ゲスト
(ka0000)
【王臨】さらば、愛しきオートマトン
マスター:藤山なないろ
このシナリオは5日間納期が延長されています。
オープニング
●
遡ること半月ほど前。
昨年初夏より公には消息不明とされている元王国騎士団長エリオット・ヴァレンタイン(kz0025)が、極秘裏に王城へ現れた。
王国には、現在幾つかの脅威が迫っている。それらに対する有効策を模索していた青年は、あるアーティファクトの存在を突き止めた。調査によれば、それは遙か昔から存在する謎の遺跡“古の塔”に眠っている可能性が高い。
秘宝確保のため少数のハンターと古の塔へ突入し、第4階層へ到達したエリオットは、予想外の遭遇を果たす。それが、“塔の番人”と思しき少女、ないし少年だった。
「ボクらが守り継いできた防衛装置を示すには、条件がある。それは、ボクらの試練に打ち勝つことだ」
彼ないし彼女に課された第一の試練こそ、「様々な障害を突破し、塔の最上階へ到達しろ」というオーダーだ。
エリオット、王女システィーナ・グラハム(kz0020)、大司教セドリック・マクファーソン(kz0026)、そして現王国騎士団長ゲオルギウス・グラニフ・グランフェルトの四名からなる王国首脳陣は、この試練を受けて立つ決定をくだし、その日のうちに大号令が発布されることとなる。
『王国の一層の発展のため、ゴーレムの核の回収を目的とした大掛かりな古の塔制圧戦を行う』、と。
無論それは、騎士団や貴族、ハンターに対する“表向きの体裁”だが、こうして王国は、総力を以て塔の試練に挑むこととなったのだった。
第一の試練開始から一週間ほどが経ったある日、グラズヘイム王城の円卓に集ったのは四人の首脳。
「塔の番人が、攻略の手掛かりを?」
ゆるく弧を描く柔らかな金の髪は陽光に似た輝きを放ち、長い睫毛に縁取られた大きな双眸はまるで翠玉のよう。
その少女は、グラズヘイム王国王位継承権第一位、王女システィーナ・グラハム。
王女の問いかけに、騎士エリオット・ヴァレンタインが生真面目に首肯している。
「はい。次の最上階での試練を、彼女──ないし彼は、明白に“警告”していた」
「……どうするつもりかね。騎士団長」
大司教に振られ、現騎士団長は顎鬚に触れる。
「とはいえ、塔という限られた空間だ。通路幅には一人がやっとの場所もあると聞く。そもそも図書館内部の転移装置を使ってしか行けない場所だ。大型兵器の投入は不可能。更に人員を投下しすぎても屋内戦ならば“互いの動きを阻害するだけ”の愚策となる恐れもある」
「ただ……恐らくだが、最上階と思しき場所は“開けた広間”になっているはずだ」
未知の情報に、ゲオルギウスは眉を動かした。
「なるほど、お前は例の管制室で見ていたわけか」
「ああ。あの日見た画面内の光景で“俺がまだ見ていない場所がひとつだけある”。恐らくあれは──」
「──であるならば、ある程度まとまった数を送るべきだろう」
システィーナは一言一句聞き洩らさぬよう、騎士のやり取りを見守っていた。
過去千年もの歴史の中で“最も激動の時代”は“今”だと言えるだろう。
万全の王制に統治された国だろうと、この過酷を乗り切ることは至難であったはず。
しかしそんな時代、この国の中枢にいるのは父王に早逝された小さな王女なのだ。
──今、自分には何ができるのか。
国の為、民の為、少女は必死に足掻いていた。
なにも出来ないと、ただ悲観するだけの“王女”にはなりたくないと。
だから──
「──殿下、良いですかな」
「はいっ。既に地上5階までのフロアからゴーレムは倒滅されたそうですが、王国騎士団は、貴族諸侯並びにハンターのみなさまと共に、引き続き塔攻略の手を募る。そして最上階へ突入する部隊を編成し、明日夕刻に突入を開始する──ですね」
王女の確認に首肯し、老騎士は大司教へと視線を送った。つまり彼は“大司教の決定を待っている”のだ。
少女がその行為を前に何も思わないわけではない。
だが、“それを理由に自分が舵に触れないことはすべきではない”と理解している。
「この試練、必ず勝って、そして……ご先祖様たちが未来に託した“宝物”を受け取りましょう。よろしいですよね、大司教さま」
「ええ、殿下。他に道はないでしょうからな」
●人の可能性
「この景色は……」
そこは、塔の最上階のはずだった。
王国に住む者ならば、直感的に理解しただろう。
美しい草花の平野。夜空に輝く優しい満月。遠くに臨む“王城”のシルエット。
仕掛けられた術式が、「塔の最上階」を「グラズヘイム王国の原風景」に変えていたのだ。
それは、すなわち“世界の召喚”。掟破りにも等しい“破格の大魔術”。
──その事実に、青年はぞくりとした。
千年の時を越えて再現された“美しき世界”に。
太古の時代、これほどまでの魔術を行使する人間がいたという事実に。
「……そうか、こいつはいい」
男は、小さく笑った。心底からの喜びだった。
この魔術が破格であればあるほど、その事実が男を喜ばせる。
男──エリオット・ヴァレンタインはこう理解していた。
この事象は、“これほどまで超常的な力を人間が操れることの示唆”。
ならば“同じ人間である自分たちにも、超常的な大魔術を、兵器を、生み出せることの証明”に他ならない。
これを目の当たりにしただけで、ここまでやってきた価値があった。
今しがた現れたゴーレムたちもまた“この大魔術を仕掛けた人間による傑作”だという。
──ならば、感謝をしよう。この強敵と戦えることに。人の可能性を示した、遠き時代の魔術師に。
◇
塔の最上階に辿りついたはずの王国連合軍は、そこに居た謎の少女ないし少年により、すぐさま分断されることとなった。「宝を示す」などという発言を耳にした気もするが、事情を問い糺すべき相手(第六商会の長)は別地点に居る都合、後回しにするほかない。
連合軍のうち、十人のハンターが“飛ばされた”場所は、輝く神鳥より遥か北方300mほどの地点。
後背からの神鳥の光と、空からの月光が辺りを照らし、夜闇の先を暴いている。
だからこそ、すぐ目視できた。北へ40mほど離れた場所に“何かが居る”。
認識と同時、それは大地を震わすほどの大声で問いかけてきた。
『人間、答えよ。王国は幾つの年を刻んだ?』
十人のハンターのうちの一人──目深にフードを被り、顔の半分をストールで覆い隠した男が答えた。
「……千と十七だ」
『“千”を越えたか』
応じる声に感情はない。自動人形にそれは不要な機能なのだから当然のことだ。
『我ら、四大元素を司りし“守護者”。儂は長老、北のノーム』
だが、しかし──
『汝、生を願うか?』
──それは、問うた。
『生は、死という終焉により確立する。それは“万物の理”──終わりの約束された有限性の事象だ。我らも例には漏れん』
巨大な二振りの槌を構える長老は、何を思うのだろうか。
