• 幻洞

【幻洞】逆襲のノッポモグラだぜ!

マスター:鷹羽柊架

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/02/23 12:00
完成日
2017/03/01 20:16

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●新たなる手
「まったく。お前達は、本当にだらしないねぇ」
 トーチカ・J・ラロッカは部下のモグラコンビに説教中だった。
 ドワーフの第二採掘場へ突貫したまでは良かったが、ハンターの前にトーチカ一味は敗走。デブモグラのセルトポも、ノッポモグラのモルッキーも痛い目を見て逃げ帰ってきたのだ。
「もうそんな事言ったって、相手も結構やりますのよ」
「でも、おいは知ってる。姐さんもやられて逃げ帰ってきたでおます」
 セルトポの一言でトーチカは、一瞬固まる。
 実は当のトーチカもハンターの前に手酷くやられて撤退していたのだ。
 つまり、自分の事を棚に上げて盛大にモグラコンビを説教していた事になる。
「うるさいうるさい、うるさーーいっ! あたしの事はどうだっていいのよ! それよりモルッキー、どうするのよ?」
「そーですなー。敵もかなり強いですからねぇ。こうなったら思い切って今月のビックリドッキリプランと言っちゃいましょう」
 モルッキーは腕を組みながら、不敵な笑みを浮かべる。
 その横で首を捻るセルトポ。
「プラン? なんでおます? プリンの仲間でおますか?」
「プランよ、プラン。計画って意味よ。……で、どーするのよ。モルッキー」
 トーチカはワクワクしながらモルッキーを見つめている。
 三馬鹿から炸裂する作戦なのだからロクでも無い代物なのだが……。
「全国の女子中学生の皆さーん。注目っ! なんと、我が一味の切り札『ロックワン』を先行させて一気に敵陣を蹂躙しちゃいまーす!」
「おおっ! それならあたし達も余裕で勝てそうじゃないのさ!」
 モルッキーの案にトーチカは喜んだ。
 トーチカが使役している大型グランドワーム『ロックワン』。
 あの巨体が作った地底路を通ってトーチカ達はやってきたのだが、ついにロックワンを前面に押し出す案をとってきたという訳だ。
「あれ? でも、ロックワンっておい達が遺跡を……」
「こら、セルトポ! 誰が聞いているか分からないんだから、余計な事を言うんじゃないよ! この前も言ったじゃないか。忘れたのかい?」
 トーチカは慌ててセルトポの口を塞ぐ。
 三馬鹿は三馬鹿なりに何かしら意図を動いているようなのだが……。
「敵に勝つにはこれしかりませんわね。どうされます、姐さん?」
 モルッキーは、トーチカに視線を移す。
 それを受けてトーチカは力強く立ち上がる。
「決まってるじゃないのさ。すぐにロックワンを呼び寄せて進軍だよ。お前達っ、遅れるんじゃないよ!」
「あいあいさー!」
 モグラコンビは、横に並び揃って敬礼。
 こうして連合軍と三馬鹿の新たなる戦いが始まろうとしていた。

●お届け物
 一方、カペラはドワーフ工房より何かを受け取っていた。
「きゃー! ようやっと来たわー!」
 大喜びしているカペラは今にも踊りそうだ。
「カペラさん、それは何?」
 ファリフが興味を示して中を覗く。
 大きさはリアルブルーで言うところの工事用の手押し車のようなもので、車輪が一つついていた。
 台車の上にさらに箱があり、導線で繋がった小さな箱がおかれている。
「負のマテリアルを検知するレーダーよ!」
「れ、れーだーぁ?」
 目を瞬くファリフにカペラは「そうよ!」と、力強く拳を握って空へと突き上げた。
「相手は土に関する歪虚だし、奴らの事だからまた地下から来るんじゃないかって」
「モグラ型歪虚だったしね」
「なんなんだ、これは」
 女子の話を聞きつけたテルルも話に加わる。
「前に見たことがない鉱石を発掘したら、歪虚のマテリアルに反応したの。で、これを探知機にして歪虚の動きを察知するのよ」
「こんなもんなくとも、出てくりゃ、叩けばいいじゃねぇか」
 カペラの言葉にテルルは呆れたような目をしてレーダーを白い羽で叩く。
「ここはウチの敷地なのよ。これ以上壊されたらたまらないわ」
「ふーん、で、動かすのか」
 冷めた様子のテルルだが、好奇心は隠せないようだ。
「もっちろん! ハンターが到着次第、動かすわよ」
「また、あのモグラが来るのかぁ」
 嫌そうな顔をするファリフとは対照的にカペラは黒焼きにする気満々の模様。

