ゲスト
(ka0000)
【万節】秋ライム前線を食い止めろ!
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/08 07:30
- 完成日
- 2014/10/16 09:56
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「アレは、まさしく秋のスライム! このお祭り騒ぎに浮かれて出てきたか!」
自称スライム研究家、自称スライムのエキスパート。
スライ=クライムは、ピースホライズンまでの街道を行きながら興奮していた。
視線の先では、複数のスライムがフヨフヨと動いていた。
時折、その身体から雲のようなものを生み出し、雷を飛ばす。
「危険極まりない。アレぞまさに、秋雨を思わせる姿よ!」
スライの言葉を受けてか、スライムたちは蒼色の身体から粘液を飛ばしていた。
滴り落ちるその液体は、まさに雨……というにはやや強引である。
「スライせんせぇ、危険ですよぉ」
「何を言うか、ムームーくん!」
スライの後ろでは、強制的に弟子にしたムームーが泣き言を言っていた。
一喝したスライは、熱心にメモを取る。
「ふむふむ、秋にこそ秋雨めいたスライムが出るというわけじゃな」
「はぁ」
「わしは、あれをシュゥライムと名付けよう。秋のスライムじゃからな」
「シュライムですか」
「違うぞ」とスライは指を横に動かし、ムームーに唇の動きを見せる。
「シュゥライムじゃ」
「シュライム?」
「シュゥウライム」
「……秋ライムってことですね」
それ以上、付き合うつもりもない。
ムームーは視線の先に踊るスライムが、こっちへ向かってきているように見えた。
「せんせぇ、こっちに来てませんか?」
「なんと! わしの愛情を感じてくれたのか」
「違うと思いますが……」
「じゃが、スライムの愛情を受けるとわしは死んでしまう!」
それはそうだろうとムームーは呆れ返ったが、口にはしなかった。
「心惜しいが、ムームーくん!」
「はいはい」
全速力で駆け出すスライの後ろをムームーは逃げ切れる速度で行く。
スライムはそれほど早く感じなかったが、雲から発せられる雷は危険に見えた。
●
「秋雨前線というものが、リアルブルーにはあるそうですが」
スタッフは、そんな情報から依頼について語り始めた。
「スライム前線は遠慮願いたいですよね」
もちろん。雨も嫌ですがと続ける。
目撃者のスライ氏による考察や長々としたスライムへの愛情部分はカットして、伝える。
「秋めいたスライムということで、秋ライムとかいってますが」
ばっさりである。
「雷を発生させる雲を放出して攻撃してきます。近づくと粘液による攻撃もありそうですね」
淡々と情報を述べる。
「ピースホライズンでは、お祭りムードが高まっています。お祭りというのは、秋雨ですら興ざめするでしょ? スライムならなおさらです。きちんと退治して、祭りの準備を助けてあげましょう」
「アレは、まさしく秋のスライム! このお祭り騒ぎに浮かれて出てきたか!」
自称スライム研究家、自称スライムのエキスパート。
スライ=クライムは、ピースホライズンまでの街道を行きながら興奮していた。
視線の先では、複数のスライムがフヨフヨと動いていた。
時折、その身体から雲のようなものを生み出し、雷を飛ばす。
「危険極まりない。アレぞまさに、秋雨を思わせる姿よ!」
スライの言葉を受けてか、スライムたちは蒼色の身体から粘液を飛ばしていた。
滴り落ちるその液体は、まさに雨……というにはやや強引である。
「スライせんせぇ、危険ですよぉ」
「何を言うか、ムームーくん!」
スライの後ろでは、強制的に弟子にしたムームーが泣き言を言っていた。
一喝したスライは、熱心にメモを取る。
「ふむふむ、秋にこそ秋雨めいたスライムが出るというわけじゃな」
「はぁ」
「わしは、あれをシュゥライムと名付けよう。秋のスライムじゃからな」
「シュライムですか」
「違うぞ」とスライは指を横に動かし、ムームーに唇の動きを見せる。
「シュゥライムじゃ」
「シュライム?」
「シュゥウライム」
「……秋ライムってことですね」
それ以上、付き合うつもりもない。
ムームーは視線の先に踊るスライムが、こっちへ向かってきているように見えた。
