ゲスト
(ka0000)
【界冥】奪還指令! 空港外縁部制圧戦
マスター:紫月紫織

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/04/12 12:00
- 完成日
- 2017/04/24 22:32
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
◆純一は見た
「チッ、気持ちワリィ見た目してやがるぜ」
双眼鏡を覗き込み、吐き捨てるように神座御 純一(かざみ じゅんいち)は言葉を漏らす。
覗いた先の視界には巨大なVOID砲が鎮座し、その気味の悪い姿を晒していた。
形容するのであれば、巨大な三角錐の土台の上に載せられた特大の眼球。
この距離からでも、見つかればその砲によって攻撃されるだろう。
そんな特大の眼球は、終始得物を探すかのようにギョロギョロと視線をせわしなく動かしていた。
その周囲を――直径五十cmから一メートル程度の目玉が転がるように浮遊している。
あれもVOID砲の一種だと判明している。
二つを分けるため便宜上、巨大な三角錐を設置型、ふよふよと漂う連中を徘徊型と呼称している。
松前要塞奪還はすでに知られているのだろう、何を考えているのかわからない歪虚であるが、警戒されていることぐらいはわかる。
知られないように木陰に潜み、じっと辛抱強く観察を続ける。
今後行われる函館空港奪還作戦において、一つでも有益な情報を持ち帰らなければならない。
息を潜め、ただ巨大な目玉とその周辺をじっくりとっくりと観察し続ける、そんな生活をもう三日も続けていた。
目玉が、ぎょろりと視線を向ける。
「動いたな……やっぱり目玉は砲と見張りを兼ねてるってことか」
陽動部隊が遠距離からの攻撃を試みる、それに敵がどう対応するのかを確認するのも彼の任務だ。
目玉が目標を捉えたと思えばすぐさま警邏隊と思われる一団が駆けつけてくる。
枯れ木に触手を生やしたような物体と、CAM型一体。
破壊するとなれば交戦は必須だろう。
そしてもう一つ……。
設置型VOID砲が接近された場合に発生させる謎の何か。
事前の突入部隊が突如としてすべからく卒倒した謎の攻撃である。
あれは果たして何だったのか。
正体を確かめるために隊を犠牲にするわけにも行かず、それ以上の調査はできずに居た。
(ま、仕方ネェよな――敵の攻撃の正体を探るために神風特攻しろ、なんて言うわけにもいかねぇし……それで理解る確証もねぇ)
頃合いか。
立ち上がると無線の電源を入れる。
「こちら神座御准尉、聞こえるか? こちら神座御准尉、所定の観察サイクルを完了。これより帰投準備に入る」
『承知いたしました准尉、直ちに合流地点へ向かいます!』
この三日間、およびこれまでで出来る限りの情報は入手した。
後は――歯がゆいが、任せるしかない。
「悔しいよなぁ――」
なんで故郷を奪還するってのに、俺達はこんなに無力なんだ?
ここは俺達の国だろうになんだって――。
ぎりり、と握られる拳から、赤い雫が滴り落ちる。
溢れる言葉は固く結ばれた口に阻まれて、それきりだった。
◆エリクシアの所見
「それでは、依頼の内容について説明させていただきます」
依頼内容、概要をまとめた紙を【あなた達】に配るオフィス職員、エリクシアの手はいつもよりもゆっくりだ。
内心に隠している不安を露わにするほど職員として未熟ではない、だが正直不確定要素の強い一つの情報が彼女の胸中に一抹の不安を残していた。
「今回の依頼はリアルブルーからのもので、函館空港と呼ばれる施設を占拠している歪虚の撃滅となります。この作戦の目的は、函館クラスタ攻略時の航空支援を行うため、とのこと、成功すれば先が楽になりますねきっと。皆さんの担当は空港外縁部に存在するVOID砲郡、およびその警邏をしている歪虚部隊、建物内の歪虚は別のチームが受け持つことになっておりますので、そちらは気にしなくて良いそうです」
周辺、および空港の見取り図がテーブルの中央に置かれる。
かなり広範囲に開けた地形のようだ。
「最優先破壊目標はこの地点に存在する設置型VOID砲、コアと目されているそうです。大きさはおよそ高さ30m、上部にある砲が直径で5mほどの球体――眼球だそうです」
添付されている写真はなかなかに意味不明な物体に見える、人によってはこれが砲なのかと言いたくなりそうである。
「設置型の砲は射程がかなり長く、こちらが攻撃可能であれば反撃は十分に想定されうるとの事です。対して近距離に対しては砲は撃てない、あるいは撃たないそうで……」
一度言葉を区切ってから、エリクシアは強調して話す。
「代わりに、一定以上近づいた場合謎の範囲攻撃が行われるそうです。範囲は全周と推測され、戦闘区域ほぼ全域を覆うと想定されています、実際突撃した部隊は全員倒れて動かなくなったと。あちらさんはそれがなんなのかわからなかったそうです。この攻撃距離は射程と重なっていて、中間の空白地点はなさそうとのことです」
長く喋り続けた喉を潤すために、手元にあったお茶を啜るエリクシア。
それは心を落ち着けるための事でもあったのかもしれない。
「ここからは、確証のある情報ではありません。あくまでも推測です」
前置きをして、エリクシアは告げる。
「おそらくこの設置型と呼称されているVOID砲は、敵に接近された場合の自衛行動として、高濃度の負のマテリアルを放出するのではないかと思います。覚醒者であれば死に至るということはないでしょうが、おそらくかなりの重圧がかかると推測されます」
距離と位置関係的に、別働隊にまで影響はないでしょうが、遠隔から仕留めるにしても、接近して破壊するにしても、難しい相手であるのは間違いないと思われます。
「不確定情報が多くて申し訳ないです」
告げられることは以上です、とおいて、エリクシアは【あなた達】の反応を待った。
「チッ、気持ちワリィ見た目してやがるぜ」
双眼鏡を覗き込み、吐き捨てるように神座御 純一(かざみ じゅんいち)は言葉を漏らす。
覗いた先の視界には巨大なVOID砲が鎮座し、その気味の悪い姿を晒していた。
形容するのであれば、巨大な三角錐の土台の上に載せられた特大の眼球。
この距離からでも、見つかればその砲によって攻撃されるだろう。
そんな特大の眼球は、終始得物を探すかのようにギョロギョロと視線をせわしなく動かしていた。
その周囲を――直径五十cmから一メートル程度の目玉が転がるように浮遊している。
あれもVOID砲の一種だと判明している。
二つを分けるため便宜上、巨大な三角錐を設置型、ふよふよと漂う連中を徘徊型と呼称している。
松前要塞奪還はすでに知られているのだろう、何を考えているのかわからない歪虚であるが、警戒されていることぐらいはわかる。
知られないように木陰に潜み、じっと辛抱強く観察を続ける。
今後行われる函館空港奪還作戦において、一つでも有益な情報を持ち帰らなければならない。
息を潜め、ただ巨大な目玉とその周辺をじっくりとっくりと観察し続ける、そんな生活をもう三日も続けていた。
目玉が、ぎょろりと視線を向ける。
「動いたな……やっぱり目玉は砲と見張りを兼ねてるってことか」
陽動部隊が遠距離からの攻撃を試みる、それに敵がどう対応するのかを確認するのも彼の任務だ。
目玉が目標を捉えたと思えばすぐさま警邏隊と思われる一団が駆けつけてくる。
枯れ木に触手を生やしたような物体と、CAM型一体。
破壊するとなれば交戦は必須だろう。
そしてもう一つ……。
設置型VOID砲が接近された場合に発生させる謎の何か。
事前の突入部隊が突如としてすべからく卒倒した謎の攻撃である。
あれは果たして何だったのか。
正体を確かめるために隊を犠牲にするわけにも行かず、それ以上の調査はできずに居た。
(ま、仕方ネェよな――敵の攻撃の正体を探るために神風特攻しろ、なんて言うわけにもいかねぇし……それで理解る確証もねぇ)
頃合いか。
立ち上がると無線の電源を入れる。
「こちら神座御准尉、聞こえるか? こちら神座御准尉、所定の観察サイクルを完了。これより帰投準備に入る」
『承知いたしました准尉、直ちに合流地点へ向かいます!』
この三日間、およびこれまでで出来る限りの情報は入手した。
後は――歯がゆいが、任せるしかない。
「悔しいよなぁ――」
なんで故郷を奪還するってのに、俺達はこんなに無力なんだ?
