ゲスト
(ka0000)
【初夢】知追う者、宮司となって初詣
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/01/03 09:00
- 完成日
- 2017/01/09 05:49
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ここではない、ここかもしれない世界。
クリムゾンウェストかリアルブルーか?
●初詣、準備!
「神主、破魔矢足りますかね」
「栄養ドリンク、差し入れ入りましたー。氏子の――」
「絵馬ってこっちでいいんですか?」
「まずい、動線去年これまずかったんじゃないの」
ここはどこかにある大江神社。
神職および巫子たちがてんやわんやで準備をしている。
「お屠蘇は?」
「甘酒」
「あれ、酒かすのじゃないの」
「両方用意しているのっ!?」
テント設営、たき火の準備、暖房器具の用意等々、すでにしてあったとしても、おいていくのは当日だ。前日から置きっぱなしもできない。
「それより、紅葉さんは!」
宮司の大江 紅葉(kz0163)がいない。
●稲荷社前
大江神社はいくつか祭る神がいる。おおむねかなうことになっている。
稲荷社は本殿とは離れたところにあり、幾分静寂がある。ここも商売繁盛を望む参拝客でにぎわうのだ。
朱の鳥居が何十も並んでいるのは、近隣で有名。最近だと旅行のガイドブックにも載ったという。初詣のメーンにはならないため、まだ人はいない。本殿で参拝を済ませたのち、来る人は来るだろう。
紅葉は日が暮れていく神社内を歩き回り、そこに座り込んでいた。
「静かですねぇ」
コツンと頭の上に木の枝が落ちた。
「風が吹いていますねぇ」
ザクッ。
「……わかりました、現実逃避しないで戻ります」
木の枝が縦に振ってきて頭に軽く刺さったためさすがに戻ることにした。これに耐えたところでいいことはなかろうと。
お狐様の御意思。
本殿に戻ると社務所に引っ張られていき、そのあとあれこれ引っ張りまわされる。熱気の中にあちこち移動し夕飯時になる。
近所の寺の除夜の鐘が聞こえる。
これが鳴り終わるころには、参拝者でごった返す。
毎年のこと。
大雪が降る年もある。
今年は……穏やかな晴れの気候。
きっと初日の出も見られる。
「まあ、私の場合は、気づいたら朝でしょうね」
しみじみと正装に着替えて窓の外を見る。
●参道
本殿の前の鳥居が一の鳥居。少し行くと二の鳥居がある。
本殿の近くに社務所があり、破魔矢やおみくじを授与している。
一の鳥居と二の鳥居の間には神社が設置したテントがあり、甘酒や屠蘇がふるまわれる。古い縁起物もこのテントで引き受けている。なお、稲荷社に向かうなら、この間にある脇道にそれることとなる。
二の鳥居から外に向かうと敷地の境界を表す三の鳥居。二と三の鳥居の間には露店が立ち並ぶ。縁起物がならび、温かい飲食物や子供が思わずほしくなってしまうおもちゃが販売され、見るだけでも楽しく、ついつい財布のひもを緩めそうになったりする。
神社の参拝のために並ぶものたちは大体二の鳥居の間くらいまでくる。それ以上増えることはない。
カップルや家族、仲間でわいわいと並ぶのが常。
ごみは持ち返りでお願いしつつも、一応ゴミ箱は用意してある。
寒さに頬を赤くし、思わず露店に目が行く。
静かな時、温かい時。
――皆さんはどのようにこの場にいますか?
クリムゾンウェストかリアルブルーか?
●初詣、準備!
