• 王臨

【王臨】虚無を走る黒大公

マスター:鹿野やいと

シナリオ形態
イベント
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/03/27 19:00
完成日
2017/04/12 19:04

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 黒大公ベリアル来襲の知らせを受けた王国軍は、すぐさま即応部隊である騎士団赤の隊の出撃を命じた。同時に近隣を所領とする貴族より兵力を募り、ベリアルとその軍勢に対して防衛線を展開した。既に一度撃退した相手である以上、次こそは必殺と意気込む王国軍ではあったが、その空気はベリアルの様相の変化が報告されるとすぐに消え失せていった。
 ベリアルの変調は凄まじかった。黒化して巨大化しているのみならず、全ての機能が変容している。それが見かけだけではないことはすぐに証明された。
 ベリアルとベリアルの軍の勢いは凄まじく、これまで西部の激戦区で歪虚の侵入を阻み続けて来た幾つもの砦が、瞬く間に攻め落とされた。人々は逃げる間もなく蹂躙され、村という村、町という町が焼かれた。
 急派された王国軍はこの情報を得ると指揮官達の合議により方針を変更。変貌したベリアル軍と野戦で戦うことを決定した。王国側は急造の混成軍、移動の疲れも残り、横の連携も確立されていない。悪条件の中で黒大公の軍と戦っても勝ち目は薄い事は誰の目にも明らかであった。だがここで時間を稼がなければ、ベリアル襲来までにハルトフォートでの全軍集結が間に合わない。間に合ったとしても温存されたこの数の軍を相手にするのはハルトフォートの危機でもあった。苦渋の決断の末に、王国軍の混成部隊は野戦を開始した。


 赤の隊を中心とする騎士団、聖堂戦士団、現地領主の私兵軍は身を隠す場所の無い平野において、黒大公ベリアルの軍を前後より挟撃した。後方から回り込み進軍する西軍は赤の隊を中心とする高機動部隊。指揮官は遠征帰りのベテラン、ジェフリー・ブラックバーン(kz0092)。対して前方より挑みベリアル軍を足止めするのは王国西部を領土とする領主達を中心とした貴族連合軍。指揮官は勇猛と知られるゴルドン伯爵配下の指揮官ロードリック。万全でないにせよ大戦力による攻撃であったはずだが、結果は当初の予想を越えて惨憺たる有様となった。
 開戦から30分。最前線でハルバードを振るうジェフリーに絶望的な知らせが届いた。
「伝令! 東軍のロードリック司令、討死! 部隊は壊走中!」
「ちっ。言わんことではない!」
 混戦の最中に知らせを受けたジェフリーは舌打ちを隠さなかった。東軍指揮官の性格を思って幾つか忠告をしたのだが、騎士団の若造と侮られたか無為に終わったらしい。
 だがジェフリーは彼らの蛮勇を止めなかった。策無しで突っ込めば自分達がそうなると理解した上でだ。誰かがそこで死んで止めなければならないなら、自分達以外が良い。比較する相手が味方を殺しかねない無能なら猶更だ。
 それでも彼は見殺しにはしていない。敗走されて困るのは自分も同じ。彼らが望んだとおり、東軍には集結中の貴族軍の主だった部隊を多数配置した。その結果、敵は強大でも勝てると思い込み、欲をかいて戦功を求めたのは彼らの落ち度だ。
「これが勝利の代償だとでも言うのか……」
 騎士の言葉を聞く気のない貴族の子弟を育てたのは環境だ。政治屋が国の危機の最中に政治に溺れたからだ。そして、彼ら罪のない子弟達を制止できなかった自分の不甲斐なさが恨めしい。彼らには何の怨みもない。それでも見殺しにせざるを得なかった。
 ジェフリーは頭を切り替える。他人の心配などしている暇は無い。王国軍が劣勢なのは前方だけではないのだから。機動力を重視した都合上西軍は戦力が少ない。幸いベリアルが後方を完全に無視してハルトフォートに進軍している為に、即座に壊滅という心配はないが、このままで被害が増えるだけである。当初の足止めという目標も達していない。
 ジェフリーが撤退による仕切り直しを考え始めた頃、次の知らせが飛び込んで来た。
「副長! ハルトフォートの方面より援軍です!」
「どこの軍だ!?」
「セラーズ男爵、クリフトン男爵の別動隊と、冒険者協会のハンターです!」
 援軍の総数はそう多くはない。だが万全の1部隊とハンターの集団なら十分状況を変えうる。ジェフリーは今しばらく全軍を踏みとどまらせることを決断した。
「わかった。貴族の軍には敗走中の東軍の支援を要請する。伝達の際は無理に戦うなと必ず伝えろ、忘れるな! あれを抑えることはできん。時間を稼ぐだけでいい」
「了解です! ハンター達にはなんと!?」
「指揮系統に組み込む準備が無い。好きに戦わせろ。そういうのに慣れてるだろうからな!」
 酷い物言いだが今から装備を合わせるわけにもいかない。彼らは彼らで何らかの用意をしているだろう。それを信じるしかない。ジェフリーは各部隊長に指令を出すと、自身も精鋭の供回りを連れて前線へと切り込んでいった。



 死して歪虚は無に変える。物理に左右されない体がいかなる原理によるものかは不明だ。それは熱量、それは情報。仮定は幾つかある。ベリアルはこの日までそんな些末な話を気にした事は無かった。今この時になって、薄れゆく理性は一つの仮定を思い出す。自身の体が肉を持つ情報であるとするならば、全ての肉は情報や熱量に代替可能。自身の構成パーツは全て、組み換えが可能なのだと。
 例えば生命を熱量に、知性を筋力に。理性を、力に。
(……は………誰ダ?)
 自身の名前の情報など不要。力に変えればよい。壊す相手の情報も必要ない。万全の我が身と我が軍団に敵う者無し。全てを破壊し、殺戮すれば事足りる。王国を破壊する理由も覚えている必要はない。命令がある。それで充分。王国の定義も必要ない。目標は定まった。地理の知識も必要ない。通り過ぎた道はいずれ無に帰る。記憶は熱へ。力に変える。
(王国……壊ス)
 緩やかに感情を失っていく。感情も必要ない。力に変える。今は歩数を数えよう。残る気がかりは休息の回数のみ。壊すべき街に至るまでに、2本の足が崩れないように管理する。砦を壊す方法も残しておく。砦1回に魔砲を1回。王城の破壊に魔砲を数回。それがベリアルという個体に必要な最小限。
「メ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ 」
 ベリアルは吼えた。
 消えぬ憎悪の炎に胸を焦がして吼えた。
 切り刻まれる我が身の痛みに吼えた。
 失われる我が身に怯えて吼えた。
 吼え続けることで、辛うじて失われる自我を呼び起こし続けていた。

