ゲスト
(ka0000)
【界冥】秋葉原ピヨピヨ祭り
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/03/08 09:00
- 完成日
- 2017/03/15 00:58
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ここはリアルブルー。
日本の東京、ハンターオフィス秋葉原支部。
そこの受付嬢は、天王洲レヲナ。リアルブルーのオフィス職員(バイト)だが、実は地球統一連合政府から送り込まれた監視者でもあった。
「もう、こんな時期なんだねー」
レヲナは、何やら忙しそうだった。
そうとは知らず、ラキ(kz0002)は念願のリアルブルーに来ることができて、うれしさを隠せなかった。
「やったー、ようやくリアルブルーに来れたんだねっ!」
案内役として、リアルブルー出身のハンター、水本 壮(みずもと・そう)も、同行していた。
「3年振りの地球よ、聖地、アキバよ! 俺は帰ってきたのだっ!」
非常にテンションが高い壮に対して、護衛として来ていたマクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は怪訝な顔付きだった。
「……なんだ、ここは?」
転移した場所を見渡せば、アスファルトで囲まれた広い空間……リアルブルー人ならば、地下駐車場だと分かるのだが、マクシミリアンは「地下空洞にしては、人工的だな」という感想だ。
「詳しいことは、秋葉原支部の受付嬢に聞いてみようぜ」
壮は機嫌が良かった。一時的とは言え、故郷の日本……しかも、聖地アキバに来られるようになったからだ。
オフィスの8階に辿り着くと、メイド服を着た職員たちが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、ご主人様っ!」
ニパッと星が飛ぶようなウィンクをしたのは、天王洲レヲナだ。
「おお、この感じ、何年振りかーっ!!」
壮はすかさず、レヲナと握手するが、すぐに気が付いた。
「……なんだよ、……男かよ」
項垂れる壮。
「なーに、その反応。まあ、いいや。キミたちがクリムゾンウェストから来たハンターだね。僕は天王洲レヲナだよ。よろしくねっピヨ♪」
「ピヨ?」
キョトンとするラキ。
レヲナ以外にも職員はいたが、ヒヨコのキグルミを着ている者が何人かいた。
「あー、今回はね、【秋葉原ピヨピヨ祭り】があるんだよ。できれば、キミたちにも協力してもらいたいんだよね。それには、いろいろと条件があるんだけど」
レヲナはそう言って、人差し指を突き立てた。
「キミたちも知っての通り、まだまだジャパンでは覚醒者に対する受け入れが完全じゃない……それは覚醒者というのは、一般人のリアルブルー人にとっては脅威だからね。好意的な人も確かにいるけど、強力な力を持つ覚醒者の存在は、リアルブルー世界では未だに不安要素でもある」
小さく咳払いした後、話を続けるレヲナ。
「そこで、現地の人々との交流を深めるために、【秋葉原ピヨピヨ祭り】に参加して、盛り上げてもらいたいんだよ。だけどキミたちがハンター…覚醒者であるってことは秘密ってこと。これが条件の一つだよ」
「あたしたちの正体を隠しながら、リアルブルーの人々と交流するってこと? ちょっと、ややこしいね」
ラキは事情があまり分からず、首を傾げていた。
疑問に答えるレヲナ。
「そう思うのも無理ないかな。『覚醒者』という存在は、ジャパンでは受け入れられたばかり。とは言っても、まだ公にその存在を認めたわけでもない。キミたちが現地の人々と、日常生活の中で交流できるか見極めたいんだよね。上手くいけば、キミたちは安全な存在として政府も少しは認めてくれるかも。そのためにも、【秋葉原ピヨピヨ祭り】に是非、参加してみてよ」
「お祭か……あたしも参加してみようかな。リアルブルーの人達とは、今後も仲良くしていきたいから」
ラキは、ヒヨコがたくさん出てくる祭りかなと想像していた。
「ピヨピヨ祭りって、『雛祭』の祝いパレードのことっすか?」
壮が質問すると、レヲナが頷く。
「そうだよ。『ひなまつり』は、女の子の行事だから、一般の女子学生も見に来ると思うよ。ジャパンでは『桃の節句』とも言って、子供の成長を祝う祭りだよ。だから、本物の武装とかは、NGだからね。あくまでも『コスプレ』で押し通すのは有りだよっ」
「コスプレ?」
マクシミリアンは聴き慣れない言葉に、眉を顰める。彼の格好を見たレヲナが、閃いたように言った。
「キミの装備は、ゲームに登場するキャラクターっぽいから、OKかな。ただし、武器とかは絶対に使っちゃダメだからねー」
「一般人に危害を加えるつもりはない。武器が不要ならば、オフィスに置いておくが、それで良いか?」
真面目に答えるマクシミリアン。彼としては、護衛で来たという認識だからだ。
レヲナは、両手でハートの形を作った。グッドという意味らしい。
