ゲスト
(ka0000)
【血盟】白き龍の夢
マスター:猫又ものと

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/03/13 22:00
- 完成日
- 2017/03/22 10:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
――辺境の地。
多くの部族、多くの種族が入り混じるように暮らす土地。
王と呼べるものもなく、それぞれの部族が独自の文化を築き……誕生と淘汰を幾度となく繰り返す。
強く逞しい幻獣達。脆いけれど、心に強さを持った人間達は手を取り合い、仲良く暮らしている。
この地に生きる生命の営み。
私もイタクサ様も、彼らが好きで……ずっとずっと見守ってきた。
――そして、この先もずっと。
それを打ち破ったのは北の山脈を超えてやって来た歪虚。
歪虚は、この時代にも暗い影を落としている――。
滅びは避けられない。
分かっていても、それでも――願わずにはいられない。
――ああ、愛しい私の子供達。
あなた達の幸せがいつまでも続きますように……。
●白き龍の夢
「ん……? ここはどこだ?」
「神殿……かしら」
周囲を見渡すハンター達。
彼らは気付けば見知らぬ建造物の中にいた。
造りは何だか辺境の聖地、リタ・ティトにある神殿に似ている。
――それは今の神殿より、遥かに広くて近代的であるように見えたけれども。
「……この灯り、どうやってついてるんだ?」
「さあ……。マテリアルかしら。見たことない技術だけど……」
「そもそもこの建物、何で出来てんだ……?」
「そういわれてみると不思議ね。石のような、そうじゃないような……って、勝手に開けたらダメよ!」
目の前の重厚なドアに手を押し当てるハンター。
重い音を立てて開いたその先には――白い身体を持つ龍が鎮座ましましていた。
「……! 白龍……!」
「ようこそ、私の神殿へ。見慣れない服ですが……逃げていらした旅の方ですか? ここにいれば安全ですよ。安心なさい」
遥か上から聞こえる穏やかな声。
辺境から消えて久しい白龍の姿に、ハンター達は息を飲み……彼女の言葉を反芻する。
「私の神殿、って言ったか? ここは白龍の神殿なのか?」
「おや。知らずに来たのですか? 追われて慌てていたのですね。可哀想に」
「追われるって何にかしら……?」
「巨人ですよ。最近、この地を襲うようになったのです」
「巨人……? 怠惰の軍勢か……!」
「そうです」
頷く白龍。そこに、1人の熟年の巫女ととんでもなく大きな二足歩行の鳥……どう見ても巨大なリーリーに見える……が、数匹やってきた。
「お話中ごめんよ、白龍。ちょっと緊急事態なんだ」
「どうやら1人、子供が外へ飛び出して行ってしまったようなんだヨ」
「まあ……! どの子です?」
「オイマトさ。母親を亡くしてからずっとふさぎ込んでいたんだけどね……」
「悲しみが怒りに変わった、というところかな。無理もないヨ」
「そうですね。でもあの子の力で巨人に対抗するのは無理です。連れ戻さなくては……」
深刻な顔で話し込んでいる白龍と巫女、そして巨大なリーリー。
ハンター達は目を丸くしながらそれを順番に見る。
「あの巫女、大巫女か……!?」
「いいえ。大巫女様にして若いわ……!」
「てか何だよこのリーリーのデカさは……!」
「お前達、何ブツブツ言ってるんだい?」
様子のおかしいハンター達に気づき、首を傾げる熟年の巫女。ハンターは一礼すると彼らに向き直る。
「……あの。話の腰を折ってすまないが……お前はリーリーか?」
「あぁ。そうだヨ。ボクは大幻獣のデュンファリだ。よろしくね、お客人」
「後ろのリーリー達も随分大きいようだけど……」
「そうかい? 幻獣達は皆これくらいの大きさだヨ。ああ、キューソだけは例外。ちょっと小さいかな」
「……悪いが、込み入った話は後にしてくれるかい。急ぎの用があるんだよ」
「子供を連れ戻すんだったか? 乗りかかった船だ。俺達も手伝おう」
「これでも覚醒者よ。役に立つと思うわ」
「それは助かるけど……良いのかい?」
熟年の巫女の言葉に頷くハンター。となりにいる白龍を見上げる。
「……白龍が俺達を暖かく迎えてくれたしな」
それに、久しぶりに会えて嬉しい。
その言葉を飲み込んだハンター。
白龍はハンター達に優しいまなざしを向ける。
「……貴方達は皆私の子供のようなものです。迎え入れるのは当たり前ですよ」
「白龍様のお役に立てる名誉なんてなかなかないもの。お手伝いさせて」
「ありがとう。君達はいい子だネ」
飾り羽を揺らすデュンファリ。ハンターはその巨体をもふもふしたい衝動を堪えて、熟年の巫女を見る。
「……で、その連れ戻す子はどんな子なの?」
「黒髪に茶色の目の不愛想な子供だ。見ればすぐに分かるよ。ああ、言い忘れてた。あたしの名はリラだ。お前達ついておいで」
踵を返すリラ。
ハンター達もそれに続き――。
怒りに燃える少年は、まっすぐに結界の外を目指していた。
巨人は白龍が張った結界のすぐ外にいる。
仇を取りたい自分には好都合だ……!
