農村警備

マスター:篠崎砂美

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~15人
サポート
0~15人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/10/06 19:00
完成日
2014/10/10 07:31

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「隊長さん、隊長さん、大変だー!」
「なんだ、どうした!?」
 いきなり飛び込んできた部下の様子に、アルマート・トレナーレ少佐……もとい、今は大尉が、慌てて聞き返しました。
「アンジェロんとこの牛が逃げだしただあ」
「牛……、ええい、お前たちで早く捕まえてこい」
「わっかりましただあー」
 大尉に命令されて、四人の部下たちがあたふたと兵舎を飛び出していきます。
「やれやれ。早く、都会に帰りてー」
 兵舎といっても、普通の小屋です。その中で、愚痴を垂れつつ、大尉はお茶を飲み始めました。
 数々の越権行為がばれてしまい、アルマート少佐は大尉に格下げで、極彩色の都市ヴァリオスから、農業推進地域ジェオルジの片田舎へと左遷されてしまったのでした。完全な都落ちです。先日の夏祭りで、うまくなじんでいたじゃないかというのが理由のようですが。
 名目だけは地元農村の警備小隊の隊長として、ウーノ、ドゥーエ、トレ、クアットロの四人の若者たちを部下として率いていますが、マジで名目だけです。こんなド田舎、事件らしい事件も起きません。さっきの牛が逃げだしたというのが大事件なぐらいですから。
「これじゃ、手柄を立てて都会に復帰というのも、夢のまた夢だな。俺、終わった……。はあっ……」
 やる気をなくして、日々遊びほうけているアルマート隊長ですが、それでも何の問題も起きないほどのド田舎です。
「あーあ、何か起きねーかなー。早く都会に帰りてー」
 そんな怠惰な日々を過ごしていたある日のことでした。
「た、大変だあ。ぞ、雑魔が現れただあ!」
「何だって。でかした!」
 いや、何がでかしたのでしょう。とりあえず、退治すれば何かしらの成果です。隊長は、部下たちを引き連れて現場へむかいました。
「あ、あいつですだ」
「きゃー」
「きゃー」
「きゃー」
 部下たちは、雑魔を指さすなり、隊長の背中に回って叫びました。
「こ、こいつが雑魔……」
 きしゃー!
 隊長が、野原の真ん中で奇声をあげている不気味な姿をした虫を見て、部下たちに聞き返しました。ちなみに、体長は10センチほどです。
「もう一度聞く。こいつが、化け物か?」
 きしゃーっ!
「そうですだあ。助けてー、もうだめですだあ」
 部下たちは、隊長にしがみついてブルブル震えています。
 きしゃーっ!
「いや、まあ、確かに雑魔っぽいけどなあ」
 言われてみれば、超小型の化け物っぽくはあります。多分、そうなのでしょう。しかし……。
 きしゃーっ!
「えいっ」
 ぷちっ!
 あっさりと、隊長はその雑魔を踏みつぶしました。
「やったあ! 隊長さんが雑魔をやっつけただあ」
「わーい、わーい」
「すげー、やっぱり隊長さんだあ。つえーだよ、無敵だよ」
「バンザーイ、バンザーイ」
 隊長が雑魔に勝ったのを見て、隊員たちは大喜びです。
「お前たち……、あのなあ……」
 隊長の方はと言えば、もう、返す言葉がありません。いったい、どうしろというのでしようか、こいつら……。
 いやいやいや、このままではいけません。本当に雑魔がでたら、子犬程度の大きさの雑魔でも、この小隊は全滅してしまいそうです。というよりも、戦いにすらなりません。

「というわけで、ハンターの方々に来ていただいたという次第だ」
 集まってくれたハンターたちを前にして、隊長が言いました。
「こいつらを徹底的に鍛え直してもらいたい」
「ひえー」
「勘弁してくだせえ」
「隊長さんは鬼やー」
「えーん、えーん」
 隊長の言葉に、何も知らないで招集された部下たちが泣きだします。
「分かりました。任せてください」
「おう、任せたぜ」
 キランとお互いの目を輝かせながら、隊長とハンターたちはニヤリと笑いました。

