ゲスト
(ka0000)
【幻洞】包囲~第二採掘場の戦い~
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/02/05 09:00
- 完成日
- 2017/02/09 06:37
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
辺境ドワーフ第二採掘場。
この場所へ歪虚の軍勢は間もなく訪れる。
今回はこの場所で敵の侵攻を食い止める事となった。
「敵はまっすぐこちらへ侵攻していますね」
辺境要塞管理者ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は、ドワーフが作成した周辺の坑道図を前に敵の侵攻ルートを推察する。
敵は北から壁に穴を開けて潜入。そのまま数で一気に押し通そうとする力任せの戦術で来る事が予想される。
「敵の主力は人型の泥歪虚で『パペットマン』と呼ばれています。さらに龍園で目撃されたアースワームも存在しています。アースワームは目が退化している分、マテリアルを感知するという報告が上がっています」
人型の泥歪虚で泥を飛ばして攻撃するパペットマン。
マテリアルを感知して襲撃するアースワーム。
敵の主力は力任せで押し切ろうとする――で、あるならば。
「ヨアキムさん、魔導アーマーは動かせそうですか?」
「ああ、準備万端だ。こいつで敵陣へ突っ込むのか?」
ヨアキム(kz0011)は後方にある魔導アーマーを指差した。
元々、この魔導アーマーは採掘用に配備された機体だ。武器の類は一切搭載されていない。これで敵陣へ突っ込んでも充分な働きはできそうにない。
しかし、ヴェルナーはまったく違う運用方法を考えていた。
「いいえ。その魔導アーマーで進軍ルートを構築します。後方から穴を掘って敵の背後を突いて下さい」
「ああ、それで一気に包囲するって訳か。けどよ、いくらQSエンジンで音は少ないとしてもマテリアル感知する奴がいるんだろ? そいつらはどうするんだよ」
「ハンターに暴れて貰います。可能な限り暴れて敵の目を惹き付けて貰います。その間に敵の後方へ回り込みます」
ヴェルナーの案は、このようなものだった。
敵が現れた段階で帝国兵による魔導銃の銃撃を撃ち込み、その後ハンターがマテリアルを消費するスキルを連発しながら敵の目を惹き付ける。その隙にヨアキムと魔導アーマーが敵の背後を突いて包囲。一気に殲滅しようというのだ。
「可能な限り早く動く必要があります。ヨアキムさん、できますか?」
「QSエンジン搭載の魔導アーマー辺境カスタムの初陣だ。やってみせるぜ」
「でも、兄貴。目立つだけならハンターの魔導アーマーやCAMってぇのを持ってきてもらえばいいんじゃねぇですかい?」
若いドワーフがヨアキムへ提案する。
敵の目を惹き付けるならば、ハンターがレンタルしている魔導アーマーやCAMを導入すれば良い。ここで一暴れすれば歪虚も放ってはおかないだろう。
しかし、ヨアキムは否定する。
「馬鹿野郎。ここは俺達が普段採掘している場所だぞ。派手に暴れれば採掘にも支障が出る。本当は戦闘だって避けてぇところなんだ」
今居る場所は、採掘場のメインとも言える場所。
周囲を見れば採掘に必要な足場や採掘用具が設置されている。
ヨアキムにしてみれば魔導アーマーやCAMで周囲を破壊すれば、鉱石の採掘に支障が出る事は避けられない。
可能であれば周囲に被害を出さずに歪虚を撃退したいところだ。
「大型兵器以外で歪虚を撃退したいですね。ところで……」
そう言いながら、ヴェルナーは視線を魔導アーマーへと向ける。
そこには左腕に赤いドリルを装備した魔導アーマーの姿があった。
「あれは私が『貸与』した魔導アーマーだと思うのですが、最初からあのような形だったでしょうか。私の記憶していたものと外見が異なっているのですが……」
●
「姐さんは心配性でおますなー」
トーチカ・J・ラロッカの部下であるデブモグラのセルトポ。
トーチカ一味の怪力担当。力任せの戦いを得意とするセルトポらしく、最前線での突撃を準備中。相方のノッポモグラのモルッキーはセルトポの後方から進軍する手筈となっている。
「人間なんかワテとモルッキーで十分でおますのに。まあ、これも姐さんの優しさとして受け取っておきますか」
セルトポが振り向けば、トーチカが付けたパペットマンやアースワームの姿が多数確認できる。
ああ見えてトーチカは部下想い。部下を楽させようと考えてセルトポへ付けてくれたのだ。
ならば、無粋な事を言うのは止そう。
結果を持ってトーチカへ感謝を述べよう。
「さぁ、大暴れしてやるでおますよ!」
セルトポのシャベルが壁を突き崩す。
空間――第二採掘場への扉が今、開いた。
この場所へ歪虚の軍勢は間もなく訪れる。
今回はこの場所で敵の侵攻を食い止める事となった。
「敵はまっすぐこちらへ侵攻していますね」
辺境要塞管理者ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は、ドワーフが作成した周辺の坑道図を前に敵の侵攻ルートを推察する。
敵は北から壁に穴を開けて潜入。そのまま数で一気に押し通そうとする力任せの戦術で来る事が予想される。
「敵の主力は人型の泥歪虚で『パペットマン』と呼ばれています。さらに龍園で目撃されたアースワームも存在しています。アースワームは目が退化している分、マテリアルを感知するという報告が上がっています」
人型の泥歪虚で泥を飛ばして攻撃するパペットマン。
マテリアルを感知して襲撃するアースワーム。
敵の主力は力任せで押し切ろうとする――で、あるならば。
「ヨアキムさん、魔導アーマーは動かせそうですか?」
