ゲスト
(ka0000)
急募! 肉の搬送
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/06/17 19:00
- 完成日
- 2014/06/24 21:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
要塞都市【ノアーラ・クンタウ】。
切り立った崖の上にそびえ立つ大きな城壁に護られている都市。
帝国よりもたらされたそれは辺境部族たちに少なからず影響を与えている。
要塞の中は帝国の大都市には劣るが、利便性ある施設もある。
その中の一つ、とある工房より出てきたのは一人の女性。
この都市には様々な立場の人間が往来している。帝国の人間、帝国の考えに賛成する辺境部族の人間、ドワーフなどなど。
女性が向かったのは常連として出入りしている飲食店ルクバト。
「今日のお肉はなんだろなー♪ こんにちはー!」
元気よく入ると、妙に静かだ。今は昼時。いつもは店主の娘であるウェイトレスが元気よく給仕をしているはずなのに。
「フォニケさん!」
ウェイトレスの娘が入って来た女性の名を呼ぶ。彼女の傍らには怪我をした男が数名いた。
「あなた達どうしたの!」
「猟を終えたら、猪にやられた……」
「ありゃぁ、雑魔だぜ……」
怪我人に叫ぶと、彼らはため息混じりに答えた。
「そうだったのね」
フォニケも手当てに加わると、彼らは更に話を続けた。
「いつもの狩場から離れようとした時に猪が走ってきてよ、俺に突進しようとしてきたんだ。何とかかわしたんだが、交わす時に牙が腕に当たっちまったんだ」
そう言った猟師の二の腕には応急処置の包帯が巻かれており、まだ出血が治まっていないのだろう、血が滲んでいる。
「こいつが猪にやられてて、威嚇射撃しようとしたら、兎に足を噛まれちまった」
もうひとりの猟師は片方はブーツのままで、噛まれただろうふくらはぎにはまだ治療を施されておらず、これからフォニケが手当てをしようとしていた。
カウンターで様子を見ていた店主が大きくため息をつく。
「急な襲撃で獲ってきた肉も置いてきたそうだ。命があっただけ御の字だな」
「それは仕方ないわ、命には代えられないもの」
「そうそう、そいつらの怪我が治るまで肉のメニューは無しだな」
怪我をした猟師はこの店と直接取引をしているようで、この店で提供される肉は全て彼らで賄われている。
「ん?」
店主の言葉に肯定したフォニケだが、最後の言葉に彼女は固まった。
肉がないという事はその言葉どおりに肉のメニューが出てこない。
加工肉のストックはあるだろうが、所謂ソテー関連のメニューがでてこない。
「今日はソテーの気分だったのに!」
「しょうがないよ、フォニケちゃん、こいつらが動けねぇんだもん」
ショックを素直に叫ぶフォニケに店主が宥める。
「いいわ、ハンターを雇いましょ! 彼らならお肉を持ってきてくれるわ!」
有言実行と言わんばかりにフォニケはさっさと治療を終えてハンターズ・ソサエティへ駆け出した。
切り立った崖の上にそびえ立つ大きな城壁に護られている都市。
帝国よりもたらされたそれは辺境部族たちに少なからず影響を与えている。
要塞の中は帝国の大都市には劣るが、利便性ある施設もある。
その中の一つ、とある工房より出てきたのは一人の女性。
この都市には様々な立場の人間が往来している。帝国の人間、帝国の考えに賛成する辺境部族の人間、ドワーフなどなど。
女性が向かったのは常連として出入りしている飲食店ルクバト。
「今日のお肉はなんだろなー♪ こんにちはー!」
元気よく入ると、妙に静かだ。今は昼時。いつもは店主の娘であるウェイトレスが元気よく給仕をしているはずなのに。
「フォニケさん!」
ウェイトレスの娘が入って来た女性の名を呼ぶ。彼女の傍らには怪我をした男が数名いた。
「あなた達どうしたの!」
「猟を終えたら、猪にやられた……」
「ありゃぁ、雑魔だぜ……」
怪我人に叫ぶと、彼らはため息混じりに答えた。
「そうだったのね」
フォニケも手当てに加わると、彼らは更に話を続けた。
「いつもの狩場から離れようとした時に猪が走ってきてよ、俺に突進しようとしてきたんだ。何とかかわしたんだが、交わす時に牙が腕に当たっちまったんだ」
そう言った猟師の二の腕には応急処置の包帯が巻かれており、まだ出血が治まっていないのだろう、血が滲んでいる。
