ゲスト
(ka0000)
【王臨】少年、茶会へ招待する
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/01/17 12:00
- 完成日
- 2017/01/23 06:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●追手
プエル(kz0127)は難なく羊型歪虚を倒す。
「……面倒……うーん、僕がやったこと感づいた奴いるんだよね」
べリアルの下にいて最終的に指揮を任された一軍を下手に使い、周囲を乱してハンターに有利に動かしていた。直下の歪虚は全滅しているが、プエルの行動に違和感を覚えていた士官クラスの歪虚もいたのだろう。
「僕が倒せなくはないけれど……邪魔だよね」
今まで現れている追手は様子見なのか羊型歪虚の弱いタイプだったが、だんだん強くなってきている。指示を出した本人が出てくる可能性もあるだろう。
なんにせよ追手を隠れ家にだけは寄せ付けるつもりはない。安全地帯がなくなることは主もなく、守ってくれるヒトもいない現在、死活問題だ。その上、このままでは生前の家族や王国自体を無に帰すとか、演出するとか考える余裕がない。
「うーん、ハンターに頼もう。それまで何とか頑張ろう」
プエルはどうにかしようと程よい物件探す。
●歌声
ルゥル(kz0210)は町に住むマーク司祭のお遣いで、隣の村に行ってきた。
馬は借りているため乗っていれば運んでくれる。
街道は人通りがそれなりにあるが、減る時間帯は日が落ち始めたころ。
夜も歩くつもりの人はきちんと装備を整え、単独や腕に覚えがなければ集団で進む。日常生活を送る人は夜になる前に帰ろうとするため、夕方はせわしなく動く人がいなくなるとぱたりと人の気配が消える。
ルゥルは急がない。真っ暗にならなければいいのだ。
馬、ペットのパルムとフェレットがいる為「独り」という認識が薄いという事実もある。
「オオカミさんにあったり、鬼さんに会ったり、ここはいろいろあるところです」
以前あったことを思い出して、慎重になる。
「ポルム、後ろを見ていくださいね」
「きゅ」
頭の上のパルムに声をかけた。
「……」
ルゥルは手綱を引っ張る。
「お歌が聞こえます」
ルゥルは街道ののり面を見上げる。高台になっており、そこに壊し損ねている古い家があるのを知っていた。
ルゥルたちが遊びに行ったあと、壊す予定だったと領主の関係者から聞いている。工事が遅れているのは、羊歪虚が出たという事件もあり、町を守るのに力を割いていたためだという。
「……誰か住んでいるですか? とりあえず、ゴブリンじゃないですね!」
以前、ゴブリンが移住してきたこともあり、必然的に警戒対象だ。
聞こえる歌は教会で見つけた楽譜にもあるもの。
「男の子ですね?」
ルゥルは歌がひと段落ついたところで拍手をした。
「うまいですー」
「誰かいるの?」
声が降ってきたためルゥルは立ち去るのを少し遅らせる。
「いるですー。お兄さんはそこでテント張っているですか? 町近くですよ?」
「……家があるから大丈夫だ」
「おうち、壊れてますよ?」
「うん、今はいいんだ……そうだ、君、町に行くなら、これを届けてくれないか?」
フードを目深にかぶった少年が階段を下りてきた。
ルゥルは違和感を覚える。
着ている服は貴族が身に着けるようなものである、だけなのだが?
ポルムが頭をペチペチたたく。何か感じて「早く行け」と言っているようだ。
「お馬から降りると乗れないから、ここで良いですか?」
「うん」
ルゥルは手紙を受け取った。
「それをハンターズソサエティに届けてくれる?」
「分かりました。でも、明日じゃないと無理ですよ?」
「それでもいいよ? 準備があるから」
「……おうちで何かするですか?」
「秘密」
「そうですか」
「よろしく頼んだよ」
「はいです。私もハンターです! きちんとやります」
「……そう?」
少年はルゥルと別れた後、階段を上って行った。
マーク司祭に話すと奇妙なことがあると言いつつも、翌日、隣町にあるソサエティの支部にいく許可はもらえた。
●彼女
イスルダ島を出て大地を眺めた彼女は優越感と高揚感でいっぱいだった。
(島を出られた、ようやく! あの狭苦しい世界から)
もっと広いところに、王都に行けると確信をしていたがあっさり進軍は終わった。彼女は何がいけないのか状況を見て考える。