「ああ、準備万端だ。こいつで敵陣へ突っ込むのか?」
ヨアキム(kz0011)は後方にある魔導アーマーを指差した。
元々、この魔導アーマーは採掘用に配備された機体だ。武器の類は一切搭載されていない。これで敵陣へ突っ込んでも充分な働きはできそうにない。
しかし、ヴェルナーはまったく違う運用方法を考えていた。
「いいえ。その魔導アーマーで進軍ルートを構築します。後方から穴を掘って敵の背後を突いて下さい」
「ああ、それで一気に包囲するって訳か。けどよ、いくらQSエンジンで音は少ないとしてもマテリアル感知する奴がいるんだろ? そいつらはどうするんだよ」
「ハンターに暴れて貰います。可能な限り暴れて敵の目を惹き付けて貰います。その間に敵の後方へ回り込みます」
ヴェルナーの案は、このようなものだった。
敵が現れた段階で帝国兵による魔導銃の銃撃を撃ち込み、その後ハンターがマテリアルを消費するスキルを連発しながら敵の目を惹き付ける。その隙にヨアキムと魔導アーマーが敵の背後を突いて包囲。一気に殲滅しようというのだ。
「可能な限り早く動く必要があります。ヨアキムさん、できますか?」
「QSエンジン搭載の魔導アーマー辺境カスタムの初陣だ。やってみせるぜ」
「でも、兄貴。目立つだけならハンターの魔導アーマーやCAMってぇのを持ってきてもらえばいいんじゃねぇですかい?」
若いドワーフがヨアキムへ提案する。
敵の目を惹き付けるならば、ハンターがレンタルしている魔導アーマーやCAMを導入すれば良い。ここで一暴れすれば歪虚も放ってはおかないだろう。
しかし、ヨアキムは否定する。
「馬鹿野郎。ここは俺達が普段採掘している場所だぞ。派手に暴れれば採掘にも支障が出る。本当は戦闘だって避けてぇところなんだ」
今居る場所は、採掘場のメインとも言える場所。
周囲を見れば採掘に必要な足場や採掘用具が設置されている。
ヨアキムにしてみれば魔導アーマーやCAMで周囲を破壊すれば、鉱石の採掘に支障が出る事は避けられない。
可能であれば周囲に被害を出さずに歪虚を撃退したいところだ。
「大型兵器以外で歪虚を撃退したいですね。ところで……」
そう言いながら、ヴェルナーは視線を魔導アーマーへと向ける。
そこには左腕に赤いドリルを装備した魔導アーマーの姿があった。
「あれは私が『貸与』した魔導アーマーだと思うのですが、最初からあのような形だったでしょうか。私の記憶していたものと外見が異なっているのですが……」
●
「姐さんは心配性でおますなー」
トーチカ・J・ラロッカの部下であるデブモグラのセルトポ。
トーチカ一味の怪力担当。力任せの戦いを得意とするセルトポらしく、最前線での突撃を準備中。相方のノッポモグラのモルッキーはセルトポの後方から進軍する手筈となっている。
「人間なんかワテとモルッキーで十分でおますのに。まあ、これも姐さんの優しさとして受け取っておきますか」
セルトポが振り向けば、トーチカが付けたパペットマンやアースワームの姿が多数確認できる。
ああ見えてトーチカは部下想い。部下を楽させようと考えてセルトポへ付けてくれたのだ。
ならば、無粋な事を言うのは止そう。
結果を持ってトーチカへ感謝を述べよう。
「さぁ、大暴れしてやるでおますよ!」
セルトポのシャベルが壁を突き崩す。
空間――第二採掘場への扉が今、開いた。
リプレイ本文
作戦開始の少し前。
ハンター達はこれから起こる戦闘を前に準備に余念がなかった。
「同胞の地で好き勝手とはいい度胸だ」
ジーナ(ka1643)は静かに闘志を滾らせる。
辺境ドワーフではない上に、生業も戦士ではない。
だが、同じドワーフとして歪虚が採掘場で勝手に暴れ回る行為を見過ごす訳にはいかない。
「おお、頼もしいな。ワシも期待しとるからな」
ヨアキム(kz0011)が豪快な笑いを見せる。
馬鹿な行動ばかり繰り返す王ではあるが、魔導アーマーを改造してみせて技師としての有能さをアピールする事もある。
「話しているところ悪いが、作戦を確認しておきたい」
第二採掘場の状況を確認していたロニ・カルディス(ka0551)。
間もなくこの第二採掘場は敵の軍勢に襲撃される。ハンター達は可能な限り前へ出て敵の目を惹き付ける。その間にヨアキムが魔導アーマー辺境カスタムと共に敵の背後へ続くルートを構築。
ヨアキムが背後へ回ったところで包囲、殲滅する作戦だ。
「……って話だぜ。それからドワーフとしてはなるべく周辺の採掘施設を壊したくねぇんだ。無茶な話だとは思うけどよ」
ヨアキムからの言葉を聞いて、軽く頷くロニ。
「そうか……だが、それしかない以上はやり遂げるしかないな」
「久しぶりにぶきを手に取るの、ですが……お役に立てるように頑張らないと……ですね」
桜憐りるか(ka3748)は、ユグディラの小太郎と共にヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)の元を訪れていた。
以前、ひょんな事から面識のある二人ではあるが、依頼として出会うのはそう多くはない。その為か、りるかにはやや緊張の面持ちだ。
「ふふ、わざわざ来て下さったのですね。改めて感謝しますよ」
「は、はい……」
思わず俯いてしまうりるか。
足下では小太郎が怪訝そうな顔で見上げている。
「あ、小太郎さん。宜しくお願い……しますね」
「小太郎さんという名前なのですね。
小太郎さん、期待していますよ。お時間があればりるかさんと三人でお茶をご一緒にしたいところです」
ヴェルナーは膝をついて小太郎の頭に軽く手を乗せる。
状況を理解していない小太郎であったが、期待されている事は理解できたらしい。
その傍らでは宵待 サクラ(ka5561)がユキウサギを前に状況説明を行っている。