「神主、破魔矢足りますかね」
「栄養ドリンク、差し入れ入りましたー。氏子の――」
「絵馬ってこっちでいいんですか?」
「まずい、動線去年これまずかったんじゃないの」
ここはどこかにある大江神社。
神職および巫子たちがてんやわんやで準備をしている。
「お屠蘇は?」
「甘酒」
「あれ、酒かすのじゃないの」
「両方用意しているのっ!?」
テント設営、たき火の準備、暖房器具の用意等々、すでにしてあったとしても、おいていくのは当日だ。前日から置きっぱなしもできない。
「それより、紅葉さんは!」
宮司の大江 紅葉(kz0163)がいない。
●稲荷社前
大江神社はいくつか祭る神がいる。おおむねかなうことになっている。
稲荷社は本殿とは離れたところにあり、幾分静寂がある。ここも商売繁盛を望む参拝客でにぎわうのだ。
朱の鳥居が何十も並んでいるのは、近隣で有名。最近だと旅行のガイドブックにも載ったという。初詣のメーンにはならないため、まだ人はいない。本殿で参拝を済ませたのち、来る人は来るだろう。
紅葉は日が暮れていく神社内を歩き回り、そこに座り込んでいた。
「静かですねぇ」
コツンと頭の上に木の枝が落ちた。
「風が吹いていますねぇ」
ザクッ。
「……わかりました、現実逃避しないで戻ります」
木の枝が縦に振ってきて頭に軽く刺さったためさすがに戻ることにした。これに耐えたところでいいことはなかろうと。
お狐様の御意思。
本殿に戻ると社務所に引っ張られていき、そのあとあれこれ引っ張りまわされる。熱気の中にあちこち移動し夕飯時になる。
近所の寺の除夜の鐘が聞こえる。
これが鳴り終わるころには、参拝者でごった返す。
毎年のこと。
大雪が降る年もある。
今年は……穏やかな晴れの気候。
きっと初日の出も見られる。
「まあ、私の場合は、気づいたら朝でしょうね」
しみじみと正装に着替えて窓の外を見る。
●参道
本殿の前の鳥居が一の鳥居。少し行くと二の鳥居がある。
本殿の近くに社務所があり、破魔矢やおみくじを授与している。
一の鳥居と二の鳥居の間には神社が設置したテントがあり、甘酒や屠蘇がふるまわれる。古い縁起物もこのテントで引き受けている。なお、稲荷社に向かうなら、この間にある脇道にそれることとなる。
二の鳥居から外に向かうと敷地の境界を表す三の鳥居。二と三の鳥居の間には露店が立ち並ぶ。縁起物がならび、温かい飲食物や子供が思わずほしくなってしまうおもちゃが販売され、見るだけでも楽しく、ついつい財布のひもを緩めそうになったりする。
神社の参拝のために並ぶものたちは大体二の鳥居の間くらいまでくる。それ以上増えることはない。
カップルや家族、仲間でわいわいと並ぶのが常。
ごみは持ち返りでお願いしつつも、一応ゴミ箱は用意してある。
寒さに頬を赤くし、思わず露店に目が行く。
静かな時、温かい時。
――皆さんはどのようにこの場にいますか?
リプレイ本文
●除夜の鐘
煩悩を削ぎ落すように、重く高く澄んだ音が響き渡る。
静寂の中に喧噪が漂う神社の中にエルバッハ・リオン(ka2434)は現れる。
――ザワリ。
空気は動くが特に何もない、約束を破らない限り。
星野 ハナ(ka5852)は巫女の衣装に身を包み、てきぱきと動きまわる。満面の笑み、アルバイトだからと手を抜きはないという気迫と何か怪しげなオーラも立ち上る。神社は仕事をする彼女は頼もしいと思ってりう。
「絵馬の準備もできました!」
元気の良い声が響いた。
神職用の袴をはきアーク・フォーサイス(ka6568)は神社の手伝いとして入る。女性が多いということもあり、力仕事を中心に走り回るつもりだ。
「これで全部かな? え、それも運ぶんだね」
人が集まりつつある境内を見て、足を止めた。
ソレル・ユークレース(ka1693)とリュンルース・アウイン(ka1694)は年越しのテレビを見ながら、こたつの魔力にとらわれていた。
親友で相棒との穏やかな年越し。
ザレム・アズール(ka0878)は何故正月だけこう改まったり、神を感じに行くのか等々不思議がる。
「年神に干支に……年の区切りは人間が決めただけに過ぎないのにな」
改まる必要はないと思いつつも、彼はびしっと和装で決める。ペットのパルムたちを連れて、深夜の空気に身を置いた。
マリィア・バルデス(ka5848)は他の参拝者につられるように神社にやってきた。身が引き締まるような空気の中、露店から食べ物の匂いもしている。それらを眺めるが何も買わない。
「神域と言うことかしら、ビールも焼き鳥もないのね」
鳥居の前でお辞儀する人を見かけ、真似をして通った。
そして、小さな声のカウントダウンだが熱気が上がってくる。
「ハッピーニューイヤー」「明けましておめでとう」「ひゃほー」「わー」と控えめな歓声が上がる。
一応深夜の外だから。
●戦場!
