ゲスト
(ka0000)
坊ちゃん剣士、妖怪退治を最後まで
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/02/28 07:30
- 完成日
- 2017/03/05 19:57
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●過去があっての今
リシャール・べリンガーは意識を失った後、傷が治るまでうなされもした。
覚醒者になれる片鱗を見せつつも、体が弱くすぐに熱を出して寝込んでしまう体が弱い自分。家族は誰も何も言わない。覚醒者になるよりも、できることを大切にして生きていければいいと誰もが言う。
姉や弟妹が外で遊ぶのを眺めて、寂しい思いもした。
彼の寝床に来て絵本を読む弟妹も鬱陶しいと思ってしまったこともあった。
大切な家族であるのに。
それから、自暴自棄に近い形でエトファリカ連邦国まで来て、死ぬかもしれないという状態になって、ふがいない自分がつらく、悲しかった。
ハンターにも叱られたのは仕方がないこと。叱ってもらえて幸せだとかみしめる。
弱さと強さは紙一重。
弱さがあっての強さであるのだと。
「……父上みたいになりたい……母上を悲しませたくはない……」
父みたいとは何だろう?
「まずは自分の身を守れて、戦うことができること。仲間とともに戦えること、領民を守れること」
手を差し伸べてくれる人たちがいる、幸せなのだ自分は。
知り合いの女の子からバレンタインデーのお菓子により一層、決意は固まった。
「私はまず私を守らないといけない。仲間と立ち向かうということを考えて行かないといけない」
●稽古
「リシャール君のこと、ありがとうございます」
大江 紅葉(kz0163)は友人である松永 光頼に頭を下げた。
「やめてください、紅葉殿。私が気になったから勝手に引き受けたのです」
「そうですか。確かに……我が家で引き受けたところで、ちやほやして説教して終わりです」
「……ちやほやと説教が両立するんですか?」
「します」
きっぱりと紅葉は言う。
光頼はしばし考え、あの家だからこうなるというモデルは彼女だろうか。
「ハンターさんが連絡入れてくれてましたし、光頼殿がしっかりしている人だと私も手紙送っておきました。武人なら武人のほうがいいでしょう?」
「……ありがとうございます」
ニコリと紅葉は笑い、荷物を取り出す。
「あ、これ、先日、ハンターの方に教わって作った後、私が残った材料で作った『ブラウニー』です。皆さんでどうぞ」
「お、多いですね」
どーんと置かれたお重3箱分くらい。
「あ、お嫌いでした? お餅のほうが良かったですか」
「いえ、そんなことはありません」
「こちらは光頼殿用です」
「えっ!?」
小さな風呂敷包に入った物を手渡した。
(バレンタインデー絡みとはいえ……期待はしてはいけないんだろうが)
そわそわし始める光頼。
話す内容はリシャールのこと、政治のことなどあまり恋は関係ない。
「……グラズヘイム王国では大変なことが起こっているみたいです。リシャール君も焦るでしょうね」
「確かに」
「幸いなのは、ご実家が直接巻き込まれていないこと。父君がいますし、彼は今しかできないことをしていくことが重要です」
光頼はうなずいた。
●いざ、討伐へ
光頼は先日現れた小鬼――ゴブリンの巣らしいところの情報を集めていた。ハンターが方向を示し、その場を特定する。近くの里には警戒情報を出して置いたためか被害はないが目撃情報は多く集まっていた。
「登る間に何かされる危険性もありうるのか? 妖怪はいるようだが……」
「あの、光頼様!」
案の定リシャールが入ってくる。
「君も来るだろう?」
「はい、御同行させてください」
「私の言うこと、ハンターの言うことを聞くというのは第一」
「はい」
「最悪、君はすべてを捨ててでも逃げる」
「……え?」
「私もハンターも個別なら対応できても君は自覚通り場数が足りていない。最悪の時は殿にならないように逃げること」
リシャールは何か言いたげだった。
「それは、言うことを聞くに入るんですね」
「入る」
「飲みます」
「ああ。君は今はまだ足手まといになる危険性が高いのだ。だから、言うことを聞く。その代わり、ある時、君は逃げろと誰かにいえる存在になれる」
「……なれますか?」
「君がいろいろ学べば」
「……ありがとうございます」
リシャールはじわっと目が潤む。
「礼も何も、これからだ。それに、恩を感じているなら、君が成長することが私や気を掛けてくれたハンターへの恩返しだと思うぞ?」
「はいっ!」
リシャールは力強く返事をした。
リシャール・べリンガーは意識を失った後、傷が治るまでうなされもした。
覚醒者になれる片鱗を見せつつも、体が弱くすぐに熱を出して寝込んでしまう体が弱い自分。家族は誰も何も言わない。覚醒者になるよりも、できることを大切にして生きていければいいと誰もが言う。
姉や弟妹が外で遊ぶのを眺めて、寂しい思いもした。
彼の寝床に来て絵本を読む弟妹も鬱陶しいと思ってしまったこともあった。
大切な家族であるのに。
それから、自暴自棄に近い形でエトファリカ連邦国まで来て、死ぬかもしれないという状態になって、ふがいない自分がつらく、悲しかった。
ハンターにも叱られたのは仕方がないこと。叱ってもらえて幸せだとかみしめる。
弱さと強さは紙一重。
弱さがあっての強さであるのだと。
「……父上みたいになりたい……母上を悲しませたくはない……」
父みたいとは何だろう?
