天高く、ブタ肥えちゃった秋

マスター:STANZA

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/10/21 19:00
完成日
2014/11/02 01:00

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 首都機能を有するヴァリオスやフマーレ、ポルトワールといった同盟の主要都市から遠く離れた寒村。
 そこでは、百人余りの人々が僅かばかりの畑を耕し、家畜を飼い、野山の恵みをいただきながら慎ましく暮らしていた。
 村の若者に都会育ちの綺麗な嫁さんが来たとか、飼っている牛が双子を生んだとか、その程度の事が事件になる様な、のどかな村。

 そんな村に、ある日突然異変が起きた。

「たっ、たたたたたいへんだぁっ! ぶ、ブタが、ブタがぁっ!!」
 村人で共同管理をしている豚小屋の世話に出かけた男が、血相を変えて駆け戻って来た。
「ば、バケモンになっちまっただぁっ!!!」
 息せき切って走る男の後ろからは、巨大なイノシシの様な姿をした何かが突進して来る。
 ブタが歪虚に取り付かれ、モンスターになってしまったのだ。
「は、早く家さ入れ! 隠れるだよ!」
 その声に、男は家の中に転がり込んだ。
 しかし、間一髪で閉ざされたドアが震え、ドォンという音が腹に響く。

 ドォン!
 ドォン!

 みしみし、めりめり。
 木製のドアが悲鳴を上げ、周囲の石積みの壁ごと紙の様に弾け飛ぶ。
「まずい、地下に隠れるだ!」
 跳ね上げ式の扉を開けて、二人は転げ落ちる様に地下の貯蔵庫へ。
 他の者達は梯子を登り、屋根裏部屋へ逃げ込んだ。
 ブタは流石に梯子を登る事は出来ず、地下に潜った二人の後を追って来る。
 閉ざされた扉を爪で引っ掻いたが、体当たりよりは威力が落ちる様だ。
「今すぐに破られる心配は、なさそうだべか……?」
 パラパラと埃が落ちて来る扉を見え下ながら、二人は不安げに身を寄せ合った。
 これでひとまずは安心だが……これでは身動きが出来ない。
 携帯用の通信機など持っている者はいないし、伝話も村長の家にひとつあるだけだ。
 誰かが異変に気付いて通報してくれると良いのだが——



 数分後、ハンターオフィスに連絡が入った。
『頼む、早く来てくれ!』
 村長と名乗る男の声は切羽詰まっていた。
『あれは年に一度のご馳走なんじゃ!』
 村では、豚肉は祭の時にしか食べられない貴重なもの。
 そして村人にとっては、ほぼ唯一の現金収入を得られる商品でもある。
 毎年生まれる十頭余りの子豚を育て、一頭か二頭を祭で供する為に残す他は、市場で現金に換えるのだ。
『それが、あんなバケモノになっちまったら……!』
 食べる事は出来ないし、勿論売り物にもならない。
 子豚だけでなく、親の番まで歪虚化しているから、もう全滅だ。
 いや、まだ肉としてなら何とかなるかもしれない。
 歪虚化してすぐであれば、倒せば元に戻ると聞いた——ただし、戻ったとしても残るのは死体ではあるが。
 だが、その肉を売れば多少は元が取れるだろう。
 ハンター達に報酬を支払い、新しい番を買える程度には。
『だから、急いでくれ! まだ食える部分が残っとるうちに、早く……!』
 伝話の向こうから、ドォンドォンという大きな音が絶え間なく聞こえて来る。
 村長の家は他よりも頑丈に出来ている様だが——