「巨人め……! 必ず打ち滅ぼしてやる……!」
ナイフを痛いくらいに握り締めて……少年は、恐怖を怒りで押し殺した。
多くの部族、多くの種族が入り混じるように暮らす土地。
王と呼べるものもなく、それぞれの部族が独自の文化を築き……誕生と淘汰を幾度となく繰り返す。
強く逞しい幻獣達。脆いけれど、心に強さを持った人間達は手を取り合い、仲良く暮らしている。
この地に生きる生命の営み。
私もイタクサ様も、彼らが好きで……ずっとずっと見守ってきた。
――そして、この先もずっと。
それを打ち破ったのは北の山脈を超えてやって来た歪虚。
歪虚は、この時代にも暗い影を落としている――。
滅びは避けられない。
分かっていても、それでも――願わずにはいられない。
――ああ、愛しい私の子供達。
あなた達の幸せがいつまでも続きますように……。
●白き龍の夢
「ん……? ここはどこだ?」
「神殿……かしら」
周囲を見渡すハンター達。
彼らは気付けば見知らぬ建造物の中にいた。
造りは何だか辺境の聖地、リタ・ティトにある神殿に似ている。
――それは今の神殿より、遥かに広くて近代的であるように見えたけれども。
「……この灯り、どうやってついてるんだ?」
「さあ……。マテリアルかしら。見たことない技術だけど……」
「そもそもこの建物、何で出来てんだ……?」
「そういわれてみると不思議ね。石のような、そうじゃないような……って、勝手に開けたらダメよ!」
目の前の重厚なドアに手を押し当てるハンター。
重い音を立てて開いたその先には――白い身体を持つ龍が鎮座ましましていた。
「……! 白龍……!」
「ようこそ、私の神殿へ。見慣れない服ですが……逃げていらした旅の方ですか? ここにいれば安全ですよ。安心なさい」
遥か上から聞こえる穏やかな声。
辺境から消えて久しい白龍の姿に、ハンター達は息を飲み……彼女の言葉を反芻する。
「私の神殿、って言ったか? ここは白龍の神殿なのか?」
「おや。知らずに来たのですか? 追われて慌てていたのですね。可哀想に」
「追われるって何にかしら……?」
「巨人ですよ。最近、この地を襲うようになったのです」
「巨人……? 怠惰の軍勢か……!」
「そうです」
頷く白龍。そこに、1人の熟年の巫女ととんでもなく大きな二足歩行の鳥……どう見ても巨大なリーリーに見える……が、数匹やってきた。
「お話中ごめんよ、白龍。ちょっと緊急事態なんだ」
「どうやら1人、子供が外へ飛び出して行ってしまったようなんだヨ」
「まあ……! どの子です?」
「オイマトさ。母親を亡くしてからずっとふさぎ込んでいたんだけどね……」
「悲しみが怒りに変わった、というところかな。無理もないヨ」
「そうですね。でもあの子の力で巨人に対抗するのは無理です。連れ戻さなくては……」
深刻な顔で話し込んでいる白龍と巫女、そして巨大なリーリー。
ハンター達は目を丸くしながらそれを順番に見る。
「あの巫女、大巫女か……!?」
「いいえ。大巫女様にして若いわ……!」
「てか何だよこのリーリーのデカさは……!」
「お前達、何ブツブツ言ってるんだい?」
様子のおかしいハンター達に気づき、首を傾げる熟年の巫女。ハンターは一礼すると彼らに向き直る。
「……あの。話の腰を折ってすまないが……お前はリーリーか?」
「あぁ。そうだヨ。ボクは大幻獣のデュンファリだ。よろしくね、お客人」
「後ろのリーリー達も随分大きいようだけど……」
「そうかい? 幻獣達は皆これくらいの大きさだヨ。ああ、キューソだけは例外。ちょっと小さいかな」
「……悪いが、込み入った話は後にしてくれるかい。急ぎの用があるんだよ」
「子供を連れ戻すんだったか? 乗りかかった船だ。俺達も手伝おう」
「これでも覚醒者よ。役に立つと思うわ」
「それは助かるけど……良いのかい?」
熟年の巫女の言葉に頷くハンター。となりにいる白龍を見上げる。
「……白龍が俺達を暖かく迎えてくれたしな」
それに、久しぶりに会えて嬉しい。
その言葉を飲み込んだハンター。
白龍はハンター達に優しいまなざしを向ける。
「……貴方達は皆私の子供のようなものです。迎え入れるのは当たり前ですよ」
「白龍様のお役に立てる名誉なんてなかなかないもの。お手伝いさせて」
「ありがとう。君達はいい子だネ」
飾り羽を揺らすデュンファリ。ハンターはその巨体をもふもふしたい衝動を堪えて、熟年の巫女を見る。
「……で、その連れ戻す子はどんな子なの?」
「黒髪に茶色の目の不愛想な子供だ。見ればすぐに分かるよ。ああ、言い忘れてた。あたしの名はリラだ。お前達ついておいで」
踵を返すリラ。
ハンター達もそれに続き――。
怒りに燃える少年は、まっすぐに結界の外を目指していた。
巨人は白龍が張った結界のすぐ外にいる。
仇を取りたい自分には好都合だ……!
