ゲスト
(ka0000)
【界冥】アタック・トゥ・ザ・バックドア
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/02/27 15:00
- 完成日
- 2017/03/07 01:06
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「ところで話は変わるのじゃが、お主、“サーバー”というものは知っておるか?」
ある日のソサエティ本部でナディアはモニター越しに映るトマーゾに向けてそう話しかけた。
「サーバーというのはサービスを提供するコンピューターの事で、そもそもコンピューターというのは……」
「あー、そういうことじゃ無いのじゃ。ルビーが『エバーグリーンのサーバーを復旧させて欲しい』と言っておっての」
「私の存在意義はシステムコントロールのための人間型インターフェースです」
ルビー。それは大渓谷遺跡で発見されたオートマトンの少女の名であった。
「この上に何があるのか……なにか不思議な感覚がします。これが『ワクワクする』ということなのでしょうか」
ハンター達は彼女と交流し、時には共にピースホライズンを歩き、時には大渓谷内を共に探検した。そうやって親交を深め、少女は人類にとって有効的な存在となった。
「楽しい、怖い、面白い、悲しい……そういった感情を学んだあなただからこそ、我にはやはり必要なのだ」
「攻勢防衛モードに移行します。人間を含む全ての生命を殲滅します」
だが、黙示騎士ラプラスによって思考システムへの干渉を受け敵対する。
「ラプラスさん。もう、あなたの好きにはさせません。私は理解しています。あなたは倒さねばならない障害だと」
しかしハンター達により正気に戻った彼女は、黙示騎士達と共に戦った。
「心配をかけてごめんなさい。でも、私の損壊は“この世界の技術”では修復不可能です」
その代償は機能停止という完全な死につながるダメージだった。
「おやすみなさい。また会える日を楽しみにしています」
そこで少女は完全な死を迎える前に、遺跡内の一室でスリープモードへの移行、つまり眠ることを選択した。そんなルビーが眠る前にハンター達に託した願い。それが
「……サーバーを復旧させていただけますでしょうか。そこには私が思い出せない記憶も多く残されているはずです」
エバーグリーンの“サーバー”の復旧であった。
「そっちか。それはじゃな、神霊樹の一種、と言うのがいいかの」
「なんじゃ、単なる言い方の違いか」
「いや、少し違うな」
そしてトマーゾは“サーバー”についての解説を始める。
「……つまりは、“サーバー”というのはオートマトンが通信できるようにパーツをくっつけて調整した神霊樹、ということかの?」
「うむ、まあその理解でいいじゃろう」
「ならば早速偵察じゃな! トマーゾ、その“サーバー”はどこにあるのじゃ?」
「……サーバーそのものは各地にあるものじゃが、恐らくルビーが言っておったサーバーはセントラルにあるサーバーのことじゃろう」
「セントラル?」
セントラルと言うのはかつてエバーグリーンに存在した都市であり、オートマトンを集中的に製造、管理、そして修理する役目を担っていたらしい。言うならば全てのオートマトンの故郷である。
「一応アドレスは渡しておくが、正直セントラルに向かうのは勧められん。あそこにはオートマトン、自動兵器が大量に存在しておった。全てとは言わんが、歪虚化したそれも恐らく大量に存在するじゃろうな」
こうしてこの日の定期通信は終わった。
●
「それで総長、その……セントラルへの偵察は……」
「勿論するに決まっとるじゃろう! 確かに危険かもしれんが、セントラルを復旧できればこちらに大きく有利になるじゃろうしな」
ナディアには一つの算段があった。セントラルはオートマトンを集中管理していた都市である。だとすればそこにある技術はエバーグリーンの中でも特別高い物であると考えられる。もしセントラルを人類側の手に取り戻せば、エバーグリーンにおける人類側の拠点にすることも可能かもしれない。
こうしてエバーグリーンのセントラルへの偵察依頼がハンター達に提示されたのであった。
●
そこにあったのは途中から二本の塔に別れそびえ立つ、音叉を思わせる形の超高層ビルの残骸だった。その周囲を自動兵器達が歩いている。だがその動きは人を模して作られた自動兵器とは思えぬほど、奇怪なものであった。
「彼らはあちらこちらを訪れているが、この場所にはまだ来ていぬようだな。しかしここに来るのも時間の問題か」
超高層ビルを中心に作られたその都市、セントラルを上空から眺める二つの影があった。ラプラスとマクスウェル――黙示騎士の二人である。
『それがどうしたと言うのだ。オレには幾らこの世界を探しても、アイツらに意味のあるものが見つかるとは思えんがな』
「ああ、確かにあなたの言うとおりだ。言うとおりだが……もしかすると彼らはオートマトン技術の復活を考えているのかもしれん」
