• 王臨

【王臨】雑貨屋、過去との決別を

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/03/28 09:00
完成日
2017/04/02 22:20

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●敗北は認めたくはない
 ――何も成果がないままべリアルの陣に戻れば、ただの愚か者ではないか。
 傲慢の歪虚であるエッタ・サヴィスは負傷を治したい思いと、敗走という現実にプライドを切り刻まれていた。
 プエルが何かしたのではという疑いをもって調査をした、というところまでよかったはずだ。
 新参者でありながらべリアルから兵まで与えられ、その部隊は全滅し、彼自身突然姿を消した。不審なところがあり調べると、出歩いているプエルがいたのだった。
 エッタが問い詰めようとしたとき、プエルが気付いて罠ともいえない罠を張り、ハンターに彼女が追い詰められた。敗走に敗走を重ね、現在に至る。
「どうしたらいいのかしら」
 せっかく島を出たのだから、王都に行きたいというのが本心。
 弟とともに。
 ――名前すら忘却した弟。
 小憎たらしい養子の弟ではない、賢い実の弟と。
 歪虚になれば彼もよみがえると聞かされていた。
 それにはもっと手柄を立て、強くならないといけないとも言われた。
 どうしたらいいのかもう分からない。
 だから、プエルがいるあたりに出かけた。
 ふいに馬の雑魔の足元に複数の人形がやってきて、バタフライナイフをちらつかせる。
「待ちなさい! お前たちの主ははどこにいるのです」
 エッタは人形たちに話しかける。
 人形たちは集まるとちらちらエッタを見て話しあっている様子を見せる。そして、一本の木のところに走って行った。
「あー、ずいぶんとやられているね? 僕の配下になるとかマテリアルくれるのかな?」
 プエルが木の陰から現れる。
「ち、違いますわっ!」
「そう? バイバイ」
「う、その……」
「用がないんでしょ?」
 プエルは目を細める。
 エッタはプエルが剣一本しかもっていないということに気づくが、倒せそうな気が全くしなかった。
「あ、あたくしは、嬉しかったのです。島を出られて、お、王都へ向かえるとなって」
「ふーん。余は王都に行ったことあるよ? 立派な建物がたくさんあって、大通りも何本もあってね……活気があってきれいでいいところだったよ」
「お、お前は……」
「僕は領主の跡取りだったんだ」
 エッタは青くなる。
「見返りは……あなた様が何かしようとしている計画を調べていたことを忘れる、そして手を出さないこと……」
 エッタは震えながら告げるとプエルは微笑んでうなずく。
「だから、何か……力になる物を!」
 プエルは鷹揚に構えている。
「分かった……君は古都アークエルスを知っているかい?」
「え?」
「ここから西にあるところ。リベルタース地方で砦の近くの町のことだと」
「……も、勿論ですわ」
 プエルの目がきらりと光ったのにエッタは知らない。
「……そこにね、すごい研究者がいるって話なんだ! 魔法生物とか作りまくっちゃって、結構歪虚とオトモダチになりたいって言っているよ」
「そ、それは……」
「僕は魔法生物好きじゃないからね。でもね、近づくのは大変だよ? 君は今負傷しているし」
「……わ、わかりましたわ! 確かに、強力な力を得られるなら……いったん陣に戻って負傷も……」
 エッタは生き返った心地で戻って行った。
 戻った後、傷は負のマテリアルの補給により何とかなる。周囲にある違和感に気づかないほど、前しか彼女は見ていなかった。
 羊型歪虚を引き連れ、プエルが示した地域に向かったのだった。