ここは俺達の国だろうになんだって――。
ぎりり、と握られる拳から、赤い雫が滴り落ちる。
溢れる言葉は固く結ばれた口に阻まれて、それきりだった。
◆エリクシアの所見
「それでは、依頼の内容について説明させていただきます」
依頼内容、概要をまとめた紙を【あなた達】に配るオフィス職員、エリクシアの手はいつもよりもゆっくりだ。
内心に隠している不安を露わにするほど職員として未熟ではない、だが正直不確定要素の強い一つの情報が彼女の胸中に一抹の不安を残していた。
「今回の依頼はリアルブルーからのもので、函館空港と呼ばれる施設を占拠している歪虚の撃滅となります。この作戦の目的は、函館クラスタ攻略時の航空支援を行うため、とのこと、成功すれば先が楽になりますねきっと。皆さんの担当は空港外縁部に存在するVOID砲郡、およびその警邏をしている歪虚部隊、建物内の歪虚は別のチームが受け持つことになっておりますので、そちらは気にしなくて良いそうです」
周辺、および空港の見取り図がテーブルの中央に置かれる。
かなり広範囲に開けた地形のようだ。
「最優先破壊目標はこの地点に存在する設置型VOID砲、コアと目されているそうです。大きさはおよそ高さ30m、上部にある砲が直径で5mほどの球体――眼球だそうです」
添付されている写真はなかなかに意味不明な物体に見える、人によってはこれが砲なのかと言いたくなりそうである。
「設置型の砲は射程がかなり長く、こちらが攻撃可能であれば反撃は十分に想定されうるとの事です。対して近距離に対しては砲は撃てない、あるいは撃たないそうで……」
一度言葉を区切ってから、エリクシアは強調して話す。
「代わりに、一定以上近づいた場合謎の範囲攻撃が行われるそうです。範囲は全周と推測され、戦闘区域ほぼ全域を覆うと想定されています、実際突撃した部隊は全員倒れて動かなくなったと。あちらさんはそれがなんなのかわからなかったそうです。この攻撃距離は射程と重なっていて、中間の空白地点はなさそうとのことです」
長く喋り続けた喉を潤すために、手元にあったお茶を啜るエリクシア。
それは心を落ち着けるための事でもあったのかもしれない。
「ここからは、確証のある情報ではありません。あくまでも推測です」
前置きをして、エリクシアは告げる。
「おそらくこの設置型と呼称されているVOID砲は、敵に接近された場合の自衛行動として、高濃度の負のマテリアルを放出するのではないかと思います。覚醒者であれば死に至るということはないでしょうが、おそらくかなりの重圧がかかると推測されます」
距離と位置関係的に、別働隊にまで影響はないでしょうが、遠隔から仕留めるにしても、接近して破壊するにしても、難しい相手であるのは間違いないと思われます。
「不確定情報が多くて申し訳ないです」
告げられることは以上です、とおいて、エリクシアは【あなた達】の反応を待った。
リプレイ本文
●位置について
「おお……! 我が祖国リアルブルーよ! 私は帰ってきた!」
「仕事してください」
久我・御言(ka4137)のやや演技がかった言動にメアリ・ロイド(ka6633)からツッコミがはいる。
彼の名誉のために言っておくと、ちゃんと仕事はしている。
現在も通信拡張にによってそれぞれの位置、地図、配置など確認された情報を収束してコマンダーとしてリアルタイムで管理しているのだ。
「君の瞳は100万ボルト……というやつなのでしょうか、目ですねあれ。あ、こちらメアリ、配置につきました」
メアリと対の位置に陣取る予定である門垣 源一郎(ka6320)からも時間を置かずに通信が入る。
「門垣、所定の位置に待機中」
久我の通信拡張による中継を用いてそれぞれが配置につき機会を伺う。
八人のハンター達、その視線の先には巨大な円錐の上に鎮座する白い球体があった。
どういう仕組みかはしらないが、今現在どこも見ていないのか、誰から観測しても黒目が存在しない。
瞳孔を瞑っているとでも言うのだろうか。
「こちらBー1班、南護 炎(ka6651)。指定の座標に到着……この作戦を失敗したら、全てがぶち壊しだ……負けられない!」
握る拳に自然、力がこもる。
こちらが動きはじめた後には別部隊が管制塔に乗り込む手筈になっている、先に行くものとしての責任がジワリとのし掛かった。
「南護、力み過ぎはだめだよー」
「あ、ああ……そうだな」
藤堂 小夏(ka5489)に言われて思わず力が入りすぎていた事に気づく、気合は十分に、覚悟は十全に、そして冷静に。
色んなものがきっちり噛み合ったような感触、いつもよりも上手く動かせそうだ。
「人様の国で、デカい顔ならぬデカい目しちゃって……てかドライアイにならないの? あ、こちら小夏。配置ついたよー」
飄々とした口ぶりに、ほんのわずかな怒りを交えて、小夏も準備完了の通信を入れる。
「うわぁっ、アレがターゲットのデッカイ眼球……空港の鳥避けとしては効果絶大そうですねー」
百々尻 うらら(ka6537)の軽い口調に、久我が同意する。
「航空機を鳥と表現するなら上手い例えだな。まさしくだ」
「こちらBー2班、通信良好だ」
「こちらも準備はばっちりですよー、ユグディオンといっちょ頑張りますかー♪」
「C班は大丈夫か?」
「う……機体の色が目立ちそうです……」
帰ってきたアシェ-ル(ka2983)からの返事に、全員が「ああ……」とうなずいた。
それぞれの配置から遠いことと、身を隠していることもあってその姿を捉えることはできない。
だが、作戦開始前に見た桃色のベースカラーに花柄の模様を思い出すことは容易かった。
「なぁに、問題はない。この程度は俺の覇道の障害にもならんわ!」
「そ、そうか? ならいいんだが」
魔導トラックを器用に運転しつつ宣言するルベーノ・バルバライン(ka6752)に、久我も思わず飲まれかけていた。
そこにあるのは底知れぬ自信であった。
不敵で傲岸不遜で自信満々で、だからこそ頼もしい。
「と言うわけでC班問題なしだ、いつでも構わん!」
「よし、それでは作戦を開始しよう。門垣、メアリ、派手な狼煙をお願いする!」
直後、無数の弾丸が大気を切り裂き飛び交う。
着弾と同時、巨大な目玉がその瞳孔を巨大に広げる。
ぎょろりと周囲を見回して、そして、【敵】を捉えた。
●第一関門、突破
「回転竜尾脚!!(ローリングソバット)」
ぶぉん、と振り払われる尾に巻き込まれて目玉が引き裂かれて地に落ちる。
