• 界冥

【界冥】攻略支援! 敵陣営を突破せよ!

マスター:紫月紫織

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/03/13 15:00
完成日
2017/03/23 00:27

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

◆苦渋の決断
 函館クラスタ、それを破壊するにあたり足がかりとなる松前要塞攻略戦。
 松前要塞へ潜入する精鋭部隊、その作戦の成功確率を少しでも上げるため、一つの陽動部隊が編成されつつあった。

「やはりこの任務に最適なのは彼らしか居ない、そう進言します」
「……だが、彼らは引き受けてくれるだろうか」

 山林突破陽動分隊。
 極めて危険な任務になるであろうこの案を、クリムゾンウェストからの覚醒者に頼る、その理由はいくつかある。

 小隊であれ十分な陽動をこなしうる戦力を有していること。
 歪虚との戦いに熟達した者たちであること。
 そしてその最たる理由が『帰還を考慮に入れなくて良い』ということだ。

 決して、悪意のある判断ではない。
 むしろ、だからこそ勝算と効果ががあると立案者は判断した。

 現在、クリムゾンウェストからやってきた覚醒者は数時間から最長で半日しかリアルブルーにとどまれないということは判明している。
 つまり、帰還は時間が経てば自動的に行われるのである。
 これが最大のメリット。
 本来ならば帰還のための行程と手順、そしてそのために要するあらゆるリスクのすべてを、反則的な事象により省略できる。
 それは攻撃へ集中することを可能とし、突破にのみ全戦力を傾ける事を許し、そして時が来れば自動的に生存が確定する。

「理にかなっているのはわかる、だが……まるで彼らを捨て駒のように使おうとしているように見えるのは、誤解を産むのではないか?」

 やや難色を示す軍服の老人は、リアルブルーに現れたハンターたちに友好的だった。
 無論、歪虚に対抗できる彼らとの不和を望まないのにはその利益を含めていないわけではない。
 だが、それを差し引いても……彼らも同じ"人"なのだ。
 良心と言うものに、引っかかるものがある。

「この案は、我々ではそれこそ神風特攻……決死隊になります。最善を考えるのであれば、生還率が最も高いのは、彼らということになるのです……悔しいですが」
「そう……だな……」

 松前要塞攻略は函館クラスタ攻略における大事な一歩である。
 そのために作戦の成功確率を少しでも上げるため、どこも慌ただしく準備を進めている。
 この陽動作戦は、上手く行けば松前要塞周辺の歪虚を引きつけることができるかもしれない、だがそれは──成功すればするほど危険の伴う任務となる。

「作戦前に、十分な説明時間を取りなさい。命をかけるものにこそ、判断と決断の権利がある」
「了解しました。最善を尽くします」

◆作戦会議
「この作戦は、あなた達覚醒者が時間の経過で自動的にクリムゾンウエストへ引き戻される事を前提においた、帰還を考慮に入れていない作戦です。その為、万が一の可能性が存在することを考えた上で依頼を受けるか否か、決定なさってください」

 深々と頭を垂れる若い兵士。
 そこに侮蔑や嘲りというものは一切見えず、このような事を異世界の人間に頼むなど、という無力さに握りしめた拳が震えていた。
 なんと──情けない事か。

 少しの間ざわつく会議室、それが収まった頃、兵士が地図を広げ説明を開始する。

「ここが目的地である函館クラスタ、我々は今、ここの破壊を目的とした作戦郡の中に居ます。その第一段階として行われるのがここ、足がかりとなる松前要塞の攻略、その中でも我々が編成しようとしているのが"山林突破陽動分隊"とよばれる決死隊です」

 決死隊、その言葉の意味が伝わりざわざわと騒ぎが広がる。
 死傷をかぶるリスクが最も高いとされるそれ……だが、そこに兵士が浮かべる表情は勝機に満ちたものだった。

「この決死隊は、私達が編成すればの話です、だが……あなた達覚醒者なら、そして十分な準備があれば……それは全く違う姿を持つはずです……」

 本来なら帰還のために温存しなければならないコストを、全て"突撃"することに注力する。
 本来なら突破すら許されないかもしれない敵の防衛ラインを突破し、注意を大きくそらせるかもしれない。
 それは間違いなく松前要塞攻略の本隊にとって、大きな追い風となるだろう。

「ここ、松前要塞東部から上陸し、そのまま山を一直線に、歪虚を手当たり次第に攻撃しつつ北へ向けて突破してください。本作戦の要項はそれだけです、あとはどれだけ注意が引けるかになります」

