• 初心

【初心】魔女のミルクティー

マスター:紺堂 カヤ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/01/22 07:30
完成日
2017/01/28 02:52

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 シャロンは森の奥の小屋に住む祖母のことを、親しみをこめて「魔女ばあちゃん」と呼んでいた。シャロンの母は「いつまでもあんなところに住んで。町で一緒に暮らしましょう、って言ってるのに」といつもぶつぶつ文句を言っていたけれど、シャロンは森の奥の小屋が大好きだった。
 魔女ばあちゃんは、小屋へ遊びに行くといつも、あったかくて美味しいミルクティーをご馳走してくれた。
「魔女ばあちゃんの作ってくれるミルクティーは世界一美味しいわ!」
「そうかい。ありがとう」
「ママに何度試してもらっても、このミルクティーの味は出せないの……、どうしてかしら」
「そりゃあ、秘伝のレシピがあるもの」
「秘伝のレシピ!? なあに、それ! 知りたいわ!」
 顔を輝かせた八歳の幼いシャロンに、魔女ばあちゃんは悪戯っぽく微笑んだ。
「すぐには教えられないねえ」
「ええー? どうして?」
「だって、秘伝、なんだもの」
「そっか」
 シャロンはがっくり肩を落とす。魔女ばあちゃんは、そんなシャロンの目の前に、パッと手を広げて見せた。まるで、本当に魔法をかけるかのような仕草で。
「じゃあね、シャロンが、十五歳になったら、このミルクティーのレシピを伝授してあげよう」
「本当!?」
「もちろん。約束さ」
「約束よ!」
 それから七年の歳月が流れた。誕生日の前日、シャロンは一通の手紙を受け取った。
「魔女ばあちゃんからだわ!」
 手紙には、ミルクティーのレシピ伝授のため、誕生日当日に森の小屋へ来るように、と書いてあった。
「約束、覚えててくれたのね!」
 シャロンは手紙をぎゅっと抱きしめた。そして、大きなバスケットに、ミルクティーにぴったりなシフォンケーキをたっぷり用意した。



● ● ●



 砲身が黒光りしている、立派な銃を腰のホルスターに収めて、金髪の女性がうーん、と背伸びをした。
「終わった終わった~! さ、ケイン、あたしの勝ちよ」
「ちぇ、馬鹿な賭けに乗っちまったもんだぜ」
 ケインと呼ばれた青年が、舌打ちをしながら細長い箱を出す。
「いいじゃないの、金品を取られるわけじゃないんだから。そんな美味しいマカロン、あんたには勿体ないわよ」
 箱の中身はマカロンであるらしい。金髪の女性は満面の笑みでそれを受け取る。
「ふふふ、賭けで勝ち取ったお菓子は格別なのよね~」
 彼女の名前は、ミリィ。なかなかに腕のたつハンターだ。友人のケインと組んで、山賊退治の仕事を終わらせたところだった。どちらがたくさんの山賊を倒せるか、賭けていたのである。
「お前のその変な賭けのクセ、抜けないよな」
「そうね、今ではスイーツギャンブラーなんて異名を取ったりしてるわ!」
「その異名、自称だろ?」
「違うわよ!」
 ミリィが頬を膨らませた。だが、すぐに笑顔に戻ると、受け取ったマカロンの箱をしっかりと仕舞いこんで、ケインに手を振った。
「じゃ、また機会があれば、お仕事ご一緒しましょ」
 ケインと別れ、ほくほくした顔で小道を進んでいくと。何やら森の入り口付近で揉めているらしい声が聞こえてきた。
「だからー、無理だって言ってるじゃないですか」
「でも、私、絶対今日中に行かなくちゃいけないんです!」
 困ったようにしているのは、役人らしき男性で、それに喰ってかかっているのは大きなバスケットを持った少女だった。その周囲にも、何人か人影が見える。
(うん? なんか、見たことあるような顔も……)
 ミリィが近付いていくと、そのうちの一人が挨拶をしてきた。やはりそうだ。役人と少女の近くにいるのは、ハンターたちだ。それも、後輩ばかりが揃っている。
「どうかしたの?」
 挨拶までされたのだから尋ねないわけにもいかず、ミリィが声をかける。後輩ハンターたちや役人らしき男性が事情を説明した。
 役人の男性は、この森に雑魔が出るようだと連絡を受け、ハンターオフィスに 退治の依頼を入れたらしい。依頼を受けてやってきたのが、ミリィの後輩ハンターたち、というわけだ。
 ところが、いざ出発、というときになって、この少女がやってきた。なんでも、森の奥の小屋に住む祖母のところへ行きたいらしい。今は立ち入り禁止だ、と言っても聞き入れないのだそうだ。
「ふうん……。どうして、そんなにも急いでいるの? おばあさん、危篤だとか?」
「そういうわけじゃないんです。でも、約束が……」
 シャロンと名乗った少女は、ミルクティーのレシピを教えてもらう約束があることをミリィに話した。とたんに、ミリィの目がきらりと輝く。
「約束、か。それは守らなくっちゃね。連れて行ってあげたらいいじゃない」
「しかし、この人数ではこの子の護衛までは……」
「あたしが護衛するわ。そもそも、この様子だとお役人さん、森の中に小屋があることを失念してたんじゃない? 雑魔が森に出るなら、そのおばあさんも心配だわ。この子を連れて行って、小屋まで案内してもらうべきよ」
 ミリィがよどみなく言うと、図星であったらしい役人の男性が、ぐっと詰まった。
「心配しないで。あたしの分の依頼料を上乗せ請求したりはしないから。その代わり……」
 ミリィはにやっと笑ってシャロンを見た。
「そのミルクティーとバスケットの中のシフォンケーキ、あたしにもご馳走してくれない?」