リプレイ本文

 黒大公ベリアルの軍は兵士の数で言えば王国軍よりも少ないが、兵士の質には覆しがたい差があった。これまで王国軍は数の差や覚醒者などの特化した戦力で対抗してきたが、
傲慢の特性をかなぐり捨てたベリアル軍は、人類の労苦をあざ笑うかのように数の差さえも覆していく。
「隊列を整えろ! 勢いに飲まれるな! 右翼に聖堂戦士団の予備を回せ!!」
戦場の中央でジェフリー・ブラックバーン(kz0092)は声を枯らして指揮を続けていた。ベリアル軍後衛と戦闘を続ける王国軍は赤の隊を中心とした精鋭揃いではあったが、その彼らをしても限界が近づきつつあった。多くの歴戦の騎士達が傷つき倒れ、1人また1人と脱落していく。普段ならこんな負け戦はさっさと逃げ帰ってしまうのが常だが、増援の戦力を信じればこそ退くわけにも行かなかった。
「突出しすぎて食われるなよ。……って、おいそこの!」
 ジェフリーは一騎の騎兵が突出しすぎるのを見咎めた。槍を構えた彼は無造作に敵の隊列に飛び込んでいく。あれでは食われる、どこのバカだ。ジェフリーは一通りの悪態を飲み込んでから、その騎兵に見覚えが無いことに気づいた。王国の名馬ゴースロンを駆ってはいるが、鎧も槍も王国の騎士の物ではない。
「はい、どいてどいてー。そぉれっと!」
 軽薄な口調で周囲の騎士や兵士を押しのけ前線に立ったラン・ヴィンダールヴ(ka0109)は、変わらない軽薄な調子で槍を振り回し、群がる羊の群れに穴をあけた。
血の代わりの黒い飛沫をあびながら、ランはにこにこと笑って槍を肩にかつぐ。ここに至ってようやく周囲の騎士は、ハンター達の寄こした増援だと彼を認識した。
「いやー。敵、いっぱいだねー。あはは」
「先走り過ぎだぜ。俺様を待てって言っただろうが」
ランと会話する ジャック・J・グリーヴ(ka1305) の声は頭上から聞こえて来た。地形の起伏を跳躍で飛び越えて戦場にたどり着いたのは、ジャックのR7エクスシア「ヘクトル」。見上げる騎士達には黄金色の装甲が眩しい。
「ごめんごめん。ヒマするよりは早く始めた方が良いかなって」
 ランは朗らかに笑いながらも槍を振るう手を止めない。右に左に薙ぎ払い、その度に羊達が倒れていく。彼の通る場所に徐々に空白が生まれていった。羊達は変わり種とも言える増援に面喰って後ろに押され気味だ。
「わかったよ。勝手にしろ。こっちも勝手に始めるぜ」
 ヘクトルの動きを察した王国軍は整然と道をあける。作られた道の中央をヘクトルは悠然と歩き、堂々とした立ち居振る舞いでベリアル軍に向かっていく。
(ロードリック……だったか? 地方領主の下の役人なんざ、顔も声も知らねえが……。それでも同じ貴族のよしみだ)
 仇を討つなどと殊勝な話ではないが、今なお戦っている者達は誰もが国の為に命を投げ出して戦う者ばかり。顔も知らない相手であっても、無碍になどできるはずもない。生まれの貴賤はわからずとも、それは間違いなく「貴き血の責務」。ならば、ジャックが前に出ないわけにはいかない。ジャックはヘクトルを部隊の前面に出し、腕組みしたまま仁王立ちでベリアル軍と向かい合わせた。戦場は彼を中心に一時静止する。
「生きてるやつも死んでるやつも、騎士も平民も羊共も。俺様の活躍をしっかり拝んでおけや!」
 搭乗者に応えてヘクトルはマテリアルを放出しながら雄たけびを上げる。我此処にあり、と。獅子吼のマテリアルは波及し、ベリアルと同じく後方を無視していた羊達まで後方へと体の向きを変えていた。
「来いよ。まとめて相手してやるぜ!」
 ジャックの蛮勇に王国の騎士達は一様に言葉を失った。なんとか戦場を支えてはいるが、後方の王国軍も余裕があるわけではない。増援として到着早々挑発を仕掛けるなど信じられなかった。
「ま……まず最初にすることがそれとは……恐れ入る」
 ジェフリーはひきつった顔と声で騎士達の思いを代弁する。ジャックのヘクトルはその声を拾っていたが、当然の事と言いたげに腕組みしたままである。これも文句を言う間があるだけでマシと言えよう。一度は動きを止めたベリアル軍が、その勢いと数を増して後方の王国軍へと襲い掛かって来たからだ。
「ええい、仕方ない! 迎え撃て!!」
 ジェフリーは命じながらも先陣を切って突撃する。周囲の騎士達も命じられれば動きは早い。戦場のそこかしこで雄たけびを上げて騎士達が突撃する。騎士達の中に混じる闘狩人達が、仲間の負担を減らすべく次々にソウルトーチで敵を引き寄せ始めたのだ。乱戦は再び熱狂の中に崩れ落ちていく。雄たけびは多重に広がり、再び騎士達は息を吹き返した。
「……なんだ。それなら負けないよ」
 ランはにぃっと挑発的な笑みを浮かべると、騎士達に負けぬ速さで戦場へと切り込んでいった。後方に配された軍は再び激しく衝突を繰り返す。もはや誰にも止めることはできないだろう。