 ですが、と兵士は続ける。
 注意を引けばそれだけ陽動部隊への攻撃は激しさを増すだろう。
 注意を引けなければ失敗、ひきつけ過ぎれば激戦は必死。
 綱渡りのような、ギリギリの駆け引き、帰還のタイミングも運任せ。
 まして場所は相手の拠点付近、敵を倒しきれる見込みは限りなくゼロに近い。
 どれだけ生き延びれるか、それが最重要視される戦場。

「無茶なお願いをしているのは百も承知です……ですが、どうか力を貸していただきたい!」

リプレイ本文

●作戦開始
 VOID砲を避けて上陸した八つの影が山の中を駆け抜けていく。
 足音を殺すこともせず、気配を消すこともせず、身を潜めるでもなく、只々ひた走っていた。
「懐かしい空気だ。……いや、何でもない」
 門垣 源一郎(ka6320)の小さなつぶやきに同意の声が漏れる。
 大半がリアルブルー出身である。
「さて、派手にいくとするか」
 きらりと瞳を金色に光らせて、鞍馬 真(ka5819)が呟く。
「久しぶりのリアルブルーだけれども……ゆっくりする余裕はなさそうだね。……さて、防衛線から何まで引っ掻き回してやろう」
 鞍馬の言葉に久瀬 ひふみ(ka6573)が応えるように返す。
 士気は高揚、準備は万端、帰還は神ぞ知るままに、片道切符の陽動作戦が始まった。

●カウント17
 プロペラ特有の風をきる音に最初に気づいたのは黒耀 (ka5677)だった。
「ひの、ふの……とお!」
 現れた空撮型雑魔、その数は十。
 数える声を合図に、門垣、五光 莢(ka5713)、鞍馬が散開する。
 まるで動きを予測していたかのような正確さでレーザーが、注意をひきつけていた鞍馬目掛けて集中した。
「今がチャンス! ドロー!」
 素早く抜いた符が稲妻となり三つを叩き落とす。
 見た目通りか、やたらに脆い。
 鞍馬が注意を引いた一瞬で十分だった。
 次の瞬間には門垣の弾丸が、そして鞍馬と向かい合うように飛び上がった莢の蹴りが空撮型を撃ち落とす。
 最後に閃いた鞍馬の刀が残りを掃討した。
「大した相手では無かったな」
「今ので見つかったわね、これからが本番よ」
 後退のない前進が再開された。

●カウント102
 炸裂する砲撃音、立ち込める煙の中をかいくぐる。
 ロス・バーミリオン(ka4718)の操る鞭が装甲をひっかく。
「剣のほうがマシかしらねぇ」
 判断は早く、持ち替えざまに一撃を加えるがこれも切り裂くというよりは叩いている印象がつよく、手応えが鈍い。
 宵待 サクラ(ka5561)の太刀もそこまで装甲を切り裂けるわけでもない。
 ロスの太刀よりいくらか程度で大差はなく、十一郎の一撃も蹄型の凹みを作るぐらいである。
 そしてそう立ち止まってもいられない、重量差を考えれば轢かれただけで重症は免れない。
 常に周囲を回ることでなんとかその隙きを与えずに居た。
「どりゃぁ!」
 気合一線、ひふみの振り抜いた斧が砲身を直撃しへし曲げた。
「ちょっと相性が悪いね、適当に足止めして抜けよう!」
 鞍馬の指示で破壊から足止めしての離脱へと行動が変更される。
「了解よ!」
 キャタピラ式の装甲車、そこを断たれれば移動はできなくなる。
 構造的にも他より脆いそこへ差し込まれたサクラの太刀、つなぎ目がはじけ飛んで行動不能へと追い込まれた。
「やりましたっ!」
「こっちもなんとか止めたわよぉ!」
 斜面で片側だけキャタピラを切断され、横転し腹を晒す装甲車。
 虚しくも空転する反対側だけがそれが生きていることを示している。
「しっかしタイミングが悪いわよねぇ、黒曜ちゃんとか莢ちゃんが覚醒してないときに限ってカタイのに会うなんて」
「防衛ラインもまだ遭遇してないし、スキルは温存したいですもんね」
 ロスの言葉にサクラが頷いて返す。 