「まずは自分の身を守れて、戦うことができること。仲間とともに戦えること、領民を守れること」
手を差し伸べてくれる人たちがいる、幸せなのだ自分は。
知り合いの女の子からバレンタインデーのお菓子により一層、決意は固まった。
「私はまず私を守らないといけない。仲間と立ち向かうということを考えて行かないといけない」
●稽古
「リシャール君のこと、ありがとうございます」
大江 紅葉(kz0163)は友人である松永 光頼に頭を下げた。
「やめてください、紅葉殿。私が気になったから勝手に引き受けたのです」
「そうですか。確かに……我が家で引き受けたところで、ちやほやして説教して終わりです」
「……ちやほやと説教が両立するんですか?」
「します」
きっぱりと紅葉は言う。
光頼はしばし考え、あの家だからこうなるというモデルは彼女だろうか。
「ハンターさんが連絡入れてくれてましたし、光頼殿がしっかりしている人だと私も手紙送っておきました。武人なら武人のほうがいいでしょう?」
「……ありがとうございます」
ニコリと紅葉は笑い、荷物を取り出す。
「あ、これ、先日、ハンターの方に教わって作った後、私が残った材料で作った『ブラウニー』です。皆さんでどうぞ」
「お、多いですね」
どーんと置かれたお重3箱分くらい。
「あ、お嫌いでした? お餅のほうが良かったですか」
「いえ、そんなことはありません」
「こちらは光頼殿用です」
「えっ!?」
小さな風呂敷包に入った物を手渡した。
(バレンタインデー絡みとはいえ……期待はしてはいけないんだろうが)
そわそわし始める光頼。
話す内容はリシャールのこと、政治のことなどあまり恋は関係ない。
「……グラズヘイム王国では大変なことが起こっているみたいです。リシャール君も焦るでしょうね」
「確かに」
「幸いなのは、ご実家が直接巻き込まれていないこと。父君がいますし、彼は今しかできないことをしていくことが重要です」
光頼はうなずいた。
●いざ、討伐へ
光頼は先日現れた小鬼――ゴブリンの巣らしいところの情報を集めていた。ハンターが方向を示し、その場を特定する。近くの里には警戒情報を出して置いたためか被害はないが目撃情報は多く集まっていた。
「登る間に何かされる危険性もありうるのか? 妖怪はいるようだが……」
「あの、光頼様!」
案の定リシャールが入ってくる。
「君も来るだろう?」
「はい、御同行させてください」
「私の言うこと、ハンターの言うことを聞くというのは第一」
「はい」
「最悪、君はすべてを捨ててでも逃げる」
「……え?」
「私もハンターも個別なら対応できても君は自覚通り場数が足りていない。最悪の時は殿にならないように逃げること」
リシャールは何か言いたげだった。
「それは、言うことを聞くに入るんですね」
「入る」
「飲みます」
「ああ。君は今はまだ足手まといになる危険性が高いのだ。だから、言うことを聞く。その代わり、ある時、君は逃げろと誰かにいえる存在になれる」
「……なれますか?」
「君がいろいろ学べば」
「……ありがとうございます」
リシャールはじわっと目が潤む。
「礼も何も、これからだ。それに、恩を感じているなら、君が成長することが私や気を掛けてくれたハンターへの恩返しだと思うぞ?」
「はいっ!」
リシャールは力強く返事をした。
リプレイ本文
●作戦
ハンターたちは討伐前に状況を確認する、ゴブリンたちがいるとされるあたりを見て。
カイン・マッコール(ka5336)は前回、竹藪からこの近くに来た時のことを思った。
「確かにあの傾斜だと、戦いにくいか。素直に話を聞いておいて正解だった」
登るには鎧も邪魔して難しいだろうし、ゴブリンたちは道を使って移動しているだろう。
「歪虚の姿もいるらしいが……ゴブリンとコボルドと共生ってやつなんだろうか? どっちにしろ、ろくな目にはあわないだろうな」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は傾斜を見て技や道具を使えば登り切れそうだと判断する。
「何を思い戦うか? みながそれぞれの事情や思想・理想を抱えているのでしょう……」
雨月彩萌(ka3925)は心の中で「わたし自身の正常を証明するため、異常である歪虚を滅したいと思うように」と続ける。
リシャール・べリンガーは唇をきゅっと結ぶ。