べリアルが進軍をしたところまでは良かったはず。
ハンターがいけないことはよくわかる。内側から崩されたような、前と後で違うところを見る。
人形がべリアルに泣きついてきたのを彼女は見ていた。べリアルが実質上敗北を喫したときに、その人形は姿を見せていない。
彼が持っていた部隊と周囲が消滅しているのも事実。だから、人間に負けたと考えるにはあまりにもきれいすぎる。
逃げてきて何があったかを告げるモノもなかったという異様さ。
独自に調査をすると人形だけ生きている、とわかった。
「あたくしとしては、べリアル公がどうこうより、不埒な思いで来たのを見抜けなかったというのが気にくわないのですわ!」
扇をパンと閉じて立ち上がるとドレスを翻す。
「どこに逃げようとあたくしはアレを消しますわ」
不敵に微笑む。
「それがあたくしのやるべきこと。あの子供は家に住み着いているようですもの」
そこに向かう、自身で。
配下のモノをいくらやってもらちが明かないのははっきりしていた。
少年がいるのは王国内。王都が近いとはいえ、何かがあるとは思えぬ場所。
●手紙
受け取った支部の受付はピクリと眉尻を動かす。ソサエティに届けられた手紙は次の物だ。
『親愛なるハンターの皆さま
○月×日ごろ、フォークベリーという小さな町を街道に沿って出たところにある岡の上にて、お茶会を催します。
ぜひ、ご参加よろしくお願いします。
カチカチ山が気になる今日この頃 憂悦孤唱プエル』
プエル(kz0127)は難なく羊型歪虚を倒す。
「……面倒……うーん、僕がやったこと感づいた奴いるんだよね」
べリアルの下にいて最終的に指揮を任された一軍を下手に使い、周囲を乱してハンターに有利に動かしていた。直下の歪虚は全滅しているが、プエルの行動に違和感を覚えていた士官クラスの歪虚もいたのだろう。
「僕が倒せなくはないけれど……邪魔だよね」
今まで現れている追手は様子見なのか羊型歪虚の弱いタイプだったが、だんだん強くなってきている。指示を出した本人が出てくる可能性もあるだろう。
なんにせよ追手を隠れ家にだけは寄せ付けるつもりはない。安全地帯がなくなることは主もなく、守ってくれるヒトもいない現在、死活問題だ。その上、このままでは生前の家族や王国自体を無に帰すとか、演出するとか考える余裕がない。
「うーん、ハンターに頼もう。それまで何とか頑張ろう」
プエルはどうにかしようと程よい物件探す。
●歌声
ルゥル(kz0210)は町に住むマーク司祭のお遣いで、隣の村に行ってきた。
馬は借りているため乗っていれば運んでくれる。
街道は人通りがそれなりにあるが、減る時間帯は日が落ち始めたころ。
夜も歩くつもりの人はきちんと装備を整え、単独や腕に覚えがなければ集団で進む。日常生活を送る人は夜になる前に帰ろうとするため、夕方はせわしなく動く人がいなくなるとぱたりと人の気配が消える。
ルゥルは急がない。真っ暗にならなければいいのだ。
馬、ペットのパルムとフェレットがいる為「独り」という認識が薄いという事実もある。
「オオカミさんにあったり、鬼さんに会ったり、ここはいろいろあるところです」
以前あったことを思い出して、慎重になる。
「ポルム、後ろを見ていくださいね」
「きゅ」
頭の上のパルムに声をかけた。
「……」
ルゥルは手綱を引っ張る。
「お歌が聞こえます」
ルゥルは街道ののり面を見上げる。高台になっており、そこに壊し損ねている古い家があるのを知っていた。
ルゥルたちが遊びに行ったあと、壊す予定だったと領主の関係者から聞いている。工事が遅れているのは、羊歪虚が出たという事件もあり、町を守るのに力を割いていたためだという。
「……誰か住んでいるですか? とりあえず、ゴブリンじゃないですね!」
以前、ゴブリンが移住してきたこともあり、必然的に警戒対象だ。
聞こえる歌は教会で見つけた楽譜にもあるもの。
「男の子ですね?」
ルゥルは歌がひと段落ついたところで拍手をした。
「うまいですー」
「誰かいるの?」
声が降ってきたためルゥルは立ち去るのを少し遅らせる。
「いるですー。お兄さんはそこでテント張っているですか? 町近くですよ?」
「……家があるから大丈夫だ」
「おうち、壊れてますよ?」
「うん、今はいいんだ……そうだ、君、町に行くなら、これを届けてくれないか?」
フードを目深にかぶった少年が階段を下りてきた。
ルゥルは違和感を覚える。
着ている服は貴族が身に着けるようなものである、だけなのだが?