地面近くでも頭部を削り取られた枯れ木型が塵へと帰っていくのがモニターに映し出され、その戦果にうららは満足そうにする。
傍目からは、巨大なネコが直立してキックだパンチだで戦っているなかなかに凄い光景が展開されている。
「戦果は上場、というよりは雑魚相手には過剰火力という所かな」
徘徊する目玉からのレーザーを受け、それをドレーウングで切り払いつつ、その一方的な展開に判断を修正していく。
一番の障害となるのはやはり歪虚CAMとあの巨大なVOID砲だろう。
目下メアリと門垣の両名が砲撃を繰り返しているが、すでに相応数の着弾があるにもかかわらず目立った変化は見て取れない。
何らかの障壁が威力を大きく減衰しているか、あるいは馬鹿げた耐久力があるかのいずれかだろう。
すでに徘徊する枯れ木型と眼球型は大きく動きを見せており、別働隊の管制塔突入が終わっている。
ここまでは順調であった。
「あとはあのVOID砲を破壊できるかどうか、だな……む?」
ずずん、と地響きがして久我がモニターを切り替える。
そこには倒れたユグディオンが映し出されていた。
「なっ、うらら君! 何があった!?」
「あいたたた、バランス崩して転んじゃった」
見ればその下敷きとなって、数体の枯れ木型が潰されていた、蹂躙されるほどの戦力差ではあるといえ、いっそ哀れである。
「まったく、脅かさないでくれたまえ……」
何か予想外の攻撃をうけたかとおもったではないか、と続けそうになったところに小夏からの通信が入った。
「久我、歪虚CAMが現れたわ! 凄い速さでメアリのほうへ向かってる! 南護が追ってるわ」
「確認した、南護君の援護を頼む!」
「了解よ!」
南護の機体は専用にカスタムされているとは言えベースは小夏と変わらぬR7エクスシアである、そのためそう引き離されることもない。
ソウルトーチを使って敵をひきつけていたため若干まとわりついていた個体が多かったため、離脱が遅れた分を急いで取り戻すべく、コンステラを構えた小夏が疾駆する。
だが、それを苦もなく引き離す歪虚CAMの反応、このままではメアリと接敵するのは時間の問題だ。
「距離は向こうのほうが近いか、だが機動力はこちらに分があるな……」
半透明のスクリーンに映し出されたデータを即時で分析し、コマンダーとして判断を下す。
「うらら君! 二人と合流して歪虚CAMを叩くぞ、今から動けばいいタイミングで到着できるはずだ!」
『マテリアル充填率可動域、スラスター起動』
アクティブスラスターを起動させ地表すれすれを飛ぶかのごとく移動するデュミナス。
「了解ですよう! 可愛い飛び蹴りを食らわせてやるのです」
その後をユグディオンが尻尾を振りながら追いかける、傍目には逃げる得物を追いかけるネコだった……サイズ以外。
●弾雨は流星のごとく
寄ってたかるかのように宙を転がる眼球を払い除け、自身の扱うデュミナスの丈程もあるスナイパーライフルを存分に振るう。
先程から砲撃を続けていたものの、距離の関係もあって設置型VOID砲の攻撃はメアリに集中していた。
「メアリ、大丈夫か?」
「くっそ、こっちばっかりバカスカうちやがって! 上等じゃねぇか、見たことねぇ景色見せてやるよ。眩しすぎて焼き切れちまうだろうけどな!」
直後にメアリの方から飛来してくる幾重もの非実体の弾丸がVOID砲に突き刺さり閃光を上げる。
一方で門垣は通信から入ってくる言動に思わず別人との回路の混線かを疑った。
だが、声は確かにメアリのものだ。
そういう人もいるのだろう、そう自分を納得させる。
「こちらを見ないのであれば好都合だ。存分に撃たせてもらうとしよう」
『システム、照準を補正』
(……俺はさして土地に愛着のある人間ではないが、それでも苛立つことはある)
周囲に群がる小バエ共をなぎ払い、スナイパーライフルを構え直す。
残った徘徊型の目玉の攻撃を一時だけ意識から外し、照準を見る。
「支援砲撃を開始する。こちらはあまり長くはもたん。手早く頼む」
可能ならその巨大な目玉の裏側を、ぶち抜くつもりで照準を合わせる。
「俺にとっては些末なことだが、大事に思う者もいるのでな。気持ちは未だにわからんが、貴様らが邪魔なことにはかわりない」
――消えてもらうぞ。
放たれた弾丸は吸い込まれるようにその眼球に着弾し穴を穿つ。
……妙だ、手応えがない。
そう思った瞬間、着弾した穴がぐばっと広がり眼球となる。
「……どうやらターゲットはこちらへ移ったらしい。移動を開始する」
「あぁん、何言ってんだ。やっこさんまだこっちをしっかり見つめてきてやがんぜ、熱い眼差しでよぉ」
「――なに?」
メアリの言葉に門垣が疑問をもたげた一瞬、VOID砲より二条の光が放たれた。
咄嗟にブースターをかけ直撃を躱すものの、機体に一条の焦げ目がついた。
『フレーム損傷軽微、駆動率88%。システム正常に稼働中』
システムの報告からするに、予想よりもビームの出力は低かったようだ。
「さすがは狂気、と言ったところか……狂っているにも、程があるな」
目玉の裏に目玉があるなど、巫山戯ているにも程がある。
「はっ、デタラメな歪虚だぜ。そうか、主砲でもあり副砲でもあるってわけかよ!」
自分に射線が向いたまま攻撃された門垣を見てのメアリの理解は早かった。
そしてそれは同時に、攻勢へ転じるチャンスでもあると確信する。
マテリアルが有限である限り、振り分ければそれは当然目減りするのだから。
「メアリ君、B班から連絡だ! 歪虚CAMがそちらへ向かっている!」
久我からの緊急通信にMライフルを槍へと変形させる。
その判断は正しく、地表を滑るように滑空してくる歪虚CAMのナイフをかろうじて受け止める。
「はっ、やっ、すぎんだろうが!」
『駆動系、関節系損傷軽微。マテリアル伝達率97%』
「メアリ君、南東へ動いてくれ! 南護君と小夏君が向かっている、敵をスイッチしてくれ!」
「了解……うぉっ!?」
突如姿勢が崩れた。
歪虚CAMと組み合っていた槍とナイフの交錯が解かれたのだ。
「ちょこまかすばしっこい野郎だぜ!」
一瞬の隙に取られた背後から衝撃が走り、即座に体勢を立て直す。
『背面被弾、マテリアル供給ライン損傷。バイバス変更……サクセス、システムを続行』
連続する炸裂音、距離が空いたことで銃に切り替えたのだろう、ならばこのまま距離を取るまでだ。
駆け出すメアリのモニターに、ランデブー予定の仲間の姿が見えた。
●食えるの?