「登れそうではないが、はしごで少し補強したほうがいいのか? 機導術で行けるのか?」
ルナリリル・フェルフューズ(ka4108)は遠目からの計算を行う。
松永 光頼が持っている地図やデータでは不明が多いが、傾斜は武人たちが用意した梯子くらいの距離だろうことはわかる。
「リシャールさんたちはあそこにつながる道から行ってください。私は長距離からの射撃のため別ルートで行きます」
ミオレスカ(ka3496)はリシャールに説明をする。
「魔導短伝話を持っていれば連絡はできる」
アルトが魔導短伝話を荷物から出して見せる。
リシャールははっとするが同道する光頼が持っているため問題がなかった。
「……私をはじめとした援護射撃は意識しなくていいです。必要なら互いに指示を出します。いろんな方がいて、いろんなスキルがあります。それを組み合わせた作戦を考えるのは、今後にとってもいいことだと思いますので、ぜひ多角的な見方をしましょう」
ミオレスカは真剣にリシャールがうなずくのを見る。ミオレスカは自分自身に言い聞かせている面もあった。新人に教えることで己の気持ちも初心に戻るかもしれない。
マリィア・バルデス(ka5848)はリシャールと何度か依頼で会っている。彼の背景も考えると複雑な思いもあった。
「人は転んでさえ死ねるんだから気をつけろっていう時期は過ぎちゃったのよね……あとはもう実践を積むしかないのよね」
仲間を守りつつ、彼を見守るために銃に手を当てた。
●移動
道を行くのは彩萌とカインにリシャールと光頼とマリィアだ。マリィアは現場が見えるあたりで隠れて道やのり面を行く仲間へ援護を行う。援護が終われば魔導バイクで駆け付けるにも近い位置だ。
道は狭い上、見つかる危険性は高い。普段使いの道であるだろうし、自分たちが使うのだから用心はするだろう、別の物も来る可能性を考えられない頭脳はないから。登攀するほうは見つかると無防備に近い。
細い道に差し掛かった仲間を見て、犬を放つ機会をうかがう。実際を見ると下手に動かすことはできないと判断した。
「待機していてね」
犬たちは理解したようで座った。
ミオレスカは地図で目星をつけた位置を目指す。援護するために洞窟が見え、仲間の行動が見える場所だ。
途中でヒヤッとしたがなんとか目的のところまでやってきた。風向きが変わるということがなければ見つかることはないはずだ。
距離を測る。
「銃でも問題はないようですが、弓のほうが確実ではありますね」
つぶやくと身を低くし、魔導短伝話で仲間に短く連絡を入れる「いつでも」と。
スキルを用いれば一番早く登り切れる予定はアルトとルナリリルだ。スキルを使っているところに見つからないことも前提であるが。
「念のため、洞窟の位置が情報通りか……見てきてくれ」
アルトは自身も見ていたが確実性を求めた。ペットのモフロウと桜型妖精アリスの「アリア」が飛んでいく。モフロウの上にアリスが乗っているため早い。
「……ほのぼのとした景色だな」
「そうだな」
ルナリリルにアルトも口元を一瞬緩めた。
うまい具合にモフロウたちは崖の下に付き、アリスが身を乗り出しているように見えたが、慌てて引っ込む。コボルドが縁にやってきた。
しばらく見ていると、コボルドは見回りの続きをしに戻って行った。
戻ってきたアリスはアルトにうなずきながらジェスチャーをしている。
「問題ない感じか?」
「なら、良いな」
様子をうかがいつつ仲間の連絡を待つ。一方で、下から見ている間にできることはしておく。登るのに時間がかかるか否か、成功するか否かよりも、行動を合わせることが重要。
カインと彩萌が道の先をうかがう。
コボルドがうろうろしているくらいだが、道が細い上、転落の危険性もあった。背後から戻るゴブリンに出会うという危険もなくはない。
「地形もあって敵が来ないと高をくくっているのでしょうか」
「ありうるな……歪虚を親分と思っていたら、気も緩むか……ゴブリンたちは逃すつもりはないですが」
二人の背後でリシャールがそわそわした様子で待機している。
「戦いの経験がない……わけではないのですよね?」
彩萌が声をかけた。
「あ、はい……なんというか……意識したのが今回が初めてかもしれません」
「意識した?」
「はい。……今回のように、討伐に赴くという意識は初めてです。勢いだったり巻き込まれたり……が多くて」
