ゲスト
(ka0000)
【初夢】新春ユニット座談会
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/01/02 19:00
- 完成日
- 2017/01/07 01:33
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「今日は、お集まりいただいて、ありがとうございます」
御茶会のテーブルを前にして、YAシャオuが挨拶をしました。
テーブルに着いているのは、CAMや魔導アーマーや幻獣たちです。器用に椅子に座って、紅茶などを飲みつつケーキをつついています。
「この席は無礼講ですので、どうぞ御存分に自分たちの乗り手や扱い手に対する、愚痴や不満をぶちまけてくださいませ」
黒いレース模様の日傘をクルクルと回しながら、YAシャオuが、ユニットたちをちょっと挑発します。
「えー、でも、普段結構よくしてもらってるしぃ」
「うん、手入れはいいよね」
YAシャオuの思惑に反して、パイロットへのユニットたちの印象は案外にいいようです。
「でも、戦闘のときは、荒っぽい使い方されているのではなくて?」
なんとか、使い手たちへの不満の方へと話を持っていこうと、YAシャオuが聞きます。
「そーでもないよ」
「うんうん、意外と、思いもしない使い方してくれるし……」
うーん、意外と、みんないい子のようです。
「それで、それで、うちのマスターはですね……」
「いやいや、うちの方こそ……」
結局、色々と世間話に花が咲いていくのでした……。
御茶会のテーブルを前にして、YAシャオuが挨拶をしました。
テーブルに着いているのは、CAMや魔導アーマーや幻獣たちです。器用に椅子に座って、紅茶などを飲みつつケーキをつついています。
「この席は無礼講ですので、どうぞ御存分に自分たちの乗り手や扱い手に対する、愚痴や不満をぶちまけてくださいませ」
黒いレース模様の日傘をクルクルと回しながら、YAシャオuが、ユニットたちをちょっと挑発します。
「えー、でも、普段結構よくしてもらってるしぃ」
「うん、手入れはいいよね」
YAシャオuの思惑に反して、パイロットへのユニットたちの印象は案外にいいようです。
「でも、戦闘のときは、荒っぽい使い方されているのではなくて?」
なんとか、使い手たちへの不満の方へと話を持っていこうと、YAシャオuが聞きます。
「そーでもないよ」
「うんうん、意外と、思いもしない使い方してくれるし……」
うーん、意外と、みんないい子のようです。
「それで、それで、うちのマスターはですね……」
「いやいや、うちの方こそ……」
結局、色々と世間話に花が咲いていくのでした……。
リプレイ本文
●座談会
「さあ、次の子たちを呼ぶとしましょうか。それにしても、ハンターたちとユニットが仲違いでもしてくれれば、もっと楽に滅びが与えられるんだけど。予想外に、みんな仲がいいのよねえ……」
先ほど呼び寄せたユニットたちを、夢の世界から現実の世界へと追い返すと、ゴチックメイド姿のYAシャオuは、次のユニットたちを夢の世界へ呼び寄せる準備を始めました。
あのCAMとかいうロボットと、それに乗っているパイロットの相性が悪くなれば、きっと戦いでもうまく動けないでしょう。幻獣とやらと、主との仲が悪ければ、きっと戦いでも言うことを聞かないでしょう。そうなるための理由をうまく夢で聞き出せれば、ハンターという者たちともっと面白く遊べるはずです。
YAシャオuは、真っ白なテーブルクロスをマントのように翻して広げると、巨大な長テーブルの上にふわりと舞い下ろしました。白いレースの縁飾りがテーブルから垂れ下がり、わずかに床を覆う夢の霧に触れます。
テーブルの横には、大きな鋼鉄製の椅子が二つ、籐のような植物で編まれたカゴにクッションが入れられた椅子が四つならんでいました。
テーブルの上には、大きなティーセットが二つにボウルが四つ。それらの前に、YAシャオuが、ユニットの管理者の名前とユニットの名前が書かれた三角形の名札を並べていきました。
『キヅカ・リク(ka0038)’s インスレーター』
『フィルメリア・クリスティア(ka3380)’s GLACIALIS(グラキアーリス)』
『ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)’s オリーヴェ』
『エルバッハ・リオン(ka2434)’s ガルム』
『マルカ・アニチキン(ka2542)’s コシチェイ』
『アルマ・A・エインズワース(ka4901)’s コメット』
すると、自らの名を呼ばれてか、それぞれのユニットが夢の中へとやってきます。まるで、転送でもされてきたかのように、シュンっと、夢のお客様たちが忽然と現れました。
「同型機魔導型デュミナスと、神獣イェジドタイプ四体を確認」
椅子に座ったインスレーターが周囲を見回して言いました。魔導型デュミナスとしては紫色のスリムな機体のはずですが、この夢空間ではちょっとずんぐりした体型に変化してしまっているようにも思えます。がっしりとした椅子にちょこんと座った姿は、普段からは想像もできないものです。可愛いかも……。
「今日は、わんこの集会ですか?」
魔導レーダー「アイステーシス」で周囲を確認したグラキアーリスが、イェジドがたくさん群れているのを確認して聞きました。魔導型デュミナスでありながら、ポニーテールの女性を思わせるシルエットのグラキアーリスが言うと、なんだか女子高生が散歩している犬を見て目を輝かせているかのようです。
狼型幻獣イェジドの四匹は、クッションの上にお座りしたり寝そべったりしていて、二機の魔導型デュミナスの言葉に、なんなんだこれはという顔で頭を上げました。
「なんだ、人形が二つに、あとは若造たちかのう。変わった取り合わせだ」
いったい、なんの余興だとばかりに、コシチェイが息を吸い込むような笑い声を立てました。年長のイェジドとして、狡猾さを秘めた目でわざとらしく周囲を見回します。
「まあまあ」
イェジドのガルムが、場をなだめるように言いました。漆黒の体毛の中で唯一燃えるように赤い胸毛がふわふわとゆれ、赤い瞳がすうっと細められます。
「ようこそいらっしゃいました。ここは、皆様の御茶会の席でございます。今日皆様に集まっていただいたのは、日頃の労をねぎらうと共に、横暴なハンターたちの酷い扱いを遠慮なく暴露してもらうためですわ。無礼講ですので、御存分にぶちまけちゃってくださーい」
大きく手を広げて、YAシャオuがユニットたちを煽りました。
「どうぞ御存分に、使い手であるハンターたちの弱点などをお話しくださいませね」
そう言って一礼すると、YAシャオuがイェジドたちのボウルに温かいミルクを注いで回りました。CAMたちのカップには、液状のマテリアルらしき物を注ぎます。
いったい、CAMがどうやって飲み物や食べ物を食べるのかと思いますが、普通にカップを顔に近づけていくと、そのままどこかへ吸収されていきます。まあ、ここは夢の中ですから、深くは考えないでおきましょう。
「ケーキがない……」
テーブルの上を見回して、それまで黙っていたオリーヴェがボソリとつぶやきました。青白い不思議な毛並みを持つ、物静かなイェジドです。どちらかというと、この騒がしい御茶会にも、我関せずと言ったところでしょうか。でも、ケーキは別です。
「はいはい、ケーキですね」
YAシャオuが、すぐにケーキの載ったワゴンをどこからか持ってきます。
「わあ、ケーキ、素敵素敵♪」
もふもふした塊……いえ、イェジドのコメットが、長い尾を振って喜びました。白い長毛に所々鮮やかな青地の混じるコメットは、クッションの上に座っていてもまるで動く毛玉のようです。
「はい、どうぞ」
そう言って、YAシャオuが、コメットを始めとするイェジドたちの前にケーキの皿を置きました。どうせ、そのまま食べるだろうと言うことで、フォークはついていません。
CAMたちの方には、マテリアルの結晶饅頭をおきます。
「それで、今日は何なの? ケーキ食べる日?」
口の周りの長い毛に、べったりと生クリームをつけて、コメットが言いました。
「もう食ったのか!? やれやれ、わしの許しもなく……。これだから、最近の若い者は……」
コシチェイが、空になったコメットのケーキ皿を見て呆れます。
「嬢ちゃんや、お代わりじゃ」
コシチェイが、空になったケーキ皿を鼻の頭でYAシャオuの方へ押して要求します。いつの間に、全部食った!?