●カウント169
 美沙樹の振り向きざまの射撃がまた一匹、空撮型を撃ち落とす。
 鞍馬がレーザーを的確に盾でしのぎダメージを抑える、盾はすでに無数の焼け跡を遺している有様だ、その間に黒曜の符と美沙樹の銃撃が数を減らす、そのたびに新たな個体が湧いて出る。
 不用意に近づいてくるものはひふみが片っ端から斧で粉砕していた。
 そんなひどく単調な追走劇がかれこれ半刻程も続いている。
「さっきからなんだってんだい、付かず離れずで鬱陶しいね!」
 迸る電撃がまとめて歪虚を焼く、その端からまたも新たな個体が沸く、監視を維持するように。
「変な感じですわね、さっきから装甲車も触手のような奴も見かけません」
 得体の知れない奇妙な感触を全員が感じ取っていた。
 これだけ終始付きまとわれているのなら、装甲車型や歩兵型の歪虚が現れてきていいはずだ。
 だというのにその様子は一向にない。
 駆けながら合間を縫ってポーションを煽る鞍馬だが、残り本数は心もとなくなってきた。
「防衛ラインが近いのかもしれないね、盛大なお出迎えが期待できそうだよ」
 射程内に入った空撮型に斧を叩きつけつつ言うひふみに、その可能性はありそうだと鞍馬が同意した。
「その場合、こっちの位置はバレていると思っていたほうがいいのでしょうね」
 連続する射撃音を響かせながらの美沙樹の言。
「どっちにせよ互いの手札は見えてる頃合いだ、全部撃ち落として準備といこうじゃないか」
 ばらりと手札を舞い散らせる黒曜、それに合わせて全員が攻撃へと転換した。

●カウント191
 大量の空撮型歪虚が空を埋め、道を陣取るかのように装甲車型が配備されていた。
 黒くぬめり絡まった冒涜的な毛糸玉がそこかしこをうごめいている。
 そんな歪虚の群れを目掛けて八つの影が疾駆する。
「レイピアの如き一撃よ……エンゲージッ!」
 練り上げたマテリアルを纏い、装甲車目掛けて駆ける莢。
 そこからほど近い所で突然濁流が生み出された。
 攫われるように装甲車一つとその周囲に目のように配置されていた空撮型がまとめて飲み込まれる。
「流石マジックカードの中でも有数のレア物、威力は折り紙付きだね」
 続けて引き放つ符は桜吹雪のごとく舞い散り視界を削ぐ。
 懐に入れば砲は撃てない、一気に距離を詰める莢を警戒した装甲車型が、妨害を受けたこともあり照準を正確に定めるよりも砲撃を優先した。
 連続してあがる爆音と煙、その中を莢は金剛で無理やりに突き破り肉薄した。
 前進を走る稲妻が腕へと集約され迸る。
 爆風に煽られるように体を翻しその砲塔に莢の腕が触れた、次の瞬間──砲塔が内側から爆ぜた。
「ご自慢の砲もこれで使い物にならないでしょう?」
 そんな莢の横を、真っ二つにされた触手の塊が飛んでいった。
 背後には身の丈を超える斧を構えたひふみの姿。
 彼女の側には切り飛ばされた下半身とでも言うべき残骸――いや、まだ蠢いている。
 かろうじてまだ生きているその歪虚の残骸目掛けて、更に斧を振り下ろす。
 黒い体液が飛び散り彼女の顔を汚した。
「こちらの歪虚はこの程度なのかな? 向こうのはもう少しやり甲斐があったのだが」
 近場にある空撮型歪虚の残骸を踏みにじりながらの挑発。
 それが彼らを怒らせたのかはわからない、だが確かなことがある。
 その行動は殺意となって返ってきたということだ。
 ざわりと歪虚が動く。
 収束したレーザーが彼女のいる場所を貫く一瞬前、彼女の体は鞍馬によって動かされた。
 逸れたレーザーを盾で受ける。
 焼ける匂いが鼻孔をくすぐる。
 二人の動いた先へ、うごめく触手がずるりと寄る。
 数は多く、捌ききれるものではないその一角を切り開く四つの影。
 煌めく銀閃がするりと駆け抜けた。
 音もしない静かな一閃、切り裂かれた触手がばらばらと舞う、その向こう側で、本体がズルリと音を立てて崩れ行く。
「一つ」
 ぞぶりと突き立つ太刀が歪虚の上部を捉えて引き裂いた。
 動きを止めたそこへ戦馬の蹄がのしかかる、ぐちゅりと踏み潰されて体液を撒き散らせた。
「二つ!」