「そうしてもらえると助かるよ。【秋葉原ピヨピヨ祭り】に参加したい人達は、オフィスで着替えてから外出してね。基本は「ヒヨコ」の格好だけど、「ひなまつり」の御祝いでもあるから、御雛様とか御内裏様とかの格好でもOKだよ。それじゃ、楽しんできてね」
レヲナは参加ハンターを案内しながら、秋葉原の歩道へと向っていった。
ここはリアルブルー。
日本の東京、ハンターオフィス秋葉原支部。
そこの受付嬢は、天王洲レヲナ。リアルブルーのオフィス職員(バイト)だが、実は地球統一連合政府から送り込まれた監視者でもあった。
「もう、こんな時期なんだねー」
レヲナは、何やら忙しそうだった。
そうとは知らず、ラキ(kz0002)は念願のリアルブルーに来ることができて、うれしさを隠せなかった。
「やったー、ようやくリアルブルーに来れたんだねっ!」
案内役として、リアルブルー出身のハンター、水本 壮(みずもと・そう)も、同行していた。
「3年振りの地球よ、聖地、アキバよ! 俺は帰ってきたのだっ!」
非常にテンションが高い壮に対して、護衛として来ていたマクシミリアン・ヴァイス(kz0003)は怪訝な顔付きだった。
「……なんだ、ここは?」
転移した場所を見渡せば、アスファルトで囲まれた広い空間……リアルブルー人ならば、地下駐車場だと分かるのだが、マクシミリアンは「地下空洞にしては、人工的だな」という感想だ。
「詳しいことは、秋葉原支部の受付嬢に聞いてみようぜ」
壮は機嫌が良かった。一時的とは言え、故郷の日本……しかも、聖地アキバに来られるようになったからだ。
オフィスの8階に辿り着くと、メイド服を着た職員たちが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、ご主人様っ!」
ニパッと星が飛ぶようなウィンクをしたのは、天王洲レヲナだ。
「おお、この感じ、何年振りかーっ!!」
壮はすかさず、レヲナと握手するが、すぐに気が付いた。
「……なんだよ、……男かよ」
項垂れる壮。
「なーに、その反応。まあ、いいや。キミたちがクリムゾンウェストから来たハンターだね。僕は天王洲レヲナだよ。よろしくねっピヨ♪」
「ピヨ?」
キョトンとするラキ。
レヲナ以外にも職員はいたが、ヒヨコのキグルミを着ている者が何人かいた。
「あー、今回はね、【秋葉原ピヨピヨ祭り】があるんだよ。できれば、キミたちにも協力してもらいたいんだよね。それには、いろいろと条件があるんだけど」
レヲナはそう言って、人差し指を突き立てた。
「キミたちも知っての通り、まだまだジャパンでは覚醒者に対する受け入れが完全じゃない……それは覚醒者というのは、一般人のリアルブルー人にとっては脅威だからね。好意的な人も確かにいるけど、強力な力を持つ覚醒者の存在は、リアルブルー世界では未だに不安要素でもある」
小さく咳払いした後、話を続けるレヲナ。
「そこで、現地の人々との交流を深めるために、【秋葉原ピヨピヨ祭り】に参加して、盛り上げてもらいたいんだよ。だけどキミたちがハンター…覚醒者であるってことは秘密ってこと。これが条件の一つだよ」
「あたしたちの正体を隠しながら、リアルブルーの人々と交流するってこと? ちょっと、ややこしいね」
ラキは事情があまり分からず、首を傾げていた。
疑問に答えるレヲナ。
「そう思うのも無理ないかな。『覚醒者』という存在は、ジャパンでは受け入れられたばかり。とは言っても、まだ公にその存在を認めたわけでもない。キミたちが現地の人々と、日常生活の中で交流できるか見極めたいんだよね。上手くいけば、キミたちは安全な存在として政府も少しは認めてくれるかも。そのためにも、【秋葉原ピヨピヨ祭り】に是非、参加してみてよ」
「お祭か……あたしも参加してみようかな。リアルブルーの人達とは、今後も仲良くしていきたいから」
ラキは、ヒヨコがたくさん出てくる祭りかなと想像していた。
「ピヨピヨ祭りって、『雛祭』の祝いパレードのことっすか?」
壮が質問すると、レヲナが頷く。
「そうだよ。『ひなまつり』は、女の子の行事だから、一般の女子学生も見に来ると思うよ。ジャパンでは『桃の節句』とも言って、子供の成長を祝う祭りだよ。だから、本物の武装とかは、NGだからね。あくまでも『コスプレ』で押し通すのは有りだよっ」
「コスプレ?」
マクシミリアンは聴き慣れない言葉に、眉を顰める。彼の格好を見たレヲナが、閃いたように言った。
「キミの装備は、ゲームに登場するキャラクターっぽいから、OKかな。ただし、武器とかは絶対に使っちゃダメだからねー」
「一般人に危害を加えるつもりはない。武器が不要ならば、オフィスに置いておくが、それで良いか?」
真面目に答えるマクシミリアン。彼としては、護衛で来たという認識だからだ。
レヲナは、両手でハートの形を作った。グッドという意味らしい。
「そうしてもらえると助かるよ。【秋葉原ピヨピヨ祭り】に参加したい人達は、オフィスで着替えてから外出してね。基本は「ヒヨコ」の格好だけど、「ひなまつり」の御祝いでもあるから、御雛様とか御内裏様とかの格好でもOKだよ。それじゃ、楽しんできてね」