「視野を狭くしないように、周りにも気を配りましょう。味方がいる、ということを忘れないように」
彩萌の忠告にリシャールは素直にうなずく。
「ゴブリンやコボルド以外はお任せします……僕の邪魔をするなら歪虚とて容赦はしませんが、僕はゴブリン退治の続きに来ただけです」
カイン言葉にリシャールは思い感情を見た気がした。ただ、自分の実力を考えると歪虚対応に不安はある。
光頼はリシャールの肩をポンとたたいた後、ミオレスカの連絡に続き、連絡を入れた。
「そろそろ、出発します」
予想通り、道半ばでコボルドに吠えられ、ゴブリンたちがやってきた。
●戦闘とは
ミオレスカは銃ではなく弓でまずは応戦した。
道を行くメンバーが平地に入りきれないと戦闘は長引く。ゴブリンやコボルド以外、歪虚と思われる姿も目撃にあるためだ。
「先手も兼ねて行きます!」
矢を複数つがえ敵がまとまっているあたりに放った。まさに雨のように矢が降り注ぐ。
「混乱してくださってますね」
新たな矢をつがえ、確実に敵を沈める戦法に変更した。
細い道に向かってコボルドとゴブリンは来る。
カインは盾を使い防ぎつつ隙を見つける。
「こういう時こそ、魔法です【デルタレイ】」
彩萌が放ち、殺到する敵の動きが変化する。
「今だな」
カインは武器を構え、前に出た。敵に囲まれる寸前であるが、仲間もいるため問題なかった。
彩萌が【ジェットブーツ】で平地に一気に抜ける。
「リシャール君、行くぞ」
「はい」
リシャールと光頼が続いた。
マリィアはのり面にいる二人を意識する敵がいないかを注意深く見る。
洞窟前の平地にリシャール達が入ったことを確認後、少し位置を移動した。
ミオレスカの矢も飛ぶ中、銃を構え、崖の方に行きそうな敵を狙う。
崖登りをしているアルトとルナリリルが一気に動いた。
戦いの音が耳に届く。
「先に行くよ」
アルトはマテリアルを活性化し、行動に加速をつける。狙われたときの保険もかねてはある。登り切る寸前からは敵を狙うにも中途半端な距離。魔導ワイヤーを掛けられるところを狙い、走るように登り切る。
「これが仕上げ!」
投符を【紅糸】に乗せゴブリンに投げつける。真紅の光が走るがごとく、アルトはゴブリンの横に着地し、ワイヤーを戻した。
「遅れはしない」
続くようにルナリリルは機導術【反重力脚】を用い、魔導ワイヤーで落下を防ぎながら走り、再び機導を用いて登り切った。
二人の前にはカインを取り巻くゴブリンたちが見える。
不意に洞穴から咆哮が響く。
「親玉がいるってわけだ。片づけつついくか」
「それなら援護は惜しまない。受けてみろ、私の秘儀【十二偽光】!」
ルナリリルの魔法の閃光とともに、アルトは駆け抜けて洞窟の前に立った。
「……リシャールさん」
咆哮を聞いた瞬間リシャールが足を止めたのが見えたためミオレスカが周囲の敵を積極的に狙う。
「すぐに動けているみたいですが」
下りていくタイミングを計りつつ援護射撃を行った。
リシャールが足を止めた瞬間、ゴブリンに狙われる。幸いなことにそれはミオレスカの矢で倒された。
「べリンガーさん!」
彩萌が鋭い声を上げる。
「あ」
「命取りになるぞ! 敵は待ってくれないぞ!」
カインは声をかけた。彼自身、囲まれているとはいえ、防御と攻撃で敵をほんろうし、一体ずつ確実に数を減らす。
「そうですね」
リシャールは一呼吸を置いた後、刀を振るった。鋭い一刀となり、ゴブリンにそれなりの傷を負わせた。
「恨みはなく、怒りもありません。ただわたしがわたしであるために、あなたたちを滅します」
彩萌はリシャールが攻撃していたゴブリンに機導剣を用いて攻撃する。
タイヤが石を踏む音が響き、魔導バイクにまたがったマリィアが到着した。全員が平地に上がったところで駆け付けた。
「お待たせ」
マリィアは拳銃を両手に、周囲を見た渡した。あと一息であり、油断しなければ終わるだろう。犬たちが威嚇するように吠えた。
暗がりに何かがいるが、入るのは危険だ。十分戦えるとしても、ライトを持っていくにも手がふさがる。
「おい、お前の方が強いのだろう? 仲間が消える前に吠えていないで出てこい!」
アルトは声を上げ、長髪をする。
「魔法で一気に片付くか?」
ルナリリルがそばに来ていた。すなわち敵の殲滅が終わったということ。
「ゴブリンが終わればそれでもいいとは言ってはいられないですね」
