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【CF】ストリーキングを撃滅せよ!

マスター:みみずく

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/01/04 22:00
完成日
2017/01/13 00:29

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 さて、聖夜である。リアルブルーのかの地に於いてはエロ動画の再生回数が爆発的に上がり、巷には『クリぼっち』なる用語が蔓延し、さんざめく人々の笑い声の中、飲食店従業員による「おひとり様ですか」の問いかけさえ胸をえぐる、聖輝節の夜である。
 黒マントで全身を覆い、眼下に街の灯を眺める一団の目に、光はない。『自由の鐘』として、愛の再配分を叫び、革命の名の下、いちゃつく数多のカップルをあの手この手で襲撃し、リア充爆発しろの号令も猛々しく、今日までひた走った彼らである。
 しかし、悲しいかな、いくら妨害したところでカップルたちの愛の炎は燃え上がり、触発された同志は一人、また一人と幸せをつかんでは脱落し、祭りは滞りなく運営され、今日のこの日を迎えてしまった。
 先頭に立つ長身の男が叫ぶ。
「諸君、決戦の時は来たれり」
 叫んだ拍子に水っ洟が顔面にはりついた。
「隊長、寒いです」
 横で縮こまる中背の男が、ガタガタと震えながら訴え出る。
「泣くでない! もはや、残された道はただ一つ! 浮かれた連中に、我ら覚悟のほどを見せつけ、祭りの雰囲気をぶち壊すのみ!」
 男が深呼吸ののち、勢いよくマントを放り投げた。
「総員、抜刀せよ!」
 ばばばばばっと全員がマントを投げ捨てる。
「いざ葬らん、パンツと書いて、モラル!」
 一糸まとわぬ彼らの雄たけびが、聖夜のリザリオに響き渡る。

 ハンターオフィスの受付にも、当番というものは存在する。
「なーんでこんな日にこんなとこ座ってにゃならんのよ」
 オフィス机に顎をのっけて不貞腐れる受付嬢は、花の独身、彼氏なし。故に本日当番を仰せつかった次第である。
「あーあ、やってらんない」
 大体一体どこの誰が、こんな日に依頼を持ち込むだろうか。窓辺を通る人々は、皆楽しげに誰かを連れて、各々聖輝節を楽しんでいる。勤務時間内だが、こうなりゃ酒でも飲んでやろうか。
 受付嬢の心に悪魔が囁きかけたとき、若い男が息せき切って駆け込んできた。
「すみません!」
 男の声に受付嬢ははっと顔を上げ、瞬く間に営業スマイルを作り上げた。
「どうかされましたか」
「大変です! 自由の鐘の残党が、町中でストリーキングを」
 なにゆえ年末のこの時期になると人は自棄を起こすのだろう。受付嬢は一呼吸置き、
「全裸ですか」
「全裸です」
 寂しさはかくも人を狂わせるのか。いっそ哀れである。
「走らせとけばいいじゃないですか」
「止めてくださいよ!」
「どうせ風邪ひくんだから」
「商売になりませんよ!」
 それはそうだ。受付嬢は思い直した。
 聖輝節は商売人にとって、年末の収支をプラスに転じる最後の好機である。
「じゃあ、その全裸の一党に服を着せとけばよろしいですか」
 相手は何しろ文字通りの丸腰である。多少不愉快は生じても、制圧自体はそれほど難しくはないだろう。
「いや、でもやつら全力疾走なもんで捕まえにくくて、しかも止まるとラップで挑んでくるんです」
「らっぷ?」
「そうです、ラップです。うち、ケーキを売ってるんですけど、白熱するラップバトルにだんだんオーディエンスが増えてきちゃって」
「良かったじゃないですか、ビジネスチャンスですよ」
「マッパのラッパーがたむろする場でケーキが売れると思いますか! 台無しですよ!」
 リアルブルー風に赤い帽子と装束を纏った男は、泣き出さん勢いで机をバンバン叩いて訴えた。

 その頃、洋菓子店の店先では、鳥肌を立てた一群が、小刻みに体を動かしながら、持参したマイク(音響機器には接続していない)を片手にパフォーマンスに勤しんでいた。
「Hey Yho! 幸せ日曜日、ひとりもん、救う唯一の希望、うちの子猫モフる腹毛、たちまち漏らす、毛布に魔尿! Nyoh! Nyoh! Nyoh! 飛び散る魔尿! 染み込むアンモニア! 布団がねぇ! Ah! 寝るとこねぇ! Oh! 彼女もいねぇ! 悲しき夕暮れ」
 懸命に体を揺らしながら涙ぐんでいる。孤独の末に飼い猫にまで背かれた男の魂の叫びであった。
「聖夜が何だ! サンタなんているか! 世界は平等か! 愛をとりもどせ! 持てるものから! 今こそぶちかませ! 我らのライム!」
 感極まった隊長が鬨の声を上げる。
「うぉぉぉぉ! 砕け、愛の打鐘! いざ! 出陣!」
 拳を振り上げ、男たちが叫び、全力で疾走する。
 悪夢のような光景であった。

