• 血盟

【血盟】ある領地の魔法公害と可能性

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/03/13 22:00
完成日
2017/03/20 11:58

このシナリオは2日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●再び
 その頃のグラズヘイム王国にある、クリシスの領地は魔法公害が蔓延していた。いや、公害がひどいのは領主の館がある町のみでそれ以外はそこまではない。
 中心の町だからこそ何かが起こっている。
 現在ではすでに解決され、憂悦孤唱プエルに絡む事件で破壊された町からの復興を遂げている。
 再びこの地にハンターは降り立つ、可能性を見つけに。

●歪虚のこと
 ニコラス・クリシスは事件の後、家から出られなくなった。町の兵では守り切れないというのが実情。
 もっと雇うには金銭的な問題も周囲との力関係もある。
「下手に雇えば悪心ありと言われそうな状況だからな」
 魔法公害の件が片付いていない上、べリアルの侵攻、国王の死去などで国の足元が揺れている。できれば穏便に片づけたいというのがニコラスの父ウィリアム・クリシスの気持ちだ。
 それをニコラスも理解する。
「ハンターに頼めば……」
「このような領地のことも片づけられなくて何が領主だ! 歪虚の被害も多い。ここは幸いにしてそれはない、だから……」
 適材適所、必要なところが使う人材だといい、短い会見が終わる。
 父親は忙しい。
 だが、ニコラスはぎゅと手を握りしめ告げる。
「魔法生物の件も歪虚が関わっているということはないのですか?」
 ウィリアムはニコラスを見て目を丸くする。
「なぜ、そのようなことを? 研究の徒やよくないもので利益を得ようとしている商人たちの集まりだけなはずだが」
「先日、僕を助けてくださったハンターが言ってました。歪虚が絡んでいるのでは、と」
 ニコラスに直接言ったというより、不審人物へ鎌かけだった。
「そんなことはあるまい。こんな……田舎で? なんのために?」
「……ですが、父上」
 魔法公害が解決できないのは変だという認識はある。
「ニコラス……疑ってはいけない。もともといい人達なのだから」
「でも……」
 父親の表情が曇る。
「ニコラスもよく考えてくれるということが分かった。仕事に戻る、夕食の時な」
「……はい」
 ニコラスは引き下がった。
 胸の中は「自分は悪い子になった」という思いが去来し、暗い気持ちになった。
「お兄様、どうなさったの?」
「イノア……」
「まさか、お兄様、お見合いとか?」
「……どうして暗い顔になるんだい?」
「とても嫌いなタイプだったとか」
「ふふっ」
 イノアはにこりと笑う。
「お兄様、仕立屋が来たんですの。先日作ってもらった服を届けに」
「あの、大変個性の強い方だね」
「そうよ。まあ、大きいけどいい人のようよね?」
「うん」
 その男に違和感はある。しかし、それが何かとはニコラスは分からない。

●仕立屋
「若様も姫様もご無沙汰しておりました」
 二メートルはある筋肉質な肉体の男で、フリルや布がたっぷり使われた服をまとっている。くねくねとよくしなる肢体を持つ仕立屋がそこにいた。
 外見のインパクトはともかく、仕立屋としての腕は素晴らしいとニコラスもイノアも感じていた。
「こちらが若様のですわあ、こちらが姫様のですう」
 デザインを同じにした外出着だ。ニコラスのはさすがにフリルがふんだんではないが。
「本当にわたしに似合うのかしら」
 実用性、シンプルな服が多いイノアは不安がる。
「イノアは何を着ても似合うよ? フリルだって」
「そうですわよー、ささ、試着してくださいな」
 二人はそれぞれ別の部屋で着た。
「お兄様、素敵」
「イノアもね」
「あああなんて似合うのかしら。もう、若様なんてこの透明感のあふれる、憂いの帯びた表情、もう、最高ですわあ。あのお方のそばにいても許せる感じですう」
「あのお方?」
 ニコラスは素早かった。
 何か違和感。ハンターの言葉がよぎった。
「あ、え? あたし、興奮してつい変なことを……。いえ、あたくしの好きなお方がいましてね、そのお方もダンディーで素敵だから、ぜひニコラス様にお会いさせたいと思ったのです」
 ニコラスは困った顔になる。
「どんな人か分からないし……今は家を出られないんだ」
「まあ? では、時間が合えば、引き合わせをいたしましょうか?」
「家に勝手に知らない人を入れられない」
「あのお方は旅をなさる方、舞台は興味ありますよねえ? 脚本も書きますが、演出家として素晴らしいのですよお」
 ニコラスは首をかしげる。違和感が強くなってくる。
「芸術家の方?」
 やはりイノアも意外そうな顔である。仕立屋のだから舞台関係者と知り合いでおかしくはないのだが。
「では、お考え下さいね」
 仕立屋は引き下がった。
「……お兄様」
「……なんか嫌な感じがした……イノア、そんな顔しないで」
 ニコラスはためらったが、思い切って手を伸ばしてイノアにハグをした。
「え?」
 すぐに離れたがニコラスは不安そうに恥ずかしそうにしている。
「お、お兄様、熱あります?」
「な、ないよ!」
 イノアは手を伸ばして兄に触ろうとした。