『“生”を得たくば、儂に“死”を託せ』
──さあ、汝、存在の証を立てよ。
遡ること半月ほど前。
昨年初夏より公には消息不明とされている元王国騎士団長エリオット・ヴァレンタイン(kz0025)が、極秘裏に王城へ現れた。
王国には、現在幾つかの脅威が迫っている。それらに対する有効策を模索していた青年は、あるアーティファクトの存在を突き止めた。調査によれば、それは遙か昔から存在する謎の遺跡“古の塔”に眠っている可能性が高い。
秘宝確保のため少数のハンターと古の塔へ突入し、第4階層へ到達したエリオットは、予想外の遭遇を果たす。それが、“塔の番人”と思しき少女、ないし少年だった。
「ボクらが守り継いできた防衛装置を示すには、条件がある。それは、ボクらの試練に打ち勝つことだ」
彼ないし彼女に課された第一の試練こそ、「様々な障害を突破し、塔の最上階へ到達しろ」というオーダーだ。
エリオット、王女システィーナ・グラハム(kz0020)、大司教セドリック・マクファーソン(kz0026)、そして現王国騎士団長ゲオルギウス・グラニフ・グランフェルトの四名からなる王国首脳陣は、この試練を受けて立つ決定をくだし、その日のうちに大号令が発布されることとなる。
『王国の一層の発展のため、ゴーレムの核の回収を目的とした大掛かりな古の塔制圧戦を行う』、と。
無論それは、騎士団や貴族、ハンターに対する“表向きの体裁”だが、こうして王国は、総力を以て塔の試練に挑むこととなったのだった。
第一の試練開始から一週間ほどが経ったある日、グラズヘイム王城の円卓に集ったのは四人の首脳。
「塔の番人が、攻略の手掛かりを?」
ゆるく弧を描く柔らかな金の髪は陽光に似た輝きを放ち、長い睫毛に縁取られた大きな双眸はまるで翠玉のよう。
その少女は、グラズヘイム王国王位継承権第一位、王女システィーナ・グラハム。
王女の問いかけに、騎士エリオット・ヴァレンタインが生真面目に首肯している。
「はい。次の最上階での試練を、彼女──ないし彼は、明白に“警告”していた」
「……どうするつもりかね。騎士団長」
大司教に振られ、現騎士団長は顎鬚に触れる。
「とはいえ、塔という限られた空間だ。通路幅には一人がやっとの場所もあると聞く。そもそも図書館内部の転移装置を使ってしか行けない場所だ。大型兵器の投入は不可能。更に人員を投下しすぎても屋内戦ならば“互いの動きを阻害するだけ”の愚策となる恐れもある」
「ただ……恐らくだが、最上階と思しき場所は“開けた広間”になっているはずだ」
未知の情報に、ゲオルギウスは眉を動かした。
「なるほど、お前は例の管制室で見ていたわけか」
「ああ。あの日見た画面内の光景で“俺がまだ見ていない場所がひとつだけある”。恐らくあれは──」
「──であるならば、ある程度まとまった数を送るべきだろう」
システィーナは一言一句聞き洩らさぬよう、騎士のやり取りを見守っていた。
過去千年もの歴史の中で“最も激動の時代”は“今”だと言えるだろう。
万全の王制に統治された国だろうと、この過酷を乗り切ることは至難であったはず。
しかしそんな時代、この国の中枢にいるのは父王に早逝された小さな王女なのだ。
──今、自分には何ができるのか。
国の為、民の為、少女は必死に足掻いていた。
なにも出来ないと、ただ悲観するだけの“王女”にはなりたくないと。
だから──
「──殿下、良いですかな」
「はいっ。既に地上5階までのフロアからゴーレムは倒滅されたそうですが、王国騎士団は、貴族諸侯並びにハンターのみなさまと共に、引き続き塔攻略の手を募る。そして最上階へ突入する部隊を編成し、明日夕刻に突入を開始する──ですね」
王女の確認に首肯し、老騎士は大司教へと視線を送った。つまり彼は“大司教の決定を待っている”のだ。
少女がその行為を前に何も思わないわけではない。
だが、“それを理由に自分が舵に触れないことはすべきではない”と理解している。
「この試練、必ず勝って、そして……ご先祖様たちが未来に託した“宝物”を受け取りましょう。よろしいですよね、大司教さま」
「ええ、殿下。他に道はないでしょうからな」
●人の可能性
「この景色は……」
そこは、塔の最上階のはずだった。
王国に住む者ならば、直感的に理解しただろう。
美しい草花の平野。夜空に輝く優しい満月。遠くに臨む“王城”のシルエット。
仕掛けられた術式が、「塔の最上階」を「グラズヘイム王国の原風景」に変えていたのだ。
それは、すなわち“世界の召喚”。掟破りにも等しい“破格の大魔術”。
──その事実に、青年はぞくりとした。
千年の時を越えて再現された“美しき世界”に。
太古の時代、これほどまでの魔術を行使する人間がいたという事実に。
「……そうか、こいつはいい」
男は、小さく笑った。心底からの喜びだった。
この魔術が破格であればあるほど、その事実が男を喜ばせる。
男──エリオット・ヴァレンタインはこう理解していた。
この事象は、“これほどまで超常的な力を人間が操れることの示唆”。
ならば“同じ人間である自分たちにも、超常的な大魔術を、兵器を、生み出せることの証明”に他ならない。
これを目の当たりにしただけで、ここまでやってきた価値があった。
今しがた現れたゴーレムたちもまた“この大魔術を仕掛けた人間による傑作”だという。
──ならば、感謝をしよう。この強敵と戦えることに。人の可能性を示した、遠き時代の魔術師に。
◇
塔の最上階に辿りついたはずの王国連合軍は、そこに居た謎の少女ないし少年により、すぐさま分断されることとなった。「宝を示す」などという発言を耳にした気もするが、事情を問い糺すべき相手(第六商会の長)は別地点に居る都合、後回しにするほかない。
連合軍のうち、十人のハンターが“飛ばされた”場所は、輝く神鳥より遥か北方300mほどの地点。
後背からの神鳥の光と、空からの月光が辺りを照らし、夜闇の先を暴いている。
だからこそ、すぐ目視できた。北へ40mほど離れた場所に“何かが居る”。
認識と同時、それは大地を震わすほどの大声で問いかけてきた。
『人間、答えよ。王国は幾つの年を刻んだ?』
十人のハンターのうちの一人──目深にフードを被り、顔の半分をストールで覆い隠した男が答えた。
「……千と十七だ」
『“千”を越えたか』
応じる声に感情はない。自動人形にそれは不要な機能なのだから当然のことだ。
『我ら、四大元素を司りし“守護者”。儂は長老、北のノーム』
だが、しかし──
『汝、生を願うか?』
──それは、問うた。
『生は、死という終焉により確立する。それは“万物の理”──終わりの約束された有限性の事象だ。我らも例には漏れん』
巨大な二振りの槌を構える長老は、何を思うのだろうか。
『“生”を得たくば、儂に“死”を託せ』
──さあ、汝、存在の証を立てよ。
