• 黒祀

【黒祀】救いの剣となれ

マスター:水流響

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/10/15 22:00
完成日
2014/10/23 19:22

みんなの思い出

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オープニング

●指令
 その村は恐怖と緊張、焦燥に満ちていた。騒々しい蹄の音と、兵士たちの指示の声が、ひっきりなしに響く。
 グリンド村。グラズヘイム王国の西方……リベルタース地方に広がる肥沃な大地を糧に、農業で生計を立ててきた村だ。
 現在、歪虚の活動が活発化し、王国の西端からその勢力を拡大しつつあった。このグリンド村にも、歪虚の手が迫っているのである。山を挟んださらに西方の地域で、交戦状態となり、戦況は膠着しているようだ。
「この村に歪虚が来るのも、時間の問題かもしれませんね……」
 新米聖堂戦士、クリスは西方の山を見上げながら拳を強く握り締める。
「んん、そうだな……」
 緊張に力む彼の横で、支給されたパンを食べながらもぐもぐと返すもう一人の聖堂戦士。
「……ミケ先輩……」
 緊張感の欠片もない姿に、クリスが肩をいからせる。
「早急に、民の避難を終えなければなりません。歪虚との戦闘も近い……そんなゆるゆるで大丈夫なんですか?」
「まあそう怒るなよ。焦ってもしゃーないぜ」
 パンを食べ終え、ミケは腰を上げた。ちょうどそのとき、本陣の方向から声がする。
「クリス・ローレンハイル、ミケ・シュタイナー、隊長がお呼びだ!」
「隊長から……何かあったのでしょうか」
「さあな。行ってみりゃわかるだろ」
 二人はすぐさま、隊長が待つ本陣へと向かった。
 設営された大きなテントの垂れ幕をくぐり、本陣へと入る。隊長は険しい表情を浮かべ、卓上の地図に目線を落としていた。
「来たか。お前たちには、新たな任務に付いてもらう。そのために呼んだのだ」
「新たな任務、ですか」
 緊張した声音で言葉を返すクリスに、隊長は静かに頷く。
「重要な任務だ。村の西方に山があるだろう……その麓に、少数の民が暮らす小さな集落がある」
 ミケがなるほど、と言うように、ぽんとてのひらを拳で叩いた。
「取り残された住民を救助しにいくわけですね。……しかし、護衛が二人だけで大丈夫なのですか? まあこの様子だと、他に割ける人員もいないのでしょうけど」
「さすがに二人は困難であると考え、ハンターズソサエティにも依頼を出した。じき、この村に増援が到着することだろう。お前たちは彼らと合流し、協力して民の救助に向かえ」
 隊長は淡々と任務の詳細を伝える。集落までは、馬で3、4時間程度かかること、より西に近付くことになるので、歪虚勢力の出現にも注意することなど、様々な指示が出る。
「3、4時間といっても、それはスムーズに向かえた場合だ。この近辺は連日の雨で、道がぬかるんでいる……必ず予定通りに行くとは思うな」
 隊長の命令に二人は敬礼をし、本陣から退出する。人命を救う、かつ敵との戦闘も予想される任務に、クリスはゴクリと息を呑んだ。
「……なんだクリス、緊張してるのか?」
「ええ。ここまでの危険が伴う任務は、初めてですので」
 張り詰めた糸のような声音に、ミケが軽い調子でケラケラと笑う。
「なーに、俺が守ってやるよ」
「はあ? なんで僕がミケ先輩に守られないといけないんですか」
 クリスは口を尖らせ、呆れたような視線をミケに向ける。
「はは、冗談だって。てか、先輩に向かって失礼だな」
「先輩が微妙なこと言うからですよ」
 あからさまに溜め息を付くクリスを咎めるわけでもなく、ミケは聳える山へと視線をやった。遙か遠く……曇天の空で滑空する鳥の影を見据え、僅かに瞳を細める。
「……こりゃ、高確率で『当たる』かもしれねぇな」
「何かいいましたか?」
「いや、何でもない。……さて、装備の確認をしておくか。ハンターが来たら、すぐに出発するぞ」

