ゲスト
(ka0000)
【王臨】マーグミュル島沖海戦
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/01/30 19:00
- 完成日
- 2017/02/11 13:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●マーグミュル島
王国南西部より西の海に浮かぶ、小さい島『マーグミュル』。
元々は王国海軍の軍港の一つであった。だが、王国歴1009年の傲慢歪虚侵略時にイスルダ島が占拠されると、その後、歪虚の強襲を受け壊滅したという。
その為、活動拠点を大きく後退する事になった。以後、王国西部の制海権は傲慢歪虚の手に渡った。
「……というのが、現状という事で、間違いありませんか? ソルラ先輩」
「そうね」
『軍師騎士』ノセヤの確認に、ソルラが疲れきった表情で返事をする。
原因は、エロディラによる下着盗難なのだが……触れると余計に可哀想だった。
「今回の一連の作戦は、マーグミュル島を奪還。制海権奪取の為の橋頭堡とします」
「アルテミス艦隊の出撃ね」
「はい。まずは、想定されてる敵守備艦隊を沖合で殲滅します」
歪虚艦隊の主力はイスルダ島に存在しているのではないかというのがノセヤの推測だ。
マーグミュル島に残っている海上戦力は多くはないとも。
「その後、状況確認を行った後、島への上陸となります」
「イスルダ島からの反撃の可能性は?」
目と鼻の先という訳ではないが、傲慢歪虚の反撃は十二分に想定出来る。
「可能性は高いですが、軍港としての機能を早期に解決すれば、撃退は可能と見ています」
「早期にって……」
その難しさは青の隊に所属する騎士であれば、容易に想像がつく。
軍港の修理や補修、設備の持ち込み等、考えれば輸送するだけでも、ひと月以上はかかるはずだ。
「そこで、フライングシスティーナ号です。転移門も使って、刻令ゴーレムや砲戦用ゴーレムなどを移動させます」
「なるほど……つまり、旗艦としての能力だけではなく、輸送ルートとしての機能も活用するのね」
「知っての通り、フライングシスティーナ号には固定武装はありません。前線に出るのは危険ですので」
一応、CAMや魔導アーマー等を搭載出来るので、それらを甲板に並べれば戦えない事はないが……。
推進装置である後部の巨大な外輪は最大の弱点だ。
「いくつかの外輪船も用意できましたので、海戦ではきっと、大きな戦力になるはずです」
「CAMでの遠距離戦。そして、接近しての白兵戦……」
想定される敵艦隊の戦力は、こちらよりも倍以上である。
普通に考えれば、勝利は難しいはずである。
「厳しい戦いにはなるでしょう。しかし、この程度で諦めるのであれば、イスルダ島の奪還は不可能です」
『軍師騎士』の真剣な言葉に、ソルラは頷いた。
●ランドル船長
如何にも、海の男と言った風貌の髭もじゃの男が、軍船でソルラを待っていた。
齢50を数えているが、その覇気は全く衰えを感じさせない。黙って立っていれば、絵になるのだが――。
「……ランドル船長、なんで、私の下着を持っているのですか」
「おう。例のエロディラを捕まえたらな。なんか持っていたから回収したんだが。ソルラの嬢ちゃんのだったか」
白々しい台詞と共に指先でクルクル回す。
それを素早い動きで奪い取るソルラ。
「大事な作戦の前に、ふざけている場合じゃないですよ」
「ソルラ司令は厳しいな。それで、どうなんだ? 出撃か?」
「はい。明朝、出撃となります」
ソルラの言葉にランドル船長はニカっと笑った。
図太い首を回し、ゴキゴキと音を鳴らす。
「いよいよ、歪虚共へ反撃開始か」
「ランドル船長は、先遣隊の指揮をお願いします」
旗艦フライングシスティーナ号自体には戦闘能力はない。
なので、出撃しても、実際の戦闘は随伴船の役目である。
「ハンター達も居るのだろう?」
「もちろんです。転移門を使って旗艦へ移動。その後、先遣隊へ移って頂く予定です」
「それで、あれも使うのか?」
クイっと顎を向けた先には、刻令術式外輪船が数隻。
「船自体にはCAMを1~2体搭載できます」
「まさか、陸で研究中だった大砲を使うとはな」
それが『軍師騎士』ノセヤの策でもあった。
ハルトフォート砦で研究・開発中であった長距離砲の試作品を幾つか、ノセヤは借り受けた事があった。
それらを参考に、『船舶取り付け用の魔導砲』を試作していた。
「この魔導砲の操作には、CAMか刻令ゴーレムが必要です」
「まぁ、具体的な作戦はハンター任せなら、俺は楽だがな」
ユニットを持ち込んで、アウトレンジからの攻撃か、それよりも、急接近しての白兵戦か。
作戦の詳細はハンター達に委ねられていた。
●『司令歪虚』
マーグミュル島の歪虚に所属する歪虚軍艦の司令であるエドワンド・サッチが、ぷっくりと膨らんだ腹を摩っていた。
首にも胸にも、腕にも金銀輝かしく装飾品が光った。
「王国海軍だと?」
部下からの報告に興味が無さそうな声を出した。
彼と配下の軍船は、つい最近、イスルダ島から戻ってきたばっかりである。
ベリアル指揮下の歪虚や雑魔を王国本土へと輸送する任務を手伝っていた。そのお陰か、王国海軍の動きを把握出来なかったのだ。
「豚羊も、もはや、役に立たんな。これは、そろそろ、『鞍替え』か」
「王国海軍は如何しますか? この島へと向かっている様子との話も」
「……ふむ」
腹を何度も何度もさすり……エドワンドは、唐突にポンポンと叩いた。
「丁度良い機会だ。早速、二艦隊程を派遣しろ」
部下に命令すると、下衆な笑い声を出した。
頭の中に巡ったのは、一つの策。
王国海軍に大打撃を与えかつ、より大きい収穫を得る為の――。
「ブハハハハハ!!」
王国南西部より西の海に浮かぶ、小さい島『マーグミュル』。
元々は王国海軍の軍港の一つであった。だが、王国歴1009年の傲慢歪虚侵略時にイスルダ島が占拠されると、その後、歪虚の強襲を受け壊滅したという。
その為、活動拠点を大きく後退する事になった。以後、王国西部の制海権は傲慢歪虚の手に渡った。
「……というのが、現状という事で、間違いありませんか? ソルラ先輩」
「そうね」
『軍師騎士』ノセヤの確認に、ソルラが疲れきった表情で返事をする。
原因は、エロディラによる下着盗難なのだが……触れると余計に可哀想だった。
「今回の一連の作戦は、マーグミュル島を奪還。制海権奪取の為の橋頭堡とします」
