ゲスト
(ka0000)
坊ちゃん剣士、妖怪退治に乗り出す
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/01/24 12:00
- 完成日
- 2017/01/30 09:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●成長とは
リシャール・べリンガーは目の前で起こったことを解決することができなかった。
この一年、何をしてきたのだろうか?
まず、じいやから逃げるように、ハンターとしての素質を伸ばしたいとか父親を超えたいとか考え、勝手に依頼を受けてしまった。結果、ハンターから助言ももらい、周りも考えてなんとかしようと冷静になれてきた。
ハンターにも言われたリシャールの立場だからできることをやろうと努力を続けた――つもりだった。
先日、歪虚を前に、何もできなかった。突然のことに頭がついていかなかっただけと言えばそうだが、もしハンターがいなければ多くの人が死んでいる可能性が高いのだ。
実家に戻ってからしばらく部屋から出られなかった。
ふがいない自分。
何も成長していない自分。
どうすればいいのか分からない。
父も母にも迷惑をかける。
わかっているからどうにかしないといけない。
「修行に出る」
頭の中に浮かんだ単語はずっとそこにい続ける、新年の行事中ずっと。
「私に舞刀士という道を示してくれたあの人ならどう思うのだろうか?」
顔を合わせずらいとはいえ、どこにいるか分からない人物。ハンターなはずだが、聞いた名前はなかった。
だから、もう二度と会える気はしない。
「私はどうすればいいのかな」
経験がすべてだと本能的に感じた。
●家出
「リシャールが家出した?」
「あなた! どうしたらいいの!」
妻に泣きつかれ、シャールズ・べリンガーはうろたえる。
プエル(kz0127)という歪虚と遭遇したというあたりから様子がおかしかったのは間違いない。それもシャールズの友人である男の息子が歪虚化した存在だとも聞いている。彼を慰めるにも、息子が優先であったし、シャールズには困る状態。
帰宅後のリシャールはふさぎこみ、ひきこもっていた。考える時間も必要だろうとそっとしておいて、納得したのか年明けの行事には顔を出していたのだが。
置手紙は「場数を踏みたい」と言うようなことがあった。
シャールズは調べると転移門を使っていることは分かった。その上、エトファリカまで行っている。
舞刀士という存在を考えると、妥当であり、リシャールが求める物が分かった。
家出なのは問題だが、リシャールの心を考えるとシャールズは納得した。心配がなくなるわけではないが。
シャールズはエトファリカ連邦国に来たついでに大江家を訪れる。突然の来訪に大江 紅葉(kz0163)は驚いたが、快く話を聞いてくれたし、もし見つけたら話を聞き連絡を入れると約束してくれた。
この時点でリシャールがいる様子がないため、ここにきていないのは明らかだが、紅葉に会った直後、安心してもいい気がした。
●街道
エトファリカ連邦国の天ノ都で武官として仕える松永 光頼は、街道の見回りに出かけていた。
妖怪が出るという話は聞かないが、出ないとは限らない。まだまだ騒がしいのが現実であり、何時何があるとも限らない。
ある里がある方向から、馬が疾駆してくる。馬は立派で、背に乗る者は慣れていないのがわかるため、誰かが載せて走らせたと思われる。
「光頼様」
「止まれ」
部下たちは慌てる。
馬は光頼の行動により、我に返ったように足を止めた。
馬の背に乗っているのは母と子らしく、真っ青な顔をしている。助かったと分かるまでしばらく呆然とし、震え始める。
「落ち着きなさい。何があったのか……まず、この水を飲みなさい」
部下が手渡した水筒を渡し、光頼は落ち着かせ話を聞く。
「お役人様! 里を出て都に向かっている途中に妖怪が出たんです」
「お兄ちゃんが一人で行っちゃったの。わたしたちを馬に載せたら」
二人が襲われていたところを少年剣士が助けたということらしい。その人物の馬がこれで、彼は単独で何とかしようとしているという。
その少年剣士は幼さが残るが思いつめたような顔をしていたという。
「お兄ちゃんも助けてあげて!」
「お役人様、お願いします」
光頼は部下たちにこの親子を任せ、先に行くことにした。援軍としてハンターを呼ぶようにと頼み。
リシャール・べリンガーは目の前で起こったことを解決することができなかった。
この一年、何をしてきたのだろうか?