リプレイ本文

●進行
 黒々とした曇天が、街道を重苦しく覆い込む。ハンターたちは聖堂戦士たちと共に、グリンド村を出立した。
 目指すは山の麓にある集落。車輪の回転音と、馬の蹄が泥をはねる音が響く。
「前方、右方向が大きくぬかるんでます」
 アクセル・ランパード(ka0448)は馬車の前を馬で先行し、前方の路面を確認する。イレーヌ(ka1372)はその報告を受け、馬の綱をしっかりと握ったまま魔導短伝話を手に取った。
「馬車側、聞こえるか? 前方、右方向に大きなぬかるみがある」
「前方右方向に、大きなぬかるみだ、注意してくれ」
 連絡を受け、スティリア(ka3277)は淡々と御者に指示を出す。
「今のところ、敵の気配はないようですね」
 馬車に乗り、じっと外の気配に耳を澄ますメトロノーム・ソングライト(ka1267)。悪い路面と湿った空気に僅かに息を付くも、すぐに気持ちを入れ替える。悪天候による悪路とはいえ、空に罪は無いのだ。
「そのようですな。しかし、奇襲される可能性もありましょう……この秋武、常に戦う準備はできているのであります!」
 春夏冬 秋武(ka1481)は拳を強く握り締め、凛と前を見据えた。
 馬車はぬかるみを避けながら、着実に進んでいく。風を切り進む彼らの前に、現状障害はない。
「ここまで静かだと不気味だね……ま、急ごうか。出来るだけ、ね」
 レベッカ・アマデーオ(ka1963)は五感を研ぎ澄まし、周囲の気配を探る。とくに敵の気配と思しきものは、感じられない。
「ああ……嫌な予感がするぜ」
 静けさに呟くミケ。クリスが振り返り、ユルゲンス・クリューガー(ka2335)へと視線を向ける。
「うしろ、とくに異常ありませんか?」
「ああ、現状は何もない。……嵐の前の静けさ、というやつかもしれんな」 
 周辺の様子を見渡し、ユルゲンスはクリスの問いに頷いた。時を止めたように沈む空気の中、ハンターたちは唯一動く存在であるかのように、突き進む。

●集落
 馬車は順調に進み、目的の集落へと到着した。集落は暗く、緊張に満ちているように見える。ハンターたちはすぐに、住民の避難誘導を開始した。
 スティリアは集落の奥から優先して回る。奥まった場所にある家屋には、農具で武装した老人が居座っていた。スティリアは一度外に出で、付近を巡回中のミケを呼びとめる。
「あそこの住民には、聖堂戦士であるおまえが接した方がいい。私は他の家を見てこよう」
「わかった。任せとけ」
 スティリアの言葉に頷き、ミケが家へと足を踏み入れた。
「聖堂戦士団所属、ミケ・シュタイナーと申します」
「なんじゃ、猫みたいな名前しよって」
「ねこ……っ、この際猫でも構いません。じきに歪虚が押し寄せます。すぐに避難を……」
 スティリアは去り際に、老人の様子を確認する。口調は強いが、ミケの姿に老人の態度が軟化していることがわかった。
(……まあ、あの様子であれば問題ないだろう)
 他方、ユルゲンスも馬で集落をまわり、民の誘導に務めていた。
「おばあちゃん、このところ体調が悪くて……」
 咳込む老婆の体を支える娘に、ユルゲンスは落ち着いた声で返す。
「私が馬車まで送っていこう。ご老人、馬には乗れるだろうか?」
「けほっ、はい……ありがとう、ございます」
 ユルゲンスは慎重に、老人を馬の背に乗せた。衝撃が伝わらないよう気を配り、馬を歩かせる。
 集落の入口では、住民を馬車に乗せている最中だ。
「足元に気を付けるのであります! 押さない、駆けない、喋らないであります!」
 迅速な避難のため秋武は、住民に落ち着いた行動を呼びかける。
「これで5人ですね。情報どおりなら、あと5人ほどでしょうか」
 周辺を警戒しつつ、メトロノームは馬車に乗った住民の数を確認する。
「住民は10人で間違いない。怪我人もいないようだな……じきに、連れてくるはずだ」
 メトロノームの言葉に、イレーヌが返す。誘導の過程で情報を得たスティリアからの連絡を、イレーヌは魔導短伝話で受け取っていた。
 住民の避難が進む中、レベッカとアクセルは集落周辺の警戒に集中している。
「レベッカさん、そちらの状況はどうでしょうか?」
 アクセルが、屋根上から集落を見下ろしているレベッカに声をかけた。レベッカはぐるりと全方位を見渡す。少し遠くに、クリスに誘導される住民の姿が見えた。彼女は鼻から空気を吸い込み、息を付く。先ほどから、風が静かだ。
「とくに変化なし。風の一つくらい、吹いてくれるとありがたいんだけどね」
「風、ですか」
「陸の風だから、海ほどじゃないけど……臭いや音を乗せてきてくれるからさ」
 刹那、彼女の望みどおりに風が吹いた。そして、それは望んでいなかったものも運んでくる。
 同時に流れ着く、生臭い血の香りを。