「巨人め……! 必ず打ち滅ぼしてやる……!」
ナイフを痛いくらいに握り締めて……少年は、恐怖を怒りで押し殺した。
リプレイ本文
――神霊樹は見せる。
遥かな昔。辺境の――。
――巨人は母さんの仇だ。絶対に許す訳にはいかない。
ここで死ぬことになったとしても、絶対に倒してやる――!
迷わずに結界から飛び出した少年。
勇猛に巨人の足にナイフを突き立てるも、鋼のように固い身体に弾き飛ばされる。
迫る巨人。もう一度攻撃しようと立ち上がって――。
次の瞬間、引き戻される身体。
驚いて振り返ると、赤い影が横切って――。
「こんなところに居やがったか! 巨人を引き付ける! 少年を頼んだぜ!」
「分かった!」
少年を見つけるなり、首根っこを掴んで放り投げるように後方へ押しやるエヴァンス・カルヴィ(ka0639)。
Uisca Amhran(ka0754)は彼を受け止めると、そのまま腕を引いて結界の方へと連れて行く。
「離せ! 俺は母さんの仇を……!」
「ダメだよ。大人しくして!」
「勝てるような相手じゃないですの!」
暴れる少年を抑えるUiscaとチョココ(ka2449)。黒の夢(ka0187)は少年を抱き上げると、前を向かせる。
「……見るのな」
「何だよ!」
「いいから見るのな」
黒の夢に抱えられたまま顔を上げた少年。
――そこには、先ほどの赤い影……エヴァンスが背を向けて立っていた。
「悪いな巨人、ちーっとばかり俺と遊んでもらうぜ!」
煌めく琥珀色。エヴァンスの身体を包む揺らめくような光。
それに巨人たちが惹きつけられるようにゆっくりと動き始め……。
振り下ろされる巨人の腕。それを紙一重で避けて――横薙ぎされる大剣。
現れる衝撃波。琥珀色の炎が舞うように散る。
だが巨人に効いたようには見えず、笑うエヴァンス。次の一撃を跳躍で避ける。
無駄のない動き。
食い入るように見つめる少年に、輝羽・零次(ka5974)はため息を漏らす。
「……分かるか? あんな力を持った男ですら避けるので精一杯なんだ。お前にはまだ早い」
「そういうことです! エヴァンスさーん! そろそろ戻ってきてください! 長居は無用ですよ!」
「へいへい、了解! お前達が結界の中へ下がったら走る!」
ノワ(ka3572)の声にこちらを見ずに応えるエヴァンス。
ハンター達と少年が結界の中に走り込むと、追い縋る巨人達は弾かれて――それ以上、追って来ることはなかった。
「この結界、歪虚を弾くんですね……。東方の黒龍が張っていた結界と近い感じでしょうか」
見えない壁のようになっている結界に目を輝かせるノワ。
ヒトや幻獣は通れるのに、歪虚だけを弾く。マテリアルで判別しているのだろうか……?
飽くなき探求心を覗かせる彼女の横で、黒の夢は徐に少年を抱え直すとべしべしとお尻を叩く。
「何すんだ!」
「危ない事する子はお尻ぺんぺんなのな!!」
「子供扱いすんな!!」
「無理と無茶の差が分からないような人はお子様扱いされても仕方ないですの」
己と同じくらいの年齢のチョココに言われて、うぐ、と言葉に詰まる少年。
Uiscaは膝をつくと、少年の顔を覗き込む。
「キミ、名前は?」
「……オイマト」
「……? それは一族の名前でしょ? そうじゃなくて君自身の名前」
「一族の名前? そんなのないよ。オイマトは俺の名前だよ」
少年の言葉に顔を見合わせる黒の夢とチョココ。
この少年、髪の色も目の色も見覚えがあって――どこかで会ったことがあるような気がしていた。
――この子はもしかして、オイマト族の……。
「そっか……。だから似てるのな」
「ご先祖様ですの?」
「そうかもしれないのな」
小首を傾げる少女に頷く黒の夢。
これは神霊樹が見せる夢だ。確証はないけれど――。
そんなことを考えている間も続くUiscaの言い聞かせるような声。エヴァンスの豪快な笑い声が続く。
「まあまあ。そう言いなさんなって。少年は無事だったんだしよ。男はこのくらい元気があった方がいいって。なあ?」
「もー! この子はエヴァンスさんみたいに頑丈じゃないの! ……ねえ、オイマト君。キミの気持ちは分からなくもないけど。キミまで死んでしまったら、亡くなったお母様もきっと悲しむよ」
「……でも俺は、どうしても許すことが出来ないんだ!」
「許す必要はないよ。でも、怒りは人の目を曇らせる。落ち着いて欲しいの」
「命を粗末にするのはダメですの。親を悲しませることは、してはいけませんのよ」
言い募るチョココに唇を噛む少年。
零次はその様子に、ふと昔のことを思い出す。
――零次が母親を亡くしたのも、この少年と同じくらいの年齢だった。
……彼も、きっと。頭では言われたことを理解しているのだ。
どうしても感情が付いてこない。
その差を持て余して、苦しんで……もがいた結果が今回の一件なのだろう。
「……悔しいんだろ? なら、それを全部俺にぶつけてみろ」
「あんたは俺の仇じゃない」
「それがどうした。目の前の一人をどうにも出来ないなら、巨人なんて夢のまた夢だ。それこそ無駄なだけだぞ?」
――憎いなら、ぶつけて来い。
零次の呟き。次の瞬間、咆哮と共に突っ込んで来る少年。
闇雲にぶつけられる拳。ハンターである自分にはダメージにすらならないが……。