まず、じいやから逃げるように、ハンターとしての素質を伸ばしたいとか父親を超えたいとか考え、勝手に依頼を受けてしまった。結果、ハンターから助言ももらい、周りも考えてなんとかしようと冷静になれてきた。
ハンターにも言われたリシャールの立場だからできることをやろうと努力を続けた――つもりだった。
先日、歪虚を前に、何もできなかった。突然のことに頭がついていかなかっただけと言えばそうだが、もしハンターがいなければ多くの人が死んでいる可能性が高いのだ。
実家に戻ってからしばらく部屋から出られなかった。
ふがいない自分。
何も成長していない自分。
どうすればいいのか分からない。
父も母にも迷惑をかける。
わかっているからどうにかしないといけない。
「修行に出る」
頭の中に浮かんだ単語はずっとそこにい続ける、新年の行事中ずっと。
「私に舞刀士という道を示してくれたあの人ならどう思うのだろうか?」
顔を合わせずらいとはいえ、どこにいるか分からない人物。ハンターなはずだが、聞いた名前はなかった。
だから、もう二度と会える気はしない。
「私はどうすればいいのかな」
経験がすべてだと本能的に感じた。
●家出
「リシャールが家出した?」
「あなた! どうしたらいいの!」
妻に泣きつかれ、シャールズ・べリンガーはうろたえる。
プエル(kz0127)という歪虚と遭遇したというあたりから様子がおかしかったのは間違いない。それもシャールズの友人である男の息子が歪虚化した存在だとも聞いている。彼を慰めるにも、息子が優先であったし、シャールズには困る状態。
帰宅後のリシャールはふさぎこみ、ひきこもっていた。考える時間も必要だろうとそっとしておいて、納得したのか年明けの行事には顔を出していたのだが。
置手紙は「場数を踏みたい」と言うようなことがあった。
シャールズは調べると転移門を使っていることは分かった。その上、エトファリカまで行っている。
舞刀士という存在を考えると、妥当であり、リシャールが求める物が分かった。
家出なのは問題だが、リシャールの心を考えるとシャールズは納得した。心配がなくなるわけではないが。
シャールズはエトファリカ連邦国に来たついでに大江家を訪れる。突然の来訪に大江 紅葉(kz0163)は驚いたが、快く話を聞いてくれたし、もし見つけたら話を聞き連絡を入れると約束してくれた。
この時点でリシャールがいる様子がないため、ここにきていないのは明らかだが、紅葉に会った直後、安心してもいい気がした。
●街道
エトファリカ連邦国の天ノ都で武官として仕える松永 光頼は、街道の見回りに出かけていた。
妖怪が出るという話は聞かないが、出ないとは限らない。まだまだ騒がしいのが現実であり、何時何があるとも限らない。
ある里がある方向から、馬が疾駆してくる。馬は立派で、背に乗る者は慣れていないのがわかるため、誰かが載せて走らせたと思われる。
「光頼様」
「止まれ」
部下たちは慌てる。
馬は光頼の行動により、我に返ったように足を止めた。
馬の背に乗っているのは母と子らしく、真っ青な顔をしている。助かったと分かるまでしばらく呆然とし、震え始める。
「落ち着きなさい。何があったのか……まず、この水を飲みなさい」
部下が手渡した水筒を渡し、光頼は落ち着かせ話を聞く。
「お役人様! 里を出て都に向かっている途中に妖怪が出たんです」
「お兄ちゃんが一人で行っちゃったの。わたしたちを馬に載せたら」
二人が襲われていたところを少年剣士が助けたということらしい。その人物の馬がこれで、彼は単独で何とかしようとしているという。
その少年剣士は幼さが残るが思いつめたような顔をしていたという。
「お兄ちゃんも助けてあげて!」
「お役人様、お願いします」
光頼は部下たちにこの親子を任せ、先に行くことにした。援軍としてハンターを呼ぶようにと頼み。
リプレイ本文
●状況確認
リュラ=H=アズライト(ka0304)はその少年剣士の匂いを覚えようと考えた。
彼の連れていた持ち物は親子が乗って逃げたゴースロンのみ。荷物は背負っていたのだろう。わずかな望みにかけ【超嗅覚】を用いた。今いる人たちの匂いとともに異なる物を嗅ぎ分け、それだと推測する。
「覚えれば、探す助けにはなります」
怪我を考え準備をする。
「さあ、現地へ。行ってみんと分からぬことも多い」