「アルテミス艦隊の出撃ね」
「はい。まずは、想定されてる敵守備艦隊を沖合で殲滅します」
歪虚艦隊の主力はイスルダ島に存在しているのではないかというのがノセヤの推測だ。
マーグミュル島に残っている海上戦力は多くはないとも。
「その後、状況確認を行った後、島への上陸となります」
「イスルダ島からの反撃の可能性は?」
目と鼻の先という訳ではないが、傲慢歪虚の反撃は十二分に想定出来る。
「可能性は高いですが、軍港としての機能を早期に解決すれば、撃退は可能と見ています」
「早期にって……」
その難しさは青の隊に所属する騎士であれば、容易に想像がつく。
軍港の修理や補修、設備の持ち込み等、考えれば輸送するだけでも、ひと月以上はかかるはずだ。
「そこで、フライングシスティーナ号です。転移門も使って、刻令ゴーレムや砲戦用ゴーレムなどを移動させます」
「なるほど……つまり、旗艦としての能力だけではなく、輸送ルートとしての機能も活用するのね」
「知っての通り、フライングシスティーナ号には固定武装はありません。前線に出るのは危険ですので」
一応、CAMや魔導アーマー等を搭載出来るので、それらを甲板に並べれば戦えない事はないが……。
推進装置である後部の巨大な外輪は最大の弱点だ。
「いくつかの外輪船も用意できましたので、海戦ではきっと、大きな戦力になるはずです」
「CAMでの遠距離戦。そして、接近しての白兵戦……」
想定される敵艦隊の戦力は、こちらよりも倍以上である。
普通に考えれば、勝利は難しいはずである。
「厳しい戦いにはなるでしょう。しかし、この程度で諦めるのであれば、イスルダ島の奪還は不可能です」
『軍師騎士』の真剣な言葉に、ソルラは頷いた。
●ランドル船長
如何にも、海の男と言った風貌の髭もじゃの男が、軍船でソルラを待っていた。
齢50を数えているが、その覇気は全く衰えを感じさせない。黙って立っていれば、絵になるのだが――。
「……ランドル船長、なんで、私の下着を持っているのですか」
「おう。例のエロディラを捕まえたらな。なんか持っていたから回収したんだが。ソルラの嬢ちゃんのだったか」
白々しい台詞と共に指先でクルクル回す。
それを素早い動きで奪い取るソルラ。
「大事な作戦の前に、ふざけている場合じゃないですよ」
「ソルラ司令は厳しいな。それで、どうなんだ? 出撃か?」
「はい。明朝、出撃となります」
ソルラの言葉にランドル船長はニカっと笑った。
図太い首を回し、ゴキゴキと音を鳴らす。
「いよいよ、歪虚共へ反撃開始か」
「ランドル船長は、先遣隊の指揮をお願いします」
旗艦フライングシスティーナ号自体には戦闘能力はない。
なので、出撃しても、実際の戦闘は随伴船の役目である。
「ハンター達も居るのだろう?」
「もちろんです。転移門を使って旗艦へ移動。その後、先遣隊へ移って頂く予定です」
「それで、あれも使うのか?」
クイっと顎を向けた先には、刻令術式外輪船が数隻。
「船自体にはCAMを1~2体搭載できます」
「まさか、陸で研究中だった大砲を使うとはな」
それが『軍師騎士』ノセヤの策でもあった。
ハルトフォート砦で研究・開発中であった長距離砲の試作品を幾つか、ノセヤは借り受けた事があった。
それらを参考に、『船舶取り付け用の魔導砲』を試作していた。
「この魔導砲の操作には、CAMか刻令ゴーレムが必要です」
「まぁ、具体的な作戦はハンター任せなら、俺は楽だがな」
ユニットを持ち込んで、アウトレンジからの攻撃か、それよりも、急接近しての白兵戦か。
作戦の詳細はハンター達に委ねられていた。
●『司令歪虚』
マーグミュル島の歪虚に所属する歪虚軍艦の司令であるエドワンド・サッチが、ぷっくりと膨らんだ腹を摩っていた。
首にも胸にも、腕にも金銀輝かしく装飾品が光った。
「王国海軍だと?」
部下からの報告に興味が無さそうな声を出した。
彼と配下の軍船は、つい最近、イスルダ島から戻ってきたばっかりである。
ベリアル指揮下の歪虚や雑魔を王国本土へと輸送する任務を手伝っていた。そのお陰か、王国海軍の動きを把握出来なかったのだ。
「豚羊も、もはや、役に立たんな。これは、そろそろ、『鞍替え』か」
「王国海軍は如何しますか? この島へと向かっている様子との話も」
「……ふむ」
腹を何度も何度もさすり……エドワンドは、唐突にポンポンと叩いた。
「丁度良い機会だ。早速、二艦隊程を派遣しろ」
部下に命令すると、下衆な笑い声を出した。
頭の中に巡ったのは、一つの策。
王国海軍に大打撃を与えかつ、より大きい収穫を得る為の――。
「ブハハハハハ!!」
リプレイ本文
●旗艦にて
潮風が海原を静かに駆けていく。
刻令術式外輪船フライングシスティーナ号の広大な甲板に大型ユニットが並んでいた。いずれも、ハンター達の搭乗機である。
「制海権を取り戻すための戦い……その始まりですね」
感慨深く鳳城 錬介(ka6053)が海の彼方を見つめながら呟いた。
王国歴1009年歪虚の襲撃で奪われたイスルダ島。そして、王国西部の制海権。
「この日の為に鍛えてきましたが、まだまだ未熟……厳しい戦いになると思いますが、全力を尽くします」
錬介は振り返って、刻令ゴーレム掛矢鬼六を見上げた。
昨年の夏、同行したアルテミス艦隊初陣の戦いよりも、強くなっているはずだ。
「私も、です」
胸を張って錬介の決意に頷いたのは央崎 遥華(ka5644)だった。
遥華の目の前には、R7エクスシア キルケーが魔導エンジンの音を響かせていた。
「ソルラ司令、ランドル船長。今回もよろしくお願いしますっ」
軽く会釈した先には、アルテミス艦隊司令のソルラ・クート(kz0096)とランドル船長が居た。
「はい、皆さんの活躍に期待しています」
「頼りにしてるぜ」
今回の作戦はアルテミス艦隊の先遣隊と共にマーグミュル島沖に出撃。
同島を占拠している歪虚の艦隊との海戦を意図しているのだ。その為、艦隊司令であるソルラは作戦に同行しない。
代わりに歴戦の船長ランドルが先遣隊を指揮する事になっている。
「自慢じゃねえが、俺は負け越してるから」
ぼうぼうに伸びた髭を揺らしながらランドル船長が笑う。自慢にする所ではないというツッコミの視線がソルラから放たれた。
「王国の海を荒らす者を見過ごせません」
力強く言った遥華にソルラが応える。
「正しくその通りです。この数年、イスルダ島の傲慢歪虚に好き勝手やられていましたからね」
