ゲスト
(ka0000)
【郷祭】悩みは出店のラインナップ
マスター:菊ノ小唄

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/24 22:00
- 完成日
- 2014/11/03 01:32
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「うーーーーん、ジェオルジの祭へ出店が決まったは良いものの……」
同盟領内、極彩色の街「ヴァリオス」の、新進気鋭の商人たちが集う新興商店街。
その一角に店を構える『ペルミアーナ服飾店』の在庫置き場で、新人・ランティアは頭を抱えていた。持っていく商品の選別と当日向こうでの販売は頼んだよ、と大尊敬する店主に言われたのがつい先頃。頼まれたこと自体は嬉しいし、ジェオルジへ行けるのも楽しみ。しかも今年は例年になく大規模にやるということであったし、ワクワクする気持ちは止まらない。
が、盛大な悩みもまた、膨らむ一方だった。
「ジェオルジの人たちって、何が欲しいのかしら。農具……? そんなわけないわよね……」
そう、どんな物を商品として持っていけばいいのか、純ヴァリオス育ちのランティアには、さっぱりわからないのだ。ちなみにランティア達の店が扱っているのは服や服飾雑貨。服飾雑貨ならほぼなんでも取り揃えていると自負もある、それなりに大きな店である。
うーんうーんと悩みながら、先輩店員と昼食へ出掛けたランティア。
「先輩、どうしたらいいと思いますー……?」
「大役だわねぇ」
「大役なんですよ……」
「だったら、ひとりで頑張ろうとしないのも、手じゃない?」
「そうなんです、だからこうして」
「あいにく私は自分の担当業務で手一杯でねぇ」
「せんぱぁい……」
「だから、他を当たって頂戴」
「そんなぁ」
「誰に手伝ってもらうか、が、アナタの今回の課題なのかもしれないわねぇ」
いろいろ頭をひねってみなさいな、と言いながら先輩店員は食事の会計をランティアの分まで済ませ、仕事へ戻っていった。
「誰に手伝ってもらうか、かぁ」
店の面々を思い浮かべるランティア。店主から始まり、事務員の男の子まで思い浮かべてみたが、どの人も自分の仕事で忙しそうにいつも過ごしている。
「………ん……『仕事』?」
頬杖の痕が残る顔をはっと上げた。
(仕事として、いろいろ手伝ってくれる人たちがいるじゃない!)
彼女の目に入ったのは、食事に来ていた数人の男女。服装から察するに、仕事帰りのハンターたちであろうと思われる。彼らハンターは様々な人々の集まりで、様々な依頼の中からそれぞれ好きな仕事を選んで働きに行くという。
ハンターであれば、自分の悩みに良いアドバイスをくれる人も居るかもしれない。
(店の物を見てもらいながら、相談してみてもいいかもしれない……そうなると、あんまりたくさんは呼べないかしら……)
ランティアは思いついたことを手帳に書き留め、早速、依頼料を必要経費として出してもらう相談をしに店へ走っていったのだった。
同盟領内、極彩色の街「ヴァリオス」の、新進気鋭の商人たちが集う新興商店街。
その一角に店を構える『ペルミアーナ服飾店』の在庫置き場で、新人・ランティアは頭を抱えていた。持っていく商品の選別と当日向こうでの販売は頼んだよ、と大尊敬する店主に言われたのがつい先頃。頼まれたこと自体は嬉しいし、ジェオルジへ行けるのも楽しみ。しかも今年は例年になく大規模にやるということであったし、ワクワクする気持ちは止まらない。
が、盛大な悩みもまた、膨らむ一方だった。
「ジェオルジの人たちって、何が欲しいのかしら。農具……? そんなわけないわよね……」
そう、どんな物を商品として持っていけばいいのか、純ヴァリオス育ちのランティアには、さっぱりわからないのだ。ちなみにランティア達の店が扱っているのは服や服飾雑貨。服飾雑貨ならほぼなんでも取り揃えていると自負もある、それなりに大きな店である。
うーんうーんと悩みながら、先輩店員と昼食へ出掛けたランティア。
「先輩、どうしたらいいと思いますー……?」
「大役だわねぇ」
「大役なんですよ……」
「だったら、ひとりで頑張ろうとしないのも、手じゃない?」
「そうなんです、だからこうして」
「あいにく私は自分の担当業務で手一杯でねぇ」
「せんぱぁい……」
「だから、他を当たって頂戴」
「そんなぁ」
「誰に手伝ってもらうか、が、アナタの今回の課題なのかもしれないわねぇ」
いろいろ頭をひねってみなさいな、と言いながら先輩店員は食事の会計をランティアの分まで済ませ、仕事へ戻っていった。
「誰に手伝ってもらうか、かぁ」
店の面々を思い浮かべるランティア。店主から始まり、事務員の男の子まで思い浮かべてみたが、どの人も自分の仕事で忙しそうにいつも過ごしている。
「………ん……『仕事』?」
頬杖の痕が残る顔をはっと上げた。
(仕事として、いろいろ手伝ってくれる人たちがいるじゃない!)