「こいつが猪にやられてて、威嚇射撃しようとしたら、兎に足を噛まれちまった」
もうひとりの猟師は片方はブーツのままで、噛まれただろうふくらはぎにはまだ治療を施されておらず、これからフォニケが手当てをしようとしていた。
カウンターで様子を見ていた店主が大きくため息をつく。
「急な襲撃で獲ってきた肉も置いてきたそうだ。命があっただけ御の字だな」
「それは仕方ないわ、命には代えられないもの」
「そうそう、そいつらの怪我が治るまで肉のメニューは無しだな」
怪我をした猟師はこの店と直接取引をしているようで、この店で提供される肉は全て彼らで賄われている。
「ん?」
店主の言葉に肯定したフォニケだが、最後の言葉に彼女は固まった。
肉がないという事はその言葉どおりに肉のメニューが出てこない。
加工肉のストックはあるだろうが、所謂ソテー関連のメニューがでてこない。
「今日はソテーの気分だったのに!」
「しょうがないよ、フォニケちゃん、こいつらが動けねぇんだもん」
ショックを素直に叫ぶフォニケに店主が宥める。
「いいわ、ハンターを雇いましょ! 彼らならお肉を持ってきてくれるわ!」
有言実行と言わんばかりにフォニケはさっさと治療を終えてハンターズ・ソサエティへ駆け出した。
リプレイ本文
肉というものは、時として生きる者の心を揺るがせる甘美なるもの。
「お肉が無いなんてありえないっす……」
飲食店「ルクバト」に訪れた悲劇を自身の悲劇のように声にするのはフューリ(ka0660)。
「あたしも肉って気分だったのにー!」
続いてウーナ(ka1439)も拳を握り締めて憤りを顕にする。
「兎が肉を食らう邪魔をするとはふてぇやろうだな!」
ウーナより小柄であるリズリエル・ュリウス(ka0233)であるが、腹から出した怒気の声は大きいが不思議と耳障りではない。
「雑魔のお肉まで食べる気ですか~?」
エリセル・ゼノル・グールドーラ(ka2087)が微笑むと、フォニケはこっくりと頷く。
「だって、ここなら安定して新鮮なお肉が食べられるのよ。耳に壁ありだから、辺境の否定派の前には堂々と言えないけど」
ひそっとフォニケがハンター達に囁く。
痩せた土地である辺境にとって、肉は価値ある物なのだ。
貴重な栄養素を持ち、加工して保存し、時に売って金か生活に必要な物を手に入れる。
故に、辺境では新鮮な肉を即調理して食べるというのはご馳走に分類される地域も存在する。
「特に厚切りのステーキとかね!」
「声、大きいだろう」
ぐっと、拳を握り締めて声を荒げるフォニケにデュオ=ラングウィッチ(ka1015)がツッコミを入れる。
「色々とあるんだなぁ」
呑気に呟くのは真田 天斗(ka0014)。クリムゾンウェストの住人であるフォニケは天斗がリアルブルーの人間である事に気づき、じっと見つめる。
「リアルブルーの人間を見るのは初めてか」
クリムゾンウェストに来てからやはり興味深げな視線を感じるが、フォニケの視線は初めての物を見る子供のようだと思った。
「ええ、そうなの。ごめんなさいね……じっと見るの癖で」
リアルブルーのハンター達にフォニケは素直に謝る。
「仕方ないだろう、こっちは異邦人なんだから」
あっさりと答えたデュオにフォニケは少し安堵する。奇異の視線にそろそろ慣れてくる者、そうでない者、最初から気にしていない者とそれぞれである。「とりあえずは狩ってくるのが優先ですね」
クリムゾンウェストの者達から見ればエキゾチックな印象を受ける外見の上泉 澪(ka0518)が場を纏める。
放っておいても被害は増えるばかり。それだけは食い止めねばならない。
「沢山獲れるといいですね」
身支度を始めた静架(ka0387)は淡々とした口調だったが、とてもやる気に満ちて輝いている気がした。
●
現在は春が過ぎ、夏に移行する季節。
気温が上昇するのだ。
ハンター達が懸念しているのは肉の痛みだ。
気温が上がれば肉の腐食が進みやすい。今回の依頼は雑魔討伐のみならず、肉を運ぶ事も含まれている。
それなりの数を必要としている為、人の手で多く運ぶには人の手では余る。
故にハンターオフィスで申請したのは縄や荷車だ。
馬も申請したが、受付員が戦闘時に馬が驚いて逃げる可能性があり、難色を示した。
それ以外は受付員より申請許可が降りたので、荷車を引きつつ、ハンター達が現場へと向かう。