ポルムが頭をペチペチたたく。何か感じて「早く行け」と言っているようだ。
「お馬から降りると乗れないから、ここで良いですか?」
「うん」
ルゥルは手紙を受け取った。
「それをハンターズソサエティに届けてくれる?」
「分かりました。でも、明日じゃないと無理ですよ?」
「それでもいいよ? 準備があるから」
「……おうちで何かするですか?」
「秘密」
「そうですか」
「よろしく頼んだよ」
「はいです。私もハンターです! きちんとやります」
「……そう?」
少年はルゥルと別れた後、階段を上って行った。
マーク司祭に話すと奇妙なことがあると言いつつも、翌日、隣町にあるソサエティの支部にいく許可はもらえた。
●彼女
イスルダ島を出て大地を眺めた彼女は優越感と高揚感でいっぱいだった。
(島を出られた、ようやく! あの狭苦しい世界から)
もっと広いところに、王都に行けると確信をしていたがあっさり進軍は終わった。彼女は何がいけないのか状況を見て考える。
べリアルが進軍をしたところまでは良かったはず。
ハンターがいけないことはよくわかる。内側から崩されたような、前と後で違うところを見る。
人形がべリアルに泣きついてきたのを彼女は見ていた。べリアルが実質上敗北を喫したときに、その人形は姿を見せていない。
彼が持っていた部隊と周囲が消滅しているのも事実。だから、人間に負けたと考えるにはあまりにもきれいすぎる。
逃げてきて何があったかを告げるモノもなかったという異様さ。
独自に調査をすると人形だけ生きている、とわかった。
「あたくしとしては、べリアル公がどうこうより、不埒な思いで来たのを見抜けなかったというのが気にくわないのですわ!」
扇をパンと閉じて立ち上がるとドレスを翻す。
「どこに逃げようとあたくしはアレを消しますわ」
不敵に微笑む。
「それがあたくしのやるべきこと。あの子供は家に住み着いているようですもの」
そこに向かう、自身で。
配下のモノをいくらやってもらちが明かないのははっきりしていた。
少年がいるのは王国内。王都が近いとはいえ、何かがあるとは思えぬ場所。
●手紙
受け取った支部の受付はピクリと眉尻を動かす。ソサエティに届けられた手紙は次の物だ。
『親愛なるハンターの皆さま
○月×日ごろ、フォークベリーという小さな町を街道に沿って出たところにある岡の上にて、お茶会を催します。
ぜひ、ご参加よろしくお願いします。
カチカチ山が気になる今日この頃 憂悦孤唱プエル』
リプレイ本文
●茶会は本気か
ミリア・エインズワース(ka1287)は情報を得たとき、茶会が表の要件ではないだろうと考える。
「困っているなら何とかしてやりたいが」
相手のプエルプエル(kz0127)は歪虚であるが、先日のグラズヘイム王国での戦いでは人類側に情報を提供し協力してくれたのは事実だ。
「ミリアのしたいようにすればいいよ」
ミリアの友人であるジョージ・ユニクス(ka0442)は身にまとった全身鎧の下でうなずく。己の心はひとまずしまい、現状見て友人を仲間を守ることとした。
「あの場所はわたくしが初めてのお仕事でいったのですよー。懐かしいです。ペットさんにも頑張っていただきましたし、お弁当やお菓子やら持って遠足気分でしたー」
小宮・千秋(ka6272)は笑う。建物の状態はよくなく、数か月前ですら床を踏み抜きそうになるような危うさがあったという。
ミリアはプエルの隠れ家ではないだろうと目星をつけた。何かに使いやすいから選んだに過ぎない仮の家。
「にしても……今度は茶会か。相変わらずわけの分からなん奴だな」
不動シオン(ka5395)は苦笑する。プエルが動けばそこが戦場となるのは明白で胸の内に熱いものが沸き上がる。
「お茶会……プエル様がどんな方か存じませんが」
ライラ = リューンベリ(ka5507)はわくわくしている。メイドという職に就いているだけあり、茶会を催すほうで楽しみになっていた。戦う準備はしていあるが、カバンの中には念のために茶の用意ができるものは入れてある。
「古臭い建物らしいからな……マスクかスカーフかいるよな。それより、本当に茶会なのか?」
ステラ・レッドキャップ(ka5434)の言葉に誰もが首を横に振る。ステラ自身も「ありえない」と考えているのだから、あくまで意思の確認に過ぎない。
●捜索開始
「プエルー」
「いきなり大声で呼ぶのかよ!」
ミリアの行動にステラが慌てて銃を持ち周囲を見た。ここまでも注意はしてきているが、さすがに大声は不安だ。
沈黙が返ってくる。
「中を調べてみるか」
ミリアは内部の話を聞いてプエルがいるなら書斎か地下室だと推測する。
それ以外の人たちも地下室には何かあるかもという認識がある。人が隠れるにしても、何かを隠すのにも地下室は音も漏れにくいだろうから。
「では、先に二階に上がってみますね」
ライラはさっと【壁歩き】で登った。止める間もなかったが、無事何事もなく、ロープを下し、手招きをする。
「まあ、これも一つの選択か」
シオンがロープを使って登り始め、ミリアも続く。
「一階を調べましょう」
ジョージは残った二人を促す。
「ドキドキしますねー、前とは状況が違いますしー」
「床ぼろそうだから気を付けないとな」
「鎧を着ている僕が一番危ないですね」
