ゲスト
(ka0000)
【界冥】松前要塞攻略戦
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/03/13 07:30
- 完成日
- 2017/03/21 06:16
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
青森上空を行くのは、統一連合宙軍所属テレーザ級巡洋艦。
――通称『シャングリラ』。
宣伝部隊『メタ・シャングリラ』の旗艦であると同時に、函館奪還作戦の指揮艦でもある。
だが、周囲には他に艦船は見当たらない。
いつもなら艦隊の後方について戦闘も少ないシャングリラであったが、今回はそうではない。それもそのはず、統一連合宙軍内では今回の函館奪還作戦が成功すると思われていないからだ。
宣伝と融資を引き出すのがメインな部隊にまともな戦闘ができるはずもない。
下手に手を出せば痛い目を見る。
まずは、初戦の出方を見守るとしよう。
そう考えた軍人が多数いた事から、今回の戦いに協力してくれる軍人は皆無に等しい。
そう、一部を除いては――。
「久しぶりの地球で、早々にバアさんと再会とはな」
山岳猟団団長の八重樫 敦 (kz0056)は、シャングリラのブリッジで懐かしい顔に再会した。
目の前にいるのは、森山恭子。
このメタ・シャングリラの指揮官にして今回の函館奪還作戦の総指揮を担当している。八重樫が連合宙軍に在籍していた頃は、恭子の元でかなり無茶な作戦を遂行していたらしい。
「バアさんとは失礼ザマス。こう見えても還暦前なんザマスよ」
「ああ、済まない。そうだったな。
それより今回の作戦を教えてくれ。何せ、こちらには時間が無い」
八重樫は恭子にブリーフィングを要求した。
八重樫を含む覚醒者は長時間リアルブルーにいる事ができない。時間が経過すれば強制的にクリムゾンウェストへ召喚されてしまうからだ。一度の転移でリアルブルーにいられるのは半日が最長。
作戦遂行中に召喚されでもすれば、作戦失敗は濃厚だ。
「はいはい、分かってるザマス。では、これを見るザマス」
恭子がキーボードを叩くとモニターに表示されたのは、北海道南部の地図だ。
白い点滅が自分達が乗船するシャングリラである事がすぐに分かる。
「いいザマスか。松前にはVOIDの要塞が建設されているザマス。
統一連合宙軍ではこの要塞を松前要塞と呼んでいるザマス。この松前要塞にはVOID砲と呼ばれるビーム兵器が目視で30門以上、それが海に向けて設置されているザマス。このまま真っ直ぐ進めば、シャングリラもVOID砲の餌食ザマスね」
恭子によればVOID砲に加えて鉄壁とも呼べる壁の存在。
さらに壁の向こうには曲輪は何重にも配置、大手門や搦め手門への道も入り組んでいる。内部からの射撃を意識しての配置である為、正面から白兵を挑むのは無謀だろう。
「で、どうすればいいんだ?」
恭子の説明に耳を傾け、疑問を投げかける八重樫。
松前要塞は海岸線沿いに建設されている。
VOID砲が海側へ向けられている事から、航行する船や飛行する船を狙い撃ちする事が目的だ。恭子の言う通り、海側からの攻撃は危険が伴う。
そんな八重樫の疑問に、恭子は地震を持って答える。
「良い質問ザマスね。後で飴ちゃんをあげるザマス」
「いらん。早く先へ進めろ」
「もう、せっかちザマスね。
斥候の話では海側に大砲は向けられているものの、山側は無防備ザマス。
だから……こうするザマス」
恭子は再びキーボードを叩く。
次の瞬間、海に赤い光点が三つ表示される。
「まず、CAMを三機出動させて敵の目を惹くザマス。海には今まで沈めた艦船の残骸があるザマスから、CAMで行けば立つ事は難しくないザマス」
「おい、相手は大量の大砲を保有しているのだろう? そいつはどうするんだ?」
「それについては用意してあるザマス」
恭子の声と同時にモニターにはCAM用の壁盾が映し出される。
単なる鋼鉄製の盾ではなく、周囲にオレンジ色の光が見える。
「試作中の対VOID砲壁盾ザマス。これを構えながら反撃をしつつ、敵の目を惹き付けるザマス。
その隙に小型船で八重樫さん率いる精鋭部隊が北上。江差から上陸して一気に南下。山側から松前要塞を襲撃するザマス。
既に本作戦の陽動部隊や先行部隊は動き出しているザマスから、彼らの活躍次第で苦労度合いも変わるザマスよ」
江差から松前までは60キロ程度。海岸線沿いを急げば松前に到着する。
情報によれば山から襲撃を仕掛ければ、大手門を通らずに要塞内部へ侵入する事ができる。既に江差付近及び松前周辺でも陽動や制圧作戦が展開されており、後は松前要塞制圧に八重樫達が動けば良い手筈になっている。
「なるほど、内部へ侵入してVOID砲を黙らせる訳か。
本来なら松前要塞は多数のCAM及び艦隊により陥落させて電撃的作戦を展開すべきだが、現状の戦力ではこの作戦が理に叶っている」
「そうザマス。黙らせた後はシャングリラの支援砲撃も行って一気に制圧するザマス」
恭子は胸を張った。
自慢の作戦なのだろうが、その内容はかなり危険だ。
「団長。なんで、松前からなんですか?