ハナははきはき笑顔。
「はい、参拝ありがとうございますぅ。おみくじの番号は……はい、これです」
寒さには負けない。
「お守りでしたら、こちらです。商売繁盛、家運隆盛、交通安全、大願成就、縁結びもあります。何がお望みですか? あと、こちらは企業様とのコラボレーションのパルムやユグディラをあしらった当神社でしかないお守りですぅ。可愛いですよぉ?」
神社のアルバイトを始めて必要の有無はともかく、覚えられる作法もすべて覚える。飲み込みが早いと常時いる巫女に褒められくらいだ。
そんなこんなで人が押し寄せる中、休憩も兼ねて外のテントに荷物を持っていくよう頼まれる。
「分かりましたー。ついでにごみの回収もしてきますねー」
換えの大きな透明袋が入った袋を脇に挟み、屠蘇が入った入れ物を持って外に出た。
「……」
気迫のある、伏目がちで穏やかそうであるが猛禽類のような鋭い視線を、単身者のような男性に向けているとは誰も気づいていなかった。
破魔矢、お札や絵馬などが足りなくなれば補充のために背後にある仮倉庫に走るアーク。
袴姿は寒いと思われたが、動きまわっているとそれほどではない。かがり火や暖房器具により暖かいのは間違いない。
参拝者の熱気もさることながら、そこにいる巫女や神職たちの動きも熱源だ。
外に出ると寒いことは寒いが心地よい。
手を合わせる人たちの中に、知っている顔を探そうとする。二年前に死んでしまった師匠の姿を。
いるはずはない、とわかっているが、ここにはいるような気がした。
「身寄りのない俺を引き取って、家族のように過ごしてきた……お礼も言っていない」
厳かな空気と俗世との間のこの場所なら、新しい年がやって来たばかりの今ならば、いるような気もした。
ヒトの匂い。
カミの匂い。
エルバッハは自分に干渉しないそれらに安堵する。
「本当、不思議な国です」
普通の少女に見えるが、長い年月を生きている吸血鬼である。
「……こうして一人でのんびりできるのは嬉しいです」
戦いは嫌いだ。
吸血鬼だから殺戮好きと思われ、退魔組織に追われる。降りかかる火の粉は振り払う中、彼女に従ってくる配下もできた。
組織が大きくなるとその把握・管理に忙殺される日々がやってくる。こっそり抜け出して今の休息だ。
「この国の神々はまた不思議」
大江の神社にいる神は彼女に条件付きで滞在を許す。
国でもめ事を起こさない、ということ。
「神は祟る……と言いますから」
だから人間はあがめる。
一方で神を見ることはできない。感じたり、見ることができることもあるそうだが、そういう人間い出会ったことはない。
「でも、先ほどそこにいた人間は存在に気づいているようですよね」
紅葉がおたおたしていたのを見て表する。神の使いが示したことを彼女はきちんと理解し、立ち去ったのだから。
マリィアは大勢の中に埋もれながら独りだが、寂しいと感じない。参拝への道と言うこともあり、目的が同じ仲間の中にいるからか。
鳥居は「なぜ赤いのかしら?」とか、「参拝途中で飲食したら不謹慎に当たるかしら」と屋台の前で財布と取り出しつつひっこめつつ歩む。
「せっかくなら買って行ってくれよ」
「帰りにするわ。参拝前はいけないでしょ?」
身を清めると考えると後のほうがいい。
屋台を見て回ると同じ種類の店もあったりすると分かる。片っ端から食べるのは大変そうだが、何か所かは寄るつもりでどこが美味しそうか、珍しいかもとか目星はつける。
「神社の? お屠蘇ね……」
「はい。延命長寿を祝ってのむものですぅ」
巫女は注ぐ器を持ちながら、少々ブリッコぽい雰囲気で応える。
「薬草の一種かしら?」
「漢方薬の一種ですぅ。それをみりんにつけて作ったものがお屠蘇です。お酒でもいいのですが、みりんです」
「ならいただいてみるわ」
マリィアは飲んでみる。漢方と聞き飲みにくい味なのかと思うが、意外とすっきりと飲み干す。
あと少しで本殿だ。財布の中から賽銭を取り出す。
参拝者の熱気にザレムは楽しくなってくる。
神社を調べたときに出た通り、鳥居の中央は通らない。手水場に多くの人が行かないのを不思議がりながら手や口を漱ぐ。
身を清めるという動作だと書いてあった。パルムたちもおっかなびっくり同じことをする。
「夜だから静かなのに賑やか。これも一年で一度の日、年が変わったばかりだから。正月はレア度だよなぁ」
参拝者の列に彼も並ぶ。
「あれは、大江さん」
宮司としての務めや晴れの日と言うことできっちり着こんでいるのに、ふらふらと境内を歩き回る紅葉を発見した。
「いいのか? こんなところにいて」
「ばれていなければいいのです!」
ザレムの質問の答えはひどい。
「ではせっかくなので宮司に質問が」
