ゲスト
(ka0000)
【幻洞】QSエンジン稼働実験
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/01/18 15:00
- 完成日
- 2017/01/21 16:32
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
鉱物性マテリアル採掘量増産を狙って帝国より貸し出された魔導アーマー。
これをドワーフ王ヨアキム(kz0011)が勝手に改造した事がすべての発端であった。人型の魔導アーマーへリーチが伸びる謎の腕パーツや脚部にホバーが取り付けられた脚部パーツ等を取り付け帝国研究員のデザインセンスを全否定した珍妙な機体を生み出したのだ。
確実に帝国からの激怒は必至。
しかし、ヨアキムが施した改造は関係者に多くの疑問を残す。
あのパーツは何なのか。何処から持ってきたのか。
燃料としてのマテリアルが不要のQSエンジンとは一体何なのか。
『魔導アーマー辺境カスタム』と呼ばれる機体の稼働実験に――多くの者が集った。
「凄いじゃないですか、ヨアキム様!」
「褒めるな褒めるな、給仕。煽てても何も出ねぇぞ」
「給仕じゃありません。執事のキュジィです」
ヨアキムの活躍を珍しく褒めるキュジィ(kz0078)。
ヨアキムが改造した魔導アーマーの中で特筆すべき機能の一つ――QSエンジン。
これまでは鉱物性マテリアル等を精製して魔導アーマーの燃料としていた。しかし、QSエンジンはそのマテリアル系燃料を必要としないというのだ。
「しかし……本当に動くんですか、これ?」
「馬鹿野郎。おめぇらが心配だっていうからここまで機体を運んできたんじゃねぇか!」 キュジィの心配――それは、QSエンジンで本当に魔導アーマーが稼働するのか、という点だ。
なにせ、稼働すると言っているのはヨアキム一人。誰も稼働している光景を目撃していない。そこで地下城『ヴェドル』から離れ、第二採掘場へと機体を運んできた。ここで実際に採掘を行って見せて実証しようというのだ。
「大体、採掘場なら第一採掘場の方が近いじゃねぇか。そこで実験しても良いんじゃねぇのか?」
「そりゃまあ……万一城に近い場所で爆発されたら困るじゃないですか」
「ああ、そっか。そりゃそうだよな。爆発されたらみんなに迷惑かけるから、城から遠い場所で実験した方が良いよな」
明らかにキュジィからQSエンジンを信用していない発言が出ているのだが、馬鹿のヨアキムは気付かない。
さすがは純粋かつピュアな心を持つヨアキム。馬鹿の面目躍如である。
「QSエンジンは魔導アーマーのエンジン部にある円筒状の奴だ」
「ああ、確かに円筒状の短く丸い物体が数個見えますね」
ヨアキムが指差した場所は、魔導エンジンがあった箇所だ。そこには丸く短い円筒状の物体が数個取り付けられている。ヨアキムによれば、定期的にこの物体を交換する必要があるらしい。この交換作業が魔導エンジンにおける燃料投入作業にあたるようだ。
魔導エンジンと比較すればずっと小さいエンジン。これであの巨大な機体が稼働するとは、とてもキュジィには思えない。
「ところで、機体と一緒に持ってきたあの麻袋はなんですか?」
「あん? そりゃおめぇ、言ってみればQSエンジンの燃料だよ」
「え!? QSエンジンにも燃料がいるんですか?」
驚くキュジィ。
それに対してヨアキムは驚く理由が皆目分からない様子だ。
「当たり前じゃねぇか。燃料入れてやらなきゃ可哀想じゃねぇか。休憩無しのただ働きだぞ。ブラック企業だぞ」
「ぶらっく? なんです、それ?」
「ただ働きさせるひでぇ奴らだって、ハンターから聞いたんだ」
「そ、そうですか」
「ところで地震による落盤対策は大丈夫だろうな?」
意味不明な事を繰り返すヨアキムだったが、ここでキュジィに任せていた問題について問いかけた。
最近、小規模も入れればかなりの回数の地震が確認されている。採掘中に地震が起きて落盤事故でも起きれば目も当てられない。そこでヨアキムはキュジィへ対策を指示していたのだ。
「問題はありません。他の稼働実験されるチームも含めて採掘場のチェックをしています」
「よぉし、それなら大丈夫そうだな。おめぇら、ワシのQSエンジンを見て驚くんじゃねぇぞ!」
「あ、ヨアキム様。走ると危ないですよ……でも、ちょっと燃料が気になりますね。どれどれ」
張り切りすぎて無意味に走り出すヨアキム。その横でキュジィがそっと燃料が入った麻袋を覗いてみた。
そこには――
「……? これ穀物や植物の種ですね。これが燃料?」
燃料を見て、ますます理解ができない様子のキュジィだった。
●
QSエンジン開発はヨアキムの活躍によるものだが、その開発にはある協力者が存在した。
エンジン完成の一報を受けた協力者は、隠れるように地下城『ヴェドル』へと入る。
誰かに発見されてはサプライズにならないと考えたからだ。