「せんせぇ、こっちに来てませんか?」
「なんと! わしの愛情を感じてくれたのか」
「違うと思いますが……」
「じゃが、スライムの愛情を受けるとわしは死んでしまう!」
それはそうだろうとムームーは呆れ返ったが、口にはしなかった。
「心惜しいが、ムームーくん!」
「はいはい」
全速力で駆け出すスライの後ろをムームーは逃げ切れる速度で行く。
スライムはそれほど早く感じなかったが、雲から発せられる雷は危険に見えた。
●
「秋雨前線というものが、リアルブルーにはあるそうですが」
スタッフは、そんな情報から依頼について語り始めた。
「スライム前線は遠慮願いたいですよね」
もちろん。雨も嫌ですがと続ける。
目撃者のスライ氏による考察や長々としたスライムへの愛情部分はカットして、伝える。
「秋めいたスライムということで、秋ライムとかいってますが」
ばっさりである。
「雷を発生させる雲を放出して攻撃してきます。近づくと粘液による攻撃もありそうですね」
淡々と情報を述べる。
「ピースホライズンでは、お祭りムードが高まっています。お祭りというのは、秋雨ですら興ざめするでしょ? スライムならなおさらです。きちんと退治して、祭りの準備を助けてあげましょう」
リプレイ本文
●
秋空の下、草花が揺れる街道沿いにハンターたちは集っていた。
少し先には、小さな雷雲がふよふよと漂っては消えている。
「あきさめぜんせん……のう。と、そんな事より、スライムじゃな」
ハッと我に返り、ルリリィミルム(ka2221)は振り返る。
「スライム……いえ、シュライムですか」
「シュゥウライム。変な名前のスライムですよね」
リズ・ルーベルク(ka2102)とレオフォルド・バンディケッド(ka2431)は、スタッフの発音を思い出していた。
発見者のスライは、発音にこだわっていたらしいが、面倒なので秋ライムとしよう。
「名前は何でもいいけど。折角のお祭りなんだし、余計な横槍入れて欲しくないよね」
秋雨前線とやらも気になるアーシェ・ネイラス(ka1066)は気合を入れていた。
クリムゾンウェスト出身者には聞き慣れないのだろう。
鮫かなぁ、と道中言ってたりもしていた。
が、今回は秋ライムである。秋のスライムである。
「季節に合わせて出てくるなんて、スライムにも繊細なところがあったのですね……」
しみじみとそういうのは、メトロノーム・ソングライト(ka1267)だ。
知性の欠片もなさそうなのに、と酷いことをサラリと思ったりしている。
「だから、名前が秋ライムか。スライムにも色々いるものだな……」
「秋とライムじゃと、酸っぱい香りがしそうじゃな」
霧島(ka2263)にルリリィミルムが、すっと返す。
「まさしく。字面だけで見るととてもスライムのバリエーションには思えんな」
半ば同調するようにクラリッサ=W・ソルシエール(ka0659)も頷く。
それにしても、と霧島は目の前に並ぶスライムたちを望む。
「最近、スライムが多い気がするが……そういう時機なのだろうか」
スライムたちが疑問に答えてくれるはずがない。
プルプルと震えているばかりだ。
「ふむ、何度見てもあのフヨフヨというかヌメヌメした感じは慣れないな……」
「慣れるようなものではないじゃろう。不定形ゆえ、バリエーションがあるのかもしれぬがな」
「い、いや。慣れる前に、と、とにかく頑張って退治しちゃわないとですよ」
そんなやりとりをしていると、J(ka3142)が「さて」と手を鳴らす。
「そろそろ、行きますよ」
淡々と、Jは作戦を確認していった。
「さて、仕事だな」
「女性陣に出来る限り怪我をさせないよう頑張りますよ!」
気合を入れ、また、引き締める。
向かって来ることに気づいたのか、秋ライムたちの体が大きく震えたようにみえた。
●
秋ライムはブルリと身体を震わせると、雷雲を発生させた。
威嚇するように、雷を放出させながら迎撃体勢を取っていた。
雷雲の発生に注意しつつ、メトロノームがまずは近づく。
全ての秋ライムを巻き込むように、青白いガスを発生させたのだ。
スリープクラウド……ガスに包まれた対象を眠りに誘う魔法なのだが、
(スライ先生ならご存知だったかも……訊いておけば良かったですね)
とものは試し。効けば僥倖といったところだ。