三人は小さく笑った後、緊張の糸を張り直し玄関の扉を用心深く開けた。
●静寂は何を意味するのか
玄関はきれいに片付いているが、風に謎の白い粉が舞った。
近づいてみると大きな壺にはたっぷりと白い粉が入っていた。
「これは何でしょう?」
「待て。薬品と言うこともありうる」
ステラは千秋を制し、その粉をナイフで瓶に用心深く移す。匂いと粉の状況を確認する。知っている物のような気がする。
ミネラルウォーターを取り出し、加えてみた。反応を示して異臭や気泡が湧くこともない。
「小麦粉?」
「しかし、これだけの小麦粉を置いておく意味が……」
ジョージは不安をつぶやく。
「かちかち山というお話があると聞きました。プエルさん、これを使って火を起こそうとしているのでしょうか」
「結局……銃と相性悪いよな……」
ステラは粉塵爆破のことを考えて眉をピクリと動かした。
簡単に起こるものではないが、乾燥すればするほど、粉が密集すればするほど起こる危険性は上がる。
外に出す時間より、多少でも持っている水で湿らして進む。
二階に上がったミリア、シオンとライラはゆっくり進む。
「……粉が多いな」
シオンが眉を顰める。銃を抜くのをためらうほどではないが、廊下に白い粉が落ちている。
「なんの粉でしょうか? 調理中に飛び散った小麦粉ってイメージですけれど」
ライラはほうきやモップがほしくてきょろきょろしそうになる。粉への対応も兼ね、通ったところの窓や扉はあけ放つことはしておく。
探索を優先し、粉には触らないまたは湿らす等の対応。
ベッドルームは何もないが、書斎には小麦粉の袋がいくつもある。白い粉の正体は中身が一致すればこれであろう。
「プエル、いるんだろう? 何か手伝ってほしいとか策があるなら話せ。こっちの作戦に乗ってもらった。今度はプエルの作戦に乗ってやる」
ミリアは声をかける。
地下室につながるという戸が開いており、白い小さな影が奥に入って行った。
三人は覗き込み、様子を見る。何かが動く音はするが、大きな体積を感じさせる音ではない。
音は先ほどの小さなものだろうかと足跡をうかがうが、埃よりも白い粉がたくさんで何も分からない。しいて言えば、布に粉をつけてたたきつけている感じだろうか。
三人は暗い階段を下りていく。灯がないが、隙間から光は入っている。
「ここも粉が多いですね」
ライラは掃除したいと腕がうずく。
階段を下りると一階あたりで壁に穴が開き、光が大きく漏れている。中型犬なら通れる大きさであり、白くなっているため出入りしている物体があるのがわかる。
「ジョージいるか?」
ミリアは声を掛けるが返答はない。
「地下も見ておくか?」
シオンに二人はうなずいた、地下に何があるあれば危険はついて回るから。
一階を探索するジョージとステラ、千秋は台所の惨状を見る。
火元となる場所を確認すると火はついていないが、簡単に再着火はできそうだ。
「きっちりぬらしておきますねー」
千秋がかまどを簡単に掃除し、水で濡らしておく。
「ん?」
「あれは?」
警戒をしていたジョージとステラは白い小さい影は走り去るのを見た。
千秋の作業が終わって追いかけると、居間には赤々と燃える暖炉があった。ただ、窓は壊れており風が吹き抜ける。
「消しますね」
千秋がせっせと作業をする。
その間に部屋の捜索を行うステラはテーブルの上のティーセットや菓子を見て眉をしかめた。本当に茶会ならこれらは食べられるものだろうが、変なものが入っていないという保証はないのだ。
「これまで見て生活感はない。地下はまだ見ていないですが……ん? 何か来た」
ジョージは隠れるように指示を出す。
●怒る歪虚
白を基調とし、金糸や銀糸を使った模様がびっしり入った豪奢なドレスにマントをまとった女性は家を前に扇を振った。
「ここにいるのはわかっていますわっ! 出ていらっしゃい。理由があるというならあたくしが聞いて差し上げますわよ」
威厳ある声を上げる。周りにいる羊型歪虚は待機しているが、すぐにでも突入したがっているように見える。
「返答はないのですわね? 子供が大好きだという隠れ鬼……見つかれば滅びだと思い知りなさい」
歪虚たちは動いた。
ジョージとステラ、千秋は隠れて見ていた。
「これはややこしいことに巻き込まれたってことか」
「羊……べリアルの連中か。ミリアたちは中だ」
「こちらにひきつけますか?」
千秋が言うよりも早く、ステラとジョージも立ち上がっていた。
「外なら、銃は使える」
ステラは愛用のオートマチック「アレニスカ」を構えた。
「いつでもいい」
「ほいほーい、良いですよー」
ジョージは盾を構え前に出、千秋は構えてステップを踏む。
庭に飛び出すと同時に銃声がとどろき、戦端が開かれた。
屋根の上で状況を見ていたプエルは目をキラキラさせる。
「すごい、すごい、すごーい。レチタティーヴォ様はこういうのが楽しかったんだ!」
追いかけている歪虚とそれを退治する予定のハンターを呼びこむ。うまく行けば自分は何もしなくても片付く。
出て行ってもっと間近で見たいとも思ったが、我慢して屋根に張り付いてじっと見下すことにした。
一階に戻ったとき、銃声を聞いたミリアとシオン、ライラ。
「もどかしい!」