「あ、はいはい。少々お待ちを……」
片眉をピクンとさせてから、YAシャオuが追加のケーキを取りにいきました。
「そういえば、今はリアルブルーの正月というものだったか? それでふと思い出したのだが。マスターが何をとち狂ったのか、私の頭に餅なる物を載せてな……。自分で載せておきながら、私の姿を指さしながら鏡餅だと笑い転げていたよ」
ボウルのミルクで喉を湿らせてから、オリーヴェが、淡々と自分のマスターのことを話し始めました。
「ワタシは、鼻の上にミカンを載せられるよー」
ちょっと自慢そうにコメットが言いました。鏡餅であれば、ミカンも載せなければ不完全です。
それにしても、なんで人間は、イェジドの頭や背中や足の上に食べ物を載せたがるのでしょうか。
「それで、どうなったの?」
コメットがオリーヴェに聞きました。
「事の顛末か? 友人たちが諫めても止まる気配がなかったのでな。……頭からマスターを喰った。ああ、誤解しないでくれ、喰ったといっても実際に喰ったわけではない。頭から銜えて、甘噛みを繰り返しただけだ。そうしたら、じたばたと暴れながら、ひたすら謝罪していたので解放してあげたがな……」
「まあ、素敵酷い♪」
オリーヴェの話に、YAシャオuが、嬉しそうに、うっとりとした目をします。歪虚としては、こういう話を聞きたいのです。
「ケーキ……」
「はいはい」
コシチェイに要求されて、YAシャオuが、持ってきたケーキのお代わりをコシチェイの皿に載せます。いっそ、コシチェイの頭に載せてやろうかとも思いましたが、寸前で思いとどまりました。
「確かに私のマスターは度し難い馬鹿だ。とはいえ、そんな馬鹿だからこそ、マスターの友人や仲間たちにとっては放っておけない存在なのかもしれないな。かくいう私も、放っておけないと思う馬鹿の一人ではあるが。だからこそ、無茶無謀極まりない戦いにも共に身を投じるし、命を預けることもできる」
オリーヴェが、そう言い返します。
「私のパイロットは、生物個体としては年少に分類される者です」
インスレーターが言いました。
「私は、ロッソに配備予定でしたが、転移により凍結され、後にハンターに供与されました。その後、パイロットの希望により、今のバージョンにカスタマイズされました。今の識別名称も現在のパイロットによってつけられたものです。『絶縁体』を意味し、味方の危機や絶望を断ち切るものとして意味づけられています」
インスレーターが、淡々と語りました。
「んー、そうだね。僕らの主さんは、僕らCAMの立場からしてみれば『育ての親』とも言える人かなあ? ほら、乗り手の人たちはボクたちに乗ってデータを集めてくれるでしょ。そこから、良くない所の改善点や、向上出来る部分とかを『生みの親』である開発者さんたちに申告してくれるわけだから」
オリーヴェが同意します。
「ワタシは、現在搭載されているオファインシステムにより、パイロットとのダイレクトリンクが可能となっています。それによって、パイロットの感じる恐怖も共有できます」
インスレーターが説明しました。
「まあ、怖くなくて?」
ワクワクするようにYAシャオuが訊ねます。
「恐怖も、一つのデータに過ぎません。貴重な判断材料です。ただ、それによるパイロットの選択が、生存確率を評価外とするものであるのが、分析不能です。これは、『生存』の意味解釈が、生物学的見地とパイロット固有の認識との間で、差異を生じているものと推測されます。これは『矛盾』であり、現在その解析を優先事項として処理ランクを設定しています」
インスレーターが答えます。なんだか、分かったような分からないような、YAシャオuとしては、困っているようです。
「じゃあ、そちらのわんこじいさんさんは?」
YAシャオuが、今度はコシチェイに話を振りました。
「ワシの場合、マルカは表向きや書類上は主とあるが、ワシは認めてはおらぬぞ」
きっぱりと、コシチェイが言い切りました。
「なにせ、マルカの普段のおどおどした姿は目にあまる」
やれやれと、コシチェイが軽く溜め息をつきます。
「まあ、だが、しかし、覚醒時の彼女には一目おいておる。打って変わって、しっかりと自信に満ちておるからな」
さすがに、自分のパートナーだけが情けないのは恥ずかしいのか、コシチェイがフォローします。
「さらに、最近周りに感化されてるそうで、マルカのメンタルが変な方向に鍛えられた節があってなあ。S魔術具がクズ鉄になった時、お気に入りのランタンじゃなくて良かったーって言っておった。ワシ、ヤツはバカ強いと思ったぞ」