『ハッ、ラプラス、お前らしくも無いな。オートマトンの復活はアイツらには無理だ。セントラルに誰が居るのか忘れたか?」
「……“カスケード”か」
黙示騎士達は一つの歪虚の名を出す。
『“カスケード”は決して倒せん。アイツらにも、オレにもな』
マクスウェルのその言葉に、ラプラスは思案していた。
「そうだが……少し気になるところだ。我もここは一つ動かせてもらおう」
「ところで話は変わるのじゃが、お主、“サーバー”というものは知っておるか?」
ある日のソサエティ本部でナディアはモニター越しに映るトマーゾに向けてそう話しかけた。
「サーバーというのはサービスを提供するコンピューターの事で、そもそもコンピューターというのは……」
「あー、そういうことじゃ無いのじゃ。ルビーが『エバーグリーンのサーバーを復旧させて欲しい』と言っておっての」
「私の存在意義はシステムコントロールのための人間型インターフェースです」
ルビー。それは大渓谷遺跡で発見されたオートマトンの少女の名であった。
「この上に何があるのか……なにか不思議な感覚がします。これが『ワクワクする』ということなのでしょうか」
ハンター達は彼女と交流し、時には共にピースホライズンを歩き、時には大渓谷内を共に探検した。そうやって親交を深め、少女は人類にとって有効的な存在となった。
「楽しい、怖い、面白い、悲しい……そういった感情を学んだあなただからこそ、我にはやはり必要なのだ」
「攻勢防衛モードに移行します。人間を含む全ての生命を殲滅します」
だが、黙示騎士ラプラスによって思考システムへの干渉を受け敵対する。
「ラプラスさん。もう、あなたの好きにはさせません。私は理解しています。あなたは倒さねばならない障害だと」
しかしハンター達により正気に戻った彼女は、黙示騎士達と共に戦った。
「心配をかけてごめんなさい。でも、私の損壊は“この世界の技術”では修復不可能です」
その代償は機能停止という完全な死につながるダメージだった。
「おやすみなさい。また会える日を楽しみにしています」
そこで少女は完全な死を迎える前に、遺跡内の一室でスリープモードへの移行、つまり眠ることを選択した。そんなルビーが眠る前にハンター達に託した願い。それが
「……サーバーを復旧させていただけますでしょうか。そこには私が思い出せない記憶も多く残されているはずです」
エバーグリーンの“サーバー”の復旧であった。
「そっちか。それはじゃな、神霊樹の一種、と言うのがいいかの」
「なんじゃ、単なる言い方の違いか」
「いや、少し違うな」
そしてトマーゾは“サーバー”についての解説を始める。
「……つまりは、“サーバー”というのはオートマトンが通信できるようにパーツをくっつけて調整した神霊樹、ということかの?」
「うむ、まあその理解でいいじゃろう」
「ならば早速偵察じゃな! トマーゾ、その“サーバー”はどこにあるのじゃ?」
「……サーバーそのものは各地にあるものじゃが、恐らくルビーが言っておったサーバーはセントラルにあるサーバーのことじゃろう」
「セントラル?」
セントラルと言うのはかつてエバーグリーンに存在した都市であり、オートマトンを集中的に製造、管理、そして修理する役目を担っていたらしい。言うならば全てのオートマトンの故郷である。
「一応アドレスは渡しておくが、正直セントラルに向かうのは勧められん。あそこにはオートマトン、自動兵器が大量に存在しておった。全てとは言わんが、歪虚化したそれも恐らく大量に存在するじゃろうな」
こうしてこの日の定期通信は終わった。
●
「それで総長、その……セントラルへの偵察は……」
「勿論するに決まっとるじゃろう! 確かに危険かもしれんが、セントラルを復旧できればこちらに大きく有利になるじゃろうしな」
ナディアには一つの算段があった。セントラルはオートマトンを集中管理していた都市である。だとすればそこにある技術はエバーグリーンの中でも特別高い物であると考えられる。もしセントラルを人類側の手に取り戻せば、エバーグリーンにおける人類側の拠点にすることも可能かもしれない。
こうしてエバーグリーンのセントラルへの偵察依頼がハンター達に提示されたのであった。
●
そこにあったのは途中から二本の塔に別れそびえ立つ、音叉を思わせる形の超高層ビルの残骸だった。その周囲を自動兵器達が歩いている。だがその動きは人を模して作られた自動兵器とは思えぬほど、奇怪なものであった。
「彼らはあちらこちらを訪れているが、この場所にはまだ来ていぬようだな。しかしここに来るのも時間の問題か」
超高層ビルを中心に作られたその都市、セントラルを上空から眺める二つの影があった。ラプラスとマクスウェル――黙示騎士の二人である。
『それがどうしたと言うのだ。オレには幾らこの世界を探しても、アイツらに意味のあるものが見つかるとは思えんがな』
「ああ、確かにあなたの言うとおりだ。言うとおりだが……もしかすると彼らはオートマトン技術の復活を考えているのかもしれん」