ザレムは調べたあれこれの疑問をぶつける。それに対しては紅葉はそつなく答える。
「右手やや下にし打った後上にずらして左右の手を揃えるらしいのは何故?」
「いろんなやり方があるのですよ? 拍手というのは貴人に対する礼だったと言われています。人間、感激すると手を自然と打つとされています。パンと打つことで邪気を払うともいわれます」
「ずらすのは?」
「手で心と体を表しているともいわれています。そもそも、拍手事自体が禁止されていた時代もあるのです」
探しに来た神職に連れ戻されていった。
リュンルースは明るいため目が覚めた。テレビも灯りもついているため、消す。親友の姿を確認してから、こたつに戻った。一瞬、寝床に入りに行こうかと思ったが、たまにはこういう堕落したような生活も楽しい。
「……こたつで眠るのもたまにはいいかな」
ソレルは疲れはていたのかしっかりこたつで寝ている。起こすには忍びない。
ソレルは朝まで眠る。肩は寒く、こたつに潜った。
●太陽とともに
何を願うか、マリィアは悩む。
「商売繁盛って願うと災害や戦争が増えたりしちゃうのかしら……願い事には気を付けろって言うし。そうすると途切れず仕事がありますようにも不味いのかしら……?」
なかなか重い。
「家内安全、開運厄除が無難よね」
手を合わせてから、社務所の方を見る。福を取り込むための物を授与されるための人々が集まっている。
「こっちはお稲荷さん? 確か商売と技芸の神様よね?」
人気は少ないのは、暗いからだろう。マリィアは向かう。
ふと、誰かいた気がした。彼女が近づいたところでその気配は途切れた。
エルバッハは社の先にある山に少し登ってみたり、真夜中の森林浴で英気を養っていた。
人の気配がする。
見つかったところで人間の少女のふりで終わる。
サアアアアアア。
風がないのに木が揺れた。エルバッハにも見えていないが、誰かが何かを告げている。
気配を探る。
「見込みが甘かったです。仕事熱心な連中ですね」
人間の退魔組織ではなさそうだ。同族に近い存在。
「敵対組織ですね……ここで争いは起こしません。つかの間でしたが、ありがとうございました」
敵対するモノを討つために立ち去る。その前に日に干されて乾いた稲の匂いを感じた。まるで、またおいでと言ってくれているようで、エルバッハは口元に浅い笑みを浮かべた。
ザレムは参拝が終わり、着物姿の女性がいると目で追ったりしつつ、なんだかんだ言いながら初詣を楽しむ。
「お汁粉なんかもあるみたいだな。パルムも食べる?」
肩に乗っているパルムたちは喜ぶ。
「……ん?」
ザレムの視界に、後ろ足で歩く猫たちがいた。
「こ、これは! 実に吉兆だ!」
近寄るとしゃがみ込む。ユグディラ三匹、毛並みが真っ黒とチャトラとシロッポイのがいた。互いに挨拶をする。挨拶と言ってもユグディラの言葉は分からないが、しぐさでわかる。
「君たちも初詣かい? ああ、お年玉を包まなきゃ」
知り合いユグディラたちを前にザレムはときめきでいっぱいだった。
初日の出。
神社の境内に光が走る。寒さが緩むのを感じたのか、参拝者の頬が緩む。
徐々に灯は消され、朝が来る。
はっくしょーん。
ソレルは己のくしゃみで目が覚めた。暑いのに寒いという状況の原因がこたつで寝ちゃったにあると気づく。
「……外が明るい……あああ、ルース! 初日の出、終わった」
リュンルースをゆすって、新年初の発言。
眠たいと目をしょぼしょぼさせてリュンルースは冷静にうなずいたが、初日の出を見られなかったことは残念だった。
「……でも、初詣には行きたいよね? このままでは、終われない、という気持ち」
「それは名案だ。このままじゃあ、俺は寝正月だぜ」
二人は出かける準備をした。近くに大きな神社があるからそこに向かう。
●戦場は続く
徹夜明けといって過言ではない神社。
仮眠をとれたとしても、栄養剤で何とか持たせたとしても、疲労という物はやってくる。
それでも笑顔が絶えないハナは驚嘆に値する。ただ「何か怪しいオーラ」は強くなっているのを感じ取る人もいる。
「神楽舞も教えていただきましたしぃ、神社周辺の浄化はやらせて下さいぃ。神主さんたちは御祈祷でお忙しいでしょうからぁ」
やる気満なハナであったが、今はいいから休めと周りから止められた。
ならばと、本殿で手を合わせる。
「今年こそ素敵な男性とのご縁がありますように」
アークは明るくなって不要になった道具の片づけを手伝う。
「師匠」
思わずつぶやいた。
人ごみに似た人はいた。
それはあくまで似ている人だった。
「……死者と会える場所じゃないからね……」