要塞より出ると荒野が広がる。
緑というものがなく、痩せた木がある位だ。
気温で温まった風がリズリエルの後ろ髪を緩く吹き上げ毛先を遊ばせる。
土埃が少し気になる者もいたようだ。
「場所によっては森とかもあるっすけど」
地図で場所を確認しつつ、フューリが呟く。
「水場とかはあまりなさそうですね」
「雨が降ったらその雨水を溜めています」
風景を確認していた静架が言えばエリセルが声をかける。
「目印になるものがあって助かるな」
フューリが手にしている地図を覗き見しながらデュオが確認していく。
「猪と戦うのは初めてだなぁ」
荷車を引いている天斗が呟いた。
静架が記憶より猪の知識を思いだす。
「アク抜きは大事ですね」
「新鮮なら焼肉もありっす」
「焼くんだ!?」
「新鮮ならレアでもいけるぜ!」
次々とハンター達が賑やかに猪肉について話し出す。
肉が好きなメンバーが集まっているのを見て、澪がふむりと観察してる。
「……肉への探究心、執心はリアルブルーもクリムゾンウェストも通じるものがありますね」
確信を得た澪がぽつりと呟いた。
目的の場所が近づくと、ハンター全員に緊張が走る。
鋭敏視覚を有するウーナと静架が動物の影がないか確認をはじめる。
「まだ、いないみたいだね」
「来たばかりというのもあるかもしれません」
それでも油断だけは出来ない。
警戒から十分近く経過しただろうか。不自然な土埃が起きた事にウーナが気づく。
今は無風。つむじ風が起きたようではない。なにより、その土埃がこちらにやってくるのではないか。
「来た! 前方二時!」
ウーナの鋭い叫びに陣形を取る。
天斗、デュオが戦闘態勢となって前に出た。
「今の所、猪型は一体だ。増援、兎型の横殴りには気をつけろ!」
振り向きざまにデュオが声をかける。輝く蜂蜜色の瞳が周囲を見て確認したが、今の所は影が見えなかった。
猟師の話を聞けば、猪で気を引いて兎達は相手の動きを阻害していた。兎型が自分達の狩場に入った人間達の動く音を把握し、猪型を誘導したのかもしれない。
「おう! 任せておけぇ!」
敵の出現に気を張ったリズリエルがデュオの言葉に応える為、高らかに声を上げる。
猪が猛然とハンター達へ駆けてくる。自身の狩場を荒らす者を蹴散らかす為に。
呑気な雰囲気を醸し出していた天斗であったが、前衛に立つなりファイティングポーズをとる。
ぎゅっと、メリケンサックを握り締めて鋭く息を吸い込んだ。
「イクシードォ!」
掛声に身体が呼応し、天斗の身体に文様が浮かびあがる。
駆け出した天斗が猪と真正面から駆けていく。猪の左右の大きな牙の間へ飛び込み、右手を全力で伸ばし、猪の眉間にメリケンサックを捻り込む。
衝撃で上体をあげようとする前に天斗が離れ、反射的に耳を塞ぎたくなるような大きな鳴き声をあげた猪に天斗が更に攻撃を加えようとする。
片耳を塞ぎつつも周囲を確認したデュオが駆け出す。
天斗を狙うかのようにもう一頭の猪型が来たのだ。デュオはもう一頭の猪型へと走る。
もう一頭の猪型に気づいたのは静架も同じだ。
彼はデュオ達より離れ、猪の動き、前衛の動きを観察していた。
武器にマテリアルを込めながら弦を引く。
意識を集中させて、凍てつく氷……アイスブルーの瞳が狙うタイミングは先制攻撃をした天斗が猪より離れ、猪が前衛を狙い、再び動き出す瞬間。
矢が放たれると、吸い込まれるかのように二頭目の猪の左目より血が噴出し、その足を引きとめられた。
猪との間合いをはかり、大きく踏み出したデュオはロングソードを思いっきり振り上げ、力を込めて思いっきり猪へ振り下ろす。
踏込と強打の連続で剣の攻撃は増し、猪の鼻に降りた刃は口まで到達し、口の右半分を牙ごと切り倒していった。
顔の半分を削がれる衝撃に猪は転げまわり、立つ事もままならない。
デュオは狙いを定め、もう一度強く踏み込んで剣を下ろした。
最初のデュオから上げられた声の通り、兎達は猪達に気を引かせている間にハンター達に近づいていた。
「随分と利口ですね~」
のんびりとした口調のエリセルであるが、口調に反してその動きは機敏だ。
兎もまた、ハンターを狙う為、翻弄するように動き回るが、エリセルはランアウトで敏捷さをあげ、兎同等の速さで兎を追いつめる。
「逃がしません」
この兎は食事となる肉。
無駄な傷は食料の減少となるのは避けるべきだとエリセルは判断した。