●不協和音
 ニコラスを誘拐するのは失敗。捕まった者たちは言えるような情報はなかった。
 ただ、非常に大きな男で羊の角の飾りを付けた者が「ニコラスを捕まえてくるといいことがある」と言ったということに過ぎない。
 一方、魔法生物を作ってこっそり護衛用に売り込みたい商人や研究者たちはウィリアムを煙たがっている。公害が起こらないようにするには技術が確立してからのほうがいい。今はまず誰もやっていないことを先にやるべきなのだ。

 ウィリアムは何とか彼らに魔法公害の対処をさせたかった。

 ニコラスは父親の跡取りとして、貴族として頑張りたいが、同じ世代のまだ子供部分を持つ町の子がうらやましかった。

 一人の歪虚は町が見えるところに立った。
 この町の不協和音はすでに爆発寸前、と聞いたからだ。
「若君への悲劇が回避されたというのは残念だが、ハンターという存在が舞台に上がった。それがどう動くのか?」
 楽しそうに笑う。
 筋書きはところどころ変わっていく。それだから「面白い」のだ。
「領主の前で子が殺される悲劇か? 父によって子が殺される悲劇か?」
 それは風のように消えた。

リプレイ本文

●始まりは突然で
 ミリア・エインズワース(ka1287)とアルマ・A・エインズワース(ka4901)は再び訪れた地でニコラス・クリシスに会いに行ったが、門番に追い返された。
「閉じ込められちまったか」
「狙われていますしねー」
 ミリアとアルマは顔を見合わせると悪だくみをする笑みを浮かべた。

 レイオス・アクアウォーカー(ka1990)とトリプルJ(ka6653)は偶然同道することとなる。
「過去は変えられない、が過去を読み解けば未来への導きになるかもしれない……か」
「そうだな……悲劇は起こる……だが、何もしないでいられるか!」
 トリプルJとレイオスは互いに領主ウィリアム・クリシスへ接触すべく屋敷近くを目指した。

「ソサエティで依頼を探していた気がするのだけどここは?」
 メイム(ka2290)は見知らぬ街の中できょろきょろする。
「ここは知っています、ちょっと違いますが。過去のデータに紛れたみたいですね」
 ミオレスカ(ka3496)の言葉にメイムが覚悟を決めた。

●ゴーイング?
 ミリアとアルマはこっそり屋敷の敷地に入り込む。塀を乗り越え、隠れつつ屋敷に近づく。
 バルコニーに面した窓にニコラスの姿が見えた。
 指さしてうなずく二人。
 ミリアはアルマに乗り、アルマは機導術を使う。【ジェットブーツ】と合わせミリアはジャンプし、バルコニーに上がった。続いてアルマが【ジェットブーツ】上がる。
 ニコラスはびっくりしている。
「わふ、ニコラスさーん」
「……ど、どうしてここに?」
 ニコラスは窓を開けて話しかける。
「だって、正面から行ったら絶対ダメって言われるですもん」
「気分転換に外に行かないか? 散歩が終わったら送り届けるから」
 いたずらっ子のようなアルマの笑顔と頼りがいのあるミリアの笑顔。
 ニコラスは嬉しそうな困ったような顔をしている。
「か、書置きしてきます」
「え?」
 止める間もなく、ニコラスは部屋に戻り一筆書いていた。
 戻ってきたニコラスの表情を見ると、アルマもミリアも笑みが深くなる。
「着替えも持ってきたから、どこかで着かえさせないとな。アルマ、降りるぞ」
 ミリアはニコラスを抱える。いわゆるお姫様抱っこ状態、そして飛び降りた。
 ニコラスはびっくりしてミリアにしがみつき、地面についた時、いそいそ下りた。
「待ってくださいー」
 アルマが続いた。