「目玉焼きにしたら、どの位な量になるんでしょうか~」
「……アシェールは俺とは違う意味で大物だな」
あれを目玉焼きにしようって発想はちょっと思いつかねぇぜ、とVOID砲に視線を向けながら難しい表情をするルベーノである。
腹を壊しそうだ、という言葉だけはそっと飲み込んだ。
通信から入ってくる情報によれば、メアリと接敵したCAM型歪虚はそのまま逆方向へ移動中、およそ五人が一箇所に集まり、門垣が遠距離から砲撃中。
現在隠れるように待機しているルベーノとアシェールにはいい具合に捕捉を免れている。
「アシェール、状況はどうだ?」
「ちょっとまってください、今確認中です……」
『検索終了、マテリアル反応なし』
「うん、いい感じですね。だいぶ包囲が逸れてきています」
「よし、それじゃあちょっとばかし距離を詰めるか」
「見つかりませんように、見つかりませんよーにー」
言いながらVOID砲への突撃経路を進む二人。
そんな中アシェールは内心で不安が残っていた。
今回の作戦の中で、唯一CAMに乗っていないルベーノは言ってしまえば一人生身であるといっていい。それが作戦の要として巨大な爆弾を積み込んだトラックを突撃させる役割になっているのだ。
一応、事前に準備はしており、途中で飛び降りる手はずにはなっている。
だが、危険がないわけではないのだ。
爆風の殺傷域からははなれるとはいえ、飛び散る破片が危険であることには変わりない。
(万が一の時のフォローも考えて位置を取れるといいんですが……)
自衛能力すらもない、ルベーノのトラックを背後に、アシェールは慎重に先導する。
周囲に視線はない……最後まで油断はならない、だが着実に作戦は成功に向けて手が進んでいた。
●覚悟の漢
『機体損傷率27%。マテリアル伝達路損傷、エラー。マテリアルの漏出を確認、システム出力低下中』
「くっそ、しつこい野郎だぜ!」
システムが警告を鳴らすコクピットの中、舌打ちしてイースクラWをかざす。
激しい火花とともに歪虚CAMのナイフが弾ける。
一度ナイフを凌いだかとおもえば銃を持ち出してくる、これ以上じわじわ削られちゃジリ貧だと、そう思った矢先、間に青い機体が割って入る。
南護のFLAME OF MINDが振るう斬機刀「轟劾」と歪虚CAMのナイフが激しくせめぎあい火花を散らす。
「やらせねえぞ!!」
メアリをかばい立ちはだかる南護、その背後から無数の弾丸が飛び出し歪虚CAMの動きを制圧する。小夏が追いついてきたのである。
「助かったぜ!」
「メアリ、あとは任せて。貴女は貴女の役割を!」
「おう、あとは任すぜ!」
そのまま離脱するメアリを追うように、南護と小夏の間をすり抜けようとする歪虚CAM、だがそれを許す南護ではない。
急激な踏み出しからの一撃は歪虚CAMの装甲を激しく削り取りその巨躯を揺さぶる。
そしてその動きに身を任せたままに進路上に躍り出たのだ。
「行かせないって言ってんだろ!!」
追跡を諦めたのか、その後しばし睨み合う時間が続く。
それを良しとしなかったのは南護のほうだった。
「失敗は絶対にできない!! 速やかに沈んでもらうぜ! スキルトレースシステム駆動!」
『システム起動完了、トレース率127% 完全同化中』
南護のいつもの動きと変わらない所作で繰り出された一撃は的確に歪虚CAMの右腕を捉える。
確実に破壊した、そう確信する。
「おら、来いよ。引導渡してやる!」
「来なくってもいいけどね、そしたらこっちから一方的に蜂の巣にしちゃうし」
決定打には至らないものの、確実にダメージを積み重ねる小夏のマシンガン。
時間が進むに連れて劣勢に追い込まれていく状況を確認して――
『緊急、マテリアル反応増大』
二人が警戒するよりも一瞬早く、歪虚CAMが奔った。
振り抜かれたナイフが一瞬の間隙を縫ってフレイム オブ マインドの左腕の関節に突き立った。
『緊急、左腕関節部被害甚大、マテリアル回路断線。バイバス変更……エラー、出力大幅に低下中』
「はっ、自棄でも起こしたか!? 怯むと思ったら、大間違いなんだよ!」
――見えるように、書いてあんだろうがと、あらん限り叫ぶ。
『左腕関節部破損、マテリアル漏出甚大。左腕出力11%に低下、直ちに対処してください』
「覚悟完了してんだよぉ!」
左腕を貫かれたまま、右腕で歪虚CAMをがっしりと掴む。
自慢の機動力はもはや使えない。
いまだとばかりに南護が叫ぶ。
咄嗟に小夏が武器を持ち替えようとする、そこに――
「違うぞ小夏君、持ち変えるのはマテリアルライフルだ!」
久我からの指示に咄嗟に持ち変える武器を変更する。
そこに、遠距離からの狙撃が歪虚CAM目掛けて直撃する。
吹き飛んだ歪虚CAMの足が空を舞う、そこに巨大なネコ――うららのユグディオン――が現れた。
『重心制御システムオンライン、補助スラスター稼働』
「烈火太陽脚!!」
それまで移動してきたエネルギーをすべて詰め込んだ巨躯の飛び蹴り、その衝撃はすさまじく、大地を震撼させフレイム オブ マインドの左腕ごと歪虚CAMを吹き飛ばす。
回避もできず、機動力も奪われた状態から、絶好のタイミングで空へと吹き飛ばされたのである。
まさに巨大な的。
すかさず狙いをつける小夏、それをエクスシアに搭載されたシステムが即座に補正する。
「目障りなんだよね。見た目的にも性質的にも」
だかさら――早めに消えてくれると嬉しいんだけど、こっちが楽になるしさ。
言葉にこそしないものの、そこに含まれた意味合いに通信のつながっている誰もが同意する。
そして――
小夏のロングレンジマテリアルライフルから放たれた一条の光を受けての後、起きたのは爆音と閃光であった……。
●GOGOGO
時間は少し遡る。
歪虚CAMとの交戦が始まったことを確認して、ルベーノは合図を送り思い切りアクセルを踏み込む。
激しく回転したタイヤが煙を上げて、直後弾けたように走り出した。
それと並走するように桃色の機体、アシェールのR7エクスシア-DMが掛ける。
「ここまで、やっとこ運んだのです! お代は着払いで頂きましょうね」
「おう、任せておけ! 俺様の覇道に立ちふさがるものは粉砕されるのだ!」
目標までの直線経路は確保できた、あとはただ目標目掛けてひた走るのみである。
ハンドルを握るルベーノの手に力がこもる。
また一つ、覇道を歩んでしまうではないか!