リプレイ本文

 雑魔が出るとは思えぬほど、美しい森だった。
 緊張感たっぷりに出発したハンターたちの一行は、少々肩すかしを食ったようにぽかん、と森を見回す。実に穏やかだ。
 けれど、事実、この森には雑魔が出る。
「動物が雑魔化する森はあまり良くありませんね……気を引き締めて行きましょう」
 カリメラ・オ・ルヴォワール(ka2493)がその言葉とともに可憐な顔をぴしりと引き締めた。奈良田 小夜(ka6569)も周囲を警戒して頷く。
 一行は、雹(ka5978)を先頭にして進んでいた。シャロンを三歩前に立たせ、ミリィがしんがりを務めている。ミリィは、緊張しているふうのシャロンの肩を優しくたたいて微笑んだ。
「おばあさんの小屋までの道は、わかるんだよね?」
「は、はい。この並木沿いをまっすぐ奥に進むと、森の突き当りにあります」
 シャロンの声は先頭の雹にも聞こえたらしく、雹はちょっと振り返ってにこりと笑い、頷いて見せた。
「うちは静玖や、よろしゅうに。雹兄ぃと澪と一緒に守らせてもらいますぇ」
シャロンの近くを歩いていた静玖(ka5980)が挨拶すると、すぐ前にいた澪(ka6002)も振り返って挨拶した。
「犬は平気? この子はアニーよ。仲良くしてね」
 レオナ(ka6158)が愛犬アニーを紹介しながらシャロンに微笑みかける。シャロンはアニーの頭をそっと撫でて喜んだ。
「そういえば、どうして今日なの?」
 今日でなくてはならない、とシャロンが主張する理由をレオナが尋ねる。
「今日は、私の十五歳の誕生日なんです」
「それは約束も特別になるわけだわ」
 レオナが納得して頷いた。
 こうした会話でシャロンの緊張をほどいてくれた後輩ハンターたちに、ミリィはにやりとする。
「心配いらないよ、みーんな、優秀なハンターだからさ」
 シャロンをさらに安心させるためのように発せられたそのセリフは、後輩ハンターたちにプレッシャーをかけることをおもしろがるミリィの悪戯心が満ち溢れていた。