カインは呟く。
のり面を下り、ミオレスカが合流し、銃を構え洞窟を見る。
「出てこないなら、出てこさせます!」
「それでいいかしら?」
ミオレスカとマリィアが仲間に問い、洞窟内に銃を構えた。
「一応、一度ライトで照らす」
アルトがLEDライトで中を照らした瞬間、おおよそがわかる。
銃声が響いた。
咆哮と重い足音がし、それが出てきた。
「うっ」
「これが妖怪というわけだ。歪虚でも憤怒に属するモノ」
リシャールに光頼が説明する。歪虚の姿は大きいゴブリンだった物のようだが、何か組み合わさったのか醜悪さがある。
「歯ごたえはありそうだ」
アルトはすっと移動し【散華】を用いる。
「これはどうでしょう」
ミオレスカが【レイターコールドシュート】を放つ。
「これが本番だもの」
マリィアの二丁の銃が火を噴く。
「【デルタレイ】」
「【十二偽光】」
彩萌とルナリリルからそれぞれ光が放たれ、きらめきは敵を貫く。
「お前はおまけだ」
カインはマテリアルを込め思いっきり剣をたたきつける。
「はああ!」
気合とともにリシャールが攻撃をする。
「……」
光頼はリシャールを止め損ねたが、鋭い技とともに出た。
「ガアアア!」
それは腕を振り回し攻撃をしてきた。鋭く重い二度の攻撃に、前に出ていたカインとリシャール、光頼が巻き込まれる。
「っ!」
リシャールがさばききれず吹っ飛ばされ、倒れた。
ダメージは蓄積されていた妖怪は次のハンターの行動の時には倒されたのだった。
「これで最後だ、世に平安のあらんことを」
ルナリリルは祈った。
●作戦完了
リシャールはひどい打撲であるが、何とか動くことはできた。
洞窟の中や周囲にゴブリンやコボルドなどの姿はなくなった。歪虚に惹かれたような雑魔もない。
「こちら側に害をなして戦ったゴブリンは子どもであろうと殲滅しなければなりません。生き残りは恨みを忘れず、必ず報復に来る。その連鎖はここで断つ、これがハンターとしての責任です」
カインは淡々としているが、ところどころ憎悪を感じるような声音でもあった。
リシャールはただうなずく。
「生き延びれれば強くなる。だから自分も他人も生き延びられる方法を探す。本当のところはすごくシンプルなの。ただ、私たちはハンターとしてってつくだけで済むけど、リシャールには他にもあるでしょう?」
マリィアの言葉にリシャールは首を横に振った。
「言っていることはその通りだと分かります。でも、『ハンターとして』といっても、皆さんも人です。他もあると思います」
まじめに答える。
マリィアは困ったような顔でリシャールの肩を優しくたたいた。
「新米とはいえ……あっさり私程度なら追い越しそうな気がする……な」
ルナリリルは大人の視線でリシャールを見る。素直にハンターの話を聞き、そして前に進もうとしている。情報の積み重ねと実践という二つの道から。
「そうですね……でも。私も学ぶことはまだまだありますよ」
「人生は勉強でもある?」
「はい。リアルブルーの食材も興味深いですし」
ミオレスカの言葉を聞きながら、ルナリリルはリシャールを見ていた。
「戦う理由……」
「生きる為だろう?」
彩萌のつぶやきに傭兵一家に育つアルトは言う。
「きみだってそうだろう?」
「……わたしが正常であることを証明する助け……」
「リシャールだって、貴族の跡取りだろうが、生きる為戦う。自分を生かさないと始まらない」
彩萌はうなずく。
負傷によりリシャールは座り込んでいるが、その表情は晴れ晴れとして見えた。
光頼の部下たちが事後処理に現場に入ったのと入れ替わりに、一行は天ノ都に戻った。
ハンターたちは討伐前に状況を確認する、ゴブリンたちがいるとされるあたりを見て。
カイン・マッコール(ka5336)は前回、竹藪からこの近くに来た時のことを思った。
「確かにあの傾斜だと、戦いにくいか。素直に話を聞いておいて正解だった」
登るには鎧も邪魔して難しいだろうし、ゴブリンたちは道を使って移動しているだろう。
「歪虚の姿もいるらしいが……ゴブリンとコボルドと共生ってやつなんだろうか? どっちにしろ、ろくな目にはあわないだろうな」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は傾斜を見て技や道具を使えば登り切れそうだと判断する。
「何を思い戦うか? みながそれぞれの事情や思想・理想を抱えているのでしょう……」