 急いだ方が良さそうだ。
 倒した後で食べる話がなかったとしても。

リプレイ本文

「ロキ、危ないと思ったら遠慮なく逃げる事、いいね」
 愛馬で駆けつけたメリエ・フリョーシカ(ka1991)は、その背から華麗に飛び降りると、村外れにある小屋の裏手に寄せた。
「歪虚に憑かれた動物の供養と村の今後の為にも、一等素早く参りま……っ、もう来ました!?」
 まだ戦闘準備も整わないうちに、一頭の超大型猛豚が突っ込んで来る。
 誰もが既に避難し、他に動くもののない所に現れた彼等は、格好の獲物に見えたのだろう。
 避ける事は難しくなさそうだが、避ければ背後の小屋が粉々にされそうだ。
(今後の事を考えれば、村の損壊も出来るだけ少ない方が良いですよね)
 この騒ぎが伝われば、他の雑魔が寄ってくるかもしれないし。
「さぁ、ハンティングのスタートですっ」
 メリエは斬馬刀を振りかざし、超猛豚の正面に立った。
 その直後、目の前で盛大な土煙が上がり、掘られた土塊がバラバラと飛んで来る。
 豚が急ブレーキをかけたのだ。
 見れば、その脇腹には一本の矢が突き刺さっている。

 それを放ったのは、エリシャ・カンナヴィ(ka0140)だった。
「はいはい、豚の解体作業依頼ね」
 遠い間合いから挑発の矢を放ち、エリシャは超猛豚を手招きする。
「屠殺くらい自分達でしてくれないかしらねぇとも思わなくもないけど、でかいし歪虚なら仕方ないわね」
 まんまと乗せられた豚は、不器用に方向を変えるとエリシャに向かって突進を始めた。
「知ってるっす、これ闘牛って言うんっすよ……豚っすけど!」
 同じ要領でもう一頭の超大型を引き付けたエステラ・クルース(ka1104)は、ローブの裾を広げてチラつかせながら村の外へ逃げる。
「今のうちに、小さいのを片付けるっすよ!」
 小さいと言っても普通の豚に比べたら充分デカいけど!

 その頃には残りの猛豚達も建物の破壊活動を放棄して、ハンター達の周囲に集まり始めていた。
「お肉だね! お肉! しかも豚だよ! 美味しそうだね!」
「あぁ豚料理って美味いよね。カツ系にすればビールに合うし角煮にすれば今度は焼酎なんかの蒸留酒に合ってくるわ」
 ソウジ(ka2928)と滝川雅華(ka0416)の目には、既に「調理後」の姿しか見えていない様だ。
「えーっと、アレがとんかつであれがハムでアレが豚丼でアレが生姜焼き……迷うなあ」
 え、迷ってる間に食べられる部分がどんどん減っていく?
 それは大変!
「さてさて、じゃあ狩りに行こうかな! 豚さーんこっちこっちー! お食事の時間だよー! 主にボクのー! ていうか十割ボクのー!」
 目のあった一頭を挑発して誘き寄せて、と。
「おー突っ込んできた突っ込んできた……え、三匹も?」
 ま、いっか!
 カツとハム、それに豚丼いっぺんに――は、無理かな。
 脚力を上げて横に回り込み、足を狙って刀を差し出して引っかける。
 峰打ちで転がしたら、後頭部に刀を突き立てて串刺しに。
 だが、猛豚はそれを振り払って闇雲に走り出した。
 逃げるとんかつ、しかしそこにはマコト・タツナミ(ka1030)が待ち構えていた。
 美味しいお肉を少しでも多く取る為にも、それをしっかりと加工して少しでも多くの利益を出す為にも、まずは迅速な討伐からという事で。
「疾風迅雷、だね」
 勿論、自分で食べる為にも!
「ごめんなさい、ちょっと痺れててもらうね」
 頭を狙ってエレクトリカルショックを繰り出し、痺れさせて動きを止める。
 追い付いて来たソウジが、その首を一刀両断!
「ハイ一匹仕留めましたと」
 とんかつ、いっちょあがりー。
「でももっと欲しいよね!」
 しかしその間に、ハムと豚丼は無傷のままに走り去っていた。
 二頭は急ブレーキをかけて止まり、ソウジに体当たりを食らわせるべく、体の向きを変えようとするが――