 ハンター達の主力とも言える部隊は正面からベリアル軍に相対した。領主の私兵を主力とする王国軍は増援を迎えた事でようやく態勢を立て直しつつあったが、それでもなお後退に歯止めがかかったとは言えなかった。ハンターの部隊でリーリーやイェジド他に騎乗する特に足の速い者は、この混乱した戦況の只中に真っ向から飛び込んでいく。柏木 千春(ka3061) 、レイレリア・リナークシス(ka3872) 須磨井 礼二(ka4575) ブリジット・B・バートランド(ka1800)、 小鳥遊 時雨(ka4921) 以上5名がまず増援の先触れとなった。強固な鎧に身を固める柏木は特に深く切り込み、瞬く間に前線へと躍り出ていた。
「もう劇的な好転は望めない。それでも、少しづつでも良い方向にしないと」
 リーリー「リリィ」の脚が向かうまま、千春は戦場の混乱をすり抜けていく。隊列を乱した羊達をリリィの爪、千春のセイクリッドフラッシュが蹴散らしていった。応戦する羊達も居たが、千春の重装甲には十分なダメージを与えられない。リーリーの脚を捕まえることも難しい。一方的な追撃と突出した者からリリィの爪で切り裂かれていった。
 斯様にリーリーの脚はこの戦場に置いて非常に有用であった。後方に配された騎士団と違い、敗走して混乱の最中にある軍は助けがあっても道を開けるということが出来ない。リーリーはそれを跳躍によって軽々と飛び越える。先駆けとしては最適の騎兵である。リーリー「くろべぇ」に騎乗する小鳥遊は、更に前を進む千春を弓矢で援護しながら、同時に援軍の到来を告げて走り回っていた。
「私たちが支援します! 落ち着いて、左右に分かれて撤退してください!」
 声を掛けたからすぐにどうなるというものではないが、理性を保っていた指揮官は呼びかけに回ったハンターの声を明瞭に記憶した。レイレリアのグラビティフォールが放たれ一部陣形の追撃が和らぐと、敗走していた王国軍にも若干の余裕が生まれ始め、徐々にだが隊列を立て直す部隊が現れ始める。
 兵士達が陣形を立て直すその上方、ハンター達の砲撃が通り過ぎる。着弾と共に歪虚の兵隊達が黒い霧に変わっていった。後列に着地して砲弾を雨霰と降らせるのはハンター達のCAM部隊。榊 兵庫(ka0010)のR7エクスシア「烈風」、藤堂研司(ka0569)のデュミナス「パリス」、ミグ・ロマイヤー(ka0665)のデュミナス「ハリケーンバウ」、リュミア・ルクス(ka5783)のデュミナス「カンナさん」。数機のCAMが後方から放つ砲弾は隊列を乱したままのベリアル軍前衛を足止めするに十分であった。
 これら援護射撃をまとめあげるのは榊兵庫。射程や威力の違う即席の砲撃部隊を彼は戦場で調整していた。
「味方の為にも今は時間を稼ぐ。なんとしても食い止めるぞ」
「まっかせてー! どんどん行くよー!」
 榊の呼びかけにリュミアの心強い言葉が返る。横隊となった4機の役割は重要だ。味方の撤退支援でもあり、同時に本命の作戦の準備としても不可欠と言える。CAM隊の連携は即席だが成果はまずまず。しかし不満げな顔の人物も1人。藤堂のパリスの挙動が不自然な停止を繰り返していた。
「無理だったかー?」
「何をしようとしたんじゃ」
 隣に居たミグが気になって声を掛ける。スキルトレースで何かしていた事は隣からでも見えていたが、何かが起こった気配がなかった。
「砲弾を跳弾させようかなって」
「………無理じゃろ」
「無理だったな」
 無理である。街道は石を敷き詰めた場所もあるが、土を踏み固めただけの場所もある。砲弾の速度と重量から来る衝撃を跳ね返す土台がない。演算装置は沈黙するばかりである。藤堂の作戦の一つは上手く行かなかったが、細工一つを失敗した程度で挫けるような男ではないし、頭の切り替えも早い。
「仕方ない。それならそれで別の手を使うだけだ」
 藤堂は4連カノンの照準を切り替え、別の目標に狙いをつける。敵は前衛よりやや後方、周囲に何かを喋りかけている大型の羊だ。
「最初からおかしいと思ったんだよ。ベリアルがあの調子なら、お前が指揮官だろ!?」
 ベリアルは指揮をする素振りが無い。であれば指揮を代行する他者がいるはず。彼はそう予測した。砲弾は先程まで狙っていた前衛を通り抜け、後方の大型羊の胴部や頭部に着弾した。驚いた羊達が慌てて次の指示を出す様子が見える。だが、あまり指揮系統が乱れた様子はなかった。
「……んー。あいつは違ったかな?」
「それもわからんじゃろ」
 前衛を機関砲で薙ぎ払いながら、ミグも片手間に敵の様子を探る。大きな変化はないが、慌てたというその事実を持って藤堂は自分の推測の通り攻撃を続けることを決めた。この攻撃は後半になるほど歪虚側の指揮系統に亀裂を与えていたが、この成果が見えるようになるのはしばらく時間を置いてからの事であった。人類のような明瞭な指揮系統でなく、強く大きい者が弱く小さい者に命令するという単純な組織構造であった為、上位の者が減ってからの方がダメージが大きくなる。
 CAM隊による砲撃は執拗に続いた。味方の上を飛び越える轟音は王国軍にとっては青天の霹靂も同然ではあったが、狂騒を断ち切るには丁度良かっただろう。動きを止めてしまったベリアル軍にハンターのCAM隊は更に追撃する。隊列を組みなおしている最中の王国軍の間に割って入ったのはリュー・グランフェスト(ka2419)の R7エクスシア「赤龍」、その僚機であるセレスティア(ka2691)のR7エクスシア、ジーナ(ka1643)のデュミナスの3機。CAMとの共闘に慣れない地方領主の軍の隙間に割って入るのは苦労したが、巨人の前衛は何物にも代え難い支援となった。強力な味方がいるという安心感は王国軍に最低限の指揮系統を復旧するだけの理性をもたらしていた。前衛となれば足元を気にする必要もあり回避機動にはかなりの制限が掛かったが、特に小型相手には俯瞰からの視点となるため誤射の心配が無いという利点もあった。
 同時に目立つ3機は集中攻撃を受けた。羊達は敗走する王国軍を無視して、新たな脅威に群れるように集まっていく。前衛として斬機刀を振るう赤龍が大型の羊が振り下ろした鎌と斬り結ぶその横を、別の中型の羊が抜けていった。一度に相手にする限度を超えている。
「セティ、1体そっちに抜けたぞ!」
「見えてるわ。それなら……!」
 セレスティアは中型羊の放った火球をハイラハドムで受け流すと、すぐさまロングレンジライフルで撃ち返した。腕を塞がない装備だから出来る素早い反応射撃である。巨躯だけあって一撃で倒れる敵ではなかったが、中型の羊は怪我が元で後ろに下がった。前衛の負荷は相当なものであったが、混戦あるいは包囲になれば復旧した指揮系統は再び瓦解する。ここで踏みとどまる以外に選択肢がない。ジーナの機体も合流し、揃って戦線を押し上げて崩壊を押しとどめる。
「相変わらず鬱陶しい連中だ。だがそれも、準備が終わるまでだ」
 戦場が依然として極めて劣勢である事に変化はない。この負け戦が避けられないにしても負け方というものがある。ベリアル軍の前方の戦場をまだマシな負け戦として立て直すには、力押し以外の一手が必要だ。ハンターにとってこれが共通認識であった。ゆえに彼らはGnomeを5体都合した。
 嵐のように鉄火が飛び交う戦場の後方、彼らの準備が着々と進められていた。5体の操作を調整するのは ミカ・コバライネン(ka0340)。彼は自身の戦場をこの地と定めていた。
「そんじゃあ頼んだぜ」

「任せてくれ」
  斧を担いで走るボルディア・コンフラムス(ka0796)に、軽い調子でミカは引き受ける。ゴーレムはそれぞれユノ(ka0806)、神楽(ka2032)、連城 壮介(ka4765)、そしてボルディアとミカの持ち物であるが、戦場に出ずに指示するのはミカ、ユノ、神楽の3名のみ。ボルディアとミカによって描かれた作業行程を3人で作り上げていく。ボルディアと連城は工事は任せて戦場働きに出かけて行った。幾ら必要な準備でも人手を割きすぎるわけにはいかない。その分、後方の責任は重大である。ユノは顔を軽く張って気を引き締めなおす。
「うん、何が何でも成功させないとね!」
「その通りっすよ! 早速始めるっす!」
 神楽が意気揚々と悪戯小僧のような顔で走っていく。ハンター達はGnomeの工作能力を生かし、即席で防壁を作ることにした。特にベリアル軍ではなくベリアル本人を意識して、人や中型までの羊は通れるがベリアルは通さない程度に壁には隙間を作り、後退する味方の動きもそれほど阻害しない作りになる予定であった。
「上手くいくかね……」
 ゴーレムの仕事ぶりを見ながら不安とも楽観とも付かぬ声でミカは呟く。表に出る感情とは裏腹に彼の心象はそれほど単純でもなかった。ゴーレムの集中運用そのものはともかくとして、ゴーレムの集中運用が前提の作戦はまだノウハウが整っていない。出来上がったものが果たして役に立つのか、使いこなすことができるのか。ほぼ未知数である。
 彼の脳裏をちらつくのは過去の惨状、過去の血風。一つ間違えば再び悪夢は蘇る。羊の道行きは既に蹂躙された。ミカは煙草の煙を肺一杯に吸い込み、毒を持って悪夢を頭から追い出した。既に選択は済ませた。もはや選んだ道を信じる以外に道は無し。
「おーらいおーらい」
 神楽の声が聞こえる。彼はゴーレムと共に壁の裏に穴を掘り始めた。穴掘りは他のゴーレムもしているが、神楽は更に穴に細工をしているようだ。
「ま、なんとかするしかないな」
  戦場の音は遠く響く。戦場の趨勢をゴーレムの肩より見下ろしながら、ミカは手の中の手榴弾を握りしめた。