「ヨアキムさん達はこういう風に進軍したいらしいから、最低このルート上の敵を撃破する必要があるんだって。でも、ここは採掘場だから衝撃で周辺の物を壊しては駄目なんだって」
ハンターはユキウサギと意志疎通する事ができない。
ハンターの言う事をユキウサギは理解できるが、ユキウサギはハンターへ言語として意思伝達ができない。その為、戦いの前にしっかり意志疎通を図っておこうというのがサクラの狙いであった。
サクラの説明に大きく頷くユキウサギ。
「いい? 勝つのは絶対。でも、大怪我や死んじゃうのは駄目。お互いまだまだ初心者なんだし、命大事に頑張ろう」
他のハンターも参加している依頼ではあるが、乱戦となれば助け合いは難しくなる。
だが、決して無理をしてはいけない。死んでしまえば、元も子もないのだから。
●
「さぁ、大暴れしてやるでおますよ!」
第二採掘場で何かの叫び声が木霊する。
それと同時に雪崩れ込んでくるのはアースワームとパペットマンの大軍。
歪虚を群れはハンター達の姿を見つけるとまっすぐ向かって走り寄ってくる。
「陽動か……私の得意分野だ。せいぜい暴れさせてもらうとしようか」
鞍馬 真(ka5819)がソウルトーチを発動。体内のマテリアルを燃やし、炎のようなオーラを纏ってアースワームの注目を集める。
アースワームは地中の敵だけあって目が退化している。この為、マテリアルを感知するタイプである事からソウルトーチを使った鞍馬の元へ殺到しているのだ。
「釣果は上々、か」
鞍馬は試作振動刀「オートMURAMASA」で眼前のアースワームに向かって薙ぎ払う。
数体のアースワームが同時に引き裂かれ、肉塊と化して地面へ転がる。
その光景に加え、超音波の振動音がアースワームを一瞬怯ませる。
「どうした? 地面に隠れている奴もまとめて来い。すべて相手をしてやる」
「こちらも始める。まずはこれだ」
鞍馬に続いてロニは敵に向かってレクイエムを使用する。
静かな鎮魂歌を歌い上げ、採掘場に歌声が鳴り響く。マテリアルの使用からアースワームがロニに向かって動き出す。
だが――。
「レクイエムの効果が鈍い。いや、効いてないのか」
レクイエムはアンデッド系に効果のあるスキルだ。
アンデッド系の歪虚に対して行動を阻害できるのだが、パペットマンはゴーレムに近い泥人形らしく目立った効果は発揮されていない。
しかし、マテリアルを使用した事でアースワームの方がロニの方へ集まってくる。それだけで陽動役としての役目は果たせる。
「暗い地中ばかりに居ては体に悪いだろう。少し光に当たっていったらどうだ?」
ロニはホーリーメイス「ギデオン」を地面に突き降ろす。
アースワームの足下に眩い光が周囲に広がる。
次の瞬間、光の波動は放たれてアースワームを吹き飛ばす。
「もっと来い。日光浴を好きなだけさせてやる」
●
戦乱の中、無雲(ka6677)はユキウサギのごまみつと共に敵と相対していた。
太ったモグラ――セルトポ。
情報によればトーチカ・J・ラロッカの部下で一味の怪力担当らしい。
今回、無雲とごまみつはセルトポを止める役目を担っている。
「ごまみつ、ごまみつ。この人が……人? まあ、いいや。この人がボク達の相手みたいだから頑張ろうね♪」
戦いの最中とは思えない脳天気さは無雲らしさか。
「ボクは鬼の無雲、この子はユキウサギのごまみつっていうの。よろしくね♪」
敵であるセルトポに向かって挨拶をする無雲。
ここでまともな敵であれば怒るか受け流すかするのだろうが、相手はあのトーチカ一味。馬鹿の方も歪虚内で一級品の相手である。
「あ、これはこれはご丁寧な挨拶でおますな。
おいはトーチカ姐さん一の子分……空前絶後、超絶怒濤のセクシー歪虚セルトポでおます」
愛用のシャベルを地面に置いて、深々と頭を下げるセルトポ。
「それじゃ、挨拶も終わったし楽しく戦おうかー♪」
衝撃拳「発勁掌波」を構え、殴り合いへ誘う無雲。
傍らではごまみつがハンマー「アイゼンフォルト」を構えて戦闘態勢に入る。
一方セルトポも愛用のシャベルを手にして、頭のヘルメットを軽く抑える。
「出会ったばかりで、もう戦いでおますか。いや、実に残念……ん? 残念なのか? おいとは敵なのだから当たり前……」
「いっくよー♪」
ぶつぶつと呟くセルトポを前に無雲は一気に間合いを詰めて打ち下ろしの右ストレートを繰り出した。
しかし、拳はセルトポのシャベルによって阻まれる。
元々デブのモグラではあるが、背丈はごまみつに近い。どうしても攻撃が打ち下ろしになってしまう為、攻撃が当てづらい。
「おお、びっくりでおます! まさか急に殴りかかるとは」
セルトポはシャベルを回転させ、持ち手の部分で無雲の腹を突き押す。
「ぐっ!」
痛みと共に間合いを取る無雲。
そこへ追い打ちをかけようとするセルトポであったが、ごまみつがアイゼンフォルトを振り回してサポートに入る。
「見掛けによらず、なかなかやるね」
「褒められているでおますか? いやー、それ程でも……」
何故かセルトポは一人で勝手に照れている。
馬鹿には違いない相手だが、やりにくさを感じる無雲であった。
●
「どこだ……」
ジーナは、乱戦の中で精神を研ぎ澄ませる。
ドワーフとしての知識に加えて鋭敏視覚で周辺の状況変化を警戒していたのだ。
アースワームは確かにマテリアルを感知して集まってくるが、敵もただ斬られる程の馬鹿ではない。正面から戦って叶わないと気付くと地面へと潜り込んだ。地面の中で様子を窺い、背後から奇襲を仕掛けようとするアースワームも現れたのだ。
ジーナも周囲の激戦の中、ラントシールドを構えて警戒する。
ジーナの周囲だけ支配する静けさ。
時間が止まったかのような錯覚の中、ジーナの息づかいだけが聞こえる。
そしてほんの僅かであったが、小石が落ちる音が耳に飛び込む。
