ゲスト
(ka0000)
急募!鉄砲騎馬または騎乗術師
マスター:馬車猪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2014/10/05 12:00
- 完成日
- 2014/10/13 13:53
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●剣士の場合
「おのれぇっ」
剣士は激怒した。
雑魔発見の報を受け、生まれ育った街を守るため出陣したまではよかった。
これまでも小柄な雑魔の2、3体ならまとめて倒したことがある凄腕であり、故郷を、なにより妻子を守るため生涯最高の攻撃を繰り出せるはずだった。
なのに敵は地上5メートルを旋回し、剣士に尻を見せてあざ笑っている。
「ぐ、ぬぅっ」
歯軋りしても事態は好転しない。
剣や槍を使う腕はあっても射撃武器はさっぱりな彼は、覚醒状態が切れる前に街の防壁の内側へ逃げ帰るのだった。
●騎士の場合
分厚い蹄が大地をうがつ。
逞しい愛馬にまたがる騎士が全速力で雑魔へ近づき、並みの雑魔なら挽肉にできる大剣を振り下ろそうとした。
が、大剣の射程に入る前に空へ逃げられてしまう。
たかだか地表から4、5メートルとはいえ剣の間合いではない。
歯軋りしながら予備のナイフや手斧を飛ばす。
けれど剣に比べると経験が少なく、小猿型雑魔にかすりもしない。
結局騎士も剣士同様街へ逃げるしかなかった。
●弓使いの場合
当たれば100メートル先のブレストプレートを貫通する弓が、雑魔の中での弱い個体に跳ね返された。
射手が下手なのではない。風や地形が射撃に向いていないのでもない。
羽付き雑魔が飛行能力と防御に特化しているため、いわゆる会心の一撃でないと有効打を与えられないのだ。
「矢は3桁用意した。落ちるまで撃ち続けっ」
射手が舌打ちする。
羽小猿は馬よりも遅く覚醒者が駆けるより速く飛び、弓使いから軽々と逃げおおせるのだった。
●依頼
ハンターオフィス本部に投影されたディスプレイ3つに、3つの失敗場面の録画が再生されていた。
再生終了後3ディスプレイが1つにまとまり雑魔の位置と戦力、報酬や貸し出し可能装備などが表示される。
「見かけは蝙蝠羽の小猿、ね。攻撃の威力と射程はナイフ程度。雑魚だ」
「常に地表5メートルを飛んでる訳でもないのか。長期戦に持ち込めば3メートルまで下がるなら長槍で突けるな」
「速度の項目を見ろよ。馬がないと追い切れないぜ」
「最大の問題は守りの厚さだろ。凄腕の術者かアサルトライフル持ちでないと防御抜けないぞ」
うけるのを諦めたハンターがディスプレイの前から去っていく。
宙に浮かぶ依頼票が慌てたように何度か明滅し、アサルトライフル貸し出しますの1文が追加されるのだった。
「おのれぇっ」
剣士は激怒した。
雑魔発見の報を受け、生まれ育った街を守るため出陣したまではよかった。
これまでも小柄な雑魔の2、3体ならまとめて倒したことがある凄腕であり、故郷を、なにより妻子を守るため生涯最高の攻撃を繰り出せるはずだった。
なのに敵は地上5メートルを旋回し、剣士に尻を見せてあざ笑っている。
「ぐ、ぬぅっ」
歯軋りしても事態は好転しない。
剣や槍を使う腕はあっても射撃武器はさっぱりな彼は、覚醒状態が切れる前に街の防壁の内側へ逃げ帰るのだった。
●騎士の場合
分厚い蹄が大地をうがつ。
逞しい愛馬にまたがる騎士が全速力で雑魔へ近づき、並みの雑魔なら挽肉にできる大剣を振り下ろそうとした。
が、大剣の射程に入る前に空へ逃げられてしまう。
たかだか地表から4、5メートルとはいえ剣の間合いではない。
歯軋りしながら予備のナイフや手斧を飛ばす。
けれど剣に比べると経験が少なく、小猿型雑魔にかすりもしない。
結局騎士も剣士同様街へ逃げるしかなかった。
●弓使いの場合
当たれば100メートル先のブレストプレートを貫通する弓が、雑魔の中での弱い個体に跳ね返された。
射手が下手なのではない。風や地形が射撃に向いていないのでもない。
羽付き雑魔が飛行能力と防御に特化しているため、いわゆる会心の一撃でないと有効打を与えられないのだ。