 レイオスは顔色の悪いウィリアムを馬車越しに発見する。
「領主殿」
 町中で速度は遅いため、馬車を止めるのは易い。
 騎士らしい男――レイオスは見覚えがあった――ウルス・モースは剣の柄に手を掛けている。
「あー、実は――」
「いよぉ、格安で護衛の押し売りに来たぜ? 雇ってくださるんだろう、ご領主サマ?」
 トリプルJがずばりと切り込む。
「まさか、ニコラスが何か言ったのか」
 ウィリアムが扉を開けて応対する。彼の脳裏にあるのは家を出る前にニコラスと会話したことだった。
「先日のその若様を助けたんだ。その時……というか、この町の状況、気づかないわけないだろうが」
「そうそう。汚れた場所には汚れが集まるんだぜ? 魔法公害を取り締まれない領主の下なら歪虚崇拝し放題やり放題に違いないと」
 レイオスとトリプルJはずけずけ言う。
「あの者たちとてわかっているはず……もともとは普通の商人や研究者であっていい人であったと……」
「その『いい人』って誰にとってのいい人だ? そりゃ、都合のいい人の間違いじゃねぇの?」
「……何を言い出す。彼らは普通に良き民であり――」
「なら、俺たちも連れて行けよ? 必要なら護るし、情報引き出す手段もあるから」
 ウィリアムは逡巡した後、うなずいた。

 メイムとミオレスカはひとまず、状況整理した。
「依頼にあったのはここの調査です。仕立屋はたぶん、以前見た歪虚です」
「羊の角飾り? 滅茶苦茶怪しいー」
「【変容】を使っていたのだと思いますが、戦闘中は見えてましたね……あの時は上にワイバーンいましたし、じっくりは見ていませんが」
 町の状況は食堂にでも入ればすぐにわかる。
 魔法公害がひどいとか、雑魔がいたのを見たとか話が上がっている。先日、若君が襲われたということも知る。
「なら、仕立屋に行ってみよう。レチタティーヴォと絡みとはいってもいない歪虚のこと調べても仕方がないけど、町の状況に関しては今後の役に立つかもしれないし」
「はい、それでかまわないですよ」
 メイムとミオレスカは一緒に仕立屋に向かった。

●不安と歩く
 適当なところでニコラスの服をミリア持参の物と取り換える。
「よし、これでどう見ても一般人だろう。きょうだいにみえるかもな」
 ミリアはニコラスの首に腕を巻き鏡の前に立たせる。
 伊達眼鏡と帽子をかぶっている姿はニコラスには新鮮だった。
「お名前呼ぶと問題がありますし、偽名として『プエル』と呼びますよー?」
 アルマはニコラスに同意を求める。どうして、という表情のニコラスにアルマは語らない。アルマとしては歪虚となった彼の姿につられて呼びかける可能性を回避したかった。
「ボクが姉でニコラ……プエルが弟。アルマがボクの夫」
「ハンターの仕事帰りなのでこの格好ですー」
 ミリアとアルマが設定をニコラスに告げる。
「わ、わかりました」
 緊張の外出が始まる。