身を屈め、一気に間合いをつめ、兎の懐へと入る。
兎は逃げる術を失い、その首にショートソードを受けた。
軽やかに動き、兎と交戦しているのはフューリ。彼は赤い毛並みの尻尾と耳が生やしていた。
くるりとターンをすると、赤い後ろ髪と尻尾が揺れる。兎が尻尾を噛んでやろうと突進すると、フューリがステップを踏むように間合いを取る。
高速で動く動物霊の力を借りる地を駆けるものの力は兎の動きにも負けやしない。
「そう簡単には捕まえられないっすよー!」
目的を見失った兎が方向転換をしようとしたが、フューリの姿を捉える時間もなかった。
「隙あり……!」
背後から近づいてきたフューリに兎は捕らえられた。
「大人しくお肉になってくださいっす……!」
フューリは素早く腰元からナイフを取り出して、出かける前に猟師から教えてもらった血抜き方を実行した。
「フューリ、やるじゃねぇか」
負けられねぇなと、リズリエルは思う。
バニー故に、兎の所業は許しがたいものがある。
姑息にもほどがあると。
彼女が何故、そう思うかは、彼女がバニーだからだ。
兎もまた、リズリエルを見据える。
ウサギ同士の戦いが始まる。
先制したのはリズリエルが威嚇投射したナイフ。びくりと兎は止まったが、そのままナイフを飛び越えるようにリズリエルへと飛びつく。
ジャマダハルを手にした腕を伸ばして兎を切りつけ、一度間合いを取るも、ランアウトを発動させて一気に兎との間合いを詰めきる。
狙いは首。
リズリエルのナイフが的確に兎の首に入った。
兎四体目と対峙しているのはウーナだった。
対峙する兎に負けず劣らずの跳ねっぷりを見せるウーナが構えるのはリアルブルー製のオートマチック拳銃だ。
装弾数八発、兎を仕留められる威力はある。
弾数を頭で数えながら兎を追い詰め、兎の狙いを絞らせない細かく跳んでしっかり動く。
打った弾のひとつが兎の足を撃ち抜き、バランスを崩した兎は転んでしまう。
尚も兎は動こうとするが、ウーナは見逃さなかった。素早く兎の方へと駆け出して空の片手で兎の両耳を掴む。
「逃がさないわよ。あたしの肉になってもらうわよ」
にっと、笑むウーナはもう片方の手にあったピストルを仕舞い、ロープを取り出して、兎を縛りつけてフューリに血抜きを頼む。
「遊ぶ時間はないかなー?」
猪組の援軍へと駆けるウーナの呟きは荒野の風が攫う。
猪組は残り一体となっていた。
澪は様子を注意深く様子を見ていた。兎型が囲むように現れていたが、仲間達が的確にしとめていったのと、これ以上の雑魔の出現はないと判断し、天斗の応援へと入る。
天斗の一撃で激昂した猪が憤然と天斗へ突進せんと地を駆ける。
直線攻撃の猪だが、先ほどとはうって変わってその速度が変わってきている。
真っ向から受ける気はないが、カウンターを狙っていた天斗だが、上手くいくか一瞬不安がよぎる。しかし、猪が直前になって転倒してしまった。
転倒した猪の左前足は斬られていたが、天斗はその理由に気づいていた。
澪が地を駆けるもので間合を詰め、一点集中で左前足を斬りってバランスを崩させた。
その澪は間合を取って下がっている。猪は転倒したが、戦意は喪失してはおらず、体勢を戻そうとしている。
「タイマン勝負がしたいが、一気に行くぜ!」
修練不足を嘆く前に倒さなくてはいけない敵がいる。
「元より」
天斗の言葉に澪が応えた。
猪はもう体勢を戻しており、前足一本であるが、前を進む。
先に駆け出したのは天斗。
狙いは変わらず、突進に合わせてのカウンターだ。バランスの悪さもあり、速度は落ちている。
猪は顎を引き、牙での攻撃を狙っていると天斗は判断した。猪とすれ違う瞬間、天斗が微かな傷みを感じたが、マテリアルが潤滑に体の中で洗練されるのを感じた天斗はそのままメリケンサックで左の牙ごと砕き、一撃を加える。
鳴き声と言うより、咆哮に近い声を上げた猪が最後の攻撃と言わんばかりに大きく口を開ける。
乾いた音が空に響く。
駆けつけたウーナの銃弾が猪の歯を砕き、弾丸の火薬の残りが口腔をえぐり焼く。
「致し方あるまい」
天斗の後ろにいた澪が諦めの悪い猪にため息混じりの声を上げる。再び地を駆け、天斗が猪の牙を受け止めているその隙を狙い、澪は猪の首を刎ねた。
首と胴が離れた猪はなす術がなくなった。
●
的確な処置を施して肉は大量に持って帰ることに成功した。
内臓は埋めることにした。