●その結果
 モルッキーはロックワンをトーチカに任せ、自分は回り込んで背後から人類側への攻撃を目論んでいた。
「ロックワンで正面突破の上、こっちからも挟めりゃ、ラクショーでショ!」
 のほほんと今回の乗車用のグランドワームに乗ったモルッキーはニマニマと笑んでいる。
「ちゃーんと、今週のドッキドキ歪虚も用意済みだし!」
 モルッキーが振り向くと、ちゃーんとドッキドキ歪虚はついてきていた。
「さーて、今度こそ、勝たせてもらって、全国の女子中学生にモッテモテになるわよ~~!」
 ぐっとこぶしを握り締めて天へ突きあげるモルッキーは地上へと上がる。
 ここからモルッキーの快進撃が始まるのだが……。

「あ」

 その場にいた全員が固まった。
 何故かいるハンター達。

「いたーーーーーー!」

 全員が異口同音で叫び、第二採掘場へ響いた。

リプレイ本文

 大幻獣フェンリルの眷属と言われているイエジドの背に乗ったネフィリアは一番乗りで第二採掘場へと入った。
 手を振ってカペラとファリフがハンター達を迎え入れる。
「また歪虚が来るって聞いたのだ」
 ネフィリア・レインフォード(ka0444)は身体を揺らさずにイエジドから降りる所を見れば、二人の友好度が垣間見れる。
「ええ、またお願いね」
 問いに答えるカペラが肩を竦めると、他のハンター達が到着した。
「久しぶりだね、ファリフ」
「陽さん!」
 八島 陽(ka1442)を見かけてファリフは駆け出す。
「元気そうだね」
「うん、陽さんも元気そうだね! またよろしく」
 にこっと、笑う陽につられてファリフも再会を喜ぶのもつかの間、陽はカペラの方を気にする。
「あれって……?」
 カペラの傍らにある工事用の手押し車が気になったようだ。
「歪虚の動きを探知するれーだーだって、カペラさんが言ってたよ」
「レーダーか……寧ろ、今回の感じだと地雷探知機っぽいなぁ」
 陽の様子を見ていたファリフがカペラに声をかけて持ってきて……というか、手押し車を押してきてもらう。
「探知機まで作れるなんてすごいな」
 まじまじとレーダーを見て素直な感想を呟くのはシン(ka4968)だ。
「歪虚の発見が楽になるのはいいことだね」
「今回が試運転なの。うまく作動したら成功ね」
 ちゃんとレーダーが動けば、それに勝るものはない。
「ファリフ、カペラ、名前決まったぜ」
 オウガ(ka2124)は親指を立てて自分の魔導アーマーへと向ける。
「どんな名前?」
 二人が興味を示した。
「シーバ」
 その名前に心当たりはある。
「尊敬するじっちゃんの名前を貰ったんだ」
「いい名前」
 ねっ、とファリフとカペラは顔を見合わせて笑う。
「だろっ」
 へへっと、少し照れた様子でオウガも笑った。
「初めまして、僕はカフカ・ブラックウェル。君がカペラ?」
 カフカ・ブラックウェル(ka0794)がカペラに声をかけると、その苗字と顔立ちに心当たりがあったカペラは「あ」と声を出す。
「ええ、初めまして。似てるわね」
「双子だから」
 ドライな態度をとるカフカであるが、どこか雰囲気が和らいでいるのは分かってしまう。
 フォニケをはじめ、ドワーフ工房の数少ない女性技師達への土産話になるかもしれないとカペラは心の中で思う。

