ゲスト
(ka0000)
最強酒飲み百人一首大会
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/01/11 22:00
- 完成日
- 2017/01/29 01:50
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
冒険都市リゼリオには比較的多くのリアルブルー人が生活している。
「はい、はいっ。いつもよりたくさん回ってます~」
商店の並ぶ往来で傘を回しつつ上に乗せた四角い舛を縦回転させる二人組の姿はもちろん、リアルブルーで見られる大道芸の光景だ。
そして回していた舛を跳ね上げキャッチしてから叫ぶのだ。
「はいっ、おめでとうございます~」
新春を祝う、由緒ある芸だという。
周りでは他に、かこんかこんと小気味の良い音が。
「しまった」
「はい。落としたから罰として墨で落書きね」
羽根突きである。
さらにはコマ回しに凧揚げも。
どうやら日本風の正月を楽しむイベントのようである。
そこに南那初華(kz0135)もなぜかいたりする。
「ええと……あけましておめでとうございます。お汁粉、いかがですか~」
着物「雪兎」姿でお汁粉接待をしている。
「初華ちゃん、そんなことはいいから初華ちゃんはこっち!」
おっと、背後の方から呼ばれたぞ。
「えーーーー。私、売り子でいいよぅ」
「ダメじゃダメじゃ! 初華ちゃんがお酒飲んでほんのり赤くなっとるところが見たいんじゃ!」
呼んだのはどうやら、助平商人のようで。
「そうそう。初華ちゃんがいたら盛り上がるからの。ちょうどいい。そこにいるなら飛び入り参加も募っとくれ」
「じゃの。羽突きなんかは外じゃから目立つが、『最強酒飲み百人一首大会』は屋内じゃからイマイチ参加者がおらんし、特に観客がおらん」
「誰が一番酒に強くて、頭の回転も素早さも落ちずに強いかを競う大会じゃ。うまそうに参加者の飲む酒を観客も購入して飲んで初めて興行が成り立つ。しっかり客引きもしてもらわんとの」
ほれほれ、合わせを緩めて肩出して視線を流しながら客引きして、とか好き放題に衣装を弄られる。
「ひぃ~ん」
「ほれ、化粧をしてやろう。女性客には化粧品や着物も売らなくちゃならんからの。綺麗なべっぴんさんの美人にしてやるからの~」
別の商人は初華の唇に紅を引くなどメイクメイク。
あっという間に、それなりに美人の初華の出来上がりである。
「ほれ、ええじゃろう? これで肩出して流し目くれてやれば初華ちゃんの魅力に男どもはメロメロで客としてたくさん入って来てくれるぞ」
「え? ほ、ほんと?」
泣き出しそうだった初華、化粧してもらって手鏡で見せてもらってすっかり機嫌が直った。
「そ、その……私と飲み比べ勝負、してください……」
うっふん、とさらした白い肩をすくめてウインク。
「いよっしゃあ!」
「まっとれ、ワシがメロメロにしちゃらぁ!」
途端に集まる男ども。腕まくりしたり鼻息荒かったりで身の危険を激しく感じる初華だったり。
「ちょ、ちょっと……百人一首大会だってば。女性の人も来てーーーっ!」
初華、慌てて助けを求める。
「化粧の体験もあるぞい」
商人の口添えに、「あら」、「まあ」と女性も寄って来た。
ただし。
大会は決められた酒量を飲んで酩酊した状態で読み上げられた札を取り合う百人一首大会。前提である酒の強さが実は問題で、多くの人がここで脱落した。
結局、残ったのはハンターたちばかりだったり。
初華もおかげさまで鍛えられて、特別製の強い酒を数種類飲むだけの一次予選を通過した。一般人だととても厳しいのだ。
「それでは、次はこの十種類の日本酒の中から五種類を選んで飲んで、百人一首大会に臨んでください」
激闘の開始である。
なお、選んで五種類飲む酒は、以下の十種類。
今回は戦国武将にちなんだ銘柄の日本酒で、上ほど端麗辛口、下に行くほど甘口芳醇になる。
A)毘沙門天ケンシン
B)マサムネ独眼竜
C)風林火山シンゲン
D)ノブナガ下天の舞
E)名工蓋モトチカ
F)基督教ソウリン
G)金貨頭ミツヒデ
H)三本矢モトナリ
I)三ツ葵イエヤス
J)一夜城ヒデヨシ
全員が五杯飲んだのち、百人一首開始。
読み上げられた下の句の札を取り、一番多くとったものが勝者となる。
ただし、酔いつぶれれば取った札は没収。必然的に最後まで酔いつぶれていない者、つまり合計酩酊度が低く、敗北フラグ酒を飲んでない者が勝者となる。
また、和室での百人一首だが、武器と盾の持ち込みはOKで反則はスリーカウント以内であればセーフ。縁側から庭に出ての場外乱闘はテンカウントまでに戻らないとリングアウト負けになる。
注意事項:観客を集めたショービジネスである旨を理解して参加すること。ショーを逸脱する攻撃などは禁止。同じ理由で範囲攻撃や遠距離攻撃は禁止。武器や防具は自由だが、観客に誤って危害を加えてしまわないもの限定。
「はい、はいっ。いつもよりたくさん回ってます~」
商店の並ぶ往来で傘を回しつつ上に乗せた四角い舛を縦回転させる二人組の姿はもちろん、リアルブルーで見られる大道芸の光景だ。
そして回していた舛を跳ね上げキャッチしてから叫ぶのだ。
「はいっ、おめでとうございます~」
新春を祝う、由緒ある芸だという。
周りでは他に、かこんかこんと小気味の良い音が。
「しまった」
「はい。落としたから罰として墨で落書きね」
羽根突きである。
さらにはコマ回しに凧揚げも。
どうやら日本風の正月を楽しむイベントのようである。
そこに南那初華(kz0135)もなぜかいたりする。
「ええと……あけましておめでとうございます。お汁粉、いかがですか~」
着物「雪兎」姿でお汁粉接待をしている。
「初華ちゃん、そんなことはいいから初華ちゃんはこっち!」
おっと、背後の方から呼ばれたぞ。
「えーーーー。私、売り子でいいよぅ」
「ダメじゃダメじゃ! 初華ちゃんがお酒飲んでほんのり赤くなっとるところが見たいんじゃ!」
呼んだのはどうやら、助平商人のようで。
「そうそう。初華ちゃんがいたら盛り上がるからの。ちょうどいい。そこにいるなら飛び入り参加も募っとくれ」
「じゃの。羽突きなんかは外じゃから目立つが、『最強酒飲み百人一首大会』は屋内じゃからイマイチ参加者がおらんし、特に観客がおらん」
「誰が一番酒に強くて、頭の回転も素早さも落ちずに強いかを競う大会じゃ。うまそうに参加者の飲む酒を観客も購入して飲んで初めて興行が成り立つ。しっかり客引きもしてもらわんとの」
ほれほれ、合わせを緩めて肩出して視線を流しながら客引きして、とか好き放題に衣装を弄られる。
「ひぃ~ん」
「ほれ、化粧をしてやろう。女性客には化粧品や着物も売らなくちゃならんからの。綺麗なべっぴんさんの美人にしてやるからの~」
別の商人は初華の唇に紅を引くなどメイクメイク。
あっという間に、それなりに美人の初華の出来上がりである。
「ほれ、ええじゃろう? これで肩出して流し目くれてやれば初華ちゃんの魅力に男どもはメロメロで客としてたくさん入って来てくれるぞ」
「え? ほ、ほんと?」
泣き出しそうだった初華、化粧してもらって手鏡で見せてもらってすっかり機嫌が直った。
「そ、その……私と飲み比べ勝負、してください……」
うっふん、とさらした白い肩をすくめてウインク。
「いよっしゃあ!」
「まっとれ、ワシがメロメロにしちゃらぁ!」
途端に集まる男ども。腕まくりしたり鼻息荒かったりで身の危険を激しく感じる初華だったり。
「ちょ、ちょっと……百人一首大会だってば。女性の人も来てーーーっ!」
初華、慌てて助けを求める。
「化粧の体験もあるぞい」
商人の口添えに、「あら」、「まあ」と女性も寄って来た。
ただし。
大会は決められた酒量を飲んで酩酊した状態で読み上げられた札を取り合う百人一首大会。前提である酒の強さが実は問題で、多くの人がここで脱落した。
結局、残ったのはハンターたちばかりだったり。
初華もおかげさまで鍛えられて、特別製の強い酒を数種類飲むだけの一次予選を通過した。一般人だととても厳しいのだ。
「それでは、次はこの十種類の日本酒の中から五種類を選んで飲んで、百人一首大会に臨んでください」
激闘の開始である。
なお、選んで五種類飲む酒は、以下の十種類。
今回は戦国武将にちなんだ銘柄の日本酒で、上ほど端麗辛口、下に行くほど甘口芳醇になる。
A)毘沙門天ケンシン
B)マサムネ独眼竜
C)風林火山シンゲン
D)ノブナガ下天の舞
E)名工蓋モトチカ
F)基督教ソウリン
G)金貨頭ミツヒデ
H)三本矢モトナリ
I)三ツ葵イエヤス
J)一夜城ヒデヨシ
全員が五杯飲んだのち、百人一首開始。
読み上げられた下の句の札を取り、一番多くとったものが勝者となる。
ただし、酔いつぶれれば取った札は没収。必然的に最後まで酔いつぶれていない者、つまり合計酩酊度が低く、敗北フラグ酒を飲んでない者が勝者となる。
また、和室での百人一首だが、武器と盾の持ち込みはOKで反則はスリーカウント以内であればセーフ。縁側から庭に出ての場外乱闘はテンカウントまでに戻らないとリングアウト負けになる。
注意事項:観客を集めたショービジネスである旨を理解して参加すること。ショーを逸脱する攻撃などは禁止。同じ理由で範囲攻撃や遠距離攻撃は禁止。武器や防具は自由だが、観客に誤って危害を加えてしまわないもの限定。
リプレイ本文
●
「わあ……」
十色 乃梛(ka5902)が南那初華(kz0135)を見つけ目を輝かせた。
(いいなぁ)
化粧をしているのを見て目を輝かせる。しかも着物姿。
(大人な魅力があるなぁ……)
乃椰、羨望の眼差し。手を置いた自らの胸はぺったんこで、そこも羨ましい。
そうして眺めていると。
「え? ほ、ほんと?」
初華、肌を晒してうっふんとかやって男どもが興奮して、きゃーとか慌てたり騒がしくなった!