リプレイ本文
ハンターたちの視界に無数の燐光が舞った。仄明るい赤褐色をしたそれに雪の様な儚さはない。
「試練、ときたか。つーか奴さんデケェ。デタラメがすぎるぜ」
そんな溜息を切り刻むように、全身を切り裂く凶悪な烈風が吹きすさび、シガレット=ウナギパイ(ka2884)が周囲を見渡す。風だけではない。大気に舞う“赤褐色”が強烈な熱量で人間を焼き焦がすのだ。
「はッ、これが全域に発生してる訳か」
切り裂かれた皮膚から垂れる血の温かさを感じながら、シガレットはそれを拭うこともせず前を見る。
『“この世”すべての人の死が先か、あるいはゴーレムの死が先か。抗え。死を厭うなら』
「はは、大層なこった。しかしまぁ相変わらず魔術ってなぁ何でもありですな」
ウォルター・ヨー(ka2967)の軽口は、精一杯の虚勢。ノームの言葉を素直に受け取れば、彼らは「すべての人を殺しつくす用意」があるだろうからだ。
彼ら自身がそのための兵器なのだろうが、当然それだけではない。時間が過ぎるほど、先の強烈な炎が人間を焼き尽くし、風が裂き殺していく。
「まあ、こんな酷い戦場でも“お仕事ですし”……なんて御為倒しを言うのは止めにしたもんで」
少年は細身のサーベルを構え、腰を低く落とす。
敵を待つ訳にはいかない。“生を得る為、自ら動きださねばならない”。
「王国の為に、ここはひとつ──ね、リク兄さん!」
「~~なんで僕なんだよッ!」
「か弱い美少年を守るのもヒーローのお・務・め!」
「ああもう! とにかく行くぞ。……僕は“行かなきゃならない”んだ」
キヅカ・リク(ka0038)は、真正面からノームを見据えた。
悠長にしている時間はない。一気に、最短距離で攻め込むべきだ。
ハンターらはリクを先頭にすぐさま突撃を決意するが──先手をとったのは、ノーム。
「何だ、この感覚ッ……!?」
リクが知覚するより早く、異変は起こっていた。
変化は一瞬。脳が指令を出すより早く、少年の全身を土塊が捉え、覆い尽くす。
そこに、間髪いれず──40mほど離れた前方に居る巨体が、動いた。
槌を握った両腕を振るい上げ、恐るべき速度で振り下ろす。一撃は大地を激しく揺らし、土煙を上げて衝撃波を走らせた。放たれた双子の波は、瞬く間にハンターへ食らいついていく。
一つは、闘狩人に。そしてもう一つは、文月 弥勒(ka0300)に。
闘狩人はといえば、迷うことなく剣を引き抜き、衝撃波を受け止める構えを見せたが、しかし。
「避けられるもんは避けるに越したこたねえ、な……ッ!」
他方、弥勒はそれを回避。しかし直後、後方からうめき声が聞こえた。
気付いて少年が振り返ると、壁役に隠れる心算でいたアニス・エリダヌス(ka2491)がよろめいている姿を目にしてしまう。無理もない。今の一撃でアニスの体力は約3割程度も持って行かれたのだ。
「悪い、大丈夫か?」
「ええ。驚きましたが、まだ大丈夫です」
余裕の笑みを浮かべ、首を振るアニスに小さく息を吐いて、弥勒は再び前を向いた。
それよりも問題は土塊に覆い尽くされた“リク”だろうが、この時点で慌てる必要は全くなかったようだ。
「まァ、こんなこともあろうかと……ってやつだ」
受け取りな──そう言って、シガレットが宝剣を軽く振るう。
無駄のない仕草に連動し、見る間にリクを覆っていた土塊が音を立てて崩れ、砂と化していった。
ピュリフィケーションによる状態異常の解除。これがなければ、作戦が総崩れしていたことは言うまでもない。
回復を果たしたリクは、すぐさま目標を再確認。
そうして、ハンターたちは漸くノームへの接近を開始するのだった。
●
リクからノームまで16mと迫ったところで、再び炎と風の乱舞がハンターたちを襲った。
「流石にこれが続くとヤバいな。ゲーム風に言うならDoT(Damage over Time)……ってやつだろ、これ」
視界を邪魔する火の粉を払い、ラスティ(ka1400)が舌打ちする。無視できるダメージではない。
こんな環境で戦っていれば自分達も長くもたないことぐらい明白に解る。
「ならば、一体でも早く試練を打倒さねばなりません。わたし達が敗れれば他の戦場の皆さんも窮地となります」
アニスの言う通りだ。“事”は、自分達だけでは済まない。
そんな中、再びノームの体が淡い黄金色の輝きを放った。
その様子に、クリスティア・オルトワール(ka0131)は見覚えがあった。
これで二度目。見逃すはずもない。
「……今度こそ」
目を閉じ、マテリアルの流れを感じるように心を空っぽにして少女は懸命に術の起点を探る。
開幕一発目は射程外で即応できずに終わったが、今のこの距離ならば。
──捉えた。
少女の前方、フードを被った闘狩人の足元にマテリアルが集約し始めている、ならば。
「させません……!」
少女とゴーレムのマテリアルが激突。クリスティアのカウンターマジックがノームの土葬に食らいつき、端から術式を崩壊させてゆく。瞬後、黄金の輝きが燐光を散らして消失。
『──見事。だが、その力、限りがあろう?』
淡々として、それでいて挑発するように……ノームが、両腕を振り上げた。
再び放たれる二対の衝撃波。その対象は、クリスティアと、そして恐らくシガレットの方角を指している。
しかし、後衛を狙った攻撃を二度も前衛が見送るはずもない。向かって右手を弥勒が、左手をリクが身体を張って受けに入った。リクにとってそれはさして難もない事だったのだが、かたや弥勒はそうもいかない。
「くっ、そ……死ぬかと思った、だろ……」
思ったよりずっと痛い。というか、“死ぬほど”痛い。
感覚として“半分と少し、持って行かれた”。この一発だけならまだよかっただろう。
だが既に二度炎風を受けており、「死ぬかと思った」という台詞は誇張表現でも冗談でもなんでもない。
今治療を施さなければ十秒後再び襲い来る炎風を受けて“間違いなく弥勒は死ぬ”。
しかし、シガレットは開幕一発目のリクへのピュリフィケーションにより初手で全力移動できず、未だ後方から他の仲間達を追いかけている状況で治療範囲に弥勒を捉えらない。そして、もう一人の聖導士であるアニスは回復の術を持ち込んでいない。危機的状況──かと思われたが、ヒーラーは、彼らだけではなかったのだ。
「「「元気ににゃーれ!」」」
緊迫した戦場に、愛らしい猫たちの声がした。
(我々人間には、猫たちが「にゃーにゃー」「ににぃ」と鳴いているようにしか聞こえないのだが)
リクのユグディラ、ペリグリー・チャムチャム(本当にこの名前でいいのか?)。
アニスのユグディラ、リンクス。
シガレットのユグディラ、ゴン。
ウォルターのユグディラ、名無し。
彼らのお陰で炎風の損傷をカバーできたことが、大きく幸いした。
王国の秘跡たる古の塔の最上階。そこで目の当たりにした破格の大魔法。
古の世界の召喚。そこに現れた塔最後のゴーレム達。