……悲しみも、憎しみも、我慢しているだけでは傷になる。
泣くことも出来ない不器用な少年に、かつての自分を見た気がして――零次はその拳を全て受け止めた。
そんなことがありながらも、少年を連れ戻したハンター達は白龍や幻獣達を囲んで宴席を設けていた。
「はーい。お料理お持ちしましたよー」
「これは美味しそうダネ」
「オイマトを連れ戻して貰ったのに料理まですまないね」
「いいんですよ! こうして皆様にお会い出来て嬉しいんですから」
「デュンファリ様! もふもふさせて下さいですの!」
デュンファリとリラに笑顔を向けながら己の部族の料理を運ぶUisca。
チョココが大幻獣の巨体に突進していく。
「デュンファリさんは大幻獣でしたっけ。本当大きいですよね。身体の構造とかどうなってるんでしょう」
「いだだ!!」
チョココを受け止めた巨体を横目で見つめていたノワ。少年の悲鳴で目線を戻す。
「じっとしてくれないとお薬塗れませんよ?」
「ちょっ。ノワ、何か沁みる……!!」
「ええ。私の特製軟膏ですからね!」
「ほらほら。抱っこしててあげるから我慢するのなー」
足に怪我を負っていた少年に、お手製の軟膏を塗るノワ。
何でも、鉱物を練り込んであるらしいが……それって大丈夫なんだろうか?
黒の夢に抱えられて治療を受ける少年を見て、零次が苦笑する。
「その程度の怪我で悲鳴あげてんのに良く仇討ちなんてしようと思ったよな」
「う、うるさいな!」
「……お前、親は好きか?」
「当たり前だろ! 母さんだって、俺を庇わなければこんなことには……」
「……そうか。だったら生きないとな。お前の親はお前が生きることを望んだ。お前はその結果だ。だからまず生きろ」
「……俺が、結果?」
「そうだ。生きる以上に何かがしたいなら、それが出来る力を持て。そっからだ、お前がしたい事を為すのは」
零次の意思のこもった瞳。それを見つめ返して、少年は黙り込む。
黒の夢は膝の上でおとなしくしている少年をよしよしと撫でる。
「今は仇より、産んでくれた人が残したその生命……大事にして生きなさい。汝は……独りでは無いでしょう? 巫女達や幻獣達……帰れば血は繋がっていなくとも心配する家族もいるのな」
白龍も巫女も幻獣達も、この少年を無事に連れ戻して欲しいと願った。
――それはこの子を想う心があるから。
今すぐは無理でも。いつかその想いを理解することが出来るといい。
そう願って、少年をぎゅっと抱きしめる。
……感じた少年の匂いは、やはりあの人に似ている。
懐かしい匂い。あの人の幼い頃は、こんな感じだったのだろうか。
ふと顔を上げる黒の夢。目に入るのは佇む白龍。
その姿にも、何だか不思議な温かさを覚える。
懐かしい……? でも我輩は白龍ちゃんには逢ったこと――。
「……なあ、白龍。あの巨人達は何時頃、何処から出てきたんだ? 何か目的とかはありそうなのか?」
「数年前に北の山の方角から現れました。目的は分かりませんが……強い敵意を感じます」
「白龍さま、この先のことはご存知ですか?」
ぼんやりとした黒の夢の耳に届く零次の問いかけ。白龍はUiscaの問いに無言を返す。
向けられる、凪いだ海のような穏やかな瞳。
知らないのか、知っていて答えることができないのか……。
「歪虚とは、何なのでしょう……? 私たちはすべての歪虚を倒さねばいけないのでしょうか」
歪虚が糧にしている負の感情はヒトから無くすことはできない。
負があるからこそ正も成り立つ、表裏一体の関係ともいえる。
歪虚を滅ぼせば、ヒトの滅びにもつながるのではないだろうか……。
「歪虚をすべて滅ぼすのは、よいことなのでしょうか……?」
「小さき巫女よ。私はその問いに対して答えは持っていません。私達はただ、ヒトの為に在るモノ。私以外の龍達もそう……ヒトの存続を願ってやまぬのです」
龍は小さなマテリアルと共に生まれ、共に成長する。やがて莫大なマテリアルを保持する存在となり、この星に仇成す者を討つ守護者となる。
龍は世界のバランスを崩す存在を許しはしない。
この世界に、世界そのものを崩そうとする悪が生まれたなら、その芽を摘むのも龍の使命。
何があってもヒトを肯定し、守り続ける――。
「それが私達、龍の存在する理由なのです。私達の命は、ヒトの為に……龍は長い時間をかけて身体にマテリアルをため込み、いずれ大地に還す。それは星との約束。自然の流れなのです。遠い未来の『私』も、過去の『私』も全て……。『白い龍』に後悔はないのだと」
「白龍様……」
「……ヒトの子達よ、どうか忘れないで。何が起きても、どんな結果になっても……貴方達は愛されている」
「御心のままに……」
頷くUisca。
白龍の想いと願い。存在の理由。
だったら私がすべきことは――。
彼女は己が信仰し、敬愛する龍に深く頭を垂れる。
「ノワ様! 見て下さいですの! あのキューソさん、魔導アーマーに乗ってるですの!!」
「わあ! 本当です! すごいです……!!」
魔導アーマーを操るキューソに歓声をあげるチョココとノワ。
幻獣達が操る魔導アーマーにはどれも赤い色をした昆虫の手足のようなものがついている。
……何だろう。これ、どこかで見たような……?