雨月彩萌(ka3925)は心の中で「わたし自身の正常を証明するため、異常である歪虚を滅したいと思うように」と続ける。
リシャール・べリンガーは唇をきゅっと結ぶ。
「登れそうではないが、はしごで少し補強したほうがいいのか? 機導術で行けるのか?」
ルナリリル・フェルフューズ(ka4108)は遠目からの計算を行う。
松永 光頼が持っている地図やデータでは不明が多いが、傾斜は武人たちが用意した梯子くらいの距離だろうことはわかる。
「リシャールさんたちはあそこにつながる道から行ってください。私は長距離からの射撃のため別ルートで行きます」
ミオレスカ(ka3496)はリシャールに説明をする。
「魔導短伝話を持っていれば連絡はできる」
アルトが魔導短伝話を荷物から出して見せる。
リシャールははっとするが同道する光頼が持っているため問題がなかった。
「……私をはじめとした援護射撃は意識しなくていいです。必要なら互いに指示を出します。いろんな方がいて、いろんなスキルがあります。それを組み合わせた作戦を考えるのは、今後にとってもいいことだと思いますので、ぜひ多角的な見方をしましょう」
ミオレスカは真剣にリシャールがうなずくのを見る。ミオレスカは自分自身に言い聞かせている面もあった。新人に教えることで己の気持ちも初心に戻るかもしれない。
マリィア・バルデス(ka5848)はリシャールと何度か依頼で会っている。彼の背景も考えると複雑な思いもあった。
「人は転んでさえ死ねるんだから気をつけろっていう時期は過ぎちゃったのよね……あとはもう実践を積むしかないのよね」
仲間を守りつつ、彼を見守るために銃に手を当てた。
●移動
道を行くのは彩萌とカインにリシャールと光頼とマリィアだ。マリィアは現場が見えるあたりで隠れて道やのり面を行く仲間へ援護を行う。援護が終われば魔導バイクで駆け付けるにも近い位置だ。
道は狭い上、見つかる危険性は高い。普段使いの道であるだろうし、自分たちが使うのだから用心はするだろう、別の物も来る可能性を考えられない頭脳はないから。登攀するほうは見つかると無防備に近い。
細い道に差し掛かった仲間を見て、犬を放つ機会をうかがう。実際を見ると下手に動かすことはできないと判断した。
「待機していてね」
犬たちは理解したようで座った。
ミオレスカは地図で目星をつけた位置を目指す。援護するために洞窟が見え、仲間の行動が見える場所だ。
途中でヒヤッとしたがなんとか目的のところまでやってきた。風向きが変わるということがなければ見つかることはないはずだ。
距離を測る。
「銃でも問題はないようですが、弓のほうが確実ではありますね」
つぶやくと身を低くし、魔導短伝話で仲間に短く連絡を入れる「いつでも」と。
スキルを用いれば一番早く登り切れる予定はアルトとルナリリルだ。スキルを使っているところに見つからないことも前提であるが。
「念のため、洞窟の位置が情報通りか……見てきてくれ」
アルトは自身も見ていたが確実性を求めた。ペットのモフロウと桜型妖精アリスの「アリア」が飛んでいく。モフロウの上にアリスが乗っているため早い。
「……ほのぼのとした景色だな」
「そうだな」
ルナリリルにアルトも口元を一瞬緩めた。
うまい具合にモフロウたちは崖の下に付き、アリスが身を乗り出しているように見えたが、慌てて引っ込む。コボルドが縁にやってきた。
しばらく見ていると、コボルドは見回りの続きをしに戻って行った。
戻ってきたアリスはアルトにうなずきながらジェスチャーをしている。
「問題ない感じか?」
「なら、良いな」
様子をうかがいつつ仲間の連絡を待つ。一方で、下から見ている間にできることはしておく。登るのに時間がかかるか否か、成功するか否かよりも、行動を合わせることが重要。
カインと彩萌が道の先をうかがう。
コボルドがうろうろしているくらいだが、道が細い上、転落の危険性もあった。背後から戻るゴブリンに出会うという危険もなくはない。
「地形もあって敵が来ないと高をくくっているのでしょうか」
「ありうるな……歪虚を親分と思っていたら、気も緩むか……ゴブリンたちは逃すつもりはないですが」
二人の背後でリシャールがそわそわした様子で待機している。
「戦いの経験がない……わけではないのですよね?」
彩萌が声をかけた。