「結構内蔵はそのまま茹でるんすけどね。夏は怖いっすよ」
「沸かしているうちに腐食も進みますからね。先に沸かしておきませんと」
フューリとエリセルが会話をしている。
「肉、楽しみだな」
「肉が痛みます。早く戻りましょう」
「早く食べたーい!」
ばたばたとハンター達皆で麻袋に入った肉が荷車から落ちないように支えあい、押し合い引いていく。
幸い、帰りに雑魔の出現もなく、スムーズに要塞へと戻ることが出来た。
入り口にはフォニケが待っており、ハンター達の姿を見るなり、笑顔で迎え入れてくれた。
「お帰りなさい! お疲れ様!」
「フォニケさん、ソテーはあたしの分もよろしくね!」
ウーナが言えばフォニケが店主に伝えると笑顔で頷く。
「肉はきちんと焼いてください」
食中毒を忌避せんとする静架が希望をしっかり伝える。
「レア! レアがいい!」
逆にリズリエルはレアがお好みのようだ。
「うんうん、皆で食べましょうね!」
「……店の分も残さねばならないのでは」
皆の肉への思いに澪のツッコミは的確だった。
ルクバトで調理がしたいと申し出た天斗とデュオはクリムゾンウェストの食材の差に少々戸惑いつつも代用の精神で作りあげる。
「本当は青しそがあればいいが」
出されたリアルブルーにおける普通のクリームソースのソテーであるが、希望していた肉も豚がなく、代用で兎になった。
「んーっ! 美味しいわ!」
肉と噂のリアルブルーの料理も食べられてフォニケは喜んでいる。
「美味しい! このソース癖があるわね」
同じものを食べていたウーナも満足そうだが、ソースの癖が気になったようだ。
「今日はヤギの牛乳しかなかったんだ。癖はあるが、大丈夫かい?」
ルクバトの店主が教えると彼女は納得した。
「……かなり焼いたが、大丈夫か」
「問題ありません」
心配そうなデュオが差し出したしっかりウェルダンの肉を見て即答したのは静架。目が輝いているように見える。
「レアステーキも美味い!」
リズリエルがしっかりと肉の旨みをかみ締める。
「あぁ、お肉食べれて本当によかったっす……しあわせっす……」
美味い肉を噛み締めたフューリがうっとりと呟く。甘美なる肉汁と弾力は今の彼にとって至高のもの。
「みなさん、よく食べますね~」
様子を見ていたエリセルがそう言ってから肉を食べる。
「大丈夫だった?」
フォニケが心配するのは澪だ。
「平気です……が、少々鈍っていたようです」
自身への鍛錬を反省する澪にフォニケは「これからよ」と声をかける。
「皆、今日は本当にありがとう、また何かあったらお願いするわね」
フォニケがハンター達に労うと、皆がそれぞれ頷いた。
「お肉が無いなんてありえないっす……」
飲食店「ルクバト」に訪れた悲劇を自身の悲劇のように声にするのはフューリ(ka0660)。
「あたしも肉って気分だったのにー!」
続いてウーナ(ka1439)も拳を握り締めて憤りを顕にする。
「兎が肉を食らう邪魔をするとはふてぇやろうだな!」
ウーナより小柄であるリズリエル・ュリウス(ka0233)であるが、腹から出した怒気の声は大きいが不思議と耳障りではない。
「雑魔のお肉まで食べる気ですか~?」
エリセル・ゼノル・グールドーラ(ka2087)が微笑むと、フォニケはこっくりと頷く。
「だって、ここなら安定して新鮮なお肉が食べられるのよ。耳に壁ありだから、辺境の否定派の前には堂々と言えないけど」
ひそっとフォニケがハンター達に囁く。
痩せた土地である辺境にとって、肉は価値ある物なのだ。
貴重な栄養素を持ち、加工して保存し、時に売って金か生活に必要な物を手に入れる。
故に、辺境では新鮮な肉を即調理して食べるというのはご馳走に分類される地域も存在する。
「特に厚切りのステーキとかね!」
「声、大きいだろう」
ぐっと、拳を握り締めて声を荒げるフォニケにデュオ=ラングウィッチ(ka1015)がツッコミを入れる。
「色々とあるんだなぁ」
呑気に呟くのは真田 天斗(ka0014)。クリムゾンウェストの住人であるフォニケは天斗がリアルブルーの人間である事に気づき、じっと見つめる。
「リアルブルーの人間を見るのは初めてか」
クリムゾンウェストに来てからやはり興味深げな視線を感じるが、フォニケの視線は初めての物を見る子供のようだと思った。
「ええ、そうなの。ごめんなさいね……じっと見るの癖で」
リアルブルーのハンター達にフォニケは素直に謝る。