そう思うのもつかの間、感覚的にハンドルを切る。
逸れた軌道を穿つように地面を焼くビームに、自分の勘は正しかったと確信した。
「やっぱりボスまで直通とはいかんか、面白い。我が覇道、阻めるものなら阻んで見せよ!」
「ここは私が時間を稼ぎますね」
「大義であるぞ!」
展開されるグラビティフォールと氷凍榴弾が僅かに残る目玉型と枯れ木型の動きを大きく制限し道を包囲網に穴を作る。
グラヴィティフォールによって収束された目玉がうごうごともがくのだが、その様は目玉の集合体である。
「うわぁ……生理的に、ちょっとむりです……」
その隙を縫って魔導トラックが目標へと大きく加速する。
カーブをすれば大きく傾き片輪走行をし、狙うビームがあれば派手なドリフトで煙をあげる。
時折90度以上の角度で転身を繰り返すさまはもはやトラックではないかもしれない。
見ているものがハラハラするような芸当である。
「はーっはっはっはっは! 我が覇道、阻めるものなし!」
アシェールも距離を詰めながら支援をするものの、ターボブースト付きの魔導トラックに追いつけるほどの速度は出ない。
次第に離れていく距離に不安になった頃、ルベーノがトラックから飛び出した。
ギアは固定されたまま、VOID砲へと魔導トラックが突き刺さり、そして天まで愉快に吹き飛んだ。
迸る閃光と耳をつんざく重爆音、そして飛散する残骸たち。
一トンもの爆薬は相応の成果を上げ、VOID砲をまるごと紅蓮の炎で包み込む、だがしかしその爆風は凄まじく、地に伏せたルベーノをも容赦なく吹き飛ばした。
「るっ、ルベーノさんー!」
派手に空高く吹き飛ばされたルベーノ目掛けて、アシェールは反射的にアクティブスラスターを起動させて追いすがるべく空を舞う――その目の前で、吹き飛んだ破片がルベーノを直撃した。
空中で軌道を変えるルベーノに追いすがるべく無理くり姿勢を変えてかろうじて拾い上げた。
だが、拾い上げたR7エクスシア-DMの手の上でじわりと赤い液体が広がる。
「あわわわわ、ルベーノさん! 無事ですか、生きてますかっ!?」
「な、なんとか……な……」
「よ、よかった……。すぐに安全なところまで運びますからっ!」
「う、うむ……大義で、ある……」
ブレないルベーノ氏であった。
●戦火の痕
「重症だぁ、大丈夫?」
「うむ……これしきのこと、我が覇道の障害にも……ならんわ」
うららに膝枕で看病されているルベーノであった。
応急手当は済んでいるが、早いところ送還されてくれと思うばかりである。
時折、うららの手当のドジで悲鳴が上がるということがあったが、それ以外は平和なものである。
歪虚CAMを撃破した跡、枯れ木型の歪虚は軒並み立ち枯れるようにその身を崩し、ルベーノの大爆破のあと目玉達は地に落ちて解けるように消えた。
いま、この空港は不気味に静まり返ったままである。
管制塔を覆い尽くしていた紫色も今はその姿を消している。
「別働隊もどうやら上手くやったようだね」
確認していた久我の言葉に、その場に居た全員が安堵の吐息を漏らすのだった。
場所は少し離れたところへと移る。
人気のない空港、その一角に、アシェールと小夏は足を運んでいた。
作戦途中にアシェールが見つけた、最初の任務において犠牲となった人達の亡骸である。
「流石に埋葬までしてあげる時間は無いですが」
「IDタグを集めるのね。手伝うわ」
認識票、いわゆるところの個人識別ように付与されるタグである。
それがアレば、生死が少なくとも判明する。
この戦場において唯一個人を識別するための遺品である。
一つずつ、倒れた人々からタグを回収していく二人は、さして言葉を躱すこともないままに黙々と作業をすすめる。
ただ、間違いなく二人の気持ちにはつながるものが在った。
「さぁ、仇は取りましたよ。帰りましょう」
回収を終えた頃、アシェールがつぶやいた言葉は遠くの空から吹く風が攫っていった。
●特攻野郎Cチーム
医院のベッドの上で包帯をこれでもかと巻かれたルベーノはぼんやりと天井を見つめていた。
目指す覇道をまた一歩登った確信はある、あるのだが……。
「まぁ、しかたあるまい。時には休息と言うものも必要だろう」
そう納得させることにする。
ずきりと傷口が響くが、それをたしかな実感とする。
話は少しだけ遡る。
「というわけで、こちらが請求書になります」
ベッドの上で、エリクシアからの説明と見舞いの品、そして請求書を渡されて、ルベーノは眉根をひそめる。
金額、十八万G。
所持金ほぼ全部である。
原因は爆薬とともに吹き飛ばした魔導トラックだった。
ユニットはソサエティからの貸与品となるため、完全に廃車にしてしまったことが原因でその部門から大変なおしかりがあったのである。
「依頼達成のためには仕方がなかったとおもうのだが、それでもダメか?」
「現場の判断ですからそれについて私から言うことはないのですが、まあ新しい魔導トラックの製造費用ということでご了承ください」
そのまま貸与はされるそうである。
エリクシアもどこかいいづらそうなのだが、仕事である手前そこは割り切っているようすだ。
「まあ、仕方あるまい。金を踏み倒すような覇道は歩んでおらんからな!」
「それは助かります。ああ、でもルベーノさん」
ずい、と顔を近づけて、少し怒ったような表情をするエリクシア。
「なんだ、俺のキスでもほしいのか?」
「違います! 覇道を歩むのは構いませんが、もう少しご自分の安全にも気を使ってください」
ルベーノの反応に呆れたように苦笑しつつ、エリクシアは言う。
「貴方の覇道はまだまだ始まったばかりなのでしょう?」
「ふっ、そうだな……まだまだ、こんなところで終わってしまってはつまらんからな!」
その後しばらく、病室からはルベーノの笑い声が響くのだった。
「おお……! 我が祖国リアルブルーよ! 私は帰ってきた!」
「仕事してください」
久我・御言(ka4137)のやや演技がかった言動にメアリ・ロイド(ka6633)からツッコミがはいる。
彼の名誉のために言っておくと、ちゃんと仕事はしている。
現在も通信拡張にによってそれぞれの位置、地図、配置など確認された情報を収束してコマンダーとしてリアルタイムで管理しているのだ。
「君の瞳は100万ボルト……というやつなのでしょうか、目ですねあれ。あ、こちらメアリ、配置につきました」
メアリと対の位置に陣取る予定である門垣 源一郎(ka6320)からも時間を置かずに通信が入る。
「門垣、所定の位置に待機中」
久我の通信拡張による中継を用いてそれぞれが配置につき機会を伺う。
八人のハンター達、その視線の先には巨大な円錐の上に鎮座する白い球体があった。
どういう仕組みかはしらないが、今現在どこも見ていないのか、誰から観測しても黒目が存在しない。
瞳孔を瞑っているとでも言うのだろうか。
「こちらBー1班、南護 炎(ka6651)。指定の座標に到着……この作戦を失敗したら、全てがぶち壊しだ……負けられない!」
握る拳に自然、力がこもる。
こちらが動きはじめた後には別部隊が管制塔に乗り込む手筈になっている、先に行くものとしての責任がジワリとのし掛かった。
「南護、力み過ぎはだめだよー」
「あ、ああ……そうだな」
藤堂 小夏(ka5489)に言われて思わず力が入りすぎていた事に気づく、気合は十分に、覚悟は十全に、そして冷静に。
色んなものがきっちり噛み合ったような感触、いつもよりも上手く動かせそうだ。
「人様の国で、デカい顔ならぬデカい目しちゃって……てかドライアイにならないの? あ、こちら小夏。配置ついたよー」
飄々とした口ぶりに、ほんのわずかな怒りを交えて、小夏も準備完了の通信を入れる。
「うわぁっ、アレがターゲットのデッカイ眼球……空港の鳥避けとしては効果絶大そうですねー」
百々尻 うらら(ka6537)の軽い口調に、久我が同意する。