「最上階の秘宝、秘密、神秘、きっとそれはとびきりのモノだ。これぐらいの試練がねえと返って肩透かしだろ」
衝撃の波に裂かれ、首を伝う不快な血を拭って弥勒が不敵に笑う。少年には、攻撃を真正面から捉えたからこそ見えたものがあった。衝撃波だろうが乱打だろうが“槌を振り下ろした直後には必ず隙が出来る”。そして、今はまさに好機。対象は既に“彼女たちの射程内”だ。
「後は頼むぜ……!」
「勿論。なんとしても、この大地の精霊の巨像を倒してみせます!」
ステップで僅かに半歩、弥勒の影から姿を現したのはアニス。長い金の髪を揺らし、少女が魔杖を翳した。
放たれるシャドウブリット。黒より暗い影が塊の形をなしてノームの胸部装甲に叩きつけられる。
思いのほか重い一撃に反応するノームだが、今度はその横っ面を凶悪な雷が貫いた。
それも、左右からほぼ同時に、だ。
『……!?』
伴われる、激しい雷音。
クリスティアとアイシュリング(ka2787)。
二人の術師が対になる形で、右左翼からライトニングボルトを放ったのだ。
その衝撃たるや。ライトニングボルトの多段ヒットは極悪なまでのダメージを叩き出す。
特にアイシュリングの術は、ダメージにしてアニスのシャドウブリットの約2倍の高火力を誇った。
「装甲が厚い部分に“核”があると見込むなら、間違いなく“左胸”……でしょうね」
アイシュリングの魔腕の周囲には、未だ雷の余韻が残り、バチバチと小気味よい音が纏わっている。
「はいはい了解、っと。しっかしまぁ今更だけど、四大精霊型とは、また随分と大物が出て来たモンだよな」
ラスティが口の端をあげた。
弾は既に詰め込んである。それも特製の“重撃弾”を、だ。あとは弾が尽きるまでぶちかますだけ。
当のゴーレムは、内部装置から甲高い駆動音が響いている。恐らく今の損傷によりAI変更のシークタイムに移行したと見える。この“一瞬の隙”を見送るつもりは毛頭ない。
「ノームのおっさんよ、悪いが俺らも死ぬワケにはいかねえんだ」
少年は、慣れた手つきで照準を合わせた。狙うは、雷が直撃したばかりの左胸部。
「さて、殺るか殺られるか、時間との戦いと行こうじゃねェか!」
ラスティの指が引金に触れる。感触と相反する重厚な銃声が唸りをあげ、ゴーレムの装甲めがけて弾丸が空を裂く。
瞬後、胸部装甲と銃弾がかち合う音が盛大に飛散し、少年は手ごたえを感じると同時に苦笑を滲ませた。
「……ったく、こいつは固ぇわ」
追い打ちに猟銃士の青年が放物線を描くように幾つもの矢を射出。僅か10秒で与えたダメージは、かなりのものだった。特に、特攻属性である「風」のライトニングボルトは図体のでかいノームを相手にこれ以上ない好相性スキル。突き穿つように放たれる雷撃は、ノーム自身の予測を越える高負荷を与えていた。
間違いなく、二人の術師が対ノームメインアタッカーだろう。
つまり、どうあがいてもノームのヘイトは“彼女たち”に移ることになる。
●
再び、炎が舞い、風が全ての人間を切り刻んでゆく。
ノーム至近には2人のハンターがいる。火の粉を払うでもなく、瞬きもせず、ノームの真正面に立ちはだかっていたリク。そして、前に出ながら、リクとカバーし合える立ち位置を維持していた弥勒。
その後方には、 囮役が機能不全を起こした際に代替を務める闘狩人や、他の仲間達。それぞれが囮役の後方に隠れるような形に陣取っていた。彼らは衝撃波の被弾を防ぐつもりでいたのだが、それはつまり「ノーム正面方向に対し、長い隊列が出来ている」ことになる。
しかし、一点……彼らは“ノームに対し左右、水平方向に対する意識が希薄”だった。
失念していたわけではないはずだが“ノームは動く”のだ。
『我らの創造主は、優れた魔術師であった。天才という言葉では気安いほどに』
老爺はそんな音声を発し、そして腰を低く落とすと、その巨体で“走った”。
ハンター同様、全力移動すれば「長い隊列の横をとる」くらい容易だ。
なぜハンターたちはそんな事態を許してしまったのか?
彼らは、“誰が囮となるか、その交代の意識”は的確だったが“敵が回り込んで後衛を狙いに来る”ことへの対策が甘かった。“敵を取り囲むなど、後方への移動を制限させる意識がなかった”のだ。
『魔術師。汝……エルフか』
「ッ……それが、何?」
ノームが全力移動で回り込めば、アイシュリングの目前に陣取るなど瞬く間の出来事。縦に伸びた隊列の横をとったノーム。その視線の先には、前衛たちのカバー範囲外にクリスティアやアニス、シガレットもいる。
『里を離れ、人間に加担するか。何故だ?』
問われたことの意味は解る。だが、答えるより先に、アイシュリングは別の気配に身体を強張らせた。
多量のマテリアルが渦巻いている。それは見る間に少女の足元に集約していくが、しかし──
「そうはさせないと、先程も言ったはずです……!」
再び、クリスティアのカウンターマジックが魔術を相殺。
「ちッ……さすがに“優先順位”間違えねえなー。よくできてるわ」
「そんなことを言ってる場合ではないです、弥勒さんカバーを!」
「アイシュリングさん、クリスティアさん! 後退してくださいッ!!」
弥勒のぼやきをアニスが叱る側面で、リクの叫びが響き渡った。
アイシュリングの耳に、複数の地を蹴る力強い足音が届いてくる。態勢立て直しは必須。ならばと、エルフの少女は反射的に後退を開始した。やがて、後衛を守るようにノームと少女の間に少年たちが飛び込んでくる。そんな彼らの影に身を顰めながら──しかしアイシュリングの意識は、先の“問い”から引き剥がせずにいた。
ノームを警戒すべく見上げていれば、否応なく“それ”が目に入る。大きな、大きな満月だ。
──最後に“彼”と話したのも、月の美しい夜だった。
そんなことを、頭のどこかで反芻していた。少女は信じていたのだ。彼の行動を。“全ての行動に理由がある”と。
「……私、は」
だからこそ、“今もどこかで彼が生きていると信じて”歩き続けた。
「もう、誰も犠牲にはしません。こんなところで立ち止まる訳にはまいりませんから……!」
アニスの声が聞こえた。少女は、再びシャドウブリットを放つべく杖の先に意識を集中している。
そして、遙か後方からラスティが乾いた笑いを浮かべていた。
「危険因子から殺す、か。……そりゃ、正しいわ」
放たれる闇の塊と並走させるように、少年の手元から繰り出された銃弾が奔る。
夜闇に溶けるように、二つの影はノームの左胸を的確に穿ち、そして猟銃士が更に追い撃ちをかける。
──バキン、と。
鉱物の割れる音が鳴り、分厚い装甲にヒビが入ったことが確認できた。
「やっぱりあの奥だな……ッ! 核の目星、ついたぜ。総員あそこを狙えるな!?」
ラスティの号令は、しかし何度目かの炎嵐に呑みこまれてゆく。
その中で、ノームは何を見ていたのだろう?