(大変、助けなきゃ!)
乃椰、フリルワンピをふわふわ揺らしながら駆けつける。
ところが。
「よー、初華。何やってんだ? え? 酒の飲み比べでヒャク何とか? おぅ、いくらでも相手になってやるぜ!」
「ボルディアさん、助かったよぅーーーっ!」
いち早くボルディア・コンフラムス(ka0796)が初華を助けに入っていた。初華をメロメロに酔わせようとした男ども、姉御肌のボルディアを見てぐぎぎ、とあきらめる。
「あっ。乃椰さんも? わぁい、嬉しいなぁ」
「え? えーっ!」
あ。初華に見つかってむぎゅりと捕まった。
もう逃げられない。
さらに人影が寄って来る。
「今回はクレープじゃないのか?」
残波源弥(ka2825)である。長身を屈めて初華に聞く。
「ううん。えっとねー、百人一首!」
説明した時、けだるげに横を通る者がいた。
「なんだよぉー……タダ酒飲めると思ったら百人一首やるって?」
ハスキー(ka2447)である。ぼりぼりと頭をかき残念そうにしているが……。
「百人一酒か、また風流な物を」
「ちょっと源弥さん。『いちさけ』じゃないんですからねっ!」
「『いっしゅ』って言ったはずだが……何で伝わるんだ?」
指差す初華。どうやら源弥、酒のつまみを持っていた様子。
「まぁ、酒飲めるんなら代金と思って参加するかねぇ……」
これで帰りかけていたハスキー、回れ右。「百人一酒」が気に入った。
「うむ、百人一首か!」
ここで後光の差す幼女登場!
「かの地でいうカルタじゃの。カルタと言えば畳の上の戦闘。……うむ、戦場がミグを呼んでおる」
ミグ・ロマイヤー(ka0665)である。縦ロールはいつも通りだが、簪を後光のようにざくざく差して三つ葉のぽっくりにド派手な着物というぞろりとした出で立ちだ。
「あの、ミグさん?」
「ブルーアースの最新サブカルチャーは幼女、軍人、戦争じゃ。つまりミグの時代が来たんじゃ。良い時代になったのう」
掛けられた声にもこたえず初華に微笑み、からから笑って会場へ行くミグである。というか、幼女は混ぜるな危険。
「あぁ、カルタね、なるほど。酒の余興としちゃあ悪かねえな。いくぜ!」
納得したボルディアも続く。
「……戦場と、酒?」
ああ、ミグの説明の犠牲者がここにも。ジーナ(ka1643)が「ブルーアースとはリアルブルーの事だな?」と会場へと入って行く。すでに雰囲気に合わせて藍染浴衣だ。白い肌と短い銀髪が藍色に合う。
「華やかですねえ。クールブルーです」
Gacrux(ka2726)もやって来た。
「クール……何?」
初華、聞きとがめる。
「初華の衣装が素敵だ、ということですよ」
「いや待て、いや待て!」
おっと。トリプルJ(ka6653)が待ったをかけた。
「Jさん? 私の衣装、ダメかな?」
へにょ、と落ち込んだ初華。隣にいた乃椰、着物試着コーナーへいく足を止めた。
「いや待て、そうじゃない! いくらリアルブルー出身でも全員が一地域の風習に通じてるわけじゃないんだよ」
「あ、そか。日本だけだもんね」
初華、Jの見解に納得。乃椰、自分のフリルワンピ姿を改めてしげしげと見ている。
「まあ、そうだな」
鞍馬 真(ka5819)もひっそりと会話に参加。
「あれ? 真さんって……日本だよね? 名前からして」
「日本人かどうかはともかく、日本人なら全員寿司を握れるわけではないな」
「あ、そか」
「あら。それじゃ横一線のスタートって考えていいのね?」
マリィア・バルデス(ka5848)もやって来た。相変わらず銃を持っている。
「強い酒には興味あるのよね。やれる範囲で頑張るわ。そろそろ優勝したいもの」
「来ましたよぅ、私がもっとも輝くイベントがぁ!」
マリィアがポーズを決めてウインクしたところで、星野 ハナ(ka5852)がにぎやかに登場!
「今回もガチで優勝目指して頑張りますよぅ!」
「これで前回優勝者と準優勝者が揃ったってことだね」
霧雨 悠月(ka4130)も近寄って来た。前回の結果を言ったことで周りが「おお!」とどよめいた。自らのスカートをつまんで見ていた乃椰、突然の盛り上がりにびくっと一歩下がる。
「ついでに、酔いまくった酔いどれ王も初代と二代目が揃いましたけどね」
ふふっ、とガクルックスがハナの隣に立ったり。
とにかく周りからマークされた。
時は若干遡る。
「セルゲン、なんかにぎやかだねぇ」
「ああ、そうだな」
桔梗などが艶やかな少し大人びた雰囲気の着物を着た無雲(ka6677)と、黒地に艶やかな真紅の椿が施された正月の晴れ着姿のセルゲン(ka6612)が連れ立って歩いている。イベントの雰囲気を二人で堪能中だ。
その横を、まるで妖精のように埴輪を肩に乗せたアルト・ハーニー(ka0113)が颯爽と歩いて行く。
「さて、今日はここで埴輪の魅力を……ん? 酒飲み百人一首?」
アルト、初華たちを発見し看板に目ざとく気付いた。
「ま、酒が飲めれば結果はどっちでもいいさね。美味しい酒があるといいんだがねぇ」
呟きそちらへ。肩に乗った埴輪は汗たら~しているようにも見える。
「セルゲン、お酒だって♪」
アルトの行く方を見て無雲がセルゲンの袖を引いた。というかもうぐいぐい引っ張っている。すでに逆らえない勢いである。
「大丈夫なのか、無雲……ん? 南那殿?」
セルゲン、騒ぎの中で困っている初華を発見。仕方ない、と引くに任せられるのだった。
ちなみにこの時、別の場所では白樺 伊織(ka6695)が騒ぎを眺め金色の瞳を見開いていた。
「にぎやかな催し……運営している人があんなに頑張ってるからですね」
何気に勘違いというか、過大評価が交っているのは伊織の人柄だろう。
初華の慌てている姿を見て伊織も吸い寄せられるように近付いて行く。
時は戻り、一歩引いた乃椰。
「へえっ。優勝候補がそろってるのかー。ボクも頑張っちゃうぞ~♪」
背後から無雲の元気な声がした。さらにびくっとする乃椰。
「南那殿、世話になる」
もちろんセルゲンも一緒だ。無雲にも初華にも心配そうな視線だが。苦労性かもしれない。
「お酒が飲めると聞いて参上さね!」
もちろんアルトも来ている。ぴしっと決めポーズ。
「え? 着付けしてくだるのですか?」
伊織は手招かれるまま着付けの方に。これが命取りとなるが、それは後の話となる。
「よう、初華。今回はどんな酒があるんだ?」
入れ替わりに、きょうも赤装束のレイオス・アクアウォーカー(ka1990)がやって来た。
「あっ、レイオスさん。今回は日本酒よっ!」
「良く分からんが楽しみだ!」
「えっ!?」
酒なら何でもいいレイオスとは別に、偶然近くにいた水城もなか(ka3532)が過剰反応していた。
「こんなところで日本酒? ロッソからの品ですか? それとも地元の酒とのブレンド?」
もなか、さらさらストレートな髪を耳の後ろに掛け前のめりになっている。
その横から、メルクーア(ka4005)。
「まあ、お酒なら飲んでみるに限るわよねぇ。初華さん、来たよ~♪」
明るく挨拶するメルクーア。早速初華に「私のお酒の師匠が来てくれた! 心強い~」とだきゅむぎゅ。
「確かにとりあえず飲んでみるべき。これは偵察ですっ」
もなかももろちん負けていない。参加である。
「あれ?」
ここで悠月が気付いた。
「キーリさん……参加するんです?」
いつの間にかキーリ(ka4642)が横にいたのだ。
「ユッキーが『最近すっかり嗜むようになっちゃったんだ』っていうから来てみたのよ。いけない?」
「いや、いいけど。キーリさんて年齢……」
瞬間、キーリの眉がぴくっとなった!
