな依頼を探しに来たんだと打ち明けて、来て良かったとそっと告げる。
確かに何でも屋だとマキナが頷く。
「向き不向きは、やはりあると思います……戦いともなると尚更。ですが、探し物をしたり、修理をしたり……」
戦いの無い依頼を思い浮かべて、ふと依頼の掲示へ目を移した。
貼り出されているものを見てみてはいかがでしょうか、と。
「君の敵性はわからないけれど、君に出来ることも必ずあると思うよ」
掲示を一瞥してアルトが言った。
「まず、君にとって才能とは何かな?」
アルトの問いにメグは言い淀んで唇を噛む。
魔法が使える才能かなと続く言葉に、メグは頷きながら顔を伏せた。
「それ自体はハンターになるのとは全く関係がない。一番重要なのは精霊と契約が結べるかっていうだけだしね」
誤解を解くように告げられる言葉に息を飲む。
ハンターという意味でも、前線で戦うことだけではないだろう。メグへの問いかけに、テーブルのハンター達が頷く様な気配を感じる。
クラスを挙げながら彼等の持つ力を説明すると。
「最前線をサポートする人達も、ボクは立派なハンターだと思っているよ」
その言葉にはメグもゆっくりと頷いた。
「適性が無ければ精霊と契約できない」
ハンターには非覚醒者でもなれるけど。そう言い添えながら八原がメグを見た。
「あなたもハンターになりたいの?」
精霊と契約しても必ずハンターになる必要はない。最前線でなくたって危険な目には遭うのだから。
じっと見透かすような八原の視線にメグは長く口を噤みやがて聞き取れぬ程の小さな声で答えた。
「いちど親御さんと相談してみたら?」
八原の言葉に家族を思い浮かべながら、メグは今度こそ確りと頷いた。
「お祭りを手伝ったりする仕事もあるし、向いてるなら、そういうお仕事をするハンターになるっていうのもアリじゃないかな?」
それなら心配させないだろうし、それも私は楽しんでいるからと夢路が言う。
「隣に居る存在と友達になれるのは幸せなことだよ……任務の危険度と種類は色々さ」
ザレムがにっこりと目を細める。
穏やかな眼差しを向ける先には、緑の光が漂っている。
掲示に向けた視線をメグに戻し、自身が受けた様々な依頼を思い出す様にしみじみと。
「依頼は受けても、受けなくても良い、強制じゃ無いんだ」
何にでもなれる、どこへでも行ける。覚醒はその選択肢を増やしてくれる。
俺がそうだったように。そう笑むと、傍のパルム達がぴょん、とはしゃぐように跳ね回る。
「友達になりたいってゆーのが、一番大切な資質だと思うわ」
フィリテはザレムの傍で楽しそうにしているパルムを眺めながら、受けてきた依頼を思い出す。
「例えばあたしがした仕事は……うーん。まあ、南の島で遊んだり……」
常に依頼の記憶に添う恋人の姿に肩を竦め、地味な仕事が多いかしらねと、目を逸らして苦笑いを。
彼と過ごしてるお仕事しかしてないわと、はにかむ様に。
空いたカップを卓に乗せ、ミグは一巡してきた話しに頷く。
彼等の言う通りだと大仰に、体内マテリアルさえ適量に満ちておれば特別な才能など不要だと、それは満たしているだろうメグを見詰めて眦を下げる。
「ミグは機導師ゆえ、鉱物マテリアルを多用する身じゃから精霊の力はあんまり頼ったことはないがのぉ」
もちろん仲良くなることは可能だと微笑みながら。
「して、覚醒も気になるんじゃったな。……どれ、見せてやろう」
虚を隠す眼帯。翳す手でそれを撫で上げれば空の眼窩に紅蓮の炎が灯ったように、眼帯の端々から零れ出て燃え上がる。
どうじゃ、と肩を聳やかす。煌々と燃え上がる炎のオーラがミグの面差しを強く照らした。
折角だからと、ザレムも立ち上がりマテリアルを足に込める。
青い双眸を深紅に染め、皮膜の翼の幻影を背に広げる。
羽ばたかぬ翼の幻影の為では無く、足に込めたマテリアルによりその身体は跳び、次の瞬間にはメグのすぐ側にいた。
「アルケミは火力職じゃない。ヒトヒネリ要る技が多いよ」
