• 陶曲

【陶曲】村長の横暴

マスター:奈華里

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
6日
締切
2017/04/10 09:00
完成日
2017/04/23 01:39

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「え…どういう事なの?」
 ここはとある小さな村――。
 小さいながらもそれなりに知名度が出てきているのはある三人の村娘達の頑張りにある。
 毎年二回行われる村長祭に地元野菜を使った屋台を出品し、時に祭り用のお弁当を考案して徐々にではあるが村が発展の兆しを見せている。なのに、今彼女らの前にある現実というと…。
「ここは明日からうちらの畑になるから、そう言う事でよろしく頼むわ」
 如何にも余所者といった雰囲気のガラの悪い女達。そんな連中が彼女らの畑を占領している。
「ちょっと待ってよ! ここは私達の畑よ。ちゃんと登録だってしてるのに」
 仲間の一人が物怖じせず言い放つ。
「はっ、だったら調べて来なよ。こっちは村長に話はつけてきてんだから」
 女達も自分らの主張は間違っていないと言い張る。
 そこで畑作業もそこそこに村長の元へと駆け込んで…彼女らは唖然とした。
「ま、そう言う事だから少しぐらいいいでしょ?」
「はぁ??」
 何ともあっさりとそう言い切る村長の様子はかなりおかしい。
 三人とは目を合わさず、頻りに何かを気にしている。
「しっかりして下さい、村長! 私達は真面目にやって来たのにこんなのあんまりです!」
 村娘の一人が涙ながらに訴える。
「あんな奴らに畑渡してもきっと変な事に使うに決まってますって!」
「そうだそうだっ! それにあの畑は今新しい野菜を植えたばかりで…」
 残りの二人も負けじと自分らの正当性を主張する。だが、村長も頑なに譲らない。
「まあまあ、人は助け合っていくものじゃて…そうかっかしなすんなて」
 相変わらず視線を合わせるのを避けて、そう諭す。
『でもっ』
「でももかしこもありゃせんよ。何ならお前達が出て行けばよいじゃろう」
 村の貢献人へのキツイ一言。何が何でも言い過ぎだ。
 村長も言った後バツが悪くなったのか疲労を理由に、自室へ引っこんでしまう。
「どうしよう。このままだと本当にあの畑とられちゃうよぉ」
 残された三人が深く息を吐く。村長権限であれ、これは身勝手にも程がある。
「村長! どういう事だい。明日から野菜の出荷をストップだってっ」
 すると今度は別の村人が仰天ニュースを引っ提げて直談判。
 けれど、村長は部屋に引きこもりドアを開けようとはしない。
「なあ、ちゃんと説明してくれよ。なんでこんなこと…」
 唐突な話に村民らが困惑している。
「それはそれ…地産地消を推奨してだな」
「はぁ? 全く爺さん、どうかしてるぜ、ボケちまったのかい? 村では食べ切れんだろう」
「そうだよ。積極的に作れって言って生産拡大を推奨したのは村長さんだろう」
 次々と飛び込んでくる村人達であるが、やはり村長は譲らず筋の通らない意見をただ述べるだけだ。
「何なの一体……これじゃあ安心して農作業に精を出せないよぉ」
 村長宅からの帰り道に仲間の一人ががっくりと肩を落としながら呟く。
「もしかしてあの女達が村長に何かしたんじゃあ?」
 そこでふとその事が頭を過って、彼女らはこっそりと畑を占領していた女達の様子を窺う。
 すると、
「ははっ、やっとあたいらにもツキが回って来たねぇ。まさかあの爺さんがこんな村の村長だったとは」
「だね。酒場で見つけた時は垂らし込んで財布でもすってやろうと思ったけど、そんな必要なかったし」
 と何やら不穏な会話――やはり女達はごろつきの類いであるらしい。
「しっかしあれね。本当にボケてんのかしら…あのおじいちゃんガラクタに話しかけたりして」
 くすくすと笑いながらもう一人が言う。
「さあねぇ、けどなんでもいいさ。畑仕事なんかはやってられないけど、土地が貰えたんだよ。売っぱらえばそこそこの金にはなる。なんなら、今日来た娘達と交渉して高く買い戻されるってのはどうよ?」
 持参して来た酒を煽って、畑にテントを張り酒宴が続く。
「あぁ~畑の野菜がぁ」
 やっと出始めた双葉が無残にもテントに潰されている。
 それを前に怒りを覚えるも今は無駄だとぐっと堪える。
 その代わりに彼女らの言葉に集中して気付いたのは不可思議な点だ。
 もし彼女らが言っている事が本当ならば村長は彼女らに会う前からおかしかった事になる。
「ねえ、確か村長ってここ数日用事があるとかでポルトワールの方に行ってなかったっけ?」
 村娘の一人が言う。
「向こうに孫娘がいるんじゃなかったかな?」
 とこれはもう一人の情報だ。
「ねえ、今あっちって変な事件が多発してるとか聞いたけど…」
 嫌な予感が三人の脳裏をよぎる。そこからの三人の対処は迅速だった。
 さっき聞いた話をまとめて、向かうはハンター達の元。
(私達の村を守らないと…)
 そんな思いを胸に――しかし、情報は余りにも少なかった。