 ハンター達も来てくれたので、カペラはレーダーを動かすと宣言した。
「試運転?」
 札抜 シロ(ka6328)が尋ねると、「そうよ」とカペラは返す。
 どうなるか全くわからないが、少しでも歪虚の動きが分かればよいとは思う。
「いくわよー!」
「いつでもいいぞー!」
 ネフィリアが手押し車を押して、カペラが手押し車に載せている本体から伸びるコードの先の物体を地面に当てるようにして歩き出す。
 レーダー本体と探知する先端の中に仕込んでいるマテリアル鉱石が反応して仄かに光っている。
「そういや、前回来た歪虚って、どんなやつなんだ?」
 オウガが思い出したように言えば、ファリフとシンが顔を見合わせる。
「……女の子が好きな歪虚だった」
 ファリフの回答にハンター達は「変態が相手か……」と黙り込む。
「ノッポのモグラよね?」
「そうです」
 ハンターオフィスで見た情報では仮面の女歪虚とノッポとデブのモグラ型歪虚だったとシロは記憶しており、シンがその通りだと肯定する。
 坑道の向こうを見ていた陽は時折響く地鳴りに眉をひそめていた。
 この揺れがどうにも嫌なものにしか思えない。どこに出るのかもわからないが。
「あれ、どんどん向こうに行っているけど……」
 様子を見ていた陽が眉を顰める。
 カペラはレーダーの様子を確認しつつ、更に向こうへと走る。
「どこへ行こうとしてるんだぁ?」
 近くで様子を見ていたテルルも気づいて顔を顰めて見ていた。
 地鳴りがどんどんカペラが向かっている方へ近づいているような気がするとシンは思う。
 ハンター達も駆けだすと、揺れがどんどん強くなっているような気がしている。
「なんなの、この反応!」
 とても歪虚が近いせいか、マテリアル鉱石が光っているし、揺れも強くなっていた。
 地面が噴き出すように割れだしている。
「なん……だ……?」
 誰かの呟きの後、大きな音を立ててグランドワームに乗ったモルッキーが姿を現す。

「あ」

 歪虚含め、皆の呟きが纏まる。

「いたーーーー!」
 カペラの叫び声が響き、モルッキーはグランドワームを操縦して間合いをとった。

 見つかったモルッキーは大きく口を開けて目を白黒させる。
「な、なんであんたたちがここにいるのよっ!」
 モルッキーが慌てふためくのも仕方ない。
 彼はハンターの裏をかくために横から回り込んだのだから。
「まぁった、あのモグラがきやがったのか」
 ため息混じりにテルルはトレードマークの飛行帽を被りなおす。
「にゃはは! れーだーの力はすごいのだー! またモグラさんに会えたのだ♪」
 にぱっと笑うネフィリアにモルッキーは目を瞬かせる。
「あん時のかわい子ちゃん達にイケメンじゃないのー!」
 記憶力もそこそこあるようで、前回遭遇したハンターの事は覚えていたようだった。
「思ったより知能高いんだ」
 ぽそりと呟いたシンの言葉にハンター達の意見は一致しており、心の中で頷く。
「なによ! 失礼ねー! アタシ、こう見えても作戦担当なのよー!」
 怒るモルッキーであるが、いまいちそう思えない。
「まさかリベンジしにくるとは思わなかったよ」
 懲りないねと、いわんばかりにシンが口を開く。
 冷静にモルッキーを眺めていたカフカは身内から聞いた話を思い出す。
「確かに黒焼きにしたら、纏まった金になりそうだな」
 歪虚というのがとても残念だとカフカは内心呟く。
「それで、あの歪虚を黒焼きにすればいいの?」
 明るい口調でぴょこんとシロが前に出ると、合わせるようにユキウサギのシンジと一緒にくるんと、ターンを決める。
「んも~~~~! あんた達なんかに負けやしないわよーーー!」
 どこからか取り出したハンカチを噛みしめてモルッキーはお尻を突き出して悔しいを表現するポーズで叫ぶなり、そのままの体勢でくるっと、雑魚歪虚たちの方を向く。
「アンタ達、出番よーーー!」
 絶叫するモルッキーに雑魚歪虚たちがそれぞれ同じペースで進みだした。