今見せたようにね、とひらりと手を揺らし。難しいけれどヤリガイがあるよと。
「覚醒は人それぞれだと思うけど。私みたいな覚醒をする奴もいるし」
言いながら浪風は席を立って傍へと歩く、すっと伸ばした足に猛禽を思わせる意匠が浮かび上がる。
風の精霊の力を宿す隼の模様だと、両脚を並べて見せた。
「痛かったりはしないから、心配しなくても大丈夫だよ。私はむしろ、元気が沸いてくる感じかなー?」
夢路は跳ねる様に椅子から降りて、やってみせるねと力を込める。
青い瞳が輝きを増す。旗袍がオーラに吹き上げられるかのようにスリットを広げた裾をひらりと揺らし、胴丸を綴る紐も端の房をたゆたわせる。踊るようにくるりと回ると、風を含む様にその装いはひらひらと舞う。
「この後仕事の予定もないから見せれるよ」
炎のオーラを浮かび上がらせ、アルトは椅子から立った。
ボクの変化は派手じゃないからつまらないかも知れないけど。そう言いながら、炎様に輝くオーラは鳥を象りアルトの身体と得物を包み込んだ。
眩さに目を瞑ったメグがその閃光の凪いだ頃に瞬いて首を傾げ、髪、と呟く。
炎の色に染まった瞳と、短かった髪は腰まで伸びてさらりと揺れた。
「外見が変わる方もいらっしゃいますよね、ボクは余り変化はありません……」
マキナがザレムの翼や瞳、アルトの髪に視線を向ける。吃驚したとメグも深く息を吐く。
差し出した左手の甲。触れても構わないと言ったそこには、歯車仕掛けの時計のような文様が浮かぶ。
メグが怖々と手を伸ばした瞬間に、時計の針が1つ進んだ。手を引っ込めてじっと見詰めると、更にもう1つ針が動いた。
ボクはお腹が空くんだよねぇ、とクッキーを口に放り込んでからナグモは力を込める。
その身体が寄り引き締まった様に見え、わ、とメグの声が小さく零れた。
「えっと、なんか背中に……蜘蛛が……見てみる?」
見える、とシャツをたくし上げると、そこに黒い痣が、体節の括れと八方へ伸びる脚が覗え、メグは慌てて頷いた。
ハンター達の覚醒が鎮まる頃にメグは立ち上がって頭を下げた。
「魔法使いには、憧れます。すごいなって、思います……でも、わたしは……多分この辺にいる精霊さんと一緒に頑張れることがしたいって思いました。……今日は、ありがとうござい、いっ」
この辺、と伸ばす指の反対側、精霊も満足そうな様子で揺れ、強張りながらの感謝の言葉に合わせ、メグの頭でぽんと跳ねた。
朗らかに微笑む受付嬢に声を掛けられた八原 篝(ka3104)が首を傾がせて向ける視線の先、広いテーブルには既にフィリテ・ノート(ka0810)とアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)、ナグモ(ka6677)そして依頼人だと紹介される少女の姿があった。
「今は暇だからいいけど」
テーブルへ向かい椅子に手を掛けると、少女の傍に揺れる精霊が目に入った。
こんな場所で珍しいわねと瞬いて腰掛ける。
「何かあんの?」
張り出されている依頼を眺めていた浪風 白露(ka1025)もテーブルを見て呟いた。
ティータイムの様な和やかな雰囲気を受付嬢に尋ね、空席の一つに腰掛ける。
ミグ・ロマイヤー(ka0665)も少女の幼気な挙措に幼い家族が思い浮かぶのか、柔らかく目を細め手招く受付嬢に頷いてテーブルへ向かう。
「おうおう、まるでミグの玄孫くらいのとしごろじゃ、めんこいのう」
玄孫。と聞き返し、世代を指折り数える少女に、ミグは冗談じゃよと微笑んだ。
依頼を探しに訪れていた夢路 まよい(ka1328)、マキナ・バベッジ(ka4302)、鞍馬 真(ka5819)も受付嬢に招かれてテーブルへ向かう。
少女が、あ、と声を上げた。
「あ、前にポルトワールまで届けてあげた人だ」
「お久しぶりです」
「……こんな格好ですまないな」
夢路がはしゃぐように小走りに近づいて、マキナも懐かしそうに軽い会釈を。
死闘の跡が覗える包帯やそこかしこに貼られたガーゼを隠しようもなく、怖がらせていないかと鞍馬は少女を覗う様に首を傾げた。