「ッ──すみません、もう次は防げません!!」
クリスティアが警鐘を鳴らした。カウンターマジックが尽きたのだ。
土葬は副行動。それが来てから、高威力の攻撃が来る。二つで一つの“連撃”だ。
勿論、シガレットなら状態異常は解除できる。が、リアクションスキルのカウンターマジックならともかく、ピュリフィケーションは自分達の行動手番がくるまで使えない。つまりもう、土葬からのコンボは避け得ないのだ。
ノームの狙いはアイシュリングだが、彼女を狙うノームの目前にはリクが立ちはだかっている。
「来いよ、贋作! お前に……“オレ”は止められない」
本来、人間の小さな体で9m近い体長のノームを押さえることなど出来はしない。一人の少年が正面に陣取ったとて、もとより“壁として余りにちっぽけなのだ。
しかし、そんなことなど百も承知。それでもリクは立ち向かわずには居られなかった。
生きるだの死ぬだの、そんなことを“試練”にされてはたまったものではないのだ。
『よかろう。ならば汝が先に死ね』
「死ぬもんかよ、死んでたまるかよ……あの日の約束を叶えるためにも、こんな処で、終われないんだよ……!」
刹那、土塊は見る間にリクを取り込んだ。そして──
『まず、“一人”──』
ノームが二つの槌を身体の中央で重ね合わせ、凶悪な速度で振り下ろす。
「光よ! 彼の輝きを護りたまえ……!」
アニスの祈りが光を放ったが、間もなく痛烈な音が響いた。
土塊が砕け散る音。
リクの装甲と槌がぶつかり合う音。
少年の体が崩れ落ち、倒れる音。
ありとあらゆる不協和音が、周囲の者の心を揺さぶる。
今の一撃は“十二分に人を殺す”と肌で解ってしまったのだ。だが、少年はそう“簡単に終わらなかった”。
『マテリアル反応? ──他者の力が作用したか』
土塊の奥から露出したリクの体が、淡く発光していた。それは、アニスが放ったホーリーヴェールに加えて更に別の力が作用したことの証。──“生命の繋ぎ手”が祈り捧げたマテリアルの加護だ。
土の中、リクが動く気配はないが生命の匂いはまだ消えていない。
「死者は出さねェ……絶対に、なァ!」
誰より早く、シガレットが傍に寄りフルリカバリーを施す。
「こっちは立て直すからよ、早くそのデカブツ黙らせてくれよなァ?」
「言われずとも。“盾”にした以上、働かにゃあ兄さんに顔向けできやせんて」
ウォルターの表情から、既に“笑い”は消えている。
リクが潰された直後、既に少年は走り出していた。槌を叩きつけたラグタイム。その隙に脇をすり抜け、ノームの膝を足場に高く高く跳ぶ。狙いはただ一つ。
「ちっと荒っぽくって……あたしらしくはござんせんが」
──まあ、僕らしくはあるんじゃないかな。
言葉にする気はないけれど、心の中で独り言ちる。眼前に、ひび割れた装甲が現れた。それこそ目標部位だ。跳躍の勢いままに、ウォルターはサーベルを両の手で逆手持ちし、上方から全体重を乗せた渾身の刺突を繰り出す。
一際盛大な音と共に刃が一段沈みこむ感覚が掌に収まってきた。
「どうだ、見たか!」
にししと笑い、舞い散る破片を伴ってウォルター自身も大地へ着地。
確かな手ごたえと引き換えに、痛烈な痺れが掌に残りはしたが、それはそれ。
遂に、核が露出した。あとは、そこさえ破壊できれば勝負がつくはずだ。
「諦めるわけにはいかないの。千年を越えて続く強い思い……それを、貴方たちを、越えるわ」
アイシュリングが、自らの腕にマテリアルを纏わせると、稲妻が少女の掌から奔る。
他方、クリスティアも既に照準を合わせていた。詠唱終了。マテリアルは綿密に、強い思いで織り上げた。
「王国の歴史は、これからも続きます……続かせてみせます。あなた達の死を乗り越えて、必ず」
ワンドに輝く宝玉が風のマテリアルに染まる。そして──
『来るが良い、人間……!』
「終いだ、撃て───ッ!!!」
ラスティの銃声を開幕の合図に、ハンターが最期の総攻撃を開始。
アニスから光の波動が放出されると、その頭上を掠めるように二本の激しい稲妻が迸る。
猛攻の果て。全てが核を穿ち抜くと、やがてバチバチと異音が響き始めた。
それが終わりの合図であることは、誰の目にも明らかで。
膝をつき、崩れ落ちるノームからガシャリと冷たい金属音が響く。
『この、“熱量”──我らが、得られぬ、“生”の──』
しかし、未だそれは言葉を発しようとしていた。
思考する機械。塔を守るプログラムである“それ”が、だ。
「人工的に造られた“命”、か」
既に満足に身体を動かすことが出来ないノームの前に立ち、弥勒が呟く。
『……命、か。これが』
「そうだ。お前が自分で言ってたことだろ。生があって死があるなら、死があれば生もある。
……だから“殺してやる”。満足して逝け」
露出した核めがけ、弥勒が輝剣を突き立てた。
まるでガラスが砕け散るような、繊細で物悲しい音が心に木霊する。
『雌雄、は、決し、た……汝ら、我らが“願い”、託す、値する、を、“承認す”』
音声には、ノイズが混じり始めていた。
最早、正確に彼の言わんとすることを理解することは叶わないだろう。
『生きロ──この国、美シき、セカイ、を──ヲ、ヲ、■■■……』
こうして、オートマトンは活動を永久停止。
二度とは目覚めぬ眠りへと、ゆっくり落ちていった。
動かなくなったゴーレムにそっと触れ、クリスティアは瞳を閉じた。
この世界を再現した途方もない魔術師。それを親に持ち、千年もの間塔を守り続けた機械たち。
彼らは「この国を守るため」、ただそのためだけに長い長い時を過ごしてきたのだと言うのだから。
それは、なんと“愛しい”ことだろう。
「長い間、お疲れ様でした。ゆっくり休んで下さい」
相手が“人”ではなくとも、祈り捧げる時間は決して無駄ではないと少女は強く感じていた。
他方、アイシュリングは先のノームの問いを反芻していた。
『なぜ、人間に加担する?』
見上げれば、変わらず満月が輝いている。
「……約束、したからかしら」
呟いて、少女は身を翻した。言葉にすると、陳腐だけれど。思いの形は変わらない。
──“あの満月の夜、交わした約束を果たす時”だから。
だから、アイシュリングはここに在る。己の道を、見出したから。
「……ッてて。どうやら助かったみたいだ」
アニスと、今はここに居ない大切な人に感謝を抱きつつ、リクは体中の土を払っている。
しかし、その胸中は複雑に過ぎた。
「生きること死ぬことに、意味なんて、ないのに」
けれど、意味がないと知りながら、彼は自らが生きる意味を創った。
“自身の心を満たす”為だけの行為だ。けれど、それでよかった。
“人の認める価値は、人の都合でなくなってしまう”。
でも、“自分の認める価値は、自分が認める限り失わずに済む”からだ。
「さて、他のゴーレムはどうなったかな」