「そろそろ灯りが必要だね」
 先頭をゆく雹の合図で、それぞれがランタンなどに灯りをともした。雹は松明をかかげ、火の苦手なコウモリに備える。一行の警戒レベルが上がった。
「それにしても……、静かな森ですね」
 小夜がぐるりと頭上を見回しながらそっと言う。レオナがそれに頷いた。
「本当に。コウモリの羽音が遠くても、アニーが真っ先に聞きつけてくれるだろうと思っていたけれど、この分なら私たちでも充分わかりそうね」
「そうですね。聞き逃さないように静かに進みましょう。あ、ここ、滑りやすくなっています。気を付けてくださいね」
 カリメラが声をひそめつつ、背後を歩くシャロンを気遣う。雹も真っ先に道の段差などを見つけては、妹たちやシャロンに注意を促していた。
 道行は意外なほど穏やかで、けれども誰一人として油断はしていなかった。ただ……、羽音にばかり注意を向けすぎていたのだ。
 バサバサバサッ!!
「きゃああ!?」
 羽音と澪の悲鳴は、ほぼ同時だった。コウモリが、まるで落下して来たかのような動きで澪に突っ込んできたのである。
「澪!!」
 雹が素早く松明を振り回してコウモリをひとまず追い払った。静玖が桜幕符を用いてコウモリが戻ってこないようにと桜色の幻影で頭上を覆う。
「澪、大丈夫!?」
「腕をやられたんか?」
「はい、かすり傷です。とっさに顔を庇ったので腕に羽ばたきが当たりましたが……、たいしたことはありません」
 澪の左腕は打撲で赤くなっていたが、幸い出血はないようだ。雹と静玖はほっと胸をなでおろした。
「それより、シャロンさんは」
「はいはい、無事よー、大丈夫」
 銃を構えたミリィが軽い調子で答え、シャロンはミリィの背中の陰から少々引きつった笑みを見せた。あの一瞬で護衛対象をきちんと庇い、迎撃の準備もできている。へらへらした態度とは裏腹な、完璧な動きだった。
 小夜がそんなミリィの様子を見て、コウモリが万が一降りてきたときのため、慌てて槍を構えた。と、レオナの愛犬アニーが上を見上げてぐるるるる、と唸る。
「また、来ますか!?」
 カリメラが火竜票を構える。アニーの様子を読み取って、レオナが首を横に振った。
「いいえ、すぐではないみたいよ。仲間を集めているんじゃないかしら。アニーは私たちには聞こえない、コウモリの超音波を感じ取っているんだわ」
「そんなら、うちが鈴の音で撹乱させてみましょか」
 静玖が小太刀「鈴鳴」を出すと、待った、という声がかかった。ミリィだ。
「それはとりあえずやめといた方が良いね。仲間を呼んでる、っていうなら呼ばせておいたらいい。そしたら、ぜーんぶ一気に片付けられるでしょ。ちょっと戦闘が大変だけどさ、敵がどこにいるかわからない不安感よりいいんじゃないの」
 全員の目がミリィに向いて、ミリィはちょっと照れくさそうに頭をかく。
「いやー、口出ししないでおこうと思ってたんだけどさ、皆、結構動きがいいから、一気にでもできるんじゃないかと思って」
「ありがとうございます。あとは、どうぞお任せください」
 レオナが微笑んで、結界術を用い、全員を光の壁で包み込んだ。
「おおっ、やるじゃーん。シャロンちゃん、安心して、あぐらでもかいて待ってたらいいよ」
 ミリィはそんなことを言って、地面にハンカチを敷き、本当に胡坐をかいて坐ってしまった。豪胆にもほどがある。
 光の壁が出来上がると同時に、桜色の幻影が薄れていく。キィキィという鳴き声やはばたきがすぐ傍まで迫っているのが、犬の耳でなくともはっきりわかった。
「今度こそ、来ますね」
 カリメラが鋭く上を睨み上げる。
「……悪い雑魔は全て、排除しないと」
 バサバサと大きな翼を羽ばたかせるコウモリが、五匹。体は大きいが、バラバラに飛び回っていて追いづらい。
「ちょっと戦い難いですね……」
 小夜が槍で攻撃を仕掛けながら顔をしかめた。クラッシュブロウを使用し、翼にかすり傷を負わせてはいるものの、命中とはいかない。
「連携して攻撃した方が良さそうだね。静玖、できるだけ一直線に並ぶようにコウモリを誘導してくれないか!」
 雹が叫ぶと、静玖は大きく頷いてそれに応じた。
「わかりました。同時に、できるだけ下へ打ち落としますから、そこを叩いておくれやす。レオナはん、火炎符で一緒にやってもらえんやろか」
「ええ、もちろんです」
「静玖! いま!」
 澪の合図で、静玖が火炎符を操った。レオナもすかさずそれに続き、二匹のコウモリが翼に攻撃を受けてふらふらと下へ降りてきた。
「この間合い、それなら斬れる」
 静玖を庇うように立つ澪の視界に、大きなコウモリが覆いかぶさる。が、澪は素早く紅蓮斬でコウモリをまっぷたつにした。そしてまたすぐ頭上に目を上げ、他のコウモリの動きを読む。
 下へ降りてきたもう一匹のコウモリは、カリメラの短剣によって片翼を落とされた。なおもバタバタと逃げようとするコウモリの首をさらに狙い、カリメラは薄く笑む。
「ヒトの生活の邪魔をするのは……駄目なんだよ……?」
 一匹を無事に仕留め、すぐ間合いを取るカリメラだったが、その際。
「あっ!?」
 湿った地面のくぼみに足を取られ、ぐきりと左足首をひねってしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
 ミリィの後ろから、シャロンが気遣う声を上げた。ミリィは相変わらず気楽そうに、はいはい足元気を付けて~、と手を振る。
 頭上にはいまだ、三匹のコウモリが残っていた。が、しかし、ハンターたちにとっては好機となる動きをしていた。先ほどの、静玖とレオナの火炎符をよけた三匹は、もっとも安全なる空間を求めて飛んだのだ。つまり、三匹ともが同じ方向へ。
「兄様! いまです!」
 素晴らしいタイミングで澪が声を上げ、その合図に一瞬たりとも遅れを取らぬ完璧な連携で、雹が練気で攻撃力を高めた『青龍翔咬波』で三匹をまとめて攻撃した。
 ギャアアアアア、と凄まじい鳴き声を響かせて、三匹がバラバラと地上へ落ちる。衝撃的な光景に、シャロンが悲鳴を上げた。
「きゃああああ!」
 ミリィが銃を構えた。が、しかし。
「ご心配には及びません、シャロン様」
 小夜が穏やかに言うと、槍で落ちてくるコウモリの胴を的確に貫いた。コウモリは見事絶命したが、コウモリに巻き込まれて大きな樹の枝が降り注ぐ。小夜は身を挺してそれらからシャロンとミリィを庇った。
「兄様!」
 同じように妹たちを庇った雹にも、かなり大きな枝が降ってきたようだ。肩を痛めたらしく顔をしかめたが、すぐに笑顔を妹たちに見せた。
「大丈夫。それより残りのコウモリは」
「生きていたのは小夜さんが仕留めた一匹だけだったようです。あとは雹さんの攻撃で即死だったようですね」
 レオナが冷静に状況を見て皆に伝えた。雑魔を無事、一掃できたというわけだ。
 アニーを抱きしめ、ミリィの背中にすがって震えているシャロンに、ハンターたちはかわるがわる労いの言葉をかける。
「偉いね、よく頑張ったよ」
 雹が、自分の妹にするようにシャロンの頭を撫でた。カリメラが寄り添うようにして手を取り、座り込んでいるシャロンを立たせる。
「先ほどは、気遣ってくれてありがとうございました」
「はい……」
「約束。守りに行かないとね」
 澪が微笑んだのに釣られて、シャロンはようやく微笑むと、しっかりと頷いた。
 その様子を黙って見ていたミリィは、いつでも扱えるように構えていた銃を仕舞って立ち上がると、満足そうに頷いた。
「よーし、先を急ぎましょう! ミルクティーとケーキが待ってる!」