「……まあ、ここにいる時点で成人なのは確定よね。別に隠してる訳じゃないけど。年齢誤魔化してる訳じゃないけどっ!」
「そう?」
汗たら~する悠月。
と、ここでかろんころんとぽっくりで急ぐ音が響き渡った!
一足先に会場に行ったミグが長駆戻って来たのだ。しかもものすごい勢いでっ。
「女性に年齢聞くでない!」
ミグ、力いっぱい吠えた。
「ま、ミグは別に関係ないがの」
「……ミグさん、それ言いに戻って来たの?」
自分がいいなら別にいいじゃん、な初華。
「いいからとにかく会場に急ぐのじゃ!」
かろんころんという音を先頭に、ぞろぞろと移動する。
「腹が減っては戦はできぬ、ってな」
源弥は無料で振る舞われている雑煮をもらっていたらしく、餅をぐーんと伸ばしはふはふ食べつつの移動である。
●
さて、会場の畳の間。
すでに酒盃に以下十テーブルに一種類の酒が用意されている。上ほど端麗辛口、下に行くほど甘口芳醇らしい。
なお、「ノブナガ下天の舞」が一番強い酒だと知らされている。
A)毘沙門天ケンシン
B)マサムネ独眼竜
C)風林火山シンゲン
D)ノブナガ下天の舞
E)名工蓋モトチカ
F)基督教ソウリン
G)金貨頭ミツヒデ
H)三本矢モトナリ
I)三ツ葵イエヤス
J)一夜城ヒデヨシ
さて、そのノブナガのテーブル付近で。
「ええと……」
「すまない。通してくれ」
初華がまず最初にどのテーブルの酒を取るか迷う前を真が横切った。
「真さん……ノブナガ飲むの?」
「ああ。一番強い酒だが、だからこそ最初に飲んでおけば気が楽だからな」
真、涼しい顔……というか、割と素直な性格だ。大酒飲み大会で強い酒を敬遠しては悪かろうとかいう気配りもしているに違いない。
「そりゃそうだ」
Jもここだ。
「やっぱり1番強い酒を飲んで優勝するっていうのに憧れるだろ?」
「そ、そうだよね、Jさん」
初華、よせばいいのに頷いた。
「少しは酒に強くなってきたみたいね、初華さん。嬉しい限りだわ~」
先にこのテーブルにいたメルクーアがにこにこ。くいっとやってから「ん、なかなかね」とか余裕の様子。
「っていうか、メルクーアさんもボルディアさんもマリィアさんも無雲さんもっ。何でさも当然のようにここにいるのよっ」
「いや、当然だろう?」
かぱっ、とノブナガを干したボルディア、何を言っているんだ、という感じで初華を見返す。
「一番強い酒も飲まずに最強になってもね?」
マリィアはウインクしている。
「あははははっ♪ 南那も飲もう♪」
「初華でいいよう」
半分まで飲んでいた無雲は初華とかんぱ~い、してから飲み干す。きゃいきゃい。
これを、一人モトナリのテーブルにいたセルゲンが見て口元を引き締めていた。
「……無雲、すでに酔っているな。南那殿も怪しいが」
「一人でのんびりだな」
そこに源弥と伊織がやって来た。
「早飲み競争ではないからな」
セルゲン、ちびり。少しうずうずしているのは自分もノブナガに挑んでみたいからだ。
「そうか? 酒が飲めるんだ。駆け付け5杯、6杯目ってな。楽しむもんだ」
「ヒデヨシを飲んだ後です。着付けで遅れましたから、急いで飲みます」
くいっとモトナリを干す源弥。一緒にやって来た伊織は急ぐ個人的理由を話す。もちろん、まだ周りも一杯目。おっとりさんなだけに、周りに合わせようと頑張っているのだ。
「そうか……ん、甘いな」
改めてモトナリをくいっと飲んだセルゲン。漏らした一言に伊織が会釈する。
「はい。甘口のお酒は蜜のようです。飲み口が優しいので量を誤りそう、です」
というか、顔が赤い。
伊織が一杯目に飲んだヒデヨシも今飲んだモトナリも甘い。すでにいろいろ誤っていそうである。
ちなみに、一杯目にケンシンを選んだ者も多い。
「ふ、勝負には興味ないが見るものには喜んで貰わないとな? 俺の埴輪の宣伝にもなるしねぇ?」
アルトは一番目立つと見てここから飲む。肩の埴輪は客の方を向いて愛嬌を振りまく様に手を挙げ……おっと、埴輪はいつも片手を上げているか。
「ま、何だっていいんだがよ。……手前がケンシンならそれからでいいよ。お、燗あがった?」
ハスキー、選んだというか自堕落にこのテーブルに寄り付いたようだ。
「度数が分からないなら味で尖った物を」
ジーナはきりっと言い捨てて一気に飲む。判断に切れがある。思い切りもいい。とはいえ、「…なるほど…これがリアルブルーの、酒か…」と、飲んだ後はじっくりと味わっている。
「最初が肝心でぇ、最後はもっと肝心ですぅ」
ハナはここで飲んだのち、隣のマサムネに。
「一気じゃ一気じゃ」
ミグはこともなげにかぱっと開けてからかろんころんと一つテーブルを飛ばしてシンゲンに。
で、マサムネテーブル。
「ふぅ、ごちそうさま」
飲み干した悠月がふらっと次のテーブルに行こうとしている。
それはいいのだが、その隣の赤い人。
「数の子は辛口で飲ると塩気を洗い流せてちょうどう良い感じだな」
何とレイオス。持参のおせちを肴によろしくやっているではないか。
「けふんっ!」
乃椰もマサムネを飲んでいた。大人な辛口に思わず可愛らしくむせていたり。
「伊達巻き、どうだ?」
「あ、すいません……」
レイオスの好意でなんとか立ち直る乃椰。
「そんなに辛いですかねぇ。何なら一緒に甘いお酒に行きません?」
ハナも一気飲みし、乃椰を連れて甘い酒の方に行く。
「栗きんとんと芳醇なのも甘い同士でいけるぜ」
持ってけ、とおすそ分けするレイオス。後の話になるが自身もヒデヨシを飲みつつ栗きんとんで気分よく締めた。
「ふ、確かにいける」
ちなみにアルトも流れて来ていた。レイオスのお相伴に預かっていたり。肩の埴輪が興味深そうにのぞき込んでいるように見える。
そしてシンゲンテーブル。
「百人一首はですね……」
もなかがシンゲンを優雅にやりつつ説明している。すでに着物姿に着替え、さらさらストレートだった髪は豊かにアップでまとめている。軍服姿に見慣れた者が見ると、きっと目を見張るに違いない。
「詩を読み上げ札を取る、と……ほう、洒落た遊びですねえ」
聞いていたのはスーツ姿のガクルックス。酒を飲みつつうんうんと優雅なものだ。
が、平和は破られた。
「言ったであろう、畳の上の戦闘じゃ!」
「へっ……ハンター同士の遊びなんてスリル満点じゃねぇか」
ミグとハスキーがにぎやかに乱入。
「……大丈夫ですか?」
ガクルックス、武闘派の来訪で一緒に飲んでいたもなかを気遣ってみた。
「え? お酒ですか? 嗜む程度には飲みますけど、あまり強い方では……」
もなか、不安そうに勘違い。
「……リアルブルーにいた時に飲み会で少し飲みすぎた次の日に皆に避けられた記憶ならありますけど」
が、けろりんとしてそう結ぶ。
「それならなにより。それにしても皆さん着物で絢爛ですね」
これは余計な心配でした、とガクルックス。女性の着物姿を楽しみつつ飲む姿勢に戻った。
「あ、キーリさん。……大丈夫? 元気なさそう?」
悠月も二杯目はここだ。同じく二杯目、誰もおらずソウリンを一人孤独に飲んで流れて来たキーリを見つけて話し掛ける。
「お酒ねー、良く分からない世界ねー」
キーリ、少しセンチメンタル?