ガスが風にあおられ、消えていく。
姿を晒した秋ライムは、一瞬、動きを鈍らせたかのように思えたがピンピンしていた。
効きそうではあるが、耐性があるのかもしれない。
たかが、スライム。されど、スライムなのである。
少し残念そうな気がしたメトロノームの横を、前衛たちが抜けていく。
ルリリィミルムはアーシェにプロテクションを、クラリッサはレオフォルドにストーンアーマーをかける。
「押さえてくるのじゃ」
「任せてよね」
雷雲の隙間を縫い、アーシェは秋ライムに肉薄する。
続けとレオフォルドたちが近寄ろうとするが、雷雲が弾ける。
クラリッサから土くれの鎧を授かったレオフォルドは、他の二名を庇うように先行する。
両手に花、騎士冥利に尽きるというものだ。
「女性が傷つくのを見るのは少し嫌ですからね! 自分の事は気にしないでください!」
大剣で残る雲を散らすように、レオフォルドはまい進する。
霧島はアサルトライフルの照準器を通して、前衛の接近を確認していた。
「これより援護する、そのまま戦っていてくれ……大丈夫だ、味方には当てないよ」
静かに、だが、聞こえるように霧島は告げる。
声を届けた相手は、アーシェだった。いち早く肉薄した彼女の相手に、狙いをつける。
マテリアルが込められた瞳が、スッと細くなる。
あとは、引き金を引くだけだ。
弾丸が秋ライムを穿ち、体躯の一部を散らした。
●
銃声が、本格的な戦闘合図となった。
前衛を担うレオフォルドやJも、互いの動きを見つつ秋ライムを抑えに入る。
Jは自身の動きをマテリアルで補佐し、より素早く立ちまわることで秋ライムを引きつけていた。
感触を確かめるようにパイルバンカーの引き金を引く。放たれた杭が秋ライムに有効であるか、見極めていた。
秋ライムは、対峙するJに対して、強酸を放つ。
「嫌ですね……」と嫌悪感を露わにし、パイルバンカーで払う。
じわりと染み付いたぬめりが、身体を蝕むような感触があった。
防御を抜けてくるのだろうと考え、注意喚起にと声を出す。
「ぬめりに気をつけてください」
その情報が聞こえた時には、レオフォルドは強酸を浴びていた。
しかし、そのほとんどは石塊の鎧と持ち前の持ち前のグローブで防ぎきっていた。
効いていないことを悟ってなのか、秋ライムはぶるりと大きく身体を震わせた。
「自分の腕力と秋ライムの弾力、どっちが強いか勝負ですよ!」
そんなプルプルの秋ライムへ、レオフォルドは大剣を叩き込む。
捨て身の一撃で、秋ライムに迫る……といっても硬さは群を抜いていたのだが。
支援に徹する、メトロノームはウィンドガストをリズへ飛ばす。
リズの周囲を風が取り巻き、強酸を受け流す。
「た、助かります」とリズは素直に礼を述べ、秋ライムに向き直った。
正直、ベトベトの状態で街へ戻りたくはなかった。
お祭りムードとはいえ、べとべととかちりちりとか。
仮装といえば通りそうだけれど、できれば避けたいのだ。
「わわっ」
眼前に迫る秋ライムの粘液を避け、リズはシャドウブリットを放つ。
放たれた黒い塊が、秋ライムを打つ。
たじろぐような動きを見せた秋ライムは、ふるふると震え続けていた。
歌うような旋律で、メトロノームは魔法をかける。
英雄の詩には、火がつきものだ。
火の魔法は少し苦手だけれど、爽やかな風を通すため、焼き払うには必要だ。
赤い光が発せられ、アーシェへ向かう。
火の精霊を宿したノコギリ刃は、激しく燃えているように見えた。
状態の変化は、心にも影響をあたえるのか。
アーシェはひときわ強く踏み込むと、リボルビングソーを振りかざす。
赤い光を宿した武器に、さらに自身のマテリアルをも込めて振り下ろす。
「せぇいっ!」
気合を入れ、一閃。目の前のもの全て吹き飛ばしそうな、勢いでぶつけていく。
炎の力を宿した刃は、秋ライムの身体を大きく切り崩した。
「おぉ」とアーシェ自身も驚くほどだ。
だが、感心している場合ではない。
すぐさま後衛のために、射線を空ける。
霧島の弾丸は、いつも通り秋ライムの身体を突き抜けていった。
続けとばかりに、クラリッサも同じ相手を狙う。
「ふむ。コアのようなものは、ない……か」
じっと観察していたクラリッサは残念そうに呟く。
弱点がわかっていれば、そこを狙えばいい。だが、秋ライムに核らしいものはなかった。