「むほほっ。我輩を役立たずと思っている皆に王の威厳を示して崇めさせるであります。待っているでありますよ、皆の衆!」
これをドワーフ王ヨアキム(kz0011)が勝手に改造した事がすべての発端であった。人型の魔導アーマーへリーチが伸びる謎の腕パーツや脚部にホバーが取り付けられた脚部パーツ等を取り付け帝国研究員のデザインセンスを全否定した珍妙な機体を生み出したのだ。
確実に帝国からの激怒は必至。
しかし、ヨアキムが施した改造は関係者に多くの疑問を残す。
あのパーツは何なのか。何処から持ってきたのか。
燃料としてのマテリアルが不要のQSエンジンとは一体何なのか。
『魔導アーマー辺境カスタム』と呼ばれる機体の稼働実験に――多くの者が集った。
「凄いじゃないですか、ヨアキム様!」
「褒めるな褒めるな、給仕。煽てても何も出ねぇぞ」
「給仕じゃありません。執事のキュジィです」
ヨアキムの活躍を珍しく褒めるキュジィ(kz0078)。
ヨアキムが改造した魔導アーマーの中で特筆すべき機能の一つ――QSエンジン。
これまでは鉱物性マテリアル等を精製して魔導アーマーの燃料としていた。しかし、QSエンジンはそのマテリアル系燃料を必要としないというのだ。
「しかし……本当に動くんですか、これ?」
「馬鹿野郎。おめぇらが心配だっていうからここまで機体を運んできたんじゃねぇか!」 キュジィの心配――それは、QSエンジンで本当に魔導アーマーが稼働するのか、という点だ。
なにせ、稼働すると言っているのはヨアキム一人。誰も稼働している光景を目撃していない。そこで地下城『ヴェドル』から離れ、第二採掘場へと機体を運んできた。ここで実際に採掘を行って見せて実証しようというのだ。
「大体、採掘場なら第一採掘場の方が近いじゃねぇか。そこで実験しても良いんじゃねぇのか?」
「そりゃまあ……万一城に近い場所で爆発されたら困るじゃないですか」
「ああ、そっか。そりゃそうだよな。爆発されたらみんなに迷惑かけるから、城から遠い場所で実験した方が良いよな」
明らかにキュジィからQSエンジンを信用していない発言が出ているのだが、馬鹿のヨアキムは気付かない。
さすがは純粋かつピュアな心を持つヨアキム。馬鹿の面目躍如である。
「QSエンジンは魔導アーマーのエンジン部にある円筒状の奴だ」
「ああ、確かに円筒状の短く丸い物体が数個見えますね」
ヨアキムが指差した場所は、魔導エンジンがあった箇所だ。そこには丸く短い円筒状の物体が数個取り付けられている。ヨアキムによれば、定期的にこの物体を交換する必要があるらしい。この交換作業が魔導エンジンにおける燃料投入作業にあたるようだ。
魔導エンジンと比較すればずっと小さいエンジン。これであの巨大な機体が稼働するとは、とてもキュジィには思えない。
「ところで、機体と一緒に持ってきたあの麻袋はなんですか?」
「あん? そりゃおめぇ、言ってみればQSエンジンの燃料だよ」
「え!? QSエンジンにも燃料がいるんですか?」
驚くキュジィ。
それに対してヨアキムは驚く理由が皆目分からない様子だ。
「当たり前じゃねぇか。燃料入れてやらなきゃ可哀想じゃねぇか。休憩無しのただ働きだぞ。ブラック企業だぞ」
「ぶらっく? なんです、それ?」
「ただ働きさせるひでぇ奴らだって、ハンターから聞いたんだ」
「そ、そうですか」
「ところで地震による落盤対策は大丈夫だろうな?」
意味不明な事を繰り返すヨアキムだったが、ここでキュジィに任せていた問題について問いかけた。
最近、小規模も入れればかなりの回数の地震が確認されている。採掘中に地震が起きて落盤事故でも起きれば目も当てられない。そこでヨアキムはキュジィへ対策を指示していたのだ。
「問題はありません。他の稼働実験されるチームも含めて採掘場のチェックをしています」
「よぉし、それなら大丈夫そうだな。おめぇら、ワシのQSエンジンを見て驚くんじゃねぇぞ!」
「あ、ヨアキム様。走ると危ないですよ……でも、ちょっと燃料が気になりますね。どれどれ」
張り切りすぎて無意味に走り出すヨアキム。その横でキュジィがそっと燃料が入った麻袋を覗いてみた。
そこには――
「……? これ穀物や植物の種ですね。これが燃料?」
燃料を見て、ますます理解ができない様子のキュジィだった。
●
QSエンジン開発はヨアキムの活躍によるものだが、その開発にはある協力者が存在した。
エンジン完成の一報を受けた協力者は、隠れるように地下城『ヴェドル』へと入る。
誰かに発見されてはサプライズにならないと考えたからだ。
「むほほっ。我輩を役立たずと思っている皆に王の威厳を示して崇めさせるであります。待っているでありますよ、皆の衆!」
リプレイ本文
「ザレムじゃねぇか!」
ドワーフ王ヨアキム(kz0011)を前に、ザレム・アズール(ka0878)は久しぶりの再会を果たす。
以前、歪虚王ビックマーと共に戦った経歴のあるザレム。