 今回の雑魚歪虚はアースワームと鼠型歪虚の二種類。
「どうやら、チューダよりはシェイプされてるようだね」
 鼠型歪虚を見た感想を呟いたのはファリフだった。珍しい軽口を聞いたオウガがくつりと笑う。
「チューダはあまり結果にコミットしてない気がするけどな」
 某大幻獣が聞いたら、「ひどいでありますぅ」と言いそうだと他のハンター達は思うが、特にチューダへのフォローはなかった。
 どこか好戦的な様子を見せるのはシロ。
「随分と多いギャラリーね。多ければ多いほどやる気になれるわ」
 大勢の敵を見据え、愛らしくも不敵な笑みを浮かべる。
 手の中の呪符を構えては自分達へ向かってくる歪虚達と対峙するべく立つ。
「さぁ……イッツ、ショータイムなの!」
 シロの手より離れた符綴が中空を舞うと、風に舞う花びらの如くに美しい光景を見るのは知能なき歪虚。
 けれど、シロにとってさして問題はない。
 今いるギャラリーは排除するべき存在だから。
 先制するべく稲妻が走り、三体のアースワームへと落ちた。
 衝撃に耐え切れず、ゆっくり倒れていく。
「さ、小型の歪虚は頼むぜ!」
 魔導アーマーシーバに乗り込みつつ、オウガが他のハンター達に声をかける。
「承った」
 オウガの声に応えたのはカフカだ。
 視界の中に入ったカフカのユグディラのキアファも臨戦態勢となっており、ワンドを構えていた。
 まず発動させたのは前衛に対してのウィンドガストの付与。
 緑に輝く風が最初に届いたのはシンだ。
「いくといい。風の守りがある」
 背を押すカフカの声にシンは一つ頷き、オウガのヘルムダイムの手の部分に乗っかると、ゆっくり動き出した。
 載っているともあり、その高さは結構なものだ。
 シンが降りる先はネズミたちの陣営真っ只中。
「ありがとうっ」
 礼を言うが早いか、シンは飛び降りてラージブレードを構える。
 急に倒すべき相手が自分たちのすぐ近くに現れて均等に進んでいた陣形が崩れてしまう。
 所詮は獣レベルの知能なのか、我先にとネズミたちはシンへと襲い掛かった。
 大きく口を開けてきたネズミが飛びかかってきた事に気づいたシンは剣をネズミの口へと突き刺して近くにいる敵へとぶつける。
 地に叩きつけられたネズミはゴムボールのように一度跳ねて他のネズミの上に落下した。
 尚もシンの剣は止まることなく、次に襲い掛かる歪虚へと剣を振り下ろしていく。
「シンさん!」
 後方からファリフの声が聞こえ、肩越しに振り向くと、アースワームが割り込むようにシンへと突撃してきた。
 素早く剣を逆手に持ち替えたシンは背後のアースワームを刺して長剣の強みを生かすように大きく円状に剣を横に振ってシンに襲い掛かる歪虚を斬りつけていく。
「後ろには行かせない」
 シンは眼鏡に血が付かないようにまだ綺麗な手の甲で眼鏡の弦を押し上げ、歪虚をこちらへ向けるように挑発する。
「なによ! 今回もイケメンじゃない!」
 敵陣営の後方でモルッキーが叫ぶが、シンは気にしてない。
 戦闘開始と同時にネフィリアのイエジドが主を迎えに駆けだした。
「お迎え、ありがとうなのだ♪」
 明るい調子でネフィリアが言えば、イエジドは乗りやすいように少し屈んで飛び乗られる。
「さー、やっつけるのだー!」
 号令に従い、イエジドはネズミの方へと駆けだしていく。
 またあのオモシロモグラと拳で遊ぶために。
 ネフィリアというか、イエジドに向かってアースワームが複数押し寄せる。
「遊んでくれるんだな♪」
 落ちないように気を付けながらネフィリアがイエジドの背に立つ。
 向かい撃つアースワームを伝うようにネズミが駆けあがっているのが見えた。
「いっくぞー!」
 跳躍したネフィリアはアースワームを伝い上がるネズミへ向かって拳を突き出す。
 ナックルの中でぐっと、拳を握りしめてマテリアルを込めたネフィリアのロケットナックルの先端が離れて射出される。