「後ろか!」
ジーナは振り返る。
そこには地面から飛び出したアースワーム。ジーナへ向かって飛び掛かっていた。
素早く反応したジーナは、ラントシールドでアースワームの攻撃を防ぐ。
鈍い金属音と共に地面へ落下するアースワーム。
「やはりアースワームは地属性か。同属性でダメージを軽減できるなら……」
ジーナの手に握られているのはレイピア「ヴァーチカル・ウィンド」。
風属性をを持つレイピアである。ジーナはヴァーチカル・ウィンドで素早く突きを繰り出した。
地面に転がるアースワームはその体を数カ所貫かれた後、動かなくなった。
「風属性の敵も十分に通用するか。やれそうだな」
敵は数も多い。だからこそ、確実に敵を葬っていかなければならない。
ジーナはラントシールドを構えて敵の群れへと向かっていった。
●
「小太郎さん、ストーンアーマー……です」
りるかは小太郎へストーンアーマーを使用する。
小太郎の体に周囲の土砂が纏わり付き、防御力が向上する。そして、マテリアルが使用された事で周囲にいたアースワームが集まってくる。それに釣られるかのようにパペットマンも動き始める。
「来ないで……ください」
目の前に迫るアースワームに対して魔杖「ケイオスノーシス」を振るうりるか。
あまり武器を手にしていないりるかであったが、あの人を助ける為に依頼を受けた。ここで何とかあの人を手助けしなければ……。
「来ないで……」
ケイオスノーシスがアースワームの頭部にクリーンヒット。
しかし、倒すまでには至らない。再びアースワームはりるかに向かって動き出す。
「小太郎さん」
りるかの命を受けて小太郎がワンドを片手に飛び掛かる。
りるかの為に体を張って飛び込んだ小太郎はワンドでアースワームを下から突き上げる。アースワームはその場に倒れ込み、白めを剥いて痙攣している。
予めりるかと同じ敵を狙うよう小太郎に伝えてあった事が幸いしたようだ。
「ありがとう、小太郎さん」
感謝を述べるりるか。
しかし、アースワームとパペットマンは未だりるかへと迫っている。
そこへ――。
「大丈夫!?」
兜「十二神将」にLEDライトを無理矢理括り付けたサクラが走り込んできた。傍らにはユキウサギの姿もある。
「ユキウサギくん、雪水晶を!」
サクラはユキウサギへ雪水晶を使うよう指示。
それを受けてユキウサギは頷いた後、サクラの体が白い光で包まれる。
「やっぱり私に来たね。よーしっ! ユキウサギくん、勝つよ!」
太刀「宗三左文字」を構えるサクラ。それに次いでユキウサギがスネグーラチカロッドを手にアースワームに対峙する。
サクラの間合いへ入るアースワーム。
次の瞬間、サクラの逆袈裟斬りが放たれる。刃先がアースワームの体を捉え、宙へ浮かせる。刃先によって切り裂かれた体から体液がバラ撒かれていく。
一瞬足を止めるアースワーム。そこへユキウサギが走り込んでスネグーラチカロッドで突撃を敢行。
アースワームへ隙を逃さないサクラとユキウサギ。
りるかと小太郎も負けていられない。
「小太郎さん……頑張りましょう。……あの人とお茶をする、約束をしていますから」
立ち上がるりるか。
ケイオスノーシスを強く握りしめる。
●
歪虚の群れと激突するハンター達。
縦横無尽の戦いで歪虚を押し返しているように見える。
だが、予想外の事態が進行中でもあった。
「またパペットマンか」
鞍馬は集まってくるパペットマンに向かって試作振動刀「オートMURAMASA」を薙ぎ払う。泥人形のパペットマンは、吹き飛ばされた後に泥の山へと還っていく。
だが、こうしている間にも他のパペットマンが鞍馬の元へ集まってくる。
「アースワームに注意を集めすぎたようだ」
鞍馬の背後を守るようにロニがホーリーメイス「ギデオン」を構えて立つ。
ハンター達は率先してマテリアルを使った。その為、アースワームは瞬く間に駆逐されていった。しかし、パペットマンの対応が後手に回る結果となってしまった。
パペットマンは厄介な事に群れると厄介な上、泥を投げて遠くから攻撃を仕掛けてくる。気付けばアースワームの戦いの最中に大量の泥玉を投げつけられる事態に陥っていた。
鞍馬とロニが事態に気付いてパペットマン駆逐に動き出したのだが、群れとなると面倒な相手となっている。
「まだ挽回できない状況じゃない。陽動は継続中だ」
鞍馬は指摘する。
あくまでも今回の依頼はスピードを求められてはいない。重要な事は敵の注意を惹いて魔導アーマーとの挟撃を成功させる事だ。
「そうだ。敵自体はそれ程強くはない。時間を稼ぐのは簡単だ」
セイクリッドフラッシュでパペットマンを吹き飛ばすロニ。
手数の少なさは懸念材料であったが、鞍馬とロニがカバーすれば問題はない。
「……やれるか?」
「愚問だな」
意を決した鞍馬とロニは、パペットマンの群れへと飛び込んだ。
●
「きゃはは、凄いねぇ! 凄い力でゾクゾクしちゃうよ♪」
無雲とセルトポの戦いは未だ続いていた。
無雲が押せばセルトポが引き、ごまみつがフォローに入る。
まさに一進一退の攻防。
セルトポの強さに興奮を隠せない無雲。
それに対してセルトポの回答は意味不明だ。
「あ、やっぱりおいは褒められます? いや、実にお恥ずかしい」
褒められ慣れていないようで、気恥ずかしさが全面に出るセルトポ。
「やっぱりハンターになって良かったなぁ……こんな楽しい戦いができるんだもん。
だから、少し本気を出すね♪」
無雲は金剛を使う。マテリアルを纏って体を頑強にする。
それを見ていたセルトポは、無雲へ対抗する。
「やるでおますな。では、おいも……」
次の瞬間、セルトポに力が集まり筋力が増強。明らかに体が一回り大きくなった。
「本気度10%……いや、20%だったかな? まあ、とにかくそのぐらいの本気度を出したでおます」