図々しいヨアキムに肩を組まれるものの、そう悪い気はしない。
「お久しぶりです。早速で恐縮ですが、魔導アーマーを見せて下さい」
ザレムの言う魔導アーマーとは、『魔導アーマー辺境カスタム』という機体だ。
本来、採掘用に帝国から借用した魔導アーマーであったが、ヨアキムに採掘中に発掘された謎パーツを付与されて改造されたのだ。
「こいつだ」
ハンター達が呼び出されたのは、ドワーフの地下城『ヴェドル』から北へ離れた第二採掘場。
その第二採掘場の比較的広い場所に魔導アーマーは鎮座していた。
「これが魔導アーマーって奴ね? 噂には聞けどもがっつり見るのは初めてだわ」
魔導カメラで魔導アーマーを撮影するのはケイ(ka4032)。
資料用としての撮影と称しているが、明らかに枚数が多い。
おそらく自分用の記念撮影も兼ねているのだろう。
「と、そういえば初めましてじゃない? アーマー初心者のケイさんよ。お手柔らかにお願いするわ!」
撮影の途中で頭を深々と下げるケイ。
しかし、後方に居るハンター達の顔はやや浮かない表情だ。
「こういうの魔改造って言うんだ……困った人だねぇ」
ボラの戦士アーシュラ・クリオール(ka0226)は、ため息をついた。
帝国からの借り物をヨアキムが改造。それも魔導アーマーの手を勝手に拾ってきた巨大ドリルへ換装してしまったのだ。
「さすがは、『あの』ドワーフ王」
八原 篝(ka3104)も目の前の物体に奇妙な感覚を覚える。
目の前に奇妙な機体が存在しているが、今回のメインはその機体の可動部だ。
「問題はあれか……QSエンジン、ねぇ」
柊 恭也(ka0711)は魔導アーマーの背後に回り込む。
本来魔導エンジンがある場所に設置されているのは、QSエンジンと呼ばれる新型のエンジン。
ヨアキムによれば、このエンジンは既存の鉱物性マテリアルは不要。マテリアルによる燃料無しでエンジンが稼働するらしい。
「で、こっちが燃料だったな」
マリィア・バルデス(ka5848)は近くにあった麻袋に視線を移す。
そこには植物の種子らしきものが大量に入っている。
「早速、実験としゃれこもうじゃねぇか!」
ヨアキムが高らかに宣言する。
ここに世界初のハンター同席によるQSエンジン稼働実験が開始される。
●
「まずは魔導アーマーのメカニズムチェックね」
アーシュラは魔導アーマーの各関節構造の違いをチェックする。
点検用ハンマーで叩いて返ってくる音を確認するのだ。
「特に変わったところはないなぁ」
アーシュラがハンマーで叩いても通常の金属音が響くだけ。
腕部に取り付けられたドリルだけは素材が何なのかまったく不明だが、他の箇所は普通の素材を使っているようだ。
「早速エンジンを」
アーシュラはQSエンジンに向かってハンマーを振り下ろそうとする。
そこへ慌ててヨアキムが走り込んで来る。
「待て! お前、何しようとしているんだ?」
「ハンマーでエンジンを叩いて材質チェックしようとしているんだけど……」
「いきなり叩いたらダメだ!」
アーシュラのハンマーをヨアキムは拒否する。
その慌てた様子にアーシュラは何かを隠している事を瞬時に察知した。
「ダメなの?」
「いきなり叩いたらビックリするからだろ」
「『何が』ビックリするの?」
嫌らしい追求の仕方をするアーシュラ。
答えに窮したヨアキムは思い悩んだ挙げ句、QSエンジンへ叫び始めた。
「今から叩くけど、おめぇらビックリするなよ」
「誰に言ってるの?」
「ま、いいじゃねぇか。ほら、良いぜ。叩いて見ろよ」
ヨアキムへ促されるままに、QSエンジンをハンマーで叩くアーシュラ。
叩いては見たが、やはり材質は通常の材質と変わりないようだ。
●
「起動してみるか」
魔導アーマー辺境カスタムに騎乗した恭也は、早速エンジンをスタートさせる。
通常であれば魔導エンジンから派手なエンジン音が鳴り響くのだが、QSエンジンはそれ程派手なエンジン音が聞こえてこない。
「これ、エンジンかかってるのか?」
半信半疑のまま、恭也は機体を動かす。
次の瞬間、意図したように足が前へと出て歩み始める。
「動いたか。エンジン音があまりしないのは妙な感覚だ」
「これだけ静かであれば、隠密偵察も可能かもしれません。その上、燃料があの植物の種とは」
「褒めるな褒めるな」
調子に乗るヨアキムが、さらに褒められ有頂天。
実際、既存の魔導アーマーと比較しても静かな起動だ。軽量化をすれば隠密活動や偵察もできるかもしれない。
ここでザレムは更にヨアキムへ切り込んでみる。
「どういう仕組みなんですか?」
「ああ、QSエンジンの中で……って、言う訳ねぇじゃねぇか!」
どうやらヨアキムは話してくれないようだ。
しかし、ザレムも抜かりは無い。
「エンジンには種。王にもごはん。小腹減りませんか?」
ザレムはバラエティランチと緑茶を取り出した。
露骨なまでの買収工作なのだが、ヨアキムには効果てきめんだ!
