家畜泥棒ゴブリンナイトをぶち倒せ!

マスター:旅硝子

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2014/06/16 12:00
完成日
2014/06/20 02:18

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ――ゾンネンシュトラール帝国の僻地にある、スティードの村。
 村を囲む穏やかな丘陵では、放牧された羊がのんびりと草を食み、羊飼いと牧羊犬がのんびりとそれを見守る。
 ……はずだったのだ。

「うああああああ! ボクの、みんなのヒツジをかえせええええええ!」
 まだ幼さを顔に残した少年が、懸命に走りながら手を伸ばす。けれど彼の目の前で、手塩にかけて育てた羊は少年の背丈ほどの、まるで恐竜のような怪鳥が開けた大きな口にさらわれた。
「やめてええええええ!」
 少年の叫びにゲラゲラと不快な笑い声を上げるのは、怪鳥にまたがった醜悪なる小柄な人型の者達――それがゴブリンと呼ばれる亜人であることは、少年にはわからない。体躯に見合わず力のあるその腕にも、丸々と太った子羊が抱えられている。
 羊の悲鳴。見知らぬ相手に襲われて怯えながら、泣きながら、けれど必死にゴブリンと怪鳥達を追いかける少年を、ゴブリン達はからかうようにしばらく走らせて。
「返して、返してよぉ……いたっ!」
 声も枯れかけた少年が、石につまずいて転び、そのまま足を押さえて草の上を転げまわる。
「ギャハハハハ!」
「アッハッハッハ……」
 その様子を馬鹿にするようにひとしきり笑ったゴブリン達は、そのまま少年を置いて丘の向こうへと去って行ったのだった。

 ハンターズソサエティにて、掲示された依頼の確認を求められた受付の女性は、くいと眼鏡を上げて「スティードの村に現れたゴブリンの依頼ですね」と頷く。
「スティードの村は、羊の牧畜を主な産業としています。周りの土地は畑を作るには痩せていまして、わずかに栽培されているジャガイモなどと、行商人によって運ばれる生活必需品と羊毛製品や羊の干し肉を交換して暮らしている、非常に質素な村なのです」
 けれど人々はそれなりに平和に、多くを望むことなく暮らしてきたのだと、受付の女性は小さく微笑んで話してから――表情を曇らせた。
「けれどこの村に、リトルラプターという小型の怪鳥に騎乗したゴブリン……そうですね、ゴブリンナイトと呼びましょうか。そんな家畜泥棒が現れて、羊をさらって行くようになってしまったのです」
 既に、2回の被害が起きている。1回にさらわれる数は5匹か6匹、けれど小さな村にとっては非常な打撃だ。
「村の人達は、3回目の襲撃に怯えています。どうか、羊を守り抜いて、ゴブリンナイト達を倒してもらえないでしょうか?」
 集まったハンター達の顔を見渡した受付の女性は、頷いたり了承の声を上げたハンター達に、ほっとしたように顔を輝かせて。
「あ……それと、依頼の話を聞いた時に村長さんがおっしゃっていたのですが、最初の襲撃で羊を取り返そうとゴブリンナイト達を追いかけて、足をくじいてしまった男の子のリュンくんが、すごく、すっごく羊を取り返せなかったことを気に病んでいるんだとか。上手くゴブリンナイト達を倒せたら、もう心配はいらないって言ってあげてもらえますか?」
 格好良いハンターさん達にそう言って励ましてもらえたら、きっとくじいた足も、リュンくんの心も良くなるでしょうから。
 そう言って、眼鏡の奥から女性の瞳がにっこりとほほ笑んだ。