艦隊司令である彼女の言葉や表情を見れば、それがソルラだけではなく、船員らも同じ気持ちだと感じられる。
士気が高いのは良い事だ。
そこへ、刻令ゴーレムの搭載作業を終えたアルバ・ソル(ka4189)がやって来た。
「ボクはアルバ・ソルという。よろしく頼むよ」
「こちらこそです」
微笑みながら答えたソルラの言葉にアルバは周囲へと視線を一瞬向けた。
大小様々な船が並んでいる。帆船もあれば、刻令術式の外輪船もいた。
「アルテミス艦隊か……こうして見ると壮観だね。その名に恥じぬ様に、尽力させて貰おうか」
想定されている敵の戦力は倍以上。
全力で戦わなければ、勝つ事は難しいはずだ。
決意新たにした所で八劒 颯(ka1804)が海と同じ色の長い髪を揺らして現われた。
手には愛用している魔導ドリル。搭乗機体である魔導アーマーのGustavにも巨大なドリル。
「はやてにおまかせですの!」
そのドリルでお任せしてもいいものかとランドル船長は苦笑を浮かべた。
もっとも、認めていない訳ではない。歪虚との戦いは海戦の常識が通じないというのがランドル船長自身の考えだからだ。
「今回は海戦。魔導砲のアドバンテージが活きている内に、一隻でも敵を減らしておきたい所ですの」
「その通りです。ノセヤ君もその意図のようでしたし」
「狙う敵の優先順位や攻撃の条件を決めておいた方がよろしいですわね」
今回、ユニットで操作できる魔導砲は『軍師騎士』ノセヤが用意したものだ。
有効に使うには事前に作戦を煮詰める必要がある。
「船同士で連絡つくのだろうか?」
そう言ったのは、鈴胆 奈月(ka2802)だった。
手にはライトを持っている。これで信号とか送れるのだろうかと思うが、やはり、どう考えても光源としては心許ない。
「その心配はありませんよ。フライングシスティーナ号ほどではありませんが、アルテミス艦隊の船には通信回線が構築されていますから」
得意気にソルラが応える。
アルテミス艦隊の各艦には魔導短伝話などの通信機が搭載されているが、それは旗艦との連絡だけではなく各艦との通信にも役立てるのだ。
「それなら大丈夫か。なら、僕はCAMの操縦の心配でもするかな」
直感的な操作はできているが、実戦では初めてCAMを動かす。
まさか、自分がドミニオンに乗るとは転移した時は思いもしなかっただろう。
初陣という意味では、R7エクスシア 秋月で初出撃となるラジェンドラ(ka6353)も同様だろう。
(まさか、兵隊やくざ紛いの俺がパイロットとはな……頼むぜ。アキツキ)
トントンと自機のフレームを叩くと、ランドル船長へ声を掛ける。
「ランドルの大将よろしく頼む、俺も昔は船乗りでな」
「それは頼もしいな。奴らは根こそぎ奪っていく海賊みたいな連中だ。気をつけろよ」
ニカっと笑った海の男に、どこか、ラジェンドラは懐かしさを感じる。
「海賊歪虚か……海賊退治は、リアルブルーでも生業だった。任せてくれ」
「ああ、任せたぜ」
こうして、アルテミス艦隊の先遣隊がマーグミュル島沖へと向けて出撃した。
●マーグミュル島沖海戦
波風を切って船首が右へと回頭した。
「砲撃戦準備!」
通信機からランドル船長の叫び声が響く中、アルバと颯は迫ってくる敵艦隊を見つめていた。
二列の縦陣で向かってくる歪虚艦隊に対して、丁字になるようにアルテミス艦隊は回頭したのだ。
「何かの足しになればいいですが」
アルバが即席の木の板を見つめた。
刻令ゴーレムを使って障壁を作ろうとしたのだが、この船では無理があったようだ。とりあえず、船員と相談し航行に支障が無い程度には板を張った。
「接近時はよろしく頼みますわ」
「分かりました」
事前の打ち合わせを確認し、二人は其々の乗機へと向かう。
船に取り付けられている魔導砲は巨大であった。旋回や照準にはユニットの力が必要だし、常に自身も、敵も動くのでお任せで打ち続ける事は出来ない。
「それでも、この射程なら……という事でしょうか」
照準を1隻の歪虚船へと向けた。
歪虚船は大型帆船ほどの大きさがある。元々、王国海軍の船だったかは定かではないが、言えるは長射程を持つ事だ。
その為、かつて、王国海軍は射程外から一方的に攻撃され大敗を喫した時があった。
「今度は、その逆ですわ」
颯も敵の歪虚船へと照準をつけた。
理論上、こちらに搭載されている魔導砲の射程は敵よりも上回る。
「ぅてぇっい!」
野太いランドル船長の射撃命令と共に、3隻の外輪船から魔導砲が轟音と共に発射された。
マテリアルの軌跡を残しながら、緩やかに弧線を描き、1隻の歪虚船へと着弾する。水柱が立つ中、遠目でも煙が見えた。直撃弾ありだ。
「はやて、二撃目なの!」
「距離と方向に、やはりズレが生じますね」
これが海上の戦いという事なのだろう。
大地の上では刻令術を応用して、自動化した投石器があるという話だが、全く同じようにはまだ出来ないようだ。
「各個に射撃戦! 一番艦二番艦も射程に入り次第、攻撃開始だ、こらぁ!」
通信機から聞こえてくる怒号にアルバは苦笑した。
実戦は初なのだが、確かな手応え感じながら、奈月はドミニオンを通じて魔導砲の照準を微調整した。
「この射程は魅力的だな……あとは当てさえできれば……」
魔導砲での射撃がどこまで通用しているのか分からないが、射撃を繰り返すしかない。
だが、全員の攻撃を2隻のうち1隻の歪虚船に集中しているにも関わらず、まだ沈む気配は見られない。
「数で負けてるのは、面倒だ……」
攻撃を受けていない方の歪虚船は速度を上げて直進しているようだった。
何かを意図しての動きだろう。油断は出来ない。
「鬼六、頼みますよ」
錬介が刻令ゴーレムを操作する。
魔導砲がリロードの為に唸ったその時だった。歪虚船が光ったように見えた。魔導砲の直撃ではない。
負のマテリアルの塊――負マテ塊――が発射されたのだろう。甲高い飛翔音を立てて飛んでくるそれは、死神を連想させた。
「これは……相変わらずな威力だな……」
「みたいですね」
負マテ塊は、奈月と錬介が乗る外輪船の至近距離に落下した。
水柱が高く上がる。直撃したら、ただでは済まないだろう。
「四番艦魔導砲、被害状況!」
ランドル船長から声は通信機が割れてしまうのではないかという程の大きさだ。
思わず、ボリュームは最大ではないよなと確認する奈月。
「被害ないよ」
「同じく、被害なしです」
報告すると通信機から攻撃を続行するようにとの事。