クラスタは函館五稜郭跡なんですから、直接函館湾を行けばいいじゃないですか」
山岳猟団に属するハンターがモニターを指差しながら八重樫に話し掛ける。
確かに松前から函館クラスタまで100キロ程度。函館湾から攻めればこの距離を移動しなくて済む。
その問いに対して八重樫は頭を振った。
「湾を取り囲むように海岸線が延び、入り口には函館山まである。迎撃には最適の地形だ。
事実、湾内に侵入した途端、謎の敵に攻撃されたって報告もある。正面から挑むのはあまりに危険だ。
それに初戦を華々しく飾れば統一連合宙軍の連中も本腰を上げて参戦してくるだろう。
初戦を華々しく飾り、確実に進軍する為には……」
「違うザマス! これは箱館戦争ザマス!」
八重樫のフォローを全否定する恭子。
怪訝そうな顔を浮かべる八重樫は、思わずため息をつく。
「なんだって?」
「箱館戦争ザマス。
あの戊辰戦争の最後、政府軍の前に最後まで抵抗する旧幕府軍……。
今回のあたくしは土方様と異なる立場。でも、己の宿命を背負って刃を交わす愛のドラマは絶対不可避。むしろ、立場が違うからこそ、萌えるシチュエーション。男と男の愛のぶつかり合いが……。
ああ、あたくしの創作意欲が湧いてきたザマスよ!」
恭子は、うっとりした目でモニターを見る。
どうやら恭子は歴女のようだ。おそらく即売会などで薄い本を何冊も製作していた時代もあるのだろうが、話を聞いて想像するだけでも夢に出そうだ。
考えてみれば、箱館戦争を意識しているからこその進軍ルートだと分かる。
モニターに示された函館クラスタの侵攻ルートはこの松前要塞陥落後に海岸線へ向かうルートと江差から陸路を使うルートの二つに別れている。
まさに箱館戦争の再来だ。
「団長……」
「やるしかないだろう。全団員は作戦の準備を始めろ」
八重樫は頭を軽く抑えながら、作戦準備の為にブリッジを後にした。
――通称『シャングリラ』。
宣伝部隊『メタ・シャングリラ』の旗艦であると同時に、函館奪還作戦の指揮艦でもある。
だが、周囲には他に艦船は見当たらない。
いつもなら艦隊の後方について戦闘も少ないシャングリラであったが、今回はそうではない。それもそのはず、統一連合宙軍内では今回の函館奪還作戦が成功すると思われていないからだ。
宣伝と融資を引き出すのがメインな部隊にまともな戦闘ができるはずもない。
下手に手を出せば痛い目を見る。
まずは、初戦の出方を見守るとしよう。
そう考えた軍人が多数いた事から、今回の戦いに協力してくれる軍人は皆無に等しい。
そう、一部を除いては――。
「久しぶりの地球で、早々にバアさんと再会とはな」
山岳猟団団長の八重樫 敦 (kz0056)は、シャングリラのブリッジで懐かしい顔に再会した。
目の前にいるのは、森山恭子。
このメタ・シャングリラの指揮官にして今回の函館奪還作戦の総指揮を担当している。八重樫が連合宙軍に在籍していた頃は、恭子の元でかなり無茶な作戦を遂行していたらしい。
「バアさんとは失礼ザマス。こう見えても還暦前なんザマスよ」
「ああ、済まない。そうだったな。
それより今回の作戦を教えてくれ。何せ、こちらには時間が無い」
八重樫は恭子にブリーフィングを要求した。
八重樫を含む覚醒者は長時間リアルブルーにいる事ができない。時間が経過すれば強制的にクリムゾンウェストへ召喚されてしまうからだ。一度の転移でリアルブルーにいられるのは半日が最長。
作戦遂行中に召喚されでもすれば、作戦失敗は濃厚だ。
「はいはい、分かってるザマス。では、これを見るザマス」
恭子がキーボードを叩くとモニターに表示されたのは、北海道南部の地図だ。
白い点滅が自分達が乗船するシャングリラである事がすぐに分かる。
「いいザマスか。松前にはVOIDの要塞が建設されているザマス。
統一連合宙軍ではこの要塞を松前要塞と呼んでいるザマス。この松前要塞にはVOID砲と呼ばれるビーム兵器が目視で30門以上、それが海に向けて設置されているザマス。このまま真っ直ぐ進めば、シャングリラもVOID砲の餌食ザマスね」
恭子によればVOID砲に加えて鉄壁とも呼べる壁の存在。
さらに壁の向こうには曲輪は何重にも配置、大手門や搦め手門への道も入り組んでいる。内部からの射撃を意識しての配置である為、正面から白兵を挑むのは無謀だろう。
「で、どうすればいいんだ?」
恭子の説明に耳を傾け、疑問を投げかける八重樫。
松前要塞は海岸線沿いに建設されている。
VOID砲が海側へ向けられている事から、航行する船や飛行する船を狙い撃ちする事が目的だ。恭子の言う通り、海側からの攻撃は危険が伴う。
そんな八重樫の疑問に、恭子は地震を持って答える。
「良い質問ザマスね。後で飴ちゃんをあげるザマス」
「いらん。早く先へ進めろ」
「もう、せっかちザマスね。
斥候の話では海側に大砲は向けられているものの、山側は無防備ザマス。
だから……こうするザマス」
恭子は再びキーボードを叩く。
次の瞬間、海に赤い光点が三つ表示される。
「まず、CAMを三機出動させて敵の目を惹くザマス。海には今まで沈めた艦船の残骸があるザマスから、CAMで行けば立つ事は難しくないザマス」
「おい、相手は大量の大砲を保有しているのだろう? そいつはどうするんだ?」
「それについては用意してあるザマス」
恭子の声と同時にモニターにはCAM用の壁盾が映し出される。
単なる鋼鉄製の盾ではなく、周囲にオレンジ色の光が見える。
「試作中の対VOID砲壁盾ザマス。これを構えながら反撃をしつつ、敵の目を惹き付けるザマス。
その隙に小型船で八重樫さん率いる精鋭部隊が北上。江差から上陸して一気に南下。山側から松前要塞を襲撃するザマス。
既に本作戦の陽動部隊や先行部隊は動き出しているザマスから、彼らの活躍次第で苦労度合いも変わるザマスよ」
江差から松前までは60キロ程度。海岸線沿いを急げば松前に到着する。
情報によれば山から襲撃を仕掛ければ、大手門を通らずに要塞内部へ侵入する事ができる。既に江差付近及び松前周辺でも陽動や制圧作戦が展開されており、後は松前要塞制圧に八重樫達が動けば良い手筈になっている。
「なるほど、内部へ侵入してVOID砲を黙らせる訳か。
本来なら松前要塞は多数のCAM及び艦隊により陥落させて電撃的作戦を展開すべきだが、現状の戦力ではこの作戦が理に叶っている」
「そうザマス。黙らせた後はシャングリラの支援砲撃も行って一気に制圧するザマス」
恭子は胸を張った。
自慢の作戦なのだろうが、その内容はかなり危険だ。
「団長。なんで、松前からなんですか?
