ゲスト
(ka0000)
大きな少女と搾乳体験会
マスター:春野紅葉
- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
- 500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/03/24 19:00
- 完成日
- 2017/04/06 22:20
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●晴れた日の一日に
ユリアがいつも通り、羊の放牧の仕事を終え、依頼主の老人の下へ挨拶に戻ると、老人がにこにこと人の好い笑みを浮かべて手招きをしていた。老人の横には一人の男性がいた。
「何かありましたか?」
「ユリアお嬢ちゃん。君に彼を紹介しようと思っての」
「初めまして、ユリアちゃん。名前は聞いてるよ。西の荒野の元凶をハンターさん達と倒したんだって?」
「私はほとんど何もしていません。ハンターの皆さんのおかげですから」
差し出された手を握り返す。見た目通りやや柔らかい印象を受ける、壮年の手だ。農業従事者ではないのだろう。彼らの皮膚はもう少し固く分厚い。
「こいつは儂の甥っ子での? 少し前まで帝都で働いてたんじゃが、奥さんの病状が悪化したのと両親が亡くなったもんでこっちに最近来たんじゃ」
「なるほど……お悔やみ申し上げます。それで私に何か御用ですか?」
「ええ、実は君やハンターさんに手伝ってほしいんだ。ささ、詳細は中で」
「手伝ってほしい事……ですか?」
言って、老人と共に家の奥へと歩いて行く。ユリアはその後を黙ってついて行った。家の中に案内されるのはお仕事の前に面接のような物をした時ぐらいで、少し懐かしい気持ちにさえなってくる。
木製の床を踏むコツコツと言う音が小気味よく鳴る。応接間らしき場所に通されると、下座へとそっと座った。
「ええっと、どこまで話したかな……ああ、お手伝いをお願いしただけだね?」
男性の言葉に小さく頷くと、男性が人のよさそうな笑みを見せる。老人と血のつながりがあることを窺わせる、よく似た笑みだ。
「先程、伯父も言ってたけど、僕の両親は最近になって亡くなってね。僕が家業を継いだんだけど、いかんせん僕はこっち方面の仕事をしたことが無くてね」
「……なるほど。ところで、何をなさっているのですか?」
「うん? あぁ! まだ言ってなかったかな。ごめんごめん。うちは分かりやすく言うと乳牛を使って作業をしてるんだ。乳搾りだとか、それを元にした乳製品の製作だね」
「つまり、そのお仕事を私がお手伝いすればいいんですか?」
「ほっほっ。ユリアちゃんもそろそろ儂のとこの作業にも慣れて来たじゃろうし、そろそろ別の仕事もしてみんかと思っての?」
「そういうことですか……良いんですか?」
「ちょうど人手も欲しかったからね。頼めるかい?」
「はいっ! 私が出来る事でしたら! 何でも協力させてください!」
胸をなでおろす男性を見て、ユリアは優しく微笑んだ。
色々あったけれど、充実した日々が返ってきたことは、こうした小さな日常からも感じられて、どこでも笑みがこぼれてしまう。
翌日、男性に連れられたユリアは彼が経営するという牧場へと足を運んだ。町からは東に少し行ったところにあるそこは、一定の範囲を柵で覆った敷地。
「どれくらいの広さがあるんですか?」
牧場の中に入り、足元の牧草の匂いにどこか不思議な心地になりながら、前を歩く男性に問い掛ける。
「さぁ……どれくらいだったかなぁ。まぁ、でも……20頭の牛が普通に生活できる程度には広いかな」
「20頭ですか!」
ぎょっと眼を見開いて言うと、男性がおかしそうに笑う。
「まぁ、一日に全員の牛の乳を全て搾るわけじゃないからね。ささっ、ここだ」
言って男性が案内してくれたのは、牧場の中心辺りにある長方形の建物だった。
「ここは?」
「ここで乳を搾る牛だけを隔離していてね」
「なるほど」