わかってはいる。神社で過ごしている間、何かの気配は感じていた。だからこそ、師匠の気配かもしれないと考えたかもしれない。
宮司に意見を聞いてみたい気にもなる。考えていると視界内に彼女を見つけた。祈祷の開始らしく忙しそうだ。
またいずれ、だろう。
ふと露店に目をやる。
「……ぜんざいの店もあるんだ。餅は気を付けないとな……」
師匠の死因がよぎらないわけがない。
ザレムはユグディラにあれこれ買いそうになるが、両肩から視線が痛かった。
それに、クロとシロッポイが意外と大人の対応で、「そんなにいただくわけには」というブレーキが見えた。
「お互いに楽しもうな」
三匹もうなずいて別れた。
マリィアは稲荷社や神社の敷地内を回った後、露店に向かう。
「さあ、食べてから帰るわよ」
目星をつけていた店だけでも昼食は不要そうだ。
列の後ろにソレルとリュンルースはつく。
露店も出ており思わず目が向かう。それぞれ目をそらすと、はぐれそうだ。
(手をつなぐのもなぁ……嫌いじゃないけど恥ずかしいかな……それより、手袋忘れたのはうかつだったな)
リュンルースは溜息を洩らしつつ、両手を合わせてこする。指先が冷えて感覚が薄れるのがよくわかった。
「ん?」
ソレルはリュンルースの行動に気づき、何気なく彼の手を取った。氷のようと言っても過言ではない冷え方に驚く。
「あー」
ソレルは自分のジャケットのポケットに自分の手ごとリュンルースの手を突っ込む。
「あっ……ありがとう。君の中、暖かいよ。それに離れ離れにならないね」
「そうだな。片手だけで悪いな」
「そんなことないよ」
リュンルースは微笑む。心が伝わり、十二分に温かかった。
列が進み、本殿の前まで来た。
ソレルは参拝方法がうろ覚えだと思ったが、相棒の真似をすればいいと考えた。
手を放し、賽銭を投げ入れる。お辞儀を二度した後、手を二度打つ。
何を願うか――。
(ソルとこうして過ごしていけますように)
(ルースのことはいいや。願わなくても一緒にいられるように俺自身がそうしていくから。つつがなく過ごせますように、だな!)
それぞれ願う。
「さあ、何か食べて帰る?」
「朝食だってまだだ、勿論だ」
二人は露店に向かう、ポケットの中で手をつなぎ。
「ん? 重要なこと忘れてた」
「何? 祈願したんじゃないのかい?」
「それはそれ、心配することじゃねぇ。今年もよろしくな、ルース」
リュンルースはキョトンとした後、破顔する。
「こちらこそ、よろしく」
敵組織の者を倒し終えて、居城に戻ったエルバッハを待っていたのは、配下たちの心配と叱責だった。
「……仕方がないですね」
ため息が漏れる。また忙しい日々が戻ってくる。
ハンターは目が覚める。
楽しかったような、不思議な内容だたような、夢の内容は思い出せない。
年も明けた、どんな一年になるのか――。
煩悩を削ぎ落すように、重く高く澄んだ音が響き渡る。
静寂の中に喧噪が漂う神社の中にエルバッハ・リオン(ka2434)は現れる。
――ザワリ。
空気は動くが特に何もない、約束を破らない限り。
星野 ハナ(ka5852)は巫女の衣装に身を包み、てきぱきと動きまわる。満面の笑み、アルバイトだからと手を抜きはないという気迫と何か怪しげなオーラも立ち上る。神社は仕事をする彼女は頼もしいと思ってりう。
「絵馬の準備もできました!」
元気の良い声が響いた。
神職用の袴をはきアーク・フォーサイス(ka6568)は神社の手伝いとして入る。女性が多いということもあり、力仕事を中心に走り回るつもりだ。
「これで全部かな? え、それも運ぶんだね」
人が集まりつつある境内を見て、足を止めた。
ソレル・ユークレース(ka1693)とリュンルース・アウイン(ka1694)は年越しのテレビを見ながら、こたつの魔力にとらわれていた。
親友で相棒との穏やかな年越し。
ザレム・アズール(ka0878)は何故正月だけこう改まったり、神を感じに行くのか等々不思議がる。
「年神に干支に……年の区切りは人間が決めただけに過ぎないのにな」
改まる必要はないと思いつつも、彼はびしっと和装で決める。ペットのパルムたちを連れて、深夜の空気に身を置いた。
マリィア・バルデス(ka5848)は他の参拝者につられるように神社にやってきた。身が引き締まるような空気の中、露店から食べ物の匂いもしている。それらを眺めるが何も買わない。
「神域と言うことかしら、ビールも焼き鳥もないのね」
鳥居の前でお辞儀する人を見かけ、真似をして通った。
そして、小さな声のカウントダウンだが熱気が上がってくる。
「ハッピーニューイヤー」「明けましておめでとう」「ひゃほー」「わー」と控えめな歓声が上がる。
一応深夜の外だから。
●戦場!