リプレイ本文

 せっせと羊を集める牧羊犬の鳴き声が草原に響く。
 村人達に借りた羊飼い風の装束を羽織ったハンター達は、最後の打ち合わせを終えていた。
「さて、ハンターとしての初実戦ですか……」
 米本 剛(ka0320)がウォーハンマーを両手で握り、じっとそれに目を落とす。
(……ハンターとしての初仕事、か)
 その隣では、クラーク・バレンスタイン(ka0111)が使い慣れたピストルを手に、視線を丘の向こうへ向ける。
(こちらの世界に来て、ハンターとしての初の実戦。失敗は出来ないな)
 人よりも鋭敏な視力を持つ瞳が、ゴブリンの襲来を見逃すまいと見開かれる。
 剛とクラークは、どちらもリアルブルーで軍人としての経験を積んでいる。けれど、この世界でのハンターとしての実戦は初めてだ。
「ふむ、これが初依頼……という事で、多少緊張しておるが、それ以上に」
 爽やかな風を、ひゅん、とフレイルを軽く振る音が切り裂く。
「興奮しておるのぉ」
 ゲルド・マルジェフ(ka0372)は、いかにもドワーフといった立派な髭に囲まれた唇を、ニヤリと吊り上げてみせた。
 それに大き目のバスタードソードを片手で軽々と引っ担いで、ボルディア・コンフラムス(ka0796)が嬉しそうな声を上げる。
「おう、おまえもかよ。俺もだ! ハハハッ! やっとヴォイド共と戦えるぜ」
 彼女にとってもこれが初陣。黒い瞳が、闘志を燃やすように輝いた。
「羊の場所は、こちらでいいですかね?」
 羊飼いの声に振り向いたハンター達の中で、いち早くエナリア・アウローラ(ka1670)が頷いた。
「ええ、ありがとう。敵が寄って来たら逃げられるように、準備をお願いするわね」
「この辺りのことは、現地の人の方が詳しいでしょうし。そういう訳だから、ヨロシクね」
 ジェーン・ノーワース(ka2004)がそう続けて小さく頭を下げる。ふわり、とフードから僅かにはみ出した黒い髪が揺れた。
「ぜ、善処します」
 ごくりと青年は息を呑み、「ゴブリンの方、よろしくお願いします」と頭を下げて去っていく。ハンター達を信頼しているのだろう、その表情に緊張はあれど、恐怖の陰は見られない。
「それにしても、ゴブリンを追いかけるとは根性のある少年じゃのぉ、将来が楽しみじゃわぃ」
 ハンターズギルドで聞いた話を思い出し、からからとゲルドが笑う。
「強者は奪い、弱者は奪われる。それもまた自然の摂理……なのだけれど」
 ゲルドの笑みに頷いてから、ゴブリン達のあの少年に対する侮辱は許せないわね、とエナリアは小さく眉を寄せる。
 す、とクラークが、軽く丘の向こうから視線を逸らした。
「ふむ、ゴブリン……ですか」
「おう、ゴブリンだな。どうした?」
 首を傾げたボルディアに、クラークは「いえ、なんとも……」と肩を竦めて。
「本当に世界が違うんだなと実感しただけですよ。ともかく」
 そして改めてさっと振り向く。ちょうど最初のゴブリンナイトが、姿を現したところだった。
 はっと目を見開き、慌てた様子で数歩後ずさる。ゴブリンナイトはその様子にニィと嬉しそうに口元を歪めて。
 ――秀逸な、クラークの演技であった。
「ある程度までは引き付けて、そこから一気にたたみかけますか。十分に、引き付けて……」
 怯えたような表情を崩さないまま、ほんの小声で、仲間達にだけ聞こえる声でクラークが呟く。
 相手が怯えていると見たゴブリンナイト達は、下品な笑い声を立てながら近づいてくる。けれど後ろ手に隠した銃の引き金を引く準備は、万全だ。
(挟み撃ちや待ち伏せは……なさそうね!)
 羊飼いに連れられて離れて行こうとする羊達を守るようにしながら、ジェーンが敵の数を確かめ、薙刀をぎゅっと握る。
「勇敢な少年をあざ笑うかのような行動をしたゴブリン共は……血祭りにあげるしかないのぉ」
「ええ、すっかり調子に乗っているようだし、ひとつ痛い目に遭ってもらいましょう」
 ゲルドの巨体がさらに筋肉を膨張させ、髪や髭と共にオーラが炎のように染まる。エナリアの身体からはマテリアルの光が溢れ出し、風とは反対方向にふわりと髪がなびいた。
 ゲルドが飛び出し、エナリアのワンドの先にマテリアルの矢が生み出される。さらにその2人を追い抜いて行ったのは、霊闘士の力によって犬を思わせるシルエットとなったボルディア。
「俺ぁもう嬉しくて嬉しくてしょうがねぇよ。この気色悪いゴブリン共が愛おしく思えるくらいにな!」
 ごっ、と音を立てて、ボルディアが思いっきり投げつけた大き目の石が、ゴブリンの頭部を捉える。リトルラプターの上で思いっきり体勢を崩したゴブリンに、さらに跳躍で一気に距離を詰めたボルディアが剣を勢いよく叩き付けた。
「ギギャア!」
 たまらず、といった様子でゴブリンがリトルラプターから転げ落ちる。リトルラプターがギャンと鳴き声を上げて腕に噛み付こうとするが、御するゴブリンがいなくなったせいか狙いが散漫だ。
 さらに味方の間を的確に駆け抜けた弾丸が、ゴブリンの喉を穿って声も出させない。怯えの仮面を脱ぎ捨てたクラークの銃に、マテリアルが輝くように宿っている。
「グッ!?」
「ヅヨイ!?」
 残ったゴブリンナイト達が顔を見合わせ、進路を変えようかと迷った様子のところにまた石が飛来する。それはゴブリンの頬をかすめ、ぴっと一筋の傷を付けた。
「おやおや、どうしました? 子ども以外の相手には躊躇し怖気付くのがゴブリンなのですか?」
「……ゴノヤロッ!」
 微笑みと共に放たれた剛の挑発に、ゴブリン達の顔が歪む。次の瞬間予想もできないほどの加速に、ハンター達は思わず目を見張った。
「ゴブリン共がぁ、調子に乗りおってぇ!」
 さっと動いたのは、ゲルド。突撃による衝撃を己も突撃で相殺するかのように、身体ごとゴブリンナイトにぶつかって行く。たまらず後ろに弾き飛ばされるも、そのままフレイルを振るい、
「ワシの武器を貴様等の返り血で染め上げてくれようぞ!」
 リトルラプターの鼻面に叩き付ける!
 ギャン、とリトルラプターの身体が大きく跳ねる。さらにそこに、エナリアのワンドから放たれた輝くマテリアルの矢が突き刺さる。
「ギャアアアッ!」
 たまらず身体を反らせて暴れたリトルラプターと、振り落とされたゴブリンが、同時に良く似た叫び声を上げた。
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ……ってね? まあ将と呼ぶにはお粗末な相手だけれど」
 ふっと息を吐き、エナリアは目を細めてさらに意識を集中させる。再び生み出された魔力の矢が、エナリアの手から躊躇なく撃ち出された。