レヲナは参加ハンターを案内しながら、秋葉原の歩道へと向っていった。
リプレイ本文
賑やかな街並み。
暖かな日差しが、人々を和ませていた。
天央 観智(ka0896)は【ピヨピヨ祭り】のスタッフとして、秋葉原支部の手伝いをしていた。
観光客や家族連れに出会うと、観智はオフィスから支給された案内マップを手渡していた。
「今日は雛祭り、ぜひ、楽しんで下さいね」
随臣(大臣付き随身)の衣装を着た観智が、堂々とした姿勢で歩くと、擦れ違う人々は誰もが笑顔になっていた。
桃の節句については観智も知っていたが、ピヨピヨ祭りに参加するのは初めてだった。
と言うより、【秋葉原ピヨピヨ祭り】があることを初めて知り、内心では「コスプレは苦手」などと思っていた。
それでも、何か手伝いがしたかったのか、自分のできることをいろいろと考えながら、観智は泣いている子供を見つけ、交番まで連れていった。
「どうやら、この子、迷子みたいです。よろしくお願いします」
観智は子供を宥めながら、御巡りさんに会釈する。
「これはこれは、スタッフの方ですね。後は我々に任せて下さい」
御巡りさんにも、すっかりスタッフだと思われている観智。
別れ際、子供に手を振り、観智は交番から離れ、歩き出した。
しばらくすると、観光客に引きとめられ、一緒に写真を取ることになってしまった。
可愛らしいヒヨコの着ぐるみ姿で現れたのは、天王寺茜(ka4080)……観光客を手招きする。
「カメラのシャッター、代わりに押しますよ♪」
着ぐるみヒヨコの口元から、茜の明るい笑みが零れた。
「それでは、屋台巡りにいきましょう!」
茜は、折り紙で作った桃の花が付いた枝を持ちながら、手馴れた仕草で観光客たちを案内していく。
「ここでは、日本の様々な料理が食べられますよ」
茜はヒヨコの着ぐるみ姿のまま、屋台を巡り、観光客たちと一緒に食べ歩きをしていた。
「んー、ここの食べ物も美味しい」
満足げに茜が焼き鳥を食べていると、隣に座っていたイギリス人の老夫婦が話しかけてきた。
「お嬢さん、どこから来たのかな?」
「私は遠くから……」
茜はコロリー育ちだったこともあり、秋葉原に来るのは初めてだった。
老夫婦は互いに「北海道? 沖縄?」と聞いてきたが、茜は笑みを浮かべながら「田舎です」と答えた。
「田舎……そう、故郷ね。私たちも田舎で育ったから、都会の秋葉原は刺激的だよ」
老夫婦は観光で日本に来ていたが、秋葉原に来たのは初めてだったらしい。
「カメラ、押すの、頼んで良いかな?」
イギリス人の旦那が、イングリッシュ響きで流暢に日本語を話し、手持ちのカメラを手渡す。
「もちろん、良いですよ」
茜はカメラのレンズを調整しながら、互いに寄り添う老夫婦を見て「仲が良いんですね」と声をかけると、二人は朗らかな笑みを浮かべていた。
「上手く取れたかな?」
少し緊張気味に茜がカメラを返すと、老夫婦はデータを確認して、うれしそうに「素敵な思い出をありがとう」と、礼を述べた。
茜が取った写真は、老夫婦が幸せに笑う姿だった。
その様子を見て、茜もまた幸せな気分になり、「こちらこそ、ありがとうございます」とお辞儀した。
●
対になる随身(右大臣、左大臣)の衣装を纏っていたのは、千歳 梓(ka6311)と ギャリー・ハッシュベルト(ka6749)。
梓は和服を着た太刀持ち、ギャリーは白い髭を付けた弓持ちの衣装だった。
「当時の連中は、こんな恰好で動き回ってたのか、すげぇよな」
レンタル衣装とは言え、和服を着ながら走るのは難しそうだとギャリーは思ったが、日本の狩衣を着ることができて、どことなくうれしそうにも見えた。
「これでも、当時よりは動き易い衣装だと聞いたが……まあ、歩くだけなら、なんとかなりそうだな」
周囲の楽しそうな観光客とは対照的に、梓は無表情……なだけで、内心はワクワクしていた。
「ギャリー殿、『めいど喫茶』なる場所はどこだ?」
「あー、そうだったな。アキバのスイーツと言えば、まずはメイド喫茶! ガイドブックに良い店が載ってたから、そこへ行くぜ。ついてきな」
ギャリーは何やら企んでいたが、梓は『甘い物が食べられる』と聞き、素直に付いていくことにした。
「ほい、到着。さっそく、入るぜ」
随身の衣装を纏ったまま、ギャリーと梓はメイド喫茶の店内に入った。
「お帰りなさいませ、ご主人様!!」
メイド服を着た女性店員たちが、一斉に元気よく声を張り上げ、ペコリと御辞儀。
そのうちの一人が、ギャリーと梓を店の中央にある席へと案内する。
「パレードの休憩に、当店をセレクトしていただき、誠にありがとうございます。ご注文が決まりましたら、テーブルにある注文スイッチを押して下さい」
「おお、ありがとよ、嬢ちゃん」
ギャリーが言うと、店員は御辞儀をして去っていった。
「……ふむ。どれにするか」
梓はメニューを真剣に睨んでいた……ように見えるだけだ。
「俺は、もう決まったぜ」
