ゲスト
(ka0000)
【王臨】雑貨屋、王国へ戻る
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/02/07 19:00
- 完成日
- 2017/02/13 19:53
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●病気前触れ
リゼリオを出発し、転移門でグラズヘイム王国の王都にやってきた雑貨屋の三人組。
リゼリオにある雑貨屋喫茶という店の買い出しと、オーナーたるルーベン・クーリオの実家に寄るといった旅だった。
ルーベンとライル・サヴィスはシールがグラズヘイム入りを嫌がるかと心配はしていたが、とりあえず問題はなかったようだ。
さて、ルーベンの実家においては三十路は超えた彼に跡取り問題等も含めて親戚一同、あれこれ言う。
「ルーベンさん、いい加減結婚なさい」
「大体、なぜ商人に、あのまま行けばあなただって」
隅っこでシールとライルはおいしいご飯をまずく食べていた。
ルーベンの実家を後にした直後、三人は王都で話題の店に走り込んでおいしい料理をおいしく食べて出発することにする。
リゼリオに戻るのは途中は少々陸路を使う。仕入れもしたいというルーベンの意向であり、二人は先に戻すことも考えたが、シールがついてくる気満々だったためそれはそれでよしとなる。
街道沿いに進み、村で宿泊することとなった。西に寄って、地域を区切るような丘が少し連なるところ。
「げふっ。ちょっと、悪寒がするんですよねぇ」
ライルが視点が合わない目で震えている。シールはちらりと彼を見て、毛布を投げつけた。
「ああ、シール君の優しさが身に沁みます」
「オーナーにうつすな!」
シールの言葉にライルは笑おうとしたが、節々が痛むので顔をしかめただけだった。
「大丈夫かい? まあ、私も寒いなと思うから、ライル君、風邪をひく前触れだろうから早く寝なさい」
ルーベンは寝ることを勧める。
「え? オーナー寒いですか? 薪、もっともらってきますね!」
シールは毛布をルーベンに広げて渡し、薪をもらいに部屋を出た。
「……シール君は元気ですねぇ……ですね……げふっ。冗談抜きで体の節々が痛いんですが」
「私もだよ。明日、医者呼んでもらおうかな」
「明日になれば治るとはおもいますけど……すみません、ルーベンさん」
「いやいい……イスルダ島の話も耳にしたから話しておいたほうが……」
「げほげほ」
「くしゃん」
二人はくしゃみと咳、悪寒に包まれる。
シールが急いで薪をくべる。
「僕がきちんと火を見ていますから、しっかり寝てください」
「シール君もきちんと寝るんだよ?」
「はい!」
ルーベンは寝床に入る。
体が異様に冷えている上、熱くなってくるような気がしてならなかった。
●風邪か
翌朝、地獄が待っていた。
「げふっ」
「シール君、君は部屋を別にとりなさい」
「……オーナー!? 僕が頑張って看病します! お医者さんを呼んできた方がいいですね」
泣き出しそうな顔でシールはルーベンに近寄ろうとするが、彼が止める。
「駄目です、たぶん、二人とも強力な風邪だよ」
「オーナーの風邪なら僕はかかってもいい!」
いつものライルならここで笑うが、意識がもうろうとして突っ込むどころではない。
「そういう問題ではないよ。ぐっ……医者……この村にいるなら。それより、体が温まるようなハーブティーを」
「分かりました!」
シールは飛び出していった。
「お、俺も同じ症状なんだが……」
体中が痛いのを抑えつつ、ライルが布団の中に潜っていった。
この日、シールは戻ってこなかった。宿の人が用意した茶を飲み、食事をとり、心配しつつも自身の体調とも戦いながら一晩を過ごした。
●そして
ハンターに依頼が舞い込んだ。
村まで出向いて依頼人の話を聞くこととなる。
「皆さん、すみません。まだ体調が思わしくなくて、こんな格好で」
げっそりと痩せている雰囲気のルーベンが頭に氷嚢を載せせき込む。
「宿の人に聞いた話によると、村の裏丘にある木の枝を取りに行ったそうです」
その葉は風邪の症状を穏やかにすると言われており、味もすっきりしておいしいのだという。
「行方不明になるような丘ではないとのことですし、本当は私たちが探しに行くべきなのですが」
「ご覧の有様です、げふっ」
ルーベンとライルは震える。
「シール君は元気ですから……とは思うのですが、我々のこの状況を考えると、ぶっ倒れている可能性もあるんでしょうかねぇ」
ライルがげほげほ言いながら情報を付き加えた。
「……この辺りは大きな争い等聞きませんが少し行ったら……ハルトフォート砦はありますけど……」
普通程度の危険はあるのだ、ゴブリンが通った、オオカミが腹すかせていたのに出会ったとか。べリアル部下の逃亡等もないとは限らない。
「皆さんのお力を是非に……ぐっ……背中が」
「ちょ、肋骨あたりが痛いですよ……」
依頼人たちはせき込む。
●足取りと、その先と
シールは宿の人にルーベンのことを頼んだ後、宿の人が教えてくれた薬草の生えるところに向かった。前の丘と言われる丘の上の方に池があり、そこに生えている木の葉は万病に行くと言って昔から大切にしていたという。もちろん、万病に効くわけではないが。