 その間に剛は、もう一体のゴブリンナイトへと駆け寄る。
 頻繁に方向を変えて、ハンター達を撒きながら羊達に近寄ろうとするゴブリンナイトに、けれど進路を読みつつ近づく剛の追撃も執拗だった。
「ジヅゴイ……ヤヅメ!」
 チッと舌打ちしたゴブリンが、リトルラプターの進路を変える。
「ガアアアアアアッ!」
 恐ろしい速度で迫ってくるゴブリンナイトに、剛が呼吸を整える。ウォーハンマーを上段に構え、剛は呼吸を整えて祈りを捧げる。
「八百万の神々よ……粉砕の力を!」
 人よりも強い信仰心は、万物に宿ると信じる八百万の神への思い。
 祈りに応えてウォーハンマーが強く輝く。真っ直ぐに己に向かって突撃して来るゴブリンナイトを、剛は臆することなく正面から待ち受けて。
 鈍い衝撃音が、草原に響いた。
 剛が思わず膝をつく。けれどゴブリンとリトルラプターの方も、頭から血を流し憎悪の目で剛を睨む。
 呼吸を整え、傷を癒そうとマテリアルの力を操ったところで、剛は確かに聞いた。
「ぐっ……」
 最前線で戦うボルディアが、苦しげな声を上げたのを。