リプレイ本文

●1日目
「それでは、今日から訓練を始める」
「えー、横暴ですだー」
 アルマート・トレナーレ隊長の言葉に、兵隊さんたちが非難の声をあげます。
「うるさい。もう先生方が来ているんだ、今さら逃げられると思うなよ。というわけで、最初の先生はこの方々だ!」
 兵隊さんたちの言葉を退けると、隊長がセレナ・デュヴァル(ka0206)とアナベル・ラヴィラヴィ(ka2369)を紹介しました。
「『音楽とは心の癒やしですわ』」
 なんだか変なイントネーションで、アナベルが言いました。
「……心和む時間も、悪いとは思いません。そのような時間を作り出せるようにするため、私は、リュートをお教えしようと思います」
 淡々とセレナがつけ加えます。
「音楽が最初……。まっ、いいか。少しは地味じゃなくなるだろ……うなあ」
 思わず、隊長が頭をかかえます。
 それはさておいて、セレナが兵隊さんたちにリュートを配りました。ギターや琵琶に似た弦楽器です。
「見たことあんだが、さわるの初めてだ」
 兵隊さんたちが、ツンツンと弦を弾いて遊びます。
「私も、旅をしていたころ……、リュートの演奏で喜んでいただいたりしたことがありましたし、……うまく使えば、相手の警戒心も解くこともできるでしょう。手本……、ではないですが、一曲」
 そう言うと、セレナが暖かい調べの曲を奏でました。なんだか、いい気持ちになってしまったのか、兵隊さんたちがこっくりこっくりと船を漕ぎ出します。
「……眠らないでください」
 セレナとアナベルが、兵隊さんたちを軽くつねって目を覚まさせました。目を覚ました兵隊さんたちが、慌てて拍手をします。
「では、今度はあなたたちにも……」
 そう言ったとたん、兵隊さんたちがセレナたちにひれ伏しました。
「無理ですだあ」
「許してくださあい!」
 もう、のっけから半分泣きそうです。
「『楽譜は、用意されていた』」
 すかさず、簡単な練習曲の楽譜をアナベルが配ります。
「読めないだよ」
 きっぱりと、兵隊さんたちが言いました。
 アナベルが頭をかかえて突っ伏します。
 まあ、想定内だと、セレナが音階から教えます。アナベルと一緒に指の押さえ方を一つ一つ教えていくと、意外に覚えは早いようです。譜面は読めなくとも、音感はなかなかよろしいようでした。
「……音を出すときは笑顔で」
「えっ、せんせーのまねしてただけだども」
 むっすりとした顔の兵隊さんたちが、セレナに答えました。
「……笑顔で」
 完璧にそれをスルーして、セレナが繰り返しました。
 なんとか、半日かけてドレミはできるようになりましたが、曲を弾くにはまだまだです。
「後は、各自で自宅学習だな。リュートは最終日まで借りていいそうだから、頑張れよ」
 時間切れとなりましたので、隊長がそう締めました。

 そのころ、岩動 巧真(ka1115)とエリオット・ウェスト(ka3219)は、セレナイト・アインツヴァイア(ka0900)を引っ張り出して、後日行うサバイバル訓練用の候補地を探して近くの森の中を歩いていました。
「まあ、このへんは悪くないかな」
 足場や周囲の視界を見回して、セレナイトが言いました。
「ふんふん、なるほどね」
 エリオットが、手に持った地図に、ここが候補地と花丸を書きました。
「よし、じゃあ、ここな」
 巧真が、あっさりと決定します。

 午後は、岩井崎 旭(ka0234)による乗馬訓練でした。
「そろそろ出番だぞ」
 旭が、愛馬のサラダを、兵舎の前まで連れてきました。半日村の人たちに慣らしておいたので、初めての兵隊さんたちを見ても人見知りはしないでしょう。
「警備隊としては、すぐに現場に駆けつけなくちゃな。そこで、馬の登場だ」
 警備会社の経験がある旭が、兵隊さんたちを前にして言いました。
「はいはーい、馬なら、乗ったことあるだ」
 おおっと、今度は兵隊さんたちも元気です。さすがに農耕馬とサラダでは多少違いますが、普通に歩かせるぐらいは問題ないようでした。
「それじゃあ、交互に乗って、少し遠出をしよう。みんな、こうやってニンジンを手に持ってだなあ……」
 旭が、両手にニンジンをたくさん持って高々と掲げました。うながされて、兵隊さんたちもニンジンを高々と掲げます。
 大好物のニンジンを見て、サラダの目がキランと光りました。一目散にニンジンめがけて突進してきます。
「げっ、逃げろー」
 旭が叫びました。キャーキャーと、兵隊さんたちも逃げ回ります。
 サラダと旭はほとんど日課とも言える追いかけっこなので余裕ですが、兵隊さんたちにとってはたまったものではありません。ゼイゼイ言いながら、夕方まで駆け回ることになったのでした。
「お疲れ。さあ、うまい料理ができているぞ」
 へとへとになって兵隊さんたちが兵舎に帰ってくると、ヴェール・L=ローズレ(ka1119)が夕食と共に出迎えてくれました。