ギャリーの言葉に、梓の瞳がキラリと光った……というのは、何かの演出か。
テーブルの注文スイッチを押したのは、梓だ。
「……これを頼む」
躊躇いもせず、メニュー表のデザートを指差す梓。
「はい、かしこまりました。そちらの御客様は何になさいますか?」
「俺ぁ、そうだな、まずはビール一つ、チーズとスルメのセット一つ、頼むぜ」
ギャリーの注文も決まり、店員がオーダーを確認して、しばらくすると……。
「ご主人様、お待たせしました」
三人のメイド服を着た店員が、巨大なデザートを運んできた。
「それでは、呪文を唱えましょう」
梓は顔色一つ変えず、店員と一緒に何やら唱え始めた。
『……メイドとくるくる、カッコ、白星、カッコ閉じる、魔法のすとろべりぃ、カッコ、はーと・まーく、カッコ閉じる、くるくる、ふわふわ、まじかる、パフェさんよ、おいしくなーれ』
律儀に記号まで音読する梓であった。
「それでは、どうぞ、召し上がれ」
三人の女性店員が、ヒラヒラと星を降らせるような仕草をした。
「では、いただこう」
梓は慎重にスプーンを使い、パフェのクリームを一口食べた。
「……うむ。美味い。その、魔法とやらに感謝する」
ギャリーは今の出来事を携帯してきた魔導カメラで写真を撮っていたが、笑いを堪え切れず、ついにはお腹を抱えて、大声で笑い始めた。
「梓、おまえ、本気なのか? 本気だな?! 本気ってヤツだな!」
どうにも笑いが止まらないギャリー。
何が、そんなに可笑しいのかと不思議に思いつつも、梓は好物の甘い食べ物……パフェを食べることができて、とても上機嫌……なのだが、そう見えないのが、梓の宿命だった。
傍から見れば、ただひたすら無表情にパフェを食べている和服を着た男性。そして、一緒にいるのは笑い転げている白髭を付けた和服衣装の男性だ。
店内にいた観光客が、物珍しく梓とギャリーを見遣るのも無理はない。
ギャリーは少し落ち着いたのか、ビールを飲み始めたが、先ほど撮った写真を見ると、また笑い始めた。
こんな出来事は初めてだ……そう実感した梓、39歳の春であった。
●
内裏は、男雛と女雛の組み合わせ。
パレードの前方では、男雛の衣装を着たテオバルト・グリム(ka1824)が、恋人である柄永 和沙(ka6481)と手を繋ぎ、歩いていた。
「……なんだか、恥ずかしいな」
和沙は女雛の衣装を纏い、頬を赤らめながら、テオバルトの隣に並び、一緒に歩いていた。
「和沙、とっても似合ってるぜ。綺麗だ」
恋人の晴れ姿に、テオバルトは喜びを満面に浮かべていた。
「もう、人がたくさん見てるのに……テオったら」
耳まで赤くなりながらも、和沙はテオバルトの耳元で「カッコいいよ、……好き」と呟く。
これには、テオバルトも思わず赤面せずにはいられなかった。
観光客たちは、二人の様子を微笑ましく見ていた。たくさんの人々が見守る中、テオバルトは改めて和沙に告げた。
「……俺も好きだ」
自分の気持ちをストレートに伝えるテオバルト。
和沙はただ、惚れ直すばかりで、テオバルトに見惚れていた。
寄り添う内裏の後ろからは、ヒヨコの着ぐるみを着た女子学生たちが行進に参加していた。
獅子堂 灯(ka6710)は三人官女の一人、長柄銚子の衣装を纏い、地図を片手に周囲を確認しながらパレードに紛れていた。
「大丈夫かな? ヒヨコたちに付いていけば良いのかな。それにしても、ビルがたくさん……おぉ、すごい」
灯は久し振りのリアルブルーで少し興奮気味であった。
「その衣装、似合ってるね。あたしも三人官女の衣装にしてみたんだ」
ラキ(kz0002)が灯に声をかける。
「あ、ありがとう。三人……ということは、もう一人は?」
灯が周囲を見渡す。水本 壮(みずもと・そう)が三人官女の『三方』の格好をしており、ラキは『加えの銚子』の衣装を着ていた。
ラキは日本の着物を纏うことができて、はしゃいでいたが、壮は生まれて初めての女装に躊躇いつつも、何かが芽生え始めようとしていた。
「レヲナに勧められて仕方なく……俺は五人囃子の格好でも良かったっすけど、三人官女は『三人いてこそ』と力説されたから……他意はないっすよ」
壮は言い訳をしていたが、灯が何故か、おどおどしていた。
「僕も、この格好は、初めて、なんです。僕が住んでた所は山と川だけの田舎だったから、こんなに賑やかな町並みは、初めて、です」
何もかもが新鮮に感じられ、灯は生まれ育った場所を思い出しながらも、初めての秋葉原を堪能していた。
「アキバなら、俺に任せて。分からないことがあったら聞いてよ」
壮は、自分が女装していることも忘れて、灯に接近していく。
「あー、あたしも並ぶよ」
ラキが、壮の隣に並んだ。三人官女が揃うと、観光客たちが「キュート」と連呼しながら、カメラのシャッターを押していた。
「ギャー、俺は……俺は!」
壮は我に返った。三人官女の衣装を着た灯、ラキ、壮のスリー・ショットがカメラのターゲットになり、ラキはノリノリでポーズを決め、灯は照れ笑いを浮かべていた。壮は慌てた様子だったが、しっかりと写真として撮られていた。