クラスタは函館五稜郭跡なんですから、直接函館湾を行けばいいじゃないですか」
山岳猟団に属するハンターがモニターを指差しながら八重樫に話し掛ける。
確かに松前から函館クラスタまで100キロ程度。函館湾から攻めればこの距離を移動しなくて済む。
その問いに対して八重樫は頭を振った。
「湾を取り囲むように海岸線が延び、入り口には函館山まである。迎撃には最適の地形だ。
事実、湾内に侵入した途端、謎の敵に攻撃されたって報告もある。正面から挑むのはあまりに危険だ。
それに初戦を華々しく飾れば統一連合宙軍の連中も本腰を上げて参戦してくるだろう。
初戦を華々しく飾り、確実に進軍する為には……」
「違うザマス! これは箱館戦争ザマス!」
八重樫のフォローを全否定する恭子。
怪訝そうな顔を浮かべる八重樫は、思わずため息をつく。
「なんだって?」
「箱館戦争ザマス。
あの戊辰戦争の最後、政府軍の前に最後まで抵抗する旧幕府軍……。
今回のあたくしは土方様と異なる立場。でも、己の宿命を背負って刃を交わす愛のドラマは絶対不可避。むしろ、立場が違うからこそ、萌えるシチュエーション。男と男の愛のぶつかり合いが……。
ああ、あたくしの創作意欲が湧いてきたザマスよ!」
恭子は、うっとりした目でモニターを見る。
どうやら恭子は歴女のようだ。おそらく即売会などで薄い本を何冊も製作していた時代もあるのだろうが、話を聞いて想像するだけでも夢に出そうだ。
考えてみれば、箱館戦争を意識しているからこその進軍ルートだと分かる。
モニターに示された函館クラスタの侵攻ルートはこの松前要塞陥落後に海岸線へ向かうルートと江差から陸路を使うルートの二つに別れている。
まさに箱館戦争の再来だ。
「団長……」
「やるしかないだろう。全団員は作戦の準備を始めろ」
八重樫は頭を軽く抑えながら、作戦準備の為にブリッジを後にした。
リプレイ本文
波が岸の岩場に叩きつけられ、白い花を生み出した。
潮風に触れる鋼の肌が鈍色の光を放つ。
「ここが、リアルブルー……」
アティ(ka2729)が騎乗する愛機R7エクスシアは、海の上に立っていた。
正確には、海の藻屑となった艦船の残骸の上。この海は岩場も多いため、突然深くなる場所と岩場が隆起している場所がある。この岩場に破壊された艦船が積み重なり、R7エクスシアの足場を形成していた。
大事な友人の帰るべき場所――アティは、いつもより緊張した面持ちだ。
「久しぶりの日本……美味しい松前漬けをいただきませんと」
八雲 奏(ka4074)の魔導型ドミニオン『【Cancer】悪王子』もまた、この残骸の上に立っていた。
八雲にとってリアルブルーの日本へ訪れたのは、いつ以来だろうか。
本来であれば遅い春の到来を待ちながら温泉を満喫。海の幸に舌鼓を打っていた事だろう。
だが、現実は過酷だ。
待っているのは温泉でも、海の幸でもない。
「リゾート気分は後回しだ……来るぞ」
アーク・フォーサイス(ka6568)のR7エクスシアは壁盾を構えた。
この津軽海峡に面した北海道南部――松前。
かつて松前城があり、箱館戦争の舞台となった地でもある。
この地にて三人の前にそびえ立つのは、松前城ではない。
彼らの前にあるのは、松前要塞。
巨大な漆黒の壁から顔を覗かせる30門以上のVOID砲であった。
そのVOID砲から放たれた光。
砲身から迸る光の筋が星空のように瞬きながら、三機に向かって降り注ぐ。
「くっ」
震える機体。
その振動の中、アークは操縦席の計器に視線を送る。
VOID砲のビームを受けたR7エクスシア。壁盾から腕を通し、機体全体に震動が伝わる。
しかし、R7エクスシアには一切の故障箇所はなし。
壁盾にも異常はまったく見られない。
「大丈夫ですか?」
「こっちは大丈夫です」
「こちらも異常なしだ。盾にも破損は見られない」
アティの問いに、奏とアークは答える。
試作品と聞いていた対VOID砲壁盾の出来は、上々だ。
「敵の攻撃を正面から受けられれば、この盾で防げるみたいです」
「それにあの大砲、思ったよりも命中精度は高くありません」
アティが盾の感触を確かめる横で、奏は光の軌道を確認していた。
海に面した松前要塞の前に立つ三機であるが、すべてのVOID砲から放たれたビームが命中した訳ではない。
その多くは盾で防ぐ必要もなく海中へと吸い込まれていった。
「おそらく、あのVOID砲は威力も命中精度もそこまで高くはない。それを補う意味であれだけの砲門を用意したのだろう」
アークは、冷静に分析する。
普通の艦船であればあれだけの砲門で一斉射撃されれば、撃沈も免れない。
だが、こちらは三機のCAM。的もずっと小さい上、壁盾という強い味方もいる。
であれば、当面の問題は――。
「江差から松前まで、約一時間。ここで耐えて見せます。
落とされたら、意味がないもの。私達の役目は攻撃より守備、なるべく長く注意を引くこと!」
壁盾を構えながら、アティのマシンガン「プレートスNH3」が火を噴いた。
要塞に向けて発射された弾丸。狙いは要塞へのダメージではない。
如何に時間を稼ぐか、だ。
「今日は刀を使えませんか……残念ですが、大筒撃ちと参りましょう。城壁攻めというのも、趣がありますもの」
アティに続いて、奏も『悪王子』のカノン砲「スフィーダ99」で牽制射撃。
今回の依頼の為に、奏は『悪王子』に追加装甲板、試作型巨人用全身鎧「堅牢なるミラク」を装備してきていた。機動性を捨ててでも、防御力を上げて囮となる覚悟であった。
そう、すべては江差からこちらへ向かう精鋭部隊の為に。
「リアルブルー。世界が異なっても、やるべき事は変わらない。
この手で救う事ができるのなら……その為なら、全力を惜しまない」
アークのR7エクスシア。
覚悟を持って、松前要塞へ臨む――魔銃「ナシャート」を手にして。
●
今回の作戦は、函館クラスタ攻略の橋頭堡を築く初戦だ。
メタ・シャングリラ艦長の森山恭子(kz0216)特務大尉は、松前要塞の攻略から開始した。CAM三機を囮にして注意を引くと同時に、江差から上陸した精鋭部隊が山側から松前要塞内部へ潜入。内部からVOID砲を破壊する作戦だ。
だが、立案は容易。されど、実行は困難。
江差から松前までは魔導トラックでも一時間の距離だ。
たとえ松前周辺及び江差までの海岸線で陽動作戦を展開していても、松前要塞のVOID砲はCAM三機へ集中する。精鋭部隊が潜入するまでの間、CAM三機は耐え続けなければならない。
彼らの苦労を無駄にしない為にも、精鋭部隊は松前へ急がなければならない。
「このさき、きゅうこう。おてあらいなどは……すませたよね?」
ルネ(ka4202)の魔導トラック『はうんど』は、国道228号線を南下していた。
事前にメタ・シャングリラで手に入れた地図を片手に、松前要塞に向かって突き進む。
同乗するのは山岳猟団の団長である八重樫と山岳猟団の面々だ。
彼らはルネと共に精鋭部隊として松前要塞の裏側から潜入する。少しでも早く移動する為にルネは、八重樫を含む団員5名を『はうんど』に乗せて直走っていた。
「周辺の陽動は成功しているようだ。だが、なるべく敵に気付かれる前に山へ入った方がいいな」