 側面に回り込んだメンバーは少数であった。戦力は決して小さくはないが、それ以上に数の差がある。包囲による圧迫を進めるには難しい戦場だ。この状況に対して南北両側面の部隊は、別の戦術で事にあたった。
 ベリアル軍の南の側面は3機のR7エクスシアという構成であった。デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)のR7エクスシア「閻王の杯(プルートー)」 、
対崎 紋次郎(ka1892)、R7エクスシア「ストライト」 、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)のR7エクスシア「トライアンフ」。3機の陣形は各自の戦術を反映してストライトとトライアンフを前衛にプルートーを後方とする開かれた三角形。CAMの脚を生かし、躊躇することなく戦場に向かっていく。
 羊の群れが近づいたころ、後方のデスドクロが突如として「ぐはははは」と笑い声を上げ始めた。何事かと訝しむ二人だが、そういえばこんな奴だったと思い出す。
「このデスドクロ様のダークネスインフェルノを使えば、ベリアル諸共灰燼にするのは容易い。だが騎士団を巻き込むのは本意ではないな。仕方あるまい。俺様の生身の超絶戦闘力を封印し、この機体を使いこなしてやろうではないか」
 何言ってんだこのおっさん、というのが前衛二人の偽らざる気持ちであった。一応口に出さない程度の理性はある。彼の言動には不安しかないが能力的には問題ない。エクスシアは十全な力を与えてくれるだろう。後はそれぞれに仕事をこなすだけである。
「……まあ、いい。ここで連中を滅ぼす事は変わらない。わしは敵を排除しながらベリアルを狙える位置を探す。あんたらは?」
「オレもベリアルを狙う。だがその前に取り巻きを排除する」
「ふん。好きにしろ。俺様はまずは雑魚を減らして力を見せてやろう。暗黒皇帝(注:シュヴァルツカイザーと読む)のな!」
「よし。なら、散開だ!」
 対崎は左右に散っていく二人を見送って敵の前面に躍り出ると、ストライトのCAMシールドを地面に突き立て、スラスターライフルによる掃射を開始した。
ベリアル軍の側面に居た羊の何匹かが吹き飛び、ベリアル軍の注目が南側面に向く。その視線を真っ向から受けながら、トライアンフはベリアル近辺に砲撃を開始する。ベリアルの親衛隊とも言える大型の羊がベリアルを庇うように動くが、そこまではレイオスの予想の範疇だ。
「もっと集まれ。前と同じだと思ってたら痛い目みるぞ!」
 マテリアルライフルによる広域破壊のために、あとは敵を誘導するのみ。ベリアルを守ろうとするならこの攻撃は無視できないという寸法だ。
 一方でプルートーは前に出ない。距離を広くとり、外縁の敵を狙い撃つ。
「この器では時間が掛ける必要がある。ベリアルは後回しだ」
 プルートーの銃口はまず前面に出た羊を狙った。羊を一匹ずつ確実に撃破しながら、機体は敵の前進に合わせて後退する。消極策に見えるが、小回りの効かないCAMらしい戦術であった。作戦の違う三機にベリアル軍は応戦を始めるが、射程距離の差によって序盤はCAMの一方的な制圧射撃が続くこととなった。
 射撃中心の部隊となった南とは対照的に、北の側面の3名は近接戦闘が前提のメンバーで固められていた。魔導アーマー「Gustav」の乗る八劒 颯(ka1804) 、ゴースロンを駆るブラウ(ka4809) 、イェジドを操る不動シオン(ka5395)。3人は接敵と同時に敵陣に殴り込み、思い思いに敵を屠った。Gustavのドリルが中型の腹を破る傍ら、不動のイェジドが羊の喉を噛みちぎっていく。
「もっと来い、もっと楽しませろ! 貴様らは私と戦う運命にある。この私のカルマを浄化するまで!」

 哄笑する不動はイェジドが爪を振るう合間は銃を撃ち、手あたり次第に羊を襲う。怯え竦むような歪虚は居ないが、それでも防御の薄い方面だけあって対応は遅い。切り込む3人にはそれが優位に働いていく。この3名の中でもブラウの戦果は抜きんでていた。
「狙う必要もないわね。死になさい」
 ブラウは敵の集結を察知すると合わせて次元斬を叩きこむ。集団の只中に突如現れる斬撃の軌跡は恐怖でしかなく、敵は散兵となって行動を余儀なくされる。とはいえばらけて近づくだけではブラウに触れることは出来ない。紅華繚乱。進むブラウの周囲に斬撃の線が赤く浮き上がり、歪虚を次々と黒い塵へと返していく。
「遅いのよ」
 つまらなさそうに吐き捨てたブラウを見て、不動はくくくと低い笑い声をあげた。
「舞刀士からすれば羊はのろまばかりだろう」
「でも数が多いわ。もう少し前に進みたいのだけど……邪魔ね」
「それなら、はやてにおまかせですの!」
 ドリルで羊を殴ったり抉ったりしていた颯のGustavは、4本の脚を大地に固定してスペルランチャー構えた。放たれた青い光が射程内直線上の敵を薙ぎ払う。ドリルに気を取られていた羊達が光に巻き込まれて吹き飛んでいく。この一撃によって開いた隙間は軍団を進めるには不十分だが、3人で進むには十分。
「助かるわ。それじゃあ、行くわよ」
 ブラウが先頭切って馬を走らせ、あたるを幸いに刀を振るっていく。3人の勢いは止まらない。いや、止まれない。混乱が収まるまでに任務果たさなければ、あとは泥沼になると3人共が理解していた。彼女たちにとってはここが正念場であった。