万が一でも魔導砲を直撃すれば、戦闘能力は低下する。作戦の変更も余儀なくされる所なのだろう。
アルテミス艦隊は歪虚戦隊一つに対し、完全な丁字となって射撃戦を展開していた。
「キルケー……いくよ!」
緊張を解くように深呼吸し、遥華は操作パネルをそっと撫でた。
初めての出撃。最新型CAMであるR7エクスシアは、覚醒者への適正能力を持ち、マテリアル兵器の運用を前提とされている。
「……でも、魔法が使えないなんて」
正確に言うと、魔法は使える。
スキルトレースシステムは覚醒者の持つ能力や動きをユニットに再現させる能力だ。それを使えば、魔法を放つ事も出来る。
では、なぜ使えなかったのか。それは、魔法の発動条件の為だった。
つまり、魔法であれば魔術具をCAMが装備していなければならなかったのだ。
「手間をかけた。だが、それに見合う働きはする」
ラジェンドラの声が聞こえた。
遥華はCAMから降りて、ラジェンドラの機体にウォーターウォークを掛けなければならなかった。
「アルバさんにもお伝えしておきます」
「気を落とすな。むしろ、今分かって良かっただろう」
これが接近戦された時であればどうしようも無い。
「援護を頼む。敵艦隊の動きも気になるからな」
「はい! こちらのレーダーにもしっかり映っていますから、随時連絡しますね」
キルケーに取り付けられた光学兵器は真価を発揮していた。
歪虚艦隊は二つの戦隊に分かれているが、攻撃を集中していた方の歪虚船は撃沈する所である。
だが、無傷の方はアルテミス艦隊の後方へと回り込んでいた。
「射程の長い旗艦が先頭とはね。目立ちたいのか知らないが、1隻で撃ってきても他の船が援護できんよ」
魔導砲を発射し、ラジェンドラが駆るR7エクスシア 秋月が“海上”へと降り立った。
「さて、ここからが、エクスシアの本領発揮だな」
マテリアルライフルを構えて若干揺れのある海上を走る。
「後方に回った敵艦隊が、真っ直ぐ追い上げてきます」
警戒を呼び掛ける遥華の緊迫した声が通信機から聞こえてきた。
●激戦
「追いつかれる前に、交戦中の敵戦隊を殲滅する」
スラスターの動きに合わせて海面が揺れる。
静止したラジェンドラの機体が長大なロングレンジマテリアルライフルの銃口を雑魔船へと向けた。
マジックエンハンサーが展開。魔導エンジンの出力が上がる。
「魔法というのは、凄いものだな。火力だけでなく、こんな事もできるとはな」
海面を自由に移動できるという事は、敵からみれば、思いもしない方向からの攻撃リスクがあるという事だ。
それは艦隊機動という面から見れば脅威である。
水柱や煙のおかげで混沌とする戦場だが、敵の位置に関しては遥華がフォローしてくれる。
「送ったデータと時間は、次の射撃の最適位置です」
「助かるよ」
応えながら、撃つ。その強力な一撃は容易く雑魔船を貫いた。
戦果を喜ぶ暇もなく、即座に移動を開始。雑魔船の戦隊正面へと向かう。
「どうした?」
通信機から入ってくる銃撃音にラジェンドラが尋ねる。
魔導砲の音ではない。ガトリングガン独特の射撃音だったからだ。
「後方からの迫る歪虚船の負マテ塊を撃ち落としただけです」
遥華は冷静に周囲の状況を確認しながら言った。
アルテミス艦隊の集中砲火を受けた敵戦隊はこのまま攻撃が続けられれば問題ないだろう。
だが、後方から迫る別の敵戦隊は無傷だ。魔導砲のアドバンテージである射程を存分に使えなければ消耗戦になるのは必至。
「ラジェンドラさん、そちらはよろしくお願いします。私は敵を可能な限り足止めします」
「分かった。すぐに片付けて戻る……無理はするな」
そう伝えるとラジェンドラは射撃に集中する。
構えたマテリアルライフルの銃口に紫色の光線が集った。ジェネレーターと接続して放つ強力な射撃だ。
「頼むぜ。アキツキ」
ラジェンドラは引き金を引いた。
残った雑魔船が仲間の強力な射撃の前に沈み消えていく。
「入り込まれましたね」
錬介はそう呟くと刻令ゴーレムを魔導砲の台座から外させ、脇に用意しておいた対空砲を構えさせる。
後方から迫ってきていた敵戦隊からの攻撃は熾烈を極めていた。遥華が乗っている五番艦が殿として踏ん張っているが多勢に無勢だ。
「これで、よしです」
刻令ゴーレムを操作し、一定方向に弾を撃ち続けるようにした。
当たりはしないだろうが、牽制位にはなるだろう。
「魔法での援護に回ります」
飛んできた負マテ塊を錬介が光の防御壁で防ぐ。
状況によってはユニットに乗ったままよりも、魔法を行使した方が良い時もある。今はその時だ。
「なら、僕もかな」
ドミニオンから奈月も降り立つと懐中時計を手にして機導術を駆使する。
負マテ塊を懐中時計から発せられた機導術で弾き飛ばす。船は動いているので、僅かでも反らせれば十二分だ。
殿である五番艦、そして、奈月らが乗り込んでいる四番艦は敵に近いだけあって攻撃が集中している。
「これで保てば……」
「こちらが有利になります」
アルテミス艦隊が陣形を整えれば逆襲の機会は充分にあるのだ。
各個撃破されなければ問題ない。
「四番艦と五番艦は敵を足止め、三番艦は回頭し、包囲戦を展開するぞ」
ランドル船長も慌てた様子なく先程と変わらない様子だ。
さすがは歴戦の船長という所だろう。ハンター達の実力を信じてこその采配だ。
「それなら、応えないと、かな」
歪虚船が並走しながら攻撃を繰り出してくる。
もはや、白兵戦に近いの様相だが、相手が乗り込んでくる様子がないのは前回海戦時の教訓だろう。
「歪虚船長は狙えないか。でも、どこに当てても有効なんだ。深く考える必要もない」
「そうですね。これならこれで、やるだけです」
二人が機導術と法術で歪虚を迎え撃つ。
●殲滅
「水の精霊よ、礎となりて我らを助けたまえ。よし、かかった!」
アルバがウォーターウォークの魔法を唱える。
使ったのは、自分自身にではなく、颯が乗っているGustavに対してだった。
二人が乗る船は回頭を始めている。包囲する前に他のハンターらと連携を取る為に海上へ打って出るつもりのようだ。
「はやての魔導アーマーは、基本ドリルで接近戦です。敵船の船体に、穴を開けてやりましょう」
意気込みよろしく海上へと降り立った。
そして、船の合間を抜けて歪虚船へと迫る。
歪虚船からは迎撃のつもりか、船体横の小窓が一斉に開くと銃身のようなものが出てきた。ユニットの追撃を振り切るつもりか速度もあげる。
「逃がしませんよ」
船尾に立ったアルバが短杖の先で魔法陣を描いた。