彼女の目に入ったのは、食事に来ていた数人の男女。服装から察するに、仕事帰りのハンターたちであろうと思われる。彼らハンターは様々な人々の集まりで、様々な依頼の中からそれぞれ好きな仕事を選んで働きに行くという。
ハンターであれば、自分の悩みに良いアドバイスをくれる人も居るかもしれない。
(店の物を見てもらいながら、相談してみてもいいかもしれない……そうなると、あんまりたくさんは呼べないかしら……)
ランティアは思いついたことを手帳に書き留め、早速、依頼料を必要経費として出してもらう相談をしに店へ走っていったのだった。
リプレイ本文
祭の出店のラインナップを考える。
そんな相談の仕事を引き受けたハンターたちが、客足の緩む昼のひと時、『ペルミアーナ服飾店』に集まった。
「さすがにヴォリオスの一角を押さえてるだけあって、わりと良い店だな」
へえ、と言いながら楽しそうに店内を眺めているのはジャック・エルギン(ka1522)。様々な服や雑貨が並ぶ店内で、束ねた長い金髪を赤い上着の背に揺らしながら歩いていると、
「お、このジャケット良いじゃん」
マネキンが着ている赤いジャケットを碧い目が見つけた。
「赤がお好きですか?」
隣へやってきた若い女性店員の言葉に、おう好き好きー、と頷いてからその店員が依頼主であることに気付く。
「っと、仕事で来たんだったっけか。よろしくな」
「はい。こちらこそ今日はよろしくお願いいたします」
にこっと笑って一礼した女性店員ランティア。
そこへ、ぐるりと店内を見て回っていたエルフ、アシェ・ブルゲス(ka3144)が来て、
「それにしても出店か、いいなぁ。担当おめでとう」
と声をかけた。
「ありがとうございます。いいな、と仰いますと、ブルゲスさんも何か目指しておられるところが……?」
首を傾げたランティアに、アシェは頷く。
「僕はちょっと物作りをね。いつかはこういう大きな祭りに出店したいから、今回は良い経験になるよ」
「そうでしたか。楽しみにしておりますね」
「頑張るよ。そうそう、今回の提案に関してだけど。流行の傾向とか、店独自の商品があれば教えてくれる?」
「勿論です。こちらへどうぞ」
今秋の最新作が並ぶコーナーへ案内されたハンターたちは、思い思いに感想を述べる。
「わ、秋物といってもすごく華やかなんですね」
秋らしい色合いでありながらも、金糸銀糸に小花がふんだんにあしらわれている服や小物が並んでいるのを見て、コーネリア・デュラン(ka0504)が目を丸くした。そしてスカーフを手に取る。
「あ、これ可愛い……お仕事中でも使いやすいかもしれません」
「こっちの髪留めとかも良いんじゃない? 小物は気軽に勧めやすそうね」
そう話すのは、ティアナ・アナスタシア(ka0546)。
「小物ですか」
ランティアがメモを取る。ティアナは言葉を続けた。
「小物って、自分で買うのもそうだけど、贈り物にも良いと思うの」
「ああなるほど、服ではそうもいきませんものね」
そんな話にコーネリアも頷き、
「やはり最新流行物は、ジェオルジ辺りの地域では縁が薄くて敷居が高いと思いますから、普段着の一部にちょっとしたお洒落グッズを……とお勧めするのはどうですか?」
「ほうほう、手の伸ばしやすさや、きっかけを考える、ということですね」
ランティアのメモが増えていく。
そういえば、と最上 風(ka0891)が大きな羽根つき帽子を手に取りながら顔を上げた。
「ヴァリオス最新ファッションで、カカシや家畜を飾るというのはどうですか?」
「カカシ、家畜、ですか?」
目を真ん丸にする新人店員に、風はひとつ頷く。
「可能ならですが。服に興味の無い層へもアピールできると思います」
派手すぎたり、流行を過ぎたもので売れ残った服などを使っても良いのでは、と話は続き、目を真ん丸にしながらもランティアはメモを取り続ける。
「ええとそれじゃ、なんとかうまくいくよう、あちこちに確認しますね」