久方振りの再会に賑わう声にザレム・アズール(ka0878)も気付きテーブルに加わった。
ザレムが声を掛けようとすると、少女は慌てたようにポケットから小さなお守りを取り出して見せた。
お友達、そうなりたいと思っている精霊も甚く気に入っているようだと。
彼等の話を聞いていたフィリテは、精霊に懐かれている子がいるという妹の話を思い浮かべる。
その子が彼女かは分からないが、少女の傍に揺れる精霊は淡い緑色の光りを震わせ、楽しそうにしている様に見えた。
「よろしくね」
少女に声を掛けると、少女の頭がぺこりと深く垂れた。
「緊張してる?……それとも不安?」
手を出して、とザレムが少女の手にマカロンを1つ乗せる。残りは皆でとテーブルに置くと、美味そうだなとナグモが目を輝かせた。
これも良かったらと、取り出した桃とナッツのパイが切り分けられて行き渡る頃、少女は漸く口を開いた。
「初めまして……お久しぶりです。メグといいます。よ、よろしくおねがいします」
●
辿々しい言葉で精霊が傍にいるらしいが自身には姿を見せてくれないことと、その精霊に助けられているらしいこと、仲良くなりたいと思っていること、そしてその手段として契約を考えていると話すとメグは深々と溜息を吐く。沢山喋ったのは久しぶりだと肩を竦めた。
「どうやって契約したんですか?……それから、ええと、契約して、覚醒すると、どんな力を使えるんですか?」
メグの問いに、先ずは年長者からと笑ってミグがカップを置いた。
「――大精霊と会話したのう」
会話の中身はと促されると呵呵と笑う。歳があれだとか、いろいろ難癖付けてきおったから理詰めで説得したんじゃよ、と。
「気負う必要などないのじゃよ。それで、一日を有効に使える力が手に入るのじゃ」
長く起きていられる様な気さえする。頷きながら語って、参考になったかと首を傾げた。
次はとフィリテが続いて、応えられる範囲になるけれどと前置きをする。
フィリテ自身のことを思い出しながら静かに瞼を伏せた。
「あたしの場合は、魔術ね。えっと……マテリアルって」
メグが遮るように、魔法使いにずっと憧れていたと言う。炎や氷の使い方を習ったが身に付かなかったと。
フィリテは目を細めて穏やかな声で続けた。
「ハンターの力は基本的に傷つけちゃう方が多いんだけど、使い方次第で護ったり料理にも使えるのよ」
炎も氷も。そこが面白い部分の一つだと。
「……あなたは、あなたに合った方法、みつけてね」
どんな力が使えるのだろうとメグは首を捻って考え込む。使える力があるのだろうか。
「君は、どんなことが不安なのだろうか?」
ザレムがメグに視線を向けた。メグはお守りを握り締めているが、精霊はその傍で楽しそうに揺れている。
彼女がその存在に気付き、絆を結ぶつもりになったことが嬉しく、自然と頬が綻んだ。
家の習いに従うつもりの無かったザレムにとって、精霊との契約は独り立ちの好機だった。
大勢の先達に囲まれたメグに過去の自身を重ねる様に目を細める。
「俺も教会やハンター組織に相談して心の準備をしたよ。うん、今の君のようだね」
「契約かは分からないけどオレ、……私は身体の中に精霊の力があるんだよなぁ……」
椅子の背にもたれきるように浪風は天井を眺め懐かしそうに呟いた。吊された灯りに手を伸ばし透かす様に揺らす。
大精霊も見守ってくれてさえいるように感じ、恐れなど無かったと首を横に揺らした。
かたんと椅子を鳴らして座り直しメグを見る。
「精霊って元々から私の周りに存在してるから怖がる理由もないと思うけど?」
そこにいるんだろう、と淡い緑を見遣るがそれは浪風の示す先をメグが気付く前に隠れてしまう。
「契約って思わないで約束事を決めるって思えば良い気もするし」
約束事、とメグが首を傾がせた。
「お友達になりたいんでしょ」
夢路が楽しそうに言う。
影から覗く精霊に、気付いて貰えてたんだねと祝うように。