「とまぁ、そんなわけで、この肌色の軍団によるストリーキングを止めてください、とのことです。団員は6名、いずれも男。非常に足が速く、疲れると止まりますがラップパフォーマンスで人目を惹き、心理攻撃を狙ってきます。改心……しないんじゃないですかねぇ。もてないって、割とつらいですよ」
 受付嬢は若干同情めいた表情を浮かべつつも淡々と述べる。
 貴重な聖夜を粗末な裸で乱す不届き者、彼らを煮ますか、焼きますか、服着せますか、どう始末してやりますか。

リプレイ本文

 今年という暦もあと数日で終わる。岩井崎 旭(ka0234)は『聖輝節スーパーセール! 全品50%OFF』と書かれた看板を持ち直しながら、着ぐるみの下で気づかれぬように深ーいため息をついた。
「全品半額! 年末最後! 本日は半額でのご奉仕! 欲しい商品早い者勝ち! さぁいかがでしょうかぁぁぁ! いらっしゃいませぇぇ」
 リアルブルーで言うところのサンタ風衣装を纏ったお姉さんの声が街角にこだまする。当初、彼はストリーキング達からお姉さんを護衛する意図もあり、物々しい装備で街の空気を壊さぬよう、わざわざミミズクの着ぐるみを着たうえで、ここに立ったのである。
「お買い上げの皆様はぁぁ! この、聖輝節限定ゆるキャラ! ミミズクあーさーひー! との記念撮影会にもご参加いただけまぁす!」
 お姉さんがババン! と腕を広げて旭を紹介するかのようなポーズを取っている、気がする。着ぐるみなのでよく見えないが。
「さあぁぁぁぁ! お買い得!」
 年末商戦に賭ける商売人の気迫はお姉さんと言えども侮りがたく、このままではいずれドナドナと売り飛ばされてしまうかもしれない。
 ストリーキング集団は一時寒さに耐えかねてこの場を走り去ったようだが、全裸でも何でもいい、とにかく早く戻ってきてくれと願うばかりである。
「YOH! YOH! サンタのお姉さん、あんたが売ってる半額商品、とどのつまりは売れ残りぃSAY!」
 その時、どやどやという足音と共にストリーキング集団が現れた。旭は『鋭敏視覚』と『超聴覚』、更には『超嗅覚』を使って団員たちをチェックする。しかし、感覚を研ぎ澄ませた旭の耳に聞こえてきたのは、傍らに立つお姉さんの毛細血管がブチッと切れる音だった。
「HEY! HEY! 売れ残りたぁ聞き捨てならねぇ、残り物には福がある! HEY! 福ある服を半額で! いいから服着てそして買え! お前の【蔵倫】見たくない! いらっっしゃいませぇぇ!」
 良い子のみんな、【蔵倫】の箇所には、何かファンシーな単語を当てはめよう! 
「お姉さん……」
 売れ残り、その単語が、聖輝節の街並みに幾度となくカップルを見送ってきたお姉さんの心を抉ったのかどうかは分からない。しかし、額に血管を浮かべてラップを刻むお姉さんの表情は般若そのものであった。
「いらっしゃいませぇぇ! 全品はんがぁぁく!」
「HEY! YO! 愛なき世界に鉄槌を!」
 かなしい……何故だかこの光景を見ているだけで泣きそうだ。旭は両者の間に割って入った。
「YO! YO! よそうぜこんな争いは! 孤独が何だ、慰め合おうぜ、みんな、おんなじ独り身だ! ハッ!」
 リアルブルーにいた時分に見た某パラパラッパーの動画を思い浮かべて渾身のラップで挑む。喧嘩をやめて、二人を止めて……同じくリアルブルー時代の懐メロよろしく渾身のメッセージであった。
 争いは、もう、やめよう。お前の母ちゃん、でべそとか言い出す前に。(旭君の美声でお届けしております)
「旭、下がってろ」
 そこへ、道化師の仮面を装着した央崎 枢(ka5153)が静かに表れた。祓魔執行の称号を持つ疾影士、イケメン然とした雰囲気に、一瞬場が静まり返る。枢はすぅーっと息を吸い、呼吸を整えるとおもむろにビートを奏で始めた。