「航空機を鳥と表現するなら上手い例えだな。まさしくだ」
「こちらBー2班、通信良好だ」
「こちらも準備はばっちりですよー、ユグディオンといっちょ頑張りますかー♪」
「C班は大丈夫か?」
「う……機体の色が目立ちそうです……」
帰ってきたアシェ-ル(ka2983)からの返事に、全員が「ああ……」とうなずいた。
それぞれの配置から遠いことと、身を隠していることもあってその姿を捉えることはできない。
だが、作戦開始前に見た桃色のベースカラーに花柄の模様を思い出すことは容易かった。
「なぁに、問題はない。この程度は俺の覇道の障害にもならんわ!」
「そ、そうか? ならいいんだが」
魔導トラックを器用に運転しつつ宣言するルベーノ・バルバライン(ka6752)に、久我も思わず飲まれかけていた。
そこにあるのは底知れぬ自信であった。
不敵で傲岸不遜で自信満々で、だからこそ頼もしい。
「と言うわけでC班問題なしだ、いつでも構わん!」
「よし、それでは作戦を開始しよう。門垣、メアリ、派手な狼煙をお願いする!」
直後、無数の弾丸が大気を切り裂き飛び交う。
着弾と同時、巨大な目玉がその瞳孔を巨大に広げる。
ぎょろりと周囲を見回して、そして、【敵】を捉えた。
●第一関門、突破
「回転竜尾脚!!(ローリングソバット)」
ぶぉん、と振り払われる尾に巻き込まれて目玉が引き裂かれて地に落ちる。
地面近くでも頭部を削り取られた枯れ木型が塵へと帰っていくのがモニターに映し出され、その戦果にうららは満足そうにする。
傍目からは、巨大なネコが直立してキックだパンチだで戦っているなかなかに凄い光景が展開されている。
「戦果は上場、というよりは雑魚相手には過剰火力という所かな」
徘徊する目玉からのレーザーを受け、それをドレーウングで切り払いつつ、その一方的な展開に判断を修正していく。
一番の障害となるのはやはり歪虚CAMとあの巨大なVOID砲だろう。
目下メアリと門垣の両名が砲撃を繰り返しているが、すでに相応数の着弾があるにもかかわらず目立った変化は見て取れない。
何らかの障壁が威力を大きく減衰しているか、あるいは馬鹿げた耐久力があるかのいずれかだろう。
すでに徘徊する枯れ木型と眼球型は大きく動きを見せており、別働隊の管制塔突入が終わっている。
ここまでは順調であった。
「あとはあのVOID砲を破壊できるかどうか、だな……む?」
ずずん、と地響きがして久我がモニターを切り替える。
そこには倒れたユグディオンが映し出されていた。
「なっ、うらら君! 何があった!?」
「あいたたた、バランス崩して転んじゃった」
見ればその下敷きとなって、数体の枯れ木型が潰されていた、蹂躙されるほどの戦力差ではあるといえ、いっそ哀れである。
「まったく、脅かさないでくれたまえ……」
何か予想外の攻撃をうけたかとおもったではないか、と続けそうになったところに小夏からの通信が入った。
「久我、歪虚CAMが現れたわ! 凄い速さでメアリのほうへ向かってる! 南護が追ってるわ」
「確認した、南護君の援護を頼む!」
「了解よ!」
南護の機体は専用にカスタムされているとは言えベースは小夏と変わらぬR7エクスシアである、そのためそう引き離されることもない。
ソウルトーチを使って敵をひきつけていたため若干まとわりついていた個体が多かったため、離脱が遅れた分を急いで取り戻すべく、コンステラを構えた小夏が疾駆する。
だが、それを苦もなく引き離す歪虚CAMの反応、このままではメアリと接敵するのは時間の問題だ。
「距離は向こうのほうが近いか、だが機動力はこちらに分があるな……」
半透明のスクリーンに映し出されたデータを即時で分析し、コマンダーとして判断を下す。
「うらら君! 二人と合流して歪虚CAMを叩くぞ、今から動けばいいタイミングで到着できるはずだ!」
『マテリアル充填率可動域、スラスター起動』
アクティブスラスターを起動させ地表すれすれを飛ぶかのごとく移動するデュミナス。
「了解ですよう! 可愛い飛び蹴りを食らわせてやるのです」
その後をユグディオンが尻尾を振りながら追いかける、傍目には逃げる得物を追いかけるネコだった……サイズ以外。
●弾雨は流星のごとく
寄ってたかるかのように宙を転がる眼球を払い除け、自身の扱うデュミナスの丈程もあるスナイパーライフルを存分に振るう。
先程から砲撃を続けていたものの、距離の関係もあって設置型VOID砲の攻撃はメアリに集中していた。
「メアリ、大丈夫か?」
「くっそ、こっちばっかりバカスカうちやがって! 上等じゃねぇか、見たことねぇ景色見せてやるよ。眩しすぎて焼き切れちまうだろうけどな!」
直後にメアリの方から飛来してくる幾重もの非実体の弾丸がVOID砲に突き刺さり閃光を上げる。
一方で門垣は通信から入ってくる言動に思わず別人との回路の混線かを疑った。
だが、声は確かにメアリのものだ。
そういう人もいるのだろう、そう自分を納得させる。
「こちらを見ないのであれば好都合だ。存分に撃たせてもらうとしよう」
『システム、照準を補正』
(……俺はさして土地に愛着のある人間ではないが、それでも苛立つことはある)
周囲に群がる小バエ共をなぎ払い、スナイパーライフルを構え直す。
残った徘徊型の目玉の攻撃を一時だけ意識から外し、照準を見る。
「支援砲撃を開始する。こちらはあまり長くはもたん。手早く頼む」
可能ならその巨大な目玉の裏側を、ぶち抜くつもりで照準を合わせる。
「俺にとっては些末なことだが、大事に思う者もいるのでな。気持ちは未だにわからんが、貴様らが邪魔なことにはかわりない」
――消えてもらうぞ。
放たれた弾丸は吸い込まれるようにその眼球に着弾し穴を穿つ。
……妙だ、手応えがない。
そう思った瞬間、着弾した穴がぐばっと広がり眼球となる。
「……どうやらターゲットはこちらへ移ったらしい。移動を開始する」
「あぁん、何言ってんだ。やっこさんまだこっちをしっかり見つめてきてやがんぜ、熱い眼差しでよぉ」
「――なに?」
メアリの言葉に門垣が疑問をもたげた一瞬、VOID砲より二条の光が放たれた。
咄嗟にブースターをかけ直撃を躱すものの、機体に一条の焦げ目がついた。
『フレーム損傷軽微、駆動率88%。システム正常に稼働中』
システムの報告からするに、予想よりもビームの出力は低かったようだ。
「さすがは狂気、と言ったところか……狂っているにも、程があるな」
目玉の裏に目玉があるなど、巫山戯ているにも程がある。
「はっ、デタラメな歪虚だぜ。そうか、主砲でもあり副砲でもあるってわけかよ!」
自分に射線が向いたまま攻撃された門垣を見てのメアリの理解は早かった。
そしてそれは同時に、攻勢へ転じるチャンスでもあると確信する。
マテリアルが有限である限り、振り分ければそれは当然目減りするのだから。
「メアリ君、B班から連絡だ! 歪虚CAMがそちらへ向かっている!」
久我からの緊急通信にMライフルを槍へと変形させる。
その判断は正しく、地表を滑るように滑空してくる歪虚CAMのナイフをかろうじて受け止める。
「はっ、やっ、すぎんだろうが!」
『駆動系、関節系損傷軽微。マテリアル伝達率97%』
「メアリ君、南東へ動いてくれ! 南護君と小夏君が向かっている、敵をスイッチしてくれ!」
「了解……うぉっ!?」
突如姿勢が崩れた。
歪虚CAMと組み合っていた槍とナイフの交錯が解かれたのだ。
「ちょこまかすばしっこい野郎だぜ!」
一瞬の隙に取られた背後から衝撃が走り、即座に体勢を立て直す。
『背面被弾、マテリアル供給ライン損傷。バイバス変更……サクセス、システムを続行』
連続する炸裂音、距離が空いたことで銃に切り替えたのだろう、ならばこのまま距離を取るまでだ。
駆け出すメアリのモニターに、ランデブー予定の仲間の姿が見えた。
●食えるの?