うんうんと勝手にうなずきながら、コシチェイが言いました。けれども、彼がマルカ・アニキチンを褒めるのもここまでです。
「でも、幻獣のワシの方がもっとスゴイ。マルカは、ワシから力を貸してもらっているだけだ。人間、努力しても幻獣にはなれませーんっ!! ワシは生まれつきだから! しょうがない! だってまぼろしのどーぶつじゃもん! ヒャヒャ!」
思いっきり年寄り臭いギャグをかまします。
「それは、笑いどころが分析しづらいです……」
インスレーターが、表情を変えずに言いました。まあ、CAMですから、相好を崩して大笑いしろと言われても無理な話ではありますが。
「あはははは……」
オリーヴェが、空気を読みすぎて無理矢理に笑います。
「ボクの主さんは僕の扱いが荒っぽくなったりはあるけど、作戦後とか、普段の調整とかで、とても大事にしてくれるから、その分、僕も応えないとってなるわけで……。使ってもらってなんぼだしね?」
しみじみと、オリーヴェが言いました。
「でも、不満があるかと言えばあるよ。主さんじゃなくて、装備の現状にさ。武装はそれなりにあるけど、どちらかと言えば単体の敵に対しての物がほとんどなんだよね。対多数になると、こちらも数がいないと対応できないし……。それと、装甲や補助パーツが少な過ぎて、主さん好みの改修が難しいって点とか……」
オリーヴェが言いました。
「うちのエル様は、私が言うのも何ですが、ハンターとしての実力と実績がある方と思います。また魅力的な容姿を持たれていると思いますね。それに責任感もあるので、私の世話などもきちんと行ってくれています」
ガルムが、ちょっと自慢そうに言いました。
「しかし、あの露出や色仕掛けを好むところは直した方がいいと思います。齢が若いということと、本格的に問題になるようなことはまだしていないため、どうにか今のところは黙認されているようですが……。それが今後も続くとは思いませんし……」
ちょっと不安そうにガルムが言いました。実際、エルバッハ・リオンは、その露出度の高い扇情的な出で立ちから、人の多い商店街などで何度か補導されそうになったことがあります。たまに帰りが遅いと、ハラハラと心配してしまうガルムです。だって、御飯をくれる人がいないと困るじゃないですか。
「もちろんエル様は聡明なお方ですから、いずれは止められると信じています。ですが、いい歳になっても『私は永遠の12歳です』とか言いだすんじゃないかという不安がどうしてもぬぐえません」
もう、心配性なガルムです。これが、杞憂であればいいのですが……。
「色々と言ってしまいましたが、それでも、私はエル様と共に戦えて誇りに思います」
またもやちょっとだけ自慢そうに真っ赤な胸元をふくらませて、ガルムが言いました。
「僕らは主さんの好みに合わせて外観を変えられたりするからね。言ってみれば、衣装替えみたいなものかなあ。だいたいは、主さんの容姿に合わせる形かなあ。もちろん、その改装が嫌ってわけではないんだけどもね。結果として、主さんたちが僕らを扱いやすい様にしてくれる方が良いわけだろうし」
オリーヴェの言うように、CAMとパイロットのイメージカラーは統一されることが多いようです。CAMの着ぐるみなどという物もあるようですし、パイロットスーツが普及すれば、CAMと同じデザインのパイロットスーツなんていう物も、もっとたくさん出回るのでしょう。
「御主人のお話……? うちの御主人は……御主人と言うよりはー……息子?」
そう言うと、コメットがちょっと考えるように小首をかしげました。もこもこの毛が、ふわふわとゆれます。
「いつも、ワタシの毛皮をお布団の代わりにしてお昼寝するのよー。ふかふかだからかしらー?」
その通りかもしれません。
「それに、あの子強くなったのよー。まあ、背中の上から機導術撃たれるのはちょっと怖いけどねー……ワタシの頭の後ろに当たりそうで……」
コメットが、心配そうな顔で言いました。
「そんな感じでうちの子は、割といつも行動が突拍子もないんだけどー。慣れたとはいえ、さすがにいきなり相棒ちゃんと結婚決めたときはワタシもびっくりしたわぁ」
コメットがちょっと自慢そうに言いました。
「息子が結婚とな。つまり、子供ができれば貴方はおばあちゃんというわけだな。ヒッヒッヒッ」
コシチェイが笑いました。おじいちゃん、ちょっと意地悪です。
「肯定します。世代としては、間違っていません」