八原の手から受け取ったクッキーを持って嬉しそうにパルムが跳ねる。2匹とも気に入ったらしい。
滓を払った指を遊ばせていると巡ってきた順番に、わたし、と確かめる様に顔を上げた。
「わたしが契約したのは青い火の玉みたいな姿だったわね」
目も口も無い、ボール大の何かが宙に浮かんでる様に見えた。それは言葉を喋るのが苦手らしく、八原も黙っている間に契約は済んでいた。
己の瞼の裏に残るその姿を、その時の印象を、感じたままを思い出す様に告げる。
「猟撃士は遠くのものを銃や弓で狙い撃つ事が得意なクラスよ」
力の在り方を考えるより、状況から自分にできる事を考える。
パルム達に遊ばせていた指を離す。2枚目のクッキーを欲しがっている様子を暫し待たせて話を続けた。
「あとはやりたい事をやってるだけよ」
自分のやりたい事を、けれど精霊は彼等の敵である歪虚を倒して欲しいのだろうけれど。
問う様に向けた視線にパルム達は目を見合わせて笠を揺らすように傾いた。
確かに力の使い方は様々だからと、アルトは頷く。
倒す力でも守る力でも、自分を認めさせるため、単なるお金稼ぎの手段として。
君自身の思い描いたように使えばいいと答えるアルトに、メグは項垂れるようにして首を傾げる。
「君自身はどんな風に使ってみたいのかな? それが一番重要だよ」
いきなり何でもは出来ないから、やりたい事、成したい事に向かって努力し続けなければならない。
諭すような凜と静かで穏やかな声に、メグの首が小さく縦に揺れた。
「精霊ともっと仲良くなりたいなど、そういった想いを持って契約に望むのもよいのかもしれませんね」
マキナの目が精霊を探して言う。答えはメグ自身が見付けるだろうが、精霊との仲は良さそうに見えるから。
自身のことを、朧気な精霊の印象を思い出す様に目を閉じる。
「記憶にあるのは緑色をした暖かな光と、時計の針が時を刻む音……」
時間の概念だったのではとマキナは思う。
そして、守る力を貸して欲しいと祈ることで契約が成ったと感じている。
それ故に、自身の力は守る力であり、助ける力であるつもりだと、自身の手に視線を下ろし握り締める。
「力を何に使うか、……から先に考えても良いと思いますよ」
精霊の力を借りれば、魔法も使えるようになるかもしれません。そう言うと、夢路もひらりと手を振った。
魔法は使えるようになると楽しいよと、夢路が自身の力を楽しんでいるという満面の笑みで。
「今度こそ魔法も使えるようになれるかもしれないよ。それに、たくさんいる敵だって、いっぺんにバッタバタ倒せちゃったりするんだから」
夢路の言葉に驚いた様に竦むメグに、依頼には戦わないものもあると鞍馬が、頬のガーゼを擦りながら。この怪我では信じられないだろうがと僅かに眉を垂れて言う。
「契約は淡々と終わってしまって、拍子抜けしたんだ。……力は、私も守るために使いたいと思っているよ」
まだ力不足なのだがと溜息を零すと、メグが首を横に振った。
パイを早々に食べ終えてクッキーを摘まんでは頬張っていたナグモが、ごくんとそれを飲み込だ。
精霊の存在はずっと感じていた、そういう感覚だったのだろうかと過去を思い出す様に視線を投じる。
「結構最近まで傭兵をやっていたんだけどね、その頃から。だから、怖いとかそんな感じはなかったかなぁ」
新しい世界にわくわくしたと言って口角を上げ、歯を覗かせて満面の笑みを。
テーブルに視線を巡らせながら、自身の力は戦う力だと答える。
今まで話してきたハンター達の言葉を、守る力に魔法にと挙げながらクッキーに手を伸ばす。
「色んな人がいて面白いよね」
ああ、と鞍馬も頷いた。
「こうやって話すと、一言にハンターと言っても、精霊も覚醒も、考え方も全く違うことがわかって面白いな」
●
これまでの話しへの礼を、深々と、天板に額が触れそうな程頭を下げて伸べ、メグは訥々と胸中の不安を吐露する。魔法使いを目指したこと、その才能が無かったこと。