そのまま中に入ると、中では干し草を食む乳牛たちがユリアを歓迎するかのようにモーと声を出す。
「ささっ、この子から行こうか」
そう言う男性に導かれ、一頭の牛の下へと訪れ、言われるがままに牛の下に潜り込んだ。
●町興しを再び
次の日、老人の部屋でユリアは男性と話し合いをしていた。
「どうしたんだい? ユリアちゃん」
「はい。実は今回はご相談がありまして」
「相談?」
「はい……その、昨日のことで分かったのですが、正直、私だけではやることが多すぎて難しいと思いました。なので、ハンターの皆さんにもご協力を仰ぐのはいかがでしょうか?」
「ハンターさんの協力?」
「はい! ハンターの皆さんにお仕事のご協力を頼むんです。そうすればきっと、お仕事が捗るだけではなく、町おこしの一環にもなると思います!」
「町興し? ああ、そういえば、ユリアちゃんは以前に町興しのためにお祭りを催してくれていたね……ふむ、その成功経験もあるし、分かった。試しに1回だけ、やってみようか」
「本当ですか! ありがとうございます!」
少し悩ましげな表情を見せた後、男性が深く頷く。ユリアは顔を満面の笑みに変えた。
「うん、でも一応、1回だけだよ? それで受けが良かったら定期的にしよう」
「はい! じゃあ私、ハンターオフィスに行ってきます!」
ユリアは立ち上がり、その場を後にした。
ユリアがいつも通り、羊の放牧の仕事を終え、依頼主の老人の下へ挨拶に戻ると、老人がにこにこと人の好い笑みを浮かべて手招きをしていた。老人の横には一人の男性がいた。
「何かありましたか?」
「ユリアお嬢ちゃん。君に彼を紹介しようと思っての」
「初めまして、ユリアちゃん。名前は聞いてるよ。西の荒野の元凶をハンターさん達と倒したんだって?」
「私はほとんど何もしていません。ハンターの皆さんのおかげですから」
差し出された手を握り返す。見た目通りやや柔らかい印象を受ける、壮年の手だ。農業従事者ではないのだろう。彼らの皮膚はもう少し固く分厚い。
「こいつは儂の甥っ子での? 少し前まで帝都で働いてたんじゃが、奥さんの病状が悪化したのと両親が亡くなったもんでこっちに最近来たんじゃ」
「なるほど……お悔やみ申し上げます。それで私に何か御用ですか?」
「ええ、実は君やハンターさんに手伝ってほしいんだ。ささ、詳細は中で」
「手伝ってほしい事……ですか?」
言って、老人と共に家の奥へと歩いて行く。ユリアはその後を黙ってついて行った。家の中に案内されるのはお仕事の前に面接のような物をした時ぐらいで、少し懐かしい気持ちにさえなってくる。
木製の床を踏むコツコツと言う音が小気味よく鳴る。応接間らしき場所に通されると、下座へとそっと座った。
「ええっと、どこまで話したかな……ああ、お手伝いをお願いしただけだね?」
男性の言葉に小さく頷くと、男性が人のよさそうな笑みを見せる。老人と血のつながりがあることを窺わせる、よく似た笑みだ。
「先程、伯父も言ってたけど、僕の両親は最近になって亡くなってね。僕が家業を継いだんだけど、いかんせん僕はこっち方面の仕事をしたことが無くてね」
「……なるほど。ところで、何をなさっているのですか?」
「うん? あぁ! まだ言ってなかったかな。ごめんごめん。うちは分かりやすく言うと乳牛を使って作業をしてるんだ。乳搾りだとか、それを元にした乳製品の製作だね」
「つまり、そのお仕事を私がお手伝いすればいいんですか?」
「ほっほっ。ユリアちゃんもそろそろ儂のとこの作業にも慣れて来たじゃろうし、そろそろ別の仕事もしてみんかと思っての?」
「そういうことですか……良いんですか?」
「ちょうど人手も欲しかったからね。頼めるかい?」
「はいっ! 私が出来る事でしたら! 何でも協力させてください!」
胸をなでおろす男性を見て、ユリアは優しく微笑んだ。
色々あったけれど、充実した日々が返ってきたことは、こうした小さな日常からも感じられて、どこでも笑みがこぼれてしまう。
翌日、男性に連れられたユリアは彼が経営するという牧場へと足を運んだ。町からは東に少し行ったところにあるそこは、一定の範囲を柵で覆った敷地。