『ハッ、ラプラス、お前らしくも無いな。オートマトンの復活はアイツらには無理だ。セントラルに誰が居るのか忘れたか?」
「……“カスケード”か」
黙示騎士達は一つの歪虚の名を出す。
『“カスケード”は決して倒せん。アイツらにも、オレにもな』
マクスウェルのその言葉に、ラプラスは思案していた。
「そうだが……少し気になるところだ。我もここは一つ動かせてもらおう」
リプレイ本文
●
「ここが異世界ですか。リアルブルーとはだいぶと違いますね」
そこに広がっているのはただ砂だけだった。そんな生きている者の居る場所ではないと思わせるここに、ハンター達の目的地はあった。
「あの2本に別れてるビルが中心みたいね」
アシェ-ル(ka2983)が感想を漏らす中、天王寺茜(ka4080)が指を指す。一面に広がる砂の中に忽然とそびえ立つ二股に別れた建造物。それは技術の粋の結晶のようにも見え、時には神秘的な意味を持つ建物にも見えた。
「ふぅ……あれがセントラルか……何か良い情報が見つかればいいが……」
その頃、キャリコ・ビューイ(ka5044)が軍用双眼鏡で目的地の様子を眺めていた。見た物をつぶさに紙に書き止めていく。建物に辿り着くための道を探る。
しかし彼の目に映るのはその周囲を歩くおびただしい数の自動兵器と、あちこちが陥没した地面だった。軽やかに飛び跳ねて進む自動兵器ならともかく、ハンター達がこれを通って中に入るのは不可能に思えた。
「ルビーと皆のためにも、このチャンスはゼッテー無駄に出来ねぇ! 必ずサーバーに繋がる何かを掴ンで帰っぞ!」
その隣では大伴 鈴太郎(ka6016)が同じように双眼鏡を覗き込んでいた。侵入ルートを目を皿のようにして探し回る。その間にも時間は刻一刻と過ぎていく。彼らは一定時間後に自動的にクリムゾンウェストに帰還するように設定されている。調査のために与えられた時間はあまりに少ない。焦りの色が浮かぶ。
「あれが此処で、これがこうだとすると……」
そんな中キャリコは集めた情報を元に考察していた。地面に陥没が見られるということは、その下に空間があったということだ。ならば。彼は鈴太郎に話しかける。
そんな時、時音 ざくろ(ka1250)も同じように中心部へと行くルートを探していた。しかしその目に映る荒廃しきった世界を見て、彼はある言葉を思い出していた。
『ただ、これだけはわかってください。人々は滅びるためにそうしたのでは無いということを。皆が幸せを願って、そうしたのだということを』
それはルビーが残した言葉だった。だがその結果がどうなったのか。否応なく心に突き刺さる。
「人々は幸せを願っていたはずなのに……これからざくろ、この世界で何が出来るのかな?」
彼はそう自問自答する。ただ、一つだけわかっていることがある。この世界をこの姿へと替えたのは歪虚だ。それならば。
「拠点のためもあるけど、ルビーの故郷なら取り戻してあげたいな」
茜の言うとおりだ。どこまで戻せるかはわからない。それでもそう思っていた。
「そういえばルビーさんって何者なんだろう」
そんな時だった。アシェールはふと思った疑問を口に出す。彼女はピースホライズンで何度かルビーと会っていたが、ルビーが一体何者なのか、それにまだ気づいていなかった。
「え、知らないの?」
「彼女はオートマトン、自動兵器のうち特に高位の特別な機体といったところかな」
「またまた、そんな冗談信じませんよ」
彼女のその反応も最もだった。ルビーは見た目は限りなく人に近く、見せる反応も人間とほぼ同じだった。これから行うエバーグリーンへの探訪はルビーを復活させる一手であると同時に、オートマトンが何者なのかを知る事でもあった。
●
歩みを進める中、央崎 遥華(ka5644)は外壁を魔導カメラで写真に収めていた。壁は傷んでいるが、元の姿を想像させる。
そして彼女は気づいた。これぐらいの大きさの建物なら本来ついているであろうもの、エネルギーや排出物をやりとりするためのパイプらしきものが見当たらないことに。それはつまりセントラルはエネルギーの供給に関して自己完結していたということだ。そしてそれはこの建物の中に神霊樹が存在することを意味していた。
そこからもう少し近づいた所で、カール・フォルシアン(ka3702)は上を見上げた。ここまで近づいたらもっと詳しい情報を知れるかもしれない。
カールが脚に力を込めると一瞬彼の体が沈み込み、次の瞬間空高く舞った。ブーツからマテリアルが吹き出し彼の体を押し上げる。その青く輝くマテリアルはまるで鳥の羽のように見えた。
跳躍の頂点に来た所で双眼鏡を覗き込む。この高さなら全景がよく見える。そして目当ての場所であろう、黒い点も見えた。着地したカールは自分が見た情報を手早く仲間達に伝えた。
その情報を聞いて鈴太郎は再び写真を撮る。何枚も出来た写真の裏に必要な情報を入れていく。
「『サーバー』。詰まる所建物全体が大きな機械って事なんだろう?」