「あわわ、写真、撮られちゃったけど、正体、バレてないよね?」
灯は心配そうに言うが、ラキは「平気、平気、誰も気付いてないよ」と楽観的だ。
パレードの最後尾にいた鞍馬 真(ka5819)は、ヒヨコ印の帽子を被り、黒い手袋を嵌め、コートで全身を覆っていた。
「……やはり、何も思い出せないな」
真は自分がリアルブルーから来たことは覚えていたが、過去のことは忘れてしまったのだ。
祭りに参加すれば、何か思い出すかと考えて、屋台を廻って名物を食べたり、海外から来た観光客に「カメラのシャッター、押してください。記念写真を撮りたいので」と頼まれれば、快く応じていた。
「あのー、すみません。一緒に写真、撮りませんか?」
OLらしき女性二人に声をかけられ、真が「私で良ければ、喜んで」と答えた。
実は逆にナンパされていたのだが、真はそのことに全く気がついていなかった。
「それでは……」
立ち去ろうとする真に対して、女性二人は引き止めるように懇願する。
「この辺りに、コスプレ衣装をレンタルできる店があるって聞いたんですけど、一緒に探してくれませんか?」
「ああ、構わない」
真は帽子を被っていたが、女性たちは彼の素顔を見逃すことはなかった。
当の本人に自覚はないが、真は所謂『イケメン』だったのだ。
時折、溜息をつく真。重体で全身は包帯塗れであったが、コートと手袋で隠していた為、女性たちは真の様子に気が付いていなかった。
と言うより、溜息をつく真の姿が憂いに満ちていたこともあり、女性たちは尚更、真から離れようとはしなかった。
「鞍馬さん、ここだよ」
灯の声がした。
「ああ、灯君か。長柄銚子の衣装、素敵だね」
真が微笑む。女性たちは何か勘違いしたのか、『彼女が来た』と思ったらしく、そそくさと、その場から消え去っていた。
「おや?」
いつの間にかいなくなっている女性たちに、真は少し戸惑ったが、灯と合流することにした。
「あのさ、身体……大丈夫?」
灯が気にかけると、真は気さくに笑った。
「祭りを楽しむくらいはできるから……心配してくれて、ありがとう」
「当然だよ。鞍馬さんは仲間だからね」
コニッと笑みを浮かべる灯。
「真さん、女性にナンパされてたっすね」
壮が姿を現した。
「私が? それよりも、きみに女装の趣味があったとはな」
真が感慨深そうに言うと、壮はジタバタしていた。
「違うっす! これはレヲナに勧められて、着てるだけっすから!」
「そう言えば、レヲナ君は趣味でメイド服を着ていると聞いたが」
ジトーっと、壮を見遣る真。
「俺は趣味じゃないっす! 単なる助っ人で、着てるだけっす!」
「分かった。そういうことにしておこう」
真は疑うこともなく、そう告げた。
●
ここは、ゲーム・センター。
テオバルトと和沙は、内裏の衣装を着たまま、最新のアーケード・ゲームで対戦していた。
「決まったね! 48ヒット!」
必殺技をボタン連射で繰り出した和沙が勝った。
「俺の負けだな」
そう言いつつも、テオバルトは楽しそうに微笑む。勝ち負けよりも、恋人とリアルブルーの祭りに参加できたことが、テオバルトにとっては何よりも大切なことだからだ。
気が付けば、茜も地元の学生を相手にシューティング・ゲームで遊んでいるではないか。
一通り、ゲームを楽しんだ後、テオバルトは和沙の手を引き、店内から出た。
その途端、待ち構えていた観光客たちがカメラを持って「写真、撮らせてください」と声をかけてきた。
とっさにテオバルトの後ろに隠れる和沙。
「これも仕事ですから良いですよ」
テオバルトはそう言って、和沙を御姫様抱っこする。
内裏の男雛が女雛を抱きかかえる発想は、観光客たちにも喜ばれ、パシャパシャと写真を撮られるテオバルトと和沙であった。
「うう、和服で御姫様抱っこなんて」
メッチャ恥ずかしそうに和沙は言うが、テオバルトは「雛祭らしいポーズって、分からないから」と答えた。
「テオバルトさん、和沙、もうすぐ時間だよ」
茜の呼び掛けに、テオバルトは「そうだったね」と応じる。観光客たちに挨拶した後、テオバルトたちはオフィスに戻ることにした。
「ふー、間に合ったね」
茜たちがオフィスの8階に辿り着いた頃には、他の仲間たちはすでに到着していた。
「今日は楽しかったわ。色々とこっちでの生活、思い出せたし」
レヲナと職員たちが、手を振っていた。
17時。ハンターたちは、その場から消え去っていた。
後日。
ギャリーが魔導カメラで撮った写真は、仲間たちにも好評だったようだ。
梓がメイドさんたちに囲まれて、パフェを食べる前に呪文を唱えている姿も写真として収められていた。
暖かな日差しが、人々を和ませていた。
天央 観智(ka0896)は【ピヨピヨ祭り】のスタッフとして、秋葉原支部の手伝いをしていた。
観光客や家族連れに出会うと、観智はオフィスから支給された案内マップを手渡していた。
「今日は雛祭り、ぜひ、楽しんで下さいね」
随臣(大臣付き随身)の衣装を着た観智が、堂々とした姿勢で歩くと、擦れ違う人々は誰もが笑顔になっていた。