●追走
 西の空に黒い影が飛んだ。同時に迫る多数の気配。それは間違いなく、歪虚の襲撃を意味していた。アクセルはすぐに馬を駆り、馬車がある集落の入口へと戻る。
「西方向から敵の襲撃です! 避難状況はどうですか?」
「あと少しだ!」
 住民を誘導しながら、ミケが叫ぶ。直後、大きな音と共に、家の壁が崩れ落ちた。崩れた壁の向こうで、熊のごとき歪虚が雄叫びを上げる。
「住民はそれで最後だな……、!」
 イレーヌは視界にあるものを捉え、駆けた。崩れた家屋に縄が引っ掛かり、犬が逃げられないでいる。元々、縄に繋がれ飼われていたのだろう。そして、その縄を解こうとする少女。
「まったく、無茶をする」
 歪虚が少女へと目を向ける前に、イレーヌは歪虚へと接近する。腰まで伸びた銀の髪が、激しく風に靡いた。すらりと伸びた腕でロザリオを掲げ、歪虚に向けて眩い光条を放つ。その隙に少女は縄を解き、犬と共に馬車へと走っていった。
 その少女を狙い、狼型の歪虚が飛び掛かった。鋭い爪を光らせる歪虚と少女の間に、アクセルが立ち塞がる。
「爪一本、触れさせませんよ」
 オーラの翼が背から花開くように広がり、淀んだ空気の中で煌いた。一条の光が、まっすぐに歪虚へと撃ち込まれる。歪虚は地面に叩きつけられながらも、凶暴な唸り声を上げた。
「ちっ……数が多すぎる」
 退路を塞がれ応戦するミケに、さらに複数の歪虚が喰い付こうとする。だが、歪虚の牙は、風のように割り込んだスティリアの刃によって弾かれた。
「今のうちに、住民を馬車へ」
 歪虚を見据え、スティリアはあくまで冷静に告げる。その瞳には、確かな闘志が宿っていた。ミケは頷き、住民を馬車へと誘導する。
「この辺りまで流れてくる歪虚がいるとはな……だが、この先は通さん」
 ユルゲンスは力強く地面に降り立った。道を塞ぐ壁のごとき姿に、歪虚は唸りながら迫る。
「小細工はいらん、一撃で屠ってくれる」
 守りを捨て、すべてを攻撃に注ぐ。歪虚が目前に迫った瞬間、ユルゲンスは渾身の一撃を振り下ろした。上から真っ直ぐに振り下ろされる剣は、強大な破壊力をもって歪虚の頭部を砕く。
 別の方向から、鳥型の歪虚が襲い来る。ユルゲンスの頭部に取り付かんと降下した刹那、歪虚の胴体を黒い星が切り裂いた。
「リアルブルーの投げナイフらしいね、これ。面白い形してるよねー。……空からも来るってなら、相手になるよっ!」
 レベッカの八握剣は宙を飛び交い、歪虚の進行を妨害する。翼を裂き地に落とすことで機動力を削ぎ、確実に止めをさしていく。
「住民の避難が完了しました! この場を離れましょう」
 馬車に近付く歪虚を斬り払いながら、クリスが声を上げた。ハンターたちは歪虚を追い払い、時には撃退しつつ撤収準備を整える。バシンと手綱が大きくしなり、馬車が急激に動き出した。
 追いすがる歪虚たちを見据えるメトロノームの髪が、宝石のように淡く透き通り、震える。
「どうか、その瞳を閉じて……眠りについてください」
 淡い音色を響かせると同時、青白い霧が馬車の外へと広がっていく。それは歪虚たちを眠りへと誘った。歪虚たちは足を止め、その場に崩れ落ちていく。
 後方からの追走は減少した。しかし、先回りしていたのか。街道の脇から別の歪虚が現れる。馬車の斜め前方から、歪虚は巨大な腕を振りおろそうとする。その腕を前に、筋骨隆々の武人と化した秋武がしっかりと身構えた。
「秋武の魔導大回転鋸が火花散らすであります! 物理的に!」
 握り締めるリボルビングソーが、激しい唸り声を上げる。
「強制的に、おやすみなさいであります!」
 成人男性ドワーフ並の巨腕を振るうと同時、高速回転する刃で歪虚の腕を斬り捌いた。激痛に倒れ伏す歪虚の横を、馬車は通過する。直後、複数の影が空から飛来した。
「上だ!」
 歪虚が馬車の天井を突き、穴を空けようとしている。イレーヌは鋭く告げ、馬車の上部に取り付く歪虚に光の奔流を撃ち込んだ。光は歪虚の体を、容赦ない衝撃で貫く。