 その一瞬の隙を、狙撃手ランチェスタ・クロイツ(ka2953)は見逃さなかった。
「猛豚か……久しぶりに楽しい狩りができそうだ……」
 石垣の影に身を潜め、猟銃の狙いを定める。
 動きが止まった瞬間に引き金を引いた。
「豚肉の商品価値を下げない為に、素早く倒す事が最重要事項、だったな」
 ソウジの動きだけに気を取られていた猛豚は、予期せぬ敵の出現に驚く間もなく眉間を撃ち抜かれる。
 だが、流石に一撃で倒せるほど甘くはなかった。
 脳髄を滴らせながら、ふらふらと立ち上がった猛豚は歩き出そうとする。
 逃げるつもりなのか、それとも反撃に出ようというのか――だが、どちらにしても。
「獲物は逃がさん……」
 ランチェスタは、その頭に止めの一撃を。

 残る一頭には雅華が狙いを付ける。
「それにしてもまずは肉にすることからスタートってのはワイルドでファンタジーだわね、実に面白いところだわ。全力尽くして事に当たりましょう」
 少ない手数で素早く倒せる様にと攻勢強化で攻撃力を上げ、デリンジャーで機導砲を撃ち放った。
「もう一撃、必要か」
 そこに踏み込んだルイ・シュヴァリエ(ka1106)が、ツヴァイハンダーを振りかざす。
 既に手傷を負った身に攻撃を避ける余力はないと見て、守りを捨てて上段から渾身の力を込めて打ち下ろした。
「時間はかけられん……ここだ」
 斬ると言うより叩き潰される様に、豚の首が胴体から離れて転がる。
 これで三頭。

「状況を鑑みるに、あまりもたもたやっている暇はなさそうですね」
 ニャンゴ・ニャンゴ(ka1590)は音もなく物陰から滑り出す。
「あまり大きくない村の方にとって家畜は貴重な存在ですから……そう、ゴミ虫である私などよりもはるかに」
 ネガティヴなオーラを発しながら、ニャンゴは猛豚達に近付いていった。
「この私のように煮ても焼いても食べられない存在になる前に、仕留めましょう」
 ちょいちょいと威嚇しながら気を引いて、まずは一体を誘導――だからどうして五頭もいっぺんに向かって来るかな。

「にゃんにゃん、なんぞ美味そうな匂いでもしとるんちゃうか?」
 そう言いながら、クレナ(ka0451)が石を投げ付ける。
 当たった一頭がぴたりと足を止め、くるりと振り向いてクレナに向かって突進を始めた。
「なんや、最近いのししな奴らばかり相手にしとる気ぃすんな」
 自慢の棘バット(という名のモーニングスター)で好球必打の構え!
「どたまをフルスイング! 魂場外一直線や!」
 体は殆ど飛ばなかったけど、魂だけは多分どっか飛んでった筈!
「ほな残った体はゆっくり……しとる場合ちゃうねんな」
 とにかくスピード勝負、扱いが少々手荒になっても肉は肉だし、ミンチにする手間が省けたと思えば!

 一方のニャンゴは、まだ四頭の猛豚に追いかけられていた。
 それを分散させようと雅華とランチェスタが狙撃で気を逸らした所に、ルイが飛び出す。
 遠方からの狙撃を、目の前のルイからの攻撃と勘違いした二頭の猛豚は、標的を変えた。
 ルイはその移動経路から僅かに身体をずらし、ツヴァイハンダーを横薙ぎに振り抜く。
 刃を構えた所に自ら飛び込む形になった猛豚は半身を引き裂かれ、転がった所に待ち受けていたマコトがアルケミックパワーを乗せたウォーハンマーで頭を叩き潰した。
 もう一頭に素早く接近したメリエは、その胴体を唐竹にぶった切る。
 更に横に回り込んで斬馬刀を一閃、回転の勢いも加えて横薙ぎに斬り払った。
「一意に専心……全力っ! ウラァァァ!」
 足を止めた猛豚に、止めの一撃。
「どうした! 自慢の突進はどうした! 人一人仕留めれないで何が歪虚だ! 笑わせる!」
 これで六頭目だ。