「うーん、どうだろう。僕は色んなお酒を味わって飲んでみたいんだ」
「楽しそうに言うわねー」
「そういうもんじゃない? ふふ」
「まあ、見世物として面白いのは理解してる。というわけで、飲みましょうか」
何だか吹っ切れたようで、思いっきり飲む。
そう。
見世物。
参加者の飲む姿を見て、見物人にも酒を購入して大いに飲んでもらうのだ。
「はぁい、美味しいわよ、これ」
マリィアが最後の一杯にモトナリを選んで飲み、観客に手を振った。
「だんだん慣れてきました」
乃椰、皆のフォローもあり美味しく……ああっ。味が気に入ったか、最後にモトチカを連続で飲んだ。ここで失格だが見世物なのでそのまま順位資格のないままゴー。
「俺のカンじゃ、これなんかヤバい酒だぜ?」
Jは最後の一杯にモトチカを選んだ。嗅覚を研ぎ澄ませ、強そうな酒を選んで飲んでいた。果たしてどうだろう。
「あはは~♪ にゃんだかふわふわしてきたぁ~?」
「おい、無雲」
無雲はどうやら笑い上戸。明るく笑顔でゆらゆら。着物の裾やらが緩んできてるのに気付いたセルゲンが慌てて駆け寄る。最後は二人で一緒にマサムネを飲んで準備完了だ。
「ううう……」
「初華、無事か?」
平常心を保ち最後の一杯、ケンシンを飲んでいた真。ふらふらしている初華に気付き支えてやる。仮に恋人が参加していればきっとこのような優しさを発揮していたであろう。
「んん~、キリッとした切れ味。最高~」
同じく最後の一杯にケンシンを選んだメルクーア、飲んだ酒の感想を言いつつ楽しくやっている。先はイエヤスを飲んで「まろやかで、女性でもいけそうね」などとも言っていた。おかげで女性客も酒を購入している。どうやら客の目と売り上げを意識しているようでもある。
「百人一首って坊主を引いたらダメなヤツだよな?」
「ヒャクニンイッシュは……うん、そんなもんだ!」
レイオスとボルディアはわははは、とすでに宴会状態。飲んでつつくおせちの重箱はそろそろなくなりそうだ。二人の会話はぐだぐだだが様子はしっかりしているのが何というか。
「じゃ、今回も一番強いお酒を最後に頂くよ」
「奇遇だな」
悠月が最後にノブナガを飲み干た。ジーナも同じ考えだったようで最後に強い酒を飲み、立ち上がる。
さあ、楽しい百人一首の始まりだ。
●
「反則は10カウントまで。ダウンはスリーカウントで敗北、いいね?」
縁側を開け放ち客のいる庭園に向いた和室に並ぶ参加者に、レフェリーが説明した。
「百人一首はよく分からないが、読まれた札を取れば良いんだろう?」
セルゲン、たすき掛け着物の袖をまとめ気合を入れる。
「なるほど……続く下の句を取る。了解です」
伊織、目の前の札を確認。
「えーと、乱れて今朝はものをこそおもへ……」
Jもクリムゾンウェストの連中に負けまいと必死に目の前の札を確認中。
「昨晩は乱れたの、Jさん?」
「んふふ、こんな風に、ですかぁ?」
そこに初華とハナが茶々を入れたり。
「いきなり服を乱して言うんじゃないよ」
「きゃー」
「もっと乱れてしまいますぅ」
J、初華、ハナのどたばた。
「はいはい。始まらないでしょ」
「何を漫才やってるんだ」
「さー、頑張るわよ」
ハナに銃口を向けるマリィアとJにハリセンですぱーんと突っ込む源弥。初華は楽しそうなメルクーアに回収されたり。
「では行きます。『秋風の たなびく雲の 絶え間より』……」
そんな中、読み手が1枚目を詠んだ。
――すっ。
「『もれいずる月の 影のさやけさ』……たしかこれだ」
あっ、と皆が顔を上げた。
下の句を詠まれる前に普通に手を伸ばして目の前の札を取ったのは、真だった。
「うろ覚えだが、秋らしい慎ましい句だったはずだ」
真、お見事。リアルブルー知識の勝利である。
「なるほどなぁ。詠まれる前に取れってか」
ボルディア、コツはつかんだと腕まくり。
「まあ、目の前のは取るがな」
レイオスは派手な羽織と孔雀羽の団扇を煽ってあくまで新春らしく。
「二枚目。『今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人』……」
下の句を少し詠んだ時だった!
「もらったさね!」
アルト、オーラに開放し突っ込む。背後に巨大埴輪が浮かぶ。肩の埴輪もくわっと目を剥いているか。とにかく狙うは『人の命の惜しくもあるかな』。
「確保します!」
おっと、横からもなかが……ああっ。容赦ないボディーブローだ!
――どごぉ。
「ぐはっ!」
アルト、吹っ飛ぶ。
「もらったわよ!」
そのアルトの影から運動強化で俊敏な、小さいメルクーアがずささと滑り込んで確保した。
「んふふ、やりますねぇ」
札をかすめ取られたもなか、不敵に笑う。
「待つさね」
が、札を指差すアルト。
「あ、埴輪?」
メルクーアの手が乗った札には、アルトの肩にあった埴輪が手を付くように乗っていた。
アルト、ニヤリ。埴輪もニヤリ、か?
しかし!
「これ、反則よね?」
メルクーア、あっさりと埴輪をぽいっ。埴輪、角度で涙目のように見える。
時は若干遡り、『人知れずこそ 思ひそめしか』の札の場所。
「あれか?」
セルゲン、「人」だけ聞いて見切り発車。
「あはは、うぇーい♪」
それを追い越し無雲が震撃で一直線。
ところが無雲、くるくると横に吹っ飛んだ。
「これは渡せないねぇ」
レイオスが鉄扇で下から上に巻き上げたのだ。
「あはは、気持ちいい~」
無雲はきゃっきゃと喜んでいるが。
「うふふふ、私が二人見えてもそれは酔っぱらってるからですよぅ」
セルゲンの方は御霊符の分身を出したハナが止めた。
「させないわよ」
そこにマリィアが横から割り込む。銃を持った手でクローズコンバット。撃ちはしないが相手の手を払いつつ札に……。
「おおっと失礼!」
ここで突風。札が飛んで逃げた。
「悪く思わないで下さいねぇ?」
ガクルックスが鉄扇で煽ったのだ。そのまま取りに行くが……。
「おっと、悪ぃなコイツは頂いたぜぇ?」
だらけていたハスキーがこの時ばかりは俊敏に札を確保。札をひらひらさせつつまただら~っと。
「さすが優勝候補らの争いは激しいねぇ」
ハスキー、マークしていたようだ。
同じく時は若干遡り、『人こそ知らね かわくまもなし』の札。
「ええと……」
悠月、一瞬迷っていた。
そこを、がしっと誰かにつかまれた!
「何やってんの、ユッキー。突っ込むわよ?」
キーリである。
「ちょ、キーリさん! さっきまでと様子が!」
「やるからには本気の本気よー」
テンション低く座っていたのに悠月をヘッドロックしたまま札に突っ込んだ!
「ちょっと、私もそれ欲しいんだから~!」
おっと。初華もダイブしているぞ?
「おお、札鳥か!」
ミグも行くが、あらら、着くずれ足もつれでふらふらっと札の方に。
――どし~ん!
ちなみに源弥もその札を狙っていた。
が、キーリが巧みに悠月を盾にしていた。
それでも手だけは伸ばしていた。悠月の向こうには、女性3人が札の場所に倒れ込んでいた。
「幼女好きなのかえ?」
伸ばした手の先で、ミグが着物を着崩し悩ましく身を横たえて悩殺ポーズを取っていた。
「違う。店長は無事か?」
源弥、初華を気にする。
「むぎゅ」
初華、一番下に押しつぶされていた。
「ツー、スリー!」
レフェリーがカウントスリーを告げて初華、KO。
さらに時は若干遡り、『人づてならで 言ふよしもがな』の札。
「手段は選ばん!」
J、全部聞かずに突っ込んだ!
「スカートめくれませんように!」
乃椰、小柄な体全体でJの懐に潜るように滑り込んでいる。
「させない」
が、ジーナの鉄扇がするどく一閃。乃椰の手がつく前に札を吹き飛ばしてしまった。
そのうえで回り込みつつ確保に滑り込むジーナ。
そのとき!
「さあ、捕るぞ~! わはははは!」
――どしーん!
ボルディアが体全体で取りに行くという名のボディプレス。ジーナが下敷きになりむぎゅり。
さて、札の行方は……。
「楽しいですね」
皆の楽しくじゃれあう(?)姿を見てにこにこしていた伊織の前に落ち、優雅に拾われていた。
ここで、詠み手が改めて下の句を読み直す。
「『人づてならで 言ふよしもがな』です」
「まあ♪」
伊織、1枚ゲット!
●
死闘は続く。
「『いにしえの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に』……」
「はいっ!」
すぱっと悠月が取った。
「ユッキー、やるじゃないー」
「もう迷わないよ」
キーリに言う。どうやら吹っ切れたようだが……。
「ふーん、いつもと違うー。あんたもー実は私の事ヘンテコえるふだと思ってんでしょー」
あらら。キーリ、目がすわっているぞ。なんか力なくしなだれるように絡んでくる。
「ちょっとキーリさん。いつもと雰囲気が違う気が…」
後ずさる悠月だったり。
死闘は続く。
「あははー。おなかすいたねー、せるげん♪」
「……口の周りがチョコ餅だらけだ」
おやつ中の無雲。セルゲン、絡まれて札どころではない。自ら持参した菓子類も実は無雲の腹減り用だったりする。
死闘は続く。
「よし!」
「うむ」
Jと真が同じ札に突っ込んだ。
「全部お酒のせいだと思いますぅ気のせいですぅ♪」
そこにハナが札や符をぶんぶん振り回しながら割り込む。
「おっと」
真、回避。
「理不尽に絡まれてもな」
ここで横からジーナが少しの隙間を抜けて出て来た。
「おい、ちょっと……」
J、運悪く逃げる方を塞がれハナとごっちんこ。
「……すまん。邪魔するつもりはなかったが。しかし全力だな」
「いいんですよぅ。遊びに全力尽くさずに何に全力尽くすんですぅ?」
気にするジーナ。ハナは悪く思ってない。
「俺の立場は?」
ハナの下敷きになっているJはそうでもないが。
「これが猫と鼠が仲良く喧嘩しな♪している状況なのですね」
伊織はくんずほぐれつの戦いをほんわりした様子で見守ってて、ご満悦♪
死闘はやっぱり続く。
「こうすれば確実だよね」
メルクーア、滑り込みつつ札を取り場外に逃げていた。これなら初華のようにはならない。
「お客さんも飲んでる~?」
作戦が決まっていい気分のメルクーア、そのまま観客とハイタッチ。
「仕方ないわね。……どう、飲んでる?」
メルクーアと同じ札を狙い競っていたマリィアも場外だ。付き合って観客の盛り上げに一役買う。
「あっ。面白そー」
ぴぴん、とその様子に反応したのは無雲。一緒に庭園に下りて客とぱしんぱしんとハイタッチ。楽しそうだ。
「おい、カウント5まで来たぜ?」
「戻った方がいい」
レフェリーのカウントは観客の方が気にしていた。
「あら、じゃそろそろ」
マリィアは手堅く戻った。
「あんたは?」
「8なら余裕で戻れるわよん♪」
メルクーアはスキルで一気に戻るつもりだ。
「エイト!」
レフェリーが宣言した時だった。
「それじゃ」
「あははー♪」
メルクーアと無雲、楽しそうに一緒に戻る!