「さっきから聞いてりゃアンタのリリック品ねェ言葉並べてるだけ、ハッキリ言ってサンタもビビッて、品ねェヤツにゃ何もくれね、もうちょいアタマ使ってこーぜ、言葉の遊び気張ってこーぜ、踏みしめるのは、足元じゃねェ、ラップすんなら韻踏めや」
 COOL! ハートを表す拳を胸に押し当て、枢のラップが決まった。旭は「枢が心臓ささげとる」と思ったが黙っておいた。
「そんな……俺たちのラップは間違っていたのか」
 韻を踏む。漫然とリズムに乗って言葉を並べるだけだった裸の集団と巻き込まれたお姉さんの心を衝撃が襲う。
 泥沼の争いは回避された。しかし、全裸が覆されたわけではない。彼らの戦いはこれからだ。戦え、ハンター。光り輝く明日という日のために!
「変な集団が出ているとは聞きましたが……こ、これはちょっと……。色々と露出しすぎです……」
 話が連載途中で人気のなくなった少年漫画のように終わろうとしたとき、一人の少女が立ち上がった。銀の髪に赤い瞳、140cmに満たない小柄な体には極小ビキニアーマーを身に着け、猫耳尻尾を装着したサクラ・エルフリード(ka2598)である。
「うぅ、近づくのさえ嫌なのですが……しょうがないですね……。シレークスさんいきま……ど、同類じゃないですよ…!?」
 突如現れた露出度の高い女性陣に、周囲から「女版ストリーキングか」の声が上がる。シレークス(ka0752)にカチューシャ型の猫耳をしっかと手渡しながら、サクラは真っ赤になって否定した。
「ちっ。しかたねぇですね、やりやがりますよ」
 できることなら今すぐぶん殴って奴らの目を覚ませてやりたいが、これも世のため人のため。サクラの声に、カチューシャをかぽっと嵌めて、破戒の修道女、シレークスが衆人環視の広場に立った。サクラ同様小柄だが、豊満な肢体を持つ彼女はけしからん毛皮ビキニ姿、「はあぁぁぁぁぁ」と深く息を吐きだし、気合をためるとおもむろに、
「空前絶後のぉぉ! 超絶怒涛の修道女、酒を愛し、酒に愛された修道女、我こそはぁぁぁ! 破戒の修道女、サンシャイン、シレェェェ(デュン)クス!」
 美少女ドワーフ、シレークスによるまさかのネタふりに度肝を抜かれつつも、着ぐるみを脱いだ旭がすかさず、
「おい、見たか! あっちの広場で猫耳の可愛い女の子たちが(思ってもみなかった)パフォーマンスやってるぜ!」
 と、韻を踏んでいなかったことに気落ちする全裸集団をたきつける。
 モテない、彼女いない歴イコール年齢、直近で話した女子イコール母親のストリーキング集団は無論、即広場に集結、目が釘付けとなった。
「おんにゃの子だ」
「毛皮ビキニ……けしからん……まことにけしからん」
「フッ、お嬢さんたち」
 形だけでも壁ドンのポーズを取り、俄かにバリトン声を作ってイケメンを気取ろうとしたとき、彼らは気づいた。
『あ、そういえば全裸だ』
 そっと顔を合わせる全裸集団。微笑む女性陣。けしからんビキニ、揺れる猫耳、猫しっぽ、吹きすさぶ北風。
「お姉さん服おくれ~!」
「着るだけでイケメンになれる服おくれ~!」
 昨日の敵は今日の友とでもいうつもりか、先ほどディスった洋品店のお姉さんのもとへ全力ですり寄っていく全裸集団。
「いらっしゃいませぇぇぇ! そんなものはない。お代いただきますよぉ! ただいま現金かぎり! ピンポイントサービス! さあぁぁぁ! お買い得!」
 彼らの装備は文字通りゼロである。
「うわぁぁぁん! 後から払うからぁぁぁ!」
「神様仏様サンタのお姉さま~! 今だけ服着させてぇぇ」
 繰り広げられる醜態に、シレークスの血管は破裂寸前である。ブチ切れそうになる血管を宥めすかし、引き攣る口の端を精神力で微笑みに変えながら、
「そのようなことをしていても、救われませんよ。ささ、あちらでわたくし達とお話いたしましょう?」