「万物を繋ぎ止めし、束縛の鎖。我が敵を繋ぎ、絡み止めよ! 落ちろ!」
彼の放った魔法により歪虚船の速度が急激に落ちる。
それでも歪虚船からの射程が短い砲火は止まらず、接近を試みる颯を近づけさせない。
「援護する」
回避行動を続けながら何とか突入の隙がないかタイミングを測っていた颯の機体の横をラジェンドラのCAMが駆け抜ける。
同時に、遥華のキルケーも海上から真っ直ぐに突撃した。
「行きますよ! マテリアルソード!」
マテリアルの刃が輝きながら出現した。
歪虚船の迎撃をソードで弾けながら強引に船尾を斬りつける。
「今です」
通信機からのアルバの声に応じるように颯の機体は魔導ドリルを高く掲げた。
魔導ドリル特有の機械音を響かせながら、Gustavはその鋭い先端を歪虚船の船首へと向ける。
「必殺のドリルチャージです!」
波と風と砲火を切り裂き、Gustavのドリルが歪虚船へと大穴を空けた。
喫水線のウィークポイントだ。なおも穴を広げていくGustav。歪虚船の動きが完全に止まった。
絶好のチャンスとばかり、守勢に回っていた奈月と錬介もユニットに戻り攻撃を再開。
一番艦と二番艦も回頭を終えて砲撃を開始。空いている船員達も銃や弓矢を放つ。
「敵歪虚船より、順次撃破する。ひたすら撃って、撃ち尽くせ!」
ランドル船長の命令が通信機を介して聞こえてきた。
ハンターだけではなくアルテミス艦隊全員からの一斉攻撃だ。
避ける術もできず、あっという間に沈みながら消えていく歪虚船。
「残るは、雑魔船だけだな」
「一気に畳み掛けましょう」
二機のエクスシアが雑魔船を攪乱するように海上を動き、Gustavが魔導ドリルで接近戦を試みる。
「伊達や酔狂でどりる機導師をやっている訳ではないのです」
ドリルによって開いた穴に向けて、奈月のドミニオンと錬介のゴーレムの銃撃が叩き込まれる。
そうする事で穴はますます広がって、そこに大量の海水が入る。動きが鈍くなった所を、アルバが放つグラビティフォールが止めとなり、身動きが止まった。
「動かないと、ただの的だね」
「良い連携です」
奈月と錬介の言葉にアルバは頷いた。
「決しましたね」
ここまでこればもはや、結果は明らかだ。
足を止めた雑魔船数隻に対し、アルテミス艦隊は包囲戦を展開し、敵艦隊を殲滅したのだった。
●帰還
アルテミス艦隊も無傷という訳にはいかなかった。航行に支障はないものの、修理が必要な船も多い。
それでも戦力差を考えれば大勝利だ。
「これで、よしと」
奈月が船員達と一緒に応急修理に勤しんでいた。
こういう時、ユニットがあると重い機材を運んだり支えたりするのに便利だ。
「俺も手伝いますよ」
鬼六が破損して散らばった木片をまとめていた。指示を出していた錬介は、ふと、海原へと視線を向ける。
敵艦隊を撃破したという事は、次はいよいよ、マーグミュル島へと向かう事になる。
(次は、上陸戦でしょうか……その時も、お役に立てると良いのですが)
厳しい戦いになりそうだ。だが、マーグミュル島を取り返さなければ制海権の奪還も難しい。
いつかくるはずのイスルダ島攻略の為にもと思う所だ。
「他の船は大丈夫か?」
通信機に向かって言った奈月の言葉にアルバが返す。
「こちらは大丈夫だ。酷いのは五番艦と四番艦だろう、な」
そして、アームを操作して、颯のGustavを船に引き上げるのを助ける。
バランスを崩すと船が傾くので慎重さが求められる。
「なんとか戻ってこれましたが、ユニットが使えるホバークラフト的な装備って作れませんかねぇ……」
「ホバークラフト?」
通信機から聞きなれない男性の声が響いた。
「ノセヤ君、勝手に回線に割り込まないで下さい」
と艦隊司令からの通信が入ってくるあたり、どうやら、一番艦の戦況報告の通信に『軍師騎士』ノセヤが通話を聞いていたようだ。
彼はアルテミス艦隊の刻令術担当である。外輪船の損傷確認の為に回線が通じていた。
ハンター達のユニットが乗っている外輪船も刻令術で動いている。
「あぁ、ホバークラフトというのは、平坦な面であれば地上・水上・雪上を区別無く進むことのできるリアルブルーの乗り物ですよ」
颯の説明にノセヤは興味深そうであった。
王国の技術ではすぐに作れないだろう。だが、そのアイデアがあれば、足らない物を機導術や刻令術などで補って似たようなものを作れるかも知れない。
「なるほど。フライングシスティーナ号に戻ったら、是非とも、詳しく聞かせて欲しいです」
「良いですわ」
「島を攻略する際にもつか――」
言いかけた所でソルラが遮る。
「はいはい。ノセヤ君の話は長くなるので、帰ってからにして下さい。それで、ハンターの皆さんも無事ですか?」
「はい! ソルラ司令!」
遥華が大きな声で応えた。
色々と収穫があったのもあるが、キルケーの初陣を勝利で飾る事ができた事もあるだろう。
「ご無事でなによりです。皆さんも……その、早く帰ってきて……下さいね」
ホッとした感じだったソルラの声は途中で元気がなくなる。
遥華は首を傾げたが、すぐにその理由が分かった。
「あ……もしかして、またですか?」
「遥華さぁぁぁん。このエロディラもリゼリオに連れてって下さい~」
ソルラの悲痛な声が通信機から響いてきた。
フライングシスティーナ号には、女性の下着だけを盗んでいくという迷惑なユグディラが居るのだ。
「えと……その、私も盗まれてしまうのは……ここは、颯さんの方が」
「はやてが連れて帰っていいですの!?」
「何故かドリルの音が聞こえてきますね」
「アルバさんにも聞こえますか。俺も聞こえますね。ドリルの凄い音が」
「肉をドリルで抉られると、痛そうだな……」
ハンター達が思い思いに声を発する中、ソルラの新たな叫び声も合わさった。
きっと、また“何か”盗られたのか、どうかしたのだろう。ドタドタと慌ただしい喧騒が通信機を通じて聞こえてくる。
通信内容が賑やかで相変わらずな様子だなと苦笑を浮かべながら、ラジェンドラはランドル船長に呼び掛けた。
「どうだい大将、いい腕してたろ」
「ああ、驚きだぜ。お前さんは凄腕の船乗りのようだな」
「敵が海賊なら負ける訳にはいかないんでね」
違いないとランドル船長の豪快な笑い声が聞こえてきた。
アルテミス艦隊はマーグミュル島を支配する歪虚の艦隊との海戦に勝利を収めた。
倍以上の戦力差に対し、魔導砲とユニットの海上移動の作戦が功を奏したのだ。これにより、同島攻略が一歩近づいた。
おしまい。
●???