「いいのか? 悪いなぁ」
「で、QSって何の略ですか? Q極システムだったりしません?」
「ああ、あれはキュー……いや、ダメだって」
そこへ買収チャンスと気付いたアーシュラが、缶ビール片手にやってくる。
「まま、まずは軽く飲んじゃって」
「なんだ? 急にどうしたんだよ」
そう言いながら、ヨアキムはご満悦。
もらった缶ビールに躊躇無く口を付ける。
「で、どういうところが開発で苦労したんです?」
「そいつぁ、中の歯車が回転するんだけどよ。これをどう効率良くマテリアルへ変換して動力にするかってところだな」
「なるほど。つまり、中の歯車が何らかの動力で回転してマテリアルを生み出しているんですね」
早速聞き出した情報をメモに書き留めるアーシュラ。
ビールを飲みながらご満悦のヨアキムだったが、この瞬間に我へと返る。
「あ! ダメじゃん! ワシ、喋っちゃダメじゃん!」
我に返りそうなヨアキムを、ザレムはすかさずランチへ引き戻す。
「こっちの卵焼きもうまいぞ。
それよりその歯車は一つなんですか? それとも複数ですか?」
「あの円筒状のパーツ分だけ歯車はある。QSシステムは歯車の数、正確には歯車の回転数に比例してマテリアルが供給される仕組みだ。
うん、この卵焼きもうめぇ!」
秘密だった情報も、卵焼き一個でご開帳。
本当に馬鹿で楽ちんだ。
「では、次の実験に移ろう」
恭也は早速壁へ魔導アーマーを歩かせてドリルを稼働させる。
今後の実験はエネルギー容量と最大稼働時間。
一回の補給でどれだけ通常の採掘作業が行えるかがポイントだ。
「2~3時間はぶっ続けて採掘してもらわないと動力として心許ないわね……って、よく見たらあのドリルはなに?」
謎パーツにも興味のある八原。
ここでドリルの動きが奇妙である事に気付く。
通常のドリルは回転させて穿孔する。
一方、目の前の魔導アーマーはドリルを回転させるというよりも、尖った針を早いスピードで連続突きをしているように見える。
「それにしても変な動きね。あの動き、何なのかしら……」
「この動きも早速カメラで激写!」
ドリルの動きも含めて魔導カメラで撮影するケイ。
実はこっそりパルムに魔導アーマーを探らせもしていたのだが、QSエンジンの小さな穴からは中が良く見えなかったようだ。
「エンジンの発熱はどう? 熱くなりすぎてない?」
マリィアは恭也へ叫ぶ。
エンジンを稼働させれば、相応の発熱量を発する。静かであっても発熱量が大きすぎれば、機体への負担が増大するからだ。
「いや、通常の魔導アーマーと比較しても発熱量は小さいようだ」
エンジンに軽く手を触れてみる恭也。
想像よりもずっと温度は低い。
「発熱量は小さい、か。
ヨアキム、ラジエーターの給水口はどこかしら?」
「え?」
唐揚げを満喫していたヨアキムは、マリィアに呼ばれて振り返る。
明らかにザレムのランチに夢中で実験はそっちのけだ。
「聞いてなかったの? ラジエーターの給水口よ。操縦するならそのくらいきちんと知っておかないとまずいと思うのよ」
マリィアの言っている事は正論だ。
戦場で魔導アーマーのパイロットがエンジン事を何も知らないでは済まない。最低限の知識は必要なのだ。
だが、ヨアキムの反応は鈍い。
「あー、えーと……どこだっけなぁ」
「ちょっと、大丈夫なの?」
「水が必要となる前に交代させるつもりだったからよ」
「交代?」
マリィアが問いかけた瞬間、魔導アーマーが突然動きを停止した。
騎乗していた恭也が操縦席で冷静な分析を下す。
「フル稼働させて30分……戦場ではちょっと厳しい稼働時間だな。
これの有用性が実証されたなら、歴史に名を刻む大発見なんだけど……なーんかこう、俺の第六感が訴えているんだよなぁ」
頭を掻きながら、脳内を整理する恭也。
エンジンとして改良するとしても、何かが違うと呼び掛けている。
「もう、そんな時間か。待ってろよ」
そう言うなり、ヨアキムは魔導アーマーの背後に回ってQSエンジンの円筒状部分を取り外す。
そして、懐から別のパーツを取り出して被せていく。
「おし、これでどうだ?」
「あ、エンジンがかかった」
恭也の乗っている魔導アーマーが、再び採掘を始める。
円筒状のパーツを抱えるヨアキムの前にアーシュラが駆け寄ってくる。
「そうやって交換するんだ? 燃料はどうするの?」
「今からやるんだよ」
ヨアキムは麻袋から植物の種子を掴むと、円筒状のパーツに開けられた穴へ押し込んでいく。
ここでザレムに閃きが。
「ヨアキムさん、手伝いましょうか?」
「悪いな。頼む」
ヨアキムに渡されるパーツ。
ザレムはヨアキムのやった要領で種子を穴へ無理矢理押し込んだ。
手の中でパーツが微妙に震え、何かが這い回っている感触が伝わる。
「まさか、その中に居るのって……ナマモノ?」
八原が、ふとそう呟いた。