インスレーターが同意しました。
「アルマのことは、大好きよー。ワタシの可愛い子だものー。ブラッシング上手だしー」
おばあちゃん指定は華麗にスルーして、コメットが言いました。しゃべる度に、長い毛がゆれます。なるほど、これはブラッシングしがいがありそうです。
「だから、あの子以外の言うこと、聞くつもりないわー。いくらワタシでもイェジドとして、それ以前にわんことしてさすがにねえ」
コメットは、いつもアルマ・A・エインズワースにわんこ扱いされているのでしょうか。息子扱いしているわりには、すっかりアルマ・A・エインズワースに懐いているようです。
「わふわふ。戦場じゃなくても、もし会ったらうちの子をよろしくお願いしますー」
そう言って、コメットがぺこりとお辞儀します。
それはこちらも同じと、一同がうなずき合います。
なんだかんだ言っても、ユニットたちと、ハンターたちの繋がりは深いようです。
「これでは、まだまだつけいる隙はすくなそうねえ……」
残念だと言わんばかりに、YAシャオuが溜め息をつきました。
テーブルの上の飲み物とケーキもほとんどなくなったようです。そろそろ潮時でしょう。
「それでは、皆様、今日は楽しんでいただけましたでしょうか。このあたりでお開きにしたいと思います」
深々とお辞儀をして、YAシャオuが言いました。
「ええー!? お土産のケーキを……」
誰かが叫びました。
「またねー♪」
強制送還です。スーッと、ユニットたちの姿は消えて、現実の主の許へと戻っていきました。
「さあ、次の子たちを呼ぶとしましょうか。それにしても、ハンターたちとユニットが仲違いでもしてくれれば、もっと楽に滅びが与えられるんだけど。予想外に、みんな仲がいいのよねえ……」
先ほど呼び寄せたユニットたちを、夢の世界から現実の世界へと追い返すと、ゴチックメイド姿のYAシャオuは、次のユニットたちを夢の世界へ呼び寄せる準備を始めました。
あのCAMとかいうロボットと、それに乗っているパイロットの相性が悪くなれば、きっと戦いでもうまく動けないでしょう。幻獣とやらと、主との仲が悪ければ、きっと戦いでも言うことを聞かないでしょう。そうなるための理由をうまく夢で聞き出せれば、ハンターという者たちともっと面白く遊べるはずです。
YAシャオuは、真っ白なテーブルクロスをマントのように翻して広げると、巨大な長テーブルの上にふわりと舞い下ろしました。白いレースの縁飾りがテーブルから垂れ下がり、わずかに床を覆う夢の霧に触れます。
テーブルの横には、大きな鋼鉄製の椅子が二つ、籐のような植物で編まれたカゴにクッションが入れられた椅子が四つならんでいました。
テーブルの上には、大きなティーセットが二つにボウルが四つ。それらの前に、YAシャオuが、ユニットの管理者の名前とユニットの名前が書かれた三角形の名札を並べていきました。
『キヅカ・リク(ka0038)’s インスレーター』
『フィルメリア・クリスティア(ka3380)’s GLACIALIS(グラキアーリス)』
『ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)’s オリーヴェ』
『エルバッハ・リオン(ka2434)’s ガルム』
『マルカ・アニチキン(ka2542)’s コシチェイ』
『アルマ・A・エインズワース(ka4901)’s コメット』
すると、自らの名を呼ばれてか、それぞれのユニットが夢の中へとやってきます。まるで、転送でもされてきたかのように、シュンっと、夢のお客様たちが忽然と現れました。
「同型機魔導型デュミナスと、神獣イェジドタイプ四体を確認」
椅子に座ったインスレーターが周囲を見回して言いました。魔導型デュミナスとしては紫色のスリムな機体のはずですが、この夢空間ではちょっとずんぐりした体型に変化してしまっているようにも思えます。がっしりとした椅子にちょこんと座った姿は、普段からは想像もできないものです。可愛いかも……。
「今日は、わんこの集会ですか?」
魔導レーダー「アイステーシス」で周囲を確認したグラキアーリスが、イェジドがたくさん群れているのを確認して聞きました。魔導型デュミナスでありながら、ポニーテールの女性を思わせるシルエットのグラキアーリスが言うと、なんだか女子高生が散歩している犬を見て目を輝かせているかのようです。
狼型幻獣イェジドの四匹は、クッションの上にお座りしたり寝そべったりしていて、二機の魔導型デュミナスの言葉に、なんなんだこれはという顔で頭を上げました。