 ゴブリンが突き出す槍を軽く受け流しながら、リトルラプターの噛み付きに逆にレザーグローブを叩き付ける。最初に引きずり落としたゴブリンとリトルラプターを、両方逃がさないようにボルディアは立ち回っていた。
「あはっ、もっとかかって来いよ!」
 初めての激しい実戦に、ボルディアの心は高揚する。けれど、同時にボルディアの身体は少しずつ蓄積する傷と疲れに蝕まれていく。
 ゴブリンに剣を叩き付けたところで、ボルディアの二の腕を灼けるような激しい痛みが襲う。
 服とグローブの間の僅かな隙間。リトルラプターの牙は偶然ながら、正確にそこを捉えていた。
「ぐっ……」
 咄嗟に振るった剣の切っ先が揺らぎ、リトルラプターに与えたのは僅かな傷。そしてその隙を逃すまいと、ゴブリンが転がるように駆け出す。
「逃がすかっ……」
 ぎりり、と奥歯を噛み締める。剣を握り直した瞬間、ずきんと痛みが増した。

 剛の決断は早かった。マテリアルを活性化させ、加護を願う。
「八百万の神々よ……癒し力を!」
 そっと伸ばした手の先のボルディアに、ふわりと癒しの輝きが舞い降りる。
「助かったぜ!」
 すぐに動きに精彩を取り戻したボルディアが、すぐさま一刀でリトルラプターを屠った。逃げるゴブリンの背を、クラークの銃弾が追う。
「身の危険を顧みず、ゴブリンを追いかけた少年がいるんだ。家畜泥棒の代償は、しっかりと払ってもらおう」
 威力と命中力、そして射程を極限まで上げた銃弾が背中で弾けた次の瞬間、追いついたボルディアが剣を振るった。
「逃げんじゃねぇよクソゴブリン! 闘おうぜ早くよぉ!」
 その声に剛は、上手く癒しを送れたと安堵する。依頼の完遂こそが第一目標、けれど己が力量を、ハンターとして出来ることを見極めたいというのもその思いだ。
 そして、一つわかったことがある。一人では、全ては出来ないから。
「ジェーンさん、お願いします……!」
 彼の手を逃れたゴブリンナイトの背を睨み、剛は念じる。
 仲間を信じなければ、ハンターはやっていけないのだ。

 羊の群れを背に、ジェーンは静かに薙刀を構える。
(見ず知らずの地で、会ったばかりの人達と、赤の他人の為に何かをするなんて)
 過去の自分では想像もできなかった出来事に感じるのは、僅かな戸惑い、そして「それでこそだ」という思い。
 今の自分に何ができるのか、実験あるのみ、と。
「ドケェェェェェェ!」
 突っ込んできたゴブリンを、言われたとおりにジェーンは半歩避けた。
 が、遠心力と全力のスラッシュエッジを乗せた薙刀は、しっかりとゴブリンの軌道を捉えていた。
 ジェーンは大柄ではない。けれど技術と薙刀の長さは、それを補って余りある。
 落下し背中を強く打って悶絶するゴブリンにジェーンがもう一撃を加え、羊へと向かったリトルラプターにはエナリアのマジックアローとクラークの弾丸が飛ぶ。さらにゴブリンを倒し終えたボルディアとゲルドが、返り血で染まったままリトルラプターを楽しげに追いかける。2人の傷を、剛が祈りを捧げ次々に癒していく。
 ――敵を全て倒し終えたのは、そのすぐ後のことだった。