「デュンファリ様。キューソさん達皆魔導アーマーに乗ってるですの」
「ああ。身体の小さな幻獣は、これに乗って戦うんダヨ。小さい子は身体が弱いからね」
この時代の幻獣達は、身体が小さな者もこうして戦っていたのか。
ふむふむとメモを取るノワ。あっ、と思い出したように顔を上げてリーリーの大幻獣を見る。
「私、鉱物学と医学の融合を目指している研究者です。痛みも副作用もない体に優しい癒しの治療を目指しているんですが……大幻獣さんの身体ってどうなってるんですか?」
「ボク達の身体? 幻獣はマテリアルを吸収して大きくなるんだよ。それに伴って知恵もついてくるんだ」
「ふむふむ。じゃあ、デュンファリさん達がこんなに大きいのも全部マテリアルですか?」
「そうダヨ」
考え込むノワ。ということは、この過去の世界の幻獣が大きいのはマテリアル保有量の差ということだろうか。
昔は、今の世界よりもマテリアル量が多かった。だから幻獣も巨大化できたのだろうか……?
「もう一つ質問いいですか? 幻獣さん達に私の研究、効きますかね」
「鉱物かあ……。ボク達に効くかどうかは分からないけど、マテリアル鉱石だったらそういったことにも使えるかもしれないネ」
「マテリアル鉱石ですか?」
「ああ。あれは純粋に力の塊だからね。君達覚醒者とは相性がいいはずダヨ」
「すごいですのー! リーリーさんの羽毛も3倍ですのー!」
デュンファリの言葉を余さずメモするノワ。チョココは大幻獣の身体にしがみついてうっとりとしていて――。
エヴァンスは、仲間達が宴席で会話や交流に興じている間、辺境の戦士達と一太刀交えていた。
厳しい時代を生き抜いた彼らの戦闘技術は素晴らしく、彼も本気で剣を振った。
技術もそうだが、何より。生き抜こうとする戦士達の想い。白龍や幻獣達への厚い信頼。そして、高い技術力を誇る武具。
それらは、エヴァンスが生きている今の時代を遥かに凌駕しているようで……この時代を、彼らはこうして渡り歩いていたのかもしれない。
――看取ることの出来なかった蛇の戦士。
彼もこの時代の戦いを知っていたのだろうか……。
「なあ、エヴァンス」
「何だ? 少年」
「零次にも聞いたけど……どうしたらあんたみたいに強くなれる?」
「そうだなぁ。場数と……あとは死なないことだな」
「零次もとにかく生き残れって言ってた」
「ああ。死と隣り合わせの戦場で生き残るってな結構大変だぜ。実力も、運も必要になる」
立っている場所が少し違っただけで、生死を分けることだってある。
死線を幾度となく潜り抜けてきたエヴァンスは、それを実感していた。
「力があれば運なんて必要ないんじゃないの?」
「運も実力のうちってな。それが分からねえようじゃまだまだだな」
ムッとした少年に口元を緩めるエヴァンス。少年の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「……巨人への復讐心と闘志は消さなくていい。それはいずれお前の力になる。その刃は今は振るわず、磨き続けろ」
「分かった。俺、エヴァンスや零次みたいな戦士になる」
「そいつはまた大きく出たな。精々努力しろよ」
「おう。強くなったら俺と手合わせしようぜ」
拳を合わせる零次とエヴァンス、少年。
これは夢。記録でしかない。
何かが変わる訳でもない。
現実に残らないとしても――少年と、白龍達の未来を願わずにはいられない。
「……私は、これからも白龍さまのことを信じて、白龍さまの想いを伝える巫女の役目を全うします。だから……」
Uiscaの祈り。聞こえる琴の音。
その音色に乗る黒の夢の生命の唄。
祈る様に、追憶する様に、誰の為かは解らないけれど……。
最後に見えたのは、白い龍の優しい瞳。
龍と同じ色の光が、視界を埋め尽くして……。
再び目を開けると、そこには聳え立つ神霊樹。
気が付けば、ハンター達はハンタースソサエティの本部へ戻って来ていた。
「すごいもの沢山見ました……ってアレ!? ええっ!? メモがないいいい!!」
「うわーん!! もっともっと幻獣さんモフモフしたかったですのおおお!!」
聞こえるノワとチョココの悲鳴。黒の夢は微かな胸の痛みを抱えて天を仰いだ。
「――いつか。……いつか遠い未来にまたくるね。『白龍様』」
遥かな昔。辺境の――。
――巨人は母さんの仇だ。絶対に許す訳にはいかない。
ここで死ぬことになったとしても、絶対に倒してやる――!