「矢は3桁用意した。落ちるまで撃ち続けっ」
射手が舌打ちする。
羽小猿は馬よりも遅く覚醒者が駆けるより速く飛び、弓使いから軽々と逃げおおせるのだった。
●依頼
ハンターオフィス本部に投影されたディスプレイ3つに、3つの失敗場面の録画が再生されていた。
再生終了後3ディスプレイが1つにまとまり雑魔の位置と戦力、報酬や貸し出し可能装備などが表示される。
「見かけは蝙蝠羽の小猿、ね。攻撃の威力と射程はナイフ程度。雑魚だ」
「常に地表5メートルを飛んでる訳でもないのか。長期戦に持ち込めば3メートルまで下がるなら長槍で突けるな」
「速度の項目を見ろよ。馬がないと追い切れないぜ」
「最大の問題は守りの厚さだろ。凄腕の術者かアサルトライフル持ちでないと防御抜けないぞ」
うけるのを諦めたハンターがディスプレイの前から去っていく。
宙に浮かぶ依頼票が慌てたように何度か明滅し、アサルトライフル貸し出しますの1文が追加されるのだった。
リプレイ本文
●ハイポート
活発な印象のある可憐な少女。
両手で抱えているのは本物の銃器にしか見えない玩具、ではなく現役のアサルトライフルだ。
かなり重いはずなのに姿勢は崩れず息も乱れてすらいない。
「めんどくせえなぁ」
可憐な見た目通りの声と、美少女っぷりを裏切る台詞がぽろりと漏れた。
ルリ・エンフィールド(ka1680)の侵攻方向には延々荒野に近い平地が広がり、1匹の蝙蝠羽小猿が傲慢を剥き出しにして飛んでいた。
「ボクとしちゃ近距離でドンパチやるほうが好きなんだけど……まあ、苦労するほうがその後の飯がうまくなるからなぁ」
雑魔がどれだけ耳がよくても聞き取れない音量でつぶやき、わざと平衡感覚を低下させる。
そうすると、もともと小柄なこともありルリはとても弱々しく見えた。
雑魔が地表から2メートルの高さで近づいてくる。ルリは接近に気付かないふりで攻撃の機会を伺う。
「すいません気付かれました」
横から見れば誰もいない場所から、不知火陽炎(ka0460) の声が聞こえた。
たいした隠密術だが上から見下ろす雑魔には効きづらかったらしい。
不知火陽炎は雑魔の視線が自分に向いた直後に銃の安全装置を解除、同時にルリに警告を発して銃口を上に向けていた。
「これだけ近づけば十分っ」
ルリの銃口が火を噴いた。
当たれば鉄板を穴だらけにするはずの銃弾が、小猿の頭をかすめて空へ消える。射程内ではあってもルリにとっての有効射程ではないのだ。
不知火陽炎は雑魔との距離は詰めず、冷静に引き金を引き続ける。
当たる。皮に穴が開く。体液が吹き出る。
しかし百発百中とはいかず、雑魔は2人を勝てる相手だと判断した。
ただの少女の首ならもぎ取れる強さで、羽付小猿がルリを頭上から襲う。
「ボクとしちゃ近距離でドンパチやるほうが好きなんだよ」
恐れるどころか嬉々として、銃から凶悪な外見のモーニングスターに持ち替え上段から振り下ろす。
猿はルリの脅威にようやく気付くが遅すぎた。
モーニングスターの棘が腹に刺さり、そのまま下腹に向かって複数の裂傷を刻む。
雑魔が悲鳴を上げてルリから逃げる。不知火陽炎を突破しようとして、いつの間にか退路が塞がれていることに気付いた。
不知火陽炎は銃から魔導機械に切り替えて使い慣れた術を行使する。
ワンドから光剣が伸びて雑魔の腹を胸を焼く。決して弱くはないはずだがあまり効いていない。
「硬いですね」
安堵し軽侮し嗜虐的な笑みを浮かべて爪を伸ばしてくる小猿。それを一歩引いて回避しもう一度銃口を向ける。
銃声。猿の頬に穴が開く。穴から息が漏れ悲鳴がかすれる。
「ルリさん」
返事は雑魔の羽に対する暴虐だ。羽と付け根が砕かれかき回され、モーニングスターで地面にこそぎ落とされる。
「ご自慢の翼も飛べないとあっちゃ意味ねえよな!」
実に男前の笑顔を浮かべてバックステップ。雑魔に反応する時間を与えず不知火陽炎が弾幕を張る。
猿型の雑魔は回転しながら落ちている間に四肢を砕かれ、頭から落ちて自重で己の頭部を潰す。
そして、周囲に撒き散らされた体液と残骸ごと急速に消えていく。