丘に登って景色を見て、シールはハッとする。
遠くまで見渡せる場所で、平地も見えた。
その先には砦や海があるというのは地理を知っていると想像できた。
ルーベンのため、ライルはむかつくと考えることで忘れてきていたことが思い出される。
『この子なら殺していいですわっ!』
『姉さん、やめて』
『――様っぁああぁ!』
足が震える。
心臓が激しくなる。
脳に響く声を振り払うように首を横に振った。
「僕は今は……ルーベンさんと一緒にいるんだ。リゼリオに帰るんだ。風邪を治して帰る」
リゼリオでの日々は彼の中で今のすべて。今は楽しいのだ、怖いことはないのだ。
近所の人、通りすがりのハンター、泣いている子、笑っている人……。
「帰ろう」
ガサガサ。
パキ。
何か音がした。
野生動物かと思い様子を見る。
「メエエ」
シールはそれを見た瞬間、真っ青になる。
「あらあ、人間がいるのです?」
「……ま、まさかっ!」
シールは血の気が引いた。一気に走り出す。
捕まってはいけない……。
「本当、子供は何故、こういうことが好きなのですか? あたくしの弟は本当いい子でしたわ」
シールを追うように笑い声と捕獲命令が下される。
リゼリオを出発し、転移門でグラズヘイム王国の王都にやってきた雑貨屋の三人組。
リゼリオにある雑貨屋喫茶という店の買い出しと、オーナーたるルーベン・クーリオの実家に寄るといった旅だった。
ルーベンとライル・サヴィスはシールがグラズヘイム入りを嫌がるかと心配はしていたが、とりあえず問題はなかったようだ。
さて、ルーベンの実家においては三十路は超えた彼に跡取り問題等も含めて親戚一同、あれこれ言う。
「ルーベンさん、いい加減結婚なさい」
「大体、なぜ商人に、あのまま行けばあなただって」
隅っこでシールとライルはおいしいご飯をまずく食べていた。
ルーベンの実家を後にした直後、三人は王都で話題の店に走り込んでおいしい料理をおいしく食べて出発することにする。
リゼリオに戻るのは途中は少々陸路を使う。仕入れもしたいというルーベンの意向であり、二人は先に戻すことも考えたが、シールがついてくる気満々だったためそれはそれでよしとなる。
街道沿いに進み、村で宿泊することとなった。西に寄って、地域を区切るような丘が少し連なるところ。
「げふっ。ちょっと、悪寒がするんですよねぇ」
ライルが視点が合わない目で震えている。シールはちらりと彼を見て、毛布を投げつけた。
「ああ、シール君の優しさが身に沁みます」
「オーナーにうつすな!」
シールの言葉にライルは笑おうとしたが、節々が痛むので顔をしかめただけだった。
「大丈夫かい? まあ、私も寒いなと思うから、ライル君、風邪をひく前触れだろうから早く寝なさい」
ルーベンは寝ることを勧める。
「え? オーナー寒いですか? 薪、もっともらってきますね!」
シールは毛布をルーベンに広げて渡し、薪をもらいに部屋を出た。
「……シール君は元気ですねぇ……ですね……げふっ。冗談抜きで体の節々が痛いんですが」
「私もだよ。明日、医者呼んでもらおうかな」
「明日になれば治るとはおもいますけど……すみません、ルーベンさん」
「いやいい……イスルダ島の話も耳にしたから話しておいたほうが……」
「げほげほ」
「くしゃん」
二人はくしゃみと咳、悪寒に包まれる。
シールが急いで薪をくべる。
「僕がきちんと火を見ていますから、しっかり寝てください」
「シール君もきちんと寝るんだよ?」
「はい!」
ルーベンは寝床に入る。
体が異様に冷えている上、熱くなってくるような気がしてならなかった。
●風邪か
翌朝、地獄が待っていた。
「げふっ」
「シール君、君は部屋を別にとりなさい」
「……オーナー!? 僕が頑張って看病します! お医者さんを呼んできた方がいいですね」
泣き出しそうな顔でシールはルーベンに近寄ろうとするが、彼が止める。
「駄目です、たぶん、二人とも強力な風邪だよ」
「オーナーの風邪なら僕はかかってもいい!」
いつものライルならここで笑うが、意識がもうろうとして突っ込むどころではない。
「そういう問題ではないよ。ぐっ……医者……この村にいるなら。それより、体が温まるようなハーブティーを」
「分かりました!」
シールは飛び出していった。
「お、俺も同じ症状なんだが……」
体中が痛いのを抑えつつ、ライルが布団の中に潜っていった。
この日、シールは戻ってこなかった。宿の人が用意した茶を飲み、食事をとり、心配しつつも自身の体調とも戦いながら一晩を過ごした。
●そして
ハンターに依頼が舞い込んだ。
村まで出向いて依頼人の話を聞くこととなる。
「皆さん、すみません。まだ体調が思わしくなくて、こんな格好で」
げっそりと痩せている雰囲気のルーベンが頭に氷嚢を載せせき込む。
「宿の人に聞いた話によると、村の裏丘にある木の枝を取りに行ったそうです」
その葉は風邪の症状を穏やかにすると言われており、味もすっきりしておいしいのだという。
「行方不明になるような丘ではないとのことですし、本当は私たちが探しに行くべきなのですが」
「ご覧の有様です、げふっ」
ルーベンとライルは震える。