ハナははきはき笑顔。
「はい、参拝ありがとうございますぅ。おみくじの番号は……はい、これです」
寒さには負けない。
「お守りでしたら、こちらです。商売繁盛、家運隆盛、交通安全、大願成就、縁結びもあります。何がお望みですか? あと、こちらは企業様とのコラボレーションのパルムやユグディラをあしらった当神社でしかないお守りですぅ。可愛いですよぉ?」
神社のアルバイトを始めて必要の有無はともかく、覚えられる作法もすべて覚える。飲み込みが早いと常時いる巫女に褒められくらいだ。
そんなこんなで人が押し寄せる中、休憩も兼ねて外のテントに荷物を持っていくよう頼まれる。
「分かりましたー。ついでにごみの回収もしてきますねー」
換えの大きな透明袋が入った袋を脇に挟み、屠蘇が入った入れ物を持って外に出た。
「……」
気迫のある、伏目がちで穏やかそうであるが猛禽類のような鋭い視線を、単身者のような男性に向けているとは誰も気づいていなかった。
破魔矢、お札や絵馬などが足りなくなれば補充のために背後にある仮倉庫に走るアーク。
袴姿は寒いと思われたが、動きまわっているとそれほどではない。かがり火や暖房器具により暖かいのは間違いない。
参拝者の熱気もさることながら、そこにいる巫女や神職たちの動きも熱源だ。
外に出ると寒いことは寒いが心地よい。
手を合わせる人たちの中に、知っている顔を探そうとする。二年前に死んでしまった師匠の姿を。
いるはずはない、とわかっているが、ここにはいるような気がした。
「身寄りのない俺を引き取って、家族のように過ごしてきた……お礼も言っていない」
厳かな空気と俗世との間のこの場所なら、新しい年がやって来たばかりの今ならば、いるような気もした。
ヒトの匂い。
カミの匂い。
エルバッハは自分に干渉しないそれらに安堵する。
「本当、不思議な国です」
普通の少女に見えるが、長い年月を生きている吸血鬼である。
「……こうして一人でのんびりできるのは嬉しいです」
戦いは嫌いだ。
吸血鬼だから殺戮好きと思われ、退魔組織に追われる。降りかかる火の粉は振り払う中、彼女に従ってくる配下もできた。
組織が大きくなるとその把握・管理に忙殺される日々がやってくる。こっそり抜け出して今の休息だ。
「この国の神々はまた不思議」
大江の神社にいる神は彼女に条件付きで滞在を許す。
国でもめ事を起こさない、ということ。
「神は祟る……と言いますから」
だから人間はあがめる。
一方で神を見ることはできない。感じたり、見ることができることもあるそうだが、そういう人間い出会ったことはない。
「でも、先ほどそこにいた人間は存在に気づいているようですよね」
紅葉がおたおたしていたのを見て表する。神の使いが示したことを彼女はきちんと理解し、立ち去ったのだから。
マリィアは大勢の中に埋もれながら独りだが、寂しいと感じない。参拝への道と言うこともあり、目的が同じ仲間の中にいるからか。
鳥居は「なぜ赤いのかしら?」とか、「参拝途中で飲食したら不謹慎に当たるかしら」と屋台の前で財布と取り出しつつひっこめつつ歩む。
「せっかくなら買って行ってくれよ」
「帰りにするわ。参拝前はいけないでしょ?」
身を清めると考えると後のほうがいい。
屋台を見て回ると同じ種類の店もあったりすると分かる。片っ端から食べるのは大変そうだが、何か所かは寄るつもりでどこが美味しそうか、珍しいかもとか目星はつける。
「神社の? お屠蘇ね……」
「はい。延命長寿を祝ってのむものですぅ」
巫女は注ぐ器を持ちながら、少々ブリッコぽい雰囲気で応える。
「薬草の一種かしら?」
「漢方薬の一種ですぅ。それをみりんにつけて作ったものがお屠蘇です。お酒でもいいのですが、みりんです」
「ならいただいてみるわ」
マリィアは飲んでみる。漢方と聞き飲みにくい味なのかと思うが、意外とすっきりと飲み干す。
あと少しで本殿だ。財布の中から賽銭を取り出す。
参拝者の熱気にザレムは楽しくなってくる。
神社を調べたときに出た通り、鳥居の中央は通らない。手水場に多くの人が行かないのを不思議がりながら手や口を漱ぐ。
身を清めるという動作だと書いてあった。パルムたちもおっかなびっくり同じことをする。
「夜だから静かなのに賑やか。これも一年で一度の日、年が変わったばかりだから。正月はレア度だよなぁ」