「雑魔1体倒したよ。場所は……」
「はい。他の雑魔に気付かれた可能性が……」
2人は消えゆく雑魔を無視し、遠くで戦う仲間のため情報を送るのだった。
●騎馬鉄砲
小猿が羽を動かす。いつ千切れ飛んでもおかしくないほど高速なのに追って来る2騎を振り切れない。
リュー・グランフェスト(ka2419)が手綱から手を離す。
腰から下の力だけで馬を制御して、上半身でアサルトライフルを構えて狙いをつける。
リアルブルーの常識では当てるのは不可能に近い。もっともそんなのは覚醒者がいない場所での話だ。
引き金を引く。リューの肩を銃底が押す。ライフル弾にしてはやや小さめの弾が雑魔の皮に当たり、抵抗を軽々と突破して肉を貫き骨にめり込んだ。
「ちっ」
リューは姿勢を保ったまま舌打ちする。
馬で移動しながら当てることはできても馬に全速移動させながら当てるのはさすがに無理だ。
しかし雑魔は生き延びるため常に全速移動している訳で、リューが射撃するたびに雑魔に距離を離されてしまう。
「足が速いと聞いてはいたが、本当に面倒だな!」
馬を労りつつ倒れる寸前まで追い込んで加速させ、アルメイダ(ka2440)が雑魔の行く手を遮る。
銃を掲げるように構えて上向きに射撃。ほとんど刀刃の間合いのため外しようが無く、小猿の腹から胸にかけて複数の穴が開いた。
が、小猿は墜落もせず逃げ足も鈍らない。
末端とはいえ2つの世界を窮地に陥れたヴォイドらしいしぶとさを発揮し逃げ続ける。そして逃げるだけでなくアルメイダとその馬を狙って蹴りを繰り出した。
手綱をひかれた馬が目を剥いて横に跳ぶ。決して巧い避け方ではないが、逃走の片手間の攻撃にはこれで十分過ぎる。
アルメイダは雑魔を追う。追いながら眉をかすかに動かす。雑魔の羽ばたきと馬の蹄の音以外に、何か別の音が聞こえた気がしたのだ。
「アルメイダ! 不知火陽炎班が処理完了!」
利き手に魔導短伝話を、もう一方の手でアサルトライフルを保持、さらに手綱を使わず馬を操作という曲芸風高難度馬術を披露しながら伝えてくるリュー。
「魔導短伝話を持ってもらってありがとう。これ以上持つと速く走れなくなる」
アルメイダは馬の腹を優しく撫でた。
乗用馬はここで怖じ気づいたり手を抜くと酷いことになると直感し、目を血走らせて残った力を絞り出す。
馬の主は冷静に狙いをつけて射撃。雑魔は後ろには目がついていないし全力移動中なのでろくな防御もできない。
軽快な発砲音が重なりあう。雑魔の背骨にあたり位置に、2つの穴が開いていた。
「騎乗戦闘は初めてだったりするけど、この調子なら何とかなるか?」
アルメイダの声に馬が震え上がる。
足はつりそうで口からは泡が出そう。後10分この調子が続けば勝っても負けても潰れてあの世行きだ。
エルフは艶のある肌を寄せて馬を宥め速度を落とす。敵は目の前の羽小猿1匹だけではない。馬の命は温存する必要が有った。
「よし」
リューが不敵に微笑む。リューの馬の目が驚愕一色に染まる。
アルメイダとリューの距離が離れたことに気付いた雑魔が、宙返りからの急降下でリューの馬を狙ったのだ。
リューがためらいなく身を乗り出す。背中に爪がめり込み痛みが広がる。
ここでハンターを倒せなければ死ぬだけだと察し、雑魔が命を燃やして連撃を繰り出す。無理な姿勢での防御はいつもほど有効ではなく、リューの体へ急速にダメージが蓄積していった。
「こっちは身体の頑丈がとりえだ!」
活性化したマテリアルがリューの体を癒していく。回復するのはたいした量ではない。だが防御と飛行能力しか取り柄のない雑魔では耐える程度の回復量はある。
アルメイダの銃弾が雑魔の頭頂をかすめる。
ようやく危地に気付いて逃げだそうとしても、時既に遅かった。
2丁のアサルトライフルの的になり、羽付小猿雑魔は文字通り粉砕されたのだった、
●ペットと主
「ベルカ、ヴェテロク、散歩と洒落込もう。私が見える範囲なら好きに歩き回っていいぞ。何かあったらすぐに戻ってくること、いいな?」
サーシャ・V・クリューコファ(ka0723)が言うと、わんと応えて2頭の柴犬が走り出す。