 そして二つの影が組み合うように躍り出る。
 ロスと音羽 美沙樹(ka4757)の二人、その身が戦場を縦横無尽と駆け抜けた。
 互いの死角を互いの剣閃が補い合うように合わさったその動きは一つの生物のごとく、通り道にある触手達を切り裂いていく。
 一つ、二つ、三つ、四つ。
 事前に莢やひふみ、鞍馬に黒曜が派手に意識をひきつけていた、そこめがけて集められた防衛ラインにぽっかりと穴が開くような蹂躙劇。
 二人の剣舞が終わったあとには切り落とされた無数の触手と、溢れ出した黒い体液が地面を覆い尽くしていた。

 馬の嘶きと犬の遠吠え、爆発音に鞭の音、走る稲光、響く銃声が遠のいてゆく。
 追うように装甲車が木をなぎ倒しながら突撃を開始する、這いずるように触手が動き始め、空を大量の空撮型歪虚の群れが飛んでゆく。
 そんな装甲車に、飛来する矢が突き立った。
 離れた距離から鞍馬の放ったそれは装甲車型の車輪を吹き飛ばし横転させる。
 彼らは目的を達成した、だが本番は――正念場はこれからだ。

●カウント215
 迫る触手を蹴り飛ばし、続けざまに体を捻ってその本体を蹴りつけて小さく舌打ちする。
 数が多い。
「警戒度上がったかしら」
「そりゃあそうでしょう、防衛ライン抜いちゃったんだから」
 莢の言葉に普段通りの調子で返すロス。
 防衛ラインを抜いてから、遭遇する歪虚の数がはっきりと増えていた。
 目の前に迫る触手をかわし蹴り返す莢、その反対側で触手を刀で受け流しざまに切り返すロス。
 斬り飛ばされた触手から飛び散った黒い液体がロスの顔を汚す。
「いやぁねぇ、汚いったら!」
「サクラっ!」
 倒された残骸に隠れるようにサクラ――十一郎の足元に寄っていた触手に気づいた莢が距離を詰める。
 ロスの背後を、そして十一郎の足元をすり抜けての無茶な軌道をとった蹴りが歪虚を貫いた。
 だが、歪虚の最後に残した攻撃が十一郎の足を裂く、大きく嘶いて身を逸らすその背からサクラが舞い降りたのは仕方のない事だった。

「サクラ、馬はどう?」
「なんとか歩くことはできそうです」
 ポーションを飲ませなんとか歩ける程度に回復した十一郎をつれ、ほんの一時の休息を得る。
「よかった、多めに持ってきておいてよかったわ」
 くっと小瓶を呷り、ふぅと一息。
 遠くの空に小さく群れて飛ぶ影が見えた。
「ったく、次から次へとキリがないね」
 空になったポーション瓶を投げ捨てて莢が吐き捨てるようにつぶやく。
 濃くなっていく疲労のなか、終わりはまだ見えない。

●カウント233
 潜んでいた歩兵型に足を止められた。
 突如藪の中から突き出してきた触手が美沙樹を狙う、それを切り払ったのは門垣の刀だった。
「下がれ! そこらじゅうに潜んでいるぞ!」
 門垣の警戒がなければ不意打ちを受けていただろう、最初の一撃を防いだあとは次から次へと湧いてきた。
 挙句遠くに見える装甲車型歪虚である。
 うごめく触手は二十に近く、それを越えねば装甲車型にはたどり着けない。
 鞍馬と黒曜が遠隔で対処するものの、距離もあって確実に仕留めるには至らなかった。
「砲撃が厄介だな」
 門垣が寄る触手を刀で切り払いながら視線を向ける。
 幸いにして空撮型が居ないため砲撃の精度はそう高くない、まばらに湧いてくるものは門垣が端から撃ち落としていたため、直撃は回避できている。
 三機の装甲車型が並び時間差で砲撃を行ってきていた。
「突破して装甲車型から潰そう!」
「了解ですわ!」
 鞍馬の案に従って並ぶ装甲型目掛けて美沙樹が駆ける。
 自在に操られる大剣の軌跡が迸るたび、歪虚が斬り伏せられていく。
 その撃ち漏らしを黒曜の稲妻が焼き払う。
 殿を務めていた鞍馬がそれに気づいたのは必然だっただろう。
 反対側に一体、装甲車型が潜んでいたのだ。
 照準はすでに定まっている。咄嗟に盾を構えた鞍馬が跳んだ。
「鞍馬さん!」
 美沙樹の叫ぶような声は爆音にかき消された。
 爆風で吹き飛ばされた鞍馬が斜面を駆け上るように転がる、それを慌てて追う三人。
 正面に居た装甲車型一体に目掛けて一気に間合いを詰めた美沙樹の剣が、薄い所を穿ったのだろう、深々と突き立った。