 戦いを終えたハンター達が訪れたのは、リュン少年の枕元だった。
「リュンっつったっけか? あいつらに羊取られてメソメソしてる子供ってのは」
 そう口火を切ったボルディアに、はっと少年は起き上がり、きっと勝気な目を向ける。
「めっ、メソメソしてないやい! ……羊、取られちゃったけど……」
 けれど、その勝気はすぐに悲しみに沈んで。
「安心せぃ、無事にゴブリン共は駆逐してやったわい」
「本当!?」
 ぐしゃぐしゃっと頭を撫でるゲルドの手と言葉に、少年の顔がぱっと輝き――次の瞬間唇がぐっと引き結ばれる。
「ありがとう。でも、悔しいや……ボクも、もっと頑張れたら良かった……」
 そっと、エナリアが少年と視線の高さを合わせるようにしゃがむ。そのまま、真剣な顔でリュンの瞳を覗き込んで。
「その悔しい気持ちは、決して間違いじゃないわ……どうしてそこまで悔しさを感じるのか、その理由を考えてみてね」
「理由?」
「そう」
 それはすなわち、貴方の意志の強さの顕れでもあるのよ、とエナリアは大きく頷く。少しだけ難しい言葉に、リュンはしばらく考えて、けれど「わかった、考えるよ」と頷いた。
 それでもまだ晴れ切らない顔に、ボルディアがぽんぽんと肩を叩く。
「ったく情けねぇなぁ。過ぎたことでウジウジ悩んでんじゃねえよ……何でも自分一人の責任だと思うんじゃねえ! そういうのは皆の責任ってんだよ」
「え?」
 きょとんとした少年に、ボルディアはそうだと頷いて続ける。
「お前やお前の母ちゃんや父ちゃんや村人全員が守り切れなかったんだ。だからお前一人が悪いわけじゃねえ」
 その言葉に、エナリアも己の思いを続けて。
「悔しい思いは恥ずべき事ではない、だから決して、自分自身を嫌うようなことだけはしないでね?」
「……うん……うん!」
 まだ笑みはないけれど、自分がもっと頑張れば、という思いを溶きほぐしてもらえたリュンの顔はさっきよりずっと明るい。
「……ま、あいつらに一人で立ち向かった勇気は認めてやるよ」
「ええ、自分の身を顧みず、羊を助けようとした勇気は大したものだと思います」
 ボルディアとクラークに言われて、ぱっと少年の顔が輝く。
「ああ、お前は一人前の男だ。ほら、ハグしてやるから元気出せ」
 リュンの返事を聞くまでもなく、ボルディアがぎゅっとリュン少年を抱き締める。一人前と認めた相手への、親愛の仕草……なのだが。
「なんか、顔赤くなってねぇか?」
「ない! ないない! あ、ありがとう姉ちゃん!」
 リュンの顔を無意識に埋めてしまった胸は、非常に豊かなのである。
「お主はいい根性を持っておるのぉ。大きくなった時が楽しみじゃわいのぉ、ふぉっふぉっふぉ」
 ゲルドの笑い声に、クラークもこくりと頷いて。
「でも、ゴブリンを追いかけるという行為は大変危険な事なのですよ。自分の命は、大事にしなければいけませんよ?」
「うん! ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん」
 クラークの言葉に、素直に少年は頷く。その様子に、クラークは小さく笑んで。
「大きくなって、一頭でも多くの羊を育ててくださいね?」
「はいっ! それなら、大得意だもんね!」
 ぱぁっと、少年の顔が満面の笑みに輝いた。

「……首尾よく行きましたね」
 家の外で待っていた剛の言葉に、ジェーンが頷く。蒼の世界の服に戦闘後の高揚した強面は怖がられてしまうかもしれないと配慮した剛に、ジェーンが付き添った形だ。
 空を隠す大樹の木陰に、涼やかな風が通り――高く澄んだ声を運ぶ。
「おにいちゃーん! おねえちゃーん!」
 振り向いた剛とジェーンの視界に入ったのは、大きく手を振る小さな女の子。
「ひつじ、まもってくれて、ありがとー!」
「どういたしまして!」
 剛が声をかけると、もう一度女の子がぶんぶんと手を振った。
 ジェーンの顔にも、小さく笑みが浮かぶ。
 順調に終わった初仕事の一番の報酬は、村人達の笑顔を取り戻せたことなのかもしれない――。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 11
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • Adviser
    クラーク・バレンスタイン(ka0111
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    米本 剛(ka0320
    人間(蒼)|30才|男性|聖導士

  • ゲルド・マルジェフ(ka0372
    ドワーフ|30才|男性|霊闘士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • エレメントリーダー
    エナリア・アウローラ(ka1670
    エルフ|15才|女性|魔術師
  • グリム・リーパー
    ジェーン・ノーワース(ka2004
    人間(蒼)|15才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/13 01:10:48
アイコン 相談卓
米本 剛(ka0320
人間(リアルブルー)|30才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/06/16 01:14:02