広い土地を思う通りに駆けるのはとても気持ちよさそうだ。
「どーどーいい子だ。大人しいやつだな、お前は」
柴犬たちとは逆に内気な馬を撫でてやる。普段の気怠げな態度からは想像もできないほど穏やかだった。
「雑魔がいなければ気持ちのいい乗馬日和なんだがな」
休憩中のサーシャの代わりに警戒中のヴァイス(ka0364)。警戒は怠っていないが馬上からの眺めは実に素晴らしく、思わず鼻歌が混じってしまうこともあった。
「ペットか」
ヴァイスは自分のペットのことを考える。街から出てすぐ柴犬の背に飛び乗り遊びに出かけたパルム(キノ)と、平然と主から離れた柴犬(ワンコ)。細かく命令せずとも動いてくれるのはとても有り難いとはいえ、戦場までついてきたサーシャの柴犬と比べると、なんともいえない気分になる。
わんわんっ、と妙に元気な声が近づいてくる。
視線を向けると尻尾をふりふり駆けてくる柴犬2頭、そのはるか背後に飛んでいるものが1つ。明らかに距離があり過ぎ、柴犬たちもキノやワンコ同様に自分の命最優先で動いているのが分かった。
「ベルカもヴェテロクも頭がいいんだから」
慈愛あふれる笑みでペットを見つめ、サーシャは魔導短伝話を手に取る。
「雑魔1を視認。これより接近する。……ああ、どうやら1組あたり1体のノルマになりそうだね」
サーシャが顔をあげたときには、ヴァイスが柴犬とサーシャの盾になる位置へ移動し徐々に雑魔に向かっていた。
「行くよミール」
現代の竜騎兵が、王国の野で疾走を開始した。
ヴァイスが一切攻撃しようとしなかったため、羽付き雑魔はハンター2人の戦闘力を計りかねている。
逃げるべきか、攻めるべきか。判断がつかない間にアサルトライフルP5の間合いになる。
ヴァイスの逞しい体を紅蓮のオーラが彩る。
正確に雑魔を指向した銃口から高速で弾が放たれ、並みの矢ならかすり傷すらつかないはずの雑魔に穴を開けた。
即座に第2射を準備。雑魔はヴァイスの脅威に気付いて全力で逃げる。が、加速を終えるよりも背中に着弾する方がずっと速い。
「今回は逃げきれないぜ、歪虚くん」
サーシャが短銃身ライフルを手に冷たく笑う。ヴァイスの第2射は、サーシャの銃撃で動きの鈍った雑魔の脇腹を食い破っていた。
「頑丈だね」
サーシャは再度カービンをぶっ放す。
逃げる雑魔との距離は急速に離れていくけれども、ヴァイスが別方向から射撃を行うため十字砲火の形になりとにかく当たる。
「俺が何とか隙を作ってみる、そこを狙ってくれ」
有利な状態でもヴァイスに油断はない。
「急所狙いかい」
面白い、と目で笑うサーシャ。
ヴァイスと半秒タイミングをずらして引き金を引くと、面白いように当たっていき最後には羽の付け根に命中する。
小猿が宙で不規則な回転を強いられ受け身もとれずに地面に激突する。
衝撃で、猿にはみえないほど形が歪んでいた。
ヴァイスの愛馬ホスが数歩手前で停止し、P5の銃口が猿の眼窩に向けられる。
銃声が遠くまで響く。
雑魔の頭部上半分が消え、それ以外も瞬く間に薄れてこの世から消え去るのだった。
●マラソン後決戦
夕日が大地を赤く染める。
吹きつける風が容赦なく熱を奪い、平穏なこの地を苛酷な場所に変えようとしていた。
「ごちそうさま」
柊 恭也(ka0711)が箸を置く。
舌には旨味の余韻が、腹には熱と活力が息をするたびに増していく。
恭也の馬も、休憩前とは比べものにならない元気さで身震いしていた。
「おそまつさまでした」
ソフィア =リリィホルム(ka2383)は人用と馬用の弁当箱を袋に片付けひらりと鞍にまたがる。
「じゃ、行きますよ!」
体格の良い馬と少女の組み合わせはひどくアンバランスで、見る目のない者にには武力を持たないお嬢さんの遊びにしか見えない。
「暗くなる前に全部処理しねぇとなー」
恭也がソフィアを追いかけながら独りごちる。ハンターの視力で今のところ問題ないとはいえ、本格的に日が沈めばまともに戦えない。
「見えた!」
走ること数分。地面で休んでいる雑魔が視界に入ってくる。
雑魔の羽は力無く垂れ、両手両足が使いすぎで腫れ上がっていた。