●2日目
「今日は、走り込みからやってもらうぞ。担当は、フィル・サリヴァン(ka1155)先生だ」
 隊長が、兵隊さんたちに紹介をしました。けれども、兵隊さんたちは昨日の馬との追いかけっこで、全身筋肉痛です。
「いくら田舎とはいえ、兵隊は兵隊、こんなことでは雑魔が出てきたら……」
 軽い目眩を覚えながら、フィルが頭をかかえました。
「兵隊には、瞬発力も必要です。まずは、全体の身体の様子を見るために、走り込みを行います。いいですね」
「むろんだ」
 いい機会だからと参加しているエリオット・ウェスト(ka3219)が、自信満々で答えました。こんなへろへろ兵隊さんなんかには、絶対に負けません。
「昨日は悪かったからな」
 翌日に影響が出る訓練をしてしまったからと、旭も走り込みに参加していました。参加者が多い方が、訓練も盛りあがるだろうと思ってのことです。
「それでは、開始です!」
 兵舎から一番近い木まで、短い距離を何度か往復します。
 フィルは適度にスピードを落とすと、並走したり後ろから走ったりして、兵隊さんたちのフォームを確かめました。
「はい、そこまで。集まってください」
 頃合いを見計らって、フィルがパンパンと手を叩きました。兵隊さんたちが集まってきます……あれ、一人たりません?
 見れば、ウェストが倒れてピクピクしています。よろよろと兵隊さんたちが近づくと、小枝の先でツンツンしました。
 あっ、動いた。
 どうやら、まだかろうじて生きているようです。
「はあはあ、ぼ、僕は子供で、ぜ、全然身体ができていないんだから、じ、持久力なんか、ないんだよ」
 やっと息ができるようになったウェストが言いました。
「まったく、全員、フォームからしてなっていません」
 フィルが、個人個人のフォームを直していきました。
 さて、再度走り込みを行います。うんうん、先ほどよりは少しましになったようです。
 お昼まで、フィルはそれを繰り返していきました。

 午後は、ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)の歩行訓練です。リタイアしたウェストは、兵舎でヴェールが介抱しています。
「ふむ、すべて、この偉大なボクに任せるがよい。ボクが指導するのは、行進だ。派手ではないが、なめてはいかんぞ。長距離の行軍は、規則正しい行進ができてこそだ。それに、将来武勲を立てたときに、行進の一つもできぬようでは、式典に出られぬではないか。他国の来賓の目にも恥ずかしくないように、このボクが鍛えてやろう。さあ、おいっちに、おいっちに!」
 ディアドラが、旭を囲むように兵隊さんたちに隊形を作らせると、行進を始めさせました。
「ほら、そこ、隊列が乱れているぞ。タイミングを合わせるのだ。おいっちに、おいっちに。右手、左手、右手、左手……」
 午前の訓練のように瞬発力で体力を使わない代わりに、行進はえんえんと続いていきます。
「どこまで行くだよ?」
「無駄口を叩かない。気持ちを一つにするのだ。おいっちに、おいっちに」
「えーん」
 もう疲れたという意見で、兵隊さんたちの心が一つになります。
 泣き言を言う兵隊さんたちを励ましたり脅かしたりしながら、ディアドラと旭は日が沈むまで村の周りを行進し続けました。