そうだとするなら、これは倫理的にかなりマズイのではないか。
「ヨアキム……さん? まさか、エンジンの中に幻獣や英霊が入っているとか……言わないわよね?」
マリィアは強い感じで詰め寄った。
図星だったのだろう。ヨアキムは明らかに動揺している。
「うっ」
「そうであります!」
「チューダ様!」
岩陰から颯爽と飛び出したのは、幻獣王チューダ(kz0173)であった。
ザレムは、突然現れたチューダに歓喜する。実はチューダの登場をずっと待ち望んでいたのだ。
「……待たせたな。決まったであります!」
●
「つまりですな。我輩の眷属である幻獣キューソが中で走って歯車を回していたでありますよ」
ザレムからもらった菓子を喰らい、マッサージしてもらうチューダ。
完全にだらけきって王らしさは欠片もないのだが、ザレムはマッサージをしながらチューダのもふもふを満喫していた。
「QSエンジンというのは?」
「キューソエンジン。略してQSエンジンだ」
名称も知ってしまえば、実に安直なネーミングであった。
ヨアキムが交換した円筒状のパーツを交換する事でキューソを入れ替えていたのだ。ついでに燃料が種子だったのも働いた御褒美という訳だ。
「そんな幻獣虐待の機体に乗れるか~! って本当なら言いたいけど。それなりの覚悟はあるのよね?」
マリィアはヨアキムとチューダに視線を送る。
「軍にはね、玉砕って言葉があるのよ。必要なら命は最後の武器になる。戦況が追い詰められていれば、最後の武器を使う事になる。エンジンの中にいる子達はその覚悟があるの?」
一緒に逝くか。
共に帰るか。
キューソ達の命もパイロットは預からなければならない。
もし考えていなかったならば、今一度その覚悟を知って欲しい。
「言いてぇ事は分かるぜ。この話はチューダから持ち込まれたんだ。キューソの為に力を貸せってよ」
ヨアキムはアーシュラのビールを片手に呟いた。
その言葉にチューダは大きく頷いた。
「このQSエンジンで頑張るキューソ達は、我輩の『新生幻獣王親衛隊』の一員であります。お世話になっているみんなのために戦いたいと志願したキューソであります」
チューダによれば、キューソ達も何か人間の為に役立ちたいという意見があったらしい。しかし、キューソは逃げ足こそあれども戦う事は難しい。そこでヨアキムに相談してQSエンジンを生み出した。
つまり、このキューソも戦う意志はあるのだ。
「そう。無粋な事を言ったわね。
この機体、良い機体と思うわよ。もう少し、稼働時間が長ければ良いんだけど」
「いやいや、キューソ達も頑張った。ささ、このふかふかベッドで休んで」
エンジンのパーツから出てきたキューソ達は、ザレムの作った小さなベッドで休憩している。
一生懸命走ったのだろう。息を切らせながら、並んで敬礼しているキューソ達。
小さな体で頑張るキューソ達を見るだけで、何故かほっこりしてしまう。
「ヨアキム様、キューソ達の休憩室も欲しいです」
「休憩室……あ、キューソの休憩室をエンジン内に作って自主的に交代するようにできれば稼働時間を延長できるぞ!」
ザレムの一言で思い付くヨアキム。
現行は一つのパーツに一体のキューソが入って歯車を回していた。だから、キューソを交代させるには毎回外部よりパーツ交換が必要であった。もし、QSエンジン内に休憩室を設けてキューソに交代の概念を教えれば、連続稼働時間は比較的に向上する。
「キューソは教えればちゃんと働くであります。我輩が教えれば、それもすぐに可能でありますよ」
チューダのお墨付きがあれば、問題ないだろう。
新たなる改良が加わる事に喜びを露わにするケイ。
「やったね! 一時は草で動くかと思ってたけど、これで……」
そう言い掛けた瞬間、地面が激しく動く。
ハンター達も思わずその場で踏みとどまる。
「なんだこれっ!?」
八原は周囲を見回す。
明らかに震源地は近い。が、地震にしては何かがおかしい。
「……あ、あれ!」
アーシュラは、壁に向かって指を差した。
そこには崩れた壁から見える謎の白い何か。
蛇にも似た鱗のような存在。明らかに白い何かは動きながら東から西へ移動している。「なんだこりゃ? グランドワーム? いや、それよりももっとデカい。それにこの気配は……間違いなく歪虚だな」
恭也の乗る魔導アーマーよりも遙かに大きな存在。
それが一体何なのか。
現時点では不明だが、これだけははっきりしている。
歪虚らしき何かが、辺境の地下に居て蠢いている。
マリィアが、キューソ達に視線を合わせる。
「キューソ達と一緒に戦う時が、予想よりずっと早く来たようね」
ドワーフ王ヨアキム(kz0011)を前に、ザレム・アズール(ka0878)は久しぶりの再会を果たす。
以前、歪虚王ビックマーと共に戦った経歴のあるザレム。
図々しいヨアキムに肩を組まれるものの、そう悪い気はしない。