『はうんど』の窓から外の様子を窺う八重樫。
ルネは事前に最短ルートを確認。どの地点から山へ入るべきかは認識していた。
それでも松前要塞まで敵との戦闘は避けておきたい。少し早めに山に入る事を提案してきたのだ。
「やまねー。まるで、えんそく。
でも、まよったらこまーから、ね。これ、よろしく」
ルネはハンドルを握りながら、助手席の八重樫へ地図を投げつけた。
この間、魔導トラックはスピードを上げる。
「道案内か。分かった。
だが、本当に俺達まで乗って良かったのか? 一人の方が早く要塞に着いたのではないか?」
地図を広げながら、申し訳なさそうな八重樫。
実際、スピードを出すのであれば、重量は軽い方がいい。同乗者を減らせば『はうんど』もスピードが上がる。
だが、ルネはルネなりの考えがあった。
「たびはみちづれ、よはなさけ。はやくつくのが目的、じゃない。VOIDを、たのすため」
ルネは松前要塞陥落に人手が必要だと考えていた。
山岳猟団は、予定であれば準備していたバイクで山道を駆け抜ける手筈だった。しかし、それでは時間がかかりすぎる。すべての団員を乗せる事は不可能でも、可能な限り『はうんど』へ乗せて運搬した方が作戦の成功確率も引き上げられる。
「そうか……」
「じゃあ、ぶっとばすよ」
八重樫が頷くと同時に、ルネは「ターボブースト」を使った。
スピードが上がる『はうんど』。その時間は短時間なれど、今は少しでも早く松前要塞に到達しなければならない。
激しい振動の中、『はうんど』に乗る面々は松前要塞へと急ぐ。
●
一方、松前要塞へ向かう魔導トラックはもう一台あった。
柊 恭也(ka0711)の運転する魔導トラックだ。
こちらのトラックにはジーナ(ka1643)が同乗する。
「さて、と」
恭也は地球連合軍用PDAを魔導トラックのダッシュボードへ置く。
流れ出す音楽が、恭也をリラックスさせる。
運転席の窓から見える海が、太陽に照らされる。これが松前要塞という戦場でなければ、ドライブにしか見えない。
「随分と余裕だな」
ジーナは、恭也を一瞥した。
ジーナにしてみればこれから戦場へ向かう身分。あまりリラックスしていては戦場で充分な働きができない。
余裕を見せる恭也にジーナは、内心心配していた。
「そちらこそ、随分と気張っているな」
「当然だ。これから戦いだ」
「それは分かってる。あ、もしかしてトラックの中が息苦しい?」
恭也はハンドルを握りながら、窓を開く。
潮風が頬に辺り、冷気が車内へと飛び込んでくる。
「くぅ~、さすがは北海道。まだまだ寒いな」
「おい。遊びじゃないんだ」
「ああ、遊びじゃない。今からVOIDと戦争しようっていうんだ。面倒事はさっさと終わらせたい。確実に、な」
気付けば恭也はジーナへ向き直った。
実は恭也の運転する魔導トラックもかなりのスピードを出していた。可能な限り早く所定位置に到達できれば、囮役のCAM三機も負担が軽くなる。
「あんまり気張りすぎれば、本番で大きなミスを犯す。だったら、少しぐらい肩の力を抜いた方がいい」
「…………」
ジーナは、言葉を返さなかった。
受けた依頼に確実に答える。自分にはそれだけがあれば良い。
ドワーフでありながら、慎重な策を好む冷静な性格。それは言い換えれば、依頼に臨む態度にも表れる。精神を集中し、最高の結果を生む。戦いを前に楽しむ事を良しとしていなかったからだ。
だが、恭也は違う。
いくらここで気張っても、松前要塞へ着くまでは何もできない。
ならば、移動の間でもリラックスするべきと考えているようだ。
「返事無し、か。まあいいや。
そろそろ山へ入る。楽しい楽しいピクニックといきますか」
恭也はジーナに軽く微笑みかけると、山に向かってハンドルを切った。
●
精鋭部隊が魔導トラックへ移動する裏で、松前要塞で囮役となる三機のCAM。
VOIDの注目を引きながら、役目を果たし続けていた。
「こんな鋼の巨人に乗っていても効果があるなんて……」
アティは自身にプロテクションを施した後、仲間へヒールを施す。
予め経験していた事ではあるが、自らのCAMがヒールによってダメージが抑えられる事に奇妙な感覚を覚える。
「御神の聖なる光を……!」
「ありがとうございます。これならまだいけます。
小隊より最硬度の刃である証――ゾディアックがキャンサーの称号を賜りし機体。我が小隊の誇りにかけて、恥じない戦いをお見せ致しましょう」
奏はソウルトーチを使って、注意を悪王子へと惹きつける。
VOID砲がこちらへ集中する事を感じ取りながら、盾を前面に押し出す。
追加装甲に加えてアグレッシブファングで反応速度を上昇。斜め方向から来たビームを巧みに動かす。
次の瞬間、連続して発生する衝撃。
盾が確実にVOID砲の攻撃を防いでいる証拠だ。
「時間から推測すれば、恭也達はもう少しか」
リロードキャストで魔銃「ナシャート」のリロードを実行するアーク。
途中で敵と遭遇していなければ、予定時間の半分を過ぎた辺りだ。時折牽制射撃を加えながら、VOID砲の砲撃を耐え続けている。
その間気付いた事といえば、これだけの拠点の割にVOID砲以外の攻撃手段を持ち合わせていない事だ。
(砲台の数で脅していた?
だとするなら、函館クラスタの戦力は多くない……もしくは、強力な個体だけで支えられているのか?)
壁盾の振動に体を震わせながら、ルークは推察する。
仮にこの推論が的中していたとしても、すべてはこの要塞を攻略すれば明らかになる。
さらに分かった事が、もう一つある。
「皆を信じます。必ず、松前要塞を襲撃してくれる! 私達は、自分達の仕事を全うしましょう!」
アティはマジックエンハンサーでマテリアルの力を高めた後、マテリアルライフルを松前要塞へ向ける。
狙うは、松前要塞の壁から顔を覗かせるVOID砲。
照準を合わせ、意識を集中させる。
次の瞬間、紫色の光線がVOID砲を捉えて爆発。松前要塞の砲門が一つ沈黙した。
「これで、また一つ……うわっ、今度はこっちに!」
今度は、VOID砲を沈黙させたアティ砲撃が集中する。
松前要塞は巨大な壁にVOID砲が海側へ向けられる形で設置されている。だが、VOID砲が設置されている穴が守られている訳ではない。ここを狙い撃ちできれば、VOID砲は沈黙する。
効率はあまり良くないが、敵の注目を集めつつ砲撃を黙らせる事ができるのであれば狙う価値は十分にある。
「盾も多少ダメージを負っているようですが……参りましょう、悪王子」
奏はリブートすべく、操縦席の計器目掛けて『斜め45度』を意識した手刀をお見舞いした。
●
精鋭部隊予定時刻。
この時点で八重樫とハンターは、松前要塞の裏手へ潜んでいた。
敵は完全にこちらへ気付いていない。
早々に次の段階へ進むべきだろう。
「じゃあ、始めるか」
恭也は、魔導トラックのシグナルバレットを打ち上げた。
空には魔導信号弾が放物線を描き、赤い線が走る。
メタ・シャングリラと囮役へ到達を知らせる一報だ。
これを受けてルネの『はうんど』が突入路を切り拓く。
「それじゃー、いくの!」
『はうんど』に搭載された車載砲「パンテレスD7」が、松前要塞の裏手を吹き飛ばす。 どうやら松前要塞の裏手は元々の松前城の裏門そのままだったようだ。