●青年の決断
 ライル・サヴィスは頭を抱えた。
「連絡、取れるもんなんだなぁ」
 頭を掻きながら待ち合わせ場所の確認をする。そこなら行けそうだ。義姉であるエッタについての情報を調べていたところ、ハンターは勿論のことプエルという歪虚が絡んでいると知った。
 その上、同じ陣営にいたということもあり彼女の動向を一番知っているようだった。何とか連絡とれないかとやってみたら、なぜか手紙が届いたのだ。
「情報の報酬……俺が会うのって歪虚だったはずだが」
 指定された菓子と服を買いに出かけようとして、サイズも確認する。
「シー坊が見た歪虚がエッタなんだよなぁ……でもなぁ聞くのはちょっとなぁ」
 脳裏によぎるのは打ちひしがれたシールの様子だった。
 扉が薄く開き、シールが覗いている。
「お前は何を考えているんだ!」
「……いやあ、シール君……」
「もう、演技はいいです!」
 扉がどんと開く。
「なんで、僕に聞かないの!」
「……それは……」
「僕はもう、わかってる。エッタ様が歪虚になったって。その時の状況だって理解しているよ。だから、もう……」
「……すまなかった」
「だから、僕も行くよ」
「え?」
「大した力はないけれど」
「……すまない」
「もういいよ。ライルは僕を助けてくれたのは本当だし」
 初めて会ったのは、ゴブリンたちに襲われていた村で殺されかかっているときだった。
「で、買い物?」
「あー、シー坊より小さいと思うんだが、服も」
「エッタの情報得るのに、歪虚と取引……ってなにこれ」
 二人は笑った。
 それらを買い込み、約束の場所へ出かける。
 二人が待っていると人形が二体草陰から出てくる。
「お前、二人で来るとは言わなかったぞ!」
 離れたところから少年の声がする。
「すまない。こっちは俺の弟分だ」
「あなたがどんな人か知りませんが、僕はヒール唱えるのがやっと」
「声だけでもいい、話をしてくれるなら」
 間があったあと「その子たちに報酬の半分ちょうだい」と声がする。
 人形たちが持つには大きいが包を頭の上に乗せ、前後で運んでいった。
「……可愛いというか」
「歪虚なのに……エッタと違う」
 二人がぼそぼそ話していると「うわー、おいしそう」という声が飛んできた。そのあと咳払いがある。
「で、何を聞きたいの?」
「エッタはどこにいるか?」
「リベルタース地方にいるはずだよ」
「そのあとの行動は……」
「知らないけど……それよりエッタ、アークエルスの位置知らないでしょ?」
「え?」
「余は丁寧に教えてやったんだ。砦のそばの町だって。そこにすごいいいものあるよって」
 ライルとシールは状況を理解しようと考えた。
「は?」
「古都って北の方だよね……」
 ライルとシールは呆然とする、エッタは実弟リーヤ以外はどうでもいいと思っていた節もあるが、歪虚になってもこれかと頭を抱えたい気持ちだった。
「おしまい?」
 人形たちがライルのズボンを引っ張り、残りの報酬を要求していた。
「助かった……。エッタはどうにかしないといけないし。ハンターに紛れ込むかそれとも依頼を出すか」
「とりあえず、オフィスに行こう」
 ライルとシールは急いだのだった。

 残されたプエルはひとまず荷物を持って小躍りしながら隠れ家に向かった。
「面白いことになったみたいだよ! こ、これは僕にも演出ができるってことだよね」
 状況を見に行こうと、プエルは目立たなそうな服に着替え、きちんと武器ももって出かけることにしたのだった。

リプレイ本文

●待つ
 ハンターたちは依頼人でもあるライル・サヴィスとシールと合流し、詳しい説明も聞く。
「わふ? この間のいじめっ子ですー。まだ懲りてないです?」
 アルマ・A・エインズワース(ka4901)は討伐対象のエッタ・サヴィスがプエル(kz0127)を狙っていたため「いじめっ子」と表現する。
「とりあえず、後始末はしないとな」
 ミリア・エインズワース(ka1287)は夫であるアルマの言葉にうなずくようにつぶやきながら、荷物のプエル用の菓子類を確認する。
「町の防護柵はあてにならないから……打って出て、いかにたどり着かせないようにできるかがポイントでしょうか? 防衛的先制攻撃を仕掛けると言いますか……」
 天央 観智(ka0896)は仲間と依頼人に確認するように尋ねる。町にある壁は多少の役には立つが、完ぺきと言い難い。
 町はライル達が襲撃を伝えたため、門を閉ざしている。兵士たちは待機しているのだが、半信半疑のようだった。
「エッタは倒してしまって、いいのですね?」
 ミオレスカ(ka3496)はライルに尋ねる。歪虚であるから討伐対象であるのはいいが、身内と思われる彼らに確認は必要かと考えた。
「かまわない。むしろ、手を煩わせて申し訳ない」
 ライルは頭を下げる。
「歪虚は見逃すわけにはいかない」
 南護 炎(ka6651)はライルとシールの反応を見る。身内だからかばおうとしたり、歪虚にくみする可能性を捨てていない。
「かまわない。大体……」
「エッタは自分というより、リーヤを助けるために歪虚の口車に乗って契約を結んだんだ」
「シー坊」
「言っていいはずだよ。言わないと、僕たちが裏切ることを想像する人もいるでしょ?」
 ライルは目を伏せた、シールの心の傷であり、ライルの負い目である出来事だ。
「歪虚は僕を殺していいかとエッタ様に言った。でも、僕をかばってリーヤが死んだ」
 リーヤはエッタの大切な弟。
「サヴィス家に入ったときからエッタは僕が嫌い。実弟でない養子のライルのことも嫌い」
 ライルはシールの肩をたたく。
「事情はよくわかったわ。まあ、来た敵は倒す、ってことで。あと、プエルが絡んでいるとしても藪をつついて蛇を出す趣味はないわ」
 アルスレーテ・フュラー(ka6148)は肩をすくめる。
「プエルが関係しているなら用心はしたほうがいいのかな。ライルさんとシールさん、安全は確保するから、やることはやっていいわよ。悔いは残さないこと」
 メイム(ka2290)は彼らを守り戦う。エッタやプエルが二人を狙う可能性も心配はしている。
「来ました! 敵は比較的まとまってこちらにやってきます」
 ミオレスカが言う。