「お久しぶりです。早速で恐縮ですが、魔導アーマーを見せて下さい」
ザレムの言う魔導アーマーとは、『魔導アーマー辺境カスタム』という機体だ。
本来、採掘用に帝国から借用した魔導アーマーであったが、ヨアキムに採掘中に発掘された謎パーツを付与されて改造されたのだ。
「こいつだ」
ハンター達が呼び出されたのは、ドワーフの地下城『ヴェドル』から北へ離れた第二採掘場。
その第二採掘場の比較的広い場所に魔導アーマーは鎮座していた。
「これが魔導アーマーって奴ね? 噂には聞けどもがっつり見るのは初めてだわ」
魔導カメラで魔導アーマーを撮影するのはケイ(ka4032)。
資料用としての撮影と称しているが、明らかに枚数が多い。
おそらく自分用の記念撮影も兼ねているのだろう。
「と、そういえば初めましてじゃない? アーマー初心者のケイさんよ。お手柔らかにお願いするわ!」
撮影の途中で頭を深々と下げるケイ。
しかし、後方に居るハンター達の顔はやや浮かない表情だ。
「こういうの魔改造って言うんだ……困った人だねぇ」
ボラの戦士アーシュラ・クリオール(ka0226)は、ため息をついた。
帝国からの借り物をヨアキムが改造。それも魔導アーマーの手を勝手に拾ってきた巨大ドリルへ換装してしまったのだ。
「さすがは、『あの』ドワーフ王」
八原 篝(ka3104)も目の前の物体に奇妙な感覚を覚える。
目の前に奇妙な機体が存在しているが、今回のメインはその機体の可動部だ。
「問題はあれか……QSエンジン、ねぇ」
柊 恭也(ka0711)は魔導アーマーの背後に回り込む。
本来魔導エンジンがある場所に設置されているのは、QSエンジンと呼ばれる新型のエンジン。
ヨアキムによれば、このエンジンは既存の鉱物性マテリアルは不要。マテリアルによる燃料無しでエンジンが稼働するらしい。
「で、こっちが燃料だったな」
マリィア・バルデス(ka5848)は近くにあった麻袋に視線を移す。
そこには植物の種子らしきものが大量に入っている。
「早速、実験としゃれこもうじゃねぇか!」
ヨアキムが高らかに宣言する。
ここに世界初のハンター同席によるQSエンジン稼働実験が開始される。
●
「まずは魔導アーマーのメカニズムチェックね」
アーシュラは魔導アーマーの各関節構造の違いをチェックする。
点検用ハンマーで叩いて返ってくる音を確認するのだ。
「特に変わったところはないなぁ」
アーシュラがハンマーで叩いても通常の金属音が響くだけ。
腕部に取り付けられたドリルだけは素材が何なのかまったく不明だが、他の箇所は普通の素材を使っているようだ。
「早速エンジンを」
アーシュラはQSエンジンに向かってハンマーを振り下ろそうとする。
そこへ慌ててヨアキムが走り込んで来る。
「待て! お前、何しようとしているんだ?」
「ハンマーでエンジンを叩いて材質チェックしようとしているんだけど……」
「いきなり叩いたらダメだ!」
アーシュラのハンマーをヨアキムは拒否する。
その慌てた様子にアーシュラは何かを隠している事を瞬時に察知した。
「ダメなの?」
「いきなり叩いたらビックリするからだろ」
「『何が』ビックリするの?」
嫌らしい追求の仕方をするアーシュラ。
答えに窮したヨアキムは思い悩んだ挙げ句、QSエンジンへ叫び始めた。
「今から叩くけど、おめぇらビックリするなよ」
「誰に言ってるの?」
「ま、いいじゃねぇか。ほら、良いぜ。叩いて見ろよ」
ヨアキムへ促されるままに、QSエンジンをハンマーで叩くアーシュラ。
叩いては見たが、やはり材質は通常の材質と変わりないようだ。
●
「起動してみるか」
魔導アーマー辺境カスタムに騎乗した恭也は、早速エンジンをスタートさせる。
通常であれば魔導エンジンから派手なエンジン音が鳴り響くのだが、QSエンジンはそれ程派手なエンジン音が聞こえてこない。
「これ、エンジンかかってるのか?」
半信半疑のまま、恭也は機体を動かす。
次の瞬間、意図したように足が前へと出て歩み始める。
「動いたか。エンジン音があまりしないのは妙な感覚だ」
「これだけ静かであれば、隠密偵察も可能かもしれません。その上、燃料があの植物の種とは」
「褒めるな褒めるな」
調子に乗るヨアキムが、さらに褒められ有頂天。
実際、既存の魔導アーマーと比較しても静かな起動だ。軽量化をすれば隠密活動や偵察もできるかもしれない。
ここでザレムは更にヨアキムへ切り込んでみる。
「どういう仕組みなんですか?」
「ああ、QSエンジンの中で……って、言う訳ねぇじゃねぇか!」
どうやらヨアキムは話してくれないようだ。
しかし、ザレムも抜かりは無い。
「エンジンには種。王にもごはん。小腹減りませんか?」
ザレムはバラエティランチと緑茶を取り出した。
露骨なまでの買収工作なのだが、ヨアキムには効果てきめんだ!