防衛艦隊が壊滅したとの報告を、歪虚軍艦の司令であるエドワンド・サッチは聞いていた。
ぷっくりと醜く膨らんだ腹を摩り、ニヤニヤとした含み笑いを浮かべている。
「予定通りだ。予定通りだぞ」
緩慢な動きで豪華絢爛な装飾が施された椅子から立ち上がった。
「作戦を開始するぞ」
部下なのだろうか、黒い人影が幾人も奇怪な声を発して司令の宣言に応えたのであった。
潮風が海原を静かに駆けていく。
刻令術式外輪船フライングシスティーナ号の広大な甲板に大型ユニットが並んでいた。いずれも、ハンター達の搭乗機である。
「制海権を取り戻すための戦い……その始まりですね」
感慨深く鳳城 錬介(ka6053)が海の彼方を見つめながら呟いた。
王国歴1009年歪虚の襲撃で奪われたイスルダ島。そして、王国西部の制海権。
「この日の為に鍛えてきましたが、まだまだ未熟……厳しい戦いになると思いますが、全力を尽くします」
錬介は振り返って、刻令ゴーレム掛矢鬼六を見上げた。
昨年の夏、同行したアルテミス艦隊初陣の戦いよりも、強くなっているはずだ。
「私も、です」
胸を張って錬介の決意に頷いたのは央崎 遥華(ka5644)だった。
遥華の目の前には、R7エクスシア キルケーが魔導エンジンの音を響かせていた。
「ソルラ司令、ランドル船長。今回もよろしくお願いしますっ」
軽く会釈した先には、アルテミス艦隊司令のソルラ・クート(kz0096)とランドル船長が居た。
「はい、皆さんの活躍に期待しています」
「頼りにしてるぜ」
今回の作戦はアルテミス艦隊の先遣隊と共にマーグミュル島沖に出撃。
同島を占拠している歪虚の艦隊との海戦を意図しているのだ。その為、艦隊司令であるソルラは作戦に同行しない。
代わりに歴戦の船長ランドルが先遣隊を指揮する事になっている。
「自慢じゃねえが、俺は負け越してるから」
ぼうぼうに伸びた髭を揺らしながらランドル船長が笑う。自慢にする所ではないというツッコミの視線がソルラから放たれた。
「王国の海を荒らす者を見過ごせません」
力強く言った遥華にソルラが応える。
「正しくその通りです。この数年、イスルダ島の傲慢歪虚に好き勝手やられていましたからね」
艦隊司令である彼女の言葉や表情を見れば、それがソルラだけではなく、船員らも同じ気持ちだと感じられる。
士気が高いのは良い事だ。
そこへ、刻令ゴーレムの搭載作業を終えたアルバ・ソル(ka4189)がやって来た。
「ボクはアルバ・ソルという。よろしく頼むよ」
「こちらこそです」
微笑みながら答えたソルラの言葉にアルバは周囲へと視線を一瞬向けた。
大小様々な船が並んでいる。帆船もあれば、刻令術式の外輪船もいた。
「アルテミス艦隊か……こうして見ると壮観だね。その名に恥じぬ様に、尽力させて貰おうか」
想定されている敵の戦力は倍以上。
全力で戦わなければ、勝つ事は難しいはずだ。
決意新たにした所で八劒 颯(ka1804)が海と同じ色の長い髪を揺らして現われた。
手には愛用している魔導ドリル。搭乗機体である魔導アーマーのGustavにも巨大なドリル。
「はやてにおまかせですの!」
そのドリルでお任せしてもいいものかとランドル船長は苦笑を浮かべた。
もっとも、認めていない訳ではない。歪虚との戦いは海戦の常識が通じないというのがランドル船長自身の考えだからだ。
「今回は海戦。魔導砲のアドバンテージが活きている内に、一隻でも敵を減らしておきたい所ですの」
「その通りです。ノセヤ君もその意図のようでしたし」
「狙う敵の優先順位や攻撃の条件を決めておいた方がよろしいですわね」
今回、ユニットで操作できる魔導砲は『軍師騎士』ノセヤが用意したものだ。
有効に使うには事前に作戦を煮詰める必要がある。
「船同士で連絡つくのだろうか?」
そう言ったのは、鈴胆 奈月(ka2802)だった。
手にはライトを持っている。これで信号とか送れるのだろうかと思うが、やはり、どう考えても光源としては心許ない。
「その心配はありませんよ。フライングシスティーナ号ほどではありませんが、アルテミス艦隊の船には通信回線が構築されていますから」
得意気にソルラが応える。
アルテミス艦隊の各艦には魔導短伝話などの通信機が搭載されているが、それは旗艦との連絡だけではなく各艦との通信にも役立てるのだ。
「それなら大丈夫か。なら、僕はCAMの操縦の心配でもするかな」
直感的な操作はできているが、実戦では初めてCAMを動かす。
まさか、自分がドミニオンに乗るとは転移した時は思いもしなかっただろう。
初陣という意味では、R7エクスシア 秋月で初出撃となるラジェンドラ(ka6353)も同様だろう。
(まさか、兵隊やくざ紛いの俺がパイロットとはな……頼むぜ。アキツキ)
トントンと自機のフレームを叩くと、ランドル船長へ声を掛ける。
「ランドルの大将よろしく頼む、俺も昔は船乗りでな」
「それは頼もしいな。奴らは根こそぎ奪っていく海賊みたいな連中だ。気をつけろよ」
ニカっと笑った海の男に、どこか、ラジェンドラは懐かしさを感じる。
「海賊歪虚か……海賊退治は、リアルブルーでも生業だった。任せてくれ」
「ああ、任せたぜ」
こうして、アルテミス艦隊の先遣隊がマーグミュル島沖へと向けて出撃した。
●マーグミュル島沖海戦
波風を切って船首が右へと回頭した。
「砲撃戦準備!」
通信機からランドル船長の叫び声が響く中、アルバと颯は迫ってくる敵艦隊を見つめていた。
二列の縦陣で向かってくる歪虚艦隊に対して、丁字になるようにアルテミス艦隊は回頭したのだ。
「何かの足しになればいいですが」
アルバが即席の木の板を見つめた。
刻令ゴーレムを使って障壁を作ろうとしたのだが、この船では無理があったようだ。とりあえず、船員と相談し航行に支障が無い程度には板を張った。
「接近時はよろしく頼みますわ」
「分かりました」
事前の打ち合わせを確認し、二人は其々の乗機へと向かう。
船に取り付けられている魔導砲は巨大であった。旋回や照準にはユニットの力が必要だし、常に自身も、敵も動くのでお任せで打ち続ける事は出来ない。
「それでも、この射程なら……という事でしょうか」
照準を1隻の歪虚船へと向けた。
歪虚船は大型帆船ほどの大きさがある。元々、王国海軍の船だったかは定かではないが、言えるは長射程を持つ事だ。
その為、かつて、王国海軍は射程外から一方的に攻撃され大敗を喫した時があった。
「今度は、その逆ですわ」
颯も敵の歪虚船へと照準をつけた。
理論上、こちらに搭載されている魔導砲の射程は敵よりも上回る。
「ぅてぇっい!」
野太いランドル船長の射撃命令と共に、3隻の外輪船から魔導砲が轟音と共に発射された。
マテリアルの軌跡を残しながら、緩やかに弧線を描き、1隻の歪虚船へと着弾する。水柱が立つ中、遠目でも煙が見えた。直撃弾ありだ。
「はやて、二撃目なの!」
「距離と方向に、やはりズレが生じますね」
これが海上の戦いという事なのだろう。
大地の上では刻令術を応用して、自動化した投石器があるという話だが、全く同じようにはまだ出来ないようだ。
「各個に射撃戦! 一番艦二番艦も射程に入り次第、攻撃開始だ、こらぁ!」
通信機から聞こえてくる怒号にアルバは苦笑した。
実戦は初なのだが、確かな手応え感じながら、奈月はドミニオンを通じて魔導砲の照準を微調整した。
「この射程は魅力的だな……あとは当てさえできれば……」
魔導砲での射撃がどこまで通用しているのか分からないが、射撃を繰り返すしかない。
だが、全員の攻撃を2隻のうち1隻の歪虚船に集中しているにも関わらず、まだ沈む気配は見られない。