 そう言いながら、彼らに近づき、毛皮ビキニの胸元をチラッチラッと覗かせる。内心はもちろん、ぶっ飛ばす気満々である。
 サクラも顔を真っ赤にしながら、
「え、ええと……そこの素敵な男性方……。良ければ私達と楽しいことしませんか……? その……り、立派な……あの、その」
 サクラの口から際どいワードが飛び出て、男どもは沸き立った。
「どうせなら邪魔の入らない場所で……ダメですか……?」
 赤面しながらも上目遣いに訴えるサクラの媚態にアホな男どもはめろめろである。
「恥じらい」
「かわゆい」
 そこが地獄への一方通行とも知らない彼らはぐふぐふと鼻息荒く、サクラににじり寄っていく。
「ふふっ、逞しいです。そう思いませんか、サクラさん?」
 シレークスは内心『そのヤニ下がった顔面パンッパンにしてやろうか』と思いつつ、徐々にケーキ店からも洋品店からも離れ、人気のない路地裏へと促す。
「天使や、天使がおる」
「そう、ここが、僕らの、シャングリラ」
 ふらふらと誘導されてゆく全裸集団。しかし、隊長である彼だけは違った。
「待て待てぇい! 待たんか貴様ら! こんな、こんな色仕掛けにコロッと引っかかるなど革命者として言語道断! 我々はぁ、卑しくも自由の鐘として、最後まで戦い、この任務をやり終えるのだ! いざ砕かん、『モノトーンの潮鐘』! 恋人たちの伝説など、木っ端みじんに打ち砕いて見せる!」
 そういうが早いか、煩悩を振り切るかのように全速力で走りだした。
「あ、ま、待ってくださいよ! 隊長!」
 気弱そうな団員の一人が追いかけるように走り去った。
 後を追う枢と旭を、銀(ka6662)が押しとどめる。
「まぁあとは任せなって」
 にやにやと底の見えない笑いを浮かべると、鉄パイプをもって走り出す。猪川 來鬼(ka6539)もその後を追った。
 足の速い二人は銀と來鬼に任せて、枢と旭はスケベ集団の本隊を追った。人混みから離れた路地裏へと集団をおびき寄せると、サクラは、ふぅ、やれやれと息をついて、
「さて……では……楽しいお仕置きの時間と行きましょうか……。ええ、楽しいのは私達だけかもですが」
 というが早いが、サクラは荒縄を用いて、猫好きのラッパーを目にもとまらぬ速さで亀甲縛りにした。
「サクラさん、なにゆえ亀甲縛りなんてマニアックな縛り方していやがるんですか」
「ふふふ……乙女の嗜みですよ、シレークスさん」
 とんでもない嗜みもあったものである。
 サクラの豹変ぶりに驚いて逃げようとする者の前には、枢が立ち塞がった。
「で、欲しいのは何? 賞賛? 喝采? それとも可愛いお洋服? まぁ待てや、少し落ち着きな、欲しいのはモノじゃなく幸せだよな」
 再び始まるラップバトル。しかし、ラッパーはすでにお縄になっている! 枢の手が背後に回った。
「OK、そんじゃ俺がくれてやる、お前に贈るわプレゼント、乾いた心に潤いを、ほら遠慮するなよ、水どーぞ!」
 いつの間に用意したのか、バケツに汲んだ冷水を裸族の一人にぶちまけた。
「ぎょょおぉぉぉえええ」
 寒空の下、気化熱で一気に体温を奪われた男の断末魔が響き渡る。
 残った男の一人が「あなたは違いますよね」とシレークスを見つめた。微笑むシレークス、一瞬の沈黙、そして、
「そぅ……んなわけねぇでありますよ!」
 加減しているとはいえ、怒れる修道女、シレークスの華麗なる鉄拳が男の頬に食い込んだ。そのまま一列に、バコッ、ドコッ! とテンポよく倒していく。
「あべしッ!」
「ひでぶッ!」
「ぐわしッ!」
 次々倒れこんだいく男たち、そして、彼らを、一人、また一人とサクラが手際よく亀甲縛りにまとめていく。恐怖の流れ作業であった。
「これで大体いいとして、残った二人はどうしたんだ」
 水濡れ男にタオルをかけながら、旭が呟く。
 その頃、別の路地裏では大変なことが起こっていた。