シオンは壊れている壁を足の裏で蹴った。弱っているそれは盛大な音を立て、折れた。穴が広がる。
「まず、私が行きます」
「もしもの時は他のメンツと合流しろよな」
ミリアは念を押しておく。
ライラは出たころ、音を聞きつけたのか羊型歪虚が入ってくる。
「羊ですか……皆様の安全のため対処いたします」
狭いが一人で振うには問題ないため、先手を切って攻撃をしたがよけられる。
羊型歪虚二体は襲い掛かってきたがよける。
この間にミリアは斬魔刀を差しこみ、壁の穴を大きくする手段をとった。
「まず出る」
シオンがその横をすり抜け、ライラに並ぶ。
狭い室内、二人並び武器を振うのがやっとだ。
「すり抜けられるなら先に合流しろ」
シオンはミリアに告げる。
「分かった」
羊型歪虚がもっといる可能性もあるが外に向かってミリアは走った。
「あらあら……あなた方を見ていると何か腹立ちますわね」
女性の歪虚は攻撃してきた三人を見て赤い唇を苛立ちにゆがませる。
「あなた方はあのお子様のご友人ですかしら?」
「何を言っているのか分からないんだけどな」
ステラは仲間の動きを見つつどこを狙うべきか考える。敵の数は多い。
「ひきつけて攻撃」
「それでかまわねーよ?」
「了解ですー」
【ソウルトーチ】を発動させ盾を構えるジョージを前に、ステラは周囲に目を走らせ、千秋は飛び出し敵を迎え撃つ。
外に向かう最中、桃色な毛並みと白い毛並みの羊型歪虚に挟まれたミリア。戦うにも武器が大きすぎると判断し、白い毛並みのほうを弱いとみて脅すように前に出た。
羊型歪虚がビクッとなった隙をついて出ていく。
「まだいますわ」
「好都合だ」
ミリアを追おうとした二体の後方からライラとシオンが攻撃を仕掛けた。技を使いこちらに向かうように仕向けつつ、ライラの投擲武器も突き刺さる。二体は二人に足止めされる形で撃破される。
女性の歪虚は扇を手にプエルが出てくるのを待っているようだ。
「このままだと手ごまはいなくなりますわよぉ?」
ジョージたちは敵にダメージを与えているが、多勢に無勢状態であり、なかなか有効な攻撃につながっていない。
建物から出て来たミリアは、戦況を把握する。羊型歪虚は仲間に向かっているため、リーダー格らしい女性は高みの見物をしているようだと。
だからこそミリアは一気に間合いを詰め、技を叩き込む。
歪虚は気づいたが、よけきれずそれらを食らう。
「きゃあ、このあたくしになんてことをするのかしら!」
攻撃の手ごたえはあったが、ダメージを反射されたらしく痛みを感じる。思ったよりは痛くはないのは、今回来られなかった夫が持たせてくれた菓子のおかげらしかった。
カバンからはみ出た包みにらしくプエル人形が群がっているのが瞬間的に見えたのだった。
「……」
ミリアが受けた攻撃の一部食らって綿になる。
「うわー、なんでそこにあいつらいるんだ」
プエルの声が降ってくる。ミリアは見上げるとそこにプエルの顔があった。
「見つけましたわ! 人間とつるんでいるということがよくわかりました」
女性の歪虚は悠然と告げる。
「余は人間とつるんでいない! 余は人間で遊んでいるんだ!」
「所詮、元人間の……」
「お前だって同じだろう」
「……!?」
「余がイスルダ島に行って何もしていないと思っているのか?」
プエルは屋根の上で不敵な態度で告げる。
「ミリア様! この歪虚を倒すのですね」
「羊も多くいるし、行くぞ」
ライラはミリアに加勢するため鞭に持ち替え接近し、シオンは防戦のジョージ達に向かう。
「何を言うのです……」
歪虚は動揺しているようにミリアには見えた。
「そう? それならいいよ? あと腐れなく、君を倒したほうがいいよね」
プエルが魔法を紡ぎ始めた。
【ヒーリングファクター】で怪我を軽減するミリアはタイミングを攻撃をするタイミングを計る。
「あ、ああ……あ、あたくしは今回のところは退いて差し上げすわ! あなたが言ったことを吟味する時間が必要ですもの。あたくしはエッタ・サヴィス!」
「うん、知ってる」
目を見開いたエッタは鞭が迫る中、立ち去る。
羊型歪虚も逃げた。半分以上は討たれて無に帰っている。
●なぜこうなる
屋根の上のプエルはハンターを見下ろす。
「そんなところにいたのか」
「そうだよ? 一番よく見えるところだよ」
ミリアはあきれた。
「でー、お前はあいつのこと知ってんのか? ……ってその顔、はったりか」
ステラの問いかけにプエルの目は泳いでいる。
「そこにずっといるのか?」
ジョージの問いかけにプエルは腕を組んで悩んだ。
「プエル様、お招きありがとうございました。紅茶もお菓子も粉まみれですし私が改めて淹れますね?」
「ほいほーい! このたびはお茶会への御招待ありがとうございました。なんにせよ、皆さん無事で何よりです」
ライラはいいながらてきぱきとお茶会の準備をはじめ、千秋もそれを手伝う。
「は?」
困惑するプエルをよそに、草は刈られている庭部分にテーブルやいすが並べられる。
「お茶会ですよ? 下りてきてください」
満面の笑みのライラに手招きされてプエルはおろおろと降り始める。
シオンが手伝って持ってきた椅子に座ってプエルを見る。
「それで、まったく、我々をこれほど愚弄して、貴様は何がしたいんだ? 戦場をプレゼントしてくれるのだから、まあいい。その意味では貴様は実に面白い。だから、消すのは最後にしてやる」