まあ、距離1キロメートルで発見されてから延々数時間追い回されればこうもなる。
「ヒャッハー! ハンティングの時間だー!」
自身のマテリアルの動きを滑らかにしてから、メルヴイルM38を振り回しつつ引き金を引く。実際には高速で構え狙いをつけてのだが雑魔程度に見抜ける訳がない。
指に手応え。
初めて射程に入った雑魔に深い穴が複数開く。背中から流れる液が羽と足を伝わり地面に撒き散らされる。
「やりますね。私はどてっ腹に風穴開けてあげますよっ!」
馬を雑魔に寄せていく。
両手でシルバーバレットを構えながら左手の指を動かし、シルバーバレットの最低射程ぎりぎりまで雑魔に迫る。
「死ね」
雑魔にだけ聞こえる大きさの声。夕日で鮮血色に染まった銀髪が揺れ、ソフィアの中心に見える幻焔を貫き光りの弾が降り注ぐ。
羽小猿が両手両足をクロスさせて致命傷を避ける。すると当然前方以外の護りが薄くなり、ソフィアのハンドサインを受け移動していた恭也に背中を晒すことになる。
恭也は慎重に、時間をかけて雑魔の動きを読み、羽の付け根へ銃弾を送り込む。
皮が弾けて肉と体液の混じった何かが噴き出す。羽から力が失われて雑魔の高度が3メートルから2メートルへ、1メートルから地面にまで落ちた。
恭也の容赦のない追撃。羽小猿は地面を蹴り倒れ込むようにして辛うじて回避する。
「んふふー。そっちに避けるのは行き止りってやつですよぅ」
恭也の目があるため普段の顔に切り替えている。もっとも動きは本性のときと変わらず、魔導銃で以て雑魔の右足を破壊した。
「肩慣らしには丁度よかったな」
恭也の声には怒りも侮蔑もなく、だからこそ雑魔は己の死を悟り絶望した。
猿が相打ち狙いで破れかぶれに飛ぶ。馬が移動して雑魔との距離を保ち、ソフィアがシルバーバレットで雑魔の左足を膝から潰す。
恭也が発砲。髑髏が刻まれた銃底が肩を押し、高威力の銃弾が雑魔の口から入って神経を砕いて後頭部から抜ける。
羽付小猿の姿が薄れて地面に散らばる体液が消えても、雑魔が為した破壊の跡は消えなかった。
「みんな、こっちも終わったよ!」
ソフィアは元気に伝話で報告する。
既に陽は落ちている。恭也は念のため持ってきた松明に火をつけ、目を細めて周囲を警戒する。
「うん、こっち!」
伝話を持ったままソフィアが手を振る。遠くから、仲間が持つ灯りが近づいて来ていた。
活発な印象のある可憐な少女。
両手で抱えているのは本物の銃器にしか見えない玩具、ではなく現役のアサルトライフルだ。
かなり重いはずなのに姿勢は崩れず息も乱れてすらいない。
「めんどくせえなぁ」
可憐な見た目通りの声と、美少女っぷりを裏切る台詞がぽろりと漏れた。
ルリ・エンフィールド(ka1680)の侵攻方向には延々荒野に近い平地が広がり、1匹の蝙蝠羽小猿が傲慢を剥き出しにして飛んでいた。
「ボクとしちゃ近距離でドンパチやるほうが好きなんだけど……まあ、苦労するほうがその後の飯がうまくなるからなぁ」
雑魔がどれだけ耳がよくても聞き取れない音量でつぶやき、わざと平衡感覚を低下させる。
そうすると、もともと小柄なこともありルリはとても弱々しく見えた。
雑魔が地表から2メートルの高さで近づいてくる。ルリは接近に気付かないふりで攻撃の機会を伺う。
「すいません気付かれました」
横から見れば誰もいない場所から、不知火陽炎(ka0460) の声が聞こえた。
たいした隠密術だが上から見下ろす雑魔には効きづらかったらしい。
不知火陽炎は雑魔の視線が自分に向いた直後に銃の安全装置を解除、同時にルリに警告を発して銃口を上に向けていた。
「これだけ近づけば十分っ」
ルリの銃口が火を噴いた。
当たれば鉄板を穴だらけにするはずの銃弾が、小猿の頭をかすめて空へ消える。射程内ではあってもルリにとっての有効射程ではないのだ。
不知火陽炎は雑魔との距離は詰めず、冷静に引き金を引き続ける。
当たる。皮に穴が開く。体液が吹き出る。
しかし百発百中とはいかず、雑魔は2人を勝てる相手だと判断した。
ただの少女の首ならもぎ取れる強さで、羽付小猿がルリを頭上から襲う。
「ボクとしちゃ近距離でドンパチやるほうが好きなんだよ」