 値千金の時間は過ぎ去っていく。万全の状態からどこまでも遠ざかり、未知による優位も薄れていく。万全な体のうちに何を為したか、万全でない体を如何に使ったか。時間が過ぎるほどに戦士としての資質が問われるのである。
 ベリアル軍後方の戦場における戦果は他の戦場よりも際立っていた。この戦果にはジャック・J・グリーブの功績が大であると騎士達は口を揃えて言う。戦闘開始以後のジャックは獅子吼で敵を集めた後、比較的秩序を保っていた騎士団を前衛、あるいは直衛として砲撃を繰り返した。元々が比較的少数精鋭でもって不利な条件と戦っていた騎士団だけあって、この砲撃の効果は大きかった。
 ベリアル軍の側はマテリアルライフルの攻撃を避けるためには散兵になる必要がある。しかし散兵になれば隊列を組む騎士団に後れを取る。マテリアルライフルには限りがあるため、限界まで甘んじて受けるという手もあるが、後何回手を残しているのか不明瞭なままその作戦は実行できない。結果、ずるずると散兵のまま隊列を組んだ騎士団に蹂躙される一方となった。
 これを的確にサポートしたのがラン・ヴィンダールヴである。上記の状況を打破するにはヘクトルを止めればいいと考えるのは妥当な結論である。ヘクトルを止めるには大型羊による突撃か、あるいはCAMが回避し辛い火球により集中攻撃が考えられるが、この両方をランが防ぎ切った。ランの槍の威力はすさまじく、スキルを使い切った後もその優位は揺らがない。大型の羊が現れればヘクトル以上の破壊力でこれを追い返し、火球を使う術士の羊は見つけ次第ゴースロンの機動力で追いつめる。結果狙われることが増えて怪我も増えたが、リジェネレーションでしぶとく生き残り、常にヘクトルの前で敵を威圧し続けた。理想的な前衛と後衛である。
 この戦果には副次的な効果もついてきた。ジャックが戦場の優勢を維持に貢献した事で、一度は秩序を失い敗走した王国軍の兵士が、再び武器を拾って駆けつけたのである。この呼びかけ自体はミカより前方の部隊の状況説明と提案を受けたジェフリーが実施していたのだが、いざ死地へ戻ろうとする勇気を与えたのは二人のハンターの働きによるところが大きい。
「よし、次行くぜ! 道を開けろ!」
「総員、射線上より退避!!」
 ジャックの合図に合わせて騎士達が素早くヘクトルの前に空白を作る。再びマテリアルライフルが集まった羊を薙ぎ払った。ジャックは手際よく再集結した騎士団が手負いの羊を倒していく様を見ながら、ヘクトルのマテリアルライフルを後生大事に格納した。仲間を守るためにマテリアルカーテンも使い切り、マテリアルライフルも残弾0。マテリアルハルバードのカートリッジも残量僅か。あとは傷だらけの盾と拳銃のみ。拳銃弾がなくなれば、いよいよ盾で殴る以外に出来ることは無くなるだろう。
「おい、そっちはまだ行けるのか!?」
 ジャックは戻って来たランを呼び止める。既にランの衣服はボロボロだが、ランは平気な顔で笑顔を作って見せた。
「ぜーんぜん。余裕だよ」
 そういう割には動きに疲れが見える。先程からスキルを使っていないのは一目瞭然であった。傷が治っても疲れまではとれはしない。だが指摘しても意味は無い。むしろ隠すことに意味があるのだから。
「そうかよ。無理すんじゃねーぞ!」
 手を振ってランはまた戦場に戻っていく。ジャックもまた覚悟を決めた。残弾が残っていないことは隠し通せるわけではないが、露見が遅いほど味方は有利になる。
「貴族の闘いぶり、見せてやろうじゃねえか。行くぞ、羊ども!」
 ヘクトルは銃を構えると、再び前線への攻撃を開始した。
二人の活躍によって後方の戦場は持ち直した。獅子吼によって敵を引き寄せた事で他方面の敵を減らす結果にもなり、戦場の趨勢を大きく変化させた。この戦いは負け戦には違いない。それをマシな負け戦にまで引き戻したのだ。



 側面攻撃の部隊は徐々に個人の明暗が分かれていった。側面の戦場では孤立無援という程ではないものの味方の支援は乏しく、敵は雲霞の如く沸いてくる。
南北どちらの戦場でも装備や動きの似通ったハンター達は自然と連携を取ることが出来たが、問題は戦法や装備そのものだ。
 北の戦場は瓦解が早かった。孤立無援であることが彼女たちに想像以上の重く響いた為である。最初の脱落者はブラウであった。
「はぁ………はぁ……」
 ブラウの荒い呼吸をなんとか整えようと必死だ。致命傷こそ避けているものの、既に体は満身創痍。出血が彼女の体が力を奪っていく。ポーションも全て使い切った。颯や不動が庇いながら戦ってくれているが、この状態は不健全だろう。
 彼女の装備は彼女の破壊力を支えることに特化しており防御性能は貧弱だ。仲間の十全な支援が期待出来る場であればそれは何物にも勝る武器となるが、支援の無い中で事実上単騎での戦闘となればボロが出る。性能で圧倒したとしても数の差はそれ以上で、まぐれ当たりのような一撃もバカにならない。攻撃を食らうたびにカウンターで何匹も羊を屠ったが、傷に見合う成果かといえば少々疑問である。
(グリューンをこっちに連れてくればよかったかしら)
 彼女が釣れたユキウサギのグリューンは、防御性能に乏しいゴーレムの護衛を命じている。焼け石に水ではあるものの、グリューンの防御結果があればもう少しは持ったはずだ。後悔しても遅い。そしてダメージが蓄積しているのは彼女だけでなく、他の2人にしても状況はそこまで変わらない。
 不動はイェジドの脚を生かして戦ったが、敵陣に入って集中攻撃を受けてはその戦い方にも限界がある。不動の駆るイェジドはよく不動を支えたが、それもここまでだろう。不動は肩に刺さった矢を引き抜きながら、それでも不敵に笑って見せた。
「羊どもの分際でよく足掻く」
「ええ。目障りだわ」
 個々の能力が向上していることもそうだがとにかく数が多い。状況に対応されてしまえば、こちらが圧倒的に不利である。3人は手あたり次第に多くの羊を屠ったが、戦況を変えるには至らなかった。熱狂の時間は過ぎ去ったのである。
「ベリアルを一発殴っておきたかったけど仕方ないか。ここが退き時だね」
 颯はGustavの装甲の分だけまだ余力はあるが、これ以上一人で進んでも帰れなくなるだけだ。魔砲の対処を画策しているのは自分だけではない以上、居残る意味は少ないだろう。3人は颯を殿としてその場を撤退した。別方面での戦闘が激化した為に追撃は無かったが、成果と言えるものは少なかった。
 南側の3機はもう少し持ったが、徐々に押し返されつつあった。最新鋭機3機の組み合わせは非常に強力ではあったが、それも運用次第である。CAMは人以上の速度で戦うことが出来るが、機体の大きさは常に弱点となった。広範囲を巻き込む火球の一撃を回避するには機動力が不足している。背が高い分だけ敵の射撃攻撃も受けやすい。
 足を止めた対崎のストライトと積極的に突撃したレイオスのトライアンフは集中攻撃をかわし切ることが出来ず、気づけば満身創痍と言った有様だ。一方でデスドクロの機体は損害は少なくまだ健在である。余力も残しつつ変わらず敵に砲撃を繰り返している。
 似通った性能の機体を扱いながらその差が現れた理由はここに至れば明瞭だ。敵陣深くの目標を狙って前に出ざるを得なかった2機と、最初から敵軍団の外縁しか狙っていないデスドクロの戦術の差である。敵に全方位への対応を強制するという観点でデスドクロの戦い方は最適解である。最後まで状況を維持したという点において彼の支援は的確であった。
 砲撃で戦場を支援するには3機であっても火力不足ではあったが、敵が排除できずに居座り続けるという状況はベリアル軍にとって看過できない状況である。加えて余力を残しているということは、まだ無理をする余地があるということだ。いつか突撃してくるかもしれないという恐怖を与え続けることができる。戦法を維持できなくなって仕方なく足並みを揃えた対崎とレイオスの機体とは、同じ立ち位置と同じ動きでも意味が異なった。
「これこそが我が叡智、我が暴威の一端よ。恐れ入ったか!」
デスドクロの哄笑が響く。この場に置けるデスドクロの判断は正しい。
言葉の尊大さと裏腹に非常に地味であるという点と噛みあっていないのが、なんとも締まらない話ではあるが。
「ベリアルに味方はたどり着けてない。こっちだけで頑張っても効果は薄いな」
「じゃあしばらくはこのままか?」
 手が出せる距離に敵は居るのに手を出せない。そんな歯がゆさを滲ませてレイオスは呟く。対崎は苦笑して表には感情を出さなかったが、その意見には賛成であった。
「ああ。前線から合図があるまでな」
 まだ手は残っている。必要とされる場面もあるだろう。ならば、その時まで余力を残しておく必要がある。二人は装備のステータスを再び確認し、デスドクロの動きに機体を合わせる。一方でデスドクロと言えば……。
「ぐはははは。雑魚どもめ、惨たらしく絶命せよ!」
 相も変わらず魔王の如き言葉で死を告げる。地味な引き撃ち戦法に徹しながら……。