それならばそれで、援護に向かうだけだ。
「妾なりに、な」と気持ちを切り替えて、風刃を走らせる。
畳み掛けられた秋ライムが、やや後退する。
逃すまいとルリリィミルムも、光弾を放つ。だが、前に出すぎた。
ルリリィミルムの死角をついて、雷雲が飛んでいた。
気づいた時には、雷雲がバチリと弾ける寸前だった。
光に目をつむる。
「ぐっ!」
聞こえてきたのは、レオフォルドの声だった。
ギリギリで、相対する秋ライムを牽制しながら守りに入ったのだ。
「まだまだ! 騎士口調を崩すにはまだ足りませんよ秋ライム!」
ストーンアーマーが、この攻撃で崩れ落ちる。
ルリリィミルムの安全を確認したレオフォルドは、攻めの姿勢を崩さず前へ押し返していった。
ルリリィミルムは、
「騎士を語るだけあるのう」
と、お礼代わりのヒールをかけるのだった。
●
その変化に気づいたのは、スライムとの戦闘を重ねていた霧島。
そして、観察を怠らなかったクラリッサであった。
「様子がおかしいのう」とクラリッサが片眉を上げると同時に、霧島が叫ぶ。
「前衛! 分かれるぞ、気をつけろ!」
リズとレオフォルドの目の前で、秋ライムがその体躯を二つに分けたのだ。
これで、数が六体へと増えたことになる。前衛の隙をつき、別れた秋ライムが後ろを狙う。
今度は、レオフォルドの援護も間に合わない。
ルリリィミルムは、防御を固め、雷を受けきる。
「ぐっ」
囲い込まれないよう、後ずさりながら回復を促す。
もう一体も迫っていたが、雷雲を見極めたクラリッサは風刃で散らしていた。
「頭数を減らさないと」
Jが声をあげる。今押さえている相手を逃すわけにも行かない。
かといって、追い迫る秋ライムへ対処を遅らせるのもまずいのだ。
銃声が響き、弾丸が飛び、秋ライムを穿孔して追い詰める。
霧島が二発目の銃弾を浴びせるより先に、アーシェの刃が秋ライムを焼き払った。
「効いてるね。いい感じだよ」
炎の精霊の力を宿した、リボルビングソーは爆発的威力を発揮していた。
メトロノームに目配せしつつ、アーシェはいち早く駆け出す。
目指すは、追いすがる二体の秋ライムだ。
「やはり、機導剣の方がいいか」
光の刃が秋ライムを切り開く。
Jの感覚では、こちらの方がパイルバンカーより効果がありそうだった。
切れ目なく、自身の運動性を高めながら秋ライムへ食らいつく。
戦況を確認すれば、Jより早くレオフォルドが秋ライムを倒しそうであった。
「分裂側への対処は、任せるぞ」
アーシェとレオフォルドに、告げて自分の相手へ向き直る。
こいつは、まだしぶとそうだ。
守るためにも、攻めなければならぬ。
増えた秋ライムが、女性陣を本格的に襲う前に、レオフォルドは目の前の秋ライムを倒したかった。
「……これを」
気分を高揚させるように、メトロノームの詩が響く。
武器が炎を帯びたように発光し、秋ライムへの有効打を増した。
「射線よしです! 雷雲に注意して撃ってくださいね!」
時には身体を外し、後方の攻撃を促す。
クラリッサが風の刃で、秋ライムを切り裂く。
その切れ目を広げるようにして、レオフォルドは横薙ぎに切り払った。
二体目が倒れ、レオフォルドはすかさず後衛の守りに入る。
近距離に迫った秋ライムを吹き飛ばすように、霧島のデリンジャーが火を噴く。
ルリリィミルムが合わせるように光弾で、接近を阻んでいた。
「今から先には、行かせないよ」
追いついたアーシェが、分裂した二体を引き受ける。
続いて、レオフォルドが雷撃からクラリッサらを守るように、割って入る。
分裂した秋ライムは、元の半分ほどしかない。
継続してメトロノームに、炎の力を与えられた二人の攻撃に耐えられるはずがなかった。
後ろで二つの秋ライムが落ちるのを片目で見ながら、Jもとどめを刺す。
効率よく光の剣によって、秋ライムを倒しきった。
視線を巡らせば、リズがまだ残されていた。
分裂もせず、執拗にリズだけを狙い続けた、秋ライムだ。
支援を受けていたとはいえ、戦いが長引けば多少の攻撃は受けてしまう。
「……べ、べとべとする」
避けられない時は盾で受け止めていたのだが、はね飛ぶ粘液は避けられない。
それでも健気に、シャドウブリットを放ち、影の塊で秋ライムを削っていた。
雷雲も漂い始め、チリチリにもなるのかと思ってしまう。