恐れるどころか嬉々として、銃から凶悪な外見のモーニングスターに持ち替え上段から振り下ろす。
猿はルリの脅威にようやく気付くが遅すぎた。
モーニングスターの棘が腹に刺さり、そのまま下腹に向かって複数の裂傷を刻む。
雑魔が悲鳴を上げてルリから逃げる。不知火陽炎を突破しようとして、いつの間にか退路が塞がれていることに気付いた。
不知火陽炎は銃から魔導機械に切り替えて使い慣れた術を行使する。
ワンドから光剣が伸びて雑魔の腹を胸を焼く。決して弱くはないはずだがあまり効いていない。
「硬いですね」
安堵し軽侮し嗜虐的な笑みを浮かべて爪を伸ばしてくる小猿。それを一歩引いて回避しもう一度銃口を向ける。
銃声。猿の頬に穴が開く。穴から息が漏れ悲鳴がかすれる。
「ルリさん」
返事は雑魔の羽に対する暴虐だ。羽と付け根が砕かれかき回され、モーニングスターで地面にこそぎ落とされる。
「ご自慢の翼も飛べないとあっちゃ意味ねえよな!」
実に男前の笑顔を浮かべてバックステップ。雑魔に反応する時間を与えず不知火陽炎が弾幕を張る。
猿型の雑魔は回転しながら落ちている間に四肢を砕かれ、頭から落ちて自重で己の頭部を潰す。
そして、周囲に撒き散らされた体液と残骸ごと急速に消えていく。
「雑魔1体倒したよ。場所は……」
「はい。他の雑魔に気付かれた可能性が……」
2人は消えゆく雑魔を無視し、遠くで戦う仲間のため情報を送るのだった。
●騎馬鉄砲
小猿が羽を動かす。いつ千切れ飛んでもおかしくないほど高速なのに追って来る2騎を振り切れない。
リュー・グランフェスト(ka2419)が手綱から手を離す。
腰から下の力だけで馬を制御して、上半身でアサルトライフルを構えて狙いをつける。
リアルブルーの常識では当てるのは不可能に近い。もっともそんなのは覚醒者がいない場所での話だ。
引き金を引く。リューの肩を銃底が押す。ライフル弾にしてはやや小さめの弾が雑魔の皮に当たり、抵抗を軽々と突破して肉を貫き骨にめり込んだ。
「ちっ」
リューは姿勢を保ったまま舌打ちする。
馬で移動しながら当てることはできても馬に全速移動させながら当てるのはさすがに無理だ。
しかし雑魔は生き延びるため常に全速移動している訳で、リューが射撃するたびに雑魔に距離を離されてしまう。
「足が速いと聞いてはいたが、本当に面倒だな!」
馬を労りつつ倒れる寸前まで追い込んで加速させ、アルメイダ(ka2440)が雑魔の行く手を遮る。
銃を掲げるように構えて上向きに射撃。ほとんど刀刃の間合いのため外しようが無く、小猿の腹から胸にかけて複数の穴が開いた。
が、小猿は墜落もせず逃げ足も鈍らない。
末端とはいえ2つの世界を窮地に陥れたヴォイドらしいしぶとさを発揮し逃げ続ける。そして逃げるだけでなくアルメイダとその馬を狙って蹴りを繰り出した。
手綱をひかれた馬が目を剥いて横に跳ぶ。決して巧い避け方ではないが、逃走の片手間の攻撃にはこれで十分過ぎる。
アルメイダは雑魔を追う。追いながら眉をかすかに動かす。雑魔の羽ばたきと馬の蹄の音以外に、何か別の音が聞こえた気がしたのだ。
「アルメイダ! 不知火陽炎班が処理完了!」
利き手に魔導短伝話を、もう一方の手でアサルトライフルを保持、さらに手綱を使わず馬を操作という曲芸風高難度馬術を披露しながら伝えてくるリュー。
「魔導短伝話を持ってもらってありがとう。これ以上持つと速く走れなくなる」
アルメイダは馬の腹を優しく撫でた。
乗用馬はここで怖じ気づいたり手を抜くと酷いことになると直感し、目を血走らせて残った力を絞り出す。
馬の主は冷静に狙いをつけて射撃。雑魔は後ろには目がついていないし全力移動中なのでろくな防御もできない。
軽快な発砲音が重なりあう。雑魔の背骨にあたり位置に、2つの穴が開いていた。
「騎乗戦闘は初めてだったりするけど、この調子なら何とかなるか?」
アルメイダの声に馬が震え上がる。
足はつりそうで口からは泡が出そう。後10分この調子が続けば勝っても負けても潰れてあの世行きだ。
エルフは艶のある肌を寄せて馬を宥め速度を落とす。敵は目の前の羽小猿1匹だけではない。馬の命は温存する必要が有った。