「シール君は元気ですから……とは思うのですが、我々のこの状況を考えると、ぶっ倒れている可能性もあるんでしょうかねぇ」
ライルがげほげほ言いながら情報を付き加えた。
「……この辺りは大きな争い等聞きませんが少し行ったら……ハルトフォート砦はありますけど……」
普通程度の危険はあるのだ、ゴブリンが通った、オオカミが腹すかせていたのに出会ったとか。べリアル部下の逃亡等もないとは限らない。
「皆さんのお力を是非に……ぐっ……背中が」
「ちょ、肋骨あたりが痛いですよ……」
依頼人たちはせき込む。
●足取りと、その先と
シールは宿の人にルーベンのことを頼んだ後、宿の人が教えてくれた薬草の生えるところに向かった。前の丘と言われる丘の上の方に池があり、そこに生えている木の葉は万病に行くと言って昔から大切にしていたという。もちろん、万病に効くわけではないが。
丘に登って景色を見て、シールはハッとする。
遠くまで見渡せる場所で、平地も見えた。
その先には砦や海があるというのは地理を知っていると想像できた。
ルーベンのため、ライルはむかつくと考えることで忘れてきていたことが思い出される。
『この子なら殺していいですわっ!』
『姉さん、やめて』
『――様っぁああぁ!』
足が震える。
心臓が激しくなる。
脳に響く声を振り払うように首を横に振った。
「僕は今は……ルーベンさんと一緒にいるんだ。リゼリオに帰るんだ。風邪を治して帰る」
リゼリオでの日々は彼の中で今のすべて。今は楽しいのだ、怖いことはないのだ。
近所の人、通りすがりのハンター、泣いている子、笑っている人……。
「帰ろう」
ガサガサ。
パキ。
何か音がした。
野生動物かと思い様子を見る。
「メエエ」
シールはそれを見た瞬間、真っ青になる。
「あらあ、人間がいるのです?」
「……ま、まさかっ!」
シールは血の気が引いた。一気に走り出す。
捕まってはいけない……。
「本当、子供は何故、こういうことが好きなのですか? あたくしの弟は本当いい子でしたわ」
シールを追うように笑い声と捕獲命令が下される。
リプレイ本文
●宿屋から
ハンターたちは依頼人から話を聞き終わる。
「ルーベンさん、ライルさんはこれ以上体調を崩さないように、安静にしておいてくださいね」
ミオレスカ(ka3496)は依頼人たちのことも心配だ。
「そうだな。迷子が戻ってきて、依頼人が不調の上塗りなら困るからな」
ルナリリル・フェルフューズ(ka4108)はきっぱりと言う。
そして、ハンターは全員異口同音に「任せろ」と部屋を出た。
「わふぅ、迷子は駄目です、ちゃんとおうちに帰るです」
アルマ・A・エインズワース(ka4901)はシールの特徴を覚え、ともに行動をとっている最愛の妻で飼い主と本人がいうミリア・エインズワース(ka1287)を見る。
「そうそう。迷子になっても帰ってくる、それは重要だ」
ミリアはアルマを肯定する。
ライラ = リューンベリ(ka5507)は宿屋の人に話を聞き、つぶやく。
「そうですか。シール様が事件や事故に巻き込まれたり、方向音痴すぎることがない限り戻ってこられるということですね」
エルバッハ・リオン(ka2434)は一瞬眉をしかめた後、玄関の扉を開いた。
「事故が何らかの襲撃を受けたわかりませんが、急がないといけませんね」
ハンターたちは機動力も考え、馬やバイクでシールの目的地なはずの、丘にある池を目指した。
●池の周りへ
ハンターは登る途中、声をかけつつ、目も配る。村人もすぐに行ける場所だというが、途中で異変が起こらないという保証はない。
ミオレスカは繁みなど入りやすいところにシールがいないかそっとのぞく。いないことはいいことか悪いことか。小動物は通ったようでも特に何もない。
「おおい、誰かいるか? シール、宿で患者たちが心配しているぞ」
ルナリリルは声をかける。丘に何かいるといっても動物程度なら、威嚇にもつながる。
「ルーベンさんとライルさんから依頼を受けたハンターです」
「そうだぞー。シール、いるのなら返事しろー」
アルマとミリアも声をかけるが丘は静かである。鳥の声もしないが、時間帯にもよるため分からない。
「シール様、何か合図をください」
ライラは耳をすますが、やはりそれらしい音は聞こえない。
「この辺りにはないようですね」
エルバッハは戦馬を進めた。シールが目的地としていた池の近くに手がかりがあると信じて。
一行は池がある場所に来た。
見晴らしもよい場所であり、池があり近くに大きな木がある。ピクニックにもよさそうな雰囲気だ。この木の葉を取りに来たのならば、大した道中ではないと実証される。
アルマとミリアは木を見上げる。
「上にいるか?」
「いないみたいです」
頑丈そうな幹であり、枝も多いため登りやすいだろう。
周りにいないか用心深く観察をしていた。登って落ちて怪我をしているとか、不測の事態で木の隙間に隠れたとかあるかもしれない。
「何もないですね」
アルマのペットのパルムたちもコクンとうなずく。隙間に入るにも、パルムすら入らない隙間しかここにはない。
他の者もそれぞれ自然と分担し手がかりを探す。
「枝の折れ方……この辺り何か通ったのか」
「池の周りに蹄の跡でしょうか?」