城壁は破壊され、魔導トラックやバイクでも進入可能な通路が出来上がる。
「全団員、突撃開始だ」
八重樫の一声で、山岳猟団は動き出した。
進入路から一気に雪崩れ込む山岳猟団とハンター達。間もなく山岳猟団は周辺を警戒していた小型狂気へと襲いかかる。
「狙える奴は、VOID砲を黙らせろ。ジーナ、そっちを頼む」
大剣で小型狂気を弾き飛ばした八重樫は、ジーナへ前へ行くよう促した。
こうしている間にもVOID砲はCAMを狙っている。少しでも早く叩いて黙らせなければならない。
その為にはVOID砲へと続く道を拓かなければならない。
「無論だ。遅れは取らない」
ジーナが先頭に立つ形で、狂気の群れへと突撃を開始。
魔導拳銃「エア・スティーラー」を片手に小型狂気を確実に始末していく。
至近距離まで近づいて、エア・スティーラーで発砲。
同時に次のターゲットを鋭敏知覚で狙いを定め、間合いを詰めていく。
「はっ!」
人型狂気が振り下ろした刀状の影をシールド「カエトラ」で受け止める。
そして、エア・スティーラーの砲身を腹部へと突き付け――発射。
狂気のVOIDを次々と駆逐していく。
「やるな、ジーナ」
「無駄口を叩く暇があるなら、一体でも多く敵を倒せ」
八重樫と背中を守り合いながら、集まる敵を倒す。
山岳猟団の団員も一緒に戦い、周辺の敵は確実に数を減らしていく。。
そして――ついに、道は拓かれる。
「視界は良好。こっちも動き出しますか」
恭也は魔導トラックを前進。
魔導レーダー「エクタシス」で周辺の状況をディスプレイへ映し出す。
そこには一定の間隔で並ぶ反応があった。
「へぇ、分かりやすくて助かるな。
要塞っつー割に防衛戦力が微妙というか。まあ、その分楽で良いがね!」
次の瞬間、魔導トラックの30mmアサルトライフルが起動。
設置されていたVOID砲を背後から破壊していく。
VOID砲自体は自走機能はない。
つまり、背後に回ってしまえば、VOID砲は単なる的に過ぎない。
恭也は魔導トラックの機動力を生かしながら、次々とVOID砲を沈黙させていく。
「まもって、ほしーの。……おねがい?」
ルネは山岳猟団の団員へ『はうんど』の周辺を守るようお願いしていた。
『はうんど』周囲の小型狂気を排除してもらう、所謂随伴歩兵の役割を担ってもらった。
あり合わせの資材で防盾モドキを付けてはいるが、小型狂気に纏わり付かれれば厄介極まりない。
「おっ、はっけん。……みんな、まえをあけてー」
ルネは目視でVOID砲を発見すると車載砲「パンテレスD7」の照準を合わせる。
そして、大火力でもってVOID砲を一気に吹き飛ばしていく。
その高火力を前であっさり破壊されるVOID砲。
「はい、いっちょあがり。つぎ、つぎー」
再び次の目標に向かって『はうんど』を旋回させるルネであった。
●
精鋭部隊が松前要塞へ突入した後は、瞬く間に敵を駆逐していった。
元々強力な個体がいない上に、VOID砲は内部の敵に無力。
潜入できれば陥落は容易かった。
「どうやら、成功のようです。悪王子、ご苦労様でした」
奏の前にあるモニターを見れば、精鋭部隊の活躍は想像できる。
何せ、次々とVOID砲が沈黙していくのだ。先程までビームを乱射していたVOID砲付近で大きな爆発が起こり、悪王子を狙うビームが目減りしていく。
「神よ、感謝します。そして、私達の成功を信じて各地で戦ってくれた皆の無事を祈ります」
アティは、R7エクスシアの操縦席でエクラに祈りを捧げる。
この結果は自分達だけではない。
他の地域で陽動に動いた者達のおかげでもある。
「そろそろ仕上げだな」
アークは、振り返った。
見上げた空に浮かぶのは、本作戦の旗艦であるメタ・シャングリラであった。
「らすとみたいね、えーがの」
ルネはトランシーバーで恭也へ連絡を入れた。
ほとんどの狂気は撃破。精鋭部隊も要塞の外へ撤退完了。
そうなれば、作戦の仕上げに取りかかる。
「じゃあ、派手に頼むぜ。指揮艦の婆さん!」
恭也が打ち上げた二発目のシグナルバレット。
それはメタ・シャングリラの支援攻撃打診を意味していた。
「婆さんじゃないザマス! まだ還暦前ザマス!」
トランシーバー越しに怒声を飛ばすのは、メタ・シャングリラのブリッジにいる恭子だ。
「ああ、悪かったよ。最後に要塞へ砲撃を頼む」
「了解ザマス。全砲門を開くザマス。目標、松前要塞!」
メタ・シャングリラが松前要塞へ接近してもVOID砲の砲撃はない。
既にすべての砲門は沈黙していた。
メタ・シャングリラは巨大な壁の間近まで接近。
そして、メタ・シャングリラは前方の壁に向かって全力砲撃を加えた。
激しい砲撃は巨大な壁を押し倒し、旧松前城の跡地へと横たえる。
統一連合宙軍が、松前要塞の陥落に成功した瞬間であった。
●
「勝利を祝して、かんぱーい!」
メタ・シャングリラのブリッジで、恭也が持ち込んだワイン「Destino Comune」で祝勝会が開催されていた。
「今日ぐらいは喜んでもバチは当たらないザマス。なんせ、統一連合宙軍からの通信がひっきりなしザマス」
恭子は、笑いが止まらなかった。
誰も今まで北海道の地を奪還できなかった。
しかし、それをメタ・シャングリラとハンター達がそれを成し遂げた。
これは日本政府だけではなく、統一連合宙軍にとっても大きな出来事となった。
「統一連合宙軍も微妙だなぁ。もう少しマシだと思ってたら、利権で足の引っ張り合い。どこが統一なんだか」
「組織とはそういうものだ。それにハンターは依頼完遂が最優先。こちらには関係ない」
ぼやく恭也の横でジーナは、呟いた。
確かに組織が大きくなれば統制は難しくなる。だとしても、組織の良心が残っている限り、腐る事は無い。それを信じているからこそ、ジーナはハンターとして依頼へ集中する事ができる。
「そういうもんかな?」
「そういうものだ」
首を傾げる恭也の横を、ジーナは通り過ぎていった。
「松前漬けは函館クラスタを崩壊させてからでしょうか」
勝利の余韻に浸る奏。前にいるのは、山岳猟団の八重樫だ。
片手にワイングラスがあるものの、八重樫は変わらずの仏頂面だ。
「そうだな。まだ戦いは始まったばかりだ」
「八重樫様と猟団の皆さんと、こうした席に同席できた事に感謝致します。まさに山岳猟団の復活祝いですね」
復活祝い。
奏の言う通り、山岳猟団にも今まで様々な事があった。
そして、こうして新たなる出発を迎えられた。
山岳猟団に籍を置く友人の名代としてこの依頼に馳せ参じられた事は、奏にとって良縁だった。
「友人達の代わりに『お帰りなさい』と言わせて下さい。
そして、いずれまた戦場の何処かで。山岳猟団が動く時は、私や友人も駆けつけます」
丁寧な挨拶をする奏。
その挨拶を前に八重樫は、ある決意をする。
「山岳猟団は、函館クラスタの破壊に全力で挑む。
誰の為じゃない。山岳猟団は、この戦いを通して復活の宣言する。邪魔する敵は――討滅だ」
(これが要塞? 簡単すぎる)
アークは、ブリッジの外に広がる海に視線を落とした。
要塞という名称は日本政府と連合宙軍が付けた物だ。VOIDにとっては単なる拠点に過ぎないのかもしれない。
――違和感。