どうやらセルトポは力を使う事で筋力増強が可能のようだ。
「凄い凄い! 早く戦おうよ♪」
大興奮の無雲。ごまみつも無雲に従って気を引き締めているようだ。
セルトポもシャベルを構え直す。
「さぁ、行くでおま……」
そう言い掛けたセルトポであったが、次の言葉は出てこなかった。
何故なら、後方の壁が突如崩れ落ちたからだ。
そして、そこに現れたのは――。
「待たせたな! ヨアキム様のご登場だ!」
砂煙の中から現れたのはヨアキム。
その後方には魔導アーマー辺境カスタムの姿もある。つまり挟撃の為の通路が開通したのだ。
「行くぞ! ここから反撃だぜ!」
●
「ヴェルナー。今だ、やれ」
「承知致しました。重装兵部隊の皆さん、お待たせしました」
ロニの指示を受け、ヴェルナーは帝国の重装兵部隊へ突撃をさせる。
挟撃が成功した後にダメ押しとして敵に突入させる手筈となっていたのだ。
重装兵部隊の突撃は、敵の陣形を崩す。
この結果――。
「包囲完成だ」
ジーナの周辺を見れば、歪虚の周囲を味方が完全に放置している。アースワーム辺りが地中へ逃げる可能性もあるが、大半の敵は包囲網の中にいる。
この後すべき事は決まっている。
「やるぞ……殲滅だ」
ラントシールドを片手にジーナは敵軍に突っ込んだ。
パペットマンをヴァーチカル・ウィンドで引き飛ばす。さらに体を回転させて遠心力を付けた後、クラッシュブロウで大きく振り抜く。
風属性の前にパペットマン達は瞬く間に駆逐されていく。
「えっと……行きます……小太郎さん、引いてください」
りるかは直線上に採掘施設がない事を確認した上でウィンドスラッシュを放つ。
直線上にいたパペットマンを巻き込みつつ、ウインドスラッシュは派手に炸裂。豪快に吹き飛んでいく。
「重装兵部隊のみんな、怪我してない? 遠慮せず下がってもいいから」
サクラは周囲の仲間に気遣いながら、太刀「宗三左文字」の袈裟斬りでパペットマンを屠る。
ここまでくれば無理をする必要は無い。怪我をした者はマテリアルヒーリングで傷を癒すべく周囲に注意を向ける。
「ここからは遠慮しない。降伏しても……もう遅い」
鞍馬も一箇所に集められた歪虚への突貫を開始。
今までのような時間稼ぎではない。相手の殲滅に向かって動き出す。
ソウルエッジで武器を強化し、容赦なく試作振動刀「オートMURAMASA」を振るう。所詮相手は泥人形。躊躇する必要もない。
一気に劣勢となったセルトポ。
気付けば包囲の真ん中でキョロキョロと見回している。
「あれ……おい達はどうなっているでおますか?」
「きゃはは? 気付いてないの? 今、包囲されちゃっているんだよ」
無雲の指摘に首を傾げるセルトポ。
その数秒後、ようやく事態に気付く。
「ああ! おい達は包囲されているでおますか!」
「だから、さっきからそう言っているよね♪
さぁ、後はあなただけだよ。何をして遊ぼうか」
これから起こる最高のショーを前に無雲は、期待せずにはいられない。
「こうなったら仕方ない……とうっ!」
セルトポはジャンプしたと思うとアースワームが開けていた穴へと飛び込んだ。
「あっ!」
無雲が穴へ駆け寄るが、既にセルトポは穴を掘ってやって来た道を引き返している。
無雲は穴に向かって叫ぶ。
「こらー、戻ってこーい」
しかし、セルトポから帰ってきた言葉は負けた悪党らしいセリフであった。
「おぼえてろー、でおますー」
●
「撃退はできたが、やはり毎回迎撃する訳にもいかないだろう。大元を経たねばなるまいな」
戦いの後、ロニはヴェルナーへ話し掛けた。
今回の戦いは撃退できたが、そう何度も迎撃できる訳ではない。大元を経たなければ何度でもやってくるだろう。
「承知しています。目標はあの『ロックワン』と呼ばれる大型グランドワーム。それについては……ヨアキムさん」
「ああ、既に準備を進めているぜ。もうちょっとで完成だ。鍵は秘密兵器と……」
そう言いながら、ヨアキムは視線を送る。
そこに居たのは様子を見に来た幻獣王チューダ(kz0173)であった。
「ほむ? 我輩に何か用でありますか?」
口いっぱいにナッツを頬張る姿のチューダに、ロニは少々不安を覚えた。
ハンター達はこれから起こる戦闘を前に準備に余念がなかった。
「同胞の地で好き勝手とはいい度胸だ」
ジーナ(ka1643)は静かに闘志を滾らせる。
辺境ドワーフではない上に、生業も戦士ではない。
だが、同じドワーフとして歪虚が採掘場で勝手に暴れ回る行為を見過ごす訳にはいかない。
「おお、頼もしいな。ワシも期待しとるからな」
ヨアキム(kz0011)が豪快な笑いを見せる。
馬鹿な行動ばかり繰り返す王ではあるが、魔導アーマーを改造してみせて技師としての有能さをアピールする事もある。
「話しているところ悪いが、作戦を確認しておきたい」
第二採掘場の状況を確認していたロニ・カルディス(ka0551)。
間もなくこの第二採掘場は敵の軍勢に襲撃される。ハンター達は可能な限り前へ出て敵の目を惹き付ける。その間にヨアキムが魔導アーマー辺境カスタムと共に敵の背後へ続くルートを構築。
ヨアキムが背後へ回ったところで包囲、殲滅する作戦だ。
「……って話だぜ。それからドワーフとしてはなるべく周辺の採掘施設を壊したくねぇんだ。無茶な話だとは思うけどよ」
ヨアキムからの言葉を聞いて、軽く頷くロニ。
「そうか……だが、それしかない以上はやり遂げるしかないな」
「久しぶりにぶきを手に取るの、ですが……お役に立てるように頑張らないと……ですね」
桜憐りるか(ka3748)は、ユグディラの小太郎と共にヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)の元を訪れていた。