「あ、はい……なんというか……意識したのが今回が初めてかもしれません」
「意識した?」
「はい。……今回のように、討伐に赴くという意識は初めてです。勢いだったり巻き込まれたり……が多くて」
「視野を狭くしないように、周りにも気を配りましょう。味方がいる、ということを忘れないように」
彩萌の忠告にリシャールは素直にうなずく。
「ゴブリンやコボルド以外はお任せします……僕の邪魔をするなら歪虚とて容赦はしませんが、僕はゴブリン退治の続きに来ただけです」
カイン言葉にリシャールは思い感情を見た気がした。ただ、自分の実力を考えると歪虚対応に不安はある。
光頼はリシャールの肩をポンとたたいた後、ミオレスカの連絡に続き、連絡を入れた。
「そろそろ、出発します」
予想通り、道半ばでコボルドに吠えられ、ゴブリンたちがやってきた。
●戦闘とは
ミオレスカは銃ではなく弓でまずは応戦した。
道を行くメンバーが平地に入りきれないと戦闘は長引く。ゴブリンやコボルド以外、歪虚と思われる姿も目撃にあるためだ。
「先手も兼ねて行きます!」
矢を複数つがえ敵がまとまっているあたりに放った。まさに雨のように矢が降り注ぐ。
「混乱してくださってますね」
新たな矢をつがえ、確実に敵を沈める戦法に変更した。
細い道に向かってコボルドとゴブリンは来る。
カインは盾を使い防ぎつつ隙を見つける。
「こういう時こそ、魔法です【デルタレイ】」
彩萌が放ち、殺到する敵の動きが変化する。
「今だな」
カインは武器を構え、前に出た。敵に囲まれる寸前であるが、仲間もいるため問題なかった。
彩萌が【ジェットブーツ】で平地に一気に抜ける。
「リシャール君、行くぞ」
「はい」
リシャールと光頼が続いた。
マリィアはのり面にいる二人を意識する敵がいないかを注意深く見る。
洞窟前の平地にリシャール達が入ったことを確認後、少し位置を移動した。
ミオレスカの矢も飛ぶ中、銃を構え、崖の方に行きそうな敵を狙う。
崖登りをしているアルトとルナリリルが一気に動いた。
戦いの音が耳に届く。
「先に行くよ」
アルトはマテリアルを活性化し、行動に加速をつける。狙われたときの保険もかねてはある。登り切る寸前からは敵を狙うにも中途半端な距離。魔導ワイヤーを掛けられるところを狙い、走るように登り切る。
「これが仕上げ!」
投符を【紅糸】に乗せゴブリンに投げつける。真紅の光が走るがごとく、アルトはゴブリンの横に着地し、ワイヤーを戻した。
「遅れはしない」
続くようにルナリリルは機導術【反重力脚】を用い、魔導ワイヤーで落下を防ぎながら走り、再び機導を用いて登り切った。
二人の前にはカインを取り巻くゴブリンたちが見える。
不意に洞穴から咆哮が響く。
「親玉がいるってわけだ。片づけつついくか」
「それなら援護は惜しまない。受けてみろ、私の秘儀【十二偽光】!」
ルナリリルの魔法の閃光とともに、アルトは駆け抜けて洞窟の前に立った。
「……リシャールさん」
咆哮を聞いた瞬間リシャールが足を止めたのが見えたためミオレスカが周囲の敵を積極的に狙う。
「すぐに動けているみたいですが」
下りていくタイミングを計りつつ援護射撃を行った。
リシャールが足を止めた瞬間、ゴブリンに狙われる。幸いなことにそれはミオレスカの矢で倒された。
「べリンガーさん!」
彩萌が鋭い声を上げる。
「あ」
「命取りになるぞ! 敵は待ってくれないぞ!」
カインは声をかけた。彼自身、囲まれているとはいえ、防御と攻撃で敵をほんろうし、一体ずつ確実に数を減らす。
「そうですね」
リシャールは一呼吸を置いた後、刀を振るった。鋭い一刀となり、ゴブリンにそれなりの傷を負わせた。
「恨みはなく、怒りもありません。ただわたしがわたしであるために、あなたたちを滅します」
彩萌はリシャールが攻撃していたゴブリンに機導剣を用いて攻撃する。
タイヤが石を踏む音が響き、魔導バイクにまたがったマリィアが到着した。全員が平地に上がったところで駆け付けた。
「お待たせ」
マリィアは拳銃を両手に、周囲を見た渡した。あと一息であり、油断しなければ終わるだろう。犬たちが威嚇するように吠えた。
暗がりに何かがいるが、入るのは危険だ。十分戦えるとしても、ライトを持っていくにも手がふさがる。
「おい、お前の方が強いのだろう? 仲間が消える前に吠えていないで出てこい!」