――どしーん。
「えへ」
乃椰、不可視の境界を作り二人を足止め。リングアウトで二人が失格となった。
その乃椰もすでにふらふらだ。
「冬場とはいえ、室内でこの人数……暑くなってきたわ」
フリルドレスの胸元のボタンに手を掛けた。
「さぁ~次いきまひょ~! ンフフヒァ~♪」
もなかはなんかもう危ない感じ。先ほど立体攻撃で上から札をとる大技をかましたのが影響しているか。というか、脱ぎ始めたよこの人!
「ちょっと、それは……」
「何よ、ユッキー。送ってくれるって言ったのに消えるのー?」
止めに入る悠月の裾をキーリが引っ張った。
「何さね……あっ、埴輪が!」
運悪くこれに当たったアルトの肩から埴輪がこぼれた。涙目。
「お綺麗ですよ…」
「……はい……」
さらにそちらには動揺狙いの甘言を吐くガクルックスと出来上がって「はい」しか答えない伊織がいた。
「呑め! カルタなんざほっぽって酒呑もうぜ~!」
反対からはすでに目的を忘れたボルディアが酒盛りしようと突入している!
「もちろんミグも酒をやるのじゃ!」
ミグも乱れた着物で大の字になってダイブ。
「今度こそ!」
「またですかぁ」
Jとハナはそこにある札を競ってダイブ。
「まずいな」
「手遅れよ。諦めが肝心ね」
逆に脱出狙いの真に、銃口を向けて止めるマリィア。実はマリィア、相当飲んでいる。もう動けないのだ。
――どっしーん!
不幸な多重衝突はこうして起こった。
むぎゅりとつぶれたり抱き合ったりはだけたりして、全員がKO。
「ん?」
この時、早々にギブアップして客席でメルクーアと酒を飲んでいた源弥が振り返る。
ジーナは、座敷で横になって丸まり静かにすうすう寝息をたたえていた。
「ぉん? なんだぁ」
「どうした?」
場外では、絡むハスキーと押し倒されたレイオスが大量ダウンの様子を振り返っていた。
「あははっ。せるげん、戻れば優勝だよ~」
「ん? ああ」
レイオスと一戦交えていたセルゲン、無雲に応援され申し訳ない様子で座敷に戻った。
「ナイン……テン!」
ここでレフェリーのカウントもアップ。
「百人一首最強酔拳士大会、優勝者はセルゲン!」
戻ったセルゲンの腕がレフェリーに高々と掲げられた。
「……一枚も取ってないんだがな」
セルゲンは呟くが、そういうルールなのである。
●リザルト
14…セルゲン【優勝】
16…ハスキー
17…アルト・ハーニー
20…鞍馬 真
25…トリプルJ
28…白樺 伊織
30…レイオス・アクアウォーカー
33…水城もなか【酔いどれ王】
33…マリィア・バルデス【酔いどれ王】
敗北フラグ酒飲酒
(12)…キーリ
(14)…ボルディア・コンフラムス
(14)…ジーナ
(15)…ミグ・ロマイヤー
(15)…無雲
(16)…星野 ハナ
(16)…Gacrux
(17)…霧雨 悠月
(20)…メルクーア
ギブアップなど
(7)…十色 乃梛
(36)…残波源弥
酒の効果
A)毘沙門天ケンシン=直前に飲んだ酒の効果が二倍【塩贈り効果】
B)マサムネ独眼竜=酩酊進行+3
C)風林火山シンゲン=酩酊進行+4
D)ノブナガ下天の舞=酩酊進行+9
E)名工蓋モトチカ=酩酊進行+1(&※1とセットで+15)
F)基督教ソウリン=酩酊進行+5
G)金貨頭ミツヒデ=酩酊進行+1(※1)
H)三本矢モトナリ=酩酊進行+2(&※2とセットで+9)
I)三ツ葵イエヤス=強制敗北(敗北フラグ)【妖刀村正の呪い】
J)一夜城ヒデヨシ=酩酊進行+2(※2)
「わあ……」
十色 乃梛(ka5902)が南那初華(kz0135)を見つけ目を輝かせた。
(いいなぁ)
化粧をしているのを見て目を輝かせる。しかも着物姿。
(大人な魅力があるなぁ……)
乃椰、羨望の眼差し。手を置いた自らの胸はぺったんこで、そこも羨ましい。
そうして眺めていると。
「え? ほ、ほんと?」
初華、肌を晒してうっふんとかやって男どもが興奮して、きゃーとか慌てたり騒がしくなった!
(大変、助けなきゃ!)
乃椰、フリルワンピをふわふわ揺らしながら駆けつける。
ところが。
「よー、初華。何やってんだ? え? 酒の飲み比べでヒャク何とか? おぅ、いくらでも相手になってやるぜ!」
「ボルディアさん、助かったよぅーーーっ!」
いち早くボルディア・コンフラムス(ka0796)が初華を助けに入っていた。初華をメロメロに酔わせようとした男ども、姉御肌のボルディアを見てぐぎぎ、とあきらめる。
「あっ。乃椰さんも? わぁい、嬉しいなぁ」
「え? えーっ!」
あ。初華に見つかってむぎゅりと捕まった。
もう逃げられない。
さらに人影が寄って来る。
「今回はクレープじゃないのか?」
残波源弥(ka2825)である。長身を屈めて初華に聞く。
「ううん。えっとねー、百人一首!」
説明した時、けだるげに横を通る者がいた。
「なんだよぉー……タダ酒飲めると思ったら百人一首やるって?」
ハスキー(ka2447)である。ぼりぼりと頭をかき残念そうにしているが……。
「百人一酒か、また風流な物を」
「ちょっと源弥さん。『いちさけ』じゃないんですからねっ!」
「『いっしゅ』って言ったはずだが……何で伝わるんだ?」
指差す初華。どうやら源弥、酒のつまみを持っていた様子。
「まぁ、酒飲めるんなら代金と思って参加するかねぇ……」
これで帰りかけていたハスキー、回れ右。「百人一酒」が気に入った。
「うむ、百人一首か!」
ここで後光の差す幼女登場!
「かの地でいうカルタじゃの。カルタと言えば畳の上の戦闘。……うむ、戦場がミグを呼んでおる」
ミグ・ロマイヤー(ka0665)である。縦ロールはいつも通りだが、簪を後光のようにざくざく差して三つ葉のぽっくりにド派手な着物というぞろりとした出で立ちだ。
「あの、ミグさん?」
「ブルーアースの最新サブカルチャーは幼女、軍人、戦争じゃ。つまりミグの時代が来たんじゃ。良い時代になったのう」
掛けられた声にもこたえず初華に微笑み、からから笑って会場へ行くミグである。というか、幼女は混ぜるな危険。
「あぁ、カルタね、なるほど。酒の余興としちゃあ悪かねえな。いくぜ!」
納得したボルディアも続く。
「……戦場と、酒?」
ああ、ミグの説明の犠牲者がここにも。ジーナ(ka1643)が「ブルーアースとはリアルブルーの事だな?」と会場へと入って行く。すでに雰囲気に合わせて藍染浴衣だ。白い肌と短い銀髪が藍色に合う。
「華やかですねえ。クールブルーです」
Gacrux(ka2726)もやって来た。
「クール……何?」
初華、聞きとがめる。
「初華の衣装が素敵だ、ということですよ」
「いや待て、いや待て!」
おっと。トリプルJ(ka6653)が待ったをかけた。
「Jさん? 私の衣装、ダメかな?」
へにょ、と落ち込んだ初華。隣にいた乃椰、着物試着コーナーへいく足を止めた。
「いや待て、そうじゃない! いくらリアルブルー出身でも全員が一地域の風習に通じてるわけじゃないんだよ」
「あ、そか。日本だけだもんね」
初華、Jの見解に納得。乃椰、自分のフリルワンピ姿を改めてしげしげと見ている。
「まあ、そうだな」
鞍馬 真(ka5819)もひっそりと会話に参加。
「あれ? 真さんって……日本だよね? 名前からして」
「日本人かどうかはともかく、日本人なら全員寿司を握れるわけではないな」
「あ、そか」
「あら。それじゃ横一線のスタートって考えていいのね?」
マリィア・バルデス(ka5848)もやって来た。相変わらず銃を持っている。
「強い酒には興味あるのよね。やれる範囲で頑張るわ。そろそろ優勝したいもの」
「来ましたよぅ、私がもっとも輝くイベントがぁ!」
マリィアがポーズを決めてウインクしたところで、星野 ハナ(ka5852)がにぎやかに登場!