奇抜ですけど新規開拓こそ私たちの本領です、とランティアはメモ帳を握り締めた。
「あ、そうだ」
声を上げたのはアシェ。確認で思い出した、と続ける。
「マネキンってどれくらい持っていけるんだろう?」
「それでしたら、1体使っていいとは言われております」
「1体か。いくつも用意して、お店のお勧め組み合わせを着せて飾るとかどうかなと思ってたんだけど」
アシェの提案にうんうんとランティアは頷いた。ハンガーでなんとか代用しようかしら、と呟く彼女に、アシェは、
「じゃ、僕が作るよ!」
と言い、きりっとした表情を見せた。
きょとん、としたランティアに、あっそうかとアシェが気付いて補足する。
「僕が物作りしてるって話。廃材アートで色んなもの組み合わせて作るんだ。その要領でマネキンを作ろうかなって」
「なるほど……面白そうです。店側でも何か協力できることがあるか、確認しますね」
「ありがとう! それじゃあ、木材を組み合わせて人の形にして布を丸めて頭にしてくっつけて全体に布を貼ったらそれっぽくなるかな、関節に余裕を持たせて色んなポーズも取れるようにしよう」
さらさらさらさらーっとそこまで説明してから、アシェはあらぬほうを見ながら夢見るようにぽそりと呟く。
「……僕の作品が祭に展示……」
「ん、なんですか?」
「あ、いやいやそんなことは」
きりりっ。
そんなこんなでランティアは一旦、店の責任者や在庫管理者、あるいはデザイナーたちのもとへ各種確認に走る。祭で物がどのようにどれくらい使えるか、マネキンの材料が店でどこまで用意できるか、などを確認しに行った。戻ってきた彼女は一同に報告。
「現在の在庫をカカシや家畜に使うのは許可が下りませんでした」
「それは残念」
風に頭を下げるランティア。
「申し訳ありません。けれども、それ専用に新しく作るなら楽しそうだ、とデザイナーさんも店長も乗り気です」
「今から作るんですか」
「はい。というかもう向こうはその話で持ちきりでした。デザインや使うものなどご提案があればお願いします」
「了解です。それじゃ、家畜用に馬具や首輪、カカシには奇抜な格好を、と伝えてください。世の中には、ペットを着飾らせたり、畑にイルミネーションとか付ける人たちが居ますので、需要あるかもです、とも」
「わかりました、伝えます。あ、あとブルゲスさん」
ランティアは直営の工房から調達できたという生地の端切れと裁縫道具を一抱え、アシェに渡す。
「木材や加工道具は、さすがにありませんでした」
「わかった、それじゃ僕はちょっと出かけてくるね」
アシェが必要な材料を買いに出かけている間、残ったメンバーは店員の控え室でテーブルを囲み、それぞれの提案について話し合うことにした。
「私の場合ですが、気合いの入ったお洒落でなくともちょっとしたことは普段からしたいなって思うんです」
だからまずは雑貨からと思いまして、と話すのはコーネリア。なるほどねぇ、とティアナが頬杖をつく。
「私自身はあまり装飾品とか気にしたことはないけど、買う人の気持ちになって考えるって難しいよね……」
「雑貨ごとに使い方とか考えてみてもいいかもしれません」
「あとは勧め方もかな? 手鏡なら、お化粧はできなくてもいつでも清潔を保てるように、って女性向けに話せそう」
そんな二人に、ジャックが腕組みしながら話しかけた。
「なぁあのさ、買う、ってのに限らなくてもいいんじゃねぇの?」
何のことだろう、という視線を向ける面々にジャックは説明する。
「在庫置き場のモンも見たけどよ、服の扱いが難しいんだよな、やっぱ」
「やはり、最新ファッションは取っ付きにくい面が強いのでしょうか……」
新しいからこその、この楽しさをなんとか伝えられないものかと悩んでいるのだとランティアはハンターたちに話す。
「そうそう。農村の人間に、流行だーって言ったってバカ売れするとは考えにくいんだろ。だからむしろ楽しさってのがポイントだと思ったわけ」