●3日目
「まったく、よくこれで兵隊になれたものですね」
 パンパンに膨れあがった脚をさすっている兵隊さんたちを見て、上泉 澪(ka0518)が溜め息をつきました。これでは、体力系の訓練は無理そうです。
「兵隊である以上、記憶術は大切です。作戦が覚えられなかったりしたら、目も当てられませんからね」
 そう言うと、澪が記憶術の講義を始めました。
「大事なのは、関連づけることです。そうすれば、忘れにくくなります」
 まずは身近な物事から、互いにそれを覚えていきます。だんだんと話題を高度にしていって、最後は同盟軍の要職者の名前などを記憶させます。まあ、明日になって忘れてしまっても仕方ありませんが、ちゃんと覚えていられたら、いつか役に立つこともあるでしょう。
「続いて、交渉術を伝授しましょうか」
「あー、そろそろ昼だから、もうそのくらいにしてやってくれ。もう、みんな頭がパンパンだろう」
 そんなに詰め込んでも無理だと、隊長がストップをかけました。兵隊さんたちの頭では、半日で一つがやっとでしょう。いっぺんに講義をしても、あっさりと無駄になりそうです。
「そうですか。都会にいったら、交渉に長けているだけでもかなりの武器になるとは思うのですが」
「まあ、そのへんは、俺でも教えられるからな。大丈夫だ」
 そう、左遷された隊長が言いました。説得力皆無ですが。まあ、時間をかければいろいろと教えられるのでしょう。

「というわけで、午後はオレが先生だ。敬え」
 えへんと、ふんぞり返ってジング(ka0342)が兵隊さんたちに言いました。
「お前たちには、闘争心というものを教えてやろう。肉体的な能力以前に、精神力の方が問題そうだからな。とりあえず正座だ!」
 なんだかよく分からないまま、兵隊さんたちが地面に正座させられました。
「あー、とりあえず敵は怖い。怖いが仕事だ。だから、怖くても戦えるなくてはならん」
 ワイン瓶片手に、ジングが歩き回りながら講釈を垂れます。少ししては、一休みして酒をグビグビ飲みます。
 最初のうちは黙ってそれを聞いていた兵隊さんたちですが、当然というか脚が痺れてきました。
「せんせー、足が痺れただー」
「もう痺れただと。お前の力はその程度か?」
 ほとんど空になった瓶で兵隊さんのおでこをツンツンとつつきながら、ジングが言いました。ちょっと横暴です。
「まだまだこんなもんじゃないぞ。実際の戦闘じゃ、もっと困難な姿勢で、じっと身を潜めなくちゃなんねえときもあるんだぜ」
 そう決めつけると、ジングはまだまだ正座を続けさせました。
「どうだ、そろそろ闘争心とやらに火がついてきたんじゃねえか?」
 わざと憎まれ口をききながら、ジングがうつむいている兵隊さんたちの顔をのぞき込みました。
「ひっく、ひっく、うえうえ……」
 泣いてます。
 泣かせました。ジングに、みんなからの冷たい視線が集まります。
「い、いや、その、怒りとかわいてこないのか? 俺が憎いとか、このやろー、ひっぱたいてやるとか……」
 想定外の展開に、ジングが慌てます。これでは、本当に悪い人のようではありませんか。違います。演技なんです。闘争心を引き出すための演技なんです。信じてください。
「き、今日の訓練は、これくらいにしておいてやる」
 そう言うと、痺れて立てない兵隊さんたちを慌てて引き起こしたジングでした。

●4日目
「昨日も大変だったようだね。まあ、肉体なんか、頭でどうとでもなるといういい見本だよ。ほら、僕みたいにね」
 今日の先生は、ウェストでした。
「さて、戦いには天地人が大切とされるんだよ。その中でも大切なのは天候だ。これを把握していれば、戦いを有利な状況に進められたり、それに合った武器を選んだりもできる」
「風が水っぽいと、雨が降るようなもんだか?」
 兵隊さんたちが、手を挙げて質問しました。
「うん、そんな感じだね。正確には、上昇気流で湿った空気が上空で冷やされて雲が発生し、雲の粒がくっついて大きくなると雨になる。山の斜面は上昇気流が発生しやすい。だから、山では突然雨が降ったりするんだ」
「ええっと、よく分からないだ……」
 リアルブルーの者にはこの程度は一般常識ですが、兵隊さんたちにはまだ言葉が難しいようです。
「ええっとだね、絵に描いて説明すると……」
 エリオットが、図解で説明し始めました。
 なぜか、その後、すべて絵で説明する大お絵かき大会になっていったのは謎です。