思わず目をつむってしまった……そのとき、
「これ以上はさせませんよ」
声がしたと思ったら、レオフォルドが颯爽と雷雲を散らした。
全員でかかれば、呆気無く秋ライムは地面にしぼむのだった。
●
クラリッサたちは、念入りに秋ライムの残滓が残されていないかを確認していた。
倒しきれていたようで、辺りにそれらしい影はなかった。
互いにヒールを掛け合い、時には自身のマテリアルで回復を促し、傷は治っていた。
が、ベトベトな者はベトベトのままであった……。
祭の準備に勤しむピースホライズンへ向かった、女子陣を見送りレオフォルドは現場に残っていた。
「ピースホライズンの祭りを楽しめなくなったらいけませんからね」
街道整備の手伝いをすべく、ベトベトを落としてツルハシを手にしていた。
やってきたオッサンに申し出て、ズズッと渡されたのだ。
秋風が汗の滴る肌に冷たく触れる。
「こういうのも見習い騎士の仕事……ですかね?」
楽しげな街を見つめながら、レオフォルドは仕事に勤しむのだった。
「ハロウィンの準備で大忙しの様じゃな。もっとも、魔女たる妾は年中ハロウィンの様な物じゃが」
女子一行は、かぼちゃや仮装が入り乱れる街の様子を眺めていた。
逆に街の人々の中には、一行に目を向ける者もいた。
おずおずとリズは、仲間に聞いた。
「は、ハロウィンなら仮装って言うことで……だ、ダメかな?」
「ベトベトのまま、散策はダメだよ」
「そ、そうだよね」とアーシェにきっぱりと言われ、リズはうんと頷く。
「さっさと、風呂に入ってきたらいい」
「は、早く行きましょう」
霧島に言われ、リズはアーシェとともに風呂を目指す。
「私も」とJもついていく。
残されたルリリィミルムは、「我は先んじて手伝いでもするかのぅ」と告げる。
重いものの移動とか、料理では役に立たないのじゃがなと前向きなのか後ろ向きなのかわからないことをいう。細かい仕事を探すのじゃと街の中へ消えていった。
「クラリッサさんは、どうす……ん?」
霧島の視線が、クラリッサを探す。
どうやら彼女はとっくに、街中へ溶け込んでいたらしい。
ふむ、と思案し考えを巡らす。
「面白いものでも探すとしよう」
できれば、新しい銃でもあればいいのだがと颯爽と歩いて行った。
クラリッサはどこへ行ったのか。
もう一つの姿、魔女然とした姿ではない、地味な姿。
そんな姿の彼女を見た者がいたとか、いなかったとか。
あらゆる姿をひた隠し、祭の喧騒やれ高く。
秋のスライム前線を蹴散らして、祭の準備は進んでいくのであった。
秋空の下、草花が揺れる街道沿いにハンターたちは集っていた。
少し先には、小さな雷雲がふよふよと漂っては消えている。
「あきさめぜんせん……のう。と、そんな事より、スライムじゃな」
ハッと我に返り、ルリリィミルム(ka2221)は振り返る。
「スライム……いえ、シュライムですか」
「シュゥウライム。変な名前のスライムですよね」
リズ・ルーベルク(ka2102)とレオフォルド・バンディケッド(ka2431)は、スタッフの発音を思い出していた。
発見者のスライは、発音にこだわっていたらしいが、面倒なので秋ライムとしよう。
「名前は何でもいいけど。折角のお祭りなんだし、余計な横槍入れて欲しくないよね」
秋雨前線とやらも気になるアーシェ・ネイラス(ka1066)は気合を入れていた。
クリムゾンウェスト出身者には聞き慣れないのだろう。
鮫かなぁ、と道中言ってたりもしていた。
が、今回は秋ライムである。秋のスライムである。
「季節に合わせて出てくるなんて、スライムにも繊細なところがあったのですね……」
しみじみとそういうのは、メトロノーム・ソングライト(ka1267)だ。
知性の欠片もなさそうなのに、と酷いことをサラリと思ったりしている。
「だから、名前が秋ライムか。スライムにも色々いるものだな……」
「秋とライムじゃと、酸っぱい香りがしそうじゃな」
霧島(ka2263)にルリリィミルムが、すっと返す。
「まさしく。字面だけで見るととてもスライムのバリエーションには思えんな」
半ば同調するようにクラリッサ=W・ソルシエール(ka0659)も頷く。
それにしても、と霧島は目の前に並ぶスライムたちを望む。
「最近、スライムが多い気がするが……そういう時機なのだろうか」