頷くジャックの話の先を、メモを取りながら頷き返してランティアが促す。
「んで、だ。こういうのはどうよ?」
ジャックの提案。それは試着自体をサービスとして売り出すことだった。すなわち、当日持ち込んだ流行の衣類を自由に試着する権利を、格安で売って楽しんでもらうというものだ。
「フリッフリなスカートやら、ビシッと決めたスーツとか着てもらって、『似合わねー!』とか『うちの娘マジ天使』とか、笑い話にすんだよ」
「買うより手軽というのは良いですね」
風がふむふむと相槌を打って、
「その時にさり気なく、畑仕事などでも使えそうなブーツや帽子とかを組み込んでみても良いかと」
「それも良いな。元は取れるかわかんねーが、実際に着りゃ記憶に残るし、宣伝にもなるだろ」
まっ、とジャックは椅子に座りなおす。
「お祭なんだしよ。売れるとか売れねーとかじゃなくて、面白いことやろーぜ?」
ニッと片頬で笑った顔からは、他の誰よりもまずジャック自身が面白がっている様子が窺えた。
「試着サービスか、面白そう」
買い物を終え、マネキンの材料を担いで帰ってきたアシェが話に加わった。
控え室の隅で道具を広げ、マネキン作りに取り掛かるアシェ。それを見て、ティアナがふと、
「マネキンだけじゃなく、店側の人が実際に着てみせてアピールするのはどうかな?」
「あ、良いと思います。お客様と一緒になって楽しんでしまうつもりでも良さそうですね」
頷いたランティアに、アシェがマネキンの胴の長さを確認しつつ、
「今から練習も兼ねて着替えてみない? 僕、これ終わったらコーディネイトの練習台になるよ」
「風にも、似合いそうなコーディネイトをお願いします」
これは流行最先端の服を着るチャンス、と顔に書いてある風であった。隣のコーネリアは、雑貨のパンフレットをあれこれ見比べながら、
「あの、女の子向けの可愛いコーディネイトをいろいろ考えてみてもいいですか?」
と挙手。ランティアはそれぞれに首肯して、
「わかりました、試着に使えるものをまとめてきます! 先に最上さんからやらせて頂きますね」
「あ、マネキン出来上がったら言うよ」
「はい、よろしくお願いします。出来上がり次第使わせてください」
「ぜひぜひ」
試着に使えるものをかき集めてきたランティアが、デザイナーも1人連れて戻ってきた。この店の専属デザイナーで、コーディネイトや新しい作品作りの参考に試着の様子を書き留めたいという。
こうしてコーディネイト・試着練習が始まった。
その途中でマネキン3体も完成。服装ごとにマネキンのポーズを変えてみたり、分解を簡単にできるように改造してみたり。可愛らしい女の子になったかと思えば、シックなメンズファッションになっていたり。
試着の練習台になったハンターたちも、普段とは随分違う服に身を包み、がらりと雰囲気が変わる。風がどこぞのご令嬢のような風格を漂わせていたり、ジャックの選んだ真っ赤なコートをスーツと合わせてアシェが着ていたり。コーネリアはティアナと二人でマネキンを可愛らしく仕上げることができて満足そう。また、雑貨を見ながらティアナは贈り物におすすめなもの一覧を作ってランティアに渡していた。
練習とはいえ大いに盛り上がり、ランティアのアイデアメモも、専属デザイナーのイラストメモも山盛りになっていく。
そして気が付けば予定の終了時間が間近に迫っていた。全員、大慌てで片付けて、各種確認を済ませる。
「今日はありがとうございました。こんなに沢山の『できそうなこと』が見つかるなんて思ってもみませんでした」
ランティアが、両腕いっぱいになった紙束を見せながら礼を言った。ハンターたちも口々に声援を送る。
「出店担当、頑張れよ」
「当日が楽しみですね」
「今日も楽しかったよ」
「マネキンよろしく」
「お客の心を掴めるよう頑張ってください」
「はい! 頑張ります!」
ハンターたちが集まって見つかった、できること、できそうなこと、面白そうなこと……その全てを村長祭に注ぎ込めるよう、あとは全力で動くだけだ。