レーヴェ・W・マルバス(ka0276)は少女の姿ながらも、老練の落ち着きを持って現在の状況を松永 光頼の部下や逃がしてもらった親子に確認して結論付ける。
「早く行って、その子が大けがする前に見つけてあげないと。事件を解決のためにも」
無茶しただろう少年剣士の心中を考え東條 奏多(ka6425)はこぶしを固める。少年の年齢からすれば、実力と現実の間で悩み、まっすぐ進もうとあがくころだろう。大けがしてしまったら元も子もない。
一行はできる準備をし、すぐに出た。
道を境に一方は畑、一方は竹藪と背後に山がある。
ザレム・アズール(ka0878)は地面を細かく見ている場合ではない、と下草や竹の折れ具合等を瞬間的に見る。
「枝の折れ方……新しいのはこの辺りか」
その近くにはゴブリンの死体が一つ転がっている。少年剣士か、先行した光頼が倒したものだと思われる。
マリィア・バルデス(ka5848)は連れている犬たちにゴブリンの匂いを覚えさせる。
「α、γ、ここからゴブリンの匂いをたどりなさい。行け」
告げた直後、二匹はザレムが指摘していた道に入って行った。
「目撃証言が曖昧で妖怪だとか小鬼だとか言っていたが、やはりゴブリンか」
カイン・マッコール(ka5336)は死体を見た時、苦々しく思いつつも、来たかいがあったと考える。もしいなくともそれはそれで全力を尽くすが、ゴブリンを狩りつくしたい彼にとっては、行動への大きな原動力となる。
六人は竹藪にある道に入っていく。獣道なのか人道か不明だが、何かに行きつくだろう。
竹藪は視界が利かない。
光頼は太刀を抜き放ち、気配があったほうを見た。ハンターであると分かりほっと息を吐く。
「あの場にいたゴブリンは瀕死ではあった」
とどめは刺したという。
一行は状況を見つつ進んだ。
●竹藪
マリィアの犬たちを中心にしつつ、ハンターたちは離れすぎない程度に散開して捜索する。少年やゴブリンを効率よく探すためであり、連絡用に各人トランシーバーも忘れていない。
マリィアは【直感視】を使い、異変を感知しようとする。ゴブリンの匂いを追っているはずの犬たちが進むほうに何かが通った感触はある。それが常時か不明だが、新しいことは事実だ。
「……その子を追って行ったからとはいえ、別動隊がいて馬とあの親子を襲うこともあるのに」
親子を逃がした少年を考えると、未熟さから苛立ちと不安が生じる。叱るにしても無事見つけ出す必要がある。祈るよりも探す現実を急いだ。
【超嗅覚】を用いリュラは走る。技の時間内に少しでも早く見つけたい。敵がどこにいるかは分からない。見通しが悪いとはいえ、慣れてくると規則性もあり気配もいつもと変わらない。
一人になっているが、もしもの時は仲間が来ると分かっている。しかし、少年は状況を知らずに逃げ回っているのかと思うと焦りも生じる。
焦る気持ちを抑え、息を殺し、耳を澄まし、匂いをかぎ分ける。
「血の匂い?」
臓が早鐘打った。
ザレムは連絡にある血の匂いがする方向へ【ジェットブーツ】を併用し、一歩でも早くと進む。
ピリッと痛みが走る。
葉が当たり、鎧がないところに傷ができたかもしれない。
「俺たちはハンターだ。先に入ったキミ! 俺たちにも協力させてくれ! 何か合図をくれ!」
返ってくる声はないが進行方向から音する。仲間に連絡し、まっすぐに向かった。
竹藪の先には川がある。
川と言っても通常は渡れるもの。
依頼を受けたときに大まかな地形は話を聞いていた。
レーヴェは仲間の連絡を聞きつつ、眉をしかめる。
「ゴブリンは知恵がある。個々は弱いが油断ならない」
できれば川があるほうから回り込むほうがもしもの時にゴブリンを逃がさない済むだろう。しかし、初めての土地で無茶はできない。優先順位は少年を無事に保護すること。
「そこにいると決めつけるのは危険とはいえ、仮定の上、側面を……」
ハンターが向かっているところにゴブリンがいないこともあり得なくはないから。
「数によっては巣があるのか?」
カインはゴブリンがまとまって移動していることを考えて推測した。この辺りに最近ゴブリンがいたという話がないために、移動してきて、居を構える為の偵察とでも考えらえる。
「川があるならその先に何かあるかもしれない。今この近くにいる奴らは逃がす気はない」
仲間が方向を定めたらしいため走る。