ルナリリルとエルバッハがそれぞれ見ているところから声を上げた。
ミオレスカも両方とも見つけており、自然なのか不自然なのか判断に迷う。【直感視】を用いて見てみる。不自然な物がなにかわかるなら。
「蹄……? あっ、そんなに大きな生き物がいたらおかしいですよね? 馬ぽいのはありますか?」
ミオレスカは問う。自分たちも馬を連れているからついてはいるが、動きは分かっている。
「馬……かわからないが、羊にしては大きいし、馬にしては奇妙」
ルナリリルが指さす。
覗き込んだ他のハンターも首を傾げた。その蹄は村とは違う方向から入ってきて、池を避けるように歩いて木の奥の、村とは違う方向へ進んだようだった。その先は足元が踏み固められていたり、枯れ草があったり簡単に足跡は分からない。
「羊ねぇ……」
ミリアは腕を組んで嫌な顔をする。
「羊ですか……前もいましたね」
ライラもうなずいた。先日見た歪虚は羊型の歪虚も連れていた。それがいるかどうかは不明だが、傲慢の歪虚がうろついているということを説明した。
「その歪虚がいるとは限りません……【懲罰】でしたっけ……使ってくるのは困りますが」
ミリアがライラの説明にうなずいた。
「……分かった。攻撃を反射するとはいえ、倒せないわけはない」
ルナリリルの言葉に「そういうこと」とミリアが告げる。危険ではあっても。
「オオカミか、ゴブリンか……歪虚がいる可能性も考えていたほうがいいのですね」
エルバッハはぎゅとワンドを握りしめた。
一行は謎の生き物の後をつけるように道なき道を進んだ。
●捜索
【ソウルトーチ】を念のために使いつつミリアは進む。感知できる敵がいれば、ハンターに気づいて向かってくるかもしれないのだ。
「捜索を依頼されたハンターです、シールさん、いますかー」
アルマが声を出す。敵を引き付けるかもしれない、シールが危険なら安全になるかもしれない。
「シールさん、安全なところにいるなら返事や合図をください」
エルバッハは声を上げる。
「もし、危険なら無理はしないでくださいね」
ミオレスカも続けた。銃は引き抜いたまま、敵を見つけたら動けるように。危険は迫っている感覚はない。
「……静かなのは鳥の活動時間じゃないからではなく、何かいるからなのかもしれない」
ルナリリルは腑に落ちたと思った。歪虚から息を殺して隠れているのでは、と。
ライラは身の軽さを利用して先に進む。
先に進むとここには何かいる、と言う感触が強くなる。
仲間が呼びかけている声がするが、それ以上変化がないのがそれだった。
しばらく行くと、羊型歪虚が見えた。
一匹なら数を減らすため不意打ちで攻撃もするつもりだった。見える範囲の数や仲間との距離を考えると、危険すぎる。誰かが襲われている最中なら無理をしてでも入るが。
トランシーバーで連絡を取り、様子を見ることにした。
ライラからの連絡により、声をかけるより進むことを優先した。
不意打ちを狙うなら音は論外だが、短い連絡によると、それらは何かを追い詰めた様子だったという。
「全力で行くぞ」
「はい、ミリア」
ミリアとアルマが先行する。
「右側の道です」
後方から印を見てミオレスカが指示をする。
「身を低くしていないと」
「危険だな」
エルバッハとルナリリルが言うように、枝は飛び出していた。鎧がある部分に当たれば問題ないが。
歪虚に追いかけられ、シールは行き場をなくしていた。
(それよりなんで……あれは、エッタ様だ)
知った顔の歪虚を見るのは恐怖だった。それに付随した記憶もあるから余計に。
(無力……ううっ……神様を信じないと……でも……)
木の上に隠れてシールは気配を消す努力をする。
「いい加減出ていらっしゃい? あなたが持っているマテリアルはあたくしが丁重にいただいて差し上げてよ?」
馬の上にいるエッタはもったいぶっていう。
「あたくしは、あなたくらいの子が嫌いなの。その上、何かお前を見ていると腹が立つのよ?」
バイクや馬の音が近づいてくると気づいた。
●対羊
「先手を取ります」
ライラが近くにいた羊型歪虚に攻撃を仕掛けた。
エルバッハは敵の配置から木の方に何かがあると走っていく。それを援護するようにミオレスカが威嚇射撃をした。
「先日はどーも」
ミリアは武器を構えるとエッタに向かう線上にいる羊型歪虚を攻撃した。ただの一撃であってもその攻撃は重く、羊型歪虚は逃げ出そうとするほどの威力だ。
ミリアのそばにいながらアルマは機導術により、【狂蒼極】を使いタイミングを計って準備をしていく。
「反射が怖くて攻撃ができないわけではない」
ルナリリルは【デルタレイ】を放つ。羊型歪虚やエッタも巻き込む。何か仲間が技を使おうとしているのが分かるため、敵の気をそらすような攻撃でもある。
「あら、あたくしに何をなさるつもり?」
ダメージを反射されルナリリルは眉をしかめる。大したことはないがいい気持ちはしない。
「露払いです」
弱っている羊型歪虚をライラは攻撃した。それはダメージの積み重ねに耐えきれなくなり霧散する。
「……この傷を作った人間ですわね! 『その強い力を隣の者に振いなさい』」
エッタはミリアをにらみつけるように力強く、負のマテリアルを絡めて命令をしたが――。