「よし」
リューが不敵に微笑む。リューの馬の目が驚愕一色に染まる。
アルメイダとリューの距離が離れたことに気付いた雑魔が、宙返りからの急降下でリューの馬を狙ったのだ。
リューがためらいなく身を乗り出す。背中に爪がめり込み痛みが広がる。
ここでハンターを倒せなければ死ぬだけだと察し、雑魔が命を燃やして連撃を繰り出す。無理な姿勢での防御はいつもほど有効ではなく、リューの体へ急速にダメージが蓄積していった。
「こっちは身体の頑丈がとりえだ!」
活性化したマテリアルがリューの体を癒していく。回復するのはたいした量ではない。だが防御と飛行能力しか取り柄のない雑魔では耐える程度の回復量はある。
アルメイダの銃弾が雑魔の頭頂をかすめる。
ようやく危地に気付いて逃げだそうとしても、時既に遅かった。
2丁のアサルトライフルの的になり、羽付小猿雑魔は文字通り粉砕されたのだった、
●ペットと主
「ベルカ、ヴェテロク、散歩と洒落込もう。私が見える範囲なら好きに歩き回っていいぞ。何かあったらすぐに戻ってくること、いいな?」
サーシャ・V・クリューコファ(ka0723)が言うと、わんと応えて2頭の柴犬が走り出す。
広い土地を思う通りに駆けるのはとても気持ちよさそうだ。
「どーどーいい子だ。大人しいやつだな、お前は」
柴犬たちとは逆に内気な馬を撫でてやる。普段の気怠げな態度からは想像もできないほど穏やかだった。
「雑魔がいなければ気持ちのいい乗馬日和なんだがな」
休憩中のサーシャの代わりに警戒中のヴァイス(ka0364)。警戒は怠っていないが馬上からの眺めは実に素晴らしく、思わず鼻歌が混じってしまうこともあった。
「ペットか」
ヴァイスは自分のペットのことを考える。街から出てすぐ柴犬の背に飛び乗り遊びに出かけたパルム(キノ)と、平然と主から離れた柴犬(ワンコ)。細かく命令せずとも動いてくれるのはとても有り難いとはいえ、戦場までついてきたサーシャの柴犬と比べると、なんともいえない気分になる。
わんわんっ、と妙に元気な声が近づいてくる。
視線を向けると尻尾をふりふり駆けてくる柴犬2頭、そのはるか背後に飛んでいるものが1つ。明らかに距離があり過ぎ、柴犬たちもキノやワンコ同様に自分の命最優先で動いているのが分かった。
「ベルカもヴェテロクも頭がいいんだから」
慈愛あふれる笑みでペットを見つめ、サーシャは魔導短伝話を手に取る。
「雑魔1を視認。これより接近する。……ああ、どうやら1組あたり1体のノルマになりそうだね」
サーシャが顔をあげたときには、ヴァイスが柴犬とサーシャの盾になる位置へ移動し徐々に雑魔に向かっていた。
「行くよミール」
現代の竜騎兵が、王国の野で疾走を開始した。
ヴァイスが一切攻撃しようとしなかったため、羽付き雑魔はハンター2人の戦闘力を計りかねている。
逃げるべきか、攻めるべきか。判断がつかない間にアサルトライフルP5の間合いになる。
ヴァイスの逞しい体を紅蓮のオーラが彩る。
正確に雑魔を指向した銃口から高速で弾が放たれ、並みの矢ならかすり傷すらつかないはずの雑魔に穴を開けた。
即座に第2射を準備。雑魔はヴァイスの脅威に気付いて全力で逃げる。が、加速を終えるよりも背中に着弾する方がずっと速い。
「今回は逃げきれないぜ、歪虚くん」
サーシャが短銃身ライフルを手に冷たく笑う。ヴァイスの第2射は、サーシャの銃撃で動きの鈍った雑魔の脇腹を食い破っていた。
「頑丈だね」
サーシャは再度カービンをぶっ放す。
逃げる雑魔との距離は急速に離れていくけれども、ヴァイスが別方向から射撃を行うため十字砲火の形になりとにかく当たる。
「俺が何とか隙を作ってみる、そこを狙ってくれ」
有利な状態でもヴァイスに油断はない。
「急所狙いかい」
面白い、と目で笑うサーシャ。
ヴァイスと半秒タイミングをずらして引き金を引くと、面白いように当たっていき最後には羽の付け根に命中する。
小猿が宙で不規則な回転を強いられ受け身もとれずに地面に激突する。
衝撃で、猿にはみえないほど形が歪んでいた。