だが、何かが気がかりなのだ。
「次が本番、でしょうか」
いつの間にか、アークの傍らにアティが立っていた。
険しい顔のアークを案じたのだろう。
アティは、静かに祈り始める。
「大丈夫。どんな困難が待っていても、信じています。この戦いは勝ちます」
エクラに誓ったかのように、自信に溢れるアティ。
そんなアティを前にアークは、眩しく感じる。
きっとアティは、自分だけじゃない。仲間を信じているのだ。
「そうだな。勝たなければな」
アークの口から、自然とそう言葉がこぼれ落ちた。
潮風に触れる鋼の肌が鈍色の光を放つ。
「ここが、リアルブルー……」
アティ(ka2729)が騎乗する愛機R7エクスシアは、海の上に立っていた。
正確には、海の藻屑となった艦船の残骸の上。この海は岩場も多いため、突然深くなる場所と岩場が隆起している場所がある。この岩場に破壊された艦船が積み重なり、R7エクスシアの足場を形成していた。
大事な友人の帰るべき場所――アティは、いつもより緊張した面持ちだ。
「久しぶりの日本……美味しい松前漬けをいただきませんと」
八雲 奏(ka4074)の魔導型ドミニオン『【Cancer】悪王子』もまた、この残骸の上に立っていた。
八雲にとってリアルブルーの日本へ訪れたのは、いつ以来だろうか。
本来であれば遅い春の到来を待ちながら温泉を満喫。海の幸に舌鼓を打っていた事だろう。
だが、現実は過酷だ。
待っているのは温泉でも、海の幸でもない。
「リゾート気分は後回しだ……来るぞ」
アーク・フォーサイス(ka6568)のR7エクスシアは壁盾を構えた。
この津軽海峡に面した北海道南部――松前。
かつて松前城があり、箱館戦争の舞台となった地でもある。
この地にて三人の前にそびえ立つのは、松前城ではない。
彼らの前にあるのは、松前要塞。
巨大な漆黒の壁から顔を覗かせる30門以上のVOID砲であった。
そのVOID砲から放たれた光。
砲身から迸る光の筋が星空のように瞬きながら、三機に向かって降り注ぐ。
「くっ」
震える機体。
その振動の中、アークは操縦席の計器に視線を送る。
VOID砲のビームを受けたR7エクスシア。壁盾から腕を通し、機体全体に震動が伝わる。
しかし、R7エクスシアには一切の故障箇所はなし。
壁盾にも異常はまったく見られない。
「大丈夫ですか?」
「こっちは大丈夫です」
「こちらも異常なしだ。盾にも破損は見られない」
アティの問いに、奏とアークは答える。
試作品と聞いていた対VOID砲壁盾の出来は、上々だ。
「敵の攻撃を正面から受けられれば、この盾で防げるみたいです」
「それにあの大砲、思ったよりも命中精度は高くありません」
アティが盾の感触を確かめる横で、奏は光の軌道を確認していた。
海に面した松前要塞の前に立つ三機であるが、すべてのVOID砲から放たれたビームが命中した訳ではない。
その多くは盾で防ぐ必要もなく海中へと吸い込まれていった。
「おそらく、あのVOID砲は威力も命中精度もそこまで高くはない。それを補う意味であれだけの砲門を用意したのだろう」
アークは、冷静に分析する。
普通の艦船であればあれだけの砲門で一斉射撃されれば、撃沈も免れない。
だが、こちらは三機のCAM。的もずっと小さい上、壁盾という強い味方もいる。
であれば、当面の問題は――。
「江差から松前まで、約一時間。ここで耐えて見せます。
落とされたら、意味がないもの。私達の役目は攻撃より守備、なるべく長く注意を引くこと!」
壁盾を構えながら、アティのマシンガン「プレートスNH3」が火を噴いた。
要塞に向けて発射された弾丸。狙いは要塞へのダメージではない。
如何に時間を稼ぐか、だ。
「今日は刀を使えませんか……残念ですが、大筒撃ちと参りましょう。城壁攻めというのも、趣がありますもの」
アティに続いて、奏も『悪王子』のカノン砲「スフィーダ99」で牽制射撃。
今回の依頼の為に、奏は『悪王子』に追加装甲板、試作型巨人用全身鎧「堅牢なるミラク」を装備してきていた。機動性を捨ててでも、防御力を上げて囮となる覚悟であった。
そう、すべては江差からこちらへ向かう精鋭部隊の為に。
「リアルブルー。世界が異なっても、やるべき事は変わらない。
この手で救う事ができるのなら……その為なら、全力を惜しまない」
アークのR7エクスシア。
覚悟を持って、松前要塞へ臨む――魔銃「ナシャート」を手にして。
●
今回の作戦は、函館クラスタ攻略の橋頭堡を築く初戦だ。
メタ・シャングリラ艦長の森山恭子(kz0216)特務大尉は、松前要塞の攻略から開始した。CAM三機を囮にして注意を引くと同時に、江差から上陸した精鋭部隊が山側から松前要塞内部へ潜入。内部からVOID砲を破壊する作戦だ。
だが、立案は容易。されど、実行は困難。
江差から松前までは魔導トラックでも一時間の距離だ。
たとえ松前周辺及び江差までの海岸線で陽動作戦を展開していても、松前要塞のVOID砲はCAM三機へ集中する。精鋭部隊が潜入するまでの間、CAM三機は耐え続けなければならない。
彼らの苦労を無駄にしない為にも、精鋭部隊は松前へ急がなければならない。
「このさき、きゅうこう。おてあらいなどは……すませたよね?」
ルネ(ka4202)の魔導トラック『はうんど』は、国道228号線を南下していた。
事前にメタ・シャングリラで手に入れた地図を片手に、松前要塞に向かって突き進む。
同乗するのは山岳猟団の団長である八重樫と山岳猟団の面々だ。
彼らはルネと共に精鋭部隊として松前要塞の裏側から潜入する。少しでも早く移動する為にルネは、八重樫を含む団員5名を『はうんど』に乗せて直走っていた。
「周辺の陽動は成功しているようだ。だが、なるべく敵に気付かれる前に山へ入った方がいいな」
『はうんど』の窓から外の様子を窺う八重樫。
ルネは事前に最短ルートを確認。どの地点から山へ入るべきかは認識していた。
それでも松前要塞まで敵との戦闘は避けておきたい。少し早めに山に入る事を提案してきたのだ。
「やまねー。まるで、えんそく。
でも、まよったらこまーから、ね。これ、よろしく」
ルネはハンドルを握りながら、助手席の八重樫へ地図を投げつけた。
この間、魔導トラックはスピードを上げる。
「道案内か。分かった。
だが、本当に俺達まで乗って良かったのか? 一人の方が早く要塞に着いたのではないか?」
地図を広げながら、申し訳なさそうな八重樫。
実際、スピードを出すのであれば、重量は軽い方がいい。同乗者を減らせば『はうんど』もスピードが上がる。
だが、ルネはルネなりの考えがあった。
「たびはみちづれ、よはなさけ。はやくつくのが目的、じゃない。VOIDを、たのすため」
ルネは松前要塞陥落に人手が必要だと考えていた。
山岳猟団は、予定であれば準備していたバイクで山道を駆け抜ける手筈だった。しかし、それでは時間がかかりすぎる。すべての団員を乗せる事は不可能でも、可能な限り『はうんど』へ乗せて運搬した方が作戦の成功確率も引き上げられる。
「そうか……」
「じゃあ、ぶっとばすよ」
八重樫が頷くと同時に、ルネは「ターボブースト」を使った。