リプレイ本文

●仕込み
 村長の異変を察知した村娘達の対応でハンターは集まる。
 しかし、情報が少ない事から早々に調査分担がなされ、各人思う所へ聞き込みに向かう。それというのも彼らの考えが正しければ、この事態の収集には迅速さが必要だったからだ。ならず者達が奪った畑、その所有の件に関して…もし書類として成立していればすでに取り返すのは難しい。しかし、村長との口約束が発端で今まだ契約的なものが成立していないのならば、この話を白紙に戻すのは容易といかないまでも話し合いで済む可能性がある。
 けれど、相手がならず者というだけで一筋縄ではいかないだろう。
(言ってみれば畑は金蔓だからなぁ…簡単には手放さんか)
 だが、もし万が一身に危険が及ぶと判れば…そう思い上杉浩一(ka0969)は策を講じる。
「あ~ちょっといいかしら? この村近くで出た歪虚を追ってる者なんだけどぉ」
 口調だけで聞けば女であるが、その容姿はどう見ても男で、寝ぼけ眼の一人が思わず二度見する。
「っと失礼。今の口調は忘れてくれ」
 その様子にハッとして浩一はバツが悪そうに口に手を当てる。
「はっはーん、まあいいさね。ってかハンターにもそういう奴いるのなぁ」
 が女はそんな事を気にするでもなく、彼を邪険に扱わなかった。はみ出し者という意味で同類と感じたのかもしれない。
「なんだい、そいつは?」
 もう一人の女が顔を出し尋ねる。
「邪魔してごめんなさいね~でも、気をつけてね。ここらでうまい話を聞いたら歪虚が絡んでいる可能性あり、だ・か・ら」
 パチリとウインクを添えて、彼はその場を後にする。残った者は顔を見合わせて…うまい話とは?
 自分達が当てはまるのか否かを仲間内で話し始める。
(やっぱり自分の身は可愛いよな…)
 浩一の作戦は上々だ。加えて叢に身を潜めていたケイ(ka4032)とレネット=ミスト(ka6758)もしたり顔。
「どうです? うまく撮れましたか?」
「ええ、ばっちりよ」
 魔導カメラで女達を撮影していたケイが言う。彼女はこの後この写真を頼りにポルトワールヘ向かう予定なのだ。そこでレネットはあちらに行けない自分に代わり調査のお願い。
「え~と、あの方達の酒場の利用頻度と別の仲間の有無、他の方…特に女性が絡まれたりしていなかったかの確認もお願いするのです」
 気になる事が多過ぎて動きかねている彼女であるが、要点はきっちり押さえたメモを手渡す。
「ええ、判ったわ」
 それに快く答えて、ケイはハンター用の転移門へと向かう。するとそこには孫娘の確保を目的としているトリプルJ(ka6653)がいて、二人は事の発端であったと思われるポルトワールヘと歩を進めるのだった。