ヴァイスの愛馬ホスが数歩手前で停止し、P5の銃口が猿の眼窩に向けられる。
銃声が遠くまで響く。
雑魔の頭部上半分が消え、それ以外も瞬く間に薄れてこの世から消え去るのだった。
●マラソン後決戦
夕日が大地を赤く染める。
吹きつける風が容赦なく熱を奪い、平穏なこの地を苛酷な場所に変えようとしていた。
「ごちそうさま」
柊 恭也(ka0711)が箸を置く。
舌には旨味の余韻が、腹には熱と活力が息をするたびに増していく。
恭也の馬も、休憩前とは比べものにならない元気さで身震いしていた。
「おそまつさまでした」
ソフィア =リリィホルム(ka2383)は人用と馬用の弁当箱を袋に片付けひらりと鞍にまたがる。
「じゃ、行きますよ!」
体格の良い馬と少女の組み合わせはひどくアンバランスで、見る目のない者にには武力を持たないお嬢さんの遊びにしか見えない。
「暗くなる前に全部処理しねぇとなー」
恭也がソフィアを追いかけながら独りごちる。ハンターの視力で今のところ問題ないとはいえ、本格的に日が沈めばまともに戦えない。
「見えた!」
走ること数分。地面で休んでいる雑魔が視界に入ってくる。
雑魔の羽は力無く垂れ、両手両足が使いすぎで腫れ上がっていた。
まあ、距離1キロメートルで発見されてから延々数時間追い回されればこうもなる。
「ヒャッハー! ハンティングの時間だー!」
自身のマテリアルの動きを滑らかにしてから、メルヴイルM38を振り回しつつ引き金を引く。実際には高速で構え狙いをつけてのだが雑魔程度に見抜ける訳がない。
指に手応え。
初めて射程に入った雑魔に深い穴が複数開く。背中から流れる液が羽と足を伝わり地面に撒き散らされる。
「やりますね。私はどてっ腹に風穴開けてあげますよっ!」
馬を雑魔に寄せていく。
両手でシルバーバレットを構えながら左手の指を動かし、シルバーバレットの最低射程ぎりぎりまで雑魔に迫る。
「死ね」
雑魔にだけ聞こえる大きさの声。夕日で鮮血色に染まった銀髪が揺れ、ソフィアの中心に見える幻焔を貫き光りの弾が降り注ぐ。
羽小猿が両手両足をクロスさせて致命傷を避ける。すると当然前方以外の護りが薄くなり、ソフィアのハンドサインを受け移動していた恭也に背中を晒すことになる。
恭也は慎重に、時間をかけて雑魔の動きを読み、羽の付け根へ銃弾を送り込む。
皮が弾けて肉と体液の混じった何かが噴き出す。羽から力が失われて雑魔の高度が3メートルから2メートルへ、1メートルから地面にまで落ちた。
恭也の容赦のない追撃。羽小猿は地面を蹴り倒れ込むようにして辛うじて回避する。
「んふふー。そっちに避けるのは行き止りってやつですよぅ」
恭也の目があるため普段の顔に切り替えている。もっとも動きは本性のときと変わらず、魔導銃で以て雑魔の右足を破壊した。
「肩慣らしには丁度よかったな」
恭也の声には怒りも侮蔑もなく、だからこそ雑魔は己の死を悟り絶望した。
猿が相打ち狙いで破れかぶれに飛ぶ。馬が移動して雑魔との距離を保ち、ソフィアがシルバーバレットで雑魔の左足を膝から潰す。
恭也が発砲。髑髏が刻まれた銃底が肩を押し、高威力の銃弾が雑魔の口から入って神経を砕いて後頭部から抜ける。
羽付小猿の姿が薄れて地面に散らばる体液が消えても、雑魔が為した破壊の跡は消えなかった。
「みんな、こっちも終わったよ!」
ソフィアは元気に伝話で報告する。
既に陽は落ちている。恭也は念のため持ってきた松明に火をつけ、目を細めて周囲を警戒する。
「うん、こっち!」
伝話を持ったままソフィアが手を振る。遠くから、仲間が持つ灯りが近づいて来ていた。
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撃ち落すよっ? ソフィア =リリィホルム(ka2383) ドワーフ|14才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/10/05 10:46:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/02 00:38:01 |