スピードが上がる『はうんど』。その時間は短時間なれど、今は少しでも早く松前要塞に到達しなければならない。
激しい振動の中、『はうんど』に乗る面々は松前要塞へと急ぐ。
●
一方、松前要塞へ向かう魔導トラックはもう一台あった。
柊 恭也(ka0711)の運転する魔導トラックだ。
こちらのトラックにはジーナ(ka1643)が同乗する。
「さて、と」
恭也は地球連合軍用PDAを魔導トラックのダッシュボードへ置く。
流れ出す音楽が、恭也をリラックスさせる。
運転席の窓から見える海が、太陽に照らされる。これが松前要塞という戦場でなければ、ドライブにしか見えない。
「随分と余裕だな」
ジーナは、恭也を一瞥した。
ジーナにしてみればこれから戦場へ向かう身分。あまりリラックスしていては戦場で充分な働きができない。
余裕を見せる恭也にジーナは、内心心配していた。
「そちらこそ、随分と気張っているな」
「当然だ。これから戦いだ」
「それは分かってる。あ、もしかしてトラックの中が息苦しい?」
恭也はハンドルを握りながら、窓を開く。
潮風が頬に辺り、冷気が車内へと飛び込んでくる。
「くぅ~、さすがは北海道。まだまだ寒いな」
「おい。遊びじゃないんだ」
「ああ、遊びじゃない。今からVOIDと戦争しようっていうんだ。面倒事はさっさと終わらせたい。確実に、な」
気付けば恭也はジーナへ向き直った。
実は恭也の運転する魔導トラックもかなりのスピードを出していた。可能な限り早く所定位置に到達できれば、囮役のCAM三機も負担が軽くなる。
「あんまり気張りすぎれば、本番で大きなミスを犯す。だったら、少しぐらい肩の力を抜いた方がいい」
「…………」
ジーナは、言葉を返さなかった。
受けた依頼に確実に答える。自分にはそれだけがあれば良い。
ドワーフでありながら、慎重な策を好む冷静な性格。それは言い換えれば、依頼に臨む態度にも表れる。精神を集中し、最高の結果を生む。戦いを前に楽しむ事を良しとしていなかったからだ。
だが、恭也は違う。
いくらここで気張っても、松前要塞へ着くまでは何もできない。
ならば、移動の間でもリラックスするべきと考えているようだ。
「返事無し、か。まあいいや。
そろそろ山へ入る。楽しい楽しいピクニックといきますか」
恭也はジーナに軽く微笑みかけると、山に向かってハンドルを切った。
●
精鋭部隊が魔導トラックへ移動する裏で、松前要塞で囮役となる三機のCAM。
VOIDの注目を引きながら、役目を果たし続けていた。
「こんな鋼の巨人に乗っていても効果があるなんて……」
アティは自身にプロテクションを施した後、仲間へヒールを施す。
予め経験していた事ではあるが、自らのCAMがヒールによってダメージが抑えられる事に奇妙な感覚を覚える。
「御神の聖なる光を……!」
「ありがとうございます。これならまだいけます。
小隊より最硬度の刃である証――ゾディアックがキャンサーの称号を賜りし機体。我が小隊の誇りにかけて、恥じない戦いをお見せ致しましょう」
奏はソウルトーチを使って、注意を悪王子へと惹きつける。
VOID砲がこちらへ集中する事を感じ取りながら、盾を前面に押し出す。
追加装甲に加えてアグレッシブファングで反応速度を上昇。斜め方向から来たビームを巧みに動かす。
次の瞬間、連続して発生する衝撃。
盾が確実にVOID砲の攻撃を防いでいる証拠だ。
「時間から推測すれば、恭也達はもう少しか」
リロードキャストで魔銃「ナシャート」のリロードを実行するアーク。
途中で敵と遭遇していなければ、予定時間の半分を過ぎた辺りだ。時折牽制射撃を加えながら、VOID砲の砲撃を耐え続けている。
その間気付いた事といえば、これだけの拠点の割にVOID砲以外の攻撃手段を持ち合わせていない事だ。
(砲台の数で脅していた?
だとするなら、函館クラスタの戦力は多くない……もしくは、強力な個体だけで支えられているのか?)
壁盾の振動に体を震わせながら、ルークは推察する。
仮にこの推論が的中していたとしても、すべてはこの要塞を攻略すれば明らかになる。
さらに分かった事が、もう一つある。
「皆を信じます。必ず、松前要塞を襲撃してくれる! 私達は、自分達の仕事を全うしましょう!」
アティはマジックエンハンサーでマテリアルの力を高めた後、マテリアルライフルを松前要塞へ向ける。
狙うは、松前要塞の壁から顔を覗かせるVOID砲。
照準を合わせ、意識を集中させる。
次の瞬間、紫色の光線がVOID砲を捉えて爆発。松前要塞の砲門が一つ沈黙した。
「これで、また一つ……うわっ、今度はこっちに!」
今度は、VOID砲を沈黙させたアティ砲撃が集中する。
松前要塞は巨大な壁にVOID砲が海側へ向けられる形で設置されている。だが、VOID砲が設置されている穴が守られている訳ではない。ここを狙い撃ちできれば、VOID砲は沈黙する。
効率はあまり良くないが、敵の注目を集めつつ砲撃を黙らせる事ができるのであれば狙う価値は十分にある。
「盾も多少ダメージを負っているようですが……参りましょう、悪王子」
奏はリブートすべく、操縦席の計器目掛けて『斜め45度』を意識した手刀をお見舞いした。
●
精鋭部隊予定時刻。
この時点で八重樫とハンターは、松前要塞の裏手へ潜んでいた。
敵は完全にこちらへ気付いていない。
早々に次の段階へ進むべきだろう。
「じゃあ、始めるか」
恭也は、魔導トラックのシグナルバレットを打ち上げた。
空には魔導信号弾が放物線を描き、赤い線が走る。
メタ・シャングリラと囮役へ到達を知らせる一報だ。
これを受けてルネの『はうんど』が突入路を切り拓く。
「それじゃー、いくの!」
『はうんど』に搭載された車載砲「パンテレスD7」が、松前要塞の裏手を吹き飛ばす。 どうやら松前要塞の裏手は元々の松前城の裏門そのままだったようだ。
城壁は破壊され、魔導トラックやバイクでも進入可能な通路が出来上がる。
「全団員、突撃開始だ」
八重樫の一声で、山岳猟団は動き出した。
進入路から一気に雪崩れ込む山岳猟団とハンター達。間もなく山岳猟団は周辺を警戒していた小型狂気へと襲いかかる。
「狙える奴は、VOID砲を黙らせろ。ジーナ、そっちを頼む」
大剣で小型狂気を弾き飛ばした八重樫は、ジーナへ前へ行くよう促した。
こうしている間にもVOID砲はCAMを狙っている。少しでも早く叩いて黙らせなければならない。
その為にはVOID砲へと続く道を拓かなければならない。
「無論だ。遅れは取らない」
ジーナが先頭に立つ形で、狂気の群れへと突撃を開始。
魔導拳銃「エア・スティーラー」を片手に小型狂気を確実に始末していく。
至近距離まで近づいて、エア・スティーラーで発砲。
同時に次のターゲットを鋭敏知覚で狙いを定め、間合いを詰めていく。
「はっ!」
人型狂気が振り下ろした刀状の影をシールド「カエトラ」で受け止める。
そして、エア・スティーラーの砲身を腹部へと突き付け――発射。
狂気のVOIDを次々と駆逐していく。
「やるな、ジーナ」
「無駄口を叩く暇があるなら、一体でも多く敵を倒せ」
八重樫と背中を守り合いながら、集まる敵を倒す。
山岳猟団の団員も一緒に戦い、周辺の敵は確実に数を減らしていく。。