「仕方ないだろう、こっちは異邦人なんだから」
あっさりと答えたデュオにフォニケは少し安堵する。奇異の視線にそろそろ慣れてくる者、そうでない者、最初から気にしていない者とそれぞれである。「とりあえずは狩ってくるのが優先ですね」
クリムゾンウェストの者達から見ればエキゾチックな印象を受ける外見の上泉 澪(ka0518)が場を纏める。
放っておいても被害は増えるばかり。それだけは食い止めねばならない。
「沢山獲れるといいですね」
身支度を始めた静架(ka0387)は淡々とした口調だったが、とてもやる気に満ちて輝いている気がした。
●
現在は春が過ぎ、夏に移行する季節。
気温が上昇するのだ。
ハンター達が懸念しているのは肉の痛みだ。
気温が上がれば肉の腐食が進みやすい。今回の依頼は雑魔討伐のみならず、肉を運ぶ事も含まれている。
それなりの数を必要としている為、人の手で多く運ぶには人の手では余る。
故にハンターオフィスで申請したのは縄や荷車だ。
馬も申請したが、受付員が戦闘時に馬が驚いて逃げる可能性があり、難色を示した。
それ以外は受付員より申請許可が降りたので、荷車を引きつつ、ハンター達が現場へと向かう。
要塞より出ると荒野が広がる。
緑というものがなく、痩せた木がある位だ。
気温で温まった風がリズリエルの後ろ髪を緩く吹き上げ毛先を遊ばせる。
土埃が少し気になる者もいたようだ。
「場所によっては森とかもあるっすけど」
地図で場所を確認しつつ、フューリが呟く。
「水場とかはあまりなさそうですね」
「雨が降ったらその雨水を溜めています」
風景を確認していた静架が言えばエリセルが声をかける。
「目印になるものがあって助かるな」
フューリが手にしている地図を覗き見しながらデュオが確認していく。
「猪と戦うのは初めてだなぁ」
荷車を引いている天斗が呟いた。
静架が記憶より猪の知識を思いだす。
「アク抜きは大事ですね」
「新鮮なら焼肉もありっす」
「焼くんだ!?」
「新鮮ならレアでもいけるぜ!」
次々とハンター達が賑やかに猪肉について話し出す。
肉が好きなメンバーが集まっているのを見て、澪がふむりと観察してる。
「……肉への探究心、執心はリアルブルーもクリムゾンウェストも通じるものがありますね」
確信を得た澪がぽつりと呟いた。
目的の場所が近づくと、ハンター全員に緊張が走る。
鋭敏視覚を有するウーナと静架が動物の影がないか確認をはじめる。
「まだ、いないみたいだね」
「来たばかりというのもあるかもしれません」
それでも油断だけは出来ない。
警戒から十分近く経過しただろうか。不自然な土埃が起きた事にウーナが気づく。
今は無風。つむじ風が起きたようではない。なにより、その土埃がこちらにやってくるのではないか。
「来た! 前方二時!」
ウーナの鋭い叫びに陣形を取る。
天斗、デュオが戦闘態勢となって前に出た。
「今の所、猪型は一体だ。増援、兎型の横殴りには気をつけろ!」
振り向きざまにデュオが声をかける。輝く蜂蜜色の瞳が周囲を見て確認したが、今の所は影が見えなかった。
猟師の話を聞けば、猪で気を引いて兎達は相手の動きを阻害していた。兎型が自分達の狩場に入った人間達の動く音を把握し、猪型を誘導したのかもしれない。
「おう! 任せておけぇ!」
敵の出現に気を張ったリズリエルがデュオの言葉に応える為、高らかに声を上げる。
猪が猛然とハンター達へ駆けてくる。自身の狩場を荒らす者を蹴散らかす為に。
呑気な雰囲気を醸し出していた天斗であったが、前衛に立つなりファイティングポーズをとる。
ぎゅっと、メリケンサックを握り締めて鋭く息を吸い込んだ。
「イクシードォ!」
掛声に身体が呼応し、天斗の身体に文様が浮かびあがる。
駆け出した天斗が猪と真正面から駆けていく。猪の左右の大きな牙の間へ飛び込み、右手を全力で伸ばし、猪の眉間にメリケンサックを捻り込む。
衝撃で上体をあげようとする前に天斗が離れ、反射的に耳を塞ぎたくなるような大きな鳴き声をあげた猪に天斗が更に攻撃を加えようとする。
片耳を塞ぎつつも周囲を確認したデュオが駆け出す。
天斗を狙うかのようにもう一頭の猪型が来たのだ。デュオはもう一頭の猪型へと走る。
もう一頭の猪型に気づいたのは静架も同じだ。
彼はデュオ達より離れ、猪の動き、前衛の動きを観察していた。
武器にマテリアルを込めながら弦を引く。