「どれくらいの広さがあるんですか?」
牧場の中に入り、足元の牧草の匂いにどこか不思議な心地になりながら、前を歩く男性に問い掛ける。
「さぁ……どれくらいだったかなぁ。まぁ、でも……20頭の牛が普通に生活できる程度には広いかな」
「20頭ですか!」
ぎょっと眼を見開いて言うと、男性がおかしそうに笑う。
「まぁ、一日に全員の牛の乳を全て搾るわけじゃないからね。ささっ、ここだ」
言って男性が案内してくれたのは、牧場の中心辺りにある長方形の建物だった。
「ここは?」
「ここで乳を搾る牛だけを隔離していてね」
「なるほど」
そのまま中に入ると、中では干し草を食む乳牛たちがユリアを歓迎するかのようにモーと声を出す。
「ささっ、この子から行こうか」
そう言う男性に導かれ、一頭の牛の下へと訪れ、言われるがままに牛の下に潜り込んだ。
●町興しを再び
次の日、老人の部屋でユリアは男性と話し合いをしていた。
「どうしたんだい? ユリアちゃん」
「はい。実は今回はご相談がありまして」
「相談?」
「はい……その、昨日のことで分かったのですが、正直、私だけではやることが多すぎて難しいと思いました。なので、ハンターの皆さんにもご協力を仰ぐのはいかがでしょうか?」
「ハンターさんの協力?」
「はい! ハンターの皆さんにお仕事のご協力を頼むんです。そうすればきっと、お仕事が捗るだけではなく、町おこしの一環にもなると思います!」
「町興し? ああ、そういえば、ユリアちゃんは以前に町興しのためにお祭りを催してくれていたね……ふむ、その成功経験もあるし、分かった。試しに1回だけ、やってみようか」
「本当ですか! ありがとうございます!」
少し悩ましげな表情を見せた後、男性が深く頷く。ユリアは顔を満面の笑みに変えた。
「うん、でも一応、1回だけだよ? それで受けが良かったら定期的にしよう」
「はい! じゃあ私、ハンターオフィスに行ってきます!」
ユリアは立ち上がり、その場を後にした。
リプレイ本文
●
町から出て東に行ったところに広大な敷地を有すその牧場には、珍しく多くの人々がいた。牛舎を背に、ユリアは名簿に記された名前を確認していた。
「よく晴れたね……これは体験会日和だね?」
名前をユリアに伝えた巌 技藝(ka5675)は空を見上げて呟く。視界を覆うは青い空。日差しが照りつけるだけではなく、少しばかり雲があり、ほんのりと気持ちよい風が吹き、ポニーテールにまとめられた髪が風に揺らぐ。
こちらにまで聞こえてくる牛の鳴き声も、どこか気持ちよさそうである。
「んー、牧場体験しておいしいものを頂くってなかなかいいイベントじゃないかしらぁ?」
中々に蠱惑的な衣装に身を包み、堂々とした様子で語るのはラティール・ロセリ(ka6488)だ。
「ラティールに誘われて参加したけど……牧場のお手伝いなんだな。力仕事は任せてくれ」
そんな彼女の隣に立つのはNo.0(ka4640)だ。身体にぴったりとフィットするシャツの形状故か、その逞しい肉体はラティールと同じように堂々たる姿勢である。
「きゃ~、ユリアちゃんお久しぶりですぅ。元気でしたかぁ?」
星野 ハナ(ka5852)が嬉しそうに駆け寄ってくると、ユリアも笑いながら返事を交わす。
そのすぐ後には火艶 静 (ka5731)がいた。
「ユリアちゃん、元気にしていたようで良かったですよ。今日はお料理の方で協力しますね」
そう言って笑う静にも笑って、ユリアは頷いた。
「参加して頂いてありがとうございます。いつもお世話になってます」
ぺこりと頭を下げる少女を二人がそれぞれに優しげな声で語り掛ける。その後も少しのあいだ談笑を交わしたユリアは時計をちらりと見て、名残惜しそうに二人から少し離れて、少し息を吸った。
「皆さん、集まっていただいてありがとうございます。それじゃあ早速、体験会を行なわせていただきたいと思います!」
吸った息の全てを吐き出す勢いで、集まっているハンター達と、それ以外の数人の町人たちへ向けて告げた。