プエルは言葉を聞きながら、目をぱちくりさせる。
「ほら、もふもふだぞー、怖くないぞー」
「……え? 羽が動くっ!」
ミリアはきぐるみ『まるごとぐりふぉん』を着ており、プエルが興味をそそられている。
「それより、あんなことして爆発したらどうするんだ、準備中に」
ミリアはプエルを抱きしめた、怒るよう、慰めるように。
「……うわああ、余、余は男だぞ! は、母上だってしたことないのに!」
プエルはミリアを突き飛ばし、転がるように逃げた。
「……すごい反応だな」
ジョージは何とも言えない顔をする。
「それよりさ、居間にあったスコーン? 何でできているんだ」
「え? 小麦粉とバターと牛乳と――」
ステラに一般的な材料を告げるプエル。
「準備できましたよー」
千秋は踊るようにお菓子が載った皿をテーブルに置く。
「あ、あれえ?」
招待状はあくまで口実だったわけだが、本当にお茶会をすることとなるとは思っていなかったのだった。
ミリア・エインズワース(ka1287)は情報を得たとき、茶会が表の要件ではないだろうと考える。
「困っているなら何とかしてやりたいが」
相手のプエルプエル(kz0127)は歪虚であるが、先日のグラズヘイム王国での戦いでは人類側に情報を提供し協力してくれたのは事実だ。
「ミリアのしたいようにすればいいよ」
ミリアの友人であるジョージ・ユニクス(ka0442)は身にまとった全身鎧の下でうなずく。己の心はひとまずしまい、現状見て友人を仲間を守ることとした。
「あの場所はわたくしが初めてのお仕事でいったのですよー。懐かしいです。ペットさんにも頑張っていただきましたし、お弁当やお菓子やら持って遠足気分でしたー」
小宮・千秋(ka6272)は笑う。建物の状態はよくなく、数か月前ですら床を踏み抜きそうになるような危うさがあったという。
ミリアはプエルの隠れ家ではないだろうと目星をつけた。何かに使いやすいから選んだに過ぎない仮の家。
「にしても……今度は茶会か。相変わらずわけの分からなん奴だな」
不動シオン(ka5395)は苦笑する。プエルが動けばそこが戦場となるのは明白で胸の内に熱いものが沸き上がる。
「お茶会……プエル様がどんな方か存じませんが」
ライラ = リューンベリ(ka5507)はわくわくしている。メイドという職に就いているだけあり、茶会を催すほうで楽しみになっていた。戦う準備はしていあるが、カバンの中には念のために茶の用意ができるものは入れてある。
「古臭い建物らしいからな……マスクかスカーフかいるよな。それより、本当に茶会なのか?」
ステラ・レッドキャップ(ka5434)の言葉に誰もが首を横に振る。ステラ自身も「ありえない」と考えているのだから、あくまで意思の確認に過ぎない。
●捜索開始
「プエルー」
「いきなり大声で呼ぶのかよ!」
ミリアの行動にステラが慌てて銃を持ち周囲を見た。ここまでも注意はしてきているが、さすがに大声は不安だ。
沈黙が返ってくる。
「中を調べてみるか」
ミリアは内部の話を聞いてプエルがいるなら書斎か地下室だと推測する。
それ以外の人たちも地下室には何かあるかもという認識がある。人が隠れるにしても、何かを隠すのにも地下室は音も漏れにくいだろうから。
「では、先に二階に上がってみますね」
ライラはさっと【壁歩き】で登った。止める間もなかったが、無事何事もなく、ロープを下し、手招きをする。
「まあ、これも一つの選択か」
シオンがロープを使って登り始め、ミリアも続く。
「一階を調べましょう」
ジョージは残った二人を促す。
「ドキドキしますねー、前とは状況が違いますしー」
「床ぼろそうだから気を付けないとな」
「鎧を着ている僕が一番危ないですね」
三人は小さく笑った後、緊張の糸を張り直し玄関の扉を用心深く開けた。
●静寂は何を意味するのか
玄関はきれいに片付いているが、風に謎の白い粉が舞った。
近づいてみると大きな壺にはたっぷりと白い粉が入っていた。
「これは何でしょう?」
「待て。薬品と言うこともありうる」
ステラは千秋を制し、その粉をナイフで瓶に用心深く移す。匂いと粉の状況を確認する。知っている物のような気がする。
ミネラルウォーターを取り出し、加えてみた。反応を示して異臭や気泡が湧くこともない。
「小麦粉?」
「しかし、これだけの小麦粉を置いておく意味が……」
ジョージは不安をつぶやく。
「かちかち山というお話があると聞きました。プエルさん、これを使って火を起こそうとしているのでしょうか」
「結局……銃と相性悪いよな……」
ステラは粉塵爆破のことを考えて眉をピクリと動かした。
簡単に起こるものではないが、乾燥すればするほど、粉が密集すればするほど起こる危険性は上がる。
外に出す時間より、多少でも持っている水で湿らして進む。
二階に上がったミリア、シオンとライラはゆっくり進む。
「……粉が多いな」
シオンが眉を顰める。銃を抜くのをためらうほどではないが、廊下に白い粉が落ちている。
「なんの粉でしょうか? 調理中に飛び散った小麦粉ってイメージですけれど」
ライラはほうきやモップがほしくてきょろきょろしそうになる。粉への対応も兼ね、通ったところの窓や扉はあけ放つことはしておく。