「目玉焼きにしたら、どの位な量になるんでしょうか~」
「……アシェールは俺とは違う意味で大物だな」
あれを目玉焼きにしようって発想はちょっと思いつかねぇぜ、とVOID砲に視線を向けながら難しい表情をするルベーノである。
腹を壊しそうだ、という言葉だけはそっと飲み込んだ。
通信から入ってくる情報によれば、メアリと接敵したCAM型歪虚はそのまま逆方向へ移動中、およそ五人が一箇所に集まり、門垣が遠距離から砲撃中。
現在隠れるように待機しているルベーノとアシェールにはいい具合に捕捉を免れている。
「アシェール、状況はどうだ?」
「ちょっとまってください、今確認中です……」
『検索終了、マテリアル反応なし』
「うん、いい感じですね。だいぶ包囲が逸れてきています」
「よし、それじゃあちょっとばかし距離を詰めるか」
「見つかりませんように、見つかりませんよーにー」
言いながらVOID砲への突撃経路を進む二人。
そんな中アシェールは内心で不安が残っていた。
今回の作戦の中で、唯一CAMに乗っていないルベーノは言ってしまえば一人生身であるといっていい。それが作戦の要として巨大な爆弾を積み込んだトラックを突撃させる役割になっているのだ。
一応、事前に準備はしており、途中で飛び降りる手はずにはなっている。
だが、危険がないわけではないのだ。
爆風の殺傷域からははなれるとはいえ、飛び散る破片が危険であることには変わりない。
(万が一の時のフォローも考えて位置を取れるといいんですが……)
自衛能力すらもない、ルベーノのトラックを背後に、アシェールは慎重に先導する。
周囲に視線はない……最後まで油断はならない、だが着実に作戦は成功に向けて手が進んでいた。
●覚悟の漢
『機体損傷率27%。マテリアル伝達路損傷、エラー。マテリアルの漏出を確認、システム出力低下中』
「くっそ、しつこい野郎だぜ!」
システムが警告を鳴らすコクピットの中、舌打ちしてイースクラWをかざす。
激しい火花とともに歪虚CAMのナイフが弾ける。
一度ナイフを凌いだかとおもえば銃を持ち出してくる、これ以上じわじわ削られちゃジリ貧だと、そう思った矢先、間に青い機体が割って入る。
南護のFLAME OF MINDが振るう斬機刀「轟劾」と歪虚CAMのナイフが激しくせめぎあい火花を散らす。
「やらせねえぞ!!」
メアリをかばい立ちはだかる南護、その背後から無数の弾丸が飛び出し歪虚CAMの動きを制圧する。小夏が追いついてきたのである。
「助かったぜ!」
「メアリ、あとは任せて。貴女は貴女の役割を!」
「おう、あとは任すぜ!」
そのまま離脱するメアリを追うように、南護と小夏の間をすり抜けようとする歪虚CAM、だがそれを許す南護ではない。
急激な踏み出しからの一撃は歪虚CAMの装甲を激しく削り取りその巨躯を揺さぶる。
そしてその動きに身を任せたままに進路上に躍り出たのだ。
「行かせないって言ってんだろ!!」
追跡を諦めたのか、その後しばし睨み合う時間が続く。
それを良しとしなかったのは南護のほうだった。
「失敗は絶対にできない!! 速やかに沈んでもらうぜ! スキルトレースシステム駆動!」
『システム起動完了、トレース率127% 完全同化中』
南護のいつもの動きと変わらない所作で繰り出された一撃は的確に歪虚CAMの右腕を捉える。
確実に破壊した、そう確信する。
「おら、来いよ。引導渡してやる!」
「来なくってもいいけどね、そしたらこっちから一方的に蜂の巣にしちゃうし」
決定打には至らないものの、確実にダメージを積み重ねる小夏のマシンガン。
時間が進むに連れて劣勢に追い込まれていく状況を確認して――
『緊急、マテリアル反応増大』
二人が警戒するよりも一瞬早く、歪虚CAMが奔った。
振り抜かれたナイフが一瞬の間隙を縫ってフレイム オブ マインドの左腕の関節に突き立った。
『緊急、左腕関節部被害甚大、マテリアル回路断線。バイバス変更……エラー、出力大幅に低下中』
「はっ、自棄でも起こしたか!? 怯むと思ったら、大間違いなんだよ!」
――見えるように、書いてあんだろうがと、あらん限り叫ぶ。
『左腕関節部破損、マテリアル漏出甚大。左腕出力11%に低下、直ちに対処してください』
「覚悟完了してんだよぉ!」
左腕を貫かれたまま、右腕で歪虚CAMをがっしりと掴む。
自慢の機動力はもはや使えない。
いまだとばかりに南護が叫ぶ。
咄嗟に小夏が武器を持ち替えようとする、そこに――
「違うぞ小夏君、持ち変えるのはマテリアルライフルだ!」
久我からの指示に咄嗟に持ち変える武器を変更する。
そこに、遠距離からの狙撃が歪虚CAM目掛けて直撃する。
吹き飛んだ歪虚CAMの足が空を舞う、そこに巨大なネコ――うららのユグディオン――が現れた。
『重心制御システムオンライン、補助スラスター稼働』
「烈火太陽脚!!」
それまで移動してきたエネルギーをすべて詰め込んだ巨躯の飛び蹴り、その衝撃はすさまじく、大地を震撼させフレイム オブ マインドの左腕ごと歪虚CAMを吹き飛ばす。
回避もできず、機動力も奪われた状態から、絶好のタイミングで空へと吹き飛ばされたのである。
まさに巨大な的。
すかさず狙いをつける小夏、それをエクスシアに搭載されたシステムが即座に補正する。
「目障りなんだよね。見た目的にも性質的にも」
だかさら――早めに消えてくれると嬉しいんだけど、こっちが楽になるしさ。
言葉にこそしないものの、そこに含まれた意味合いに通信のつながっている誰もが同意する。
そして――
小夏のロングレンジマテリアルライフルから放たれた一条の光を受けての後、起きたのは爆音と閃光であった……。
●GOGOGO
時間は少し遡る。
歪虚CAMとの交戦が始まったことを確認して、ルベーノは合図を送り思い切りアクセルを踏み込む。
激しく回転したタイヤが煙を上げて、直後弾けたように走り出した。
それと並走するように桃色の機体、アシェールのR7エクスシア-DMが掛ける。
「ここまで、やっとこ運んだのです! お代は着払いで頂きましょうね」
「おう、任せておけ! 俺様の覇道に立ちふさがるものは粉砕されるのだ!」
目標までの直線経路は確保できた、あとはただ目標目掛けてひた走るのみである。
ハンドルを握るルベーノの手に力がこもる。
また一つ、覇道を歩んでしまうではないか!