桃の節句については観智も知っていたが、ピヨピヨ祭りに参加するのは初めてだった。
と言うより、【秋葉原ピヨピヨ祭り】があることを初めて知り、内心では「コスプレは苦手」などと思っていた。
それでも、何か手伝いがしたかったのか、自分のできることをいろいろと考えながら、観智は泣いている子供を見つけ、交番まで連れていった。
「どうやら、この子、迷子みたいです。よろしくお願いします」
観智は子供を宥めながら、御巡りさんに会釈する。
「これはこれは、スタッフの方ですね。後は我々に任せて下さい」
御巡りさんにも、すっかりスタッフだと思われている観智。
別れ際、子供に手を振り、観智は交番から離れ、歩き出した。
しばらくすると、観光客に引きとめられ、一緒に写真を取ることになってしまった。
可愛らしいヒヨコの着ぐるみ姿で現れたのは、天王寺茜(ka4080)……観光客を手招きする。
「カメラのシャッター、代わりに押しますよ♪」
着ぐるみヒヨコの口元から、茜の明るい笑みが零れた。
「それでは、屋台巡りにいきましょう!」
茜は、折り紙で作った桃の花が付いた枝を持ちながら、手馴れた仕草で観光客たちを案内していく。
「ここでは、日本の様々な料理が食べられますよ」
茜はヒヨコの着ぐるみ姿のまま、屋台を巡り、観光客たちと一緒に食べ歩きをしていた。
「んー、ここの食べ物も美味しい」
満足げに茜が焼き鳥を食べていると、隣に座っていたイギリス人の老夫婦が話しかけてきた。
「お嬢さん、どこから来たのかな?」
「私は遠くから……」
茜はコロリー育ちだったこともあり、秋葉原に来るのは初めてだった。
老夫婦は互いに「北海道? 沖縄?」と聞いてきたが、茜は笑みを浮かべながら「田舎です」と答えた。
「田舎……そう、故郷ね。私たちも田舎で育ったから、都会の秋葉原は刺激的だよ」
老夫婦は観光で日本に来ていたが、秋葉原に来たのは初めてだったらしい。
「カメラ、押すの、頼んで良いかな?」
イギリス人の旦那が、イングリッシュ響きで流暢に日本語を話し、手持ちのカメラを手渡す。
「もちろん、良いですよ」
茜はカメラのレンズを調整しながら、互いに寄り添う老夫婦を見て「仲が良いんですね」と声をかけると、二人は朗らかな笑みを浮かべていた。
「上手く取れたかな?」
少し緊張気味に茜がカメラを返すと、老夫婦はデータを確認して、うれしそうに「素敵な思い出をありがとう」と、礼を述べた。
茜が取った写真は、老夫婦が幸せに笑う姿だった。
その様子を見て、茜もまた幸せな気分になり、「こちらこそ、ありがとうございます」とお辞儀した。
●
対になる随身(右大臣、左大臣)の衣装を纏っていたのは、千歳 梓(ka6311)と ギャリー・ハッシュベルト(ka6749)。
梓は和服を着た太刀持ち、ギャリーは白い髭を付けた弓持ちの衣装だった。
「当時の連中は、こんな恰好で動き回ってたのか、すげぇよな」
レンタル衣装とは言え、和服を着ながら走るのは難しそうだとギャリーは思ったが、日本の狩衣を着ることができて、どことなくうれしそうにも見えた。
「これでも、当時よりは動き易い衣装だと聞いたが……まあ、歩くだけなら、なんとかなりそうだな」
周囲の楽しそうな観光客とは対照的に、梓は無表情……なだけで、内心はワクワクしていた。
「ギャリー殿、『めいど喫茶』なる場所はどこだ?」
「あー、そうだったな。アキバのスイーツと言えば、まずはメイド喫茶! ガイドブックに良い店が載ってたから、そこへ行くぜ。ついてきな」
ギャリーは何やら企んでいたが、梓は『甘い物が食べられる』と聞き、素直に付いていくことにした。
「ほい、到着。さっそく、入るぜ」
随身の衣装を纏ったまま、ギャリーと梓はメイド喫茶の店内に入った。
「お帰りなさいませ、ご主人様!!」
メイド服を着た女性店員たちが、一斉に元気よく声を張り上げ、ペコリと御辞儀。
そのうちの一人が、ギャリーと梓を店の中央にある席へと案内する。
「パレードの休憩に、当店をセレクトしていただき、誠にありがとうございます。ご注文が決まりましたら、テーブルにある注文スイッチを押して下さい」
「おお、ありがとよ、嬢ちゃん」
ギャリーが言うと、店員は御辞儀をして去っていった。
「……ふむ。どれにするか」
梓はメニューを真剣に睨んでいた……ように見えるだけだ。
「俺は、もう決まったぜ」
ギャリーの言葉に、梓の瞳がキラリと光った……というのは、何かの演出か。
テーブルの注文スイッチを押したのは、梓だ。
「……これを頼む」
躊躇いもせず、メニュー表のデザートを指差す梓。
「はい、かしこまりました。そちらの御客様は何になさいますか?」
「俺ぁ、そうだな、まずはビール一つ、チーズとスルメのセット一つ、頼むぜ」
ギャリーの注文も決まり、店員がオーダーを確認して、しばらくすると……。
「ご主人様、お待たせしました」
三人のメイド服を着た店員が、巨大なデザートを運んできた。
「それでは、呪文を唱えましょう」
梓は顔色一つ変えず、店員と一緒に何やら唱え始めた。
