要塞都市【ノアーラ・クンタウ】。
　切り立った崖の上にそびえ立つ大きな城壁に護られている都市。
　帝国よりもたらされたそれは辺境部族たちに少なからず影響を与えている。

　要塞の中は帝国の大都市には劣るが、利便性ある施設もある。
　その中の一つ、とある工房より出てきたのは一人の女性。
　この都市には様々な立場の人間が往来している。帝国の人間、帝国の考えに賛成する辺境部族の人間、ドワーフなどなど。
　女性が向かったのは常連として出入りしている飲食店ルクバト。
「今日のお肉はなんだろなー♪　こんにちはー！」
　元気よく入ると、妙に静かだ。今は昼時。いつもは店主の娘であるウェイトレスが元気よく給仕をしているはずなのに。
「フォニケさん！」
　ウェイトレスの娘が入って来た女性の名を呼ぶ。彼女の傍らには怪我をした男が数名いた。
「あなた達どうしたの！」
「猟を終えたら、猪にやられた……」
「ありゃぁ、雑魔だぜ……」
　怪我人に叫ぶと、彼らはため息混じりに答えた。
「そうだったのね」
　フォニケも手当てに加わると、彼らは更に話を続けた。
「いつもの狩場から離れようとした時に猪が走ってきてよ、俺に突進しようとしてきたんだ。何とかかわしたんだが、交わす時に牙が腕に当たっちまったんだ」
　そう言った猟師の二の腕には応急処置の包帯が巻かれており、まだ出血が治まっていないのだろう、血が滲んでいる。
「こいつが猪にやられてて、威嚇射撃しようとしたら、兎に足を噛まれちまった」
　もうひとりの猟師は片方はブーツのままで、噛まれただろうふくらはぎにはまだ治療を施されておらず、これからフォニケが手当てをしようとしていた。
　カウンターで様子を見ていた店主が大きくため息をつく。
「急な襲撃で獲ってきた肉も置いてきたそうだ。命があっただけ御の字だな」
「それは仕方ないわ、命には代えられないもの」
「そうそう、そいつらの怪我が治るまで肉のメニューは無しだな」
　怪我をした猟師はこの店と直接取引をしているようで、この店で提供される肉は全て彼らで賄われている。
「ん？」
　店主の言葉に肯定したフォニケだが、最後の言葉に彼女は固まった。
　肉がないという事はその言葉どおりに肉のメニューが出てこない。
　加工肉のストックはあるだろうが、所謂ソテー関連のメニューがでてこない。
「今日はソテーの気分だったのに！」
「しょうがないよ、フォニケちゃん、こいつらが動けねぇんだもん」
　ショックを素直に叫ぶフォニケに店主が宥める。
「いいわ、ハンターを雇いましょ！　彼らならお肉を持ってきてくれるわ！」
　有言実行と言わんばかりにフォニケはさっさと治療を終えてハンターズ・ソサエティへ駆け出した。

●依頼内容

　猪型、兎型雑魔の討伐と搬送。

皆様には雑魔の討伐をお願いします。
要塞からあまり離れていない所にあります。片道徒歩二時間ほどと考えてください。
あまり入り組んだところではありません。
地図が配布されます。

雑魔
猪型：大きさは大体２メートル程。数は２体です。
　　どんな攻撃するの？：基本的には突進。押し倒されたら牙で刺され、噛まれます。

兎型：大きさは１メートルありません。数は４体です。
　　どんな攻撃するの？：基本噛みつき。結構素早いです。突進してくるかもしれません。

倒されましたらそれらを要塞内の飲食店「ルクバト」へ搬送お願いします。
頑張ったら店主が些少ですが、ご馳走するようですよ。

依頼人：フォニケ。アラサーのお姉さん。辺境部族出身、お洒落とお肉をこよなく愛する肉食系（物理）女子。
要塞内の工房に勤めているようです。
飲食店「ルクバト」の常連さん。

はじめまして、もしはこんにちは。
鷹羽柊架（たかば・しゅうか）と申します。
この度、ファナティックブラッドのＭＳとして在籍する事になりました。
皆様に楽しい物語を共有できるよう、尽力いたします。
何卒宜しくお願いします。