「本当に本当に、ありがとうございました!」
そんな相談の仕事を引き受けたハンターたちが、客足の緩む昼のひと時、『ペルミアーナ服飾店』に集まった。
「さすがにヴォリオスの一角を押さえてるだけあって、わりと良い店だな」
へえ、と言いながら楽しそうに店内を眺めているのはジャック・エルギン(ka1522)。様々な服や雑貨が並ぶ店内で、束ねた長い金髪を赤い上着の背に揺らしながら歩いていると、
「お、このジャケット良いじゃん」
マネキンが着ている赤いジャケットを碧い目が見つけた。
「赤がお好きですか?」
隣へやってきた若い女性店員の言葉に、おう好き好きー、と頷いてからその店員が依頼主であることに気付く。
「っと、仕事で来たんだったっけか。よろしくな」
「はい。こちらこそ今日はよろしくお願いいたします」
にこっと笑って一礼した女性店員ランティア。
そこへ、ぐるりと店内を見て回っていたエルフ、アシェ・ブルゲス(ka3144)が来て、
「それにしても出店か、いいなぁ。担当おめでとう」
と声をかけた。
「ありがとうございます。いいな、と仰いますと、ブルゲスさんも何か目指しておられるところが……?」
首を傾げたランティアに、アシェは頷く。
「僕はちょっと物作りをね。いつかはこういう大きな祭りに出店したいから、今回は良い経験になるよ」
「そうでしたか。楽しみにしておりますね」
「頑張るよ。そうそう、今回の提案に関してだけど。流行の傾向とか、店独自の商品があれば教えてくれる?」
「勿論です。こちらへどうぞ」
今秋の最新作が並ぶコーナーへ案内されたハンターたちは、思い思いに感想を述べる。
「わ、秋物といってもすごく華やかなんですね」
秋らしい色合いでありながらも、金糸銀糸に小花がふんだんにあしらわれている服や小物が並んでいるのを見て、コーネリア・デュラン(ka0504)が目を丸くした。そしてスカーフを手に取る。
「あ、これ可愛い……お仕事中でも使いやすいかもしれません」
「こっちの髪留めとかも良いんじゃない? 小物は気軽に勧めやすそうね」
そう話すのは、ティアナ・アナスタシア(ka0546)。
「小物ですか」
ランティアがメモを取る。ティアナは言葉を続けた。
「小物って、自分で買うのもそうだけど、贈り物にも良いと思うの」
「ああなるほど、服ではそうもいきませんものね」
そんな話にコーネリアも頷き、
「やはり最新流行物は、ジェオルジ辺りの地域では縁が薄くて敷居が高いと思いますから、普段着の一部にちょっとしたお洒落グッズを……とお勧めするのはどうですか?」
「ほうほう、手の伸ばしやすさや、きっかけを考える、ということですね」
ランティアのメモが増えていく。
そういえば、と最上 風(ka0891)が大きな羽根つき帽子を手に取りながら顔を上げた。
「ヴァリオス最新ファッションで、カカシや家畜を飾るというのはどうですか?」
「カカシ、家畜、ですか?」
目を真ん丸にする新人店員に、風はひとつ頷く。
「可能ならですが。服に興味の無い層へもアピールできると思います」
派手すぎたり、流行を過ぎたもので売れ残った服などを使っても良いのでは、と話は続き、目を真ん丸にしながらもランティアはメモを取り続ける。
「ええとそれじゃ、なんとかうまくいくよう、あちこちに確認しますね」
奇抜ですけど新規開拓こそ私たちの本領です、とランティアはメモ帳を握り締めた。
「あ、そうだ」
声を上げたのはアシェ。確認で思い出した、と続ける。
「マネキンってどれくらい持っていけるんだろう?」
「それでしたら、1体使っていいとは言われております」
「1体か。いくつも用意して、お店のお勧め組み合わせを着せて飾るとかどうかなと思ってたんだけど」
アシェの提案にうんうんとランティアは頷いた。ハンガーでなんとか代用しようかしら、と呟く彼女に、アシェは、