「ミリア、すごいです」
「抵抗すらしてない」
アルマが褒めたが、ミリアは生ぬるい視線をエッタに向けた。
「うっ」
羊型歪虚は比較的近くにいる者に殴りかかり、周りにハンターがいないと魔法を放っていた。
「なんで効いてくれないのかしら! 人間の癖に!」
すぐにエッタは魔法を紡ぐ。彼女からツララのような物が勢いよくは放たれ、ライラを貫いた。
「きゃああ、この程度は問題ありません!」
ライラはきゅっと唇を結び、武器を構え直した。エッタに対して攻撃をすべきかタイミングを計る。
「シールさん、いますか?」
「……ハンターの人」
かすかな声が木から降ってきたため、エルバッハは用心のため敵との間に【アースウォール】を作った。
「援護しますよ」
ミオレスカはエルバッハの近くに守るべき相手がいると感じ、敵を引き付けるように攻撃をする。先ほど攻撃してあった羊型歪虚を討ちとった。
「ミリアの言っていたいじめっ子です?」
アルマは機導術を重ねがけをしつつエッタに尋ねる。
エッタとしては意味の分からない話であるため返答はない。
「何かしてくれているし、倒すだけだ」
近づきながらミリアは羊型歪虚を斬る。
「そうだ」
ルナリリルは【デルタレイ】で攻撃をしていく。馬だったらしい雑魔は攻撃はしてこないが、不快そうな様子を見せている。小さなダメージの積み重ねであってもエッタに影響があるはずだ。
「先ほどのお返しをさせていただきますね、あら?」
ライラは投擲したのだが、刺さったはずがエッタのドレスで止まったようだった。
「鋼鉄のドレスと言うより、ふくらみの距離か」
ルナリリルは分析し、ライラから溜息が漏れた。
ミオレスカとエルバッハはシールのほうに近づきそうな敵を確実に攻撃していく。必要ならば、エッタを討とうという味方の動きには同調するつもりだ。
シールの無事が重要なため、深追いはしない。
「いいか、アルマ、1、2に3で行くぞ?」
ミリアが合図とともにマテリアルを込め一直線に攻撃を仕掛ける。全身を駆け抜ける痛みは反射された証拠であり、攻撃が通ったということだ。
「仲良くできない子は――滅っ! ですよー」
タイミングを合わせつつ、力をため込んでいたアルマが冷たい目とともに術を叩き込んだ。攻撃が当たったというのは分かったし、それがまだ存在しているのは分かった。反射されたダメージは大きかった。走馬燈が巡るほど衝撃だったが、友人の叱咤激励が響き、我に返る。
「嫌だあああ! もうたくさんだよ! 僕の前で、僕の前でエッタ様が人が、歪虚が人を……」
少年の声が響き、バキッという音もする。
「あっ、大丈夫ですかっ!」
ミオレスカは【アースウォール】の向こう側で人が落ちるのを見た。近づくわけにもいかないため、戦況に注視する。
「あ、あたくしの、あたくしの足が! あたくしが人間に――」
エッタは余裕を見極めきれなかったために、アルマの攻撃を食らってしまった。
エッタは馬にしがみつくようにしながら、片手で傷口を抑える。傷口から血が流れるように何かがあふれる。右の足は切断され、馬の足元に転がり、無に還ろうとしている。
「ああああ、もう、なんてこと! いやよ、あたくしは、もっともっと――」
エッタは悲鳴を上げる。ハンターがとどめを放つ前に、馬雑魔が逃走した。
羊型歪虚は置いて行かれたが、逃げるタイミングもなかった。
●ティータイム
地面に落ちて呆然としているシールにエルバッハがすぐに近寄り、手を差し伸べる。
「……ごめんなさい、僕のせいで……お客様を……」
泣き出しそうだが我慢する顔でエルバッハを見上げ目を伏せた。
「お客様ではありませんよ。私はハンターで依頼を受けた、あなたは依頼されて探された人です。なら、今はあなたがお客様……極端ですけれど」
リゼリオの店で見たことあるエルバッハはたしなめるように告げた。少し笑みが漏れた言い方だったのは、深手を負ったとはいえハンターもすり傷だらけでもシールが無事だったからだ。
「少しなら……癒せるはずです」
シールは自信ない様子で傷を負っているハンターに【ヒール】を使う。
「少しでも十分だ。私よりもミリアとアルマの方を優先してくれてもいい」
「そうです。私は動けますし、ほら」
ルナリリルとライラは動けることをアピールする。ライラは簡易窯を作り始めた。
【懲罰】で反射したものは攻撃力に比例して大きい。
シールはうなずくとアルマとミリアの傷を何度か癒す。しかし、途中で、何も起きていないとアルマもミリアも感じる。
「そんな顔しないでくれ。僕たちは怪我もしたけど、あいつは相当深手だ」
唇をかむシールをミリアはぎゅと抱きしめた。
「何を迷っているのか知らないが、僕もアルマもこのくらいの傷ならすぐに治る」
ポンポンと背中を撫でるようにたたく。
「そうですよー、痛いことは痛いですけれど、治りは早いです」
「ありがとうございます」
シールはうなずいた。
「さ、どうぞ。一晩このようなところにいたら、寒かったでしょうし、おなかも減ったでしょう?」
ライラは先ほど用意した簡易窯で一人分だけさっとお湯を沸かし、ヒカヤ紅茶を淹れる。
温かさが伝わるコップを受け取ったシールの顔がほっと緩む。おなかが鳴った。
「あ」