以前、ひょんな事から面識のある二人ではあるが、依頼として出会うのはそう多くはない。その為か、りるかにはやや緊張の面持ちだ。
「ふふ、わざわざ来て下さったのですね。改めて感謝しますよ」
「は、はい……」
思わず俯いてしまうりるか。
足下では小太郎が怪訝そうな顔で見上げている。
「あ、小太郎さん。宜しくお願い……しますね」
「小太郎さんという名前なのですね。
小太郎さん、期待していますよ。お時間があればりるかさんと三人でお茶をご一緒にしたいところです」
ヴェルナーは膝をついて小太郎の頭に軽く手を乗せる。
状況を理解していない小太郎であったが、期待されている事は理解できたらしい。
その傍らでは宵待 サクラ(ka5561)がユキウサギを前に状況説明を行っている。
「ヨアキムさん達はこういう風に進軍したいらしいから、最低このルート上の敵を撃破する必要があるんだって。でも、ここは採掘場だから衝撃で周辺の物を壊しては駄目なんだって」
ハンターはユキウサギと意志疎通する事ができない。
ハンターの言う事をユキウサギは理解できるが、ユキウサギはハンターへ言語として意思伝達ができない。その為、戦いの前にしっかり意志疎通を図っておこうというのがサクラの狙いであった。
サクラの説明に大きく頷くユキウサギ。
「いい? 勝つのは絶対。でも、大怪我や死んじゃうのは駄目。お互いまだまだ初心者なんだし、命大事に頑張ろう」
他のハンターも参加している依頼ではあるが、乱戦となれば助け合いは難しくなる。
だが、決して無理をしてはいけない。死んでしまえば、元も子もないのだから。
●
「さぁ、大暴れしてやるでおますよ!」
第二採掘場で何かの叫び声が木霊する。
それと同時に雪崩れ込んでくるのはアースワームとパペットマンの大軍。
歪虚を群れはハンター達の姿を見つけるとまっすぐ向かって走り寄ってくる。
「陽動か……私の得意分野だ。せいぜい暴れさせてもらうとしようか」
鞍馬 真(ka5819)がソウルトーチを発動。体内のマテリアルを燃やし、炎のようなオーラを纏ってアースワームの注目を集める。
アースワームは地中の敵だけあって目が退化している。この為、マテリアルを感知するタイプである事からソウルトーチを使った鞍馬の元へ殺到しているのだ。
「釣果は上々、か」
鞍馬は試作振動刀「オートMURAMASA」で眼前のアースワームに向かって薙ぎ払う。
数体のアースワームが同時に引き裂かれ、肉塊と化して地面へ転がる。
その光景に加え、超音波の振動音がアースワームを一瞬怯ませる。
「どうした? 地面に隠れている奴もまとめて来い。すべて相手をしてやる」
「こちらも始める。まずはこれだ」
鞍馬に続いてロニは敵に向かってレクイエムを使用する。
静かな鎮魂歌を歌い上げ、採掘場に歌声が鳴り響く。マテリアルの使用からアースワームがロニに向かって動き出す。
だが――。
「レクイエムの効果が鈍い。いや、効いてないのか」
レクイエムはアンデッド系に効果のあるスキルだ。
アンデッド系の歪虚に対して行動を阻害できるのだが、パペットマンはゴーレムに近い泥人形らしく目立った効果は発揮されていない。
しかし、マテリアルを使用した事でアースワームの方がロニの方へ集まってくる。それだけで陽動役としての役目は果たせる。
「暗い地中ばかりに居ては体に悪いだろう。少し光に当たっていったらどうだ?」
ロニはホーリーメイス「ギデオン」を地面に突き降ろす。
アースワームの足下に眩い光が周囲に広がる。
次の瞬間、光の波動は放たれてアースワームを吹き飛ばす。
「もっと来い。日光浴を好きなだけさせてやる」
●
戦乱の中、無雲(ka6677)はユキウサギのごまみつと共に敵と相対していた。
太ったモグラ――セルトポ。
情報によればトーチカ・J・ラロッカの部下で一味の怪力担当らしい。
今回、無雲とごまみつはセルトポを止める役目を担っている。
「ごまみつ、ごまみつ。この人が……人? まあ、いいや。この人がボク達の相手みたいだから頑張ろうね♪」
戦いの最中とは思えない脳天気さは無雲らしさか。
「ボクは鬼の無雲、この子はユキウサギのごまみつっていうの。よろしくね♪」
敵であるセルトポに向かって挨拶をする無雲。
ここでまともな敵であれば怒るか受け流すかするのだろうが、相手はあのトーチカ一味。馬鹿の方も歪虚内で一級品の相手である。
「あ、これはこれはご丁寧な挨拶でおますな。
おいはトーチカ姐さん一の子分……空前絶後、超絶怒濤のセクシー歪虚セルトポでおます」
愛用のシャベルを地面に置いて、深々と頭を下げるセルトポ。
「それじゃ、挨拶も終わったし楽しく戦おうかー♪」
衝撃拳「発勁掌波」を構え、殴り合いへ誘う無雲。
傍らではごまみつがハンマー「アイゼンフォルト」を構えて戦闘態勢に入る。
一方セルトポも愛用のシャベルを手にして、頭のヘルメットを軽く抑える。
「出会ったばかりで、もう戦いでおますか。いや、実に残念……ん? 残念なのか? おいとは敵なのだから当たり前……」
「いっくよー♪」
ぶつぶつと呟くセルトポを前に無雲は一気に間合いを詰めて打ち下ろしの右ストレートを繰り出した。
しかし、拳はセルトポのシャベルによって阻まれる。
元々デブのモグラではあるが、背丈はごまみつに近い。どうしても攻撃が打ち下ろしになってしまう為、攻撃が当てづらい。
「おお、びっくりでおます! まさか急に殴りかかるとは」
セルトポはシャベルを回転させ、持ち手の部分で無雲の腹を突き押す。
「ぐっ!」
痛みと共に間合いを取る無雲。
そこへ追い打ちをかけようとするセルトポであったが、ごまみつがアイゼンフォルトを振り回してサポートに入る。
「見掛けによらず、なかなかやるね」
「褒められているでおますか? いやー、それ程でも……」