そう思うのもつかの間、感覚的にハンドルを切る。
逸れた軌道を穿つように地面を焼くビームに、自分の勘は正しかったと確信した。
「やっぱりボスまで直通とはいかんか、面白い。我が覇道、阻めるものなら阻んで見せよ!」
「ここは私が時間を稼ぎますね」
「大義であるぞ!」
展開されるグラビティフォールと氷凍榴弾が僅かに残る目玉型と枯れ木型の動きを大きく制限し道を包囲網に穴を作る。
グラヴィティフォールによって収束された目玉がうごうごともがくのだが、その様は目玉の集合体である。
「うわぁ……生理的に、ちょっとむりです……」
その隙を縫って魔導トラックが目標へと大きく加速する。
カーブをすれば大きく傾き片輪走行をし、狙うビームがあれば派手なドリフトで煙をあげる。
時折90度以上の角度で転身を繰り返すさまはもはやトラックではないかもしれない。
見ているものがハラハラするような芸当である。
「はーっはっはっはっは! 我が覇道、阻めるものなし!」
アシェールも距離を詰めながら支援をするものの、ターボブースト付きの魔導トラックに追いつけるほどの速度は出ない。
次第に離れていく距離に不安になった頃、ルベーノがトラックから飛び出した。
ギアは固定されたまま、VOID砲へと魔導トラックが突き刺さり、そして天まで愉快に吹き飛んだ。
迸る閃光と耳をつんざく重爆音、そして飛散する残骸たち。
一トンもの爆薬は相応の成果を上げ、VOID砲をまるごと紅蓮の炎で包み込む、だがしかしその爆風は凄まじく、地に伏せたルベーノをも容赦なく吹き飛ばした。
「るっ、ルベーノさんー!」
派手に空高く吹き飛ばされたルベーノ目掛けて、アシェールは反射的にアクティブスラスターを起動させて追いすがるべく空を舞う――その目の前で、吹き飛んだ破片がルベーノを直撃した。
空中で軌道を変えるルベーノに追いすがるべく無理くり姿勢を変えてかろうじて拾い上げた。
だが、拾い上げたR7エクスシア-DMの手の上でじわりと赤い液体が広がる。
「あわわわわ、ルベーノさん! 無事ですか、生きてますかっ!?」
「な、なんとか……な……」
「よ、よかった……。すぐに安全なところまで運びますからっ!」
「う、うむ……大義で、ある……」
ブレないルベーノ氏であった。
●戦火の痕
「重症だぁ、大丈夫?」
「うむ……これしきのこと、我が覇道の障害にも……ならんわ」
うららに膝枕で看病されているルベーノであった。
応急手当は済んでいるが、早いところ送還されてくれと思うばかりである。
時折、うららの手当のドジで悲鳴が上がるということがあったが、それ以外は平和なものである。
歪虚CAMを撃破した跡、枯れ木型の歪虚は軒並み立ち枯れるようにその身を崩し、ルベーノの大爆破のあと目玉達は地に落ちて解けるように消えた。
いま、この空港は不気味に静まり返ったままである。
管制塔を覆い尽くしていた紫色も今はその姿を消している。
「別働隊もどうやら上手くやったようだね」
確認していた久我の言葉に、その場に居た全員が安堵の吐息を漏らすのだった。
場所は少し離れたところへと移る。
人気のない空港、その一角に、アシェールと小夏は足を運んでいた。
作戦途中にアシェールが見つけた、最初の任務において犠牲となった人達の亡骸である。
「流石に埋葬までしてあげる時間は無いですが」
「IDタグを集めるのね。手伝うわ」
認識票、いわゆるところの個人識別ように付与されるタグである。
それがアレば、生死が少なくとも判明する。
この戦場において唯一個人を識別するための遺品である。
一つずつ、倒れた人々からタグを回収していく二人は、さして言葉を躱すこともないままに黙々と作業をすすめる。
ただ、間違いなく二人の気持ちにはつながるものが在った。
「さぁ、仇は取りましたよ。帰りましょう」
回収を終えた頃、アシェールがつぶやいた言葉は遠くの空から吹く風が攫っていった。
●特攻野郎Cチーム
医院のベッドの上で包帯をこれでもかと巻かれたルベーノはぼんやりと天井を見つめていた。
目指す覇道をまた一歩登った確信はある、あるのだが……。
「まぁ、しかたあるまい。時には休息と言うものも必要だろう」
そう納得させることにする。
ずきりと傷口が響くが、それをたしかな実感とする。
話は少しだけ遡る。
「というわけで、こちらが請求書になります」
ベッドの上で、エリクシアからの説明と見舞いの品、そして請求書を渡されて、ルベーノは眉根をひそめる。
金額、十八万G。
所持金ほぼ全部である。
原因は爆薬とともに吹き飛ばした魔導トラックだった。
ユニットはソサエティからの貸与品となるため、完全に廃車にしてしまったことが原因でその部門から大変なおしかりがあったのである。
「依頼達成のためには仕方がなかったとおもうのだが、それでもダメか?」
「現場の判断ですからそれについて私から言うことはないのですが、まあ新しい魔導トラックの製造費用ということでご了承ください」
そのまま貸与はされるそうである。
エリクシアもどこかいいづらそうなのだが、仕事である手前そこは割り切っているようすだ。
「まあ、仕方あるまい。金を踏み倒すような覇道は歩んでおらんからな!」
「それは助かります。ああ、でもルベーノさん」
ずい、と顔を近づけて、少し怒ったような表情をするエリクシア。
「なんだ、俺のキスでもほしいのか?」
「違います! 覇道を歩むのは構いませんが、もう少しご自分の安全にも気を使ってください」
ルベーノの反応に呆れたように苦笑しつつ、エリクシアは言う。
「貴方の覇道はまだまだ始まったばかりなのでしょう?」
「ふっ、そうだな……まだまだ、こんなところで終わってしまってはつまらんからな!」
その後しばらく、病室からはルベーノの笑い声が響くのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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![]() |
相談卓 アシェ-ル(ka2983) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/04/12 11:11:42 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/04/10 03:19:05 |