「じゃ、僕が作るよ!」
と言い、きりっとした表情を見せた。
きょとん、としたランティアに、あっそうかとアシェが気付いて補足する。
「僕が物作りしてるって話。廃材アートで色んなもの組み合わせて作るんだ。その要領でマネキンを作ろうかなって」
「なるほど……面白そうです。店側でも何か協力できることがあるか、確認しますね」
「ありがとう! それじゃあ、木材を組み合わせて人の形にして布を丸めて頭にしてくっつけて全体に布を貼ったらそれっぽくなるかな、関節に余裕を持たせて色んなポーズも取れるようにしよう」
さらさらさらさらーっとそこまで説明してから、アシェはあらぬほうを見ながら夢見るようにぽそりと呟く。
「……僕の作品が祭に展示……」
「ん、なんですか?」
「あ、いやいやそんなことは」
きりりっ。
そんなこんなでランティアは一旦、店の責任者や在庫管理者、あるいはデザイナーたちのもとへ各種確認に走る。祭で物がどのようにどれくらい使えるか、マネキンの材料が店でどこまで用意できるか、などを確認しに行った。戻ってきた彼女は一同に報告。
「現在の在庫をカカシや家畜に使うのは許可が下りませんでした」
「それは残念」
風に頭を下げるランティア。
「申し訳ありません。けれども、それ専用に新しく作るなら楽しそうだ、とデザイナーさんも店長も乗り気です」
「今から作るんですか」
「はい。というかもう向こうはその話で持ちきりでした。デザインや使うものなどご提案があればお願いします」
「了解です。それじゃ、家畜用に馬具や首輪、カカシには奇抜な格好を、と伝えてください。世の中には、ペットを着飾らせたり、畑にイルミネーションとか付ける人たちが居ますので、需要あるかもです、とも」
「わかりました、伝えます。あ、あとブルゲスさん」
ランティアは直営の工房から調達できたという生地の端切れと裁縫道具を一抱え、アシェに渡す。
「木材や加工道具は、さすがにありませんでした」
「わかった、それじゃ僕はちょっと出かけてくるね」
アシェが必要な材料を買いに出かけている間、残ったメンバーは店員の控え室でテーブルを囲み、それぞれの提案について話し合うことにした。
「私の場合ですが、気合いの入ったお洒落でなくともちょっとしたことは普段からしたいなって思うんです」
だからまずは雑貨からと思いまして、と話すのはコーネリア。なるほどねぇ、とティアナが頬杖をつく。
「私自身はあまり装飾品とか気にしたことはないけど、買う人の気持ちになって考えるって難しいよね……」
「雑貨ごとに使い方とか考えてみてもいいかもしれません」
「あとは勧め方もかな? 手鏡なら、お化粧はできなくてもいつでも清潔を保てるように、って女性向けに話せそう」
そんな二人に、ジャックが腕組みしながら話しかけた。
「なぁあのさ、買う、ってのに限らなくてもいいんじゃねぇの?」
何のことだろう、という視線を向ける面々にジャックは説明する。
「在庫置き場のモンも見たけどよ、服の扱いが難しいんだよな、やっぱ」
「やはり、最新ファッションは取っ付きにくい面が強いのでしょうか……」
新しいからこその、この楽しさをなんとか伝えられないものかと悩んでいるのだとランティアはハンターたちに話す。
「そうそう。農村の人間に、流行だーって言ったってバカ売れするとは考えにくいんだろ。だからむしろ楽しさってのがポイントだと思ったわけ」
頷くジャックの話の先を、メモを取りながら頷き返してランティアが促す。
「んで、だ。こういうのはどうよ?」
ジャックの提案。それは試着自体をサービスとして売り出すことだった。すなわち、当日持ち込んだ流行の衣類を自由に試着する権利を、格安で売って楽しんでもらうというものだ。
「フリッフリなスカートやら、ビシッと決めたスーツとか着てもらって、『似合わねー!』とか『うちの娘マジ天使』とか、笑い話にすんだよ」
「買うより手軽というのは良いですね」
風がふむふむと相槌を打って、