迷わずに結界から飛び出した少年。
勇猛に巨人の足にナイフを突き立てるも、鋼のように固い身体に弾き飛ばされる。
迫る巨人。もう一度攻撃しようと立ち上がって――。
次の瞬間、引き戻される身体。
驚いて振り返ると、赤い影が横切って――。
「こんなところに居やがったか! 巨人を引き付ける! 少年を頼んだぜ!」
「分かった!」
少年を見つけるなり、首根っこを掴んで放り投げるように後方へ押しやるエヴァンス・カルヴィ(ka0639)。
Uisca Amhran(ka0754)は彼を受け止めると、そのまま腕を引いて結界の方へと連れて行く。
「離せ! 俺は母さんの仇を……!」
「ダメだよ。大人しくして!」
「勝てるような相手じゃないですの!」
暴れる少年を抑えるUiscaとチョココ(ka2449)。黒の夢(ka0187)は少年を抱き上げると、前を向かせる。
「……見るのな」
「何だよ!」
「いいから見るのな」
黒の夢に抱えられたまま顔を上げた少年。
――そこには、先ほどの赤い影……エヴァンスが背を向けて立っていた。
「悪いな巨人、ちーっとばかり俺と遊んでもらうぜ!」
煌めく琥珀色。エヴァンスの身体を包む揺らめくような光。
それに巨人たちが惹きつけられるようにゆっくりと動き始め……。
振り下ろされる巨人の腕。それを紙一重で避けて――横薙ぎされる大剣。
現れる衝撃波。琥珀色の炎が舞うように散る。
だが巨人に効いたようには見えず、笑うエヴァンス。次の一撃を跳躍で避ける。
無駄のない動き。
食い入るように見つめる少年に、輝羽・零次(ka5974)はため息を漏らす。
「……分かるか? あんな力を持った男ですら避けるので精一杯なんだ。お前にはまだ早い」
「そういうことです! エヴァンスさーん! そろそろ戻ってきてください! 長居は無用ですよ!」
「へいへい、了解! お前達が結界の中へ下がったら走る!」
ノワ(ka3572)の声にこちらを見ずに応えるエヴァンス。
ハンター達と少年が結界の中に走り込むと、追い縋る巨人達は弾かれて――それ以上、追って来ることはなかった。
「この結界、歪虚を弾くんですね……。東方の黒龍が張っていた結界と近い感じでしょうか」
見えない壁のようになっている結界に目を輝かせるノワ。
ヒトや幻獣は通れるのに、歪虚だけを弾く。マテリアルで判別しているのだろうか……?
飽くなき探求心を覗かせる彼女の横で、黒の夢は徐に少年を抱え直すとべしべしとお尻を叩く。
「何すんだ!」
「危ない事する子はお尻ぺんぺんなのな!!」
「子供扱いすんな!!」
「無理と無茶の差が分からないような人はお子様扱いされても仕方ないですの」
己と同じくらいの年齢のチョココに言われて、うぐ、と言葉に詰まる少年。
Uiscaは膝をつくと、少年の顔を覗き込む。
「キミ、名前は?」
「……オイマト」
「……? それは一族の名前でしょ? そうじゃなくて君自身の名前」
「一族の名前? そんなのないよ。オイマトは俺の名前だよ」
少年の言葉に顔を見合わせる黒の夢とチョココ。
この少年、髪の色も目の色も見覚えがあって――どこかで会ったことがあるような気がしていた。
――この子はもしかして、オイマト族の……。
「そっか……。だから似てるのな」
「ご先祖様ですの?」
「そうかもしれないのな」
小首を傾げる少女に頷く黒の夢。
これは神霊樹が見せる夢だ。確証はないけれど――。
そんなことを考えている間も続くUiscaの言い聞かせるような声。エヴァンスの豪快な笑い声が続く。
「まあまあ。そう言いなさんなって。少年は無事だったんだしよ。男はこのくらい元気があった方がいいって。なあ?」
「もー! この子はエヴァンスさんみたいに頑丈じゃないの! ……ねえ、オイマト君。キミの気持ちは分からなくもないけど。キミまで死んでしまったら、亡くなったお母様もきっと悲しむよ」
「……でも俺は、どうしても許すことが出来ないんだ!」
「許す必要はないよ。でも、怒りは人の目を曇らせる。落ち着いて欲しいの」
「命を粗末にするのはダメですの。親を悲しませることは、してはいけませんのよ」
言い募るチョココに唇を噛む少年。
零次はその様子に、ふと昔のことを思い出す。
――零次が母親を亡くしたのも、この少年と同じくらいの年齢だった。
……彼も、きっと。頭では言われたことを理解しているのだ。
どうしても感情が付いてこない。
その差を持て余して、苦しんで……もがいた結果が今回の一件なのだろう。
「……悔しいんだろ? なら、それを全部俺にぶつけてみろ」
「あんたは俺の仇じゃない」
「それがどうした。目の前の一人をどうにも出来ないなら、巨人なんて夢のまた夢だ。それこそ無駄なだけだぞ?」
――憎いなら、ぶつけて来い。
零次の呟き。次の瞬間、咆哮と共に突っ込んで来る少年。
闇雲にぶつけられる拳。ハンターである自分にはダメージにすらならないが……。
……悲しみも、憎しみも、我慢しているだけでは傷になる。
泣くことも出来ない不器用な少年に、かつての自分を見た気がして――零次はその拳を全て受け止めた。