『……メイドとくるくる、カッコ、白星、カッコ閉じる、魔法のすとろべりぃ、カッコ、はーと・まーく、カッコ閉じる、くるくる、ふわふわ、まじかる、パフェさんよ、おいしくなーれ』
律儀に記号まで音読する梓であった。
「それでは、どうぞ、召し上がれ」
三人の女性店員が、ヒラヒラと星を降らせるような仕草をした。
「では、いただこう」
梓は慎重にスプーンを使い、パフェのクリームを一口食べた。
「……うむ。美味い。その、魔法とやらに感謝する」
ギャリーは今の出来事を携帯してきた魔導カメラで写真を撮っていたが、笑いを堪え切れず、ついにはお腹を抱えて、大声で笑い始めた。
「梓、おまえ、本気なのか? 本気だな?! 本気ってヤツだな!」
どうにも笑いが止まらないギャリー。
何が、そんなに可笑しいのかと不思議に思いつつも、梓は好物の甘い食べ物……パフェを食べることができて、とても上機嫌……なのだが、そう見えないのが、梓の宿命だった。
傍から見れば、ただひたすら無表情にパフェを食べている和服を着た男性。そして、一緒にいるのは笑い転げている白髭を付けた和服衣装の男性だ。
店内にいた観光客が、物珍しく梓とギャリーを見遣るのも無理はない。
ギャリーは少し落ち着いたのか、ビールを飲み始めたが、先ほど撮った写真を見ると、また笑い始めた。
こんな出来事は初めてだ……そう実感した梓、39歳の春であった。
●
内裏は、男雛と女雛の組み合わせ。
パレードの前方では、男雛の衣装を着たテオバルト・グリム(ka1824)が、恋人である柄永 和沙(ka6481)と手を繋ぎ、歩いていた。
「……なんだか、恥ずかしいな」
和沙は女雛の衣装を纏い、頬を赤らめながら、テオバルトの隣に並び、一緒に歩いていた。
「和沙、とっても似合ってるぜ。綺麗だ」
恋人の晴れ姿に、テオバルトは喜びを満面に浮かべていた。
「もう、人がたくさん見てるのに……テオったら」
耳まで赤くなりながらも、和沙はテオバルトの耳元で「カッコいいよ、……好き」と呟く。
これには、テオバルトも思わず赤面せずにはいられなかった。
観光客たちは、二人の様子を微笑ましく見ていた。たくさんの人々が見守る中、テオバルトは改めて和沙に告げた。
「……俺も好きだ」
自分の気持ちをストレートに伝えるテオバルト。
和沙はただ、惚れ直すばかりで、テオバルトに見惚れていた。
寄り添う内裏の後ろからは、ヒヨコの着ぐるみを着た女子学生たちが行進に参加していた。
獅子堂 灯(ka6710)は三人官女の一人、長柄銚子の衣装を纏い、地図を片手に周囲を確認しながらパレードに紛れていた。
「大丈夫かな? ヒヨコたちに付いていけば良いのかな。それにしても、ビルがたくさん……おぉ、すごい」
灯は久し振りのリアルブルーで少し興奮気味であった。
「その衣装、似合ってるね。あたしも三人官女の衣装にしてみたんだ」
ラキ(kz0002)が灯に声をかける。
「あ、ありがとう。三人……ということは、もう一人は?」
灯が周囲を見渡す。水本 壮(みずもと・そう)が三人官女の『三方』の格好をしており、ラキは『加えの銚子』の衣装を着ていた。
ラキは日本の着物を纏うことができて、はしゃいでいたが、壮は生まれて初めての女装に躊躇いつつも、何かが芽生え始めようとしていた。
「レヲナに勧められて仕方なく……俺は五人囃子の格好でも良かったっすけど、三人官女は『三人いてこそ』と力説されたから……他意はないっすよ」
壮は言い訳をしていたが、灯が何故か、おどおどしていた。
「僕も、この格好は、初めて、なんです。僕が住んでた所は山と川だけの田舎だったから、こんなに賑やかな町並みは、初めて、です」
何もかもが新鮮に感じられ、灯は生まれ育った場所を思い出しながらも、初めての秋葉原を堪能していた。
「アキバなら、俺に任せて。分からないことがあったら聞いてよ」
壮は、自分が女装していることも忘れて、灯に接近していく。
「あー、あたしも並ぶよ」
ラキが、壮の隣に並んだ。三人官女が揃うと、観光客たちが「キュート」と連呼しながら、カメラのシャッターを押していた。
「ギャー、俺は……俺は!」
壮は我に返った。三人官女の衣装を着た灯、ラキ、壮のスリー・ショットがカメラのターゲットになり、ラキはノリノリでポーズを決め、灯は照れ笑いを浮かべていた。壮は慌てた様子だったが、しっかりと写真として撮られていた。
「あわわ、写真、撮られちゃったけど、正体、バレてないよね?」
灯は心配そうに言うが、ラキは「平気、平気、誰も気付いてないよ」と楽観的だ。
パレードの最後尾にいた鞍馬 真(ka5819)は、ヒヨコ印の帽子を被り、黒い手袋を嵌め、コートで全身を覆っていた。
「……やはり、何も思い出せないな」
真は自分がリアルブルーから来たことは覚えていたが、過去のことは忘れてしまったのだ。
祭りに参加すれば、何か思い出すかと考えて、屋台を廻って名物を食べたり、海外から来た観光客に「カメラのシャッター、押してください。記念写真を撮りたいので」と頼まれれば、快く応じていた。