まずすることは、少年剣士を助けること。並行してゴブリン退治もできれば上等だ。
奏多は光頼とともに進み、周囲を見る。仲間が何かを感じたほうに向かうが、もしもゴブリンが逃げるなら倒したほうがいい。
「馬に乗ってはいないなら、遠くまでは行っていない?」
「隠れているならもっと早く見つかるでしょうが、それがないなら戦いつつ逃げているのでしょうね」
光頼の返答に奏多はうなずく。
「囲まれた場合、こういうところのほうが安全……の場合もある。ということは、確実に多勢無勢なのだろうか?」
奏多の思考はトランシーバーからの連絡で中断となる。ゴブリンを見つけ、戦いの火ぶたが落とされるようだった。
「急ごう」
光頼を促した。
●一筋の光
リシャール・べリンガーは親子を逃がした後、ゴブリン一体に致命傷を与えた。しかし、多勢に無勢、戦うのに不利であり、竹藪に入り込む。
それも失敗であったのだ。隠れる場所はあるようでない。防戦しつつ逃げるので手いっぱいだった。
傷は増える。
誰かの声がした。
助けが来ると思えず、死の声かと思った。
ゴブリンのこん棒が振り下ろされた直後、何かにぶつかり止まる。止めた何かは光の破片となって飛び散って消えて行った。
「リシャール? ひとまずはこいつらを倒すのが先だな」
ザレムが割って入る。顔見知りの少年との再会を喜ぶが、先にゴブリンを倒さないとならない。
「仲間も来る、ひとまずこれを」
ヒーリングポーションを手渡し、背中にかばった。
「多勢に無勢だと思ってるかもしれないが、これからはこちらの行動だ!」
ザレムは機導術を使い武器を巨大化させ、敵を貫いた。離れていても攻撃できるぞという警告でもある。
続いてリュラがやってきて、リシャールのヒーリングポーションをさっと開ける。
「飲んでいてください。まずは止血を……」
リュラは傷を診る。倒れていてもおかしくないくらいだ。最低限の、命をつなぐ手当をする。
銃声が響く。
「逃がすつもりはないからのう」
「さあ、私たちが相手よ」
レーヴェとマリィアの強い声も続いた。竹は遮蔽物にもなりうるが、うまく利用するすべも彼女たちは心得る。
ザレムがかばっているが、その側面を突こうとする賢さを発揮したゴブリンがいた。
リシャールに自身のヒーリングポーションも手渡したリュラがとっさにかばう。幸い、こん棒は彼女の上に落ちなかった。
「まずは……打ち漏らしたか」
カインがゴブリンに鋭い突きをくらわしたが、若干ずれて仕留められていない。リュラがかばっているリシャールに見覚えがあったが今はどうでもよかった。
「君は戦えるのか? ゴブリンは小柄なために見通しが悪いところでは有利だ。道とかのほうが……」
良かったがあれこれ言っている場合ではないとカインは呟く。今の状況でも注意すれば戦えるのだから。
リシャールはヒーリングポーションを飲み干す。少し、心臓が落ち着くと、守られている場合ではないと唇をかんだ。
リシャールは立ち上がろうとするがふらつく。リュラはその彼をさりげなく支えるように、そばにいる。心配であるが、リシャールの輝きが見えた。
「立てるということは無事だな」
奏多は技を使い一気に近づき、リシャールの近くにいたゴブリンにとどめを刺した。少年を見ると青白いが、闘志を感じる。
「ゴブリンは僕たちより小柄な相手です、斬撃で最初から狙うより、刺していいき鈍った後、殺せばいいのです」
カインは構えつつ、リシャールに助言する。
リシャールは呼吸を一つし、鞘に刃を戻し、構えた。
リュラはリシャールから手を放し武器を構える。彼のやる気は重要だが、ひどい怪我も事実。戦いを早く終わらせるのが重要だ。
「ん? ゴブリンの様子が……逃げそうだな」
奏多のつぶやきを示すように、不利と感じたゴブリンたちがそわそわと足の向きを変えたのだ。
「リシャール、今は俺たちもいる。協力して、敵を倒すぞ」
ザレムはリシャールが前に出るなら防御のために機導は使うべきと読み取る。彼の成長を考えると支えるのも重要だ。
「川からこっちで倒すのが最上だのう」
レーヴェの声とマテリアルのこもった銃弾が逃げ始めたゴブリンに命中する。
「それはそうよ。面倒になるんだから」
マリィアの銃弾もゴブリンを撃つ。
しばらくして、周囲にいたゴブリンは倒されたと判断できた。
妖怪はいるのか?