 一方その頃、Gacrux(ka2726)とパトリシア=K=ポラリス(ka5996)は登記確認と事情聴取に村長宅を訪れていた。ちなみに村娘達の話によれば、一応畑の所有に関する書類は全て村長宅で管理されているという。管理といってもどこの畑が誰のものと言った簡単なものであるが、小さな村ならそれで十分。悪さをするような者はいなった為、今まで問題はなかったそうだ。
「平和な村そのものといった感じですのに困った事です」
 代表の村娘一名を同行させて、周囲を警戒しながら村のパン屋に変装したGacruxが行く。
 すでに村長宅には今日も話をしたいという村人達も集まっている。
「あの、村長は?」
「それが今日は部屋からも出てこんのだよ…。全く本当にどうかしちまったのかねぇ」
 突然の奇行に広がる不安――狭い家であるが、それでも村長という事で玄関、台所、応接間、寝室と四つに分かれている。そこで彼等は先に応接間にある書類を検める事にした。幸い、保管棚の鍵はそれ程厳重ではない様で、少し力を加えると壊すのは容易い。
(事は一刻を争うので失礼しますね)
 Gacruxがそう心中で断りを入れて鍵を壊す。
「あ、多分これです!」
 すると勝手知ったる村娘が素早くそれを見つけて中を確認。どうやらまだ名義は村娘にあるようだ。
「ひとまずこれがあればあの方達を立ち退かせる事は出来ますね」
「フムゥ~、という事はアノ人達とは口約束ダッタというコトでしょーカ?」
 二人の間にひょこりと顔を出したパトリシアが探偵のような口振りで言う。
「かもしれないですね。兎に角村長に会わなくては」
 開かずの扉というのは大袈裟であるが、この扉を開けるには骨がいりそうだ。だが、方法はある。その為の変装だ。しかし彼のそれとは別にパトリシアは周りを気にせず真っ向勝負。
「そんちょーさん! コンニチワー何か、お困りごとハ無いデスカー?」
 コンコンッと扉をノックして彼女が声をかける。
「こ、困りごと…そんなのありゃせんよぉ…」
 だが、案の定村長からはそんな返事が返って来て、あっさり選手交代だ。
「村長さん。お腹は減っていないですか? もしお時間おありなら新作を味見して欲しいのですが?」
 Gacruxがどこで手に入れてきたのか焼立てのバターロールを手に呼びかける。
 すると中で少しだけ音がして、やはり腹が減っていたのだろう。
 扉に近付く人の気配。だが、すぐそこまで来た時彼は歩を止める。
(ムウウ…やはり様子がおかしいデスねー)
 そこで鍵穴から中の様子を探っていたパトリシアは確信した。
 村長は一度はこちらに来かけたのだが、途中でハッと首を上げ振り返ると何やらベッドに向かって話し始めたのだ。残念ながらベッドが扉の正面側にある為、村長の影になって何に向かって話しているかは判らない。
「頼む…飯位は構わんじゃろう。全ていう事は聞くから、どうかどうか…」
 懇願する村長の声に返ってくる言葉はなかったが、それでも会話は成立しているらしい。
 何度か頷くと、村長はようやっと扉に手をかける。
(まずいデスッ!)
 それに気付いてパトリシアは慌ててGacruxの後ろに下がる。
「ああ、良かった。では冷めないうちにどうぞ」
 Gacruxが彼の持てる最大級の笑顔を作って籠のパンを手渡す。その際にそっとメモ書きを潜ませて、目配せで村長にその存在を伝えられれば――こちらの作戦も順調といえよう。だが、彼の三白眼が少し怖く見えたのか肩を揺らし、籠ごと受け取るとすぐに扉を閉めてしまう。
「仕方アリません。外から監視するカナー」
 パトリシアが入るのを諦め外へ向かう。
(さて、うまくいけばいいのですが…)
 Gacruxもそう思いながら籠が戻ってくるのを待つのだった。