そんな時、岩井崎 メル(ka0520)が言葉を掛けた。
「よくわかンねぇけど、多分そういうことだと思うぜ」
「だからエネルギーのやり取りをしている場所があると思ったんだけど、どうもあの建物の中で全部完結しているみたい」
鈴太郎の答えに遥華は自分の気づいたことを付け加える。
「電線の流れとかで手がかりを探すのは困難なようだ。ただ、地下通路はあるようだな」
「だから入り口を探してンだけどょ……」
キャリコが考えを話し、鈴太郎はそう言いながら写真を見せる。そこには地下への入口だったらしきものが写っていた。入り口は崩れ、砂に埋れていた。
「中々難しいね。でも必ず入口はあるはずだ。そうでないとこの膨大な数の自動兵器がどこから来たのか説明が付かない」
「そうだな! よし、もう一回……あっ!」
再び双眼鏡を覗いた鈴太郎はすかさず写真を撮る。程なくして出てきた印画紙には奇跡的にまだ崩壊していない入り口の姿が写っていた。
鈴太郎はその写真の裏に「入口」と書き込み、そこにメルはアドレスを書き加えた。
あとは行けるところまで行く。アシェールは道のりにありったけの呪符を貼り付けて目印としながらあちこちを写真に撮っていた。転移可能時間はもうすぐ終わる。今回でセントラル内部まではたどり着けない。しかし次にここへ来た者が一直線に向かえばその目的は叶うだろう。そのために彼女は行程を記録していた。
「ちょっとした観光気分ですね」
機嫌よくそんなことを言うアシェール。しかし観光気分では済まされない危険はすぐそこに迫っていた。
●
それは突然のことだった。入口を目の前にした一行に一瞬影がかかった。それにざくろが反応した。盾を掲げながら飛び出す。そこに自動兵器の剣となった腕が叩きつけられた。重く鈍い音が響く。
奇襲を弾き返したざくろはメイスを構えて立つ。そこには四体のオート・ソルジャーと呼ばれる自動兵器が居た。そしてその後ろに大きくそびえ立つ影。生物的な曲線で形作られたそれはオート・パラディンと呼ばれていた。
「コイツらの相手はもう慣れてンだ。とっとと片づけ……って、今までとは何か様子が……」
鈴太郎は盾を構えてパラディンの攻撃に備える。戦い慣れた相手のはずだった。しかし、何故か彼女が違和感感じた違和感、それが現実となる。
パラディンはレーザーを放つ。一直線に伸びたかと思ったそれは、途中で急に直角に曲がり、弧を描いてハンター達を貫こうとした。
鈴太郎はとっさに飛び出し皆を守ろうとする。マテリアルを全身に巡らせ防御力を高めたが受け止められるようなものではなかった。焼かれた脚から血が滴る。
自動兵器は続けて動く。レーザーが放たれたかと思えば、ソルジャー達が襲い来る。カールは二つ同時に受け止める。片方は受け止めたが、もう片方の腕が彼の脚を切り裂いていた。しかしこれで狙えるようになった。次の瞬間光の障壁が展開される。その壁はソルジャー達を弾き飛ばす。
「うわっと!」
別の個体は茜を襲っていた。奇妙に体をくねらせ、予想もつかない角度から突き出される腕。それが彼女の急所を抉った。もう立っていられない、はずだった。
「あ、危な……!」
しかし彼女は立っていた。傷は深い。だが彼女のことを思う仲間達の想いが彼女をここに立たせていた。そして同じ轍は二度踏まない。盾を高速で動かしソルジャーの次の攻撃に備える。
間合いを離したソルジャー達は再び奇妙に体を動かしながらこちらへと近づいてくる。その生理的嫌悪感を催す動きはたちの悪い冗談の様に思えた。
「誰かこれを仕組んでる奴が、必ず居る」
ざくろは盾の隙間から、なぜこの自動兵器がこうなったのか、少しでもヒントを探ろうとしていた。
そしてもう一人、メルが自動兵器の動きを観察していた。その動きはこちらの予想を裏切るようなものだった。自分の心を見透かされたかのような気持ち悪さがこみ上げる。
そんな彼女の思考を遮るようにパラディンは再びレーザーを発射しようとする。
「異世界とはいえ、マテリアルを使う事に変わりはないはずです!」
だがその時、アシェールが勝負を賭けた。レーザーの充填に合わせて術式を組み上げる。彼女の周囲に幾つもの桃色の魔法陣が開いては消える。そしてレーザーが発射されるその刹那、彼女は打ち合わせる様に術式を発動させた。それで発射されるはずのレーザーは掻き消えた。見事な魔術だった。
その隙を鈴太郎は逃さない。力強く踏み込み、砂埃を巻き上げながら一気に近づく。そしてその勢いのままパラディンの脚部に自分の脚を掛けると、一気に投げ倒した。力点とタイミングを掴めば自分より遥かに大きい相手でも投げ倒せる。
そこにメルが“吹き飛ばされてきた”。誰かに攻撃を食らったわけでない。彼女が自らの意志で行ったことだ。マテリアルを圧縮、爆発させその反動で一気に移動する。そして勢いのまま手に光の剣を出現させると、それでパラディンの機体を削り取る。
さらに二人の間をすり抜けてキラキラと煌めく光の筋が走る。その先には、アシェールが産み出した桃色の氷の槍があった。その距離を一瞬で走り機体に突き刺さり、刺さった地点から機体を凍りつかせていった。