 パァン! と、いい音を立ててネズミの顎にクリーンヒットし、吹き飛ばされたネズミは太い身体を地に落とした。
 主が離れたイエジドは跳躍したネフィリアの着地時に襲われないように前足の爪をアースワームの身体に喰い込ませて踏みつぶす。
 軽やかに着地をしたネフィリアはロケットナックルを射出した際のマテリアルに反応したアースワーム達に囲まれる。
「ミミズさん達はとても勘がいいのだ」
 ネフィリアはにまっと笑ってアースワームの突進を避けた。緑の風がネフィリアを守るように身体を軽くするようにアースワームより回避させてくれる。
「モグラさん、待っててなのだー!」
 拳を突き上げてネフィリアはモルッキーへと声をかけた。
「冗談じゃないわよぉお! あんなんのに殴られたらひとたまりもないじゃない!」
 普通の人間ならば大変なことになるが、歪虚なのでいまいち信用がない。
「こーなったら、今週のドッキドキ歪虚ちゃんのおでましよぉおおおおお!」
 叫ぶモルッキーの背後から現れたのは大型のパペットマン。
「このパペットマンは怠惰歪虚協会認定なのよ~~ん。強さも前回連れていたパペットマンなんかの日じゃないのよーーっ!」
 力を見せてやりなさいとパペットマンに指示をしたモルッキーに従い、大型パペットマンが大きく腕を振りかぶる。
 大玉の泥が飛んでいき、ノーコンかと思ったが、その向こうにいるカペラを思い出す。
 陽が気づいた時には、カペラへ泥が飛ばされており、短い悲鳴が上がった。
「カペラ!」
「レーダーがーー!」
 カペラ自体は無事であったが、泥はレーダーに直撃されていた。
 水分なのか、泥玉が当たった衝撃なのかわからないが、レーダーの動きは止まっていたようだ。
「貴重な鉱物が! 何てことするのよーーー!」
 叫ぶカペラは絶対に許さないと叫ぶが、更にパペットマンは追撃せんと泥玉をカペラへと投げつけたが、それはカペラに当たることはなかった。
「これ以上の後逸なんて……させやしない!」
 魔導アーマーの中より聞こえる声は陽のもの。
 泥をかぶっただけあって、陽の魔導アーマーは汚れてしまったが、動きに問題はなかった。
「まぁあああああ! なんて語彙力高いイケメンなのよっ!」
 モルッキーの悔しむ叫び声を無視した陽はテルルの方を向く。
「テルル、モグラを頼む」
「まぁかせろって!」
 陽やオウガ達同様にカマキリに乗り込んだテルルがモルッキーの方へと駆ける。
「行こうぜ!」
 オウガが陽に声をかけると、応じて二人はパペットマンの方へ対峙した。
 前に出たのはオウガの魔導アーマー『シーバ』だ。
 パペットマンは知能が低いのか、避けようともせずにシーバへ泥の拳を突き出す。拳が向かう先はシーバの頭部、しかし、オウガは回避の動作を行わなかった。
「通しはしねえ!」
 ビシャァと、重い泥をシーバの手が受け止める。
 こちらに来るときにうっすら被った砂よりも濃く負のマテリアルが付着している泥がシーバの手のひらから全身に飛沫があった。
「あらまっ! 泥まみれよ!」
 心配しているのか、囃し立てているのかわからないモルッキーの声が響く。
「覚えておけ! そんなことで文句を言うケチな奴じゃねえよ!」
 パペットマンの力は思ったより強く、きちんと操縦しなければ、シーバの機体が壊れそうだ。
「イケメンが粋がっちゃってぇ。壊れちゃうわよぉん」
 テルルから逃げるように回避しているモルッキーが完全に煽りだしている。
 煽り言葉にオウガは「はっ!」と大きく笑う。
「このデカイ身体は護る為にあるんだ! そうだろ、シーバ!」
 オウガの叫びに呼応するようにシーバの動きがパペットマンを抑え込む。
「よく言った」
 静かな声を上げたのはカフカだ。
 そして、パペットマンの周囲に冷気が浮かんでいた。
 泥の表面がうっすらと凍っており、動きが鈍くなっているのが分かる。
 更に、歪虚の動きが止まり、頭部はあらぬ方向を見ているように思えた。
「さー、見せ場だよっ!」
