【女神】海賊舟屋と隠された海図

マスター:奈華里

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/01/22 19:00
完成日
2017/02/02 00:37

このシナリオは2日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●舟屋
 ハンターの協力で海賊『デス・オルカ』の居場所が明らかとなった。
 とある港町の舟屋に身を潜めているらしい。そこで海図の場所をはっきりさせる為、彼らは内部へと侵入した。
 しかし、そこで捜索は頓挫する。侵入とはいっても式符を使った簡単なものであり、見て回り判った事と言えば出入りしている人数は大凡十数名。出入りの際に何かをやり取りしているのは判ったものの、それが一体何であるかは確認できなかった。
 だが、建物の内部情報については突入こそできなかったが収穫はあったと言えよう。
 舟屋とは言え、漁師らが使っていたものを改造しているようで三戸あった舟屋を行き来できるように造り替え、そこに船を二隻収納。船自体は海水の上に浮かんだ状態のままであるからいつでもとび出せるようだ。一階にはその船の他には事務所のような小さな部屋と船で使うであろう備品が少し片付けられているが、所々よく見れば隠し板があるようで…緊急の際に武器の類いを忍ばせているのかもしれない。そして二階は船員達の仮宿なのか狭い部屋に二段ベッドが押し込まれ、どこか客船の個室にも似て圧迫感が否めない。後は手洗い場と談話室のような机のある部屋が一つの至ってシンプルな造りで、ここが海賊のアジトという雰囲気は微塵もない。
 けれど、ここがデス・オルカのアジトである事は間違いなかった。
「親分、ここ最近鼠が内を嗅ぎ回ってるようですぜ」
 陰に身を潜めていたハンター達が聞いた会話。聞き込みする彼らの動向が海賊らにも知れたらしい。
 それは無理もない事だった。彼らを探すためにハンター達も割と強気な聞き込みを行っていたから。
 裏路地の、後ろ暗い人が集まりそうな酒場等を巡っては出来るだけ自然にやっていても余所者臭は抜ける筈がない。それに海賊とてその手の情報には常に気を付けている。
「ほう、ならば手を打たねばな。猫を呼ぶか?」
 謎めいた言葉でアジト内の会話が続く。
「ですねぇ…まあ、何かあってもそう簡単にはいきませんよ。うちにはあれがついてますから」
「馬鹿言うな、相手はハンターなんだろう? だとすると油断はできねぇ」
 にやけるもう一人と違って冷静に答えた男は早速次の一手を思案する。
(あんなもん先代所有したばっかりに……っても譲り渡すにゃあ勿体ねえしろもんだわなぁ)
 船長と思しき男が顎に手を当てる。
(しかし、ここを突き止められてるとなると時間がねぇな…一旦身を潜めるか?)

●依頼
 一方、話は少し遡って――
 聞き込みとは別にルコ・ポマーロの墓を訪れていたイズともう一人のハンターはある人物に出会っていた。
 それは金髪ロングの緑の目が印象的な女性で歩きやすいラフな服装であるのに、彼女からはどことなく気品を感じる。そんな彼女の指には見た目には似つかわしくない年季の入った結婚指輪が見えて…。
「あの、すみません。私達ルコさんの船を見つけた者でして…親戚の方ですか?」
 墓の前という事もあってイズが静かに問う。すると、
「あぁ…よかった。これも彼の導きですね。私はアリエンヌ。ルコは夫です」
 と彼女は涙を浮かべながら答えるから意外な出会いに二人は顔を見合わせる。
「夫って……もしかして貴方は」
「ええ、私はエルフです。だから、驚かれるかもしれませんが私は本当に」
 彼の妻ですと言う言葉を聞くまでもなく、そうなのだろうとイズは思う。
 人を見る目は鍛えてきたつもりだし、彼女の涙がそれを語っている。
「夫の遺言で旧姓に戻してはいたんですが、船が上がったと聞いていても立ってもいられなくなって…見つけてくれて有難うございます」
 深々と一礼して彼女は続ける。
「あの、出会って早々こんな事を言うのは無礼もしれませんが、あの船に何か残っていませんでしたか? なんでもいいんです。彼の名誉を回復出来る何かが見つかればきっと」
 彼も報われる。彼女が語るに晩年ルコは『仕方のなかった事だ』と呟きつつも、全てを失い沈んでいたらしい。
「本当は旧姓に戻したくなかったのですが、どうしてもそうしろと聞かなくて…私に危険が及んだら駄目だってその一点張りで……でも、私は今でも彼を」
 思いを馳せる表情で彼女が言う。
「ではやはりルコさんはあそこを渡ったと?」
「詳しくは教えてくれませんでした。だから何をどうしたのかも知りません。だけど、信じていますから。彼は嘘をつかない。何もなくて諦めかけていたけど、船が見つかった今ならその先に進める気がするんです。だから、何か知りませんか?」
 凛とした光を宿してアリエンヌが尋ねる。その意志の強さにイズも何かを感じ取って、現在の捜査状況を話すと暫く彼女は考えて、一つの決意を胸に二人にお願いする。
「…判りました。だったら費用は私が用立てますので、どうかその海図を取り戻して下さい」
 彼女にとっては大切な形見の一つだ。それを悪党の手に置いておくのは許しがたい。
 これで名目は出来た。海図の奪還――それが今度の仕事となりそうだ。