●羊の群れ
「羊が一匹、羊が二匹……なーんて数えて眠るにはちょっと多いわねぇ」
 アルスレーテは面倒くさいとつぶやきながら、これを阻止しないで起こることの方が面倒くさいので倒すことに尽力する。他のハンターを見て比較的前に出る。
「足止め優先で行きますよ……」
 観智は後衛を意識しつつも、味方を巻き込まず有意義に敵に攻撃するためにまずは前に出る。マテリアルを活性化させ、魔法を発動できるように紡いでいく。
「少し前には出る感じですね……」
 ライルの行動を見ながらミオレスカは考える。依頼人の自己申告の実力によればシールは戦えない。
「まあ、そうなっちゃうのかな? あたしが前で守るよ? シールさんに関してはあたしの後ろが基本位置かな?」
「はい、メイムさん。さらに、もしものために『エア・スティーラー』の銃弾は切らさないようにします」
 【妨害射撃】のための処置にメイムはうなずく。
「それにしても……ちょっと考えれば嘘だってわかるよね」
 メイムは首をかしげる。
「あの少年を信用できると考えたのでしょうか?」
 困ったとミオレスカもいい、距離を見て矢をつがえる。
「シールさんはライルさんの近くにいてくださいねー。もしもの時は【ヒール】が使えるのですから」
 アルマに助言され、シールは神妙にうなずく。顔はこわばっている。
「メイムのそばで待機していれば、もしもなら走るでも十分行けるんじゃないか?」
 ミリアが告げる中、メイムが盾を持ってうなずく。
「無理するな、邪魔はするなよ?」
 炎は二人の挙動を見てつぶやく。
「俺はいい……シー坊は」
「大丈夫だよ、ライル。メイムさんのそばにいる」
 ミオレスカとメイムが「任せて」と異口同音に笑顔で言い、ライルを安心させる。
「来たわよ。町に近づいたら面倒だから……行くわ」
 アルスレーテは聖拳と鉄扇を構え、攻撃の準備を調える。
「言われるまでもないぞ! まずは――」
「馬をやります」
 ミリアとアルマは全力で前行く。
 ミリアは集団となっている羊たちを前に刀を思い切り振い、薙ぎ払う。
「今度は逃がさないですー!」
 アルマが馬めがけてマテリアルで作り上げた刃を振った。
「お前はっ!」
 エッタは強張った顔で、逃げようとしているが、馬雑魔はアルマに向かってしまった。そのため、エッタは飛び降りるしかなく、馬を捨てる。
「逃がすつもりはないからな」
 炎が倒れそうな馬雑魔にとどめを刺す。
「お、己」
 エッタは手に持った扇をバチンと手でたたき、一旦閉じ、ハンターと対峙する。
 その横を羊型歪虚が町に向かう。
「一気に片づけます」
 ミオレスカがフォールシュートを放つ。複数放った矢が雨のように降り注ぎ、羊型歪虚は貫かれるもの、逃げるものもあり行動が乱れる。
「確実に行くよ。シールさんは避けて」
「はい」
 メイムは背後のシールを感じつつ、近づいた敵をメイムはハンマーを大きく振り回す。
 メイムの周りにいて避けられなかった羊型歪虚は消える。
「こちらに来られても困ります。味方がいないうちに」
 観智は紡ぎ上げていた魔法を解き放つ。広い範囲を重力波が襲い、逃げられなかった羊型歪虚は霧散する。
「意外とあっさりだけどすり抜けてくる奴もいるのね、面倒!」
 アルスレーテは様子を見ながらつぶやくき、まとまってやってきた羊型歪虚に【青龍翔咬波】を放つ。数が多いため油断は禁物だと次に備える。