 ウィリアムが商人らと話す場に着くまで、レイオスもトリプルJも特に会話がない。おおむねの手順は決めたが、ウィリアムが難色を示しているのは明確だ。
 場についてトリプルJは隠れられそうなところを見つけそこから様子をうかがうことにする。
 一方のレイオスはウィリアムから離れない。
 商人と研究者は見慣れぬ護衛のレイオスを注視している。
「さて……魔法公害の……」
「こちらとしてはきちんと処理はしていますから、領主さまの条件を飲むことはできません」
 きっぱりと商人は告げる。
「では、こちらはこちらで規制を作らせてもらう」
「かまいません」
 意外とあっさりと応じる。
 ほっとしたウィリアムの表情もどこか固い。
「良かったな、領主殿」
 レイオスは口をはさんだ。
「この領地の中でも一番この町が魔法公害がひどい、狙ったかのように」
 レイオスが敬語ではないために商人たちはいぶかし気な顔になっている。
(あー、こいつら、魔法公害の規制はさせつつ、あとは知らぬ存ぜぬで通そうとしてんだろうなー)
 トリプルJはつぶさに観察する。
「歪虚が絡んでいて、こいつらだって騙されている被害者ってこともありえると考えなかったのか?」
 この瞬間、トリプルJは手をたたきそうになるほどの反応が分かれる。
 ウィリアムは驚愕しているだけであるが、商人や研究者は信じられないという顔したものと、何かを知っているという表情の顔。
「暗躍で有名なレチタティーヴォって歪虚の手下がこっちの地域で目撃されたそうだな。部下っていうのが道化服や貴族服の骸骨、フリル服の角はえた大男って話だ、記憶にないか?」
「十三魔のか!?」
 ウィリアムは真っ青になる。歪虚の関与は否定し続けていたが、その名前に関しては問題を覚えた。
「あー、領主様、他の人に交渉は任せますー、昨日食べた何かが当たったのか腹痛くて」
 青年が立ち去ろうとした。
「逃がさないつーの!」
 トリプルJが青年を取り押さえる。
「……領主、だましたな」
「だますも何も……歪虚が絡んでいるのか」
 ウィリアムも彼らを信じるとともに、重要な案件は見逃すことは決してない強さを見せる。

 仕立屋の建物はすぐにわかる。
「一見普通よね?」
 開店の看板があるため二人は扉を開けた。
「ごめんくださーい」
 メイムは普通に声をかける。不審人物とはいえ、いきなり戦闘や尋問モードというのも変だ。
 トルソーに掛けられている服はフリルがたっぷりの可愛らしい少女の服。腕は確かにあると分かる。
「はい、お客様? あたしの創作意欲を刺激するような子かしらん?」
 奥からくねくねし身をくねらせつつ、二メートル近くの筋骨隆々の男がやってくる。
「あらー、かわいらしい子たちね」
 二人が武器も持っているためか距離がある。
「はい、そうです。お店があるので覗いてみました」
 ミオレスカがウインドーショッピングを装う。
「うわさに聞くと、領主のお子さんたちに服を提供するようになったって? 気になったのよー。あなたが店主さん?」
「そうなのよ! ああ、あたしの名前も知らないのは無知なのね。この店の主のサルトアよ。この町、田舎だけど意外と華あるし、いいところよね。しばらく店を開いてみようと思ったの。あたしの腕は一流だし、若君可愛いというから作ったのもっていったのよー」
 押し売りに近かったらしい。
「ニコラスさんの様子がおかしいと聞いたのです。仕立屋さんは何か知ってますか?」
「そうよね、もっとおどおどしてもうかまってあげたい、いじめたいと思うような子だったのに、どうしてかちょっときりっとしていたわよね。多少反抗的というのもおいしいけれど」
 会話が成り立たなかった。
「男の子が好きなんだ? あれ……ん? で、朝日のような金髪と燃える夕日のような赤髪だったらどっちが好きー?」
「情熱的な赤髪に、藍色の深い瞳があるともっといいわー」
「好きな人がいるんだ」
「いるわよー。もうニヒルで知的で奥深くて! もう、そこにいらっしゃるだけでも素敵なの!」
 恋する乙女のしぐさをする。
「情熱的……」
「ニヒル……」
 メイムとミオレスカがぽつり復唱する。
「そうよー、もう、あのお方の着る服をぜひ作りたいわ。まあ、フリルは抜くけれど」
「似合わないというか……」
「それはそれで弾除けになってよいのかもしれませんね」
 サルトアは二人が普通に会話についてきていることに気づく。
「あなたたち?」
「れちたん……いえ、レチタティーヴォですね……その『あのお方』というのは」
 ミオレスカがずばりというと、仕立屋から表情が消えた。殺気を感じる。
「どうしてニコラスさんを堕落させようとしているの?」
「ハンターということね」
 サルトアの頭上に角が現れる。
「あの、思想や考え方に関しては……わきに置いておきますが、思慮深さと立ち回りのうまさは見習うべきところがあると思っていました」
 ミオレスカがレチタティーヴォ評を述べるとサルトアは殺気を緩める。
「……あら? ひょっとして、あたしたちに加わりたいと?」
 二人は返事しない。
「若君を堕落させたい? 見ての通りの父上の言う通り、自分を殺している子が解放されたらどうなるかって面白そうじゃない? あのお方のおそばにちょこちょこついてくるようになるっていうのも可愛らしくて素敵! それに――」
 彼が語る数分間に、メイムとミオレスカは戦闘準備も始める。たぶん、逃がしてくれないだろうから、これを逃がすつもりはなかった。