リプレイ本文

●収集
 舟屋の中にある筈の海図が見つからないのは何故か。新参者のミグ・ロマイヤー(ka0665)の推理はこうだ。
「海図の定説と言えば、背中の刺青に光を当てて現れる水晶髑髏、特殊な石といったところかえ?」
 そう海図といっても色々ある。媒体が紙でなかったとしたら、式符での潜入でも見つけられなかった事に納得がいく。ただ、果たして本当にそうなのだろうか。海賊が仕舞い込んでいる理由、それが判らない。
「もし本当に渡れるなら絶対挑戦するだろ、ふつー。それを売っぱらうでもなく、大事に抱え込んでる理由は何なのかね?」
 先の聞き込みで無駄足を踏んだジャック・エルギン(ka1522)が少しイラつきを見せながら言う。
「その理由がどうであれ、まずは所在をはっきりしないとだな。あくまで依頼内容は奪還だ。できれば荒事にはしたくない」
「そうやね…うちもその意見に賛成や」
 小さな港町でもある。海賊とはいえ今はなりを潜めているなら一住民だし、万一汚れたりしたら依頼人が悲しむだろう。ゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)の言葉に頷いてりり子(ka6114)はそう考える。ルコの妻は今でも十分若く綺麗な女性だった。エルフであるから当然かもしれないが、種族は違えど人に変わりはない。イズから懐中時計を返された時もとても懐かし気に受け取っていたのを覚えている。
(大切な人の思い出の詰まった大事なもんやもんね…どうにか無事に返してあげたいなぁ)
 例えそれが何であっても――最愛の人の息吹を感じられるものならば尚更だ。
「という事は情報集めからか。どうする、時間はそれ程残されていないと思うが?」
 ラジェンドラ(ka6353)がちらりと時計を見つつ言う。
「交渉に入るにしても材料は多い方がいいんですよーって事で今度こそ絶対尻尾を掴んでやるんだからっ」
 ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が張り切り拳を握る。そこでハンターらは二つに分かれて行動を開始した。
 一方は交渉の準備を、もう一方はその為の材料集めである。
 まず初めに動き出したのはミグだった。彼女は以前も海軍と共同で海賊を追った事があるらしく、その際用意した水中用の魔導鎧を装備し、早々に海へと身を沈め舟屋の近くへと向かう。幸い、港付近の海中に見張りはいなかった。まさかそこからくるとは思ってもいないだろう。海底を慎重に進む。すると、
(あれは一体?)
 そこにあったのは不審な窓――。
 周りと似せて作らせてはいるが窓の周りには強化された壁があり、浸水を防ぐ加工まで施されている。
(何故じゃ? 舟屋ならば上の船のある所から海へ飛び込めるじゃろうに…というか、この壁の向こうにはもしや)
 部屋があるのか。でなければこんな小窓無用の産物。ひとまずその壁に張り付いて耳を当ててみるものの、流石に鎧越しでは中の音は聞き取れなかった。そこで開けてみようと試みた彼女であるが、当然こちらからは開けられないようになっていて…。
(まぁよい。この事実だけでもめっけものじゃ。して他にめぼしいものは…)
 すいーと浮力に任せて身体を移動させ付近を見て回る。
 だが、海中にはそれ以上何かが隠されたり沈められた形跡はない。それを少しばかり残念に思うも気を取り直し海中から舟屋へ侵入――柵がある訳ではないからそれも容易な事だが、見張りの影が見えて一旦船底に身を潜める。