探索を優先し、粉には触らないまたは湿らす等の対応。
ベッドルームは何もないが、書斎には小麦粉の袋がいくつもある。白い粉の正体は中身が一致すればこれであろう。
「プエル、いるんだろう? 何か手伝ってほしいとか策があるなら話せ。こっちの作戦に乗ってもらった。今度はプエルの作戦に乗ってやる」
ミリアは声をかける。
地下室につながるという戸が開いており、白い小さな影が奥に入って行った。
三人は覗き込み、様子を見る。何かが動く音はするが、大きな体積を感じさせる音ではない。
音は先ほどの小さなものだろうかと足跡をうかがうが、埃よりも白い粉がたくさんで何も分からない。しいて言えば、布に粉をつけてたたきつけている感じだろうか。
三人は暗い階段を下りていく。灯がないが、隙間から光は入っている。
「ここも粉が多いですね」
ライラは掃除したいと腕がうずく。
階段を下りると一階あたりで壁に穴が開き、光が大きく漏れている。中型犬なら通れる大きさであり、白くなっているため出入りしている物体があるのがわかる。
「ジョージいるか?」
ミリアは声を掛けるが返答はない。
「地下も見ておくか?」
シオンに二人はうなずいた、地下に何があるあれば危険はついて回るから。
一階を探索するジョージとステラ、千秋は台所の惨状を見る。
火元となる場所を確認すると火はついていないが、簡単に再着火はできそうだ。
「きっちりぬらしておきますねー」
千秋がかまどを簡単に掃除し、水で濡らしておく。
「ん?」
「あれは?」
警戒をしていたジョージとステラは白い小さい影は走り去るのを見た。
千秋の作業が終わって追いかけると、居間には赤々と燃える暖炉があった。ただ、窓は壊れており風が吹き抜ける。
「消しますね」
千秋がせっせと作業をする。
その間に部屋の捜索を行うステラはテーブルの上のティーセットや菓子を見て眉をしかめた。本当に茶会ならこれらは食べられるものだろうが、変なものが入っていないという保証はないのだ。
「これまで見て生活感はない。地下はまだ見ていないですが……ん? 何か来た」
ジョージは隠れるように指示を出す。
●怒る歪虚
白を基調とし、金糸や銀糸を使った模様がびっしり入った豪奢なドレスにマントをまとった女性は家を前に扇を振った。
「ここにいるのはわかっていますわっ! 出ていらっしゃい。理由があるというならあたくしが聞いて差し上げますわよ」
威厳ある声を上げる。周りにいる羊型歪虚は待機しているが、すぐにでも突入したがっているように見える。
「返答はないのですわね? 子供が大好きだという隠れ鬼……見つかれば滅びだと思い知りなさい」
歪虚たちは動いた。
ジョージとステラ、千秋は隠れて見ていた。
「これはややこしいことに巻き込まれたってことか」
「羊……べリアルの連中か。ミリアたちは中だ」
「こちらにひきつけますか?」
千秋が言うよりも早く、ステラとジョージも立ち上がっていた。
「外なら、銃は使える」
ステラは愛用のオートマチック「アレニスカ」を構えた。
「いつでもいい」
「ほいほーい、良いですよー」
ジョージは盾を構え前に出、千秋は構えてステップを踏む。
庭に飛び出すと同時に銃声がとどろき、戦端が開かれた。
屋根の上で状況を見ていたプエルは目をキラキラさせる。
「すごい、すごい、すごーい。レチタティーヴォ様はこういうのが楽しかったんだ!」
追いかけている歪虚とそれを退治する予定のハンターを呼びこむ。うまく行けば自分は何もしなくても片付く。
出て行ってもっと間近で見たいとも思ったが、我慢して屋根に張り付いてじっと見下すことにした。
一階に戻ったとき、銃声を聞いたミリアとシオン、ライラ。
「もどかしい!」
シオンは壊れている壁を足の裏で蹴った。弱っているそれは盛大な音を立て、折れた。穴が広がる。
「まず、私が行きます」
「もしもの時は他のメンツと合流しろよな」
ミリアは念を押しておく。
ライラは出たころ、音を聞きつけたのか羊型歪虚が入ってくる。
「羊ですか……皆様の安全のため対処いたします」
狭いが一人で振うには問題ないため、先手を切って攻撃をしたがよけられる。
羊型歪虚二体は襲い掛かってきたがよける。
この間にミリアは斬魔刀を差しこみ、壁の穴を大きくする手段をとった。
「まず出る」
シオンがその横をすり抜け、ライラに並ぶ。
狭い室内、二人並び武器を振うのがやっとだ。
「すり抜けられるなら先に合流しろ」
シオンはミリアに告げる。
「分かった」
羊型歪虚がもっといる可能性もあるが外に向かってミリアは走った。
「あらあら……あなた方を見ていると何か腹立ちますわね」
女性の歪虚は攻撃してきた三人を見て赤い唇を苛立ちにゆがませる。
「あなた方はあのお子様のご友人ですかしら?」
「何を言っているのか分からないんだけどな」
ステラは仲間の動きを見つつどこを狙うべきか考える。敵の数は多い。
「ひきつけて攻撃」
「それでかまわねーよ?」
「了解ですー」
【ソウルトーチ】を発動させ盾を構えるジョージを前に、ステラは周囲に目を走らせ、千秋は飛び出し敵を迎え撃つ。
外に向かう最中、桃色な毛並みと白い毛並みの羊型歪虚に挟まれたミリア。戦うにも武器が大きすぎると判断し、白い毛並みのほうを弱いとみて脅すように前に出た。