「今回もガチで優勝目指して頑張りますよぅ!」
「これで前回優勝者と準優勝者が揃ったってことだね」
霧雨 悠月(ka4130)も近寄って来た。前回の結果を言ったことで周りが「おお!」とどよめいた。自らのスカートをつまんで見ていた乃椰、突然の盛り上がりにびくっと一歩下がる。
「ついでに、酔いまくった酔いどれ王も初代と二代目が揃いましたけどね」
ふふっ、とガクルックスがハナの隣に立ったり。
とにかく周りからマークされた。
時は若干遡る。
「セルゲン、なんかにぎやかだねぇ」
「ああ、そうだな」
桔梗などが艶やかな少し大人びた雰囲気の着物を着た無雲(ka6677)と、黒地に艶やかな真紅の椿が施された正月の晴れ着姿のセルゲン(ka6612)が連れ立って歩いている。イベントの雰囲気を二人で堪能中だ。
その横を、まるで妖精のように埴輪を肩に乗せたアルト・ハーニー(ka0113)が颯爽と歩いて行く。
「さて、今日はここで埴輪の魅力を……ん? 酒飲み百人一首?」
アルト、初華たちを発見し看板に目ざとく気付いた。
「ま、酒が飲めれば結果はどっちでもいいさね。美味しい酒があるといいんだがねぇ」
呟きそちらへ。肩に乗った埴輪は汗たら~しているようにも見える。
「セルゲン、お酒だって♪」
アルトの行く方を見て無雲がセルゲンの袖を引いた。というかもうぐいぐい引っ張っている。すでに逆らえない勢いである。
「大丈夫なのか、無雲……ん? 南那殿?」
セルゲン、騒ぎの中で困っている初華を発見。仕方ない、と引くに任せられるのだった。
ちなみにこの時、別の場所では白樺 伊織(ka6695)が騒ぎを眺め金色の瞳を見開いていた。
「にぎやかな催し……運営している人があんなに頑張ってるからですね」
何気に勘違いというか、過大評価が交っているのは伊織の人柄だろう。
初華の慌てている姿を見て伊織も吸い寄せられるように近付いて行く。
時は戻り、一歩引いた乃椰。
「へえっ。優勝候補がそろってるのかー。ボクも頑張っちゃうぞ~♪」
背後から無雲の元気な声がした。さらにびくっとする乃椰。
「南那殿、世話になる」
もちろんセルゲンも一緒だ。無雲にも初華にも心配そうな視線だが。苦労性かもしれない。
「お酒が飲めると聞いて参上さね!」
もちろんアルトも来ている。ぴしっと決めポーズ。
「え? 着付けしてくだるのですか?」
伊織は手招かれるまま着付けの方に。これが命取りとなるが、それは後の話となる。
「よう、初華。今回はどんな酒があるんだ?」
入れ替わりに、きょうも赤装束のレイオス・アクアウォーカー(ka1990)がやって来た。
「あっ、レイオスさん。今回は日本酒よっ!」
「良く分からんが楽しみだ!」
「えっ!?」
酒なら何でもいいレイオスとは別に、偶然近くにいた水城もなか(ka3532)が過剰反応していた。
「こんなところで日本酒? ロッソからの品ですか? それとも地元の酒とのブレンド?」
もなか、さらさらストレートな髪を耳の後ろに掛け前のめりになっている。
その横から、メルクーア(ka4005)。
「まあ、お酒なら飲んでみるに限るわよねぇ。初華さん、来たよ~♪」
明るく挨拶するメルクーア。早速初華に「私のお酒の師匠が来てくれた! 心強い~」とだきゅむぎゅ。
「確かにとりあえず飲んでみるべき。これは偵察ですっ」
もなかももろちん負けていない。参加である。
「あれ?」
ここで悠月が気付いた。
「キーリさん……参加するんです?」
いつの間にかキーリ(ka4642)が横にいたのだ。
「ユッキーが『最近すっかり嗜むようになっちゃったんだ』っていうから来てみたのよ。いけない?」
「いや、いいけど。キーリさんて年齢……」
瞬間、キーリの眉がぴくっとなった!
「……まあ、ここにいる時点で成人なのは確定よね。別に隠してる訳じゃないけど。年齢誤魔化してる訳じゃないけどっ!」
「そう?」
汗たら~する悠月。
と、ここでかろんころんとぽっくりで急ぐ音が響き渡った!
一足先に会場に行ったミグが長駆戻って来たのだ。しかもものすごい勢いでっ。
「女性に年齢聞くでない!」
ミグ、力いっぱい吠えた。
「ま、ミグは別に関係ないがの」
「……ミグさん、それ言いに戻って来たの?」
自分がいいなら別にいいじゃん、な初華。
「いいからとにかく会場に急ぐのじゃ!」
かろんころんという音を先頭に、ぞろぞろと移動する。
「腹が減っては戦はできぬ、ってな」
源弥は無料で振る舞われている雑煮をもらっていたらしく、餅をぐーんと伸ばしはふはふ食べつつの移動である。
●
さて、会場の畳の間。
すでに酒盃に以下十テーブルに一種類の酒が用意されている。上ほど端麗辛口、下に行くほど甘口芳醇らしい。
なお、「ノブナガ下天の舞」が一番強い酒だと知らされている。
A)毘沙門天ケンシン
B)マサムネ独眼竜
C)風林火山シンゲン
D)ノブナガ下天の舞
E)名工蓋モトチカ
F)基督教ソウリン
G)金貨頭ミツヒデ
H)三本矢モトナリ
I)三ツ葵イエヤス
J)一夜城ヒデヨシ
さて、そのノブナガのテーブル付近で。
「ええと……」
「すまない。通してくれ」
初華がまず最初にどのテーブルの酒を取るか迷う前を真が横切った。
「真さん……ノブナガ飲むの?」
「ああ。一番強い酒だが、だからこそ最初に飲んでおけば気が楽だからな」
真、涼しい顔……というか、割と素直な性格だ。大酒飲み大会で強い酒を敬遠しては悪かろうとかいう気配りもしているに違いない。
「そりゃそうだ」
Jもここだ。
「やっぱり1番強い酒を飲んで優勝するっていうのに憧れるだろ?」
「そ、そうだよね、Jさん」
初華、よせばいいのに頷いた。
「少しは酒に強くなってきたみたいね、初華さん。嬉しい限りだわ~」
先にこのテーブルにいたメルクーアがにこにこ。くいっとやってから「ん、なかなかね」とか余裕の様子。
「っていうか、メルクーアさんもボルディアさんもマリィアさんも無雲さんもっ。何でさも当然のようにここにいるのよっ」
「いや、当然だろう?」
かぱっ、とノブナガを干したボルディア、何を言っているんだ、という感じで初華を見返す。
「一番強い酒も飲まずに最強になってもね?」
マリィアはウインクしている。
「あははははっ♪ 南那も飲もう♪」
「初華でいいよう」
半分まで飲んでいた無雲は初華とかんぱ~い、してから飲み干す。きゃいきゃい。
これを、一人モトナリのテーブルにいたセルゲンが見て口元を引き締めていた。
「……無雲、すでに酔っているな。南那殿も怪しいが」
「一人でのんびりだな」
そこに源弥と伊織がやって来た。
「早飲み競争ではないからな」
セルゲン、ちびり。少しうずうずしているのは自分もノブナガに挑んでみたいからだ。
「そうか? 酒が飲めるんだ。駆け付け5杯、6杯目ってな。楽しむもんだ」
「ヒデヨシを飲んだ後です。着付けで遅れましたから、急いで飲みます」
くいっとモトナリを干す源弥。一緒にやって来た伊織は急ぐ個人的理由を話す。もちろん、まだ周りも一杯目。おっとりさんなだけに、周りに合わせようと頑張っているのだ。
「そうか……ん、甘いな」
改めてモトナリをくいっと飲んだセルゲン。漏らした一言に伊織が会釈する。
「はい。甘口のお酒は蜜のようです。飲み口が優しいので量を誤りそう、です」
というか、顔が赤い。
伊織が一杯目に飲んだヒデヨシも今飲んだモトナリも甘い。すでにいろいろ誤っていそうである。
ちなみに、一杯目にケンシンを選んだ者も多い。
「ふ、勝負には興味ないが見るものには喜んで貰わないとな? 俺の埴輪の宣伝にもなるしねぇ?」
アルトは一番目立つと見てここから飲む。肩の埴輪は客の方を向いて愛嬌を振りまく様に手を挙げ……おっと、埴輪はいつも片手を上げているか。
「ま、何だっていいんだがよ。……手前がケンシンならそれからでいいよ。お、燗あがった?」
ハスキー、選んだというか自堕落にこのテーブルに寄り付いたようだ。
「度数が分からないなら味で尖った物を」
ジーナはきりっと言い捨てて一気に飲む。判断に切れがある。思い切りもいい。とはいえ、「…なるほど…これがリアルブルーの、酒か…」と、飲んだ後はじっくりと味わっている。
「最初が肝心でぇ、最後はもっと肝心ですぅ」
ハナはここで飲んだのち、隣のマサムネに。
「一気じゃ一気じゃ」
ミグはこともなげにかぱっと開けてからかろんころんと一つテーブルを飛ばしてシンゲンに。
で、マサムネテーブル。
「ふぅ、ごちそうさま」
飲み干した悠月がふらっと次のテーブルに行こうとしている。
それはいいのだが、その隣の赤い人。