●
ソルジャー達は時に集まり時に広がりこちらへ向かってくる。真っ直ぐ来るかと思えば急に横に展開し、体を屈め、飛び上がり、ことごとく予想の裏をかく。
だが、そんなソルジャー達の周囲を突如として吹雪が覆った。冷気の嵐はみるみるうちにソルジャー達を凍りつかせていく。
「“雷影の術士”の通り名もあるってこと、忘れさせないよっ!」
遥華が杖を構えそう叫ぶ。彼女の吹雪はソルジャー達の動きを鈍らせ、一直線に並べていた。そこで雷鳴がとどろき、最高速で走った電撃が一瞬で四体を貫く。
キャリコの腹部は朱に染まっていた。ソルジャーの一撃が鋭く急所を抉っていた。しかし彼は闘志を衰えさせること無く、敵の動きをじっくり見極める。そして。
「邪魔は、させない」
天高く跳んだソルジャーのその動きを見切り、両手の拳銃を同時に発射する。一発がソルジャーに迫る。しかしそれを敵は空中で身を捩らせてかわす。だがその時、横に撃ったもう一発の弾丸が残骸に反射してソルジャーの肩を抉った。
「静かに眠れ……」
そしてキャリコは両手の拳銃を全て空中で舞うソルジャーに向け引き金を連続で引き続けた。小気味よいリズムと共に発射された弾丸の雨が全てソルジャーを貫き、そして敵は沈黙した。
貫かれた敵の残骸が地面に落ちた瞬間その上を業火が通っていった。それはカールが放った炎だった。
「リアルブルーから得た力、行くわよ!」
「後ろには行かせない……貫け光の矢、デルタレイ!」
次の瞬間、茜とざくろの二人が動く。二人の前に光の三角形が出現し、その頂点から放たれた三本づつの光線が同時に炎に焼かれたソルジャー達を貫いて、それで敵は動かなくなった。
パラディンは光の剣を展開し、薙ぎ払う。しかしそこにカールが飛び出してきた。ソルジャーを片付け終わったのを確認した彼がこちらに周り、盾で敵の攻撃を受け止める。そして再びの連携攻撃、鈴太郎が一撃を加え、そこにメルが機動剣ごと体当りするように攻撃を加え、これで敵襲が収まった。
●
戦いは終わった。しかし一体この自動兵器が何者だったのか。カールは一つ手に取り解析を始める。
「この残骸で、エクスシアの新しいパーツが作れるかもしれませんね」
その横でアシェールは残骸をありったけ持ち帰ろうとしていた。集めた物をレジャーシートで包んで積み込んでいく。
「これじゃ、まるで、野盗みたいですね」
そんな時、鈴太郎が突然声を上げる。
「くっ、何でテメェがココにいやがる!」
「ふむ、随分嫌われたものだな」
それは黙示騎士の一人、ラプラスだった。
「ざくろ達は負けない、必ずこの世界と技術の秘密を解き明かして見せる!」
「ああ、コッチはテメェに構ってる暇ぁねぇンだよ! そのツラまたブン殴られたくなきゃ……あ! さっきの妙な自動兵器はテメェの仕業じゃねぇだろな!?」
臨戦態勢を二人が取ったところで、茜が言葉を続けた。
「貴方が、ここを守っているの?」
「そうだね、彼らをけしかけたのは君かい?」
メルが重ねた質問にラプラスが口を開く、その前にカールが答えた。
「『彼ら』を仕掛けたのは貴女ではないですよね。プログラミングされたとは思えないような動き。ここの管理システムがどうなっているか貴女はご存知なんですか?」
「お前達、黙示騎士が此処に居るって事は、此処には何かあるんだな?」
キャリコは警戒を緩めずそう問う。そしてそれに続け遥華が話し始めた。
「私たちはルビーを助けるためにここに来ました」
「ルビー……あの人型インターフェースか」
「ルビーを利用したことは許せないけど、きっとこれから、お互いに失って、失わせる戦いになるから仕返しはしない。だけど、もう二度とルビーにしたようなことはしない方が良い」
茜の言葉にラプラスはこう返した。
「オートマトンは利用されるためにあると思うのだがな」
「なっ?! テメェ……」
怒りを滲ませる鈴太郎を遥華が抑え、言葉を続ける。
「貴方の目的が何であれ、私たちは妨げません。目的を達したら帰ります。ですから……」
「この場所の事は恐らく守護者……トマーゾに教えられているのだろう。あなた達の目的も察しがつく。我はあなた達に伝えることがあって来たのだ」
そしてラプラスはこう続けた。
「自動兵器をあなた達に向わせた者、ここにいるのは“カスケード”だ」
「それを倒せば……」
「我はこれを伝えるために来た。あなた達にカスケードは決して倒せぬ」
「無理なんてことは……」
「いや、無理だ。それを伝えなければフェアでは無いだろう」
ラプラスのその言葉に嘘偽りは無いように思えた。だからこそ、暗澹たる思いに覆われる。
そしてその時設定されたタイムリミットを迎えた。ハンター達がこの世界で最後に聞いたのは、追い打ちを掛けるような黙示騎士の言葉だった。
「あなた達の目的が達せられることも無い。あなた達の行動は無駄に終わる」
「ここが異世界ですか。リアルブルーとはだいぶと違いますね」