参拝者の列に彼も並ぶ。
「あれは、大江さん」
宮司としての務めや晴れの日と言うことできっちり着こんでいるのに、ふらふらと境内を歩き回る紅葉を発見した。
「いいのか? こんなところにいて」
「ばれていなければいいのです!」
ザレムの質問の答えはひどい。
「ではせっかくなので宮司に質問が」
ザレムは調べたあれこれの疑問をぶつける。それに対しては紅葉はそつなく答える。
「右手やや下にし打った後上にずらして左右の手を揃えるらしいのは何故?」
「いろんなやり方があるのですよ? 拍手というのは貴人に対する礼だったと言われています。人間、感激すると手を自然と打つとされています。パンと打つことで邪気を払うともいわれます」
「ずらすのは?」
「手で心と体を表しているともいわれています。そもそも、拍手事自体が禁止されていた時代もあるのです」
探しに来た神職に連れ戻されていった。
リュンルースは明るいため目が覚めた。テレビも灯りもついているため、消す。親友の姿を確認してから、こたつに戻った。一瞬、寝床に入りに行こうかと思ったが、たまにはこういう堕落したような生活も楽しい。
「……こたつで眠るのもたまにはいいかな」
ソレルは疲れはていたのかしっかりこたつで寝ている。起こすには忍びない。
ソレルは朝まで眠る。肩は寒く、こたつに潜った。
●太陽とともに
何を願うか、マリィアは悩む。
「商売繁盛って願うと災害や戦争が増えたりしちゃうのかしら……願い事には気を付けろって言うし。そうすると途切れず仕事がありますようにも不味いのかしら……?」
なかなか重い。
「家内安全、開運厄除が無難よね」
手を合わせてから、社務所の方を見る。福を取り込むための物を授与されるための人々が集まっている。
「こっちはお稲荷さん? 確か商売と技芸の神様よね?」
人気は少ないのは、暗いからだろう。マリィアは向かう。
ふと、誰かいた気がした。彼女が近づいたところでその気配は途切れた。
エルバッハは社の先にある山に少し登ってみたり、真夜中の森林浴で英気を養っていた。
人の気配がする。
見つかったところで人間の少女のふりで終わる。
サアアアアアア。
風がないのに木が揺れた。エルバッハにも見えていないが、誰かが何かを告げている。
気配を探る。
「見込みが甘かったです。仕事熱心な連中ですね」
人間の退魔組織ではなさそうだ。同族に近い存在。
「敵対組織ですね……ここで争いは起こしません。つかの間でしたが、ありがとうございました」
敵対するモノを討つために立ち去る。その前に日に干されて乾いた稲の匂いを感じた。まるで、またおいでと言ってくれているようで、エルバッハは口元に浅い笑みを浮かべた。
ザレムは参拝が終わり、着物姿の女性がいると目で追ったりしつつ、なんだかんだ言いながら初詣を楽しむ。
「お汁粉なんかもあるみたいだな。パルムも食べる?」
肩に乗っているパルムたちは喜ぶ。
「……ん?」
ザレムの視界に、後ろ足で歩く猫たちがいた。
「こ、これは! 実に吉兆だ!」
近寄るとしゃがみ込む。ユグディラ三匹、毛並みが真っ黒とチャトラとシロッポイのがいた。互いに挨拶をする。挨拶と言ってもユグディラの言葉は分からないが、しぐさでわかる。
「君たちも初詣かい? ああ、お年玉を包まなきゃ」
知り合いユグディラたちを前にザレムはときめきでいっぱいだった。
初日の出。
神社の境内に光が走る。寒さが緩むのを感じたのか、参拝者の頬が緩む。
徐々に灯は消され、朝が来る。
はっくしょーん。
ソレルは己のくしゃみで目が覚めた。暑いのに寒いという状況の原因がこたつで寝ちゃったにあると気づく。
「……外が明るい……あああ、ルース! 初日の出、終わった」
リュンルースをゆすって、新年初の発言。
眠たいと目をしょぼしょぼさせてリュンルースは冷静にうなずいたが、初日の出を見られなかったことは残念だった。
「……でも、初詣には行きたいよね? このままでは、終われない、という気持ち」
「それは名案だ。このままじゃあ、俺は寝正月だぜ」
二人は出かける準備をした。近くに大きな神社があるからそこに向かう。
●戦場は続く
徹夜明けといって過言ではない神社。
仮眠をとれたとしても、栄養剤で何とか持たせたとしても、疲労という物はやってくる。