そして――ついに、道は拓かれる。
「視界は良好。こっちも動き出しますか」
恭也は魔導トラックを前進。
魔導レーダー「エクタシス」で周辺の状況をディスプレイへ映し出す。
そこには一定の間隔で並ぶ反応があった。
「へぇ、分かりやすくて助かるな。
要塞っつー割に防衛戦力が微妙というか。まあ、その分楽で良いがね!」
次の瞬間、魔導トラックの30mmアサルトライフルが起動。
設置されていたVOID砲を背後から破壊していく。
VOID砲自体は自走機能はない。
つまり、背後に回ってしまえば、VOID砲は単なる的に過ぎない。
恭也は魔導トラックの機動力を生かしながら、次々とVOID砲を沈黙させていく。
「まもって、ほしーの。……おねがい?」
ルネは山岳猟団の団員へ『はうんど』の周辺を守るようお願いしていた。
『はうんど』周囲の小型狂気を排除してもらう、所謂随伴歩兵の役割を担ってもらった。
あり合わせの資材で防盾モドキを付けてはいるが、小型狂気に纏わり付かれれば厄介極まりない。
「おっ、はっけん。……みんな、まえをあけてー」
ルネは目視でVOID砲を発見すると車載砲「パンテレスD7」の照準を合わせる。
そして、大火力でもってVOID砲を一気に吹き飛ばしていく。
その高火力を前であっさり破壊されるVOID砲。
「はい、いっちょあがり。つぎ、つぎー」
再び次の目標に向かって『はうんど』を旋回させるルネであった。
●
精鋭部隊が松前要塞へ突入した後は、瞬く間に敵を駆逐していった。
元々強力な個体がいない上に、VOID砲は内部の敵に無力。
潜入できれば陥落は容易かった。
「どうやら、成功のようです。悪王子、ご苦労様でした」
奏の前にあるモニターを見れば、精鋭部隊の活躍は想像できる。
何せ、次々とVOID砲が沈黙していくのだ。先程までビームを乱射していたVOID砲付近で大きな爆発が起こり、悪王子を狙うビームが目減りしていく。
「神よ、感謝します。そして、私達の成功を信じて各地で戦ってくれた皆の無事を祈ります」
アティは、R7エクスシアの操縦席でエクラに祈りを捧げる。
この結果は自分達だけではない。
他の地域で陽動に動いた者達のおかげでもある。
「そろそろ仕上げだな」
アークは、振り返った。
見上げた空に浮かぶのは、本作戦の旗艦であるメタ・シャングリラであった。
「らすとみたいね、えーがの」
ルネはトランシーバーで恭也へ連絡を入れた。
ほとんどの狂気は撃破。精鋭部隊も要塞の外へ撤退完了。
そうなれば、作戦の仕上げに取りかかる。
「じゃあ、派手に頼むぜ。指揮艦の婆さん!」
恭也が打ち上げた二発目のシグナルバレット。
それはメタ・シャングリラの支援攻撃打診を意味していた。
「婆さんじゃないザマス! まだ還暦前ザマス!」
トランシーバー越しに怒声を飛ばすのは、メタ・シャングリラのブリッジにいる恭子だ。
「ああ、悪かったよ。最後に要塞へ砲撃を頼む」
「了解ザマス。全砲門を開くザマス。目標、松前要塞!」
メタ・シャングリラが松前要塞へ接近してもVOID砲の砲撃はない。
既にすべての砲門は沈黙していた。
メタ・シャングリラは巨大な壁の間近まで接近。
そして、メタ・シャングリラは前方の壁に向かって全力砲撃を加えた。
激しい砲撃は巨大な壁を押し倒し、旧松前城の跡地へと横たえる。
統一連合宙軍が、松前要塞の陥落に成功した瞬間であった。
●
「勝利を祝して、かんぱーい!」
メタ・シャングリラのブリッジで、恭也が持ち込んだワイン「Destino Comune」で祝勝会が開催されていた。
「今日ぐらいは喜んでもバチは当たらないザマス。なんせ、統一連合宙軍からの通信がひっきりなしザマス」
恭子は、笑いが止まらなかった。
誰も今まで北海道の地を奪還できなかった。
しかし、それをメタ・シャングリラとハンター達がそれを成し遂げた。
これは日本政府だけではなく、統一連合宙軍にとっても大きな出来事となった。
「統一連合宙軍も微妙だなぁ。もう少しマシだと思ってたら、利権で足の引っ張り合い。どこが統一なんだか」
「組織とはそういうものだ。それにハンターは依頼完遂が最優先。こちらには関係ない」
ぼやく恭也の横でジーナは、呟いた。
確かに組織が大きくなれば統制は難しくなる。だとしても、組織の良心が残っている限り、腐る事は無い。それを信じているからこそ、ジーナはハンターとして依頼へ集中する事ができる。
「そういうもんかな?」
「そういうものだ」
首を傾げる恭也の横を、ジーナは通り過ぎていった。
「松前漬けは函館クラスタを崩壊させてからでしょうか」
勝利の余韻に浸る奏。前にいるのは、山岳猟団の八重樫だ。
片手にワイングラスがあるものの、八重樫は変わらずの仏頂面だ。
「そうだな。まだ戦いは始まったばかりだ」
「八重樫様と猟団の皆さんと、こうした席に同席できた事に感謝致します。まさに山岳猟団の復活祝いですね」
復活祝い。
奏の言う通り、山岳猟団にも今まで様々な事があった。
そして、こうして新たなる出発を迎えられた。
山岳猟団に籍を置く友人の名代としてこの依頼に馳せ参じられた事は、奏にとって良縁だった。
「友人達の代わりに『お帰りなさい』と言わせて下さい。
そして、いずれまた戦場の何処かで。山岳猟団が動く時は、私や友人も駆けつけます」
丁寧な挨拶をする奏。
その挨拶を前に八重樫は、ある決意をする。
「山岳猟団は、函館クラスタの破壊に全力で挑む。
誰の為じゃない。山岳猟団は、この戦いを通して復活の宣言する。邪魔する敵は――討滅だ」
(これが要塞? 簡単すぎる)
アークは、ブリッジの外に広がる海に視線を落とした。
要塞という名称は日本政府と連合宙軍が付けた物だ。VOIDにとっては単なる拠点に過ぎないのかもしれない。
――違和感。
だが、何かが気がかりなのだ。
「次が本番、でしょうか」
いつの間にか、アークの傍らにアティが立っていた。
険しい顔のアークを案じたのだろう。
アティは、静かに祈り始める。
「大丈夫。どんな困難が待っていても、信じています。この戦いは勝ちます」
エクラに誓ったかのように、自信に溢れるアティ。
そんなアティを前にアークは、眩しく感じる。
きっとアティは、自分だけじゃない。仲間を信じているのだ。
「そうだな。勝たなければな」
アークの口から、自然とそう言葉がこぼれ落ちた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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![]() |
相談卓 柊 恭也(ka0711) 人間(リアルブルー)|18才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/03/11 11:41:38 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/03/08 07:41:19 |
|
![]() |
質問卓 森山恭子(kz0216) 人間(リアルブルー)|58才|女性|一般人 |
最終発言 2017/03/10 23:21:14 |