そんなことがありながらも、少年を連れ戻したハンター達は白龍や幻獣達を囲んで宴席を設けていた。
「はーい。お料理お持ちしましたよー」
「これは美味しそうダネ」
「オイマトを連れ戻して貰ったのに料理まですまないね」
「いいんですよ! こうして皆様にお会い出来て嬉しいんですから」
「デュンファリ様! もふもふさせて下さいですの!」
デュンファリとリラに笑顔を向けながら己の部族の料理を運ぶUisca。
チョココが大幻獣の巨体に突進していく。
「デュンファリさんは大幻獣でしたっけ。本当大きいですよね。身体の構造とかどうなってるんでしょう」
「いだだ!!」
チョココを受け止めた巨体を横目で見つめていたノワ。少年の悲鳴で目線を戻す。
「じっとしてくれないとお薬塗れませんよ?」
「ちょっ。ノワ、何か沁みる……!!」
「ええ。私の特製軟膏ですからね!」
「ほらほら。抱っこしててあげるから我慢するのなー」
足に怪我を負っていた少年に、お手製の軟膏を塗るノワ。
何でも、鉱物を練り込んであるらしいが……それって大丈夫なんだろうか?
黒の夢に抱えられて治療を受ける少年を見て、零次が苦笑する。
「その程度の怪我で悲鳴あげてんのに良く仇討ちなんてしようと思ったよな」
「う、うるさいな!」
「……お前、親は好きか?」
「当たり前だろ! 母さんだって、俺を庇わなければこんなことには……」
「……そうか。だったら生きないとな。お前の親はお前が生きることを望んだ。お前はその結果だ。だからまず生きろ」
「……俺が、結果?」
「そうだ。生きる以上に何かがしたいなら、それが出来る力を持て。そっからだ、お前がしたい事を為すのは」
零次の意思のこもった瞳。それを見つめ返して、少年は黙り込む。
黒の夢は膝の上でおとなしくしている少年をよしよしと撫でる。
「今は仇より、産んでくれた人が残したその生命……大事にして生きなさい。汝は……独りでは無いでしょう? 巫女達や幻獣達……帰れば血は繋がっていなくとも心配する家族もいるのな」
白龍も巫女も幻獣達も、この少年を無事に連れ戻して欲しいと願った。
――それはこの子を想う心があるから。
今すぐは無理でも。いつかその想いを理解することが出来るといい。
そう願って、少年をぎゅっと抱きしめる。
……感じた少年の匂いは、やはりあの人に似ている。
懐かしい匂い。あの人の幼い頃は、こんな感じだったのだろうか。
ふと顔を上げる黒の夢。目に入るのは佇む白龍。
その姿にも、何だか不思議な温かさを覚える。
懐かしい……? でも我輩は白龍ちゃんには逢ったこと――。
「……なあ、白龍。あの巨人達は何時頃、何処から出てきたんだ? 何か目的とかはありそうなのか?」
「数年前に北の山の方角から現れました。目的は分かりませんが……強い敵意を感じます」
「白龍さま、この先のことはご存知ですか?」
ぼんやりとした黒の夢の耳に届く零次の問いかけ。白龍はUiscaの問いに無言を返す。
向けられる、凪いだ海のような穏やかな瞳。
知らないのか、知っていて答えることができないのか……。
「歪虚とは、何なのでしょう……? 私たちはすべての歪虚を倒さねばいけないのでしょうか」
歪虚が糧にしている負の感情はヒトから無くすことはできない。
負があるからこそ正も成り立つ、表裏一体の関係ともいえる。
歪虚を滅ぼせば、ヒトの滅びにもつながるのではないだろうか……。
「歪虚をすべて滅ぼすのは、よいことなのでしょうか……?」
「小さき巫女よ。私はその問いに対して答えは持っていません。私達はただ、ヒトの為に在るモノ。私以外の龍達もそう……ヒトの存続を願ってやまぬのです」
龍は小さなマテリアルと共に生まれ、共に成長する。やがて莫大なマテリアルを保持する存在となり、この星に仇成す者を討つ守護者となる。
龍は世界のバランスを崩す存在を許しはしない。
この世界に、世界そのものを崩そうとする悪が生まれたなら、その芽を摘むのも龍の使命。
何があってもヒトを肯定し、守り続ける――。
「それが私達、龍の存在する理由なのです。私達の命は、ヒトの為に……龍は長い時間をかけて身体にマテリアルをため込み、いずれ大地に還す。それは星との約束。自然の流れなのです。遠い未来の『私』も、過去の『私』も全て……。『白い龍』に後悔はないのだと」
「白龍様……」
「……ヒトの子達よ、どうか忘れないで。何が起きても、どんな結果になっても……貴方達は愛されている」
「御心のままに……」
頷くUisca。
白龍の想いと願い。存在の理由。
だったら私がすべきことは――。
彼女は己が信仰し、敬愛する龍に深く頭を垂れる。
「ノワ様! 見て下さいですの! あのキューソさん、魔導アーマーに乗ってるですの!!」
「わあ! 本当です! すごいです……!!」
魔導アーマーを操るキューソに歓声をあげるチョココとノワ。
幻獣達が操る魔導アーマーにはどれも赤い色をした昆虫の手足のようなものがついている。
……何だろう。これ、どこかで見たような……?