「どきなさい! お前たちに用はないのですわ! あたくしの言うことを聞きなさい」
 エッタはハンターを排除しようと炎に扇を振り下ろすがよけられる。
 押し寄せる羊たちは立ちふさがるハンターをなぎ倒すように進もうとする。数の暴力であり、双方無傷ではいられそうにはない。
 ハンターたちのわきをすり抜ける物もいるが、徐々に数を減らす。

 エッタに対して魔法を放つためのタイミングを計るアルマは羊型歪虚を倒し、彼女を挑発する。
「わふー、僕とお揃いになったですねぇ」
 アルマは右の義手を見せる。エッタのドレスが舞った時に異質な素材の脚を補う物が見てたのだ。
「うるさいですわ! そこをどきなさい!」
「と言われてどけるようなら、ハンターとしてここにいない。女でも容赦しない!」
 炎はエッタに鋭い切っ先を向けるが、空を切った。義足に仕掛けがあるかもしれないと警戒する。
「つまり、傲慢さに余裕がないってことか」
 エッタと初対面だが、感じ取れる。
「羊がわんさかいても、葬られるの同じ」
 ミリアが振るった一刀で羊型歪虚が一体消える。なお【ソウルトーチ】を使ったが、目の前にいるから攻撃をするという様子であまり効果を感じられない。
「エッタ、いい加減にしてくれ」
 ライルは左手の短刀と右手の剣で戦う。エッタが刃をよけきれずにライルにダメージが返る。
「お前は何っ!」
「ああ、まあ、そうだろうなぁ! あんたが忘れても、ほとんど外見が変わらないお前を忘れれない」
 エッタは混乱した様子を見せるが、町に行くという行動をとろうとする。
「シールさん、ライルさんに回復魔法を」
 アルマは告げると、エッタが近づくために間合は徐々に詰まってくる。攻撃するタイミングが来たととらえる。
「ミリア、しばらくよろしくお願いしますよー」
「分かった」
「わふっ」
 アルマは機導術を使いマテリアルを増幅し始めた。

●さようなら
 観智の【グラビティフォール】や【ファイアボール】によってかなりの数が減っていく。
「魔法が切れたときが怖いですね」
 とはいえ個別でも確実に倒しており、観智の目からどうにか持ちこたえると見えた。
 ミオレスカは範囲での攻撃から、逃したものを狙うように切り替える。
「あたしは前に行くよ」
「シールさんたちのことは私も見ています。まずはエッタですね」
「うん、リーダー格みたいだしね」
 メイムは前に出る、羊型歪虚を倒しつつ進む。アルマがエッタを攻撃する際に攻撃を合わせるつもりもある。
 羊型歪虚をアルマに近づけさせないようにミリアは攻撃をしている。
「減っているはずなのに、湧いてくる!」
 うんざりして悲鳴に近い声を上げた。
「一つだけまず片付けます!」
 アルマはエッタの隙を見て接敵し、【禁じ手《蒼断》】を放つ。力をため込んでいたマテリアルの刃は鋭くエッタに向かう。
 エッタはそれを食らってしまい重いダメージにうめく。
「ただで済まないですわよ!」
 地の底から響くような声音で恨み言を吐く。直後にアルマに強力なダメージの反射が行われた。
「っ……」
 アルマの脳裏には待ってくれる友の顔が浮かぶが、意識が途切れた。
「走れ、ロニ!」
 メイムの愛猫がマテリアルをまとい、エッタを貫くように走り抜く。
「っつうう」
 メイムにも反射された力はあるが、耐えられないものではなかった。
 炎がとどめを刺そうとしているが、「ライルに」とメイムが鋭く声をかける。炎は近づく羊型歪虚に切っ先を変える。
「……エッタ、リーヤはどうやっても戻ってこないんだ」
「リーヤって何?」
「そうか、忘却しているのか……」
 悲しそうなそれでいて安堵しているにも見えるライルは困惑して動きを止めていたエッタを刺した。
 エッタは断末魔を放った後、塵になり消える。
 そこにつっこんでくる羊型歪虚にライルは反応できない。
「ライルさん」
 ミオレスカの声と銃声が響く。
「突っ立ってないで。まだ、面倒は終わってないの」
 アルスレーテは舞を意識した動きですっと跳んで近づき、羊型歪虚に一閃を食らわせる。
「そうだ、まあ終わりじゃねぇ。オラオラ!! 行くぜ!」
 炎の気勢により、ハンターは最後の仕事にとりかかった。

●頑張る
 プエルは町に近づく羊型歪虚を葬る。ハンターをすり抜けた運が良かったものが何体かいた。
「マテリアルちょっとだけか……これは、疲れたハンターを殺せばいいのかな? 閉じこもっている町を狙えばいいのかもしれない」
 そわそわと計画の外を考え始める。
「あ、こいつらの毛を刈るとどうなるんだろう!」
 違うことを考え、ワクワクし始めた。