「そろそろ私の番なのだが……」
 お昼も過ぎたころ、イレーヌ(ka1372)が隊長が見つけてきてくれた子犬たちと共に現れました。
「うっ、ぼ、僕は研究所育ちで、ど、動物になんか触れたことがないんだよ」
 子犬を見たエリオットが、慌てて退散します。どうやら、犬などは苦手なようです。
 逆に、兵隊さんたちは、駆け寄ってくる子犬たちを見て歓声をあげました。よしよしと、頭をなでたりして遊び始めます。
「うんうん、じゃあ、散歩に出かけようか」
 さすがに、田舎の人たちは動物にはなれているので、イレーヌは外へと場所を移しました。仲良く散歩した後、無事に兵舎に戻ってきました。
「動物を大切に飼っている者がいるけれど、ある日突然ヴォイド襲われることがある、今はそんな世だ。私は、依頼でそういう状況に遭遇して、なんとかその子たちを助けることができた。そのときの笑顔は、忘れられないものだ。皆も、もし誰かの大切な家族が危機に瀕したとき、ほんの少しでもいいから力を貸してくれると私は嬉しいな」
 イレーヌの言葉に、素直に兵隊さんたちがうなずきました。

●5日目
「今日は応急手当の特訓をしてもらう」
 そう言って、隊長がアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)を紹介しました。
「と言うわけデ、講師のアルヴィンダヨ☆ 今回はヨロシクネ♪」
「よろしくお願いしまーす」
 兵隊さんたち、素直です。
「一口に応急手当と言っテモ、怪我の度合いはイロイロあるからネ」
 アルヴィンが、想定される怪我の種類を説明していきました。
「応急手当で対応できるノハ、このくらいまでカナ」
 重傷者は専門の者に診せるべきだと、アルヴィンが判断の基準を説明していきます。
「では、実践といこうカ」
 アルヴィンがそう言うと、いきなり頭からトマトソースを被った隊長が現れました。
「ひー、血ですだあ。血だらけえ……」
 一斉に兵隊さんたちがどん引きます。
「こ、こら、見捨てて逃げるな。うっ、痛い、もうダメだあ……」
 慌てて部下たちを呼び戻すと、隊長がわざとらしい演技で倒れました。
「側にアル物で、手当していってゴラン」
 縛られたり押されたりして悲鳴をあげる隊長をスルーして、アルヴィンが実践的な手当を指導していきました。

「敵に出会ったら、とっさに身を隠さなきゃいけないときがあるよね。あるいは、隠れて追跡するときもあると思うよ。なので、これから隠れ方を練習しよう」
 午後は、エクス・ナンバーズ(ka2647)の隠密の修行です。
 わらわらと兵隊さんたちが兵舎の周りに隠れますが、ほとんど子供のかくれんぼにもなりません。茂みからお尻が飛び出ていたり、樽の後ろから頭が見えていたりしています。
「うーん、ちょっと隠れ方が臆病かなあ。隠れながら移動しなくちゃいけないこともあるんだから、もっと大胆に勇気を出して」
 中途半端な隠れ方を、エクスが注意していきました。生き残るためには、臆病なぐらいがちょうどいいのですが、萎縮してしまっても困ります。
「それじゃ、かくれんぼといこうか。僕に見つからないように隠れてよね」
 適度に遊びの要素も交えつつ、エクスが隠れ方の指導をしていきました。

●6日目
 今日は、兵隊さんたちは巧真とセレナイトの先導で森へとサバイバル訓練に出かけました。ヴェールとアルヴィンも同行します。
「遭難した際などの、生き残り術を伝授するぞ。まあ、キャンプみたいな物だと思えばいい。まずは食料調達からだ。森は、食材の宝庫だが、同時に甘くない場所でもある。心してかかれよ」
「はーい」
 道に迷わないように木の高い場所に印をつけて進むことを教えながら、セレナイトが先日の場所へと案内していきました。
 そこをベースキャンプとするために、巧真が、野営の仕方を指示していきました。
「さて、食材の確保だ」
 セレナイトに言われて、兵隊さんたちが、周囲で山菜やキノコを探したり、釣りや狩りをします。さすがに、兵隊さんたちは慣れていて、そつなくこなしてきます。
「それは毒キノコだ。見分けにくいので気をつけろ」
 毒キノコに手を伸ばしかけたウーノの頭を思いっきりハリセンで叩きながらヴェールが言いました。
「変ナ物を食べたときは、まず吐かせることが大事ダヨ」
 アルヴィンが、野草を摘むドゥーエに食中毒の対処法を教えていきます。
「夢中になりすぎて、流れに足を取られるなよ」
 川に入って釣りをするトレに、セレナイトが注意しました。
「よーし、よく狙えよ」
 巧真が指導していたクアットロですが、狙っていたウサギを弓矢で外してしまいました。
「へったくそだなあ」
「だって、イレーヌ先生が、動物は大事にしろと言っていただよ」
「それはそれ、これはこれだ」
 きっぱりと、巧真が言い切ります。そこへ、ヴェールたちが戻ってきました。
「あっ、熊」
 いきなり、ヴェールが森の奥を指さして言いました。すぐさま、巧真とセレナイトが身構えます。その間に、兵隊さんたちはあっという間に隠れてしまいました。どうやら、前日のエクスの訓練がさっそく役に立ったようです。
「どこにイルヨ、熊?」
 アルヴィンが、キョロキョロと周囲を見回しました。どうやら、ヴェールの引っかけだったようです。
「みごとな隠れっぷりだ。野生動物も十分脅威だからな。だが、戦わなければならないときもあるだろう。もうちょっと、兵士っぽくあってほしいもんだがな」
 いろいろなことに溜め息をつきながら、巧真が言いました。
 何はともあれ、十分な食材が集まりました。
 日も暮れたころ、一同は焚き火を囲んで遅い夕餉を始めました。