「なんだ、人形が二つに、あとは若造たちかのう。変わった取り合わせだ」
いったい、なんの余興だとばかりに、コシチェイが息を吸い込むような笑い声を立てました。年長のイェジドとして、狡猾さを秘めた目でわざとらしく周囲を見回します。
「まあまあ」
イェジドのガルムが、場をなだめるように言いました。漆黒の体毛の中で唯一燃えるように赤い胸毛がふわふわとゆれ、赤い瞳がすうっと細められます。
「ようこそいらっしゃいました。ここは、皆様の御茶会の席でございます。今日皆様に集まっていただいたのは、日頃の労をねぎらうと共に、横暴なハンターたちの酷い扱いを遠慮なく暴露してもらうためですわ。無礼講ですので、御存分にぶちまけちゃってくださーい」
大きく手を広げて、YAシャオuがユニットたちを煽りました。
「どうぞ御存分に、使い手であるハンターたちの弱点などをお話しくださいませね」
そう言って一礼すると、YAシャオuがイェジドたちのボウルに温かいミルクを注いで回りました。CAMたちのカップには、液状のマテリアルらしき物を注ぎます。
いったい、CAMがどうやって飲み物や食べ物を食べるのかと思いますが、普通にカップを顔に近づけていくと、そのままどこかへ吸収されていきます。まあ、ここは夢の中ですから、深くは考えないでおきましょう。
「ケーキがない……」
テーブルの上を見回して、それまで黙っていたオリーヴェがボソリとつぶやきました。青白い不思議な毛並みを持つ、物静かなイェジドです。どちらかというと、この騒がしい御茶会にも、我関せずと言ったところでしょうか。でも、ケーキは別です。
「はいはい、ケーキですね」
YAシャオuが、すぐにケーキの載ったワゴンをどこからか持ってきます。
「わあ、ケーキ、素敵素敵♪」
もふもふした塊……いえ、イェジドのコメットが、長い尾を振って喜びました。白い長毛に所々鮮やかな青地の混じるコメットは、クッションの上に座っていてもまるで動く毛玉のようです。
「はい、どうぞ」
そう言って、YAシャオuが、コメットを始めとするイェジドたちの前にケーキの皿を置きました。どうせ、そのまま食べるだろうと言うことで、フォークはついていません。
CAMたちの方には、マテリアルの結晶饅頭をおきます。
「それで、今日は何なの? ケーキ食べる日?」
口の周りの長い毛に、べったりと生クリームをつけて、コメットが言いました。
「もう食ったのか!? やれやれ、わしの許しもなく……。これだから、最近の若い者は……」
コシチェイが、空になったコメットのケーキ皿を見て呆れます。
「嬢ちゃんや、お代わりじゃ」
コシチェイが、空になったケーキ皿を鼻の頭でYAシャオuの方へ押して要求します。いつの間に、全部食った!?
「あ、はいはい。少々お待ちを……」
片眉をピクンとさせてから、YAシャオuが追加のケーキを取りにいきました。
「そういえば、今はリアルブルーの正月というものだったか? それでふと思い出したのだが。マスターが何をとち狂ったのか、私の頭に餅なる物を載せてな……。自分で載せておきながら、私の姿を指さしながら鏡餅だと笑い転げていたよ」
ボウルのミルクで喉を湿らせてから、オリーヴェが、淡々と自分のマスターのことを話し始めました。
「ワタシは、鼻の上にミカンを載せられるよー」
ちょっと自慢そうにコメットが言いました。鏡餅であれば、ミカンも載せなければ不完全です。
それにしても、なんで人間は、イェジドの頭や背中や足の上に食べ物を載せたがるのでしょうか。
「それで、どうなったの?」
コメットがオリーヴェに聞きました。
「事の顛末か? 友人たちが諫めても止まる気配がなかったのでな。……頭からマスターを喰った。ああ、誤解しないでくれ、喰ったといっても実際に喰ったわけではない。頭から銜えて、甘噛みを繰り返しただけだ。そうしたら、じたばたと暴れながら、ひたすら謝罪していたので解放してあげたがな……」
「まあ、素敵酷い♪」
オリーヴェの話に、YAシャオuが、嬉しそうに、うっとりとした目をします。歪虚としては、こういう話を聞きたいのです。
「ケーキ……」
「はいはい」
コシチェイに要求されて、YAシャオuが、持ってきたケーキのお代わりをコシチェイの皿に載せます。いっそ、コシチェイの頭に載せてやろうかとも思いましたが、寸前で思いとどまりました。