 被っていた帽子「シュトラオス」を脱いで羽飾りを揺らしたシロが声をかける。
 きっと、彼女が桜幕符を発動してくれたのだろう。
「シーバだけじゃないぞ」
 そう言ったのは陽だ。
 彼が操縦する魔導アーマーがずいっと、前に出てパペットマンの横に回る。
 尾部スタビライザーを大きく振ると同時に手にしていた捩じれ曲がった刃を持つ戦斧「ウラガンクーペ」をパペットマンの膝めがけて斧を叩き込んでいった。
 衝撃をまともに受けたパペットマンはがくりと、膝を落としてしまう。
「行っくぜぇ!」
 攻撃への転機を見つけたオウガがシーバにつけられていた魔導ドリルを高速回転させて敵の腹へドリルの先端を抉らせる。
 腹を削り終わると、入れ違いに陽の魔導アーマーの斧が空洞となっているパペットマンの腹へとぶち込んだ。
 巨体が二つに分かれ、上体部分が地へと崩れ落ちる。
「やったのだー!」
 ネフィリアが仲間の勝利を見届け、最後のネズミ型歪虚を回し蹴りで仕留めた。
「最後は二体……だね」
 彼もまた、周囲の雑魚歪虚の皆さんを斬り倒している。
 見据える先はモルッキーと乗車用グランドワーム。
「こっちもドッキリ奥義があるのだ♪」
 きらりと、ネフィリアの瞳が煌めくと、猫の祖霊が彼女に纏う。
 祖霊は幻影となって巨大化した。
「えええええ!?」
 さっきの可愛い子ちゃんがいきなり大きくなってモルッキーとグランドワームがのけぞる。
「いっくぞー!」
 ネフィリアの一撃にグランドワームはが揺らされた。
「もういっちょ!」
 オウガがシーバの尾部スタビライザーで乗車用歪虚の身体を叩く。
「ぎゃぁああんっ!?」
 衝撃で乗り場から放り投げられたモルッキーはべしょりと、グランドワームの近くに落ちて無様な着地しかできなかった。
「さーって、君一人だね」
 シロが腰に両手を当ててモルッキーを見下ろす。
「きぃいいいいっ! よくも怠惰歪虚協会認定のドッキドキ歪虚をーーー!」
 悔しそうに叫ぶモルッキーにオウガは呆れたような表情を浮かべる。
「その怠惰歪虚協会って何なんだよ……」
「だって、あの『あ』のつく歪虚様も太鼓判だって言ってたのよっ!」
 該当する歪虚は複数いることに気づいたハンター達だが、ファリフはやっぱり「アクベンスか……」とつぶやいたが、モルッキーは回答は言ってなかった。
「うまい話には裏があるってことじゃないの?」
 首を傾げるシロにモルッキーはぐぬぬ……と悔しそうだ。
「で、お前たちの一味はまだいるんだろ?」
 魔導アーマーより降りてきた陽がモルッキーに尋ねる。
 情報によれば、このモルッキー以外にも知能がある歪虚が存在しており、前回は三人の一味が多数の歪虚を引き連れて辺境ドワーフの採掘場へときていた。
「どーせ、アンタたちの事だから、情報共有してんでしょ? そーよ、アタシはトーチカ姐さんの子分」
 肩を竦めるモルッキーは更に言葉を続ける。
「姐さんが連れてるロックワンでもじゅーぶんでしょうけど、アタシはちょっとでも姐さんの勝利を支えようとしたのよぅ」
「だから、回り込んでこんなところに出たのか」
 納得するオウガにモルッキーが胸を張りだす。
「なんだかんだでも、姐さんはすごいんだから、アンタ達人類なんかイチコロよー」
「そんなことはさせないよっ!」
 反抗するファリフの隣でイエジドに座って話を聞いていたネフィリアがぽーんと、高くジャンプして降りて着地する。
「さっさとボクとあっそぶのだー♪」
「へ?」
 ネフィリアの言葉にモルッキーはきょとんと目を瞬かせる。
 何をして遊ぶのかと尋ねる間もなく、ネフィリアのワイルドラッシュが発動され、右や左やと頬にパンチが繰り広げられていく。
「ごぶっ」
 吹き飛ばされた状態のモルッキーを待ち受けていたのはオウガだ。
 その手に握られているのは雷鎚「ミョルニル」。
「はぁああああ!!」
 何を待ち構えていたのか理解したモルッキーは口を大きく開けて驚く。