 東側の前線は崩壊したが崩壊自体は規定路線である。残るのは見積もりの甘さだ。
 ハンター達が思う以上にゴーレムの作業時間は驚くほどに早く、即席とは言え防壁を瞬く間に築かれた。敵の目の前に砦を立てる能力である。5台のゴーレムの作業は順調に終了し、戦線は壁に合わせて移り変わっていく。全ての部隊は順次後退し戦線を構築しなおし、ベリアル軍を受け止める準備は整った。
 この時のハンター達は万全の装備で挑んだが、それでもなお想定に甘さが残っていた。一つに羊達の猛攻である。ベリアルの通行が不可能な程度に壁を立てるというところまでは充分に間に合った。だが、ベリアル到着まで壁を維持することは出来なかった。壁を盾として使う者達にはそれがありありと見えていた。小鳥遊はリーリー「くろべぇ」の脚を生かして壁と壁の間を抜ける敵を処理していたが、一匹一匹順番に倒すには時間が足りなかった。
「だめ……。全然止まらない」
 弓矢で一匹仕留めても、それを乗り越えるように次の1匹が前進する。ジーナのデュミナスも並んで協力してくれているが、何事も限界がある。
「ここまで浸透されたらもう意味が無い……。いつでも逃げる準備はしておきなさいよ」
「けど……」
 小鳥遊はそれ以上は何も言えなかった。少しでも多く助ける為には、戦線の維持が大前提である。死ぬしかない味方と心中するのでは意味が違う。だから逃げることは正しい。だがそれでも、安堵してしまう自分の心が不甲斐なかった。既に戦線は分断されつつあり、彼女に限らず多くの者は取捨選択を迫られている。前線で戦っていた多くの者はほとんどが撤退を余儀なくされていた。敵の攻撃を一身に受けたリューはセレスティアに守られて既に後退している。前線より王国軍の撤退が本格化して以後、レイレリアもほどなくして脱落していた。
「……思った以上でしたね」
 彼女のグラビティフォールの支援は的確で助けられた仲間も多い。同時に的確な支援者は明確な障害と認知される。羊達の攻撃が集中するのも当然の結果である。周囲の王国軍が残っている間はそれでもなんとか持ちこたえていたが、周囲の味方が減って以降は立て直せなくなった。
「レイレリアさん、ここは任せて引いてください!」
 千春は未だに奮戦を続けている。全身鎧の防御力とリーリーの脚力を生かして戦うさまは重戦車さながらではあるが、仲間を助ける機敏さもある。レイレリアも何度となく彼女に助けられたが、戦況の悪化と共に千春の負担は悪化する一方だ。
「……わかったわ。でも貴方も、無理をしてはダメよ」
「はい!」
 言っては見たが彼女は無理をするだろうし、無理をしても平気なだけの力量は有している。要らぬ心配だと自嘲した。最後に残ったマテリアルでグラビティフォールを放つと、レイレリアは戦場を後にした。
 前線はこの通りに崩壊していたがCAM隊は健在であった。防壁まで敵に浸透されつつある状況では砲撃の効果はかなり薄れていたものの、味方の支援は継続されていた。藤堂の砲撃により指揮系統を破壊して統制のとれた行動を阻害する事に成功してはいたが、劣勢な状況を覆すほどではない。統制を失っても前へ進もうとする圧力が強いために、羊達を押し留めることは出来なかった。銃撃の圧力は衰えていないが、距離を保つ必要上後退を余儀なくされている。榊は表面上冷静に対処していたが、流石に焦りを抱えるようになっていた。
「思ったよりも浸透が早かったな」
 浸透が早いとCAMの支援砲撃は届きにくくなる。3mの壁は俯瞰できる程度の高さだが、背の低い者には壁としては十分機能している。それが人であれ歪虚であれ変わらない。壁を壊すのは容易だがだからと言って壊すわけにはいかない。砲撃は壁と壁の合間を縫って行われるように調整はしたが、攻撃の集中という意味では状況は悪化している。榊は懸命に両隣の連携維持に務めようと動いた。なんとかCAM同士の連携はとれても生身部隊とは連携が取れなかった。
 中央で奮戦するボルディアはこれらの残った支援を特に受けづらい状況にあり、敵の攻撃を一身に受けていた。
壁を避けて浸透する羊相手に巨大な斧を振り回すボルディアだが、敵は近接戦闘で敵わないとみるやすぐに遠距離攻撃に切り替えた。
放たれた矢を斧で打ち落としはするがそれも限界があり、避けきれなかった矢がボルディアの肩や腕に突き刺さる。
「くそったれが!」
 吼えて突撃して何匹か屠ってみても状況は変わらず。何度も火球を叩きつけられ、矢を雨のように降らされ、壁の内側に引き下がるより他に手がなくなっていた。
ボルディアは壁の内側で戦った者の中ではもっとも被害を受けたが、被害を受けたのは彼女だけにとどまらない。同じく中央で戦っていた須磨井とブリジット、二人の連れたユキウサギのレッキス、ユグディラのタップも既に戦える状況ではなくなっていた。
「ベリアルが魔砲を撃つまではと思ったが、どうもそこまで持ちそうにないな」
 須磨井は壁に背をもたせ掛け、ベリアル軍の猛攻の様子を眺めながらつぶやいていた。タップが治療を施してくれているが、完治というわけにはいかない。背中の壁もいずれ崩れ去る。傍らではブリジットが不安げな様子で傷の治療を見ている。その視線に負けて、須磨井は順次撤退を決意した。
「君は先に戻れ。ここに居る必要は無い」
 撤退するなら女性を先に。それだけの意図で発言したが、ブリジットは真っ向から拒絶した。
「いいえ、残ります」
「しかし」
「送り出して待つのは嫌なの。」
「…………」
 これは梃でも動かないなと須磨井は諦めた。そこまで思われる理由に心当たりがないことも申し訳なく感じる。だが二人同時に退くというのも危険が大きい。どうしたものかと思案していると、盾にした壁の横をジーナ機の支援射撃が通り過ぎた。何事かと外の様子を窺うと、ボルディアを抱えた連城がユノを連れて逃げ戻ってくる最中であった。
「おい、大丈夫なのか」
「大丈夫じゃねえよ……っ……」
 喋った拍子に痛みで呻くボルディア。満身創痍になり、もはや指一本動かせないような疲労困憊ぶりだった。
「……ここをなんとかする手立てはあるか?」
「無理じゃないかな……」
 ユノは悔しそうに呟く。各自、持てる手を全て使って戦った結果が今の状態だ。これ以上は何も出てこないだろう。須磨井とボルディアの傷が酷いのは見た通りだが、ブリジットやユノもいたるところに傷を作っている。連城がまだ余力を残しているが、あくまで比較的という程度だ。
「俺が殿になる。皆は先に退いてくれ」
「危険だぞ」
「じゃあ他に誰が残ってるんだ?」
 連城の言葉を否定しながら、須磨井はそれ以外の手も無いと理解していた。方針が固まればぐずぐずしているわけにもいかない。支援を続けていたジーナは撤退の相談が終わったことを確認すると、一番近くに布陣していた仲間のCAM乗りに呼びかけた。
「リュミアさん! 援護をお願いします!」
「了解! 任せるのだー!」
 答えて間をおかず、地響きを伴って「カンナさん」が前に出る。壁の格子を縫って支援砲撃を続けていた彼女は、防御も的確にこなしてみせた。足元の羊を蹴散らしながら敵軍団正面につくと、機棍でもって逃げ遅れた羊を叩き返す。敵がカンナさんの動きから逃げ出した隙をついて、ブリジットが須磨井を、ボルディアをユノが連れて退避する。走って逃げるには危険が残るため、残存しているボルディアのゴーレムを使っての逃走となった。
「すみません。無理を言ってしまって」
「良いのです。私も動けませんから」
 ジーナはその言葉の意味を理解できなかったが、リュミアも何名かと同じくベリアル戦に向けて装備を温存していた。装備が無駄になるよりは仲間を助けて装備を失うほうがずっと良い。恐らくこの戦場では使う機会は無いのだから。2機の支援によって大よその敵は防いでいたが、それでも万全ではない。すり抜けた敵が退却しようとする仲間へと迫っていく。連城は1人残って道を塞ぎ刀を振るう。背中で仲間の後退を送り出しながら、連城は作戦の失敗を実感していた。
「あー!」
 神楽の叫びが聞こえる。何事かと振り向いた先で理由はすぐに理解できた。神楽が周到に準備した覆い付きの落し穴に羊が嵌ったのだ。小型の羊が2匹だけ。本来はベリアルをひっかけるつもりだったのだが、手がこんだ割りにお粗末な結果となった。穴を堀ではなく落し穴として運用する向きは彼以外にもあったが、彼はまだ小物でもかかっただけマシである。ユノは強引にゴーレムバケットで穴に追い落とす作戦を進めていたが、ゴーレムは前線で運用するには脆い。脆いというほど脆くもないが、集中攻撃を受けた時に逃げられない。障害と見做された段階でユノや連城のゴーレムは集中攻撃を受け、戦闘不能となってしまっていた。これに前後してベリアルに対して用意された幾つかの作戦は不発に終わっている。このようにベリアルに対して妨害を試みる者は多かったが、取り巻きの妨害によりベリアルたどり着けない者がほとんどであった。考案された案のうちいくつかは有効だったかもしれないが、手が届かないのであれば無いも同じである。
 原因はどこにあったのか。壁と穴の利用方法が曖昧なままであった事に原因がある。即席の盾とする者、罠として利用する者、狭き門として活用する者。それは個人としての最適解であったが、チームとしての最適解ではなく、戦場全体の趨勢に影響は与えない。個人が頑張ったという結果以上にはならないのだ。何しろ、盾として使う者と門として使う者では、壁を維持するか壊れても無視するのか、その見解から立場が違う。作戦が噛みあうはずもなかった。
 更にはベリアルの取り巻きの排除が不十分であった事も上げられる。羊達も特にベリアルを守っている個体ばかりではないのだが、前に進んでくるとどうしても邪魔になる。目に移る人類は全て殺そうと躍起になって前進し、壁にたどり着けば破壊を試みる。結果として用意した罠を踏み潰される結果となっていた。王国軍の撤退支援や壁の完成までの時間稼ぎに焦点を当てた戦闘であった為、事前の地ならしとも言える部分がおざなりとなってしまった事は否めない。戦力が有限である以上、この成果はトレードオフである。戦闘は無為に終わったのではなく、必要な条件と噛み合わなかったのだ。
 ならば壁は無駄になったのか。いや、そうはならなかった。壁は壁、穴は穴。破壊するのでなければ迂回せねばならない。破壊するにしても壊している間は足が止まる。穴は落とし穴としては機能しなかったものの、埋めて戻すわけには行かない深さと広さであった為に壁以上に障害物として機能した。この時ベリアルの軍団は壁を障害物と見做していなかったが、気づかぬうちに指向性を与えられてしまった。戦場では敵の指向性が集まる場所に、味方の指向性を集めることが肝要。壁を突破したという慢心が彼らにとって仇となる。彼らの心に宿った慢心をミカは見逃さなかった。
「潮時だな」
 敵は警戒もせずに築かれた防壁をすり抜けて前進してきている。負傷して動けなくなった仲間をゴーレムに載せていたミカは、壁を破壊するベリアル軍の中央に発煙手榴弾を投げ込んだ。慌てて羊達が手榴弾を叩き落すが、地面に落ちても黄色に着色された煙が立ち上るだけである。爆発物か何かと思い込んでいた羊達は首をかしげて煙を見つめている。羊達の疑問はすぐに氷解した。
 直後、各所に展開していたCAMによる一斉射撃が壁の前に集まっていた羊達を薙ぎ払った。両側面と前方に布陣したCAM全てである。南側面のCAM隊は前進し壁の前に集まった敵を狙い撃つ。前方に展開していたCAM隊は不要になった壁を破壊しながら銃弾砲弾を雨と降らせた。余ったマテリアルライフルは温存分を全てが一斉に照射されている。
 敵は居なくなった、残った敵は分散しており対処は容易、そう思っていた羊達は一方的に銃弾の雨に晒された。前後左右からの砲撃には大型の羊であっても一たまりもなく、多数の歪虚がその場に倒れ伏していく。
「こいつはたまげた……」
 支援を要請したミカにとってもこの戦果は些か想定外であった。彼は単純に「味方の支援砲撃が欲しい時に黄色の発煙手榴弾で合図する」という事だけを伝えていた。
 ここに偶然が重なった。ミカは敵が死地に密集するタイミングを掴める場所に居た。CAMは揃って大口径且つ長射程の武器を備えていた。CAMは常に壁の位置を意識して布陣していた。壁はある時点から障害物でなくなった。穴は最後まで障害物として残った。幾つかの条件の重なりは幸運ではあったが、幸運を掴み取るに至ったのは彼らの備えゆえである。
 ベリアルと羊達は慢心をかなぐり捨てた、というのは結局のところ本人達の心の持ちよう程度の話でしかない。『全ての敵に全力で戦う』と息巻いたところで、状況認識を誤ればそれも無意味である。彼らは敵を全力で殴ることを思い出したが、「万全の我らが軍に敵う者無し」と敵を過小評価する悪癖を止められなかったのだ。後方の王国軍を無視する判断はまさにそれである。彼らは最後の最後で、捨てたはずの慢心によって足を掬われたのだ。
「さて……ケツまくって逃げよう」
 敵の混乱が際立った今が好機。これ以上粘っても戦果は増えないだろう。
ミカはゴーレムにROモードの指令を出し、集まろうとする羊を蹴散らしながら逃走した。彼ら最後の殿軍の撤退を持って、ハンター含む全軍に撤退命令が下された。