「あのー、すみません。一緒に写真、撮りませんか?」
OLらしき女性二人に声をかけられ、真が「私で良ければ、喜んで」と答えた。
実は逆にナンパされていたのだが、真はそのことに全く気がついていなかった。
「それでは……」
立ち去ろうとする真に対して、女性二人は引き止めるように懇願する。
「この辺りに、コスプレ衣装をレンタルできる店があるって聞いたんですけど、一緒に探してくれませんか?」
「ああ、構わない」
真は帽子を被っていたが、女性たちは彼の素顔を見逃すことはなかった。
当の本人に自覚はないが、真は所謂『イケメン』だったのだ。
時折、溜息をつく真。重体で全身は包帯塗れであったが、コートと手袋で隠していた為、女性たちは真の様子に気が付いていなかった。
と言うより、溜息をつく真の姿が憂いに満ちていたこともあり、女性たちは尚更、真から離れようとはしなかった。
「鞍馬さん、ここだよ」
灯の声がした。
「ああ、灯君か。長柄銚子の衣装、素敵だね」
真が微笑む。女性たちは何か勘違いしたのか、『彼女が来た』と思ったらしく、そそくさと、その場から消え去っていた。
「おや?」
いつの間にかいなくなっている女性たちに、真は少し戸惑ったが、灯と合流することにした。
「あのさ、身体……大丈夫?」
灯が気にかけると、真は気さくに笑った。
「祭りを楽しむくらいはできるから……心配してくれて、ありがとう」
「当然だよ。鞍馬さんは仲間だからね」
コニッと笑みを浮かべる灯。
「真さん、女性にナンパされてたっすね」
壮が姿を現した。
「私が? それよりも、きみに女装の趣味があったとはな」
真が感慨深そうに言うと、壮はジタバタしていた。
「違うっす! これはレヲナに勧められて、着てるだけっすから!」
「そう言えば、レヲナ君は趣味でメイド服を着ていると聞いたが」
ジトーっと、壮を見遣る真。
「俺は趣味じゃないっす! 単なる助っ人で、着てるだけっす!」
「分かった。そういうことにしておこう」
真は疑うこともなく、そう告げた。
●
ここは、ゲーム・センター。
テオバルトと和沙は、内裏の衣装を着たまま、最新のアーケード・ゲームで対戦していた。
「決まったね! 48ヒット!」
必殺技をボタン連射で繰り出した和沙が勝った。
「俺の負けだな」
そう言いつつも、テオバルトは楽しそうに微笑む。勝ち負けよりも、恋人とリアルブルーの祭りに参加できたことが、テオバルトにとっては何よりも大切なことだからだ。
気が付けば、茜も地元の学生を相手にシューティング・ゲームで遊んでいるではないか。
一通り、ゲームを楽しんだ後、テオバルトは和沙の手を引き、店内から出た。
その途端、待ち構えていた観光客たちがカメラを持って「写真、撮らせてください」と声をかけてきた。
とっさにテオバルトの後ろに隠れる和沙。
「これも仕事ですから良いですよ」
テオバルトはそう言って、和沙を御姫様抱っこする。
内裏の男雛が女雛を抱きかかえる発想は、観光客たちにも喜ばれ、パシャパシャと写真を撮られるテオバルトと和沙であった。
「うう、和服で御姫様抱っこなんて」
メッチャ恥ずかしそうに和沙は言うが、テオバルトは「雛祭らしいポーズって、分からないから」と答えた。
「テオバルトさん、和沙、もうすぐ時間だよ」
茜の呼び掛けに、テオバルトは「そうだったね」と応じる。観光客たちに挨拶した後、テオバルトたちはオフィスに戻ることにした。
「ふー、間に合ったね」
茜たちがオフィスの8階に辿り着いた頃には、他の仲間たちはすでに到着していた。
「今日は楽しかったわ。色々とこっちでの生活、思い出せたし」
レヲナと職員たちが、手を振っていた。
17時。ハンターたちは、その場から消え去っていた。
後日。
ギャリーが魔導カメラで撮った写真は、仲間たちにも好評だったようだ。
梓がメイドさんたちに囲まれて、パフェを食べる前に呪文を唱えている姿も写真として収められていた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
- 和沙・E・グリム(ka6481)
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 獅子堂 灯(ka6710) 人間(リアルブルー)|16才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/03/08 00:54:58 |
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【秋葉原ピヨピヨ祭り】 獅子堂 灯(ka6710) 人間(リアルブルー)|16才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/03/08 00:51:36 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/03/06 23:20:16 |