それらしい痕跡はない。
「かといって、ゴブリンたちが操られていたってわけでもないんだろう?」
奏多が仲間に確認するように言う。誰も肯定も否定もできないが、ゴブリンたちの行動に違和感はなかった。自主的であった。弱っているリシャールを狙い、勝機が消えたとなったら逃げようとした。逃げていいから逃げる、知恵があるから。
ハンターは周囲を見るが特にない。
何かがあるとすれば、川を渡った先の山の中だろうか。
「妖怪がいないとは言い切れませんね」
光頼は渋面となる。住民から異変の噂も聞いていない。ならば、これが最初の異変であり、対処が早ければ被害は少なく済むということだ。
「まずは戻ろう」
「そのあと、僕は先を見に行ってきます」
奏多の提案にカインは付け足した。早く叩ける異変は早いほうがいいのだから。
●明日へ
道に戻ったところで、光頼の部下たちとも合流した。増援もあり、警戒警備にあたっている。
カインが装備を確認後、出かけた。光頼は念のために部下をつける。
リシャールの怪我の手当てをしながらハンターたちは事情を尋ねた。
現在に至るまでを説明し、唇をかんで顔を伏せるリシャール。
「クックックッ修行にしても、独りでいくのは無謀じゃの。安全対策がなっとらん、だが、その勇気は買うぞ」
レーヴェが笑う。その目は無謀なことをやった子を見る優しさに満ちた輝きを持っていた。
「うん……無鉄砲、だけど……嫌いじゃない。私も、駆け出しだし」
リュラはふっと楽しそう表情でぽつりと言う。慎重もいいが、時々無茶をするのはうらやましいかもしれない。
「でもね!」
マリィアは手をリシャールの頬に当てる。平手打ちをすれば傷が開くと想像できた。そのあと、抱きしめる、心配したと。
「強さなんて、人に教えもらおうなんて思っているうちはダメでしょうね。早く家に帰って親御さんに家出したこと謝りなさい! 視野狭窄よ。ゴブリンたちに別動隊がいたら、あの親子もポチも死んでいたかもしれないのよ」
護衛しながら人里まで行けばよかった、無事でよかったと続ける。
「申し訳ありませんでした。ポチ……ごめんなさい」
リシャールは涙を必死にこらえる。ゴースロンのポチがリシャールの頬に鼻を擦り付ける。
「まあ、マリィアも言っているように無事で良かったし、未熟さの自覚は実は一人前の扉に手を掛けたってことさ」
ザレムがリシャールの涙をさりげなくぬぐう。
リシャールが無茶をしたのは今回が初めてではない。最初に比べれば、彼の目からすれば十分成長してきている。
「無茶なことするのもあるよな。大いに悩んで、盛大に間違えるのは悪くない。心配している人間がいる、それは忘れるなよ」
奏多に言われて、リシャールはうなずいた。
光頼はリシャールを問答無用で背負う。
「さあ帰るわよ! 親御さんに謝らないと」
マリィアはリシャールを促す。
「まあ待て待て、悩みもあるなら旅に出ろというのもひとつじゃ。無事だということは連絡しておこう。武者修行は実家公認であると堂々とすればよい。知り合いはおらぬのか?」
レーヴェはとりなす。
「大江殿のところに夏にホームステイとやらで来ていたはずですが、私がひとまず預かろうと思います」
光頼が淡々と理由も告げる。リシャールの体力の消耗と武人である自身を考えると面倒を見たいと。それに大江 紅葉は光頼の友人でもあるため、連絡は入れるという。
「それはいい。ぬしがそうしたいなら良いし、大江 紅葉とやらの家にホームステイしていたとなれば、家族同然じゃ」
頼る先が多いほうがいい、レーヴァが思う「修行への安全」も確保されていく。大人たちが口を突っ込まなければ、自主的なこともできるだろうし、教える者も出てくるだろう。
「まあ、それはそうね。親御さんたちには連絡は入れるし、無茶はしない」
マリィアは怪我の具合を考え一理あると納得した。リシャールを見るとほっとした様子も漂っていた。
ゴブリンは倒したがまとまって行動していたことから『巣』があると読んだカイン。
仲間や光頼に告げた後、倒すために進む。無茶をするつもりはないができれば倒したいというのが信条だ。
光頼の部下がカインを止める。
「……山が険しいのか」
「登れなくはないですが、この時間から登るのは……」
無謀ですと告げる。
「……わかりました戻ります」
歯噛みしつつカインは従った。
リュラ=H=アズライト(ka0304)はその少年剣士の匂いを覚えようと考えた。