「まずは、牛舎にご案内させていただきまして、搾乳体験をして頂こうと思います」
そう言ったユリアの言葉に少しざわついた者達がいた。
「えっ? 牧場体験って……搾乳? え、えっとぉ……」
やや俯いてその後、顔を振って意識しないようにと自らに言い聞かせるラティールの横でも、No.0が同じように物静かながらにどこかそわそわとした様子を見せる。
●
そのまま一行は牛舎へ移動していた。木で囲まれたどこでも見かけられるであろうごくごく平凡な牛舎の中で、ユリアはあらかじめ聞いていた乳搾りが可能な牛たちの元へ一同を誘導し終えると、ハナに手招きされ、彼女の隣へと赴いた。
「乳搾りだと興味持ちそうなのはぁ、そう言うお手伝いをしたことがない町の子供位でしょうかぁ。ターゲットを絞らなくても人がくる内容にするかぁ、きっちりお金を落とす層に絞る方が人は集まると思いますぅ」
ユリアへ話題を振りながら丁寧な手つきで乳を絞るハナに、ユリアはなるほどと感心しながらそれを聞いていた。
「きっちりお金を落とす層ですか……」
悩ましげに難しい顔をするユリアを、ハナは優しい笑みを浮かべながら見つめ、例えばと例を出していく。
No.0は淡々と搾乳作業を行なっていた。
「……っ」
横から感じる視線に横目をやれば、ばっちりとラティールと視線が合い、思わず再び前を向く。その脳裏にむくむくと成長するのは、ある意味健康的というべきか、あらぬ妄想であった。
それを持ち前の精神力で必死に抑えつけながら、作業をより一層丁寧にこなしていく。
しかし、隣でNo.0の様子を見ながら搾乳をしていたラティールはたまったものではなかった。丹念に、丁寧に、そして優しく牛の乳を搾るNo.0の姿が、自らの胸部にたわわと実ったそれと被ってしまう。ちらりちらりとNo.0を見つめては、ときおり牛が漏らすモォという気持ちよさげな声も相まって妄想が加速していく。
少し顔を赤らめながら彼女はそれでも牛の乳を搾っていった。
「これが終わったらバーベキューなの、むふー」
軽快に――いや、ある種、豪快とさえいえる様子で牛の乳を搾りながら、ディーナ・フェルミ(ka5843)は来るバーベキューに顔を赤らめ目を輝かせていた。豪快ではありながら、それでいて牛には無理をさせていないのか、暴れる様子はない。
愛らしい印象の彼女の姿からはかなりのギャップがあるその豪快さと巧みな乳搾りは、町人たちや、隣でせっせと乳を搾っていく技藝を驚かせていた。
一同にそれぞれの思い出を残しながら、乳搾りが終了していく。
●
たっぷりと牛から乳を搾った面々は、そのまま少し移動していた。
木製の長机が4つほど並び、机の上にはやや楕円を描くような容器が置いてある。それ以外にもオーブンのような代物まで存在している他、鉄網を置いた正方形のバーベキュー用の直火焼き装置などが設置されている。
「機導式冷蔵庫……ですか?」
「ええ……せっかく、牧場で新鮮なミルクが作れるんですから、それをアイスクリームにして売るというのはどうでしょう……と」
牛乳を容器に入れてぶんぶんと振りながらユリアが問いかけると、静はそう答えた。
「なるほど! たしかに良いかもしれないです!」
ぱぁっと華やぐようなユリアの表情に、静も笑みをこぼす。
「あとは……オーブンもありますしクッキーとかにするのもいいかも知れないですね」
「なるほど……」
バターになる前の、固形と液体の入り混じったような物をこねくり回しながら、ユリアはメモを取っていく。
ラティールとNo.0のペアは二人なりの和気藹々とした雰囲気を作りだしてバターを作っていた。妄想を膨らませ過ぎて、いつの間にか吹っ切れたラティールはNo.0の隣にべったりとくっつき、しかし邪魔にならないように作業を進めていく。
各々が各々に楽しみながらバターを作り、やがて、バターの美味しそうな匂いが辺りに充満していった。
●
「やったのやったのとうとうバーベキューのお時間なのー」