羊型歪虚がビクッとなった隙をついて出ていく。
「まだいますわ」
「好都合だ」
ミリアを追おうとした二体の後方からライラとシオンが攻撃を仕掛けた。技を使いこちらに向かうように仕向けつつ、ライラの投擲武器も突き刺さる。二体は二人に足止めされる形で撃破される。
女性の歪虚は扇を手にプエルが出てくるのを待っているようだ。
「このままだと手ごまはいなくなりますわよぉ?」
ジョージたちは敵にダメージを与えているが、多勢に無勢状態であり、なかなか有効な攻撃につながっていない。
建物から出て来たミリアは、戦況を把握する。羊型歪虚は仲間に向かっているため、リーダー格らしい女性は高みの見物をしているようだと。
だからこそミリアは一気に間合いを詰め、技を叩き込む。
歪虚は気づいたが、よけきれずそれらを食らう。
「きゃあ、このあたくしになんてことをするのかしら!」
攻撃の手ごたえはあったが、ダメージを反射されたらしく痛みを感じる。思ったよりは痛くはないのは、今回来られなかった夫が持たせてくれた菓子のおかげらしかった。
カバンからはみ出た包みにらしくプエル人形が群がっているのが瞬間的に見えたのだった。
「……」
ミリアが受けた攻撃の一部食らって綿になる。
「うわー、なんでそこにあいつらいるんだ」
プエルの声が降ってくる。ミリアは見上げるとそこにプエルの顔があった。
「見つけましたわ! 人間とつるんでいるということがよくわかりました」
女性の歪虚は悠然と告げる。
「余は人間とつるんでいない! 余は人間で遊んでいるんだ!」
「所詮、元人間の……」
「お前だって同じだろう」
「……!?」
「余がイスルダ島に行って何もしていないと思っているのか?」
プエルは屋根の上で不敵な態度で告げる。
「ミリア様! この歪虚を倒すのですね」
「羊も多くいるし、行くぞ」
ライラはミリアに加勢するため鞭に持ち替え接近し、シオンは防戦のジョージ達に向かう。
「何を言うのです……」
歪虚は動揺しているようにミリアには見えた。
「そう? それならいいよ? あと腐れなく、君を倒したほうがいいよね」
プエルが魔法を紡ぎ始めた。
【ヒーリングファクター】で怪我を軽減するミリアはタイミングを攻撃をするタイミングを計る。
「あ、ああ……あ、あたくしは今回のところは退いて差し上げすわ! あなたが言ったことを吟味する時間が必要ですもの。あたくしはエッタ・サヴィス!」
「うん、知ってる」
目を見開いたエッタは鞭が迫る中、立ち去る。
羊型歪虚も逃げた。半分以上は討たれて無に帰っている。
●なぜこうなる
屋根の上のプエルはハンターを見下ろす。
「そんなところにいたのか」
「そうだよ? 一番よく見えるところだよ」
ミリアはあきれた。
「でー、お前はあいつのこと知ってんのか? ……ってその顔、はったりか」
ステラの問いかけにプエルの目は泳いでいる。
「そこにずっといるのか?」
ジョージの問いかけにプエルは腕を組んで悩んだ。
「プエル様、お招きありがとうございました。紅茶もお菓子も粉まみれですし私が改めて淹れますね?」
「ほいほーい! このたびはお茶会への御招待ありがとうございました。なんにせよ、皆さん無事で何よりです」
ライラはいいながらてきぱきとお茶会の準備をはじめ、千秋もそれを手伝う。
「は?」
困惑するプエルをよそに、草は刈られている庭部分にテーブルやいすが並べられる。
「お茶会ですよ? 下りてきてください」
満面の笑みのライラに手招きされてプエルはおろおろと降り始める。
シオンが手伝って持ってきた椅子に座ってプエルを見る。
「それで、まったく、我々をこれほど愚弄して、貴様は何がしたいんだ? 戦場をプレゼントしてくれるのだから、まあいい。その意味では貴様は実に面白い。だから、消すのは最後にしてやる」
プエルは言葉を聞きながら、目をぱちくりさせる。
「ほら、もふもふだぞー、怖くないぞー」
「……え? 羽が動くっ!」
ミリアはきぐるみ『まるごとぐりふぉん』を着ており、プエルが興味をそそられている。
「それより、あんなことして爆発したらどうするんだ、準備中に」
ミリアはプエルを抱きしめた、怒るよう、慰めるように。
「……うわああ、余、余は男だぞ! は、母上だってしたことないのに!」
プエルはミリアを突き飛ばし、転がるように逃げた。
「……すごい反応だな」
ジョージは何とも言えない顔をする。
「それよりさ、居間にあったスコーン? 何でできているんだ」
「え? 小麦粉とバターと牛乳と――」
ステラに一般的な材料を告げるプエル。
「準備できましたよー」
千秋は踊るようにお菓子が載った皿をテーブルに置く。
「あ、あれえ?」
招待状はあくまで口実だったわけだが、本当にお茶会をすることとなるとは思っていなかったのだった。
依頼結果
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サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/01/17 08:39:10 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/14 01:31:25 |