彼の連れていた持ち物は親子が乗って逃げたゴースロンのみ。荷物は背負っていたのだろう。わずかな望みにかけ【超嗅覚】を用いた。今いる人たちの匂いとともに異なる物を嗅ぎ分け、それだと推測する。
「覚えれば、探す助けにはなります」
怪我を考え準備をする。
「さあ、現地へ。行ってみんと分からぬことも多い」
レーヴェ・W・マルバス(ka0276)は少女の姿ながらも、老練の落ち着きを持って現在の状況を松永 光頼の部下や逃がしてもらった親子に確認して結論付ける。
「早く行って、その子が大けがする前に見つけてあげないと。事件を解決のためにも」
無茶しただろう少年剣士の心中を考え東條 奏多(ka6425)はこぶしを固める。少年の年齢からすれば、実力と現実の間で悩み、まっすぐ進もうとあがくころだろう。大けがしてしまったら元も子もない。
一行はできる準備をし、すぐに出た。
道を境に一方は畑、一方は竹藪と背後に山がある。
ザレム・アズール(ka0878)は地面を細かく見ている場合ではない、と下草や竹の折れ具合等を瞬間的に見る。
「枝の折れ方……新しいのはこの辺りか」
その近くにはゴブリンの死体が一つ転がっている。少年剣士か、先行した光頼が倒したものだと思われる。
マリィア・バルデス(ka5848)は連れている犬たちにゴブリンの匂いを覚えさせる。
「α、γ、ここからゴブリンの匂いをたどりなさい。行け」
告げた直後、二匹はザレムが指摘していた道に入って行った。
「目撃証言が曖昧で妖怪だとか小鬼だとか言っていたが、やはりゴブリンか」
カイン・マッコール(ka5336)は死体を見た時、苦々しく思いつつも、来たかいがあったと考える。もしいなくともそれはそれで全力を尽くすが、ゴブリンを狩りつくしたい彼にとっては、行動への大きな原動力となる。
六人は竹藪にある道に入っていく。獣道なのか人道か不明だが、何かに行きつくだろう。
竹藪は視界が利かない。
光頼は太刀を抜き放ち、気配があったほうを見た。ハンターであると分かりほっと息を吐く。
「あの場にいたゴブリンは瀕死ではあった」
とどめは刺したという。
一行は状況を見つつ進んだ。
●竹藪
マリィアの犬たちを中心にしつつ、ハンターたちは離れすぎない程度に散開して捜索する。少年やゴブリンを効率よく探すためであり、連絡用に各人トランシーバーも忘れていない。
マリィアは【直感視】を使い、異変を感知しようとする。ゴブリンの匂いを追っているはずの犬たちが進むほうに何かが通った感触はある。それが常時か不明だが、新しいことは事実だ。
「……その子を追って行ったからとはいえ、別動隊がいて馬とあの親子を襲うこともあるのに」
親子を逃がした少年を考えると、未熟さから苛立ちと不安が生じる。叱るにしても無事見つけ出す必要がある。祈るよりも探す現実を急いだ。
【超嗅覚】を用いリュラは走る。技の時間内に少しでも早く見つけたい。敵がどこにいるかは分からない。見通しが悪いとはいえ、慣れてくると規則性もあり気配もいつもと変わらない。
一人になっているが、もしもの時は仲間が来ると分かっている。しかし、少年は状況を知らずに逃げ回っているのかと思うと焦りも生じる。
焦る気持ちを抑え、息を殺し、耳を澄まし、匂いをかぎ分ける。
「血の匂い?」
臓が早鐘打った。
ザレムは連絡にある血の匂いがする方向へ【ジェットブーツ】を併用し、一歩でも早くと進む。
ピリッと痛みが走る。
葉が当たり、鎧がないところに傷ができたかもしれない。
「俺たちはハンターだ。先に入ったキミ! 俺たちにも協力させてくれ! 何か合図をくれ!」
返ってくる声はないが進行方向から音する。仲間に連絡し、まっすぐに向かった。
竹藪の先には川がある。
川と言っても通常は渡れるもの。
依頼を受けたときに大まかな地形は話を聞いていた。
レーヴェは仲間の連絡を聞きつつ、眉をしかめる。
「ゴブリンは知恵がある。個々は弱いが油断ならない」
できれば川があるほうから回り込むほうがもしもの時にゴブリンを逃がさない済むだろう。しかし、初めての土地で無茶はできない。優先順位は少年を無事に保護すること。
「そこにいると決めつけるのは危険とはいえ、仮定の上、側面を……」
ハンターが向かっているところにゴブリンがいないこともあり得なくはないから。
「数によっては巣があるのか?」
カインはゴブリンがまとまって移動していることを考えて推測した。この辺りに最近ゴブリンがいたという話がないために、移動してきて、居を構える為の偵察とでも考えらえる。