 ハンター達の働きによってベリアル軍は大きな被害を受けた。だが同時にハンター達も王国軍も満身創痍。これ以上の戦闘継続は不可能である。戦果を挙げての後退だが、一筋縄ではいかない。
 ジェフリーはジャックやランと共に自身も殿に残りながら指揮を出していたが、それも限界が近づいていた。
「王国軍の退避は終わった! お前達も下がれ!」
「えー。ベリアルはほっといていいの?」
「十分だ。これだけ殺せば、まだ算段もつけられる!」
 軍対軍の戦いでは目の数と手の数は作戦を容易に妨害する。ベリアルを裸同然に出来たのであれば、ハルトフォートに集結中の本隊の負担は大きく減るだろう。後は彼らがベリアルを討ち果たしてくれることを信じ、速やかに部隊を引き上げるのみだ。
 ジェフリーから殿軍への撤退命令が下され、ハンター達も仲間を庇いながら退避していく。王国軍は初期の混乱から最低限の規律を取り戻し、整然とベリアル軍に道を開けて退避した。途上の混乱を思えば望外の結果と言えるだろう。
 戦闘は終わった。そう誰もが安堵しそうになった時、変化は起こった。
「メ゛ェ゛ェ゛……ッ!!!!」
 声が、響いた。終わりの時を告げる不吉な声が。
 ベリアルの変調が、再び始まったのである。