●7日目
「厳しい訓練、御苦労だった」
 隊長が、兵隊さんたちをねぎらいました。どの程度レベルアップしたかは疑問ですが、多少は成長したのでしょう。そういうことにしておきたいです。
「まあいい、無事訓練の終了を祝して、ささやかな宴を用意してある。今日はのんびり楽しんでくれ」
 隊長の言葉に、兵隊さんたちが歓声をあげます。
「おなかペコペコだよ~。でも、僕も少しは強くなれたかな?」
 ちょっと力瘤を作って見せながら、エリオットが言いました。旭やフィルや澪など、他のハンターたちも、アルヴィンが持ってきた酒や、前日セレナイトたちが集めてきた食材からセレナやヴェールたちが作った料理を囲んでいます。
「今回得た経験はきっと諸君らの力になるはずだ。乾杯!」
 ディアドラが、乾杯の音頭を取りました。
「乾杯!!」
 ジングが、真っ先に杯の酒を飲み干します。
「一週間お疲れ様だった」
 ヴェールが、焼きあがった串焼きの肉をみんなに配りました。
「最後だからいいよな」
 ヴェールの言葉に、巧真がギターを取り出しました。
 その演奏に合わせて、ヴェールが歌いだします。
 途中から、イレーヌもコーラスで加わりました。
 誘われて、兵隊さんたちも覚えたての楽器でちょこまかと花を添えます。
「『どんな演奏もバッチコイでしてよ!』」
 アナベルが陽気に踊りだします。
 それに合わせて鼻歌歌いながら、エクスが食べ物を頬ばります。
 わたわたと大変だった訓練を振り返りつつ、宴は続いていったのでした。

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重体一覧

参加者一覧


  • セレナ・デュヴァル(ka0206
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • 大王の鉄槌
    ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271
    人間(紅)|12才|女性|闘狩人
  • 漆黒の刃
    ジング(ka0342
    人間(紅)|24才|男性|機導師

  • 上泉 澪(ka0518
    人間(紅)|19才|女性|霊闘士
  • 森の守人
    セレナイト・アインツヴァイア(ka0900
    エルフ|25才|男性|猟撃士
  • 豪放快男
    岩動 巧真(ka1115
    人間(蒼)|17才|男性|猟撃士
  • 献身の乙女
    ヴェール・L=ローズレ(ka1119
    人間(蒼)|12才|女性|聖導士
  • 闇夜を奔る斬撃
    フィル・サリヴァン(ka1155
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士

  • 豊永 杏理(ka2123
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士
  • 歌とダンスと芋煮会
    アナベル・ラヴィラヴィ(ka2369
    エルフ|16才|女性|聖導士
  • 嗤ウ観察者
    アルヴィン = オールドリッチ(ka2378
    エルフ|26才|男性|聖導士
  • 紅蓮の笑顔
    エクス・ナンバーズ(ka2647
    人間(蒼)|16才|男性|猟撃士
  • 可愛い坊や♪
    エリオット・ウェスト(ka3219
    人間(蒼)|13才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ジング(ka0342
人間(クリムゾンウェスト)|24才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/10/06 06:40:29
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/03 18:05:56
アイコン トレナーレ大尉への質問所
ヴェール・L=ローズレ(ka1119
人間(リアルブルー)|12才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/10/03 07:38:51