「おなかがはすくのは元気な証拠だな」
ルナリリルに指摘されて、小さな笑いが起きる。
「クッキーありますよ、少しおなかに入れておいた方がいいですね」
ミオレスカに勧められてシールはありがたくちょうだいした。
「それに、薬草……ですか? せっかくですから入手して、元気な姿をお二人に見せましょう? それが病人には一番の薬です」
シールはうなずいた。
「そうですよー、迷子でも、気を付けないとー? それにしてもどうして、迷子になったのですー?」
アルマに問われてシールは口をつぐんだ。
「羊……村に逃げたら、来るかもって……」
「そうですか、あの――」
歪虚と因縁があるですかとエルバッハは問いかけて止める。シールが濁したため聞くタイミングではないと感じる。
一息ついてから、枝を手折ってから、一行は村に戻った。
ハンターたちは依頼人から話を聞き終わる。
「ルーベンさん、ライルさんはこれ以上体調を崩さないように、安静にしておいてくださいね」
ミオレスカ(ka3496)は依頼人たちのことも心配だ。
「そうだな。迷子が戻ってきて、依頼人が不調の上塗りなら困るからな」
ルナリリル・フェルフューズ(ka4108)はきっぱりと言う。
そして、ハンターは全員異口同音に「任せろ」と部屋を出た。
「わふぅ、迷子は駄目です、ちゃんとおうちに帰るです」
アルマ・A・エインズワース(ka4901)はシールの特徴を覚え、ともに行動をとっている最愛の妻で飼い主と本人がいうミリア・エインズワース(ka1287)を見る。
「そうそう。迷子になっても帰ってくる、それは重要だ」
ミリアはアルマを肯定する。
ライラ = リューンベリ(ka5507)は宿屋の人に話を聞き、つぶやく。
「そうですか。シール様が事件や事故に巻き込まれたり、方向音痴すぎることがない限り戻ってこられるということですね」
エルバッハ・リオン(ka2434)は一瞬眉をしかめた後、玄関の扉を開いた。
「事故が何らかの襲撃を受けたわかりませんが、急がないといけませんね」
ハンターたちは機動力も考え、馬やバイクでシールの目的地なはずの、丘にある池を目指した。
●池の周りへ
ハンターは登る途中、声をかけつつ、目も配る。村人もすぐに行ける場所だというが、途中で異変が起こらないという保証はない。
ミオレスカは繁みなど入りやすいところにシールがいないかそっとのぞく。いないことはいいことか悪いことか。小動物は通ったようでも特に何もない。
「おおい、誰かいるか? シール、宿で患者たちが心配しているぞ」
ルナリリルは声をかける。丘に何かいるといっても動物程度なら、威嚇にもつながる。
「ルーベンさんとライルさんから依頼を受けたハンターです」
「そうだぞー。シール、いるのなら返事しろー」
アルマとミリアも声をかけるが丘は静かである。鳥の声もしないが、時間帯にもよるため分からない。
「シール様、何か合図をください」
ライラは耳をすますが、やはりそれらしい音は聞こえない。
「この辺りにはないようですね」
エルバッハは戦馬を進めた。シールが目的地としていた池の近くに手がかりがあると信じて。
一行は池がある場所に来た。
見晴らしもよい場所であり、池があり近くに大きな木がある。ピクニックにもよさそうな雰囲気だ。この木の葉を取りに来たのならば、大した道中ではないと実証される。
アルマとミリアは木を見上げる。
「上にいるか?」
「いないみたいです」
頑丈そうな幹であり、枝も多いため登りやすいだろう。
周りにいないか用心深く観察をしていた。登って落ちて怪我をしているとか、不測の事態で木の隙間に隠れたとかあるかもしれない。
「何もないですね」
アルマのペットのパルムたちもコクンとうなずく。隙間に入るにも、パルムすら入らない隙間しかここにはない。
他の者もそれぞれ自然と分担し手がかりを探す。
「枝の折れ方……この辺り何か通ったのか」
「池の周りに蹄の跡でしょうか?」
ルナリリルとエルバッハがそれぞれ見ているところから声を上げた。
ミオレスカも両方とも見つけており、自然なのか不自然なのか判断に迷う。【直感視】を用いて見てみる。不自然な物がなにかわかるなら。
「蹄……? あっ、そんなに大きな生き物がいたらおかしいですよね? 馬ぽいのはありますか?」
ミオレスカは問う。自分たちも馬を連れているからついてはいるが、動きは分かっている。
「馬……かわからないが、羊にしては大きいし、馬にしては奇妙」
ルナリリルが指さす。
覗き込んだ他のハンターも首を傾げた。その蹄は村とは違う方向から入ってきて、池を避けるように歩いて木の奥の、村とは違う方向へ進んだようだった。その先は足元が踏み固められていたり、枯れ草があったり簡単に足跡は分からない。
「羊ねぇ……」
ミリアは腕を組んで嫌な顔をする。
「羊ですか……前もいましたね」
ライラもうなずいた。先日見た歪虚は羊型の歪虚も連れていた。それがいるかどうかは不明だが、傲慢の歪虚がうろついているということを説明した。
「その歪虚がいるとは限りません……【懲罰】でしたっけ……使ってくるのは困りますが」
ミリアがライラの説明にうなずいた。
「……分かった。攻撃を反射するとはいえ、倒せないわけはない」