「数で負けてるのは、面倒だ……」
攻撃を受けていない方の歪虚船は速度を上げて直進しているようだった。
何かを意図しての動きだろう。油断は出来ない。
「鬼六、頼みますよ」
錬介が刻令ゴーレムを操作する。
魔導砲がリロードの為に唸ったその時だった。歪虚船が光ったように見えた。魔導砲の直撃ではない。
負のマテリアルの塊――負マテ塊――が発射されたのだろう。甲高い飛翔音を立てて飛んでくるそれは、死神を連想させた。
「これは……相変わらずな威力だな……」
「みたいですね」
負マテ塊は、奈月と錬介が乗る外輪船の至近距離に落下した。
水柱が高く上がる。直撃したら、ただでは済まないだろう。
「四番艦魔導砲、被害状況!」
ランドル船長から声は通信機が割れてしまうのではないかという程の大きさだ。
思わず、ボリュームは最大ではないよなと確認する奈月。
「被害ないよ」
「同じく、被害なしです」
報告すると通信機から攻撃を続行するようにとの事。
万が一でも魔導砲を直撃すれば、戦闘能力は低下する。作戦の変更も余儀なくされる所なのだろう。
アルテミス艦隊は歪虚戦隊一つに対し、完全な丁字となって射撃戦を展開していた。
「キルケー……いくよ!」
緊張を解くように深呼吸し、遥華は操作パネルをそっと撫でた。
初めての出撃。最新型CAMであるR7エクスシアは、覚醒者への適正能力を持ち、マテリアル兵器の運用を前提とされている。
「……でも、魔法が使えないなんて」
正確に言うと、魔法は使える。
スキルトレースシステムは覚醒者の持つ能力や動きをユニットに再現させる能力だ。それを使えば、魔法を放つ事も出来る。
では、なぜ使えなかったのか。それは、魔法の発動条件の為だった。
つまり、魔法であれば魔術具をCAMが装備していなければならなかったのだ。
「手間をかけた。だが、それに見合う働きはする」
ラジェンドラの声が聞こえた。
遥華はCAMから降りて、ラジェンドラの機体にウォーターウォークを掛けなければならなかった。
「アルバさんにもお伝えしておきます」
「気を落とすな。むしろ、今分かって良かっただろう」
これが接近戦された時であればどうしようも無い。
「援護を頼む。敵艦隊の動きも気になるからな」
「はい! こちらのレーダーにもしっかり映っていますから、随時連絡しますね」
キルケーに取り付けられた光学兵器は真価を発揮していた。
歪虚艦隊は二つの戦隊に分かれているが、攻撃を集中していた方の歪虚船は撃沈する所である。
だが、無傷の方はアルテミス艦隊の後方へと回り込んでいた。
「射程の長い旗艦が先頭とはね。目立ちたいのか知らないが、1隻で撃ってきても他の船が援護できんよ」
魔導砲を発射し、ラジェンドラが駆るR7エクスシア 秋月が“海上”へと降り立った。
「さて、ここからが、エクスシアの本領発揮だな」
マテリアルライフルを構えて若干揺れのある海上を走る。
「後方に回った敵艦隊が、真っ直ぐ追い上げてきます」
警戒を呼び掛ける遥華の緊迫した声が通信機から聞こえてきた。
●激戦
「追いつかれる前に、交戦中の敵戦隊を殲滅する」
スラスターの動きに合わせて海面が揺れる。
静止したラジェンドラの機体が長大なロングレンジマテリアルライフルの銃口を雑魔船へと向けた。
マジックエンハンサーが展開。魔導エンジンの出力が上がる。
「魔法というのは、凄いものだな。火力だけでなく、こんな事もできるとはな」
海面を自由に移動できるという事は、敵からみれば、思いもしない方向からの攻撃リスクがあるという事だ。
それは艦隊機動という面から見れば脅威である。
水柱や煙のおかげで混沌とする戦場だが、敵の位置に関しては遥華がフォローしてくれる。
「送ったデータと時間は、次の射撃の最適位置です」
「助かるよ」
応えながら、撃つ。その強力な一撃は容易く雑魔船を貫いた。
戦果を喜ぶ暇もなく、即座に移動を開始。雑魔船の戦隊正面へと向かう。
「どうした?」
通信機から入ってくる銃撃音にラジェンドラが尋ねる。
魔導砲の音ではない。ガトリングガン独特の射撃音だったからだ。
「後方からの迫る歪虚船の負マテ塊を撃ち落としただけです」
遥華は冷静に周囲の状況を確認しながら言った。
アルテミス艦隊の集中砲火を受けた敵戦隊はこのまま攻撃が続けられれば問題ないだろう。
だが、後方から迫る別の敵戦隊は無傷だ。魔導砲のアドバンテージである射程を存分に使えなければ消耗戦になるのは必至。
「ラジェンドラさん、そちらはよろしくお願いします。私は敵を可能な限り足止めします」
「分かった。すぐに片付けて戻る……無理はするな」
そう伝えるとラジェンドラは射撃に集中する。
構えたマテリアルライフルの銃口に紫色の光線が集った。ジェネレーターと接続して放つ強力な射撃だ。
「頼むぜ。アキツキ」
ラジェンドラは引き金を引いた。
残った雑魔船が仲間の強力な射撃の前に沈み消えていく。
「入り込まれましたね」
錬介はそう呟くと刻令ゴーレムを魔導砲の台座から外させ、脇に用意しておいた対空砲を構えさせる。
後方から迫ってきていた敵戦隊からの攻撃は熾烈を極めていた。遥華が乗っている五番艦が殿として踏ん張っているが多勢に無勢だ。
「これで、よしです」
刻令ゴーレムを操作し、一定方向に弾を撃ち続けるようにした。
当たりはしないだろうが、牽制位にはなるだろう。
「魔法での援護に回ります」
飛んできた負マテ塊を錬介が光の防御壁で防ぐ。
状況によってはユニットに乗ったままよりも、魔法を行使した方が良い時もある。今はその時だ。
「なら、僕もかな」
ドミニオンから奈月も降り立つと懐中時計を手にして機導術を駆使する。
負マテ塊を懐中時計から発せられた機導術で弾き飛ばす。船は動いているので、僅かでも反らせれば十二分だ。
殿である五番艦、そして、奈月らが乗り込んでいる四番艦は敵に近いだけあって攻撃が集中している。
「これで保てば……」
「こちらが有利になります」
アルテミス艦隊が陣形を整えれば逆襲の機会は充分にあるのだ。
各個撃破されなければ問題ない。
「四番艦と五番艦は敵を足止め、三番艦は回頭し、包囲戦を展開するぞ」
ランドル船長も慌てた様子なく先程と変わらない様子だ。
さすがは歴戦の船長という所だろう。ハンター達の実力を信じてこその采配だ。
「それなら、応えないと、かな」
歪虚船が並走しながら攻撃を繰り出してくる。
もはや、白兵戦に近いの様相だが、相手が乗り込んでくる様子がないのは前回海戦時の教訓だろう。
「歪虚船長は狙えないか。でも、どこに当てても有効なんだ。深く考える必要もない」
「そうですね。これならこれで、やるだけです」
二人が機導術と法術で歪虚を迎え撃つ。
●殲滅
「水の精霊よ、礎となりて我らを助けたまえ。よし、かかった!」
アルバがウォーターウォークの魔法を唱える。
使ったのは、自分自身にではなく、颯が乗っているGustavに対してだった。
二人が乗る船は回頭を始めている。包囲する前に他のハンターらと連携を取る為に海上へ打って出るつもりのようだ。
「はやての魔導アーマーは、基本ドリルで接近戦です。敵船の船体に、穴を開けてやりましょう」
意気込みよろしく海上へと降り立った。
そして、船の合間を抜けて歪虚船へと迫る。
歪虚船からは迎撃のつもりか、船体横の小窓が一斉に開くと銃身のようなものが出てきた。ユニットの追撃を振り切るつもりか速度もあげる。
「逃がしませんよ」
船尾に立ったアルバが短杖の先で魔法陣を描いた。
「万物を繋ぎ止めし、束縛の鎖。我が敵を繋ぎ、絡み止めよ! 落ちろ!」
彼の放った魔法により歪虚船の速度が急激に落ちる。