「なんなのよぅ……」
 ヘロヘロになったモルッキーがゆっくり起き上がると、カフカが少し俯きがちに前に出た。
 魔術師故、後ろにいたのだが、モルッキーの前に立つ。
「そうなる理由はお前の中にあるね」
「は?」
 きょとんとしたモルッキーだが、カフカの髪……そして顔立ちに気づく。
 めっちゃやばい。と、モルッキーはだらだらと冷や汗を流す。
「いやややややや、それはアタシじゃなくて、パペットマンで……」
 命乞いをするモルッキーにカペラはじっとりと、睨みつける。
「下手すればセクハラもやりかねない様子だったね」
 素直にシンが言えば、「なんてこと言うの!」という顔芸を見せるモルッキー。 

「判決、死刑」

 冷たくドスの聞いた声のあと、シロの「同感」という声も聞こえた。
 女の敵は死すべし。

 符綴が中空へ放られると、花弁が舞い散るかのような美しい光景が見えた。
「さぁ、フィナーレなのっ!」
 見蕩れるのは一瞬であり、シロより放たれた稲妻がモルッキーへと落とされる。
 同時にワンドを掲げたのはカフカだ。
 己の対を汚されたことは彼にとって腹正しいこと。
 マテリアルが雷のように弾いた瞬間、真っすぐに電撃がモルッキーに直撃した。
「ぎゃぁあああああ! またぁああああ!!」
 二度目の電撃攻撃にモルッキーは衝撃に耐えられずにがくがくと痙攣し、やっぱり中の骨格が見える幻覚が見えたのは気のせいだろうと思いたい。
 攻撃が終わると、「あふん」と唸ってモルッキーはお尻を空へ突き出すようなポーズで頭と膝を地につける。
「とどめを……」
 シンが呟くと、倒されたはずの乗車用グランドワームのモルッキーが乗っていた台座部分がピカピカ転倒しだした。
「クマさんまーくで可愛いのだ!」
「それって……」
 点滅するマークに気づいたハンター達が思い浮かべるのは……。
「ビックマー!?」
 何が起きるのかと硬直する中、テルルは「バーロー! あいつなんか熱ちぃぜぇ!」と叫びだし、ハンター達を守るようにカマキリを盾にする。
 一際大きくマークが光ると、グランドワームは爆発してモルッキーが彼方へ吹き飛ばされた。
「逃がしたか……っ!」
 爆風で女性陣を守るように立った陽がモルッキーの最後を目視している。

 その後、ドワーフ達で残ったグランドワームの台座部分を調べたところ、時限式の仕掛けがあったようだ。
 詳しい部分はわからないが、もしかしたら、モルッキーの始末用の仕掛けだったのかもしれない。
「なんか、生きてそうな気がする」
 勘を呟くシンに全員が頷いた。
「でも、ここは守られた。モルッキー以外の歪虚も掃討したしね。ありがとう!」
 レーダーは壊れたが、それ以外に被害はなかった。
 カペラが笑顔で礼を言えば、ハンターは思い思いに返した。

依頼結果

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参加者一覧

  • 爆炎を超えし者
    ネフィリア・レインフォード(ka0444
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    イェジド
    イェジド(ka0444unit001
    ユニット|幻獣
  • 月氷のトルバドゥール
    カフカ・ブラックウェル(ka0794
    人間(紅)|17才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    キアファ
    キアファ(ka0794unit001
    ユニット|幻獣
  • 真実を見通す瞳
    八島 陽(ka1442
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    マドウアーマー「ヘイムダル」
    魔導アーマー「ヘイムダル」(ka1442unit004
    ユニット|魔導アーマー
  • 援励の竜
    オウガ(ka2124
    人間(紅)|14才|男性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    シーバ
    シーバ(ka2124unit002
    ユニット|魔導アーマー
  • 王女の私室に入った
    シン(ka4968
    人間(蒼)|16才|男性|舞刀士
  • イッツァショータイム!
    札抜 シロ(ka6328
    人間(蒼)|16才|女性|符術師
  • ユニットアイコン
    シンジ
    シンジ(ka6328unit001
    ユニット|幻獣

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アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/02/18 17:17:58
アイコン 相談卓
札抜 シロ(ka6328
人間(リアルブルー)|16才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2017/02/23 10:43:28