「いいのか? 悪いなぁ」
「で、QSって何の略ですか? Q極システムだったりしません?」
「ああ、あれはキュー……いや、ダメだって」
そこへ買収チャンスと気付いたアーシュラが、缶ビール片手にやってくる。
「まま、まずは軽く飲んじゃって」
「なんだ? 急にどうしたんだよ」
そう言いながら、ヨアキムはご満悦。
もらった缶ビールに躊躇無く口を付ける。
「で、どういうところが開発で苦労したんです?」
「そいつぁ、中の歯車が回転するんだけどよ。これをどう効率良くマテリアルへ変換して動力にするかってところだな」
「なるほど。つまり、中の歯車が何らかの動力で回転してマテリアルを生み出しているんですね」
早速聞き出した情報をメモに書き留めるアーシュラ。
ビールを飲みながらご満悦のヨアキムだったが、この瞬間に我へと返る。
「あ! ダメじゃん! ワシ、喋っちゃダメじゃん!」
我に返りそうなヨアキムを、ザレムはすかさずランチへ引き戻す。
「こっちの卵焼きもうまいぞ。
それよりその歯車は一つなんですか? それとも複数ですか?」
「あの円筒状のパーツ分だけ歯車はある。QSシステムは歯車の数、正確には歯車の回転数に比例してマテリアルが供給される仕組みだ。
うん、この卵焼きもうめぇ!」
秘密だった情報も、卵焼き一個でご開帳。
本当に馬鹿で楽ちんだ。
「では、次の実験に移ろう」
恭也は早速壁へ魔導アーマーを歩かせてドリルを稼働させる。
今後の実験はエネルギー容量と最大稼働時間。
一回の補給でどれだけ通常の採掘作業が行えるかがポイントだ。
「2~3時間はぶっ続けて採掘してもらわないと動力として心許ないわね……って、よく見たらあのドリルはなに?」
謎パーツにも興味のある八原。
ここでドリルの動きが奇妙である事に気付く。
通常のドリルは回転させて穿孔する。
一方、目の前の魔導アーマーはドリルを回転させるというよりも、尖った針を早いスピードで連続突きをしているように見える。
「それにしても変な動きね。あの動き、何なのかしら……」
「この動きも早速カメラで激写!」
ドリルの動きも含めて魔導カメラで撮影するケイ。
実はこっそりパルムに魔導アーマーを探らせもしていたのだが、QSエンジンの小さな穴からは中が良く見えなかったようだ。
「エンジンの発熱はどう? 熱くなりすぎてない?」
マリィアは恭也へ叫ぶ。
エンジンを稼働させれば、相応の発熱量を発する。静かであっても発熱量が大きすぎれば、機体への負担が増大するからだ。
「いや、通常の魔導アーマーと比較しても発熱量は小さいようだ」
エンジンに軽く手を触れてみる恭也。
想像よりもずっと温度は低い。
「発熱量は小さい、か。
ヨアキム、ラジエーターの給水口はどこかしら?」
「え?」
唐揚げを満喫していたヨアキムは、マリィアに呼ばれて振り返る。
明らかにザレムのランチに夢中で実験はそっちのけだ。
「聞いてなかったの? ラジエーターの給水口よ。操縦するならそのくらいきちんと知っておかないとまずいと思うのよ」
マリィアの言っている事は正論だ。
戦場で魔導アーマーのパイロットがエンジン事を何も知らないでは済まない。最低限の知識は必要なのだ。
だが、ヨアキムの反応は鈍い。
「あー、えーと……どこだっけなぁ」
「ちょっと、大丈夫なの?」
「水が必要となる前に交代させるつもりだったからよ」
「交代?」
マリィアが問いかけた瞬間、魔導アーマーが突然動きを停止した。
騎乗していた恭也が操縦席で冷静な分析を下す。
「フル稼働させて30分……戦場ではちょっと厳しい稼働時間だな。
これの有用性が実証されたなら、歴史に名を刻む大発見なんだけど……なーんかこう、俺の第六感が訴えているんだよなぁ」
頭を掻きながら、脳内を整理する恭也。
エンジンとして改良するとしても、何かが違うと呼び掛けている。
「もう、そんな時間か。待ってろよ」
そう言うなり、ヨアキムは魔導アーマーの背後に回ってQSエンジンの円筒状部分を取り外す。
そして、懐から別のパーツを取り出して被せていく。
「おし、これでどうだ?」
「あ、エンジンがかかった」
恭也の乗っている魔導アーマーが、再び採掘を始める。
円筒状のパーツを抱えるヨアキムの前にアーシュラが駆け寄ってくる。
「そうやって交換するんだ? 燃料はどうするの?」
「今からやるんだよ」
ヨアキムは麻袋から植物の種子を掴むと、円筒状のパーツに開けられた穴へ押し込んでいく。
ここでザレムに閃きが。
「ヨアキムさん、手伝いましょうか?」
「悪いな。頼む」
ヨアキムに渡されるパーツ。
ザレムはヨアキムのやった要領で種子を穴へ無理矢理押し込んだ。
手の中でパーツが微妙に震え、何かが這い回っている感触が伝わる。
「まさか、その中に居るのって……ナマモノ?」
八原が、ふとそう呟いた。
そうだとするなら、これは倫理的にかなりマズイのではないか。
「ヨアキム……さん? まさか、エンジンの中に幻獣や英霊が入っているとか……言わないわよね?」