何故かセルトポは一人で勝手に照れている。
馬鹿には違いない相手だが、やりにくさを感じる無雲であった。
●
「どこだ……」
ジーナは、乱戦の中で精神を研ぎ澄ませる。
ドワーフとしての知識に加えて鋭敏視覚で周辺の状況変化を警戒していたのだ。
アースワームは確かにマテリアルを感知して集まってくるが、敵もただ斬られる程の馬鹿ではない。正面から戦って叶わないと気付くと地面へと潜り込んだ。地面の中で様子を窺い、背後から奇襲を仕掛けようとするアースワームも現れたのだ。
ジーナも周囲の激戦の中、ラントシールドを構えて警戒する。
ジーナの周囲だけ支配する静けさ。
時間が止まったかのような錯覚の中、ジーナの息づかいだけが聞こえる。
そしてほんの僅かであったが、小石が落ちる音が耳に飛び込む。
「後ろか!」
ジーナは振り返る。
そこには地面から飛び出したアースワーム。ジーナへ向かって飛び掛かっていた。
素早く反応したジーナは、ラントシールドでアースワームの攻撃を防ぐ。
鈍い金属音と共に地面へ落下するアースワーム。
「やはりアースワームは地属性か。同属性でダメージを軽減できるなら……」
ジーナの手に握られているのはレイピア「ヴァーチカル・ウィンド」。
風属性をを持つレイピアである。ジーナはヴァーチカル・ウィンドで素早く突きを繰り出した。
地面に転がるアースワームはその体を数カ所貫かれた後、動かなくなった。
「風属性の敵も十分に通用するか。やれそうだな」
敵は数も多い。だからこそ、確実に敵を葬っていかなければならない。
ジーナはラントシールドを構えて敵の群れへと向かっていった。
●
「小太郎さん、ストーンアーマー……です」
りるかは小太郎へストーンアーマーを使用する。
小太郎の体に周囲の土砂が纏わり付き、防御力が向上する。そして、マテリアルが使用された事で周囲にいたアースワームが集まってくる。それに釣られるかのようにパペットマンも動き始める。
「来ないで……ください」
目の前に迫るアースワームに対して魔杖「ケイオスノーシス」を振るうりるか。
あまり武器を手にしていないりるかであったが、あの人を助ける為に依頼を受けた。ここで何とかあの人を手助けしなければ……。
「来ないで……」
ケイオスノーシスがアースワームの頭部にクリーンヒット。
しかし、倒すまでには至らない。再びアースワームはりるかに向かって動き出す。
「小太郎さん」
りるかの命を受けて小太郎がワンドを片手に飛び掛かる。
りるかの為に体を張って飛び込んだ小太郎はワンドでアースワームを下から突き上げる。アースワームはその場に倒れ込み、白めを剥いて痙攣している。
予めりるかと同じ敵を狙うよう小太郎に伝えてあった事が幸いしたようだ。
「ありがとう、小太郎さん」
感謝を述べるりるか。
しかし、アースワームとパペットマンは未だりるかへと迫っている。
そこへ――。
「大丈夫!?」
兜「十二神将」にLEDライトを無理矢理括り付けたサクラが走り込んできた。傍らにはユキウサギの姿もある。
「ユキウサギくん、雪水晶を!」
サクラはユキウサギへ雪水晶を使うよう指示。
それを受けてユキウサギは頷いた後、サクラの体が白い光で包まれる。
「やっぱり私に来たね。よーしっ! ユキウサギくん、勝つよ!」
太刀「宗三左文字」を構えるサクラ。それに次いでユキウサギがスネグーラチカロッドを手にアースワームに対峙する。
サクラの間合いへ入るアースワーム。
次の瞬間、サクラの逆袈裟斬りが放たれる。刃先がアースワームの体を捉え、宙へ浮かせる。刃先によって切り裂かれた体から体液がバラ撒かれていく。
一瞬足を止めるアースワーム。そこへユキウサギが走り込んでスネグーラチカロッドで突撃を敢行。
アースワームへ隙を逃さないサクラとユキウサギ。
りるかと小太郎も負けていられない。
「小太郎さん……頑張りましょう。……あの人とお茶をする、約束をしていますから」
立ち上がるりるか。
ケイオスノーシスを強く握りしめる。
●
歪虚の群れと激突するハンター達。
縦横無尽の戦いで歪虚を押し返しているように見える。
だが、予想外の事態が進行中でもあった。
「またパペットマンか」
鞍馬は集まってくるパペットマンに向かって試作振動刀「オートMURAMASA」を薙ぎ払う。泥人形のパペットマンは、吹き飛ばされた後に泥の山へと還っていく。
だが、こうしている間にも他のパペットマンが鞍馬の元へ集まってくる。
「アースワームに注意を集めすぎたようだ」
鞍馬の背後を守るようにロニがホーリーメイス「ギデオン」を構えて立つ。
ハンター達は率先してマテリアルを使った。その為、アースワームは瞬く間に駆逐されていった。しかし、パペットマンの対応が後手に回る結果となってしまった。
パペットマンは厄介な事に群れると厄介な上、泥を投げて遠くから攻撃を仕掛けてくる。気付けばアースワームの戦いの最中に大量の泥玉を投げつけられる事態に陥っていた。
鞍馬とロニが事態に気付いてパペットマン駆逐に動き出したのだが、群れとなると面倒な相手となっている。
「まだ挽回できない状況じゃない。陽動は継続中だ」
鞍馬は指摘する。
あくまでも今回の依頼はスピードを求められてはいない。重要な事は敵の注意を惹いて魔導アーマーとの挟撃を成功させる事だ。
「そうだ。敵自体はそれ程強くはない。時間を稼ぐのは簡単だ」
セイクリッドフラッシュでパペットマンを吹き飛ばすロニ。
手数の少なさは懸念材料であったが、鞍馬とロニがカバーすれば問題はない。
「……やれるか?」
「愚問だな」
意を決した鞍馬とロニは、パペットマンの群れへと飛び込んだ。
●
「きゃはは、凄いねぇ! 凄い力でゾクゾクしちゃうよ♪」
無雲とセルトポの戦いは未だ続いていた。
無雲が押せばセルトポが引き、ごまみつがフォローに入る。