ルナリリルの言葉に「そういうこと」とミリアが告げる。危険ではあっても。
「オオカミか、ゴブリンか……歪虚がいる可能性も考えていたほうがいいのですね」
エルバッハはぎゅとワンドを握りしめた。
一行は謎の生き物の後をつけるように道なき道を進んだ。
●捜索
【ソウルトーチ】を念のために使いつつミリアは進む。感知できる敵がいれば、ハンターに気づいて向かってくるかもしれないのだ。
「捜索を依頼されたハンターです、シールさん、いますかー」
アルマが声を出す。敵を引き付けるかもしれない、シールが危険なら安全になるかもしれない。
「シールさん、安全なところにいるなら返事や合図をください」
エルバッハは声を上げる。
「もし、危険なら無理はしないでくださいね」
ミオレスカも続けた。銃は引き抜いたまま、敵を見つけたら動けるように。危険は迫っている感覚はない。
「……静かなのは鳥の活動時間じゃないからではなく、何かいるからなのかもしれない」
ルナリリルは腑に落ちたと思った。歪虚から息を殺して隠れているのでは、と。
ライラは身の軽さを利用して先に進む。
先に進むとここには何かいる、と言う感触が強くなる。
仲間が呼びかけている声がするが、それ以上変化がないのがそれだった。
しばらく行くと、羊型歪虚が見えた。
一匹なら数を減らすため不意打ちで攻撃もするつもりだった。見える範囲の数や仲間との距離を考えると、危険すぎる。誰かが襲われている最中なら無理をしてでも入るが。
トランシーバーで連絡を取り、様子を見ることにした。
ライラからの連絡により、声をかけるより進むことを優先した。
不意打ちを狙うなら音は論外だが、短い連絡によると、それらは何かを追い詰めた様子だったという。
「全力で行くぞ」
「はい、ミリア」
ミリアとアルマが先行する。
「右側の道です」
後方から印を見てミオレスカが指示をする。
「身を低くしていないと」
「危険だな」
エルバッハとルナリリルが言うように、枝は飛び出していた。鎧がある部分に当たれば問題ないが。
歪虚に追いかけられ、シールは行き場をなくしていた。
(それよりなんで……あれは、エッタ様だ)
知った顔の歪虚を見るのは恐怖だった。それに付随した記憶もあるから余計に。
(無力……ううっ……神様を信じないと……でも……)
木の上に隠れてシールは気配を消す努力をする。
「いい加減出ていらっしゃい? あなたが持っているマテリアルはあたくしが丁重にいただいて差し上げてよ?」
馬の上にいるエッタはもったいぶっていう。
「あたくしは、あなたくらいの子が嫌いなの。その上、何かお前を見ていると腹が立つのよ?」
バイクや馬の音が近づいてくると気づいた。
●対羊
「先手を取ります」
ライラが近くにいた羊型歪虚に攻撃を仕掛けた。
エルバッハは敵の配置から木の方に何かがあると走っていく。それを援護するようにミオレスカが威嚇射撃をした。
「先日はどーも」
ミリアは武器を構えるとエッタに向かう線上にいる羊型歪虚を攻撃した。ただの一撃であってもその攻撃は重く、羊型歪虚は逃げ出そうとするほどの威力だ。
ミリアのそばにいながらアルマは機導術により、【狂蒼極】を使いタイミングを計って準備をしていく。
「反射が怖くて攻撃ができないわけではない」
ルナリリルは【デルタレイ】を放つ。羊型歪虚やエッタも巻き込む。何か仲間が技を使おうとしているのが分かるため、敵の気をそらすような攻撃でもある。
「あら、あたくしに何をなさるつもり?」
ダメージを反射されルナリリルは眉をしかめる。大したことはないがいい気持ちはしない。
「露払いです」
弱っている羊型歪虚をライラは攻撃した。それはダメージの積み重ねに耐えきれなくなり霧散する。
「……この傷を作った人間ですわね! 『その強い力を隣の者に振いなさい』」
エッタはミリアをにらみつけるように力強く、負のマテリアルを絡めて命令をしたが――。
「ミリア、すごいです」
「抵抗すらしてない」
アルマが褒めたが、ミリアは生ぬるい視線をエッタに向けた。
「うっ」
羊型歪虚は比較的近くにいる者に殴りかかり、周りにハンターがいないと魔法を放っていた。
「なんで効いてくれないのかしら! 人間の癖に!」
すぐにエッタは魔法を紡ぐ。彼女からツララのような物が勢いよくは放たれ、ライラを貫いた。
「きゃああ、この程度は問題ありません!」
ライラはきゅっと唇を結び、武器を構え直した。エッタに対して攻撃をすべきかタイミングを計る。
「シールさん、いますか?」
「……ハンターの人」
かすかな声が木から降ってきたため、エルバッハは用心のため敵との間に【アースウォール】を作った。
「援護しますよ」
ミオレスカはエルバッハの近くに守るべき相手がいると感じ、敵を引き付けるように攻撃をする。先ほど攻撃してあった羊型歪虚を討ちとった。
「ミリアの言っていたいじめっ子です?」
アルマは機導術を重ねがけをしつつエッタに尋ねる。
エッタとしては意味の分からない話であるため返答はない。
「何かしてくれているし、倒すだけだ」
近づきながらミリアは羊型歪虚を斬る。
「そうだ」