 その頃外ではルンルンが再度外観調査の為、漁師に変装し接近していたのだが、
「おい、お前見かけない顔だな」
 と警戒を強めている海賊に呼び止められていたりで。
「えっあ~怪しくありませんよ。ほら、日雇いできた新人なんです! そこの漁師さんに頼まれてこれを運んでるだけでして…七番倉庫はこちらじゃあないので?」
 とここは慌てず騒がず。近場にあったぼろ網を拝借し、それらしく装う。
「だったらあっちだ。さっさと行け、邪魔なんだよ」
 男はそんな彼女を煙たそうに追い払う。
(むぅ~、成程やはりあちらも焦っているようですねー)
 そこで彼女もひとまず素直に従って…入れ替りに駆けて行く虎猫を見送る。
(人が駄目なら動物でってね)
 その猫、只の猫にあらず。そう、この虎猫はりり子のペットであり、今はりり子の目でもある。
 ファミリアズアイの効果で猫を操り舟屋の侵入を試みる。これが案外あっさりと成功した。
 何故なら船乗りにとって猫はお守りであり、漁師とて無碍にする者は少ない。それは船旅で重要な食料を鼠から守ってくれるからで、海賊もその例外ではないらしい。するりと紛れ込んでも割とスルーされていたりする。
(さて、探さんと)
 使い古された階段をりり子が進む。時折音を立てる床であるが、この際気にはしない。
 ルンルンから聞いた情報を元に二階に上がって、まずは談話室から。いつもと違う視界に苦労しながらも部屋をくまなく。だが、やはりここは何もないようだった。煙草と男所帯特有の汗のにおいで包まれた部屋は至ってシンプル。彼女を見つけると愛想よく撫でてくる者までいる。
「魚でも食うか?」
 彼女を見つけた一人が小魚を差出す。だが、それに見向きもせずに隣りに走って入ったのは寝室か。
 その部屋に入った彼女はふとある事に気付く。
(あれ、あそこに隙間が見える)
 部屋の突き当りのベットの奥、壁である筈のそこに僅かに隙間。きっと人の目では気付かないだろう。
 部屋にいる男達を適当にいなし、奥にいる男の膝にとび乗ってその隙間を密かに窺う。
「おい、野郎共。一応武器も用意しとけよ」
 とそこへ中年の男がやって来た。貫禄のある佇まいからして彼がここの頭かもしれない。案の定、他の男達は彼の事を兄貴と呼んでいる。
「って事は移動するんで?」
「ああ、念の為だ。今更狙ってくるとは困ったもんだが渡す訳にはいかねえ」
「ですね、兄貴。あんなもんでも一応お宝の続く手掛かりですから。んで、今はどちらに?」
「言うかッ馬鹿! 何処に耳があるか判んねえんだ、さっさと支度しろや!」
 肝心な部分を謎にしたまま男が怒鳴る。
「いやぁ、でも濡れたらまずいでしょ? その辺どうにかしないと…」
「阿呆が。そんなの言われるまでもねぇんだよっ、ちゃんと瓶に保管してっから心配すんなッ!」
(瓶…)
 濡れて困るとするとやはり問題の海図は紙製という事か。
 もう少し何か口を滑らさないかとりり子は兄貴の足元に擦り寄る。
「何だ、こいつは」
「いつの間にか入って来た野良らしいんすよ。可愛いでしょ」
「馬鹿言ってんな、さっさと支度だ。いいなっ」
「はいいっ!」
 だが、これ以上有益な話は聞けそうになく、問題の隙間も猫の姿では滑り込むには狭すぎる様で。
(ここは後からルンルンさんに頼むんよ)
 りり子はそう思い、舟屋を後にした。