未だ塔に広がる異世界には、炎の嵐が吹きすさんでいた──。
「試練、ときたか。つーか奴さんデケェ。デタラメがすぎるぜ」
そんな溜息を切り刻むように、全身を切り裂く凶悪な烈風が吹きすさび、シガレット=ウナギパイ(ka2884)が周囲を見渡す。風だけではない。大気に舞う“赤褐色”が強烈な熱量で人間を焼き焦がすのだ。
「はッ、これが全域に発生してる訳か」
切り裂かれた皮膚から垂れる血の温かさを感じながら、シガレットはそれを拭うこともせず前を見る。
『“この世”すべての人の死が先か、あるいはゴーレムの死が先か。抗え。死を厭うなら』
「はは、大層なこった。しかしまぁ相変わらず魔術ってなぁ何でもありですな」
ウォルター・ヨー(ka2967)の軽口は、精一杯の虚勢。ノームの言葉を素直に受け取れば、彼らは「すべての人を殺しつくす用意」があるだろうからだ。
彼ら自身がそのための兵器なのだろうが、当然それだけではない。時間が過ぎるほど、先の強烈な炎が人間を焼き尽くし、風が裂き殺していく。
「まあ、こんな酷い戦場でも“お仕事ですし”……なんて御為倒しを言うのは止めにしたもんで」
少年は細身のサーベルを構え、腰を低く落とす。
敵を待つ訳にはいかない。“生を得る為、自ら動きださねばならない”。
「王国の為に、ここはひとつ──ね、リク兄さん!」
「~~なんで僕なんだよッ!」
「か弱い美少年を守るのもヒーローのお・務・め!」
「ああもう! とにかく行くぞ。……僕は“行かなきゃならない”んだ」
キヅカ・リク(ka0038)は、真正面からノームを見据えた。
悠長にしている時間はない。一気に、最短距離で攻め込むべきだ。
ハンターらはリクを先頭にすぐさま突撃を決意するが──先手をとったのは、ノーム。
「何だ、この感覚ッ……!?」
リクが知覚するより早く、異変は起こっていた。
変化は一瞬。脳が指令を出すより早く、少年の全身を土塊が捉え、覆い尽くす。
そこに、間髪いれず──40mほど離れた前方に居る巨体が、動いた。
槌を握った両腕を振るい上げ、恐るべき速度で振り下ろす。一撃は大地を激しく揺らし、土煙を上げて衝撃波を走らせた。放たれた双子の波は、瞬く間にハンターへ食らいついていく。
一つは、闘狩人に。そしてもう一つは、文月 弥勒(ka0300)に。
闘狩人はといえば、迷うことなく剣を引き抜き、衝撃波を受け止める構えを見せたが、しかし。
「避けられるもんは避けるに越したこたねえ、な……ッ!」
他方、弥勒はそれを回避。しかし直後、後方からうめき声が聞こえた。
気付いて少年が振り返ると、壁役に隠れる心算でいたアニス・エリダヌス(ka2491)がよろめいている姿を目にしてしまう。無理もない。今の一撃でアニスの体力は約3割程度も持って行かれたのだ。
「悪い、大丈夫か?」
「ええ。驚きましたが、まだ大丈夫です」
余裕の笑みを浮かべ、首を振るアニスに小さく息を吐いて、弥勒は再び前を向いた。
それよりも問題は土塊に覆い尽くされた“リク”だろうが、この時点で慌てる必要は全くなかったようだ。
「まァ、こんなこともあろうかと……ってやつだ」
受け取りな──そう言って、シガレットが宝剣を軽く振るう。
無駄のない仕草に連動し、見る間にリクを覆っていた土塊が音を立てて崩れ、砂と化していった。
ピュリフィケーションによる状態異常の解除。これがなければ、作戦が総崩れしていたことは言うまでもない。
回復を果たしたリクは、すぐさま目標を再確認。
そうして、ハンターたちは漸くノームへの接近を開始するのだった。
●
リクからノームまで16mと迫ったところで、再び炎と風の乱舞がハンターたちを襲った。
「流石にこれが続くとヤバいな。ゲーム風に言うならDoT(Damage over Time)……ってやつだろ、これ」
視界を邪魔する火の粉を払い、ラスティ(ka1400)が舌打ちする。無視できるダメージではない。
こんな環境で戦っていれば自分達も長くもたないことぐらい明白に解る。
「ならば、一体でも早く試練を打倒さねばなりません。わたし達が敗れれば他の戦場の皆さんも窮地となります」
アニスの言う通りだ。“事”は、自分達だけでは済まない。
そんな中、再びノームの体が淡い黄金色の輝きを放った。
その様子に、クリスティア・オルトワール(ka0131)は見覚えがあった。
これで二度目。見逃すはずもない。
「……今度こそ」
目を閉じ、マテリアルの流れを感じるように心を空っぽにして少女は懸命に術の起点を探る。
開幕一発目は射程外で即応できずに終わったが、今のこの距離ならば。
──捉えた。
少女の前方、フードを被った闘狩人の足元にマテリアルが集約し始めている、ならば。
「させません……!」
少女とゴーレムのマテリアルが激突。クリスティアのカウンターマジックがノームの土葬に食らいつき、端から術式を崩壊させてゆく。瞬後、黄金の輝きが燐光を散らして消失。
『──見事。だが、その力、限りがあろう?』
淡々として、それでいて挑発するように……ノームが、両腕を振り上げた。
再び放たれる二対の衝撃波。その対象は、クリスティアと、そして恐らくシガレットの方角を指している。
しかし、後衛を狙った攻撃を二度も前衛が見送るはずもない。向かって右手を弥勒が、左手をリクが身体を張って受けに入った。リクにとってそれはさして難もない事だったのだが、かたや弥勒はそうもいかない。
「くっ、そ……死ぬかと思った、だろ……」
思ったよりずっと痛い。というか、“死ぬほど”痛い。
感覚として“半分と少し、持って行かれた”。この一発だけならまだよかっただろう。
だが既に二度炎風を受けており、「死ぬかと思った」という台詞は誇張表現でも冗談でもなんでもない。
今治療を施さなければ十秒後再び襲い来る炎風を受けて“間違いなく弥勒は死ぬ”。
しかし、シガレットは開幕一発目のリクへのピュリフィケーションにより初手で全力移動できず、未だ後方から他の仲間達を追いかけている状況で治療範囲に弥勒を捉えらない。そして、もう一人の聖導士であるアニスは回復の術を持ち込んでいない。危機的状況──かと思われたが、ヒーラーは、彼らだけではなかったのだ。
「「「元気ににゃーれ!」」」
緊迫した戦場に、愛らしい猫たちの声がした。
(我々人間には、猫たちが「にゃーにゃー」「ににぃ」と鳴いているようにしか聞こえないのだが)
リクのユグディラ、ペリグリー・チャムチャム(本当にこの名前でいいのか?)。
アニスのユグディラ、リンクス。
シガレットのユグディラ、ゴン。
ウォルターのユグディラ、名無し。
彼らのお陰で炎風の損傷をカバーできたことが、大きく幸いした。
王国の秘跡たる古の塔の最上階。そこで目の当たりにした破格の大魔法。
古の世界の召喚。そこに現れた塔最後のゴーレム達。