マリィアは強い感じで詰め寄った。
図星だったのだろう。ヨアキムは明らかに動揺している。
「うっ」
「そうであります!」
「チューダ様!」
岩陰から颯爽と飛び出したのは、幻獣王チューダ(kz0173)であった。
ザレムは、突然現れたチューダに歓喜する。実はチューダの登場をずっと待ち望んでいたのだ。
「……待たせたな。決まったであります!」
●
「つまりですな。我輩の眷属である幻獣キューソが中で走って歯車を回していたでありますよ」
ザレムからもらった菓子を喰らい、マッサージしてもらうチューダ。
完全にだらけきって王らしさは欠片もないのだが、ザレムはマッサージをしながらチューダのもふもふを満喫していた。
「QSエンジンというのは?」
「キューソエンジン。略してQSエンジンだ」
名称も知ってしまえば、実に安直なネーミングであった。
ヨアキムが交換した円筒状のパーツを交換する事でキューソを入れ替えていたのだ。ついでに燃料が種子だったのも働いた御褒美という訳だ。
「そんな幻獣虐待の機体に乗れるか~! って本当なら言いたいけど。それなりの覚悟はあるのよね?」
マリィアはヨアキムとチューダに視線を送る。
「軍にはね、玉砕って言葉があるのよ。必要なら命は最後の武器になる。戦況が追い詰められていれば、最後の武器を使う事になる。エンジンの中にいる子達はその覚悟があるの?」
一緒に逝くか。
共に帰るか。
キューソ達の命もパイロットは預からなければならない。
もし考えていなかったならば、今一度その覚悟を知って欲しい。
「言いてぇ事は分かるぜ。この話はチューダから持ち込まれたんだ。キューソの為に力を貸せってよ」
ヨアキムはアーシュラのビールを片手に呟いた。
その言葉にチューダは大きく頷いた。
「このQSエンジンで頑張るキューソ達は、我輩の『新生幻獣王親衛隊』の一員であります。お世話になっているみんなのために戦いたいと志願したキューソであります」
チューダによれば、キューソ達も何か人間の為に役立ちたいという意見があったらしい。しかし、キューソは逃げ足こそあれども戦う事は難しい。そこでヨアキムに相談してQSエンジンを生み出した。
つまり、このキューソも戦う意志はあるのだ。
「そう。無粋な事を言ったわね。
この機体、良い機体と思うわよ。もう少し、稼働時間が長ければ良いんだけど」
「いやいや、キューソ達も頑張った。ささ、このふかふかベッドで休んで」
エンジンのパーツから出てきたキューソ達は、ザレムの作った小さなベッドで休憩している。
一生懸命走ったのだろう。息を切らせながら、並んで敬礼しているキューソ達。
小さな体で頑張るキューソ達を見るだけで、何故かほっこりしてしまう。
「ヨアキム様、キューソ達の休憩室も欲しいです」
「休憩室……あ、キューソの休憩室をエンジン内に作って自主的に交代するようにできれば稼働時間を延長できるぞ!」
ザレムの一言で思い付くヨアキム。
現行は一つのパーツに一体のキューソが入って歯車を回していた。だから、キューソを交代させるには毎回外部よりパーツ交換が必要であった。もし、QSエンジン内に休憩室を設けてキューソに交代の概念を教えれば、連続稼働時間は比較的に向上する。
「キューソは教えればちゃんと働くであります。我輩が教えれば、それもすぐに可能でありますよ」
チューダのお墨付きがあれば、問題ないだろう。
新たなる改良が加わる事に喜びを露わにするケイ。
「やったね! 一時は草で動くかと思ってたけど、これで……」
そう言い掛けた瞬間、地面が激しく動く。
ハンター達も思わずその場で踏みとどまる。
「なんだこれっ!?」
八原は周囲を見回す。
明らかに震源地は近い。が、地震にしては何かがおかしい。
「……あ、あれ!」
アーシュラは、壁に向かって指を差した。
そこには崩れた壁から見える謎の白い何か。
蛇にも似た鱗のような存在。明らかに白い何かは動きながら東から西へ移動している。「なんだこりゃ? グランドワーム? いや、それよりももっとデカい。それにこの気配は……間違いなく歪虚だな」
恭也の乗る魔導アーマーよりも遙かに大きな存在。
それが一体何なのか。
現時点では不明だが、これだけははっきりしている。
歪虚らしき何かが、辺境の地下に居て蠢いている。
マリィアが、キューソ達に視線を合わせる。
「キューソ達と一緒に戦う時が、予想よりずっと早く来たようね」
依頼結果
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相談卓 柊 恭也(ka0711) 人間(リアルブルー)|18才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/01/15 21:43:54 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/15 22:16:28 |