「確かに私のマスターは度し難い馬鹿だ。とはいえ、そんな馬鹿だからこそ、マスターの友人や仲間たちにとっては放っておけない存在なのかもしれないな。かくいう私も、放っておけないと思う馬鹿の一人ではあるが。だからこそ、無茶無謀極まりない戦いにも共に身を投じるし、命を預けることもできる」
オリーヴェが、そう言い返します。
「私のパイロットは、生物個体としては年少に分類される者です」
インスレーターが言いました。
「私は、ロッソに配備予定でしたが、転移により凍結され、後にハンターに供与されました。その後、パイロットの希望により、今のバージョンにカスタマイズされました。今の識別名称も現在のパイロットによってつけられたものです。『絶縁体』を意味し、味方の危機や絶望を断ち切るものとして意味づけられています」
インスレーターが、淡々と語りました。
「んー、そうだね。僕らの主さんは、僕らCAMの立場からしてみれば『育ての親』とも言える人かなあ? ほら、乗り手の人たちはボクたちに乗ってデータを集めてくれるでしょ。そこから、良くない所の改善点や、向上出来る部分とかを『生みの親』である開発者さんたちに申告してくれるわけだから」
オリーヴェが同意します。
「ワタシは、現在搭載されているオファインシステムにより、パイロットとのダイレクトリンクが可能となっています。それによって、パイロットの感じる恐怖も共有できます」
インスレーターが説明しました。
「まあ、怖くなくて?」
ワクワクするようにYAシャオuが訊ねます。
「恐怖も、一つのデータに過ぎません。貴重な判断材料です。ただ、それによるパイロットの選択が、生存確率を評価外とするものであるのが、分析不能です。これは、『生存』の意味解釈が、生物学的見地とパイロット固有の認識との間で、差異を生じているものと推測されます。これは『矛盾』であり、現在その解析を優先事項として処理ランクを設定しています」
インスレーターが答えます。なんだか、分かったような分からないような、YAシャオuとしては、困っているようです。
「じゃあ、そちらのわんこじいさんさんは?」
YAシャオuが、今度はコシチェイに話を振りました。
「ワシの場合、マルカは表向きや書類上は主とあるが、ワシは認めてはおらぬぞ」
きっぱりと、コシチェイが言い切りました。
「なにせ、マルカの普段のおどおどした姿は目にあまる」
やれやれと、コシチェイが軽く溜め息をつきます。
「まあ、だが、しかし、覚醒時の彼女には一目おいておる。打って変わって、しっかりと自信に満ちておるからな」
さすがに、自分のパートナーだけが情けないのは恥ずかしいのか、コシチェイがフォローします。
「さらに、最近周りに感化されてるそうで、マルカのメンタルが変な方向に鍛えられた節があってなあ。S魔術具がクズ鉄になった時、お気に入りのランタンじゃなくて良かったーって言っておった。ワシ、ヤツはバカ強いと思ったぞ」
うんうんと勝手にうなずきながら、コシチェイが言いました。けれども、彼がマルカ・アニキチンを褒めるのもここまでです。
「でも、幻獣のワシの方がもっとスゴイ。マルカは、ワシから力を貸してもらっているだけだ。人間、努力しても幻獣にはなれませーんっ!! ワシは生まれつきだから! しょうがない! だってまぼろしのどーぶつじゃもん! ヒャヒャ!」
思いっきり年寄り臭いギャグをかまします。
「それは、笑いどころが分析しづらいです……」
インスレーターが、表情を変えずに言いました。まあ、CAMですから、相好を崩して大笑いしろと言われても無理な話ではありますが。
「あはははは……」
オリーヴェが、空気を読みすぎて無理矢理に笑います。
「ボクの主さんは僕の扱いが荒っぽくなったりはあるけど、作戦後とか、普段の調整とかで、とても大事にしてくれるから、その分、僕も応えないとってなるわけで……。使ってもらってなんぼだしね?」
しみじみと、オリーヴェが言いました。
「でも、不満があるかと言えばあるよ。主さんじゃなくて、装備の現状にさ。武装はそれなりにあるけど、どちらかと言えば単体の敵に対しての物がほとんどなんだよね。対多数になると、こちらも数がいないと対応できないし……。それと、装甲や補助パーツが少な過ぎて、主さん好みの改修が難しいって点とか……」
オリーヴェが言いました。
「うちのエル様は、私が言うのも何ですが、ハンターとしての実力と実績がある方と思います。また魅力的な容姿を持たれていると思いますね。それに責任感もあるので、私の世話などもきちんと行ってくれています」