そこに広がっているのはただ砂だけだった。そんな生きている者の居る場所ではないと思わせるここに、ハンター達の目的地はあった。
「あの2本に別れてるビルが中心みたいね」
アシェ-ル(ka2983)が感想を漏らす中、天王寺茜(ka4080)が指を指す。一面に広がる砂の中に忽然とそびえ立つ二股に別れた建造物。それは技術の粋の結晶のようにも見え、時には神秘的な意味を持つ建物にも見えた。
「ふぅ……あれがセントラルか……何か良い情報が見つかればいいが……」
その頃、キャリコ・ビューイ(ka5044)が軍用双眼鏡で目的地の様子を眺めていた。見た物をつぶさに紙に書き止めていく。建物に辿り着くための道を探る。
しかし彼の目に映るのはその周囲を歩くおびただしい数の自動兵器と、あちこちが陥没した地面だった。軽やかに飛び跳ねて進む自動兵器ならともかく、ハンター達がこれを通って中に入るのは不可能に思えた。
「ルビーと皆のためにも、このチャンスはゼッテー無駄に出来ねぇ! 必ずサーバーに繋がる何かを掴ンで帰っぞ!」
その隣では大伴 鈴太郎(ka6016)が同じように双眼鏡を覗き込んでいた。侵入ルートを目を皿のようにして探し回る。その間にも時間は刻一刻と過ぎていく。彼らは一定時間後に自動的にクリムゾンウェストに帰還するように設定されている。調査のために与えられた時間はあまりに少ない。焦りの色が浮かぶ。
「あれが此処で、これがこうだとすると……」
そんな中キャリコは集めた情報を元に考察していた。地面に陥没が見られるということは、その下に空間があったということだ。ならば。彼は鈴太郎に話しかける。
そんな時、時音 ざくろ(ka1250)も同じように中心部へと行くルートを探していた。しかしその目に映る荒廃しきった世界を見て、彼はある言葉を思い出していた。
『ただ、これだけはわかってください。人々は滅びるためにそうしたのでは無いということを。皆が幸せを願って、そうしたのだということを』
それはルビーが残した言葉だった。だがその結果がどうなったのか。否応なく心に突き刺さる。
「人々は幸せを願っていたはずなのに……これからざくろ、この世界で何が出来るのかな?」
彼はそう自問自答する。ただ、一つだけわかっていることがある。この世界をこの姿へと替えたのは歪虚だ。それならば。
「拠点のためもあるけど、ルビーの故郷なら取り戻してあげたいな」
茜の言うとおりだ。どこまで戻せるかはわからない。それでもそう思っていた。
「そういえばルビーさんって何者なんだろう」
そんな時だった。アシェールはふと思った疑問を口に出す。彼女はピースホライズンで何度かルビーと会っていたが、ルビーが一体何者なのか、それにまだ気づいていなかった。
「え、知らないの?」
「彼女はオートマトン、自動兵器のうち特に高位の特別な機体といったところかな」
「またまた、そんな冗談信じませんよ」
彼女のその反応も最もだった。ルビーは見た目は限りなく人に近く、見せる反応も人間とほぼ同じだった。これから行うエバーグリーンへの探訪はルビーを復活させる一手であると同時に、オートマトンが何者なのかを知る事でもあった。
●
歩みを進める中、央崎 遥華(ka5644)は外壁を魔導カメラで写真に収めていた。壁は傷んでいるが、元の姿を想像させる。
そして彼女は気づいた。これぐらいの大きさの建物なら本来ついているであろうもの、エネルギーや排出物をやりとりするためのパイプらしきものが見当たらないことに。それはつまりセントラルはエネルギーの供給に関して自己完結していたということだ。そしてそれはこの建物の中に神霊樹が存在することを意味していた。
そこからもう少し近づいた所で、カール・フォルシアン(ka3702)は上を見上げた。ここまで近づいたらもっと詳しい情報を知れるかもしれない。
カールが脚に力を込めると一瞬彼の体が沈み込み、次の瞬間空高く舞った。ブーツからマテリアルが吹き出し彼の体を押し上げる。その青く輝くマテリアルはまるで鳥の羽のように見えた。
跳躍の頂点に来た所で双眼鏡を覗き込む。この高さなら全景がよく見える。そして目当ての場所であろう、黒い点も見えた。着地したカールは自分が見た情報を手早く仲間達に伝えた。
その情報を聞いて鈴太郎は再び写真を撮る。何枚も出来た写真の裏に必要な情報を入れていく。
「『サーバー』。詰まる所建物全体が大きな機械って事なんだろう?」
そんな時、岩井崎 メル(ka0520)が言葉を掛けた。
「よくわかンねぇけど、多分そういうことだと思うぜ」
「だからエネルギーのやり取りをしている場所があると思ったんだけど、どうもあの建物の中で全部完結しているみたい」
鈴太郎の答えに遥華は自分の気づいたことを付け加える。
「電線の流れとかで手がかりを探すのは困難なようだ。ただ、地下通路はあるようだな」
「だから入り口を探してンだけどょ……」
キャリコが考えを話し、鈴太郎はそう言いながら写真を見せる。そこには地下への入口だったらしきものが写っていた。入り口は崩れ、砂に埋れていた。