●交渉
 時は夜。集めた情報を共有しハンターらは大胆にもオルカのアジトの戸を叩く。
 但し逃走の恐れを考慮し、赴いたのはたった三名。残りは別行動を取り、今も各所で動いている。
「さて、じゃあ行くぜぇ」
 一回静かに深呼吸してまずはジャックから。
「おう、ちょっくらアンタらの大将に話がある。ここを開けてくれないか?」
 彼が笑顔で戸口の男に声をかける。
「はっ、こんな夜分に何用だ? こっちには話はないね」
 そう言い戸を閉めかける男にゼクスの待った。
「ぁ~いやな、先日酒場であった奴が面白い事を言ってたんだ。確かここで働いてると言ってた奴だったと思うんだが、大法螺吹きの『地図』について。俺は『地図』と言ったのに、そいつはそれを『そんな海図知らないなぁ』と言ってたもんで」
 ふぅと紙巻煙草の煙を吐き出し、彼が笑う。
「ちっ、どいつか知らんがこっちはそんなもん知らね…」
「まあ、話だけでも聞けって。悪い話じゃない。俺らは遺品回収の依頼を受けてきてるだけだ」
 ドアの隙間に足を割り込ませつつも出来るだけ穏便にジャックが話を持ち掛ける。
「まぁいい。通せや」
 そこで声がかかった。戸口の背後にあの時の男…やはりあの兄貴と呼ばれていた男がここの頭のようだ。
 二階の談話室に通されて、卓を挟み椅子に腰かける。
「で、何だって? うちはただの船乗りなんだが」
 男が言う。
「よく言うぜ。アンタら海賊さんだろう? それもルコ・ポマーロの遺した海図を奪った」
 未だ白を切る彼らにジャックが深く切り込んでいく。
「ほう、海賊かどうかはさておいてだ。もしそれがあったらあんたらはどうするつもりだね?」
 男が彼等を品定めする様な目付きで問う。
「どうするも何も然るべき人の許に返すんよ。それが当たり前の事やもん」
 そこでりり子が切実な思いをぶつけてみる。
「なあ、正直あんたらも持て余してんだろ? だったらそれなりの礼金でカタつけて、丸く収めねぇかい」
 頃合いと見てジャックが金での交渉を切り出す。
 大方賊と言う者は海の者に限らず金品に目がない。ならば一番穏便な方法と言えばこれに限る。皮袋に詰めれるだけの前金を用意してきた彼がそれを机に置く。それには頭も興味を示して、思案する素振り。この分だと交渉成立まで後もう一押しといった所か。そこでゼクスが決断に向かわす一手に打って出る。
「なあ、知ってるか。俺らの探している海図はどうやらデス・オルカっていう海賊が持ってるらしいんだ。つまりあんたの部下が海図の事を知ってたという事はあんたらはその海賊か、あるいはその海賊とつながりがある可能性が出てくるんだが…身に覚えはないかい?」
 飄々とした様子ながらも的確に痛い所をついてやれば子分の一人が奥歯を噛む。
 だが、お頭は流石にその位では動じなかった。ぎろりと睨みを聞かせて低い声で応対の構え。
「成程、何処で聞いたか知らんがよく調べてるな。しかし、肝心の証拠はあるのかい?」
「証拠か…そうだな。この舟屋、なぜ改造なんてしているのかな?」
「知ってるんだぜ、海中の小窓の事」
 ゼクスとジャックの言葉に驚きを見せた後、頭が手を上げる。
「あぁ~あわかったよ。仕方ねぇ、折角の隠れ家をばらされちゃあ困る。おい、あれを持ってきな」
 そこで交渉は成立したかに見えた。けれど、ゼクスは気付く。
 部下の一人が取り出したのは確かに海図であったが、取り出した場所が問題だった。談話室にある鍵のかかった引き出しではあったが、そこから無造作に海図らしき紙を取り出したのだ。
(りり子の話では瓶に入れたと言ってた筈…)
 それにりり子も気付いて、広げられた海図を不審げに見つめる。
「どうした? お望みの海図とやらだが」
「違う」
「は?」
「これやない。うち聞いたんや、海図は瓶にしまってるって」
「チッ! カモってやろうかと思ったのに残念だぜ」
 頭が突如立ち上がり机を強く叩く。すると同時に彼等側の床が抜けて、海賊らは下の階へと落下してゆく。
「マジかっ! 改造にも程があるだろっ!」
 ジャックが慌てて追おうとする。
 ただ、抜けた床はどういう仕組みなのか一瞬で塞がってしまいそこからは追えない。
「おや、連絡が……フムフム、了解。そして、忍者テレカ発動っ!」
 騒ぎを察知しルンルンが現在の状況を口伝符で報告する。
「万が一がある。一応、気を抜くなよ」
「OK」
 船待機のラジェンドラがイズにそう告げた。