●切り札
 ポルトワールに到着した二人は当初の予定通り二手に分かれる。
 幸い村娘達は村長の孫娘の居場所を村長をよく知る人物から事前に聞き出してくれていたから時間のロスはなさそうだ。まずは孫娘の状態を最優先に家へと向かい、その扉を叩く。
「何か御用ですか?」
 そこでまず顔を出したのは二十代後半と思われる女性。普通に考えれば彼女は村長の孫娘の母親だろう。だが、そうでない場合も考えられる訳で、Jは慎重に事を見定める。
「メイトはいるかい?」
 その言葉に女は眉をしかめた。それはそうだ。見知らぬ男が娘を尋ねてきているのだ。
「お母さん、お客さん?」
 そこへ娘が顔を出して、彼はほっとした。孫娘が人質になっている線はないらしい。
 そこで事情を丁寧且つ簡潔に説明すれば二人も判ってくれる。
「確かに変だったのよね。いつもこの子の誕生日に会うのを楽しみにしてたのに、途中で突然やめたからって連絡が入って」
 村長にとっては娘であるメイトの母が今回の訪問がなかった事を彼に話す。
「とにかく何かに巻き込まれている事は確かだろうな。って事で来てくれないか?」
 Jがメイトに問う。娘の安全を保障するのを条件に母も彼女を託して…二人は急いで村へと戻る。
 その途中オフィスに立ち寄ったJであったが、人の多さに先の報告を断念した。
(うまくいけばこのまま終了…だしな)
 村孤立化の可能性について別でも起こっているかもと考えた彼であるが、今は村長の方が先だろう。
 そこでひとまず先に戻るついでにケイとの交信を試みる。
「どうだそっちは?」
 彼が通信機越しに問う。
「こっちにあのゴロツキ達の仲間はいないみたいよ。それとお爺さん…酒場についた時点ですでに少しおかしかったみたい」
 向こうは客が多いのか他の声がこちらに雑じって届く。
「変な爺さんの事知りたいんだろ? 俺知ってるぜ」
 そこでケイに声がかかって、ひとまず回線をストップする。
「何を知ってるって?」
 ケイが振り返り問う。すると男はグラスを叩いて…全くこの手の人間は抜かりがない。
「いいわ、奢りましょう」
 くすりと笑い彼女が言う。それに機嫌よくしたのか男は有力な情報を彼女にもたらす。
「あの爺さん、この世の終わりみたいな顔してたんだよなぁ。綺麗な包み持ってる割にそんな顔だろ…女達に絡まれてヤバいかと思ったら、あっさり話ついててちょっと気になってたんだよ」
 グラスのワインを飲み干しながら彼が言う。
「でその包みって?」
「多分贈り物だったんじゃねえかな。中身までは知らんが」
 贈り物とすると孫娘へのプレゼントだったか。

 明確とは言えないが徐々に村長の行動が見えてくる中、日が沈みゆく頃にはメイトが村へと到着して、
「お祖父ちゃん、お祖父ちゃんは無事なんですか!」
「おや、無事だったのですか…それは良かった」
 村長の孫娘の問いにGacruxが答える。
「…その言いよう何か引っかかるが、どうかしたのか?」
 そこでJが尋ねると、Gacruxから一枚のメモが渡される。それは村長からの返事だった。
 Gacruxのメモに気付いて、返されたそれには震える字で『孫を頼む』と書かれている。
「ねぇ、お祖父ちゃん。メイトだよ、ココを開けてっ」
 そこでメイトが無事を伝えるべく、寝室の扉を叩き開錠を促す。
「おおっ、メイトか! おまえが無事ならわしは…ふぐぅぅ!」
 その声に安堵と驚きの声を漏らす村長だったが、それも束の間。その後のくぐもった声がしてハンター一同に緊張が走って、
「仕方ありません、壊しましょう」
 Gacruxが扉に体当たりする。
 その間にJはメイトを守るよう一歩下がって、立ち会っていたレネットが一気に中へと滑り込む。
「村長さん、無事…ではないですねぇ」
 中にいたのは手に収まる程度のブリキの小鳥と倒れた村長。
 小鳥の方は細工も巧妙で今にも動きそうというか歪虚のせいなのだろう完全に動いており、倒れた村長から彼等を見上げている。
「あんたが今回の黒幕かい?」
 Jが下がった場所がら問う。
『ああ、そうとも。後少しだったのに、小賢しい奴らだなハンターって奴は』
 落ち着いた口振りで声なき声を皆の脳裏に飛ばし鳥は語り掛ける。
 が、そんな悠長にしていていいのか。こっそりとGacruxはワイヤーウィップを構えて、その時を待つ。
(人質のつもりでしょうが甘過ぎます)
 そして、その時はすぐに訪れた。鳥が両翼を広げ先制攻撃。大方混乱を誘う何かの術を持っていたのだろうが、発動前に彼のワイヤーが翼を捉えて、発動はしたものの逃げを許さない。乱暴に羽ばたいてみるが、細かく作られた羽にワイヤーが挟まり思うように飛び立てない。そこへパトリシアが急行して何とも呆気ない幕引きだ。
「逃がしハしないんダヨ」
 彼女の陰陽符が鳥に直接ダメージを与える。
 そこへ遅れてやって来たケイも加わり、銃で撃ち抜いたらもうそれまでだ。
「なんだ、終わったのか?」
 騒ぎを聞きつけてやって来た浩一が言う。
「一応ね。蓋を開けてみれば、思ったより小物だったわ」
 ケイはそう言うが、小物とて油断できない相手であった。何故ならこの村をここまでかき回したのだ。
「ふぅ、村長さん無事の様で何よりです」
 気絶していた彼に念の為ヒールを施していたレネットが言う。
 メイトはそれにほっとし、気付いた村長に駆け寄りぎゅっと抱きしめる。
 頻りに村長は謝まっていたが、悪いのは彼では決してなかった。