アルトは声を上げ、長髪をする。
「魔法で一気に片付くか?」
ルナリリルがそばに来ていた。すなわち敵の殲滅が終わったということ。
「ゴブリンが終わればそれでもいいとは言ってはいられないですね」
カインは呟く。
のり面を下り、ミオレスカが合流し、銃を構え洞窟を見る。
「出てこないなら、出てこさせます!」
「それでいいかしら?」
ミオレスカとマリィアが仲間に問い、洞窟内に銃を構えた。
「一応、一度ライトで照らす」
アルトがLEDライトで中を照らした瞬間、おおよそがわかる。
銃声が響いた。
咆哮と重い足音がし、それが出てきた。
「うっ」
「これが妖怪というわけだ。歪虚でも憤怒に属するモノ」
リシャールに光頼が説明する。歪虚の姿は大きいゴブリンだった物のようだが、何か組み合わさったのか醜悪さがある。
「歯ごたえはありそうだ」
アルトはすっと移動し【散華】を用いる。
「これはどうでしょう」
ミオレスカが【レイターコールドシュート】を放つ。
「これが本番だもの」
マリィアの二丁の銃が火を噴く。
「【デルタレイ】」
「【十二偽光】」
彩萌とルナリリルからそれぞれ光が放たれ、きらめきは敵を貫く。
「お前はおまけだ」
カインはマテリアルを込め思いっきり剣をたたきつける。
「はああ!」
気合とともにリシャールが攻撃をする。
「……」
光頼はリシャールを止め損ねたが、鋭い技とともに出た。
「ガアアア!」
それは腕を振り回し攻撃をしてきた。鋭く重い二度の攻撃に、前に出ていたカインとリシャール、光頼が巻き込まれる。
「っ!」
リシャールがさばききれず吹っ飛ばされ、倒れた。
ダメージは蓄積されていた妖怪は次のハンターの行動の時には倒されたのだった。
「これで最後だ、世に平安のあらんことを」
ルナリリルは祈った。
●作戦完了
リシャールはひどい打撲であるが、何とか動くことはできた。
洞窟の中や周囲にゴブリンやコボルドなどの姿はなくなった。歪虚に惹かれたような雑魔もない。
「こちら側に害をなして戦ったゴブリンは子どもであろうと殲滅しなければなりません。生き残りは恨みを忘れず、必ず報復に来る。その連鎖はここで断つ、これがハンターとしての責任です」
カインは淡々としているが、ところどころ憎悪を感じるような声音でもあった。
リシャールはただうなずく。
「生き延びれれば強くなる。だから自分も他人も生き延びられる方法を探す。本当のところはすごくシンプルなの。ただ、私たちはハンターとしてってつくだけで済むけど、リシャールには他にもあるでしょう?」
マリィアの言葉にリシャールは首を横に振った。
「言っていることはその通りだと分かります。でも、『ハンターとして』といっても、皆さんも人です。他もあると思います」
まじめに答える。
マリィアは困ったような顔でリシャールの肩を優しくたたいた。
「新米とはいえ……あっさり私程度なら追い越しそうな気がする……な」
ルナリリルは大人の視線でリシャールを見る。素直にハンターの話を聞き、そして前に進もうとしている。情報の積み重ねと実践という二つの道から。
「そうですね……でも。私も学ぶことはまだまだありますよ」
「人生は勉強でもある?」
「はい。リアルブルーの食材も興味深いですし」
ミオレスカの言葉を聞きながら、ルナリリルはリシャールを見ていた。
「戦う理由……」
「生きる為だろう?」
彩萌のつぶやきに傭兵一家に育つアルトは言う。
「きみだってそうだろう?」
「……わたしが正常であることを証明する助け……」
「リシャールだって、貴族の跡取りだろうが、生きる為戦う。自分を生かさないと始まらない」
彩萌はうなずく。
負傷によりリシャールは座り込んでいるが、その表情は晴れ晴れとして見えた。
光頼の部下たちが事後処理に現場に入ったのと入れ替わりに、一行は天ノ都に戻った。
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作戦相談所 雨月彩萌(ka3925) 人間(リアルブルー)|20才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/02/28 01:50:33 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/02/25 21:23:34 |