「デュンファリ様。キューソさん達皆魔導アーマーに乗ってるですの」
「ああ。身体の小さな幻獣は、これに乗って戦うんダヨ。小さい子は身体が弱いからね」
この時代の幻獣達は、身体が小さな者もこうして戦っていたのか。
ふむふむとメモを取るノワ。あっ、と思い出したように顔を上げてリーリーの大幻獣を見る。
「私、鉱物学と医学の融合を目指している研究者です。痛みも副作用もない体に優しい癒しの治療を目指しているんですが……大幻獣さんの身体ってどうなってるんですか?」
「ボク達の身体? 幻獣はマテリアルを吸収して大きくなるんだよ。それに伴って知恵もついてくるんだ」
「ふむふむ。じゃあ、デュンファリさん達がこんなに大きいのも全部マテリアルですか?」
「そうダヨ」
考え込むノワ。ということは、この過去の世界の幻獣が大きいのはマテリアル保有量の差ということだろうか。
昔は、今の世界よりもマテリアル量が多かった。だから幻獣も巨大化できたのだろうか……?
「もう一つ質問いいですか? 幻獣さん達に私の研究、効きますかね」
「鉱物かあ……。ボク達に効くかどうかは分からないけど、マテリアル鉱石だったらそういったことにも使えるかもしれないネ」
「マテリアル鉱石ですか?」
「ああ。あれは純粋に力の塊だからね。君達覚醒者とは相性がいいはずダヨ」
「すごいですのー! リーリーさんの羽毛も3倍ですのー!」
デュンファリの言葉を余さずメモするノワ。チョココは大幻獣の身体にしがみついてうっとりとしていて――。
エヴァンスは、仲間達が宴席で会話や交流に興じている間、辺境の戦士達と一太刀交えていた。
厳しい時代を生き抜いた彼らの戦闘技術は素晴らしく、彼も本気で剣を振った。
技術もそうだが、何より。生き抜こうとする戦士達の想い。白龍や幻獣達への厚い信頼。そして、高い技術力を誇る武具。
それらは、エヴァンスが生きている今の時代を遥かに凌駕しているようで……この時代を、彼らはこうして渡り歩いていたのかもしれない。
――看取ることの出来なかった蛇の戦士。
彼もこの時代の戦いを知っていたのだろうか……。
「なあ、エヴァンス」
「何だ? 少年」
「零次にも聞いたけど……どうしたらあんたみたいに強くなれる?」
「そうだなぁ。場数と……あとは死なないことだな」
「零次もとにかく生き残れって言ってた」
「ああ。死と隣り合わせの戦場で生き残るってな結構大変だぜ。実力も、運も必要になる」
立っている場所が少し違っただけで、生死を分けることだってある。
死線を幾度となく潜り抜けてきたエヴァンスは、それを実感していた。
「力があれば運なんて必要ないんじゃないの?」
「運も実力のうちってな。それが分からねえようじゃまだまだだな」
ムッとした少年に口元を緩めるエヴァンス。少年の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「……巨人への復讐心と闘志は消さなくていい。それはいずれお前の力になる。その刃は今は振るわず、磨き続けろ」
「分かった。俺、エヴァンスや零次みたいな戦士になる」
「そいつはまた大きく出たな。精々努力しろよ」
「おう。強くなったら俺と手合わせしようぜ」
拳を合わせる零次とエヴァンス、少年。
これは夢。記録でしかない。
何かが変わる訳でもない。
現実に残らないとしても――少年と、白龍達の未来を願わずにはいられない。
「……私は、これからも白龍さまのことを信じて、白龍さまの想いを伝える巫女の役目を全うします。だから……」
Uiscaの祈り。聞こえる琴の音。
その音色に乗る黒の夢の生命の唄。
祈る様に、追憶する様に、誰の為かは解らないけれど……。
最後に見えたのは、白い龍の優しい瞳。
龍と同じ色の光が、視界を埋め尽くして……。
再び目を開けると、そこには聳え立つ神霊樹。
気が付けば、ハンター達はハンタースソサエティの本部へ戻って来ていた。
「すごいもの沢山見ました……ってアレ!? ええっ!? メモがないいいい!!」
「うわーん!! もっともっと幻獣さんモフモフしたかったですのおおお!!」
聞こえるノワとチョココの悲鳴。黒の夢は微かな胸の痛みを抱えて天を仰いだ。
「――いつか。……いつか遠い未来にまたくるね。『白龍様』」
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【相談・雑談】むにゃむにゃ? 黒の夢(ka0187) エルフ|26才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/03/12 16:56:48 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/03/09 10:05:35 |