まるで尻尾が見えるかのような嬉々とした表情で口から涎を垂らしそうになっているのはディーナだった。目の前に広がる直火焼きの網の上では、肉と野菜に彩られた串が焼かれている。
「ふぉぉ、お肉がジュって言ったの辛抱たまらないのー」
よく焼けて油が滴る肉に目を輝かせると、両手に串を持つと、ぱくぱくと凄まじい速度でそれを食べていく。使用済みの串入れに、瞬く間にぽんぽんと串が落ちていく様は、圧巻でさえあった。
「二刀流じゃ足りないの。あと腕が4本あったらなのー」
肉を3本食べて1本それ以外という、栄養バランスの概念を捨て去ったかのごとき豪快な食事であった。それに加えてその愛らしい細身な体のいったいどこへ消えていくのか分からない量を食べていく様は、同じ机を偶々使っていた町人たちにどうしてかもっと食べさせてあげたいという衝動のような物を呼び起こさせていた。
一度はずかしさを通り越してしまったラティールは、No.0と2人だけの空間を為していた。
「レイヴェン、あーん」
好きであるという感情に正直に、ぐいぐいと心身ともにべったりとレイヴェンにくっついて、彼の口元へ肉串を持って行く。No.0がそれを受け入れてもきゅもきゅと噛みしめれば、今度は野菜を、その口に持って行く。
しっかりと栄養バランスのとれた順番を設けて、彼の口へと持って行く。
そんな2人の空間を邪魔することは、他の参加者には到底できなかった。
肉串や玉蜀黍に醤油を塗りながら、ハナはユリアと相談を重ねていた。
「ここだけのものかこのシーズンだけのものか、そういうものは万人の胃袋にうったえかけますねぇ。バーベキュー施設にここのチーズを使ったフォンデュとか、ハーブ入りソーセージとかだとまだ弱いかなぁ……はい、どうぞぉ」
「そうなんですか? あっ、ありがとうございます。ハナさんもどうぞ」
差し出された肉串の代わりに、ユリアは自分が焼いた野菜と肉が折り重なった串を差し出した。
「うーん。たとえば、ここの物がどれだけ美味しいかがアピールできたりしたらもっと変わるでしょうかぁ」
一口たべて、飲み込んだ後、ハナがそう呟く。
「皆さん、ピザが焼き上がりました」
オーブンからピザを取り出した静がそう声をかける。美味しそうなチーズの香ばしさが辺りに漂って、ユリアの鼻梁を刺激する。
「美味しそうなのー」
香りに惹かれたのか、ディーナがそちらへと歩み寄る。ユリアはそれを見ながらハナに連れられるようにそちらへと足を運ぶ。
「……美味しいです!」
串を横に持ちながら、もう一方の手でピザを口に運んだユリアは、目を輝かせて言った。
「他にも今回作った物はレシピを作っておきました」
「ありがとうございます、静さん。とってもおいしいですし、次回以降にはそれを参考にさせていただきます!」
日が赤みを帯びていくまで和気あいあいとした牧場体験会は、続いた。各々の胸に確かな思い出を残して、その一日は終わりを告げていく。
町から出て東に行ったところに広大な敷地を有すその牧場には、珍しく多くの人々がいた。牛舎を背に、ユリアは名簿に記された名前を確認していた。
「よく晴れたね……これは体験会日和だね?」
名前をユリアに伝えた巌 技藝(ka5675)は空を見上げて呟く。視界を覆うは青い空。日差しが照りつけるだけではなく、少しばかり雲があり、ほんのりと気持ちよい風が吹き、ポニーテールにまとめられた髪が風に揺らぐ。
こちらにまで聞こえてくる牛の鳴き声も、どこか気持ちよさそうである。
「んー、牧場体験しておいしいものを頂くってなかなかいいイベントじゃないかしらぁ?」
中々に蠱惑的な衣装に身を包み、堂々とした様子で語るのはラティール・ロセリ(ka6488)だ。
「ラティールに誘われて参加したけど……牧場のお手伝いなんだな。力仕事は任せてくれ」
そんな彼女の隣に立つのはNo.0(ka4640)だ。身体にぴったりとフィットするシャツの形状故か、その逞しい肉体はラティールと同じように堂々たる姿勢である。
「きゃ~、ユリアちゃんお久しぶりですぅ。元気でしたかぁ?」