まさに一進一退の攻防。
セルトポの強さに興奮を隠せない無雲。
それに対してセルトポの回答は意味不明だ。
「あ、やっぱりおいは褒められます? いや、実にお恥ずかしい」
褒められ慣れていないようで、気恥ずかしさが全面に出るセルトポ。
「やっぱりハンターになって良かったなぁ……こんな楽しい戦いができるんだもん。
だから、少し本気を出すね♪」
無雲は金剛を使う。マテリアルを纏って体を頑強にする。
それを見ていたセルトポは、無雲へ対抗する。
「やるでおますな。では、おいも……」
次の瞬間、セルトポに力が集まり筋力が増強。明らかに体が一回り大きくなった。
「本気度10%……いや、20%だったかな? まあ、とにかくそのぐらいの本気度を出したでおます」
どうやらセルトポは力を使う事で筋力増強が可能のようだ。
「凄い凄い! 早く戦おうよ♪」
大興奮の無雲。ごまみつも無雲に従って気を引き締めているようだ。
セルトポもシャベルを構え直す。
「さぁ、行くでおま……」
そう言い掛けたセルトポであったが、次の言葉は出てこなかった。
何故なら、後方の壁が突如崩れ落ちたからだ。
そして、そこに現れたのは――。
「待たせたな! ヨアキム様のご登場だ!」
砂煙の中から現れたのはヨアキム。
その後方には魔導アーマー辺境カスタムの姿もある。つまり挟撃の為の通路が開通したのだ。
「行くぞ! ここから反撃だぜ!」
●
「ヴェルナー。今だ、やれ」
「承知致しました。重装兵部隊の皆さん、お待たせしました」
ロニの指示を受け、ヴェルナーは帝国の重装兵部隊へ突撃をさせる。
挟撃が成功した後にダメ押しとして敵に突入させる手筈となっていたのだ。
重装兵部隊の突撃は、敵の陣形を崩す。
この結果――。
「包囲完成だ」
ジーナの周辺を見れば、歪虚の周囲を味方が完全に放置している。アースワーム辺りが地中へ逃げる可能性もあるが、大半の敵は包囲網の中にいる。
この後すべき事は決まっている。
「やるぞ……殲滅だ」
ラントシールドを片手にジーナは敵軍に突っ込んだ。
パペットマンをヴァーチカル・ウィンドで引き飛ばす。さらに体を回転させて遠心力を付けた後、クラッシュブロウで大きく振り抜く。
風属性の前にパペットマン達は瞬く間に駆逐されていく。
「えっと……行きます……小太郎さん、引いてください」
りるかは直線上に採掘施設がない事を確認した上でウィンドスラッシュを放つ。
直線上にいたパペットマンを巻き込みつつ、ウインドスラッシュは派手に炸裂。豪快に吹き飛んでいく。
「重装兵部隊のみんな、怪我してない? 遠慮せず下がってもいいから」
サクラは周囲の仲間に気遣いながら、太刀「宗三左文字」の袈裟斬りでパペットマンを屠る。
ここまでくれば無理をする必要は無い。怪我をした者はマテリアルヒーリングで傷を癒すべく周囲に注意を向ける。
「ここからは遠慮しない。降伏しても……もう遅い」
鞍馬も一箇所に集められた歪虚への突貫を開始。
今までのような時間稼ぎではない。相手の殲滅に向かって動き出す。
ソウルエッジで武器を強化し、容赦なく試作振動刀「オートMURAMASA」を振るう。所詮相手は泥人形。躊躇する必要もない。
一気に劣勢となったセルトポ。
気付けば包囲の真ん中でキョロキョロと見回している。
「あれ……おい達はどうなっているでおますか?」
「きゃはは? 気付いてないの? 今、包囲されちゃっているんだよ」
無雲の指摘に首を傾げるセルトポ。
その数秒後、ようやく事態に気付く。
「ああ! おい達は包囲されているでおますか!」
「だから、さっきからそう言っているよね♪
さぁ、後はあなただけだよ。何をして遊ぼうか」
これから起こる最高のショーを前に無雲は、期待せずにはいられない。
「こうなったら仕方ない……とうっ!」
セルトポはジャンプしたと思うとアースワームが開けていた穴へと飛び込んだ。
「あっ!」
無雲が穴へ駆け寄るが、既にセルトポは穴を掘ってやって来た道を引き返している。
無雲は穴に向かって叫ぶ。
「こらー、戻ってこーい」
しかし、セルトポから帰ってきた言葉は負けた悪党らしいセリフであった。
「おぼえてろー、でおますー」
●
「撃退はできたが、やはり毎回迎撃する訳にもいかないだろう。大元を経たねばなるまいな」
戦いの後、ロニはヴェルナーへ話し掛けた。
今回の戦いは撃退できたが、そう何度も迎撃できる訳ではない。大元を経たなければ何度でもやってくるだろう。
「承知しています。目標はあの『ロックワン』と呼ばれる大型グランドワーム。それについては……ヨアキムさん」
「ああ、既に準備を進めているぜ。もうちょっとで完成だ。鍵は秘密兵器と……」
そう言いながら、ヨアキムは視線を送る。
そこに居たのは様子を見に来た幻獣王チューダ(kz0173)であった。
「ほむ? 我輩に何か用でありますか?」
口いっぱいにナッツを頬張る姿のチューダに、ロニは少々不安を覚えた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 鞍馬 真(ka5819) 人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/02/01 22:13:48 |
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相談卓 鞍馬 真(ka5819) 人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/02/05 07:20:45 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/31 22:15:11 |