スライムたちが疑問に答えてくれるはずがない。
プルプルと震えているばかりだ。
「ふむ、何度見てもあのフヨフヨというかヌメヌメした感じは慣れないな……」
「慣れるようなものではないじゃろう。不定形ゆえ、バリエーションがあるのかもしれぬがな」
「い、いや。慣れる前に、と、とにかく頑張って退治しちゃわないとですよ」
そんなやりとりをしていると、J(ka3142)が「さて」と手を鳴らす。
「そろそろ、行きますよ」
淡々と、Jは作戦を確認していった。
「さて、仕事だな」
「女性陣に出来る限り怪我をさせないよう頑張りますよ!」
気合を入れ、また、引き締める。
向かって来ることに気づいたのか、秋ライムたちの体が大きく震えたようにみえた。
●
秋ライムはブルリと身体を震わせると、雷雲を発生させた。
威嚇するように、雷を放出させながら迎撃体勢を取っていた。
雷雲の発生に注意しつつ、メトロノームがまずは近づく。
全ての秋ライムを巻き込むように、青白いガスを発生させたのだ。
スリープクラウド……ガスに包まれた対象を眠りに誘う魔法なのだが、
(スライ先生ならご存知だったかも……訊いておけば良かったですね)
とものは試し。効けば僥倖といったところだ。
ガスが風にあおられ、消えていく。
姿を晒した秋ライムは、一瞬、動きを鈍らせたかのように思えたがピンピンしていた。
効きそうではあるが、耐性があるのかもしれない。
たかが、スライム。されど、スライムなのである。
少し残念そうな気がしたメトロノームの横を、前衛たちが抜けていく。
ルリリィミルムはアーシェにプロテクションを、クラリッサはレオフォルドにストーンアーマーをかける。
「押さえてくるのじゃ」
「任せてよね」
雷雲の隙間を縫い、アーシェは秋ライムに肉薄する。
続けとレオフォルドたちが近寄ろうとするが、雷雲が弾ける。
クラリッサから土くれの鎧を授かったレオフォルドは、他の二名を庇うように先行する。
両手に花、騎士冥利に尽きるというものだ。
「女性が傷つくのを見るのは少し嫌ですからね! 自分の事は気にしないでください!」
大剣で残る雲を散らすように、レオフォルドはまい進する。
霧島はアサルトライフルの照準器を通して、前衛の接近を確認していた。
「これより援護する、そのまま戦っていてくれ……大丈夫だ、味方には当てないよ」
静かに、だが、聞こえるように霧島は告げる。
声を届けた相手は、アーシェだった。いち早く肉薄した彼女の相手に、狙いをつける。
マテリアルが込められた瞳が、スッと細くなる。
あとは、引き金を引くだけだ。
弾丸が秋ライムを穿ち、体躯の一部を散らした。
●
銃声が、本格的な戦闘合図となった。
前衛を担うレオフォルドやJも、互いの動きを見つつ秋ライムを抑えに入る。
Jは自身の動きをマテリアルで補佐し、より素早く立ちまわることで秋ライムを引きつけていた。
感触を確かめるようにパイルバンカーの引き金を引く。放たれた杭が秋ライムに有効であるか、見極めていた。
秋ライムは、対峙するJに対して、強酸を放つ。
「嫌ですね……」と嫌悪感を露わにし、パイルバンカーで払う。
じわりと染み付いたぬめりが、身体を蝕むような感触があった。
防御を抜けてくるのだろうと考え、注意喚起にと声を出す。
「ぬめりに気をつけてください」
その情報が聞こえた時には、レオフォルドは強酸を浴びていた。
しかし、そのほとんどは石塊の鎧と持ち前の持ち前のグローブで防ぎきっていた。
効いていないことを悟ってなのか、秋ライムはぶるりと大きく身体を震わせた。
「自分の腕力と秋ライムの弾力、どっちが強いか勝負ですよ!」
そんなプルプルの秋ライムへ、レオフォルドは大剣を叩き込む。
捨て身の一撃で、秋ライムに迫る……といっても硬さは群を抜いていたのだが。
支援に徹する、メトロノームはウィンドガストをリズへ飛ばす。
リズの周囲を風が取り巻き、強酸を受け流す。
「た、助かります」とリズは素直に礼を述べ、秋ライムに向き直った。
正直、ベトベトの状態で街へ戻りたくはなかった。
お祭りムードとはいえ、べとべととかちりちりとか。
仮装といえば通りそうだけれど、できれば避けたいのだ。
「わわっ」
眼前に迫る秋ライムの粘液を避け、リズはシャドウブリットを放つ。
放たれた黒い塊が、秋ライムを打つ。