「無茶にもほどってもんがあるだろう!?」
 直撃を受けた鞍馬を介抱しつつ黒曜が呆れたように言う、どちらかと言えば怒っているか。
 渡された饅頭を食べ、それをポーションで流し込み鞍馬はふぅと一息ついた。
「全員が巻き込まれるよりはいいと思った」
「確かに結果的にはそうでしたけど、いくらなんでも限度がありますわ」
「全くだ。誰かを盾にするなど、考えたくもない」
 周囲に居た歪虚をすべて掃討しほんの少しの休憩時間、誰もが満身創痍であった。
「もう少しのはずだ、頑張ろう」
 若干ふらつきながらも疲労を隠そうとする鞍馬に、その場の全員が鼓舞されたのは間違いないだろう。

●カウント289
「ちょっとちょっとぉ!! なんでこんなにいるのよぉ! 引き付けるったって、限度があるでしょぉ!?」
 地上数メートルを滑空してくる空撮型を鞭で撃ち落としながらロスが叫ぶ。
 長丁場もそろそろ終盤と思われたその状況はかなりきわどいものである。
 空を埋め尽くさんばかりの無数の空撮型歪虚は防衛戦突破時よりもその数を増しているように思える。
「……新手が来たようだね」
「次から次にしつこい奴らだね、ま……陽動作戦としちゃ成功かな」
 莢と背中合わせに立っていたひふみの耳に届いたモーターの駆動音と木々をなぎ倒す音。
 装甲車型が、いくつだろうか……かさんだ疲労とダメージは彼女の思考をはっきりと阻害する。
「太郎、次郎、十一郎、こっちへ!」
 焼け焦げた毛皮と血まみれの毛皮、戦馬である十一郎は相打ちで足をやられていた。
 致命傷ではないが、激しい動きは当分難しいだろう家族をかばうように前へ出る。
 そんなサクラを鞍馬が盾を持ちレーザーから庇う。
「諦めるな、もう少しで」
 召還が発生するはずだ、と鞍馬が言う。
 だが、明確な時間はわからない。
 全員一緒であるかどうかの保証もない。
「こっちのライフはもう限界だってのに、遠慮のない奴らだね。こいつでご破算だよ!」
 放たれた符が稲妻となって近づく歪虚を焼く。
 だがその後ろからすぐに新たな歪虚が現れた。
「まっ……たく、しつ……こい、ですわねっ!」
 ばしゃりと黒い液体がはねる。
 縦横無尽に振り回される大剣も、その勢いがだいぶ落ちていた。
「くっ……しまっ……!」
 倒しきれなかった歪虚の触手が美沙樹を狙いしゅるりと走る、その触手の塊を門垣が切り払った。
 片腕はすでに血まみれでかろうじて片手で刀を握っているような状態だ。
 それでも――
「まだ、終わりではない」
 稜線からキラリと光る何かが見えた。
「まずい……」
 それがなんなのか、全員が理解してしまった。
 十を超える砲塔。
 立て続けに聞こえる砲撃音。
 ――世界が暗転した。

 えぐれた山の斜面を探すように、触手の塊が這いずり、空撮型歪虚が空を埋め尽くす。
 そこに探すものは見当たらない。
 装甲型歪虚がしきりに砲塔を動かし続ける、その目標なき索敵はその後しばらく続いた。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 11
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 千の符を散らして
    黒耀 ka5677

  • 鞍馬 真ka5819
  • 黒狼の爪
    久瀬 ひふみka6573

重体一覧

参加者一覧

  • Lady Rose
    ロス・バーミリオン(ka4718
    人間(蒼)|32才|男性|舞刀士
  • 清冽の剣士
    音羽 美沙樹(ka4757
    人間(紅)|18才|女性|舞刀士
  • イコニアの騎士
    宵待 サクラ(ka5561
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 千の符を散らして
    黒耀 (ka5677
    鬼|25才|女性|符術師
  • 悪党の美学
    五光 莢(ka5713
    人間(蒼)|18才|女性|格闘士

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人

  • 門垣 源一郎(ka6320
    人間(蒼)|30才|男性|疾影士
  • 黒狼の爪
    久瀬 ひふみ(ka6573
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
久瀬 ひふみ(ka6573
人間(リアルブルー)|16才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2017/03/13 03:33:59
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/03/08 21:02:22