●混乱の訳
 そして翌日、全ては公の事となる。村長ははっきり言ってあの鳥に騙されていたようだ。
 何故そこに至ったかと言えば、少し話は長くなる。孫娘の誕生日に手ぶらで行く訳にはいかないと、彼は職人街の路上で売られていたブリキの小鳥を購入した。そして、綺麗な包みを施して孫娘の家に向かおうとした時事件は起こる。
「あの鳥が語り掛けてきたのじゃ…我は死の鳥。いう事を聞かなければ、お前の大切なものを全部頂くとな。だから、わしは怖くなって」
「従ったと?」
 浩一の問いに頷く村長。歪虚の脅威を常日頃感じている者ならば別であるが、思い出して欲しい。ここはジェオルジにあるとある村だ。村人皆が親戚の様に仲が良く、農業に専念できるこの場所で生きてきた彼にとって、あの小さな鳥が喋っただけでも度肝を抜かれた事だろう。加えて、それが害をなすものと分かった時の不安は計り知れない。
「畑は仕方なかったのじゃ…絡まれてしまって、金もそんなに持ってなかったから自分が村長をしているからと言ったらあの鳥が新たな命令を始めて…」
 申し訳なさそうに村長が言う。という事は本当にあのゴロツキ達は偶然居合わせ、この事件のお零れに与っただけらしい。ちなみにあのゴロツキ達…あの後、畑を三人娘らに売りつけにやって来たらしいのだが、登記の事もあり交渉決裂に終わったという。
「という事はあの方も被害者なのですね」
 いい話に夢を見させられた。歪虚としては駒として扱うつもりでもあったのだろうか。
 何にしてもこのまま追い出してしまうのは少し良心が痛む。
「どうしたもんでしょうか?」
 レネットが皆に尋ねる。
「歪虚が本当に出たと言えば大丈夫だろう。きっと逃げ出していくに違いない」
 浩一が言う。だが、彼女らにはこの村は平和過ぎたのだろう。村長が野菜なら好きなだけ持って行って構わないからどうか畑は返して欲しいと交渉に行くと、歪虚の事もあり思いの外あっさりと了承したという。
「アノ鳥はきっとサギだったニ違いないんダカラ」
 パトリシアが確信めいた口調で言う。
「フフッ、うまい事言うわね」
 それに笑うケイであるが、またしてもガラクタの歪虚とは……ハンターの勘が警鐘を鳴らす。
 一体何が起ころうとしているのか。それは先見出来ない彼等には判らない。
「うむ、神子としての第一歩はまあまあでしたが、頑張るのですよ」
 まだ新人のレネットの言葉に熟練ハンター達も気合いを入れ直す。だが、それは彼等だけではなくて…。


 ●「 」
 そこは大地の裂け目。
 記憶の傷跡。
 カッツオ・ヴォイは深淵なる闇に恭しく「それ」を差し出した。
「我が君よ……まだ目覚める気にはなられませぬか……?」
 問いかけに応えはない。
 ただ、……ただ、眷属達は狂喜する。

 ――……ドクン……
  ――……ドクン……

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MVP一覧

  • 売れない探偵
    上杉浩一ka0969

重体一覧

参加者一覧

  • 売れない探偵
    上杉浩一(ka0969
    人間(蒼)|45才|男性|猟撃士
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 憤怒王FRIENDS
    ケイ(ka4032
    エルフ|22才|女性|猟撃士
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリス(ka5996
    人間(蒼)|19才|女性|符術師
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 紡ぎしは歌、そして生命
    レネット=ミスト(ka6758
    ドワーフ|17才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
Gacrux(ka2726
人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2017/04/10 07:39:54
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/04/08 09:22:30