「川があるならその先に何かあるかもしれない。今この近くにいる奴らは逃がす気はない」
仲間が方向を定めたらしいため走る。
まずすることは、少年剣士を助けること。並行してゴブリン退治もできれば上等だ。
奏多は光頼とともに進み、周囲を見る。仲間が何かを感じたほうに向かうが、もしもゴブリンが逃げるなら倒したほうがいい。
「馬に乗ってはいないなら、遠くまでは行っていない?」
「隠れているならもっと早く見つかるでしょうが、それがないなら戦いつつ逃げているのでしょうね」
光頼の返答に奏多はうなずく。
「囲まれた場合、こういうところのほうが安全……の場合もある。ということは、確実に多勢無勢なのだろうか?」
奏多の思考はトランシーバーからの連絡で中断となる。ゴブリンを見つけ、戦いの火ぶたが落とされるようだった。
「急ごう」
光頼を促した。
●一筋の光
リシャール・べリンガーは親子を逃がした後、ゴブリン一体に致命傷を与えた。しかし、多勢に無勢、戦うのに不利であり、竹藪に入り込む。
それも失敗であったのだ。隠れる場所はあるようでない。防戦しつつ逃げるので手いっぱいだった。
傷は増える。
誰かの声がした。
助けが来ると思えず、死の声かと思った。
ゴブリンのこん棒が振り下ろされた直後、何かにぶつかり止まる。止めた何かは光の破片となって飛び散って消えて行った。
「リシャール? ひとまずはこいつらを倒すのが先だな」
ザレムが割って入る。顔見知りの少年との再会を喜ぶが、先にゴブリンを倒さないとならない。
「仲間も来る、ひとまずこれを」
ヒーリングポーションを手渡し、背中にかばった。
「多勢に無勢だと思ってるかもしれないが、これからはこちらの行動だ!」
ザレムは機導術を使い武器を巨大化させ、敵を貫いた。離れていても攻撃できるぞという警告でもある。
続いてリュラがやってきて、リシャールのヒーリングポーションをさっと開ける。
「飲んでいてください。まずは止血を……」
リュラは傷を診る。倒れていてもおかしくないくらいだ。最低限の、命をつなぐ手当をする。
銃声が響く。
「逃がすつもりはないからのう」
「さあ、私たちが相手よ」
レーヴェとマリィアの強い声も続いた。竹は遮蔽物にもなりうるが、うまく利用するすべも彼女たちは心得る。
ザレムがかばっているが、その側面を突こうとする賢さを発揮したゴブリンがいた。
リシャールに自身のヒーリングポーションも手渡したリュラがとっさにかばう。幸い、こん棒は彼女の上に落ちなかった。
「まずは……打ち漏らしたか」
カインがゴブリンに鋭い突きをくらわしたが、若干ずれて仕留められていない。リュラがかばっているリシャールに見覚えがあったが今はどうでもよかった。
「君は戦えるのか? ゴブリンは小柄なために見通しが悪いところでは有利だ。道とかのほうが……」
良かったがあれこれ言っている場合ではないとカインは呟く。今の状況でも注意すれば戦えるのだから。
リシャールはヒーリングポーションを飲み干す。少し、心臓が落ち着くと、守られている場合ではないと唇をかんだ。
リシャールは立ち上がろうとするがふらつく。リュラはその彼をさりげなく支えるように、そばにいる。心配であるが、リシャールの輝きが見えた。
「立てるということは無事だな」
奏多は技を使い一気に近づき、リシャールの近くにいたゴブリンにとどめを刺した。少年を見ると青白いが、闘志を感じる。
「ゴブリンは僕たちより小柄な相手です、斬撃で最初から狙うより、刺していいき鈍った後、殺せばいいのです」
カインは構えつつ、リシャールに助言する。
リシャールは呼吸を一つし、鞘に刃を戻し、構えた。
リュラはリシャールから手を放し武器を構える。彼のやる気は重要だが、ひどい怪我も事実。戦いを早く終わらせるのが重要だ。
「ん? ゴブリンの様子が……逃げそうだな」
奏多のつぶやきを示すように、不利と感じたゴブリンたちがそわそわと足の向きを変えたのだ。
「リシャール、今は俺たちもいる。協力して、敵を倒すぞ」
ザレムはリシャールが前に出るなら防御のために機導は使うべきと読み取る。彼の成長を考えると支えるのも重要だ。
「川からこっちで倒すのが最上だのう」
レーヴェの声とマテリアルのこもった銃弾が逃げ始めたゴブリンに命中する。
「それはそうよ。面倒になるんだから」
マリィアの銃弾もゴブリンを撃つ。
しばらくして、周囲にいたゴブリンは倒されたと判断できた。
妖怪はいるのか?