たじろぐような動きを見せた秋ライムは、ふるふると震え続けていた。
歌うような旋律で、メトロノームは魔法をかける。
英雄の詩には、火がつきものだ。
火の魔法は少し苦手だけれど、爽やかな風を通すため、焼き払うには必要だ。
赤い光が発せられ、アーシェへ向かう。
火の精霊を宿したノコギリ刃は、激しく燃えているように見えた。
状態の変化は、心にも影響をあたえるのか。
アーシェはひときわ強く踏み込むと、リボルビングソーを振りかざす。
赤い光を宿した武器に、さらに自身のマテリアルをも込めて振り下ろす。
「せぇいっ!」
気合を入れ、一閃。目の前のもの全て吹き飛ばしそうな、勢いでぶつけていく。
炎の力を宿した刃は、秋ライムの身体を大きく切り崩した。
「おぉ」とアーシェ自身も驚くほどだ。
だが、感心している場合ではない。
すぐさま後衛のために、射線を空ける。
霧島の弾丸は、いつも通り秋ライムの身体を突き抜けていった。
続けとばかりに、クラリッサも同じ相手を狙う。
「ふむ。コアのようなものは、ない……か」
じっと観察していたクラリッサは残念そうに呟く。
弱点がわかっていれば、そこを狙えばいい。だが、秋ライムに核らしいものはなかった。
それならばそれで、援護に向かうだけだ。
「妾なりに、な」と気持ちを切り替えて、風刃を走らせる。
畳み掛けられた秋ライムが、やや後退する。
逃すまいとルリリィミルムも、光弾を放つ。だが、前に出すぎた。
ルリリィミルムの死角をついて、雷雲が飛んでいた。
気づいた時には、雷雲がバチリと弾ける寸前だった。
光に目をつむる。
「ぐっ!」
聞こえてきたのは、レオフォルドの声だった。
ギリギリで、相対する秋ライムを牽制しながら守りに入ったのだ。
「まだまだ! 騎士口調を崩すにはまだ足りませんよ秋ライム!」
ストーンアーマーが、この攻撃で崩れ落ちる。
ルリリィミルムの安全を確認したレオフォルドは、攻めの姿勢を崩さず前へ押し返していった。
ルリリィミルムは、
「騎士を語るだけあるのう」
と、お礼代わりのヒールをかけるのだった。
●
その変化に気づいたのは、スライムとの戦闘を重ねていた霧島。
そして、観察を怠らなかったクラリッサであった。
「様子がおかしいのう」とクラリッサが片眉を上げると同時に、霧島が叫ぶ。
「前衛! 分かれるぞ、気をつけろ!」
リズとレオフォルドの目の前で、秋ライムがその体躯を二つに分けたのだ。
これで、数が六体へと増えたことになる。前衛の隙をつき、別れた秋ライムが後ろを狙う。
今度は、レオフォルドの援護も間に合わない。
ルリリィミルムは、防御を固め、雷を受けきる。
「ぐっ」
囲い込まれないよう、後ずさりながら回復を促す。
もう一体も迫っていたが、雷雲を見極めたクラリッサは風刃で散らしていた。
「頭数を減らさないと」
Jが声をあげる。今押さえている相手を逃すわけにも行かない。
かといって、追い迫る秋ライムへ対処を遅らせるのもまずいのだ。
銃声が響き、弾丸が飛び、秋ライムを穿孔して追い詰める。
霧島が二発目の銃弾を浴びせるより先に、アーシェの刃が秋ライムを焼き払った。
「効いてるね。いい感じだよ」
炎の精霊の力を宿した、リボルビングソーは爆発的威力を発揮していた。
メトロノームに目配せしつつ、アーシェはいち早く駆け出す。
目指すは、追いすがる二体の秋ライムだ。
「やはり、機導剣の方がいいか」
光の刃が秋ライムを切り開く。
Jの感覚では、こちらの方がパイルバンカーより効果がありそうだった。
切れ目なく、自身の運動性を高めながら秋ライムへ食らいつく。
戦況を確認すれば、Jより早くレオフォルドが秋ライムを倒しそうであった。
「分裂側への対処は、任せるぞ」
アーシェとレオフォルドに、告げて自分の相手へ向き直る。
こいつは、まだしぶとそうだ。
守るためにも、攻めなければならぬ。
増えた秋ライムが、女性陣を本格的に襲う前に、レオフォルドは目の前の秋ライムを倒したかった。
「……これを」
気分を高揚させるように、メトロノームの詩が響く。
武器が炎を帯びたように発光し、秋ライムへの有効打を増した。
「射線よしです! 雷雲に注意して撃ってくださいね!」
時には身体を外し、後方の攻撃を促す。
クラリッサが風の刃で、秋ライムを切り裂く。