そして、これまでの話を聞いて、やっぱり精霊と仲良くなりたいと思ったと告げた。
才能が無くても覚醒者に、ハンターになれるのだろうかと握る手を震わせて尋ねる。
今摘まんだクッキーを食みながら、ナグモがきょとんと首を傾げた。
「んぅ? なれるんじゃないのかなぁ……」
才能など考えたことも無いとからりと笑う。
「なりたいからなるで良いんじゃないかなぁ?……あ、でもボクはハンターになって良かったと思うよ」
食べ物を離した指をそっと組んで、ハンターとしての仕事の中で告げられた感謝の言葉を、共に戦った仲間を思い出す。
傭兵の頃には無かったそれらをくすぐったがる様に頬を綻ばせて、良かったと告げる。
ハンターになるならとメグに視線を向けた。仲間だね、と言うとメグは目を瞠って言葉を詰まらせた。
「私もこの仕事をやりがいがあって楽しいと思っているよ……何でも屋のような仕事で、護衛に戦闘、偶にはパーティーを手伝ったりする」
こんな風に、色々な人とも知り合えるしねと、個性的なハンター達を見回した。
寝ているだけに飽いて、出来そうな依頼を探しに来たんだと打ち明けて、来て良かったとそっと告げる。
確かに何でも屋だとマキナが頷く。
「向き不向きは、やはりあると思います……戦いともなると尚更。ですが、探し物をしたり、修理をしたり……」
戦いの無い依頼を思い浮かべて、ふと依頼の掲示へ目を移した。
貼り出されているものを見てみてはいかがでしょうか、と。
「君の敵性はわからないけれど、君に出来ることも必ずあると思うよ」
掲示を一瞥してアルトが言った。
「まず、君にとって才能とは何かな?」
アルトの問いにメグは言い淀んで唇を噛む。
魔法が使える才能かなと続く言葉に、メグは頷きながら顔を伏せた。
「それ自体はハンターになるのとは全く関係がない。一番重要なのは精霊と契約が結べるかっていうだけだしね」
誤解を解くように告げられる言葉に息を飲む。
ハンターという意味でも、前線で戦うことだけではないだろう。メグへの問いかけに、テーブルのハンター達が頷く様な気配を感じる。
クラスを挙げながら彼等の持つ力を説明すると。
「最前線をサポートする人達も、ボクは立派なハンターだと思っているよ」
その言葉にはメグもゆっくりと頷いた。
「適性が無ければ精霊と契約できない」
ハンターには非覚醒者でもなれるけど。そう言い添えながら八原がメグを見た。
「あなたもハンターになりたいの?」
精霊と契約しても必ずハンターになる必要はない。最前線でなくたって危険な目には遭うのだから。
じっと見透かすような八原の視線にメグは長く口を噤みやがて聞き取れぬ程の小さな声で答えた。
「いちど親御さんと相談してみたら?」
八原の言葉に家族を思い浮かべながら、メグは今度こそ確りと頷いた。
「お祭りを手伝ったりする仕事もあるし、向いてるなら、そういうお仕事をするハンターになるっていうのもアリじゃないかな?」
それなら心配させないだろうし、それも私は楽しんでいるからと夢路が言う。
「隣に居る存在と友達になれるのは幸せなことだよ……任務の危険度と種類は色々さ」
ザレムがにっこりと目を細める。
穏やかな眼差しを向ける先には、緑の光が漂っている。
掲示に向けた視線をメグに戻し、自身が受けた様々な依頼を思い出す様にしみじみと。
「依頼は受けても、受けなくても良い、強制じゃ無いんだ」
何にでもなれる、どこへでも行ける。覚醒はその選択肢を増やしてくれる。
俺がそうだったように。そう笑むと、傍のパルム達がぴょん、とはしゃぐように跳ね回る。
「友達になりたいってゆーのが、一番大切な資質だと思うわ」
フィリテはザレムの傍で楽しそうにしているパルムを眺めながら、受けてきた依頼を思い出す。
「例えばあたしがした仕事は……うーん。まあ、南の島で遊んだり……」
常に依頼の記憶に添う恋人の姿に肩を竦め、地味な仕事が多いかしらねと、目を逸らして苦笑いを。
彼と過ごしてるお仕事しかしてないわと、はにかむ様に。