「残りは二頭ですね」
 歪虚化せずとも豚の突進力は馬鹿にならない。
 ニャンゴはギリギリで横に跳び、行き過ぎた豚が急ブレーキをかけた所で、踏み込んで斧を振りかざした。
 その重さを乗せて、首の真上から刃を振り下ろす。
 しかし太くて固い首は斧の刃をがっしりと受け止め、斬り落とすには至らなかった。
「手伝うよ! で、お手伝いの料金もらうよ!」
 そこに飛び込んで来たソウジが頭に一撃。
「これは生姜焼き!」
 ほかほかごはんと千切りキャベツも忘れずに!

 最後の一頭はマコトのビリビリ攻撃から、リロードを終えたランチェスタの狙撃、そして最後にニャンゴの斧が、その脳天を打ち割った。
 黒い霧の様なものに包まれた猛豚の身体は、見る見るうちに縮んでいく。
 そして残ったのは――耳や尻尾、鼻や足の先など、先端部分が溶け落ちた様な子豚の姿だった。

「さあ、いらっしゃい?」
 得物を太刀に持ち替えたエリシャは、超大型の猛豚を村の外へ誘導していく。
 対処は難しくなさそうだが、村の中では建物や畑に無駄な被害を増やしかねない。
「そういえば生きたまま解体していったら死んで元に戻った時どうなるのかしらね?」
 折角だから試してみようかと、エリシャは脚の一本を狙って斬り付けた。
 だが相手は流石に体長4mクラスの超大物、丸太の様な脚はそう簡単に斬れるものではない。
 突進のスピードも殆ど変わらず、超猛豚はエリシャの脇を駆け抜けて行った。
「はっ、家畜が。大人しく解体されてなさいな」
 Uターンして戻って来たところで、再び同じ場所を狙って斬り付ける。
 切断は難しくても機動力を削いでしまえば、後は鋸でも何でも持って来て解体し放題だ。
 やがて合流した仲間達の協力も得て四肢を斬り落とし、転がした所でランチェスタがその眉間に最期の一撃を見舞う。
 結論。
「ふうん、切り身の状態で元に戻るのね」
 浸食が進んだ為か、切られた部分は殆ど原形を留めてはいなかったけれど。

 もう一頭の超猛豚は、ひらりひらりと身をかわすエステラに翻弄されていた。
「ギャラリーがいないのが、ちょっと残念っすね」
 相手との距離を正確に計り、最小限の動きで避けるついでに脚を狙って斬り付け、離脱して挑発。
 それを繰り返すうちに、猛豚の動きが目に見えて鈍って来た。
「遅れた、無事か?」
 大型を片付けたルイが合流する頃には、ほぼ無力化。
「ルイ兄、誰に向かって言ってるんすか?」
 エステラはふふんと鼻を鳴らし――でも止めは譲ってあげても良いかな、ちょっと疲れたし!
「わかった、下がってろ」
 ルイは小山の様な巨体に向き直り、スキル全部盛りでツヴァイハンダーを叩き込む。
 可食部を多く残す為には出来るだけ傷を少なく、一撃で倒す必要があるが。
「何しろこの大きさだからな」
 多少傷が増える事になっても、肉として使える状態なら料理人達が上手くやってくれるだろう。



 かくして、猛豚退治は無事に終了。
 だが、依頼はまだ終わらない。
 寧ろここからが本番だ。

「さぁて、倒した後は加工だね」
「加工……ハムとかベーコンっすかねぇ?」
 マコトの言葉にエステラが首を傾げる。
 咄嗟に浮かんだそれは加工品としては定番だし、村で採れる香草やスパイスを使えば、他にはない特色を出す事も出来そうだ。
「……塩抜きはちょっと味が薄い位、だったっすか?」
 ハムは香辛料を混ぜたピックル液を作り漬け込み、ベーコンは塩と刻んだ香辛料を塗して冷暗所で熟成させてから、どちらも燻製に。
「どちらも燻製前の塩抜き加減に注意っすね」
 結果には自信がある。
 ただし、その結果が出るまでに一週間はかかるのが難点だろうか――その分、日持ちはするのだけれど。
 他にも何か、すぐに販売に結び付ける事が出来るものはないだろうか。