 そこからの道のりは、これまでとは打って変わって和やかなものとなった。皆、シャロンにミルクティーやお菓子の話題を振って和気あいあいと会話を弾ませる。
「兄様の淹れてくれるお茶やお菓子も美味しいよ」
 澪が微笑むと、静玖も同意して頷く。お菓子、と聞いたミリィが身を乗り出した。
「へえ、お菓子作るの、得意なんだ!」
「ええ、ミリィはん。兄ぃのつくるお菓子も美味しいおすぇ~」
 森は次第に明るくなり、気が付けば、小屋は目の前だった。レオナが、さっと周囲を見渡し、小屋の付近のマテリアル汚染がないかどうかを確認する。幸い、異常はないようだった。
「あっ、魔女ばあちゃん!」
 小屋の前では、心配そうな顔をしたシャロンの祖母が手を振っていた。バスケットを抱え、シャロンが駆け出す。
「ああ、よかった。よく来てくれたわ」
「皆さんに助けていただいたの」
「そうでしたか。お世話になりました。どうぞ、皆さん中へ。ミルクティー、作ってあるわよ」
 その一言が、全員の両目を輝かせた。
 小屋の中は、美味しそうな香りで満ち溢れていた。大きなポットから注がれる紅茶を、ハンターたちはうっとりと、シャロンは真剣な眼差しで眺める。
「魔女ばあちゃん、このレシピを教えて貰えるのよね?」
「ええ、約束ですからね。シャロン、キッチンへいらっしゃい。皆さんはどうぞ、先にミルクティーとケーキでくつろいでいてくださいね」
 魔女ばあちゃんが微笑む。カリメラが、そわそわした様子でその魔女ばあちゃんに尋ねた。
「あの、私も良ければレシピを教えて頂けませんか……っ」
「そうねえ……、申し訳ないけれど、それはできないわねえ。なんてったって秘伝ですから。悪く思わないでね」
 魔女ばあちゃんはウインクをすると、シャロンと共にキッチンへ向かった。
「秘伝ならば仕方ありませんね」
 小夜も少し残念そうにしていたが、上品に肩をすくめて諦める。ミリィがしたり顔で頷いた。
「仕方がないわよ。美味しいものを手に入れるには苦労がつきもの。シャロンだって、このレシピを教えて貰えるまでに七年かかってるんだし。スイーツギャンブラーのあたしだって、いつも苦労して……、いや、あたしの話はいいや。とにかく、先にいただきましょ!」
 ミリィの合図で、全員がカップに口をつけた。
「美味しいー!」
「ちょっと風味が違いますなぁ」
「本当だ」
 口々に感動を漏らすハンターたちの声は、キッチンまで聞こえていたようで、魔女ばあちゃんのうふふ、という笑い声がひっそり響いた。