「最上階の秘宝、秘密、神秘、きっとそれはとびきりのモノだ。これぐらいの試練がねえと返って肩透かしだろ」
衝撃の波に裂かれ、首を伝う不快な血を拭って弥勒が不敵に笑う。少年には、攻撃を真正面から捉えたからこそ見えたものがあった。衝撃波だろうが乱打だろうが“槌を振り下ろした直後には必ず隙が出来る”。そして、今はまさに好機。対象は既に“彼女たちの射程内”だ。
「後は頼むぜ……!」
「勿論。なんとしても、この大地の精霊の巨像を倒してみせます!」
ステップで僅かに半歩、弥勒の影から姿を現したのはアニス。長い金の髪を揺らし、少女が魔杖を翳した。
放たれるシャドウブリット。黒より暗い影が塊の形をなしてノームの胸部装甲に叩きつけられる。
思いのほか重い一撃に反応するノームだが、今度はその横っ面を凶悪な雷が貫いた。
それも、左右からほぼ同時に、だ。
『……!?』
伴われる、激しい雷音。
クリスティアとアイシュリング(ka2787)。
二人の術師が対になる形で、右左翼からライトニングボルトを放ったのだ。
その衝撃たるや。ライトニングボルトの多段ヒットは極悪なまでのダメージを叩き出す。
特にアイシュリングの術は、ダメージにしてアニスのシャドウブリットの約2倍の高火力を誇った。
「装甲が厚い部分に“核”があると見込むなら、間違いなく“左胸”……でしょうね」
アイシュリングの魔腕の周囲には、未だ雷の余韻が残り、バチバチと小気味よい音が纏わっている。
「はいはい了解、っと。しっかしまぁ今更だけど、四大精霊型とは、また随分と大物が出て来たモンだよな」
ラスティが口の端をあげた。
弾は既に詰め込んである。それも特製の“重撃弾”を、だ。あとは弾が尽きるまでぶちかますだけ。
当のゴーレムは、内部装置から甲高い駆動音が響いている。恐らく今の損傷によりAI変更のシークタイムに移行したと見える。この“一瞬の隙”を見送るつもりは毛頭ない。
「ノームのおっさんよ、悪いが俺らも死ぬワケにはいかねえんだ」
少年は、慣れた手つきで照準を合わせた。狙うは、雷が直撃したばかりの左胸部。
「さて、殺るか殺られるか、時間との戦いと行こうじゃねェか!」
ラスティの指が引金に触れる。感触と相反する重厚な銃声が唸りをあげ、ゴーレムの装甲めがけて弾丸が空を裂く。
瞬後、胸部装甲と銃弾がかち合う音が盛大に飛散し、少年は手ごたえを感じると同時に苦笑を滲ませた。
「……ったく、こいつは固ぇわ」
追い打ちに猟銃士の青年が放物線を描くように幾つもの矢を射出。僅か10秒で与えたダメージは、かなりのものだった。特に、特攻属性である「風」のライトニングボルトは図体のでかいノームを相手にこれ以上ない好相性スキル。突き穿つように放たれる雷撃は、ノーム自身の予測を越える高負荷を与えていた。
間違いなく、二人の術師が対ノームメインアタッカーだろう。
つまり、どうあがいてもノームのヘイトは“彼女たち”に移ることになる。
●
再び、炎が舞い、風が全ての人間を切り刻んでゆく。
ノーム至近には2人のハンターがいる。火の粉を払うでもなく、瞬きもせず、ノームの真正面に立ちはだかっていたリク。そして、前に出ながら、リクとカバーし合える立ち位置を維持していた弥勒。
その後方には、 囮役が機能不全を起こした際に代替を務める闘狩人や、他の仲間達。それぞれが囮役の後方に隠れるような形に陣取っていた。彼らは衝撃波の被弾を防ぐつもりでいたのだが、それはつまり「ノーム正面方向に対し、長い隊列が出来ている」ことになる。
しかし、一点……彼らは“ノームに対し左右、水平方向に対する意識が希薄”だった。
失念していたわけではないはずだが“ノームは動く”のだ。
『我らの創造主は、優れた魔術師であった。天才という言葉では気安いほどに』
老爺はそんな音声を発し、そして腰を低く落とすと、その巨体で“走った”。
ハンター同様、全力移動すれば「長い隊列の横をとる」くらい容易だ。
なぜハンターたちはそんな事態を許してしまったのか?
彼らは、“誰が囮となるか、その交代の意識”は的確だったが“敵が回り込んで後衛を狙いに来る”ことへの対策が甘かった。“敵を取り囲むなど、後方への移動を制限させる意識がなかった”のだ。
『魔術師。汝……エルフか』
「ッ……それが、何?」
ノームが全力移動で回り込めば、アイシュリングの目前に陣取るなど瞬く間の出来事。縦に伸びた隊列の横をとったノーム。その視線の先には、前衛たちのカバー範囲外にクリスティアやアニス、シガレットもいる。
『里を離れ、人間に加担するか。何故だ?』
問われたことの意味は解る。だが、答えるより先に、アイシュリングは別の気配に身体を強張らせた。
多量のマテリアルが渦巻いている。それは見る間に少女の足元に集約していくが、しかし──
「そうはさせないと、先程も言ったはずです……!」
再び、クリスティアのカウンターマジックが魔術を相殺。
「ちッ……さすがに“優先順位”間違えねえなー。よくできてるわ」
「そんなことを言ってる場合ではないです、弥勒さんカバーを!」
「アイシュリングさん、クリスティアさん! 後退してくださいッ!!」
弥勒のぼやきをアニスが叱る側面で、リクの叫びが響き渡った。
アイシュリングの耳に、複数の地を蹴る力強い足音が届いてくる。態勢立て直しは必須。ならばと、エルフの少女は反射的に後退を開始した。やがて、後衛を守るようにノームと少女の間に少年たちが飛び込んでくる。そんな彼らの影に身を顰めながら──しかしアイシュリングの意識は、先の“問い”から引き剥がせずにいた。
ノームを警戒すべく見上げていれば、否応なく“それ”が目に入る。大きな、大きな満月だ。
──最後に“彼”と話したのも、月の美しい夜だった。
そんなことを、頭のどこかで反芻していた。少女は信じていたのだ。彼の行動を。“全ての行動に理由がある”と。
「……私、は」
だからこそ、“今もどこかで彼が生きていると信じて”歩き続けた。
「もう、誰も犠牲にはしません。こんなところで立ち止まる訳にはまいりませんから……!」
アニスの声が聞こえた。少女は、再びシャドウブリットを放つべく杖の先に意識を集中している。
そして、遙か後方からラスティが乾いた笑いを浮かべていた。
「危険因子から殺す、か。……そりゃ、正しいわ」
放たれる闇の塊と並走させるように、少年の手元から繰り出された銃弾が奔る。
夜闇に溶けるように、二つの影はノームの左胸を的確に穿ち、そして猟銃士が更に追い撃ちをかける。
──バキン、と。
鉱物の割れる音が鳴り、分厚い装甲にヒビが入ったことが確認できた。
「やっぱりあの奥だな……ッ! 核の目星、ついたぜ。総員あそこを狙えるな!?」
ラスティの号令は、しかし何度目かの炎嵐に呑みこまれてゆく。
その中で、ノームは何を見ていたのだろう?