「この半端な切り落とし肉も使えそうだな」
 ランチェスタはミンチにした肉を豚の腸に詰めて、ソーセージを作り始めた。
 これならハムやベーコンほどには手間も時間もかからず、それでいて保存も効く。
 元超大型の固い肉でも、これなら比較的食べやすいだろう。

「肉自体も大事だけど販路を拡大しようとすれば調理法が大事よね」
 雅華はこちらの世界にはなさそうな調理方法を広めることで需要の拡大を狙おうと考えた。
「まずはトンカツよね。豚肉に小麦粉、溶き卵、パン粉つけて油で揚げたものよ」
 ジューシーでボリュームも兼ね備えていてビールにも良く合うし、ご飯があるならカツ丼にする手もある。
「酒の肴ならカツ皿ってのもあるわ」
 醤油でトロトロに煮込んだ角煮も良いし……
「あ、決して酒のあてを増やしたいと思っているわけじゃないのよ?」
 ほんとだよ?
 でも、酒場をやってる人がいるなら、メニューに加えてくれても良いけれど……(ちらっ

 チラ見されたエリシャは、今回は見学。
「うーん、調理も交渉も一杯居ても仕方ないし私は大人しくしておくわ」
 船頭多くして船山を登る、という諺もあるし。
 でもメニューに関しては見当を提案してみるのも良い、かも?

 マコトは残っていた耳をいくつか、それに舌や内臓などを塩で洗い、香草類と一緒に茹でてみた。
 基本的な技能に問題はない筈だが、果たして現地の人々の口に合うかどうか。
 残った骨と脂も捨ててしまうのは勿体ない。
「お肉ほどの価値はないでしょうが、お料理によっては価値が出るものです」
 ニャンゴが言った。
「こちらの地方でどういった扱いがされているかは存じ上げませんが……」
 ふむふむ、脂はラードとして使う、でも骨は捨ててしまうと?
 なんと勿体ない!
「リアルブルーには骨を煮込んで麺を入れる料理があるそうです」
 確か豚骨ラーメンと言っただろうか。
 ニャンゴは以前教わったその浸かり方を思い出しながら、それっぽいものを作ってみる。
 そうそう、ラーメンにはチャーシューが付き物だが、これも豚肉だ。
「お役立て頂ければ幸いです」
 そういった知識があれば今回限りのことではなく、村の名物料理にしたり、今後の売買に役立つかもしれないし。
「他にも豚肉を揚げたもの……トンカツ、ですか。その揚げ油にラードを加えることもあるそうです」
 それを聞いたマコトは早速ラード作り。
 脂肪を細かく刻んでじっくり煮込み、冷まして固まった油脂を煮沸消毒した入れ物へ移せば完成だ。
「このまま売り物になるけど、まずはトンカツを揚げてみようか」
 確か他の油とブレンドするのが良いと聞いた様な。
 混ぜる油や割合なども色々と試してみよう。
 それに、さっきのミミガーとモツ焼きも……
「酒飲みが好みそうな部位ばかりだけど」
 ビールがあるなら試食してみるのも良いだろうか。

「試食! うん、お試しは大事だよね!」
 ソウジが早速身を乗り出して来た。
 ランチェスタ提供の、パンとチーズとワインとミネラルウォーターと共に――どうぞ、召し上がれ。
「よし、食べるよ! いただきま……!」
 え、なに? 村の人が先?
 わかりました、待ってます。
「でも早くしてね! ちゃんと残しといてね!」