空いたカップを卓に乗せ、ミグは一巡してきた話しに頷く。
彼等の言う通りだと大仰に、体内マテリアルさえ適量に満ちておれば特別な才能など不要だと、それは満たしているだろうメグを見詰めて眦を下げる。
「ミグは機導師ゆえ、鉱物マテリアルを多用する身じゃから精霊の力はあんまり頼ったことはないがのぉ」
もちろん仲良くなることは可能だと微笑みながら。
「して、覚醒も気になるんじゃったな。……どれ、見せてやろう」
虚を隠す眼帯。翳す手でそれを撫で上げれば空の眼窩に紅蓮の炎が灯ったように、眼帯の端々から零れ出て燃え上がる。
どうじゃ、と肩を聳やかす。煌々と燃え上がる炎のオーラがミグの面差しを強く照らした。
折角だからと、ザレムも立ち上がりマテリアルを足に込める。
青い双眸を深紅に染め、皮膜の翼の幻影を背に広げる。
羽ばたかぬ翼の幻影の為では無く、足に込めたマテリアルによりその身体は跳び、次の瞬間にはメグのすぐ側にいた。
「アルケミは火力職じゃない。ヒトヒネリ要る技が多いよ」
今見せたようにね、とひらりと手を揺らし。難しいけれどヤリガイがあるよと。
「覚醒は人それぞれだと思うけど。私みたいな覚醒をする奴もいるし」
言いながら浪風は席を立って傍へと歩く、すっと伸ばした足に猛禽を思わせる意匠が浮かび上がる。
風の精霊の力を宿す隼の模様だと、両脚を並べて見せた。
「痛かったりはしないから、心配しなくても大丈夫だよ。私はむしろ、元気が沸いてくる感じかなー?」
夢路は跳ねる様に椅子から降りて、やってみせるねと力を込める。
青い瞳が輝きを増す。旗袍がオーラに吹き上げられるかのようにスリットを広げた裾をひらりと揺らし、胴丸を綴る紐も端の房をたゆたわせる。踊るようにくるりと回ると、風を含む様にその装いはひらひらと舞う。
「この後仕事の予定もないから見せれるよ」
炎のオーラを浮かび上がらせ、アルトは椅子から立った。
ボクの変化は派手じゃないからつまらないかも知れないけど。そう言いながら、炎様に輝くオーラは鳥を象りアルトの身体と得物を包み込んだ。
眩さに目を瞑ったメグがその閃光の凪いだ頃に瞬いて首を傾げ、髪、と呟く。
炎の色に染まった瞳と、短かった髪は腰まで伸びてさらりと揺れた。
「外見が変わる方もいらっしゃいますよね、ボクは余り変化はありません……」
マキナがザレムの翼や瞳、アルトの髪に視線を向ける。吃驚したとメグも深く息を吐く。
差し出した左手の甲。触れても構わないと言ったそこには、歯車仕掛けの時計のような文様が浮かぶ。
メグが怖々と手を伸ばした瞬間に、時計の針が1つ進んだ。手を引っ込めてじっと見詰めると、更にもう1つ針が動いた。
ボクはお腹が空くんだよねぇ、とクッキーを口に放り込んでからナグモは力を込める。
その身体が寄り引き締まった様に見え、わ、とメグの声が小さく零れた。
「えっと、なんか背中に……蜘蛛が……見てみる?」
見える、とシャツをたくし上げると、そこに黒い痣が、体節の括れと八方へ伸びる脚が覗え、メグは慌てて頷いた。
ハンター達の覚醒が鎮まる頃にメグは立ち上がって頭を下げた。
「魔法使いには、憧れます。すごいなって、思います……でも、わたしは……多分この辺にいる精霊さんと一緒に頑張れることがしたいって思いました。……今日は、ありがとうござい、いっ」
この辺、と伸ばす指の反対側、精霊も満足そうな様子で揺れ、強張りながらの感謝の言葉に合わせ、メグの頭でぽんと跳ねた。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/12/31 06:23:56 |
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交流卓 マキナ・バベッジ(ka4302) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/12/30 18:27:52 |