「中々難しいね。でも必ず入口はあるはずだ。そうでないとこの膨大な数の自動兵器がどこから来たのか説明が付かない」
「そうだな! よし、もう一回……あっ!」
再び双眼鏡を覗いた鈴太郎はすかさず写真を撮る。程なくして出てきた印画紙には奇跡的にまだ崩壊していない入り口の姿が写っていた。
鈴太郎はその写真の裏に「入口」と書き込み、そこにメルはアドレスを書き加えた。
あとは行けるところまで行く。アシェールは道のりにありったけの呪符を貼り付けて目印としながらあちこちを写真に撮っていた。転移可能時間はもうすぐ終わる。今回でセントラル内部まではたどり着けない。しかし次にここへ来た者が一直線に向かえばその目的は叶うだろう。そのために彼女は行程を記録していた。
「ちょっとした観光気分ですね」
機嫌よくそんなことを言うアシェール。しかし観光気分では済まされない危険はすぐそこに迫っていた。
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それは突然のことだった。入口を目の前にした一行に一瞬影がかかった。それにざくろが反応した。盾を掲げながら飛び出す。そこに自動兵器の剣となった腕が叩きつけられた。重く鈍い音が響く。
奇襲を弾き返したざくろはメイスを構えて立つ。そこには四体のオート・ソルジャーと呼ばれる自動兵器が居た。そしてその後ろに大きくそびえ立つ影。生物的な曲線で形作られたそれはオート・パラディンと呼ばれていた。
「コイツらの相手はもう慣れてンだ。とっとと片づけ……って、今までとは何か様子が……」
鈴太郎は盾を構えてパラディンの攻撃に備える。戦い慣れた相手のはずだった。しかし、何故か彼女が違和感感じた違和感、それが現実となる。
パラディンはレーザーを放つ。一直線に伸びたかと思ったそれは、途中で急に直角に曲がり、弧を描いてハンター達を貫こうとした。
鈴太郎はとっさに飛び出し皆を守ろうとする。マテリアルを全身に巡らせ防御力を高めたが受け止められるようなものではなかった。焼かれた脚から血が滴る。
自動兵器は続けて動く。レーザーが放たれたかと思えば、ソルジャー達が襲い来る。カールは二つ同時に受け止める。片方は受け止めたが、もう片方の腕が彼の脚を切り裂いていた。しかしこれで狙えるようになった。次の瞬間光の障壁が展開される。その壁はソルジャー達を弾き飛ばす。
「うわっと!」
別の個体は茜を襲っていた。奇妙に体をくねらせ、予想もつかない角度から突き出される腕。それが彼女の急所を抉った。もう立っていられない、はずだった。
「あ、危な……!」
しかし彼女は立っていた。傷は深い。だが彼女のことを思う仲間達の想いが彼女をここに立たせていた。そして同じ轍は二度踏まない。盾を高速で動かしソルジャーの次の攻撃に備える。
間合いを離したソルジャー達は再び奇妙に体を動かしながらこちらへと近づいてくる。その生理的嫌悪感を催す動きはたちの悪い冗談の様に思えた。
「誰かこれを仕組んでる奴が、必ず居る」
ざくろは盾の隙間から、なぜこの自動兵器がこうなったのか、少しでもヒントを探ろうとしていた。
そしてもう一人、メルが自動兵器の動きを観察していた。その動きはこちらの予想を裏切るようなものだった。自分の心を見透かされたかのような気持ち悪さがこみ上げる。
そんな彼女の思考を遮るようにパラディンは再びレーザーを発射しようとする。
「異世界とはいえ、マテリアルを使う事に変わりはないはずです!」
だがその時、アシェールが勝負を賭けた。レーザーの充填に合わせて術式を組み上げる。彼女の周囲に幾つもの桃色の魔法陣が開いては消える。そしてレーザーが発射されるその刹那、彼女は打ち合わせる様に術式を発動させた。それで発射されるはずのレーザーは掻き消えた。見事な魔術だった。
その隙を鈴太郎は逃さない。力強く踏み込み、砂埃を巻き上げながら一気に近づく。そしてその勢いのままパラディンの脚部に自分の脚を掛けると、一気に投げ倒した。力点とタイミングを掴めば自分より遥かに大きい相手でも投げ倒せる。
そこにメルが“吹き飛ばされてきた”。誰かに攻撃を食らったわけでない。彼女が自らの意志で行ったことだ。マテリアルを圧縮、爆発させその反動で一気に移動する。そして勢いのまま手に光の剣を出現させると、それでパラディンの機体を削り取る。
さらに二人の間をすり抜けてキラキラと煌めく光の筋が走る。その先には、アシェールが産み出した桃色の氷の槍があった。その距離を一瞬で走り機体に突き刺さり、刺さった地点から機体を凍りつかせていった。
●
ソルジャー達は時に集まり時に広がりこちらへ向かってくる。真っ直ぐ来るかと思えば急に横に展開し、体を屈め、飛び上がり、ことごとく予想の裏をかく。
だが、そんなソルジャー達の周囲を突如として吹雪が覆った。冷気の嵐はみるみるうちにソルジャー達を凍りつかせていく。
「“雷影の術士”の通り名もあるってこと、忘れさせないよっ!」