星野 ハナ(ka5852)が嬉しそうに駆け寄ってくると、ユリアも笑いながら返事を交わす。
そのすぐ後には火艶 静 (ka5731)がいた。
「ユリアちゃん、元気にしていたようで良かったですよ。今日はお料理の方で協力しますね」
そう言って笑う静にも笑って、ユリアは頷いた。
「参加して頂いてありがとうございます。いつもお世話になってます」
ぺこりと頭を下げる少女を二人がそれぞれに優しげな声で語り掛ける。その後も少しのあいだ談笑を交わしたユリアは時計をちらりと見て、名残惜しそうに二人から少し離れて、少し息を吸った。
「皆さん、集まっていただいてありがとうございます。それじゃあ早速、体験会を行なわせていただきたいと思います!」
吸った息の全てを吐き出す勢いで、集まっているハンター達と、それ以外の数人の町人たちへ向けて告げた。
「まずは、牛舎にご案内させていただきまして、搾乳体験をして頂こうと思います」
そう言ったユリアの言葉に少しざわついた者達がいた。
「えっ? 牧場体験って……搾乳? え、えっとぉ……」
やや俯いてその後、顔を振って意識しないようにと自らに言い聞かせるラティールの横でも、No.0が同じように物静かながらにどこかそわそわとした様子を見せる。
●
そのまま一行は牛舎へ移動していた。木で囲まれたどこでも見かけられるであろうごくごく平凡な牛舎の中で、ユリアはあらかじめ聞いていた乳搾りが可能な牛たちの元へ一同を誘導し終えると、ハナに手招きされ、彼女の隣へと赴いた。
「乳搾りだと興味持ちそうなのはぁ、そう言うお手伝いをしたことがない町の子供位でしょうかぁ。ターゲットを絞らなくても人がくる内容にするかぁ、きっちりお金を落とす層に絞る方が人は集まると思いますぅ」
ユリアへ話題を振りながら丁寧な手つきで乳を絞るハナに、ユリアはなるほどと感心しながらそれを聞いていた。
「きっちりお金を落とす層ですか……」
悩ましげに難しい顔をするユリアを、ハナは優しい笑みを浮かべながら見つめ、例えばと例を出していく。
No.0は淡々と搾乳作業を行なっていた。
「……っ」
横から感じる視線に横目をやれば、ばっちりとラティールと視線が合い、思わず再び前を向く。その脳裏にむくむくと成長するのは、ある意味健康的というべきか、あらぬ妄想であった。
それを持ち前の精神力で必死に抑えつけながら、作業をより一層丁寧にこなしていく。
しかし、隣でNo.0の様子を見ながら搾乳をしていたラティールはたまったものではなかった。丹念に、丁寧に、そして優しく牛の乳を搾るNo.0の姿が、自らの胸部にたわわと実ったそれと被ってしまう。ちらりちらりとNo.0を見つめては、ときおり牛が漏らすモォという気持ちよさげな声も相まって妄想が加速していく。
少し顔を赤らめながら彼女はそれでも牛の乳を搾っていった。
「これが終わったらバーベキューなの、むふー」
軽快に――いや、ある種、豪快とさえいえる様子で牛の乳を搾りながら、ディーナ・フェルミ(ka5843)は来るバーベキューに顔を赤らめ目を輝かせていた。豪快ではありながら、それでいて牛には無理をさせていないのか、暴れる様子はない。
愛らしい印象の彼女の姿からはかなりのギャップがあるその豪快さと巧みな乳搾りは、町人たちや、隣でせっせと乳を搾っていく技藝を驚かせていた。
一同にそれぞれの思い出を残しながら、乳搾りが終了していく。
●
たっぷりと牛から乳を搾った面々は、そのまま少し移動していた。
木製の長机が4つほど並び、机の上にはやや楕円を描くような容器が置いてある。それ以外にもオーブンのような代物まで存在している他、鉄網を置いた正方形のバーベキュー用の直火焼き装置などが設置されている。
「機導式冷蔵庫……ですか?」
「ええ……せっかく、牧場で新鮮なミルクが作れるんですから、それをアイスクリームにして売るというのはどうでしょう……と」
牛乳を容器に入れてぶんぶんと振りながらユリアが問いかけると、静はそう答えた。
「なるほど! たしかに良いかもしれないです!」