●理由
 騒がしい足音に船からの機械音。海賊側にも覚醒者がいるのか魔導モーターが積まれている。
「おいっ、人数が足りないようだが」
「いい、出しちまえっ!」
 交渉決裂、迅速に逃走を計る海賊達。オルカのメンバーは各自分かれて船に乗り海に出る。
 そして、二隻が散りじりに逃げて…息を吐いたその時だった。
「おい、ここにあったワインはどうした?」
 お頭が船に積んでいた筈のそれがない事に気付き子分らに問う。
「あ、そう言えばないですね。しかし、どうして…」
「おっ、お頭~大変です! 侵入者がッ…ってあ」
 状況に気付いたのだろう、麻痺し動けなくなっていた子分が青ざめる。
「てめぇ、何やってたんだゴラぁ~! チッ、奴らタダじゃおかねぇ」
 海上でお頭の怒声が木霊した。

 して例のものが何処にあるのかと言えば勿論ここ。
「凄い。こんなに丁寧に書かれた海図初めてよ」
 イズがミグから届けられた海図を前に言葉する。
「終始お手柄だな」
 そう言うのはラジェンドラだ。
「いや、そなたの調査も役に立ったのじゃ。積荷の中に一ダースだけ瓶物など怪しいからのう」
 イズの船に上がって、皆の待つ港に戻りながら彼女が気分よく話す。
 一体何があったのか。その答えはこうだ。まずはルンルンの動きから。彼女はりり子の発見した例の隙間に式符を送る。式符であれば狭い場所もお手のもの。気付かれないよう侵入し、隙間を進めば驚く事にそこには通路があり、更にはその先梯子を下りると二階から地下への道が続いていた。
(まさか海沿いのこんな場所に地下室を作るなんて大胆ですねー)
 地下の部屋には今までの戦利品が少しと彼ら独自のルートなのか何度も書き直したりされている近辺の地図が広げられていたが、問題の瓶に入った海図は見当たらない。そこでその場を後にして、次に向かったのが舟の方。予め、ミグは海中探査の後船内部も調べる事を皆に伝えていた。だが、見張りの存在が邪魔で自由に動けないという連絡を受け、ルンルンも後からそちらに向かうと返事を返していたのだ。
 そして舟のある一階に来たのが大体交渉班が来るのと同じ位だったか。
 予想外のハンターの訪問に海賊達が慌てる中、こちらは至って冷静に。隙を見て見張りの子分達をミグが麻痺らせては内部調査し、今に至る。
「しっかし、見つけたはいいがあれには驚いたのう。こんな港にシャチが来るなんてありえるかえ?」
 ワイン瓶に隠された海図を見つけた時の事。任務完了と海に飛び込んだ折、彼女を待っていたのはツートンカラーの肉食海洋生物。いつの間に傍まで来ていたのかは不明だが、危うく擦り寄られ壁にぶつかるところだったのだ。
「お帰りやね。無事でよかったんよ」
 港で待っていたりり子が言う。
「はぁ~なんとか見つかってよかったぜ。んで、例の海図はちゃんと使えるもんなんだろうな?」
 これだけやってポンコツでしたではシャレにならんとジャックが尋ねる。
「それは本当に渡ってみないと判らないけれど、一つ言えるのはこれがとても正確で丁寧って事よ」
「って事はつまり」
「私は信じるわよ。それにこれ見て」
 イズが海図の隅に書かれた奇妙な文字を指差し言う。
「何かの暗号? それとも古代文字、とか?」
「判らない。けど、きっとこれの謎が解けなくて海賊も手出しできなかったんじゃないかしら? この海図があっても到底普通の船じゃあ無理だもの」
 瞳の奥に期待を潜ませてイズが興奮気味に言う。
「でもまずは返しに行かんとね」
 そんな彼女にすくりと笑って、りり子がそう告げるのだった。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 5
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • うつむかない者
    りり子ka6114

重体一覧

参加者一覧

  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 【ⅩⅢ】死を想え
    ゼクス・シュトゥルムフート(ka5529
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • うつむかない者
    りり子(ka6114
    鬼|13才|女性|霊闘士
  • “我らに勝利を”
    ラジェンドラ(ka6353
    人間(蒼)|26才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談用スレッド
ジャック・エルギン(ka1522
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/01/22 13:00:14
アイコン 質問用スレッド
ジャック・エルギン(ka1522
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/01/20 21:41:30
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/01/19 09:12:06