遥華が杖を構えそう叫ぶ。彼女の吹雪はソルジャー達の動きを鈍らせ、一直線に並べていた。そこで雷鳴がとどろき、最高速で走った電撃が一瞬で四体を貫く。
キャリコの腹部は朱に染まっていた。ソルジャーの一撃が鋭く急所を抉っていた。しかし彼は闘志を衰えさせること無く、敵の動きをじっくり見極める。そして。
「邪魔は、させない」
天高く跳んだソルジャーのその動きを見切り、両手の拳銃を同時に発射する。一発がソルジャーに迫る。しかしそれを敵は空中で身を捩らせてかわす。だがその時、横に撃ったもう一発の弾丸が残骸に反射してソルジャーの肩を抉った。
「静かに眠れ……」
そしてキャリコは両手の拳銃を全て空中で舞うソルジャーに向け引き金を連続で引き続けた。小気味よいリズムと共に発射された弾丸の雨が全てソルジャーを貫き、そして敵は沈黙した。
貫かれた敵の残骸が地面に落ちた瞬間その上を業火が通っていった。それはカールが放った炎だった。
「リアルブルーから得た力、行くわよ!」
「後ろには行かせない……貫け光の矢、デルタレイ!」
次の瞬間、茜とざくろの二人が動く。二人の前に光の三角形が出現し、その頂点から放たれた三本づつの光線が同時に炎に焼かれたソルジャー達を貫いて、それで敵は動かなくなった。
パラディンは光の剣を展開し、薙ぎ払う。しかしそこにカールが飛び出してきた。ソルジャーを片付け終わったのを確認した彼がこちらに周り、盾で敵の攻撃を受け止める。そして再びの連携攻撃、鈴太郎が一撃を加え、そこにメルが機動剣ごと体当りするように攻撃を加え、これで敵襲が収まった。
●
戦いは終わった。しかし一体この自動兵器が何者だったのか。カールは一つ手に取り解析を始める。
「この残骸で、エクスシアの新しいパーツが作れるかもしれませんね」
その横でアシェールは残骸をありったけ持ち帰ろうとしていた。集めた物をレジャーシートで包んで積み込んでいく。
「これじゃ、まるで、野盗みたいですね」
そんな時、鈴太郎が突然声を上げる。
「くっ、何でテメェがココにいやがる!」
「ふむ、随分嫌われたものだな」
それは黙示騎士の一人、ラプラスだった。
「ざくろ達は負けない、必ずこの世界と技術の秘密を解き明かして見せる!」
「ああ、コッチはテメェに構ってる暇ぁねぇンだよ! そのツラまたブン殴られたくなきゃ……あ! さっきの妙な自動兵器はテメェの仕業じゃねぇだろな!?」
臨戦態勢を二人が取ったところで、茜が言葉を続けた。
「貴方が、ここを守っているの?」
「そうだね、彼らをけしかけたのは君かい?」
メルが重ねた質問にラプラスが口を開く、その前にカールが答えた。
「『彼ら』を仕掛けたのは貴女ではないですよね。プログラミングされたとは思えないような動き。ここの管理システムがどうなっているか貴女はご存知なんですか?」
「お前達、黙示騎士が此処に居るって事は、此処には何かあるんだな?」
キャリコは警戒を緩めずそう問う。そしてそれに続け遥華が話し始めた。
「私たちはルビーを助けるためにここに来ました」
「ルビー……あの人型インターフェースか」
「ルビーを利用したことは許せないけど、きっとこれから、お互いに失って、失わせる戦いになるから仕返しはしない。だけど、もう二度とルビーにしたようなことはしない方が良い」
茜の言葉にラプラスはこう返した。
「オートマトンは利用されるためにあると思うのだがな」
「なっ?! テメェ……」
怒りを滲ませる鈴太郎を遥華が抑え、言葉を続ける。
「貴方の目的が何であれ、私たちは妨げません。目的を達したら帰ります。ですから……」
「この場所の事は恐らく守護者……トマーゾに教えられているのだろう。あなた達の目的も察しがつく。我はあなた達に伝えることがあって来たのだ」
そしてラプラスはこう続けた。
「自動兵器をあなた達に向わせた者、ここにいるのは“カスケード”だ」
「それを倒せば……」
「我はこれを伝えるために来た。あなた達にカスケードは決して倒せぬ」
「無理なんてことは……」
「いや、無理だ。それを伝えなければフェアでは無いだろう」
ラプラスのその言葉に嘘偽りは無いように思えた。だからこそ、暗澹たる思いに覆われる。
そしてその時設定されたタイムリミットを迎えた。ハンター達がこの世界で最後に聞いたのは、追い打ちを掛けるような黙示騎士の言葉だった。
「あなた達の目的が達せられることも無い。あなた達の行動は無駄に終わる」
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/02/22 10:46:27 |
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相談卓 大伴 鈴太郎(ka6016) 人間(リアルブルー)|22才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2017/02/27 14:31:08 |