それらしい痕跡はない。
「かといって、ゴブリンたちが操られていたってわけでもないんだろう?」
奏多が仲間に確認するように言う。誰も肯定も否定もできないが、ゴブリンたちの行動に違和感はなかった。自主的であった。弱っているリシャールを狙い、勝機が消えたとなったら逃げようとした。逃げていいから逃げる、知恵があるから。
ハンターは周囲を見るが特にない。
何かがあるとすれば、川を渡った先の山の中だろうか。
「妖怪がいないとは言い切れませんね」
光頼は渋面となる。住民から異変の噂も聞いていない。ならば、これが最初の異変であり、対処が早ければ被害は少なく済むということだ。
「まずは戻ろう」
「そのあと、僕は先を見に行ってきます」
奏多の提案にカインは付け足した。早く叩ける異変は早いほうがいいのだから。
●明日へ
道に戻ったところで、光頼の部下たちとも合流した。増援もあり、警戒警備にあたっている。
カインが装備を確認後、出かけた。光頼は念のために部下をつける。
リシャールの怪我の手当てをしながらハンターたちは事情を尋ねた。
現在に至るまでを説明し、唇をかんで顔を伏せるリシャール。
「クックックッ修行にしても、独りでいくのは無謀じゃの。安全対策がなっとらん、だが、その勇気は買うぞ」
レーヴェが笑う。その目は無謀なことをやった子を見る優しさに満ちた輝きを持っていた。
「うん……無鉄砲、だけど……嫌いじゃない。私も、駆け出しだし」
リュラはふっと楽しそう表情でぽつりと言う。慎重もいいが、時々無茶をするのはうらやましいかもしれない。
「でもね!」
マリィアは手をリシャールの頬に当てる。平手打ちをすれば傷が開くと想像できた。そのあと、抱きしめる、心配したと。
「強さなんて、人に教えもらおうなんて思っているうちはダメでしょうね。早く家に帰って親御さんに家出したこと謝りなさい! 視野狭窄よ。ゴブリンたちに別動隊がいたら、あの親子もポチも死んでいたかもしれないのよ」
護衛しながら人里まで行けばよかった、無事でよかったと続ける。
「申し訳ありませんでした。ポチ……ごめんなさい」
リシャールは涙を必死にこらえる。ゴースロンのポチがリシャールの頬に鼻を擦り付ける。
「まあ、マリィアも言っているように無事で良かったし、未熟さの自覚は実は一人前の扉に手を掛けたってことさ」
ザレムがリシャールの涙をさりげなくぬぐう。
リシャールが無茶をしたのは今回が初めてではない。最初に比べれば、彼の目からすれば十分成長してきている。
「無茶なことするのもあるよな。大いに悩んで、盛大に間違えるのは悪くない。心配している人間がいる、それは忘れるなよ」
奏多に言われて、リシャールはうなずいた。
光頼はリシャールを問答無用で背負う。
「さあ帰るわよ! 親御さんに謝らないと」
マリィアはリシャールを促す。
「まあ待て待て、悩みもあるなら旅に出ろというのもひとつじゃ。無事だということは連絡しておこう。武者修行は実家公認であると堂々とすればよい。知り合いはおらぬのか?」
レーヴェはとりなす。
「大江殿のところに夏にホームステイとやらで来ていたはずですが、私がひとまず預かろうと思います」
光頼が淡々と理由も告げる。リシャールの体力の消耗と武人である自身を考えると面倒を見たいと。それに大江 紅葉は光頼の友人でもあるため、連絡は入れるという。
「それはいい。ぬしがそうしたいなら良いし、大江 紅葉とやらの家にホームステイしていたとなれば、家族同然じゃ」
頼る先が多いほうがいい、レーヴァが思う「修行への安全」も確保されていく。大人たちが口を突っ込まなければ、自主的なこともできるだろうし、教える者も出てくるだろう。
「まあ、それはそうね。親御さんたちには連絡は入れるし、無茶はしない」
マリィアは怪我の具合を考え一理あると納得した。リシャールを見るとほっとした様子も漂っていた。
ゴブリンは倒したがまとまって行動していたことから『巣』があると読んだカイン。
仲間や光頼に告げた後、倒すために進む。無茶をするつもりはないができれば倒したいというのが信条だ。
光頼の部下がカインを止める。
「……山が険しいのか」
「登れなくはないですが、この時間から登るのは……」
無謀ですと告げる。
「……わかりました戻ります」
歯噛みしつつカインは従った。
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相談卓 カイン・A・A・カーナボン(ka5336) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/01/24 00:28:21 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/22 10:39:08 |