それでも笑顔が絶えないハナは驚嘆に値する。ただ「何か怪しいオーラ」は強くなっているのを感じ取る人もいる。
「神楽舞も教えていただきましたしぃ、神社周辺の浄化はやらせて下さいぃ。神主さんたちは御祈祷でお忙しいでしょうからぁ」
やる気満なハナであったが、今はいいから休めと周りから止められた。
ならばと、本殿で手を合わせる。
「今年こそ素敵な男性とのご縁がありますように」
アークは明るくなって不要になった道具の片づけを手伝う。
「師匠」
思わずつぶやいた。
人ごみに似た人はいた。
それはあくまで似ている人だった。
「……死者と会える場所じゃないからね……」
わかってはいる。神社で過ごしている間、何かの気配は感じていた。だからこそ、師匠の気配かもしれないと考えたかもしれない。
宮司に意見を聞いてみたい気にもなる。考えていると視界内に彼女を見つけた。祈祷の開始らしく忙しそうだ。
またいずれ、だろう。
ふと露店に目をやる。
「……ぜんざいの店もあるんだ。餅は気を付けないとな……」
師匠の死因がよぎらないわけがない。
ザレムはユグディラにあれこれ買いそうになるが、両肩から視線が痛かった。
それに、クロとシロッポイが意外と大人の対応で、「そんなにいただくわけには」というブレーキが見えた。
「お互いに楽しもうな」
三匹もうなずいて別れた。
マリィアは稲荷社や神社の敷地内を回った後、露店に向かう。
「さあ、食べてから帰るわよ」
目星をつけていた店だけでも昼食は不要そうだ。
列の後ろにソレルとリュンルースはつく。
露店も出ており思わず目が向かう。それぞれ目をそらすと、はぐれそうだ。
(手をつなぐのもなぁ……嫌いじゃないけど恥ずかしいかな……それより、手袋忘れたのはうかつだったな)
リュンルースは溜息を洩らしつつ、両手を合わせてこする。指先が冷えて感覚が薄れるのがよくわかった。
「ん?」
ソレルはリュンルースの行動に気づき、何気なく彼の手を取った。氷のようと言っても過言ではない冷え方に驚く。
「あー」
ソレルは自分のジャケットのポケットに自分の手ごとリュンルースの手を突っ込む。
「あっ……ありがとう。君の中、暖かいよ。それに離れ離れにならないね」
「そうだな。片手だけで悪いな」
「そんなことないよ」
リュンルースは微笑む。心が伝わり、十二分に温かかった。
列が進み、本殿の前まで来た。
ソレルは参拝方法がうろ覚えだと思ったが、相棒の真似をすればいいと考えた。
手を放し、賽銭を投げ入れる。お辞儀を二度した後、手を二度打つ。
何を願うか――。
(ソルとこうして過ごしていけますように)
(ルースのことはいいや。願わなくても一緒にいられるように俺自身がそうしていくから。つつがなく過ごせますように、だな!)
それぞれ願う。
「さあ、何か食べて帰る?」
「朝食だってまだだ、勿論だ」
二人は露店に向かう、ポケットの中で手をつなぎ。
「ん? 重要なこと忘れてた」
「何? 祈願したんじゃないのかい?」
「それはそれ、心配することじゃねぇ。今年もよろしくな、ルース」
リュンルースはキョトンとした後、破顔する。
「こちらこそ、よろしく」
敵組織の者を倒し終えて、居城に戻ったエルバッハを待っていたのは、配下たちの心配と叱責だった。
「……仕方がないですね」
ため息が漏れる。また忙しい日々が戻ってくる。
ハンターは目が覚める。
楽しかったような、不思議な内容だたような、夢の内容は思い出せない。
年も明けた、どんな一年になるのか――。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 エルバッハ・リオン(ka2434) エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/12/29 17:48:24 |
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質問卓 エルバッハ・リオン(ka2434) エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/12/30 13:13:13 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/12/29 17:44:39 |