その切れ目を広げるようにして、レオフォルドは横薙ぎに切り払った。
二体目が倒れ、レオフォルドはすかさず後衛の守りに入る。
近距離に迫った秋ライムを吹き飛ばすように、霧島のデリンジャーが火を噴く。
ルリリィミルムが合わせるように光弾で、接近を阻んでいた。
「今から先には、行かせないよ」
追いついたアーシェが、分裂した二体を引き受ける。
続いて、レオフォルドが雷撃からクラリッサらを守るように、割って入る。
分裂した秋ライムは、元の半分ほどしかない。
継続してメトロノームに、炎の力を与えられた二人の攻撃に耐えられるはずがなかった。
後ろで二つの秋ライムが落ちるのを片目で見ながら、Jもとどめを刺す。
効率よく光の剣によって、秋ライムを倒しきった。
視線を巡らせば、リズがまだ残されていた。
分裂もせず、執拗にリズだけを狙い続けた、秋ライムだ。
支援を受けていたとはいえ、戦いが長引けば多少の攻撃は受けてしまう。
「……べ、べとべとする」
避けられない時は盾で受け止めていたのだが、はね飛ぶ粘液は避けられない。
それでも健気に、シャドウブリットを放ち、影の塊で秋ライムを削っていた。
雷雲も漂い始め、チリチリにもなるのかと思ってしまう。
思わず目をつむってしまった……そのとき、
「これ以上はさせませんよ」
声がしたと思ったら、レオフォルドが颯爽と雷雲を散らした。
全員でかかれば、呆気無く秋ライムは地面にしぼむのだった。
●
クラリッサたちは、念入りに秋ライムの残滓が残されていないかを確認していた。
倒しきれていたようで、辺りにそれらしい影はなかった。
互いにヒールを掛け合い、時には自身のマテリアルで回復を促し、傷は治っていた。
が、ベトベトな者はベトベトのままであった……。
祭の準備に勤しむピースホライズンへ向かった、女子陣を見送りレオフォルドは現場に残っていた。
「ピースホライズンの祭りを楽しめなくなったらいけませんからね」
街道整備の手伝いをすべく、ベトベトを落としてツルハシを手にしていた。
やってきたオッサンに申し出て、ズズッと渡されたのだ。
秋風が汗の滴る肌に冷たく触れる。
「こういうのも見習い騎士の仕事……ですかね?」
楽しげな街を見つめながら、レオフォルドは仕事に勤しむのだった。
「ハロウィンの準備で大忙しの様じゃな。もっとも、魔女たる妾は年中ハロウィンの様な物じゃが」
女子一行は、かぼちゃや仮装が入り乱れる街の様子を眺めていた。
逆に街の人々の中には、一行に目を向ける者もいた。
おずおずとリズは、仲間に聞いた。
「は、ハロウィンなら仮装って言うことで……だ、ダメかな?」
「ベトベトのまま、散策はダメだよ」
「そ、そうだよね」とアーシェにきっぱりと言われ、リズはうんと頷く。
「さっさと、風呂に入ってきたらいい」
「は、早く行きましょう」
霧島に言われ、リズはアーシェとともに風呂を目指す。
「私も」とJもついていく。
残されたルリリィミルムは、「我は先んじて手伝いでもするかのぅ」と告げる。
重いものの移動とか、料理では役に立たないのじゃがなと前向きなのか後ろ向きなのかわからないことをいう。細かい仕事を探すのじゃと街の中へ消えていった。
「クラリッサさんは、どうす……ん?」
霧島の視線が、クラリッサを探す。
どうやら彼女はとっくに、街中へ溶け込んでいたらしい。
ふむ、と思案し考えを巡らす。
「面白いものでも探すとしよう」
できれば、新しい銃でもあればいいのだがと颯爽と歩いて行った。
クラリッサはどこへ行ったのか。
もう一つの姿、魔女然とした姿ではない、地味な姿。
そんな姿の彼女を見た者がいたとか、いなかったとか。
あらゆる姿をひた隠し、祭の喧騒やれ高く。
秋のスライム前線を蹴散らして、祭の準備は進んでいくのであった。
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相談の卓です メトロノーム・ソングライト(ka1267) エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/10/07 21:46:53 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/03 07:32:41 |