「数の子は辛口で飲ると塩気を洗い流せてちょうどう良い感じだな」
何とレイオス。持参のおせちを肴によろしくやっているではないか。
「けふんっ!」
乃椰もマサムネを飲んでいた。大人な辛口に思わず可愛らしくむせていたり。
「伊達巻き、どうだ?」
「あ、すいません……」
レイオスの好意でなんとか立ち直る乃椰。
「そんなに辛いですかねぇ。何なら一緒に甘いお酒に行きません?」
ハナも一気飲みし、乃椰を連れて甘い酒の方に行く。
「栗きんとんと芳醇なのも甘い同士でいけるぜ」
持ってけ、とおすそ分けするレイオス。後の話になるが自身もヒデヨシを飲みつつ栗きんとんで気分よく締めた。
「ふ、確かにいける」
ちなみにアルトも流れて来ていた。レイオスのお相伴に預かっていたり。肩の埴輪が興味深そうにのぞき込んでいるように見える。
そしてシンゲンテーブル。
「百人一首はですね……」
もなかがシンゲンを優雅にやりつつ説明している。すでに着物姿に着替え、さらさらストレートだった髪は豊かにアップでまとめている。軍服姿に見慣れた者が見ると、きっと目を見張るに違いない。
「詩を読み上げ札を取る、と……ほう、洒落た遊びですねえ」
聞いていたのはスーツ姿のガクルックス。酒を飲みつつうんうんと優雅なものだ。
が、平和は破られた。
「言ったであろう、畳の上の戦闘じゃ!」
「へっ……ハンター同士の遊びなんてスリル満点じゃねぇか」
ミグとハスキーがにぎやかに乱入。
「……大丈夫ですか?」
ガクルックス、武闘派の来訪で一緒に飲んでいたもなかを気遣ってみた。
「え? お酒ですか? 嗜む程度には飲みますけど、あまり強い方では……」
もなか、不安そうに勘違い。
「……リアルブルーにいた時に飲み会で少し飲みすぎた次の日に皆に避けられた記憶ならありますけど」
が、けろりんとしてそう結ぶ。
「それならなにより。それにしても皆さん着物で絢爛ですね」
これは余計な心配でした、とガクルックス。女性の着物姿を楽しみつつ飲む姿勢に戻った。
「あ、キーリさん。……大丈夫? 元気なさそう?」
悠月も二杯目はここだ。同じく二杯目、誰もおらずソウリンを一人孤独に飲んで流れて来たキーリを見つけて話し掛ける。
「お酒ねー、良く分からない世界ねー」
キーリ、少しセンチメンタル?
「うーん、どうだろう。僕は色んなお酒を味わって飲んでみたいんだ」
「楽しそうに言うわねー」
「そういうもんじゃない? ふふ」
「まあ、見世物として面白いのは理解してる。というわけで、飲みましょうか」
何だか吹っ切れたようで、思いっきり飲む。
そう。
見世物。
参加者の飲む姿を見て、見物人にも酒を購入して大いに飲んでもらうのだ。
「はぁい、美味しいわよ、これ」
マリィアが最後の一杯にモトナリを選んで飲み、観客に手を振った。
「だんだん慣れてきました」
乃椰、皆のフォローもあり美味しく……ああっ。味が気に入ったか、最後にモトチカを連続で飲んだ。ここで失格だが見世物なのでそのまま順位資格のないままゴー。
「俺のカンじゃ、これなんかヤバい酒だぜ?」
Jは最後の一杯にモトチカを選んだ。嗅覚を研ぎ澄ませ、強そうな酒を選んで飲んでいた。果たしてどうだろう。
「あはは~♪ にゃんだかふわふわしてきたぁ~?」
「おい、無雲」
無雲はどうやら笑い上戸。明るく笑顔でゆらゆら。着物の裾やらが緩んできてるのに気付いたセルゲンが慌てて駆け寄る。最後は二人で一緒にマサムネを飲んで準備完了だ。
「ううう……」
「初華、無事か?」
平常心を保ち最後の一杯、ケンシンを飲んでいた真。ふらふらしている初華に気付き支えてやる。仮に恋人が参加していればきっとこのような優しさを発揮していたであろう。
「んん~、キリッとした切れ味。最高~」
同じく最後の一杯にケンシンを選んだメルクーア、飲んだ酒の感想を言いつつ楽しくやっている。先はイエヤスを飲んで「まろやかで、女性でもいけそうね」などとも言っていた。おかげで女性客も酒を購入している。どうやら客の目と売り上げを意識しているようでもある。
「百人一首って坊主を引いたらダメなヤツだよな?」
「ヒャクニンイッシュは……うん、そんなもんだ!」
レイオスとボルディアはわははは、とすでに宴会状態。飲んでつつくおせちの重箱はそろそろなくなりそうだ。二人の会話はぐだぐだだが様子はしっかりしているのが何というか。
「じゃ、今回も一番強いお酒を最後に頂くよ」
「奇遇だな」
悠月が最後にノブナガを飲み干た。ジーナも同じ考えだったようで最後に強い酒を飲み、立ち上がる。
さあ、楽しい百人一首の始まりだ。
●
「反則は10カウントまで。ダウンはスリーカウントで敗北、いいね?」
縁側を開け放ち客のいる庭園に向いた和室に並ぶ参加者に、レフェリーが説明した。
「百人一首はよく分からないが、読まれた札を取れば良いんだろう?」
セルゲン、たすき掛け着物の袖をまとめ気合を入れる。
「なるほど……続く下の句を取る。了解です」
伊織、目の前の札を確認。
「えーと、乱れて今朝はものをこそおもへ……」
Jもクリムゾンウェストの連中に負けまいと必死に目の前の札を確認中。
「昨晩は乱れたの、Jさん?」
「んふふ、こんな風に、ですかぁ?」
そこに初華とハナが茶々を入れたり。
「いきなり服を乱して言うんじゃないよ」
「きゃー」
「もっと乱れてしまいますぅ」
J、初華、ハナのどたばた。
「はいはい。始まらないでしょ」
「何を漫才やってるんだ」
「さー、頑張るわよ」
ハナに銃口を向けるマリィアとJにハリセンですぱーんと突っ込む源弥。初華は楽しそうなメルクーアに回収されたり。
「では行きます。『秋風の たなびく雲の 絶え間より』……」
そんな中、読み手が1枚目を詠んだ。
――すっ。
「『もれいずる月の 影のさやけさ』……たしかこれだ」
あっ、と皆が顔を上げた。
下の句を詠まれる前に普通に手を伸ばして目の前の札を取ったのは、真だった。
「うろ覚えだが、秋らしい慎ましい句だったはずだ」
真、お見事。リアルブルー知識の勝利である。
「なるほどなぁ。詠まれる前に取れってか」
ボルディア、コツはつかんだと腕まくり。
「まあ、目の前のは取るがな」
レイオスは派手な羽織と孔雀羽の団扇を煽ってあくまで新春らしく。
「二枚目。『今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人』……」
下の句を少し詠んだ時だった!
「もらったさね!」
アルト、オーラに開放し突っ込む。背後に巨大埴輪が浮かぶ。肩の埴輪もくわっと目を剥いているか。とにかく狙うは『人の命の惜しくもあるかな』。
「確保します!」
おっと、横からもなかが……ああっ。容赦ないボディーブローだ!
――どごぉ。
「ぐはっ!」
アルト、吹っ飛ぶ。
「もらったわよ!」
そのアルトの影から運動強化で俊敏な、小さいメルクーアがずささと滑り込んで確保した。
「んふふ、やりますねぇ」
札をかすめ取られたもなか、不敵に笑う。
「待つさね」
が、札を指差すアルト。
「あ、埴輪?」
メルクーアの手が乗った札には、アルトの肩にあった埴輪が手を付くように乗っていた。
アルト、ニヤリ。埴輪もニヤリ、か?
しかし!
「これ、反則よね?」
メルクーア、あっさりと埴輪をぽいっ。埴輪、角度で涙目のように見える。
時は若干遡り、『人知れずこそ 思ひそめしか』の札の場所。
「あれか?」
セルゲン、「人」だけ聞いて見切り発車。
「あはは、うぇーい♪」
それを追い越し無雲が震撃で一直線。
ところが無雲、くるくると横に吹っ飛んだ。
「これは渡せないねぇ」
レイオスが鉄扇で下から上に巻き上げたのだ。
「あはは、気持ちいい~」
無雲はきゃっきゃと喜んでいるが。
「うふふふ、私が二人見えてもそれは酔っぱらってるからですよぅ」
セルゲンの方は御霊符の分身を出したハナが止めた。
「させないわよ」
そこにマリィアが横から割り込む。銃を持った手でクローズコンバット。撃ちはしないが相手の手を払いつつ札に……。
「おおっと失礼!」
ここで突風。札が飛んで逃げた。
「悪く思わないで下さいねぇ?」
ガクルックスが鉄扇で煽ったのだ。そのまま取りに行くが……。
「おっと、悪ぃなコイツは頂いたぜぇ?」
だらけていたハスキーがこの時ばかりは俊敏に札を確保。札をひらひらさせつつまただら~っと。
「さすが優勝候補らの争いは激しいねぇ」
ハスキー、マークしていたようだ。
同じく時は若干遡り、『人こそ知らね かわくまもなし』の札。
「ええと……」
悠月、一瞬迷っていた。
そこを、がしっと誰かにつかまれた!