 敵は上からだけではない。横を並走し迫る大型の歪虚に、レベッカは狙いを定めた。
「もう、しつこいなっ! これでも受けてみる?」
 レベッカは馬上でデバイスに指を走らせた。数値が入力されると同時、マテリアルが光のエネルギーに変換され放たれる。光線に横腹を深く抉り取られ、歪虚は転倒した。
 イレーヌはサイドから迫る敵の脚部に狙いを定め、慎重に攻撃を当てていく。激しい光条は歪虚を的確に撃ち抜き、その動きを封じた。しかし、次から次へと別の歪虚が飛び出してくる。
「運転手、ぬかるみの位置は覚えているか?」
 複数の歪虚に対処しながらの報告は困難を極める。イレーヌは攻めの手を緩めず、御者に問いかけた。
「大丈夫だ! 雨も降ってねぇし行きと同じ道だ! 馬が混乱しなきゃ、ぬかるみなんざ避けて進んでやる、敵をどうにかしてくれ!」
 行きの的確な指示から、ぬかるみの位置はほぼ把握しているらしい。馬を操る御者を狙い、歪虚が飛び掛かろうとする。
 刹那、スティリアの手裏剣が投げ放たれ、歪虚の頭部に突き刺さった。
「わかった。この刃に誓い、敵を滅ぼそう」
 続けざまに襲い来る歪虚に狙いを定めるスティリア。冷たく研ぎ澄まされた刃は、歪虚の急所を確実に斬り刻んだ。
 攻撃を逃れた歪虚たちが、馬車にしがみ付き侵入しようとする。住民の悲鳴が上がる中、メトロノームは精神を集中させた。
「この場所には、決して踏み入れさせません」
 静かな旋律に、炎が爆ぜる音が混ざる。炎の音と、彼女の音が共鳴する。メトロノームの手のひらから炎の矢が生成され、迷いなく歪虚へと打ち放たれた。歪虚は熱に悲鳴を上げ、森の中へと転がり戻る。
 唐突に、馬車が大きく揺れた。見れば馬の頭に歪虚が取り付き、突いているではないか。
「なんと卑劣な……これ以上、邪魔はさせないであります!」
 歪虚目がけ、秋武は跳んだ。馬の背にがしっと跳び付き、歪虚を拳で激しく殴打する。
「援護します。火の精霊よ、わたしの歌に応えてください……」
 メトロノームの旋律に導かれた精霊の力が、秋武の武器に炎を宿す。炎を纏った秋武の斬撃が、歪虚をバッサリと斬り落とした。地に落ちた歪虚の先、左の林から熊型の歪虚が歩み出る。
 先行していたアクセルが、速度を上げた。進路を妨害する他の歪虚たちを、斬り払い進む。
「邪魔です……草むらの中で、寝ていてください」
 巨大な歪虚の目を狙い、アクセルは馬上から光線を放った。聖なる力に満たされた光は炸裂し、歪虚の眼球を潰す。痛みに倒れる歪虚のギリギリ横を、馬車は通り過ぎた。
「だいぶ、数は減りまし……ッ!?」
 突然だった。馬車横を並走するクリスに、茂みから歪虚が二匹、同時に飛び掛かる。一匹は馬の首に鋭く喰い付き、もう一匹はクリスへ。とっさに剣を構えるも、クリスは地面に転落し、馬も首を噛み切られ転倒した。
「クリス!」
 ミケが即座に駆け付け、クリスを襲う歪虚を斬り飛ばす。剣を構えていたため、クリスは無傷だ。刹那、ミケの背に馬を攻撃した歪虚が襲い来る。判断を誤った。先にもう一方を、仕留めるべきだったのだ。その間、クリスは剣で防戦することができただろう。
 ミケは攻撃を受ける未来を覚悟する……しかし、その未来は、後方から疾走するユルゲンスの剣によって砕かれた。肉を裂く音と、獣の悲鳴が響き渡る。
「……!」
 ミケがハッとしたように、目前のユルゲンスを見上げた。
「仲間が窮地に瀕したとしても、常に冷静でいなければならぬ」
 剣から歪虚の血を滴らせ、ユルゲンスは静かな声で告げる。その言葉に、ミケは唇を噛み締めた。
「……すまねぇ」
「二人とも、お怪我はありませんか? クリスさんは後ろに」
 アクセルが駆け付け、自分の後ろに乗るよう指示する。クリスの馬は絶命していた。馬の無残な姿にやりきれない思いを抱きつつ、アクセルはクリスに手を伸ばす。
「すみません、よろしくお願いします」
 クリスは申し訳なさそうに返し、アクセルの手を取った。この後、馬車はかろうじて歪虚の襲撃を振り切ったのだった。