意識を集中させて、凍てつく氷……アイスブルーの瞳が狙うタイミングは先制攻撃をした天斗が猪より離れ、猪が前衛を狙い、再び動き出す瞬間。
矢が放たれると、吸い込まれるかのように二頭目の猪の左目より血が噴出し、その足を引きとめられた。
猪との間合いをはかり、大きく踏み出したデュオはロングソードを思いっきり振り上げ、力を込めて思いっきり猪へ振り下ろす。
踏込と強打の連続で剣の攻撃は増し、猪の鼻に降りた刃は口まで到達し、口の右半分を牙ごと切り倒していった。
顔の半分を削がれる衝撃に猪は転げまわり、立つ事もままならない。
デュオは狙いを定め、もう一度強く踏み込んで剣を下ろした。
最初のデュオから上げられた声の通り、兎達は猪達に気を引かせている間にハンター達に近づいていた。
「随分と利口ですね~」
のんびりとした口調のエリセルであるが、口調に反してその動きは機敏だ。
兎もまた、ハンターを狙う為、翻弄するように動き回るが、エリセルはランアウトで敏捷さをあげ、兎同等の速さで兎を追いつめる。
「逃がしません」
この兎は食事となる肉。
無駄な傷は食料の減少となるのは避けるべきだとエリセルは判断した。
身を屈め、一気に間合いをつめ、兎の懐へと入る。
兎は逃げる術を失い、その首にショートソードを受けた。
軽やかに動き、兎と交戦しているのはフューリ。彼は赤い毛並みの尻尾と耳が生やしていた。
くるりとターンをすると、赤い後ろ髪と尻尾が揺れる。兎が尻尾を噛んでやろうと突進すると、フューリがステップを踏むように間合いを取る。
高速で動く動物霊の力を借りる地を駆けるものの力は兎の動きにも負けやしない。
「そう簡単には捕まえられないっすよー!」
目的を見失った兎が方向転換をしようとしたが、フューリの姿を捉える時間もなかった。
「隙あり……!」
背後から近づいてきたフューリに兎は捕らえられた。
「大人しくお肉になってくださいっす……!」
フューリは素早く腰元からナイフを取り出して、出かける前に猟師から教えてもらった血抜き方を実行した。
「フューリ、やるじゃねぇか」
負けられねぇなと、リズリエルは思う。
バニー故に、兎の所業は許しがたいものがある。
姑息にもほどがあると。
彼女が何故、そう思うかは、彼女がバニーだからだ。
兎もまた、リズリエルを見据える。
ウサギ同士の戦いが始まる。
先制したのはリズリエルが威嚇投射したナイフ。びくりと兎は止まったが、そのままナイフを飛び越えるようにリズリエルへと飛びつく。
ジャマダハルを手にした腕を伸ばして兎を切りつけ、一度間合いを取るも、ランアウトを発動させて一気に兎との間合いを詰めきる。
狙いは首。
リズリエルのナイフが的確に兎の首に入った。
兎四体目と対峙しているのはウーナだった。
対峙する兎に負けず劣らずの跳ねっぷりを見せるウーナが構えるのはリアルブルー製のオートマチック拳銃だ。
装弾数八発、兎を仕留められる威力はある。
弾数を頭で数えながら兎を追い詰め、兎の狙いを絞らせない細かく跳んでしっかり動く。
打った弾のひとつが兎の足を撃ち抜き、バランスを崩した兎は転んでしまう。
尚も兎は動こうとするが、ウーナは見逃さなかった。素早く兎の方へと駆け出して空の片手で兎の両耳を掴む。
「逃がさないわよ。あたしの肉になってもらうわよ」
にっと、笑むウーナはもう片方の手にあったピストルを仕舞い、ロープを取り出して、兎を縛りつけてフューリに血抜きを頼む。
「遊ぶ時間はないかなー?」
猪組の援軍へと駆けるウーナの呟きは荒野の風が攫う。
猪組は残り一体となっていた。
澪は様子を注意深く様子を見ていた。兎型が囲むように現れていたが、仲間達が的確にしとめていったのと、これ以上の雑魔の出現はないと判断し、天斗の応援へと入る。
天斗の一撃で激昂した猪が憤然と天斗へ突進せんと地を駆ける。
直線攻撃の猪だが、先ほどとはうって変わってその速度が変わってきている。
真っ向から受ける気はないが、カウンターを狙っていた天斗だが、上手くいくか一瞬不安がよぎる。しかし、猪が直前になって転倒してしまった。
転倒した猪の左前足は斬られていたが、天斗はその理由に気づいていた。
澪が地を駆けるもので間合を詰め、一点集中で左前足を斬りってバランスを崩させた。
その澪は間合を取って下がっている。猪は転倒したが、戦意は喪失してはおらず、体勢を戻そうとしている。