ルナリリルは【デルタレイ】で攻撃をしていく。馬だったらしい雑魔は攻撃はしてこないが、不快そうな様子を見せている。小さなダメージの積み重ねであってもエッタに影響があるはずだ。
「先ほどのお返しをさせていただきますね、あら?」
ライラは投擲したのだが、刺さったはずがエッタのドレスで止まったようだった。
「鋼鉄のドレスと言うより、ふくらみの距離か」
ルナリリルは分析し、ライラから溜息が漏れた。
ミオレスカとエルバッハはシールのほうに近づきそうな敵を確実に攻撃していく。必要ならば、エッタを討とうという味方の動きには同調するつもりだ。
シールの無事が重要なため、深追いはしない。
「いいか、アルマ、1、2に3で行くぞ?」
ミリアが合図とともにマテリアルを込め一直線に攻撃を仕掛ける。全身を駆け抜ける痛みは反射された証拠であり、攻撃が通ったということだ。
「仲良くできない子は――滅っ! ですよー」
タイミングを合わせつつ、力をため込んでいたアルマが冷たい目とともに術を叩き込んだ。攻撃が当たったというのは分かったし、それがまだ存在しているのは分かった。反射されたダメージは大きかった。走馬燈が巡るほど衝撃だったが、友人の叱咤激励が響き、我に返る。
「嫌だあああ! もうたくさんだよ! 僕の前で、僕の前でエッタ様が人が、歪虚が人を……」
少年の声が響き、バキッという音もする。
「あっ、大丈夫ですかっ!」
ミオレスカは【アースウォール】の向こう側で人が落ちるのを見た。近づくわけにもいかないため、戦況に注視する。
「あ、あたくしの、あたくしの足が! あたくしが人間に――」
エッタは余裕を見極めきれなかったために、アルマの攻撃を食らってしまった。
エッタは馬にしがみつくようにしながら、片手で傷口を抑える。傷口から血が流れるように何かがあふれる。右の足は切断され、馬の足元に転がり、無に還ろうとしている。
「ああああ、もう、なんてこと! いやよ、あたくしは、もっともっと――」
エッタは悲鳴を上げる。ハンターがとどめを放つ前に、馬雑魔が逃走した。
羊型歪虚は置いて行かれたが、逃げるタイミングもなかった。
●ティータイム
地面に落ちて呆然としているシールにエルバッハがすぐに近寄り、手を差し伸べる。
「……ごめんなさい、僕のせいで……お客様を……」
泣き出しそうだが我慢する顔でエルバッハを見上げ目を伏せた。
「お客様ではありませんよ。私はハンターで依頼を受けた、あなたは依頼されて探された人です。なら、今はあなたがお客様……極端ですけれど」
リゼリオの店で見たことあるエルバッハはたしなめるように告げた。少し笑みが漏れた言い方だったのは、深手を負ったとはいえハンターもすり傷だらけでもシールが無事だったからだ。
「少しなら……癒せるはずです」
シールは自信ない様子で傷を負っているハンターに【ヒール】を使う。
「少しでも十分だ。私よりもミリアとアルマの方を優先してくれてもいい」
「そうです。私は動けますし、ほら」
ルナリリルとライラは動けることをアピールする。ライラは簡易窯を作り始めた。
【懲罰】で反射したものは攻撃力に比例して大きい。
シールはうなずくとアルマとミリアの傷を何度か癒す。しかし、途中で、何も起きていないとアルマもミリアも感じる。
「そんな顔しないでくれ。僕たちは怪我もしたけど、あいつは相当深手だ」
唇をかむシールをミリアはぎゅと抱きしめた。
「何を迷っているのか知らないが、僕もアルマもこのくらいの傷ならすぐに治る」
ポンポンと背中を撫でるようにたたく。
「そうですよー、痛いことは痛いですけれど、治りは早いです」
「ありがとうございます」
シールはうなずいた。
「さ、どうぞ。一晩このようなところにいたら、寒かったでしょうし、おなかも減ったでしょう?」
ライラは先ほど用意した簡易窯で一人分だけさっとお湯を沸かし、ヒカヤ紅茶を淹れる。
温かさが伝わるコップを受け取ったシールの顔がほっと緩む。おなかが鳴った。
「あ」
「おなかがはすくのは元気な証拠だな」
ルナリリルに指摘されて、小さな笑いが起きる。
「クッキーありますよ、少しおなかに入れておいた方がいいですね」
ミオレスカに勧められてシールはありがたくちょうだいした。
「それに、薬草……ですか? せっかくですから入手して、元気な姿をお二人に見せましょう? それが病人には一番の薬です」
シールはうなずいた。
「そうですよー、迷子でも、気を付けないとー? それにしてもどうして、迷子になったのですー?」
アルマに問われてシールは口をつぐんだ。
「羊……村に逃げたら、来るかもって……」
「そうですか、あの――」
歪虚と因縁があるですかとエルバッハは問いかけて止める。シールが濁したため聞くタイミングではないと感じる。
一息ついてから、枝を手折ってから、一行は村に戻った。
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相談卓 ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/02/07 07:46:38 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/02/05 22:11:09 |