 時ならぬ豚肉の大盤振る舞いに、村人達は大喜び。
 新しく提案した料理もなかなか好評だった様だが――
「んだども、こんなに食っちまったら売るもんがなくなっちまわねぇだか?」
 心配そうな村人にメリエが太鼓判を押した。
「大丈夫、こんなに美味しいんだから、量は少なくてもきっと高く売れるよ!」
「そうそう!」
 ソウジは食べる。とにかく食べる。やたらめったら食べる。
「良い肉使ってるね! さすがボクの獲ったやつ!」
 いや、キミだけじゃないけどね?
「たべたたべたー! ごちそうさま! こういう仕事ばっかりならいいなあ」
 いや、まだ仕事残ってるからね?



「さぁロキっ、お仕事だよ。頑張っていこう!」
 メリエはリヤカーを改造した簡単な荷馬車を愛馬に引かせ、クレナと共に市場へ向かう。
「こっからはアキンドの見せ場やな!」
 ほな、いきまっせー!
「こっちは、香木で燻した肉やね、エエ香りやろ? 低温で表面だけじっくり火を入れる事で程よく脂も落ちて日持ちもするし下味ついとるから、かるーく炙って齧るとこれがまた酒が進むねん」
 道行く人に試食品を手渡しながら、口八丁手八丁。
「こいつは腸詰や、もう火入れてあるさかいそのまんまでもパリッと焼いたり、ボイルしてもうまいでこれは、日持ちもするしそこらのただ捌いて焼いただけの肉と一緒にしないでや」
 その場で焼けば良い香りが立ち上り、それが更に人を呼ぶ。
「そっちのはガラ、いわゆる豚の骨や、割って香味野菜と一緒に強火で半日も煮出せばエエ出汁がでるでー? 今流行のリアルブルー料理のラーメンっちゅーのはこいつから出汁取るそうや、おなごの肌にエエ成分もたっぷりやから、おねーさん方一つどうや?」
 ラーメンもその場で作っちゃうよ!
「こっちの生肉は、ちょいと熟成したってな? そっちでもう1日ばかり腐らせんよう冷暗所においとけば、肉の熟成が進んでこれがまた旨い肉になるで、ただ食う時にしっかり焼くんやで?」
 その口車に乗せられて、ついつい大量に、しかも良い値段で買って行く客が続出したそうな。

 そして更に。
「すまない、冒険者だ。少し相談があるんだが……」
「……こう言う事情なんすけど、何とかならないっすかね?」
 ルイとエステラは繁殖用の新しい番を少しでも安く手に入れようと、近くの農場を訪れていた。
 その結果、若くて元気な番の豚が届けられる事となった。
 値段はそれなりだが、年寄りや病気の豚を掴まされる事を思えば、交渉は成功と言って良いだろう。
 何しろ、資金には多少の余裕もあるし――

 届く頃にはハムとベーコンも出来上がっているだろう。
「今回は、結構上手くできたと思うっすよ……?」
 出来たら「あーん」で食べさせてあげるから、ね?

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重体一覧

参加者一覧

  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィ(ka0140
    エルフ|13才|女性|疾影士
  • 哀しみのまな板
    滝川雅華(ka0416
    人間(蒼)|24才|女性|機導師
  • 商売上手
    クレナ(ka0451
    ドワーフ|12才|女性|機導師
  • スカイブルーゲイル
    マコト・タツナミ(ka1030
    人間(蒼)|21才|女性|機導師

  • エステラ・クルース(ka1104
    人間(紅)|17才|女性|疾影士

  • ルイ・シュヴァリエ(ka1106
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • Monotone Jem
    ニャンゴ・ニャンゴ(ka1590
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人

  • ソウジ(ka2928
    人間(紅)|13才|男性|疾影士
  • 山岳猟団即応員
    ランチェスタ・クロイツ(ka2953
    人間(紅)|25才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/17 17:41:38
アイコン 相談卓
エステラ・クルース(ka1104
人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/10/21 07:35:20