 ほどなくして、大きな盆にカップをたくさん載せたシャロンが姿を現した。ミルクティーのレシピを伝授され、早速、初めてのお披露目というわけだ。
「シャロンさんのミルクティーも飲んでみたいと思っていたので、嬉しいです」
 レオナが微笑む。シャロンは緊張の面持ちで淹れたてのミルクティーを配った。
「魔女ばあちゃんのミルクティーと、同じになっているといいんだけど……」
 ハンターたちは順繰りにカップを受け取って、そっとミルクティーをいただいた。固唾を飲んでそれを見守っていたシャロンに、真っ先に微笑みかけたのは、カリメラだった。
「美味しいっ! 薫り高くて、おばあさんのミルクティーとそっくりな味ですっ!」
「良かった……!」
 シャロンがホッと胸をなでおろす。自分もお菓子を作るという雹も、満面の笑みでシャロンを褒めた。
「ミルクティーもだけど、このシフォンケーキもとっても美味しく焼けているよ」
「どれどれ」
 魔女ばあちゃんもシャロンのケーキとミルクティーを口に運んだ。ふふふ、と幸せそうに笑ってから、少し悪戯っぽくシャロンに目配せする。
「まあ、合格かしらね。もっと上達するために、これからも修行にここへ通ってちょうだい」
「うん!」
 シャロンは元気よく、頷いた。そしてふと、気が付いたように首を傾げる。
「そうえいば、魔女ばあちゃん。ここへ来たとき、ミルクティーとってもたくさん作ってあったわよね? どうして? 本当なら、私ひとりしか来ない予定だったのに……」
 確かに、シャロンがハンターたちとやってくるのは、魔女ばあちゃんにはわかりようのないことだった。魔女ばあちゃんは、うふふふふ、と笑う。
「そりゃあ、魔女ばあちゃんですもの。……この秘伝を教えるのは、もう十年は先かしらねえ」
 お茶目なウインクをする魔女ばあちゃんを、シャロンはぽかん、と眺めて、それから大きく笑うのだった。
「わかったわ、十年後の誕生日ね!」

依頼結果

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MVP一覧

  • 遊演の銀指
    レオナka6158

重体一覧

参加者一覧

  • 戦場の蝶
    カリメラ・オ・ルヴォワール(ka2493
    エルフ|14才|女性|疾影士
  • 陽と月の舞
    雹(ka5978
    鬼|16才|男性|格闘士
  • 機知の藍花
    静玖(ka5980
    鬼|11才|女性|符術師
  • 比翼連理―瞳―
    澪(ka6002
    鬼|12才|女性|舞刀士
  • 遊演の銀指
    レオナ(ka6158
    エルフ|20才|女性|符術師
  • スライムと闘うメイドさん
    奈良田 小夜(ka6569
    ドワーフ|17才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/01/20 08:43:11
アイコン 相談卓
カリメラ・オ・ルヴォワール(ka2493
エルフ|14才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2017/01/21 23:11:58