●帰還
 山を下り街道を進むうち、グリンド村が見えてくる。歪虚の脅威から逃れたハンターたちは、緊張を解かないまでも落ち着いた面持ちで、村を見据えた。
「ホーナルー、ホーナルー、来ての楽しみ不思議の店~♪」
「その歌は何の歌、でしょうか……」
 秋武の歌に、メトロノームは首を傾げつつ問う。
「ホーナルキャラバンのCMソングであります!」
 メトロノームの問いに、秋武は声高らかに答えた。秋武が歌う横で、スティリアは静止したまま、住民の様子を眺める。疲れてはいるが、どこかほっとしている住民たち。
 無事に助けられて良かったと、スティリアは心の内で呟くのだった。
「もうすぐグリンド村に到着するよ!」
 入口が間近に迫り、レベッカは明るい声音で知らせる。住民たちの顔に、安堵の笑みが零れた。
 グリンド村に無事到着し、住民を引き渡したハンターたちは、ここでようやっと肩の力を抜いた。
「負傷者なし、任務は成功だな。しかし、じきにここにも歪虚の手が伸びるだろう」
 イレーヌの言葉にクリスは頷きつつ、礼の言葉を告げる。
「貴方たちがいなければ、この任務を成功させることは難しかったと思います」
「無事送り届けることができ、何よりですよ」
 穏やかに微笑みながら、アクセルが言葉を返す。
「また、機会があれば、ご一緒したいです。今度は足手まといにならないように……。ね、先輩も……って、あれ、先輩?」
 ミケの姿がない。スティリアがふと思い出したように告げる。
「ミケならついさっき、本陣の方に歩いていったぞ」
「黙って行くなんて、らしくないな……というか、先輩が行ってるなら僕も行かないと! それでは、失礼します」
 クリスは一礼し、本陣へと戻っていく。
「……若いとは、こういうことなのかもしれんな」
 遠ざかるクリスの背を眺めつつ、ユルゲンスはどこか感慨深げに呟くのだった。

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重体一覧

参加者一覧

  • 救世の貴公子
    アクセル・ランパード(ka0448
    人間(紅)|18才|男性|聖導士
  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士

  • 春夏冬 秋武(ka1481
    ドワーフ|16才|女性|闘狩人
  • 嵐影海光
    レベッカ・アマデーオ(ka1963
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • ケンプファー
    ユルゲンス・クリューガー(ka2335
    人間(紅)|40才|男性|闘狩人
  • 氷情炎舞
    スティリア(ka3277
    エルフ|18才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
レベッカ・アマデーオ(ka1963
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/10/15 21:06:29
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/12 00:11:42