 観智は背後から視線を感じ、振り返る。
 木の陰に剣を持った少年と木の枝を持った人形がいる。
「……」
「……」
 目があった。
 互いに無言。
 ――どうしよう。
 戦闘に集中したい。
「どうかしましたか?」
 後方に下がったミオレスカが近くの敵を倒し、観智に声をかける。
「いえ、あれは」
「……あの少年は」
 ミオレスカは「来ないなら放置したほうがいい」と判断する。
「こちらの消耗もありますし、侮ると危険です。れちたんのように消えてもらいたいのですけれど」
「ですよね、なら、今は無視すればよいですか」
 前を向いた瞬間、やってこられても厄介だが。
「羊もほぼ終わりそうですし、そのまま牽制していてくださっていてかまいません」
「そうなりますか」
 観智は町に近づくものがあれば残りの魔法を放つつもりで、プエルの見張りという妙な役割を担った。
 暫くすると見える範囲の羊型歪虚を倒し終えた。
「アルマ……」
「大丈夫よ。衝撃で倒れているだけと思うから」
 ミリアはアルスレーテの治療を見守る。マテリアルの光がアルマを包む。
「……目を覚ますの待つだけ……」
「そうか……良かった。ん?」
 安堵したミリアはプエルに気づく。
「よお、久しぶり元気だったか」
 近づきながら声をかけるミリア。
 プエルは硬直後、観智から目を離しミリアに向ける。ちょっと胸を張った。
「余はこれから中に入って人間を襲うのも考えたが、それは面白くない……ドラマがない! って、余の話を聞いて」
 ミリアがハグをしようとしたためプエルが慌てて回避する。
「ほら、菓子」
「ちがっ! 余の話を!」
「元気そうだな」
「あ、そっか、ハグされたら、そのままナイフでさくーってすれば」
 プエルはぽそりと計画を述べる。
「ほほー?」
「ミリアだけずるいですうう」
 地を這うような声とともに復活したアルマが近寄ってくる。背後でアルスレーテが「元気そうでよかった」とアルマに生暖かい視線を送っている。
「こいつをさくーってするの簡単?」
 口では言っているがプエルはすぐに動かない。
「ふふふ、無に帰すために余はもっと頑張るんだ! お前たちは『あすが明るい日とは限らない!』」
 プエルはそくそくと走って消えた。後ろを50センチほどで三頭身の布でできた人形たちが木の枝を持ったままついてった。
「……プエルさん、僕とお友達に……と聞けませんでした」
 ふらりとアルマが倒れる。
「いきなり動いたら駄目だろ」
 ミリアが支えた。
「歪虚らしく暗躍することを覚えたのでしょうか」
 プエルが走っていったのを見送りミオレスカは不安そうにつぶやく。肩をメイムはポンとたたく。
「そうかもしれないけど、あの立ち去り方、どう見てもそこまで大仰には思えない」
 メイムは第三者の立場の見解を述べるとミオレスカも「それはそうですね」と言いつつも不安は募る。
「まあ、放置して、マテリアル吸収して強くなったというのは迷惑だし、冷や汗かいているぽいから、今のうちに討伐したほうがいいのは確かかも?」
 メイムの言葉にミオレスカはうなずく。
「はあ、疲れた。羊数えて眠る……とはいえ、これは覚醒して疲労して、今晩はよく眠れそうね。それにしても、あれは結局何しに来たの?」
 アルスレーテの問い答えられるものはいないが、害はなかったから良しとなる。
「ありがとうございました」
 ライルとシールが頭を下げる。
「下げることないだろう。お前たちは身内だからこそ自分たちの手でどうにかしたいと、我々を雇った。ついでに町も守った。さっきの歪虚に踊らされたとしても、それ以上の話はないし、歪虚を消す一助となったんだ」
 炎は一時は疑った二人を見る。二人が晴れ晴れとしている顔をしているため、彼らのまっすぐな心は炎にも届いた。

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  • タホ郷に新たな血を
    メイムka2290
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカka3496
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワースka4901

重体一覧

参加者一覧

  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • お約束のツナサンド
    アルスレーテ・フュラー(ka6148
    エルフ|27才|女性|格闘士
  • 覚悟の漢
    南護 炎(ka6651
    人間(蒼)|18才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談・提案・表明卓
ミリア・ラスティソード(ka1287
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/04/01 10:38:40
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/03/26 06:24:22