依頼結果

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MVP一覧

  • 完璧魔黒暗黒皇帝
    デスドクロ・ザ・ブラックホールka0013
  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴka0109

  • ミカ・コバライネンka0340
  • 龍盟の戦士
    藤堂研司ka0569
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴka1305
  • 光あれ
    柏木 千春ka3061

重体一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムスka0796
  • 無邪気にして聡明?
    ユノka0806
  • 機械整備の魂
    ブリジット・B・バートランドka1800
  • 大悪党
    神楽ka2032
  • 六水晶の魔術師
    レイレリア・リナークシスka3872
  • 三千世界の鴉を殺し
    連城 壮介ka4765
  • 背徳の馨香
    ブラウka4809
  • 飢力
    不動 シオンka5395

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    レップウ
    烈風(ka0010unit004
    ユニット|CAM
  • 完璧魔黒暗黒皇帝
    デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013
    人間(蒼)|34才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    プルートー
    閻王の盃(ka0013unit001
    ユニット|CAM
  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴ(ka0109
    人間(紅)|20才|男性|霊闘士

  • ミカ・コバライネン(ka0340
    人間(蒼)|31才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    コクレイゴーレム「ノーム」
    刻令ゴーレム「Gnome」(ka0340unit002
    ユニット|ゴーレム
  • 龍盟の戦士
    藤堂研司(ka0569
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    パリス
    パリス(ka0569unit002
    ユニット|CAM
  • 伝説の砲撃機乗り
    ミグ・ロマイヤー(ka0665
    ドワーフ|13才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    ハリケーンバウユーエスエフシー
    ハリケーン・バウ・USFC(ka0665unit002
    ユニット|CAM
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    コクレイゴーレム「ノーム」
    刻令ゴーレム「Gnome」(ka0796unit004
    ユニット|ゴーレム
  • 無邪気にして聡明?
    ユノ(ka0806
    エルフ|10才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    コクレイゴーレム「ノーム」
    刻令ゴーレム「Gnome」(ka0806unit002
    ユニット|ゴーレム
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ヘクトル
    ヘクトル(ka1305unit002
    ユニット|CAM
  • 勝利への開拓
    ジーナ(ka1643
    ドワーフ|21才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    バレル
    バレル(ka1643unit001
    ユニット|CAM
  • 機械整備の魂
    ブリジット・B・バートランド(ka1800
    人間(蒼)|26才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    レッキス
    レッキス(ka1800unit004
    ユニット|幻獣
  • びりびり電撃どりる!
    八劒 颯(ka1804
    人間(蒼)|15才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    グスタフ
    Gustav(ka1804unit002
    ユニット|魔導アーマー
  • 光凛一矢
    対崎 紋次郎(ka1892
    人間(蒼)|24才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ストライト
    ストライト(ka1892unit001
    ユニット|CAM
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    トライアンフ
    トライアンフ(ka1990unit003
    ユニット|CAM
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    コクレイゴーレム「ノーム」
    刻令ゴーレム「Gnome」(ka2032unit002
    ユニット|ゴーレム
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ロート
    紅龍(ka2419unit003
    ユニット|CAM
  • 淡光の戦乙女
    セレスティア(ka2691
    人間(紅)|19才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    アールセブンエクスシア
    R7エクスシア(ka2691unit002
    ユニット|CAM
  • 光あれ
    柏木 千春(ka3061
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    リリィ
    リリィ(ka3061unit001
    ユニット|幻獣
  • 六水晶の魔術師
    レイレリア・リナークシス(ka3872
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    リーリー
    リーリー(ka3872unit001
    ユニット|幻獣
  • 崑崙の壁
    須磨井 礼二(ka4575
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    タップ
    タップ(ka4575unit004
    ユニット|幻獣
  • 三千世界の鴉を殺し
    連城 壮介(ka4765
    人間(紅)|18才|男性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    コクレイゴーレム「ノーム」
    刻令ゴーレム「Gnome」(ka4765unit002
    ユニット|ゴーレム
  • 背徳の馨香
    ブラウ(ka4809
    ドワーフ|11才|女性|舞刀士
  • ユニットアイコン

    グリューン(ka4809unit001
    ユニット|幻獣

  • 小鳥遊 時雨(ka4921
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    クロベェ
    くろべぇ(ka4921unit001
    ユニット|幻獣
  • 飢力
    不動 シオン(ka5395
    人間(蒼)|27才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    カムイ
    神威(ka5395unit001
    ユニット|幻獣
  • ドラゴンハート(本体)
    リュミア・ルクス(ka5783
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン

    カンナさん(ka5783unit001
    ユニット|CAM

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
ミカ・コバライネン(ka0340
人間(リアルブルー)|31才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/03/27 18:58:12
アイコン 相談卓
レイレリア・リナークシス(ka3872
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/03/27 06:20:54
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/03/25 17:01:07