 逃げる二人を銀の男にしては甲高い笑い声が追いかける。
「ひっひっひ、誰かに壊され誰かを壊して全ての物事倍返し……嗚呼、愉しいねぇ?」
 人気がなくなったところで、彼らの行く手に桜幕符の符が投げ込まれ、視界一面に桜の幻影が浮かび上がる。その機に乗じて來鬼が聖杖アスクレピオスで二人の足を引っかけ、転んだ男の上に馬乗りになった。自らに筋力充填をかけると、恍惚の表情を浮かべ、
「1人108回……お尻を叩いたら暖かくなるよね」
 と囁くなり、筋力の増した手で思い切り生尻を叩き始めた。
 寒空の下、ビシャーン、ビシャーン、というなんともシュールな音が響き渡る。
「隊長! 助けてください!」
 涙に濡れた顔で団員が隊長に助けを求める。
「おのれ、ハンター! 叩くならこの私を叩くがいい!」
「隊長ぉ!」
 野望はついに果たせなかった。涙に暮れながらひしっと抱き合う二人の姿。
「え~? うちが飽きるまで叩かれようか」
「はいはい、さあ、お前らの煩悩の数を数えろ。あ、108って決まってるんだっけか」
 銀が湿度の高い笑顔でにやにや笑うと、火炎符を持ち出し、【蔵倫】を【蔵倫】しようと【蔵倫】した。
「ひぎぃぃ!」
 このままでは行動の全てが【蔵倫】になる。続いて銀は鉄パイプを【蔵倫】めがけて【蔵倫】した。
 良い子のみんな、くれぐれも、【蔵倫】には、ファンシーな単語を当てはめるように。
「ぎやぁぁぁ!」
 銀は悲鳴の演奏会だと喜ぶが、常軌を逸した悲鳴に、徐々に人声が集まってくる。
「叩いたらちゃんとごめんなさいって言わないと……終わらないよぉ?」
 來鬼は來鬼で、獣爪「イルウェス」でひっかくは、殴るは、欲望に任せた百叩きは終わらない。
「あ~、なんか期待外れ」
 ひとしきり遊ぶとぷいっと銀の方を向いた。
「んー、遊び足らねぇなぁ……來ちゃん、帰って遊ぼうぜー」
 銀も來鬼を抱き寄せ、
「奇遇だねぇ~、うちも遊び足りないんだぁ。銀一緒に遊ぼ?」
 互いににやりと笑って、小さくなって震えている男達の面前で頬を寄せ、夜の街に消えていった。
「隊長ぉ……返事してください、隊長」
「怪我は、ないか、団員1」
「隊長!」
 ひしっと隊長に縋りつく団員。今、ここに小さく愛が芽生えた、かもしれない。
「おー、いたいた、あれ、あの二人は?」
 探しに来た旭と枢が人波をかき分けて近づいてくる。
「な……何してるんだ?」
 ひしっと抱き合う二人に枢が引き攣りながらトナカイの着ぐるみをかぶせる。
「これでも着て、お詫びになるかどうかは分かんねーけど、ケーキ屋で集客すんぞ! ほら、立って」
「まずは服な。ありがたく思えよ」
 旭が後ろに立った洋品店のお姉さんに頭を下げる。
「25年以上昔のぉぉ、化石と書いてぇぇ、売れ残りだからいいんですよぉおぉお! あとでミミズク旭で握手会してくれたらそれでいいでぇす! いらっしゃいませぇぇ!」
 お姉さんは旭を売り飛ばすことを未だあきらめてはいない。
「おらぁ、声が小さい! もっと気持ちを込めて謝りやがれ!」 
「これでもう悪いことは出来ないですかね……ん、何か視線が……きゃっ!?」
 檄を飛ばすシレークス、脱げかけた極小ビキニを必死に押さえるサクラ、二人の声が近づいてくる。
「依頼主のケーキ屋さんが、あんまり不憫だってんでケーキくれたからさ、この後みんなでごちそうになろうぜ。うまいもの食えば、ちったぁ幸せ感じるってもんだろ」
 愛が芽生えた二人の顛末を知ってか知らずか、快活に笑って諭す旭の言葉に、顔面だけトナカイは服を着ながら細かく頷く。
 その時、鐘の音が響き渡った。Happy Holidays! どちらさんも、どうか幸せに。

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重体一覧

参加者一覧

  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 祓魔執行
    央崎 枢(ka5153
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 酷薄の赤鬼
    猪川 來鬼(ka6539
    鬼|24才|女性|霊闘士
  • 苛虐の銀鬼
    銀(ka6662
    鬼|30才|男性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/01/02 23:43:14
アイコン あの金(カネ)を鳴らしに行こう
銀(ka6662
鬼|30才|男性|符術師(カードマスター)
最終発言
2017/01/04 21:59:33