ガルムが、ちょっと自慢そうに言いました。
「しかし、あの露出や色仕掛けを好むところは直した方がいいと思います。齢が若いということと、本格的に問題になるようなことはまだしていないため、どうにか今のところは黙認されているようですが……。それが今後も続くとは思いませんし……」
ちょっと不安そうにガルムが言いました。実際、エルバッハ・リオンは、その露出度の高い扇情的な出で立ちから、人の多い商店街などで何度か補導されそうになったことがあります。たまに帰りが遅いと、ハラハラと心配してしまうガルムです。だって、御飯をくれる人がいないと困るじゃないですか。
「もちろんエル様は聡明なお方ですから、いずれは止められると信じています。ですが、いい歳になっても『私は永遠の12歳です』とか言いだすんじゃないかという不安がどうしてもぬぐえません」
もう、心配性なガルムです。これが、杞憂であればいいのですが……。
「色々と言ってしまいましたが、それでも、私はエル様と共に戦えて誇りに思います」
またもやちょっとだけ自慢そうに真っ赤な胸元をふくらませて、ガルムが言いました。
「僕らは主さんの好みに合わせて外観を変えられたりするからね。言ってみれば、衣装替えみたいなものかなあ。だいたいは、主さんの容姿に合わせる形かなあ。もちろん、その改装が嫌ってわけではないんだけどもね。結果として、主さんたちが僕らを扱いやすい様にしてくれる方が良いわけだろうし」
オリーヴェの言うように、CAMとパイロットのイメージカラーは統一されることが多いようです。CAMの着ぐるみなどという物もあるようですし、パイロットスーツが普及すれば、CAMと同じデザインのパイロットスーツなんていう物も、もっとたくさん出回るのでしょう。
「御主人のお話……? うちの御主人は……御主人と言うよりはー……息子?」
そう言うと、コメットがちょっと考えるように小首をかしげました。もこもこの毛が、ふわふわとゆれます。
「いつも、ワタシの毛皮をお布団の代わりにしてお昼寝するのよー。ふかふかだからかしらー?」
その通りかもしれません。
「それに、あの子強くなったのよー。まあ、背中の上から機導術撃たれるのはちょっと怖いけどねー……ワタシの頭の後ろに当たりそうで……」
コメットが、心配そうな顔で言いました。
「そんな感じでうちの子は、割といつも行動が突拍子もないんだけどー。慣れたとはいえ、さすがにいきなり相棒ちゃんと結婚決めたときはワタシもびっくりしたわぁ」
コメットがちょっと自慢そうに言いました。
「息子が結婚とな。つまり、子供ができれば貴方はおばあちゃんというわけだな。ヒッヒッヒッ」
コシチェイが笑いました。おじいちゃん、ちょっと意地悪です。
「肯定します。世代としては、間違っていません」
インスレーターが同意しました。
「アルマのことは、大好きよー。ワタシの可愛い子だものー。ブラッシング上手だしー」
おばあちゃん指定は華麗にスルーして、コメットが言いました。しゃべる度に、長い毛がゆれます。なるほど、これはブラッシングしがいがありそうです。
「だから、あの子以外の言うこと、聞くつもりないわー。いくらワタシでもイェジドとして、それ以前にわんことしてさすがにねえ」
コメットは、いつもアルマ・A・エインズワースにわんこ扱いされているのでしょうか。息子扱いしているわりには、すっかりアルマ・A・エインズワースに懐いているようです。
「わふわふ。戦場じゃなくても、もし会ったらうちの子をよろしくお願いしますー」
そう言って、コメットがぺこりとお辞儀します。
それはこちらも同じと、一同がうなずき合います。
なんだかんだ言っても、ユニットたちと、ハンターたちの繋がりは深いようです。
「これでは、まだまだつけいる隙はすくなそうねえ……」
残念だと言わんばかりに、YAシャオuが溜め息をつきました。
テーブルの上の飲み物とケーキもほとんどなくなったようです。そろそろ潮時でしょう。
「それでは、皆様、今日は楽しんでいただけましたでしょうか。このあたりでお開きにしたいと思います」
深々とお辞儀をして、YAシャオuが言いました。
「ええー!? お土産のケーキを……」
誰かが叫びました。
「またねー♪」
強制送還です。スーッと、ユニットたちの姿は消えて、現実の主の許へと戻っていきました。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/02 17:57:30 |