●戦う手段
 教会で音楽を教えている司祭とニコラスたちは出会った。ニコラスが素直に説明をし、許してもらった。ハンターを信用しているのが分かっただろう。
「……お前を見てくれている人はいるんだ。プエルは十分頑張っているんだ」
 ミリアはニコラスをぎゅっと抱きしめ頭を撫でまわす。
「え、ええと!」
「そうですよー。僕もぎゅーとするんですー!」
 アルマはミリアごとニコラスを抱きしめる。
「鎧着こんでいる奴痛いぞ」
「ふふっ……」
 怒るミリアにニコラスが笑う。
「他の子らと遊ぶか?」
「いえ……みんな、家のことをする時間だから」
「そっか。それは仕方がないな。町のどこに行きたい?」
「大通り。父と出かける時も限られたところしか行かないので」
 ミリアがニコラスの手を引っ張って向かった。
「せかっくなら裏路地探索」
「わふっ! 刺激的……とはいってもこの町はそこまでないですよねー。安心ルートです」
 大通り一歩入ったところを三人は歩いて行った。

 サルトアはハンター二人を排除することを考える。
「死になさい!」
「死なないわよ!」
 メイムは盾でその攻撃を受ける。
「攻撃は任せてください」
 ミオレスカは銃弾をサルトアに叩き込む。
「仕方がないわね。こうなったら……さらばよ!」
 裏口に向かっていく。
「待ちなさいよ!」
「逃がしません」
 扉が開いたら攻撃はできない、通りすがりの人に当たる可能性もある。それまでの間に、メイムとミオレスカが全力で攻撃はしていた。
 満身創痍になりつつサルトアは外に出た。
「……え?」
「歪虚?」
「仕立屋……君は!」
「撃っちゃいますー?」
「ミリアさん!」
「邪魔だ!」
 ニコラスを連れたミリアは後方に下がり、アルマが機導術【紺碧の流星】を放つ。ミオレスカが射撃をし、メイムが【ワイルドスラッシュ】を叩き込んだ。
 サルトアは無に還ったのだった。
 双方、情報交換し、ニコラスはレチタティーヴォの関与という事実を知った。
「みなさん、ありがとうございます」
 お礼を言うニコラスを送り届けた。

 商人と研究者たちは洗いざらい吐いた。
 吐いたといっても知っていることに温度差はある。
 歪虚の関与を知っていたという人。魔法生物を作るのに知識をくれたとそういう話。
 金になると思っていたのにという商人たち。制御できる大型のものであれば、人間を雇うよりインパクトも力にもなると思っていたという。
 話をした後、どこかつきものが落ちたようだった。
 領主は彼らの居住を一斉捜索する旨を告げる。
「君たちの行動は助かった……。その……私もかたくなになりすぎていたようだ」
 ウィリアムはレイオスとトリプルJに謝罪と礼を言う。
「俺が見ている限りで、隠していることがあっても、誰かが本当のことも言ってる。調べれば解決はするだろうよ」
 トリプルJは見ていた感触を告げる。どの人物も指摘しておいた。
「なあ……領主殿が忙しいのはわかってる。家族との時間とれてなさそうだな。若君が町の親子を見てうらやましそうにしていたぞ」
 レイオスの言葉にウィリアムは固くなる。
「いい子だろうが、あいつはため込んでる。時間がないなら、せめて抱きしめて愛していること伝えればいい」
「……肝に銘じるよ」
 心当たりがあるためウィリアムはうなずいた。大人でも子供でもないニコラスを抱きしめるのを難しく考えていた。一方で、ニコラスが何かためらっているのも気付いている。

 情報収集を終えたハンターたちは、気付けば元いたところにいたのだった。

●可能性
 データ上の可能性であること。一つずつ良い方向に向かっているように見える。
 良い領主になって生きてほしい、ニコラスには――と願われる。
 一方で、別の動きもありうる。
「……この研究を破棄するなんてできるもんか! 仕立屋が倒された? 他の奴らは領主に従った! 破棄するくらいなら!」
 男は暗く笑った。

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  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士

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ミリア・ラスティソード(ka1287
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/03/13 18:44:00
アイコン 質問卓
ミリア・ラスティソード(ka1287
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/03/13 03:15:51
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/03/12 11:04:19