「タイマン勝負がしたいが、一気に行くぜ!」
修練不足を嘆く前に倒さなくてはいけない敵がいる。
「元より」
天斗の言葉に澪が応えた。
猪はもう体勢を戻しており、前足一本であるが、前を進む。
先に駆け出したのは天斗。
狙いは変わらず、突進に合わせてのカウンターだ。バランスの悪さもあり、速度は落ちている。
猪は顎を引き、牙での攻撃を狙っていると天斗は判断した。猪とすれ違う瞬間、天斗が微かな傷みを感じたが、マテリアルが潤滑に体の中で洗練されるのを感じた天斗はそのままメリケンサックで左の牙ごと砕き、一撃を加える。
鳴き声と言うより、咆哮に近い声を上げた猪が最後の攻撃と言わんばかりに大きく口を開ける。
乾いた音が空に響く。
駆けつけたウーナの銃弾が猪の歯を砕き、弾丸の火薬の残りが口腔をえぐり焼く。
「致し方あるまい」
天斗の後ろにいた澪が諦めの悪い猪にため息混じりの声を上げる。再び地を駆け、天斗が猪の牙を受け止めているその隙を狙い、澪は猪の首を刎ねた。
首と胴が離れた猪はなす術がなくなった。
●
的確な処置を施して肉は大量に持って帰ることに成功した。
内臓は埋めることにした。
「結構内蔵はそのまま茹でるんすけどね。夏は怖いっすよ」
「沸かしているうちに腐食も進みますからね。先に沸かしておきませんと」
フューリとエリセルが会話をしている。
「肉、楽しみだな」
「肉が痛みます。早く戻りましょう」
「早く食べたーい!」
ばたばたとハンター達皆で麻袋に入った肉が荷車から落ちないように支えあい、押し合い引いていく。
幸い、帰りに雑魔の出現もなく、スムーズに要塞へと戻ることが出来た。
入り口にはフォニケが待っており、ハンター達の姿を見るなり、笑顔で迎え入れてくれた。
「お帰りなさい! お疲れ様!」
「フォニケさん、ソテーはあたしの分もよろしくね!」
ウーナが言えばフォニケが店主に伝えると笑顔で頷く。
「肉はきちんと焼いてください」
食中毒を忌避せんとする静架が希望をしっかり伝える。
「レア! レアがいい!」
逆にリズリエルはレアがお好みのようだ。
「うんうん、皆で食べましょうね!」
「……店の分も残さねばならないのでは」
皆の肉への思いに澪のツッコミは的確だった。
ルクバトで調理がしたいと申し出た天斗とデュオはクリムゾンウェストの食材の差に少々戸惑いつつも代用の精神で作りあげる。
「本当は青しそがあればいいが」
出されたリアルブルーにおける普通のクリームソースのソテーであるが、希望していた肉も豚がなく、代用で兎になった。
「んーっ! 美味しいわ!」
肉と噂のリアルブルーの料理も食べられてフォニケは喜んでいる。
「美味しい! このソース癖があるわね」
同じものを食べていたウーナも満足そうだが、ソースの癖が気になったようだ。
「今日はヤギの牛乳しかなかったんだ。癖はあるが、大丈夫かい?」
ルクバトの店主が教えると彼女は納得した。
「……かなり焼いたが、大丈夫か」
「問題ありません」
心配そうなデュオが差し出したしっかりウェルダンの肉を見て即答したのは静架。目が輝いているように見える。
「レアステーキも美味い!」
リズリエルがしっかりと肉の旨みをかみ締める。
「あぁ、お肉食べれて本当によかったっす……しあわせっす……」
美味い肉を噛み締めたフューリがうっとりと呟く。甘美なる肉汁と弾力は今の彼にとって至高のもの。
「みなさん、よく食べますね~」
様子を見ていたエリセルがそう言ってから肉を食べる。
「大丈夫だった?」
フォニケが心配するのは澪だ。
「平気です……が、少々鈍っていたようです」
自身への鍛錬を反省する澪にフォニケは「これからよ」と声をかける。
「皆、今日は本当にありがとう、また何かあったらお願いするわね」
フォニケがハンター達に労うと、皆がそれぞれ頷いた。
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円卓会議 デュオ=ラングウィッチ(ka1015) 人間(リアルブルー)|21才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/06/24 21:49:47 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/12 00:53:00 |