「ッ──すみません、もう次は防げません!!」
クリスティアが警鐘を鳴らした。カウンターマジックが尽きたのだ。
土葬は副行動。それが来てから、高威力の攻撃が来る。二つで一つの“連撃”だ。
勿論、シガレットなら状態異常は解除できる。が、リアクションスキルのカウンターマジックならともかく、ピュリフィケーションは自分達の行動手番がくるまで使えない。つまりもう、土葬からのコンボは避け得ないのだ。
ノームの狙いはアイシュリングだが、彼女を狙うノームの目前にはリクが立ちはだかっている。
「来いよ、贋作! お前に……“オレ”は止められない」
本来、人間の小さな体で9m近い体長のノームを押さえることなど出来はしない。一人の少年が正面に陣取ったとて、もとより“壁として余りにちっぽけなのだ。
しかし、そんなことなど百も承知。それでもリクは立ち向かわずには居られなかった。
生きるだの死ぬだの、そんなことを“試練”にされてはたまったものではないのだ。
『よかろう。ならば汝が先に死ね』
「死ぬもんかよ、死んでたまるかよ……あの日の約束を叶えるためにも、こんな処で、終われないんだよ……!」
刹那、土塊は見る間にリクを取り込んだ。そして──
『まず、“一人”──』
ノームが二つの槌を身体の中央で重ね合わせ、凶悪な速度で振り下ろす。
「光よ! 彼の輝きを護りたまえ……!」
アニスの祈りが光を放ったが、間もなく痛烈な音が響いた。
土塊が砕け散る音。
リクの装甲と槌がぶつかり合う音。
少年の体が崩れ落ち、倒れる音。
ありとあらゆる不協和音が、周囲の者の心を揺さぶる。
今の一撃は“十二分に人を殺す”と肌で解ってしまったのだ。だが、少年はそう“簡単に終わらなかった”。
『マテリアル反応? ──他者の力が作用したか』
土塊の奥から露出したリクの体が、淡く発光していた。それは、アニスが放ったホーリーヴェールに加えて更に別の力が作用したことの証。──“生命の繋ぎ手”が祈り捧げたマテリアルの加護だ。
土の中、リクが動く気配はないが生命の匂いはまだ消えていない。
「死者は出さねェ……絶対に、なァ!」
誰より早く、シガレットが傍に寄りフルリカバリーを施す。
「こっちは立て直すからよ、早くそのデカブツ黙らせてくれよなァ?」
「言われずとも。“盾”にした以上、働かにゃあ兄さんに顔向けできやせんて」
ウォルターの表情から、既に“笑い”は消えている。
リクが潰された直後、既に少年は走り出していた。槌を叩きつけたラグタイム。その隙に脇をすり抜け、ノームの膝を足場に高く高く跳ぶ。狙いはただ一つ。
「ちっと荒っぽくって……あたしらしくはござんせんが」
──まあ、僕らしくはあるんじゃないかな。
言葉にする気はないけれど、心の中で独り言ちる。眼前に、ひび割れた装甲が現れた。それこそ目標部位だ。跳躍の勢いままに、ウォルターはサーベルを両の手で逆手持ちし、上方から全体重を乗せた渾身の刺突を繰り出す。
一際盛大な音と共に刃が一段沈みこむ感覚が掌に収まってきた。
「どうだ、見たか!」
にししと笑い、舞い散る破片を伴ってウォルター自身も大地へ着地。
確かな手ごたえと引き換えに、痛烈な痺れが掌に残りはしたが、それはそれ。
遂に、核が露出した。あとは、そこさえ破壊できれば勝負がつくはずだ。
「諦めるわけにはいかないの。千年を越えて続く強い思い……それを、貴方たちを、越えるわ」
アイシュリングが、自らの腕にマテリアルを纏わせると、稲妻が少女の掌から奔る。
他方、クリスティアも既に照準を合わせていた。詠唱終了。マテリアルは綿密に、強い思いで織り上げた。
「王国の歴史は、これからも続きます……続かせてみせます。あなた達の死を乗り越えて、必ず」
ワンドに輝く宝玉が風のマテリアルに染まる。そして──
『来るが良い、人間……!』
「終いだ、撃て───ッ!!!」
ラスティの銃声を開幕の合図に、ハンターが最期の総攻撃を開始。
アニスから光の波動が放出されると、その頭上を掠めるように二本の激しい稲妻が迸る。
猛攻の果て。全てが核を穿ち抜くと、やがてバチバチと異音が響き始めた。
それが終わりの合図であることは、誰の目にも明らかで。
膝をつき、崩れ落ちるノームからガシャリと冷たい金属音が響く。
『この、“熱量”──我らが、得られぬ、“生”の──』
しかし、未だそれは言葉を発しようとしていた。
思考する機械。塔を守るプログラムである“それ”が、だ。
「人工的に造られた“命”、か」
既に満足に身体を動かすことが出来ないノームの前に立ち、弥勒が呟く。
『……命、か。これが』
「そうだ。お前が自分で言ってたことだろ。生があって死があるなら、死があれば生もある。
……だから“殺してやる”。満足して逝け」
露出した核めがけ、弥勒が輝剣を突き立てた。
まるでガラスが砕け散るような、繊細で物悲しい音が心に木霊する。
『雌雄、は、決し、た……汝ら、我らが“願い”、託す、値する、を、“承認す”』
音声には、ノイズが混じり始めていた。
最早、正確に彼の言わんとすることを理解することは叶わないだろう。
『生きロ──この国、美シき、セカイ、を──ヲ、ヲ、■■■……』
こうして、オートマトンは活動を永久停止。
二度とは目覚めぬ眠りへと、ゆっくり落ちていった。
動かなくなったゴーレムにそっと触れ、クリスティアは瞳を閉じた。
この世界を再現した途方もない魔術師。それを親に持ち、千年もの間塔を守り続けた機械たち。
彼らは「この国を守るため」、ただそのためだけに長い長い時を過ごしてきたのだと言うのだから。
それは、なんと“愛しい”ことだろう。
「長い間、お疲れ様でした。ゆっくり休んで下さい」
相手が“人”ではなくとも、祈り捧げる時間は決して無駄ではないと少女は強く感じていた。
他方、アイシュリングは先のノームの問いを反芻していた。
『なぜ、人間に加担する?』
見上げれば、変わらず満月が輝いている。
「……約束、したからかしら」
呟いて、少女は身を翻した。言葉にすると、陳腐だけれど。思いの形は変わらない。
──“あの満月の夜、交わした約束を果たす時”だから。
だから、アイシュリングはここに在る。己の道を、見出したから。
「……ッてて。どうやら助かったみたいだ」
アニスと、今はここに居ない大切な人に感謝を抱きつつ、リクは体中の土を払っている。
しかし、その胸中は複雑に過ぎた。
「生きること死ぬことに、意味なんて、ないのに」
けれど、意味がないと知りながら、彼は自らが生きる意味を創った。
“自身の心を満たす”為だけの行為だ。けれど、それでよかった。
“人の認める価値は、人の都合でなくなってしまう”。
でも、“自分の認める価値は、自分が認める限り失わずに済む”からだ。
「さて、他のゴーレムはどうなったかな」
未だ塔に広がる異世界には、炎の嵐が吹きすさんでいた──。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 鬼塚 陸(ka0038) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/03/02 15:03:56 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/02/26 22:48:51 |
|
![]() |
質問卓 シガレット=ウナギパイ(ka2884) 人間(クリムゾンウェスト)|32才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/02/27 14:23:41 |