それでも歪虚船からの射程が短い砲火は止まらず、接近を試みる颯を近づけさせない。
「援護する」
回避行動を続けながら何とか突入の隙がないかタイミングを測っていた颯の機体の横をラジェンドラのCAMが駆け抜ける。
同時に、遥華のキルケーも海上から真っ直ぐに突撃した。
「行きますよ! マテリアルソード!」
マテリアルの刃が輝きながら出現した。
歪虚船の迎撃をソードで弾けながら強引に船尾を斬りつける。
「今です」
通信機からのアルバの声に応じるように颯の機体は魔導ドリルを高く掲げた。
魔導ドリル特有の機械音を響かせながら、Gustavはその鋭い先端を歪虚船の船首へと向ける。
「必殺のドリルチャージです!」
波と風と砲火を切り裂き、Gustavのドリルが歪虚船へと大穴を空けた。
喫水線のウィークポイントだ。なおも穴を広げていくGustav。歪虚船の動きが完全に止まった。
絶好のチャンスとばかり、守勢に回っていた奈月と錬介もユニットに戻り攻撃を再開。
一番艦と二番艦も回頭を終えて砲撃を開始。空いている船員達も銃や弓矢を放つ。
「敵歪虚船より、順次撃破する。ひたすら撃って、撃ち尽くせ!」
ランドル船長の命令が通信機を介して聞こえてきた。
ハンターだけではなくアルテミス艦隊全員からの一斉攻撃だ。
避ける術もできず、あっという間に沈みながら消えていく歪虚船。
「残るは、雑魔船だけだな」
「一気に畳み掛けましょう」
二機のエクスシアが雑魔船を攪乱するように海上を動き、Gustavが魔導ドリルで接近戦を試みる。
「伊達や酔狂でどりる機導師をやっている訳ではないのです」
ドリルによって開いた穴に向けて、奈月のドミニオンと錬介のゴーレムの銃撃が叩き込まれる。
そうする事で穴はますます広がって、そこに大量の海水が入る。動きが鈍くなった所を、アルバが放つグラビティフォールが止めとなり、身動きが止まった。
「動かないと、ただの的だね」
「良い連携です」
奈月と錬介の言葉にアルバは頷いた。
「決しましたね」
ここまでこればもはや、結果は明らかだ。
足を止めた雑魔船数隻に対し、アルテミス艦隊は包囲戦を展開し、敵艦隊を殲滅したのだった。
●帰還
アルテミス艦隊も無傷という訳にはいかなかった。航行に支障はないものの、修理が必要な船も多い。
それでも戦力差を考えれば大勝利だ。
「これで、よしと」
奈月が船員達と一緒に応急修理に勤しんでいた。
こういう時、ユニットがあると重い機材を運んだり支えたりするのに便利だ。
「俺も手伝いますよ」
鬼六が破損して散らばった木片をまとめていた。指示を出していた錬介は、ふと、海原へと視線を向ける。
敵艦隊を撃破したという事は、次はいよいよ、マーグミュル島へと向かう事になる。
(次は、上陸戦でしょうか……その時も、お役に立てると良いのですが)
厳しい戦いになりそうだ。だが、マーグミュル島を取り返さなければ制海権の奪還も難しい。
いつかくるはずのイスルダ島攻略の為にもと思う所だ。
「他の船は大丈夫か?」
通信機に向かって言った奈月の言葉にアルバが返す。
「こちらは大丈夫だ。酷いのは五番艦と四番艦だろう、な」
そして、アームを操作して、颯のGustavを船に引き上げるのを助ける。
バランスを崩すと船が傾くので慎重さが求められる。
「なんとか戻ってこれましたが、ユニットが使えるホバークラフト的な装備って作れませんかねぇ……」
「ホバークラフト?」
通信機から聞きなれない男性の声が響いた。
「ノセヤ君、勝手に回線に割り込まないで下さい」
と艦隊司令からの通信が入ってくるあたり、どうやら、一番艦の戦況報告の通信に『軍師騎士』ノセヤが通話を聞いていたようだ。
彼はアルテミス艦隊の刻令術担当である。外輪船の損傷確認の為に回線が通じていた。
ハンター達のユニットが乗っている外輪船も刻令術で動いている。
「あぁ、ホバークラフトというのは、平坦な面であれば地上・水上・雪上を区別無く進むことのできるリアルブルーの乗り物ですよ」
颯の説明にノセヤは興味深そうであった。
王国の技術ではすぐに作れないだろう。だが、そのアイデアがあれば、足らない物を機導術や刻令術などで補って似たようなものを作れるかも知れない。
「なるほど。フライングシスティーナ号に戻ったら、是非とも、詳しく聞かせて欲しいです」
「良いですわ」
「島を攻略する際にもつか――」
言いかけた所でソルラが遮る。
「はいはい。ノセヤ君の話は長くなるので、帰ってからにして下さい。それで、ハンターの皆さんも無事ですか?」
「はい! ソルラ司令!」
遥華が大きな声で応えた。
色々と収穫があったのもあるが、キルケーの初陣を勝利で飾る事ができた事もあるだろう。
「ご無事でなによりです。皆さんも……その、早く帰ってきて……下さいね」
ホッとした感じだったソルラの声は途中で元気がなくなる。
遥華は首を傾げたが、すぐにその理由が分かった。
「あ……もしかして、またですか?」
「遥華さぁぁぁん。このエロディラもリゼリオに連れてって下さい~」
ソルラの悲痛な声が通信機から響いてきた。
フライングシスティーナ号には、女性の下着だけを盗んでいくという迷惑なユグディラが居るのだ。
「えと……その、私も盗まれてしまうのは……ここは、颯さんの方が」
「はやてが連れて帰っていいですの!?」
「何故かドリルの音が聞こえてきますね」
「アルバさんにも聞こえますか。俺も聞こえますね。ドリルの凄い音が」
「肉をドリルで抉られると、痛そうだな……」
ハンター達が思い思いに声を発する中、ソルラの新たな叫び声も合わさった。
きっと、また“何か”盗られたのか、どうかしたのだろう。ドタドタと慌ただしい喧騒が通信機を通じて聞こえてくる。
通信内容が賑やかで相変わらずな様子だなと苦笑を浮かべながら、ラジェンドラはランドル船長に呼び掛けた。
「どうだい大将、いい腕してたろ」
「ああ、驚きだぜ。お前さんは凄腕の船乗りのようだな」
「敵が海賊なら負ける訳にはいかないんでね」
違いないとランドル船長の豪快な笑い声が聞こえてきた。
アルテミス艦隊はマーグミュル島を支配する歪虚の艦隊との海戦に勝利を収めた。
倍以上の戦力差に対し、魔導砲とユニットの海上移動の作戦が功を奏したのだ。これにより、同島攻略が一歩近づいた。
おしまい。
●???
防衛艦隊が壊滅したとの報告を、歪虚軍艦の司令であるエドワンド・サッチは聞いていた。
ぷっくりと醜く膨らんだ腹を摩り、ニヤニヤとした含み笑いを浮かべている。
「予定通りだ。予定通りだぞ」
緩慢な動きで豪華絢爛な装飾が施された椅子から立ち上がった。
「作戦を開始するぞ」
部下なのだろうか、黒い人影が幾人も奇怪な声を発して司令の宣言に応えたのであった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/25 08:48:20 |
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アルテミス艦隊司令部作戦室 鳳城 錬介(ka6053) 鬼|19才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/01/30 17:40:43 |
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質問卓 鳳城 錬介(ka6053) 鬼|19才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/01/28 09:28:24 |