「何やってんの、ユッキー。突っ込むわよ?」
キーリである。
「ちょ、キーリさん! さっきまでと様子が!」
「やるからには本気の本気よー」
テンション低く座っていたのに悠月をヘッドロックしたまま札に突っ込んだ!
「ちょっと、私もそれ欲しいんだから~!」
おっと。初華もダイブしているぞ?
「おお、札鳥か!」
ミグも行くが、あらら、着くずれ足もつれでふらふらっと札の方に。
――どし~ん!
ちなみに源弥もその札を狙っていた。
が、キーリが巧みに悠月を盾にしていた。
それでも手だけは伸ばしていた。悠月の向こうには、女性3人が札の場所に倒れ込んでいた。
「幼女好きなのかえ?」
伸ばした手の先で、ミグが着物を着崩し悩ましく身を横たえて悩殺ポーズを取っていた。
「違う。店長は無事か?」
源弥、初華を気にする。
「むぎゅ」
初華、一番下に押しつぶされていた。
「ツー、スリー!」
レフェリーがカウントスリーを告げて初華、KO。
さらに時は若干遡り、『人づてならで 言ふよしもがな』の札。
「手段は選ばん!」
J、全部聞かずに突っ込んだ!
「スカートめくれませんように!」
乃椰、小柄な体全体でJの懐に潜るように滑り込んでいる。
「させない」
が、ジーナの鉄扇がするどく一閃。乃椰の手がつく前に札を吹き飛ばしてしまった。
そのうえで回り込みつつ確保に滑り込むジーナ。
そのとき!
「さあ、捕るぞ~! わはははは!」
――どしーん!
ボルディアが体全体で取りに行くという名のボディプレス。ジーナが下敷きになりむぎゅり。
さて、札の行方は……。
「楽しいですね」
皆の楽しくじゃれあう(?)姿を見てにこにこしていた伊織の前に落ち、優雅に拾われていた。
ここで、詠み手が改めて下の句を読み直す。
「『人づてならで 言ふよしもがな』です」
「まあ♪」
伊織、1枚ゲット!
●
死闘は続く。
「『いにしえの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に』……」
「はいっ!」
すぱっと悠月が取った。
「ユッキー、やるじゃないー」
「もう迷わないよ」
キーリに言う。どうやら吹っ切れたようだが……。
「ふーん、いつもと違うー。あんたもー実は私の事ヘンテコえるふだと思ってんでしょー」
あらら。キーリ、目がすわっているぞ。なんか力なくしなだれるように絡んでくる。
「ちょっとキーリさん。いつもと雰囲気が違う気が…」
後ずさる悠月だったり。
死闘は続く。
「あははー。おなかすいたねー、せるげん♪」
「……口の周りがチョコ餅だらけだ」
おやつ中の無雲。セルゲン、絡まれて札どころではない。自ら持参した菓子類も実は無雲の腹減り用だったりする。
死闘は続く。
「よし!」
「うむ」
Jと真が同じ札に突っ込んだ。
「全部お酒のせいだと思いますぅ気のせいですぅ♪」
そこにハナが札や符をぶんぶん振り回しながら割り込む。
「おっと」
真、回避。
「理不尽に絡まれてもな」
ここで横からジーナが少しの隙間を抜けて出て来た。
「おい、ちょっと……」
J、運悪く逃げる方を塞がれハナとごっちんこ。
「……すまん。邪魔するつもりはなかったが。しかし全力だな」
「いいんですよぅ。遊びに全力尽くさずに何に全力尽くすんですぅ?」
気にするジーナ。ハナは悪く思ってない。
「俺の立場は?」
ハナの下敷きになっているJはそうでもないが。
「これが猫と鼠が仲良く喧嘩しな♪している状況なのですね」
伊織はくんずほぐれつの戦いをほんわりした様子で見守ってて、ご満悦♪
死闘はやっぱり続く。
「こうすれば確実だよね」
メルクーア、滑り込みつつ札を取り場外に逃げていた。これなら初華のようにはならない。
「お客さんも飲んでる~?」
作戦が決まっていい気分のメルクーア、そのまま観客とハイタッチ。
「仕方ないわね。……どう、飲んでる?」
メルクーアと同じ札を狙い競っていたマリィアも場外だ。付き合って観客の盛り上げに一役買う。
「あっ。面白そー」
ぴぴん、とその様子に反応したのは無雲。一緒に庭園に下りて客とぱしんぱしんとハイタッチ。楽しそうだ。
「おい、カウント5まで来たぜ?」
「戻った方がいい」
レフェリーのカウントは観客の方が気にしていた。
「あら、じゃそろそろ」
マリィアは手堅く戻った。
「あんたは?」
「8なら余裕で戻れるわよん♪」
メルクーアはスキルで一気に戻るつもりだ。
「エイト!」
レフェリーが宣言した時だった。
「それじゃ」
「あははー♪」
メルクーアと無雲、楽しそうに一緒に戻る!
――どしーん。
「えへ」
乃椰、不可視の境界を作り二人を足止め。リングアウトで二人が失格となった。
その乃椰もすでにふらふらだ。
「冬場とはいえ、室内でこの人数……暑くなってきたわ」
フリルドレスの胸元のボタンに手を掛けた。
「さぁ~次いきまひょ~! ンフフヒァ~♪」
もなかはなんかもう危ない感じ。先ほど立体攻撃で上から札をとる大技をかましたのが影響しているか。というか、脱ぎ始めたよこの人!
「ちょっと、それは……」
「何よ、ユッキー。送ってくれるって言ったのに消えるのー?」
止めに入る悠月の裾をキーリが引っ張った。
「何さね……あっ、埴輪が!」
運悪くこれに当たったアルトの肩から埴輪がこぼれた。涙目。
「お綺麗ですよ…」
「……はい……」
さらにそちらには動揺狙いの甘言を吐くガクルックスと出来上がって「はい」しか答えない伊織がいた。
「呑め! カルタなんざほっぽって酒呑もうぜ~!」
反対からはすでに目的を忘れたボルディアが酒盛りしようと突入している!
「もちろんミグも酒をやるのじゃ!」
ミグも乱れた着物で大の字になってダイブ。
「今度こそ!」
「またですかぁ」
Jとハナはそこにある札を競ってダイブ。
「まずいな」
「手遅れよ。諦めが肝心ね」
逆に脱出狙いの真に、銃口を向けて止めるマリィア。実はマリィア、相当飲んでいる。もう動けないのだ。
――どっしーん!
不幸な多重衝突はこうして起こった。
むぎゅりとつぶれたり抱き合ったりはだけたりして、全員がKO。
「ん?」
この時、早々にギブアップして客席でメルクーアと酒を飲んでいた源弥が振り返る。
ジーナは、座敷で横になって丸まり静かにすうすう寝息をたたえていた。
「ぉん? なんだぁ」
「どうした?」
場外では、絡むハスキーと押し倒されたレイオスが大量ダウンの様子を振り返っていた。
「あははっ。せるげん、戻れば優勝だよ~」
「ん? ああ」
レイオスと一戦交えていたセルゲン、無雲に応援され申し訳ない様子で座敷に戻った。
「ナイン……テン!」
ここでレフェリーのカウントもアップ。
「百人一首最強酔拳士大会、優勝者はセルゲン!」
戻ったセルゲンの腕がレフェリーに高々と掲げられた。
「……一枚も取ってないんだがな」
セルゲンは呟くが、そういうルールなのである。
●リザルト
14…セルゲン【優勝】
16…ハスキー
17…アルト・ハーニー
20…鞍馬 真
25…トリプルJ
28…白樺 伊織
30…レイオス・アクアウォーカー
33…水城もなか【酔いどれ王】
33…マリィア・バルデス【酔いどれ王】
敗北フラグ酒飲酒
(12)…キーリ
(14)…ボルディア・コンフラムス
(14)…ジーナ
(15)…ミグ・ロマイヤー
(15)…無雲
(16)…星野 ハナ
(16)…Gacrux
(17)…霧雨 悠月
(20)…メルクーア
ギブアップなど
(7)…十色 乃梛
(36)…残波源弥
酒の効果
A)毘沙門天ケンシン=直前に飲んだ酒の効果が二倍【塩贈り効果】
B)マサムネ独眼竜=酩酊進行+3
C)風林火山シンゲン=酩酊進行+4
D)ノブナガ下天の舞=酩酊進行+9
E)名工蓋モトチカ=酩酊進行+1(&※1とセットで+15)
F)基督教ソウリン=酩酊進行+5
G)金貨頭ミツヒデ=酩酊進行+1(※1)
H)三本矢モトナリ=酩酊進行+2(&※2とセットで+9)
I)三ツ葵イエヤス=強制敗北(敗北フラグ)【妖刀村正の呪い】
J)一夜城ヒデヨシ=酩酊進行+2(※2)
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/11 09:39:19 |