「その時にさり気なく、畑仕事などでも使えそうなブーツや帽子とかを組み込んでみても良いかと」
「それも良いな。元は取れるかわかんねーが、実際に着りゃ記憶に残るし、宣伝にもなるだろ」
まっ、とジャックは椅子に座りなおす。
「お祭なんだしよ。売れるとか売れねーとかじゃなくて、面白いことやろーぜ?」
ニッと片頬で笑った顔からは、他の誰よりもまずジャック自身が面白がっている様子が窺えた。
「試着サービスか、面白そう」
買い物を終え、マネキンの材料を担いで帰ってきたアシェが話に加わった。
控え室の隅で道具を広げ、マネキン作りに取り掛かるアシェ。それを見て、ティアナがふと、
「マネキンだけじゃなく、店側の人が実際に着てみせてアピールするのはどうかな?」
「あ、良いと思います。お客様と一緒になって楽しんでしまうつもりでも良さそうですね」
頷いたランティアに、アシェがマネキンの胴の長さを確認しつつ、
「今から練習も兼ねて着替えてみない? 僕、これ終わったらコーディネイトの練習台になるよ」
「風にも、似合いそうなコーディネイトをお願いします」
これは流行最先端の服を着るチャンス、と顔に書いてある風であった。隣のコーネリアは、雑貨のパンフレットをあれこれ見比べながら、
「あの、女の子向けの可愛いコーディネイトをいろいろ考えてみてもいいですか?」
と挙手。ランティアはそれぞれに首肯して、
「わかりました、試着に使えるものをまとめてきます! 先に最上さんからやらせて頂きますね」
「あ、マネキン出来上がったら言うよ」
「はい、よろしくお願いします。出来上がり次第使わせてください」
「ぜひぜひ」
試着に使えるものをかき集めてきたランティアが、デザイナーも1人連れて戻ってきた。この店の専属デザイナーで、コーディネイトや新しい作品作りの参考に試着の様子を書き留めたいという。
こうしてコーディネイト・試着練習が始まった。
その途中でマネキン3体も完成。服装ごとにマネキンのポーズを変えてみたり、分解を簡単にできるように改造してみたり。可愛らしい女の子になったかと思えば、シックなメンズファッションになっていたり。
試着の練習台になったハンターたちも、普段とは随分違う服に身を包み、がらりと雰囲気が変わる。風がどこぞのご令嬢のような風格を漂わせていたり、ジャックの選んだ真っ赤なコートをスーツと合わせてアシェが着ていたり。コーネリアはティアナと二人でマネキンを可愛らしく仕上げることができて満足そう。また、雑貨を見ながらティアナは贈り物におすすめなもの一覧を作ってランティアに渡していた。
練習とはいえ大いに盛り上がり、ランティアのアイデアメモも、専属デザイナーのイラストメモも山盛りになっていく。
そして気が付けば予定の終了時間が間近に迫っていた。全員、大慌てで片付けて、各種確認を済ませる。
「今日はありがとうございました。こんなに沢山の『できそうなこと』が見つかるなんて思ってもみませんでした」
ランティアが、両腕いっぱいになった紙束を見せながら礼を言った。ハンターたちも口々に声援を送る。
「出店担当、頑張れよ」
「当日が楽しみですね」
「今日も楽しかったよ」
「マネキンよろしく」
「お客の心を掴めるよう頑張ってください」
「はい! 頑張ります!」
ハンターたちが集まって見つかった、できること、できそうなこと、面白そうなこと……その全てを村長祭に注ぎ込めるよう、あとは全力で動くだけだ。
「本当に本当に、ありがとうございました!」
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/21 22:24:02 |
|
![]() |
相談卓 最上 風(ka0891) 人間(リアルブルー)|10才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/10/23 22:45:16 |