ぱぁっと華やぐようなユリアの表情に、静も笑みをこぼす。
「あとは……オーブンもありますしクッキーとかにするのもいいかも知れないですね」
「なるほど……」
バターになる前の、固形と液体の入り混じったような物をこねくり回しながら、ユリアはメモを取っていく。
ラティールとNo.0のペアは二人なりの和気藹々とした雰囲気を作りだしてバターを作っていた。妄想を膨らませ過ぎて、いつの間にか吹っ切れたラティールはNo.0の隣にべったりとくっつき、しかし邪魔にならないように作業を進めていく。
各々が各々に楽しみながらバターを作り、やがて、バターの美味しそうな匂いが辺りに充満していった。
●
「やったのやったのとうとうバーベキューのお時間なのー」
まるで尻尾が見えるかのような嬉々とした表情で口から涎を垂らしそうになっているのはディーナだった。目の前に広がる直火焼きの網の上では、肉と野菜に彩られた串が焼かれている。
「ふぉぉ、お肉がジュって言ったの辛抱たまらないのー」
よく焼けて油が滴る肉に目を輝かせると、両手に串を持つと、ぱくぱくと凄まじい速度でそれを食べていく。使用済みの串入れに、瞬く間にぽんぽんと串が落ちていく様は、圧巻でさえあった。
「二刀流じゃ足りないの。あと腕が4本あったらなのー」
肉を3本食べて1本それ以外という、栄養バランスの概念を捨て去ったかのごとき豪快な食事であった。それに加えてその愛らしい細身な体のいったいどこへ消えていくのか分からない量を食べていく様は、同じ机を偶々使っていた町人たちにどうしてかもっと食べさせてあげたいという衝動のような物を呼び起こさせていた。
一度はずかしさを通り越してしまったラティールは、No.0と2人だけの空間を為していた。
「レイヴェン、あーん」
好きであるという感情に正直に、ぐいぐいと心身ともにべったりとレイヴェンにくっついて、彼の口元へ肉串を持って行く。No.0がそれを受け入れてもきゅもきゅと噛みしめれば、今度は野菜を、その口に持って行く。
しっかりと栄養バランスのとれた順番を設けて、彼の口へと持って行く。
そんな2人の空間を邪魔することは、他の参加者には到底できなかった。
肉串や玉蜀黍に醤油を塗りながら、ハナはユリアと相談を重ねていた。
「ここだけのものかこのシーズンだけのものか、そういうものは万人の胃袋にうったえかけますねぇ。バーベキュー施設にここのチーズを使ったフォンデュとか、ハーブ入りソーセージとかだとまだ弱いかなぁ……はい、どうぞぉ」
「そうなんですか? あっ、ありがとうございます。ハナさんもどうぞ」
差し出された肉串の代わりに、ユリアは自分が焼いた野菜と肉が折り重なった串を差し出した。
「うーん。たとえば、ここの物がどれだけ美味しいかがアピールできたりしたらもっと変わるでしょうかぁ」
一口たべて、飲み込んだ後、ハナがそう呟く。
「皆さん、ピザが焼き上がりました」
オーブンからピザを取り出した静がそう声をかける。美味しそうなチーズの香ばしさが辺りに漂って、ユリアの鼻梁を刺激する。
「美味しそうなのー」
香りに惹かれたのか、ディーナがそちらへと歩み寄る。ユリアはそれを見ながらハナに連れられるようにそちらへと足を運ぶ。
「……美味しいです!」
串を横に持ちながら、もう一方の手でピザを口に運んだユリアは、目を輝かせて言った。
「他にも今回作った物はレシピを作っておきました」
「ありがとうございます、静さん。とってもおいしいですし、次回以降にはそれを参考にさせていただきます!」
日が赤みを帯びていくまで和気あいあいとした牧場体験会は、続いた。各々の胸に確かな思い出を残して、その一日は終わりを告げていく。
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 |
||
乳搾りかおやつかデートか? ディーナ・フェルミ(ka5843) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/03/23 22:13:50 |