ゲスト
(ka0000)
【血盟】赤き王龍
マスター:葉槻

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 不明
- オプション
-
- 参加費
1,500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/04/11 19:00
- 完成日
- 2017/04/24 22:18
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
私が守護する南の大地は、人や生物が住まうには厳しい環境にあった。
日差しは強く大地を焦がし、水は少なく、作物は育ちにくく、どの生物も常に乾き飢えていた。
その為、何十年かに1度、この大地を浄化する作業が必要だった。
私がこの世に生み出されてから、何回も何十回も何百回と繰り返してきたが、浄化する度に、痛みを覚える度に人や生物はたくましくなっていく。
その成長を見守ることが私の楽しみでもあった。
ところが、次第に人は星の浄化を畏怖し、星と繋がっている私へと生贄を差し出すようになった。
……そんなことをしても何にもならないというのに。
最初のうちは、要らぬと里へと送り返していた。
しかし、それにより『龍神様の不評を買った役立たず』と私刑に遭うのだと知り、驚くより呆れた。
以来、仕方が無いので龍の巣内で好きに暮らせと放置することにした。
人の一生は短い。
「龍神様」
人は脆く壊れやすい。
「龍神様」
マテリアル濃度が濃い関係もあるのだろう。
送られてきた生贄は、春が来て、夏が過ぎ、秋を迎えて、冬を送る。それを十も繰り返すと星へと還っていった。
そして、また新しい生贄が放り込まれる。
ほんの一時、生贄同士で会話をし、共に生活する事もあった。
そして、先に居た生贄が星に還るのを見届けると、私にこう言うのだ。
「彼女は龍神様の元に来られて幸せでした」――と。
ある頃から、おかしなモノが侵入してくるようになった。
それは、そう、強いて言うのなら濃縮した闇のような何かだった。
それに取り憑かれた人や動物は周囲にもそれをばらまくようになった。
元々、人と人とは争い合う生き物だった。
浄化作業直後、何とか生き延びた人は僅かに残った食料を求めて奪い合い、殺し合う。
少し時間が経つと、今度は肥沃な土地を求めて攻め入り、己が領地を守る為に戦い、そして沢山の人が死ぬ。
そこに、この闇が一つ入るとそれは凄惨な虐殺行為となった。
私は龍たちにこれらを排除するように命じた。
この土地を守護する者として見逃せない変化だった。
次第にそれは我が同胞すら取り込み、異形へと変化させ始めた。
狂気――最初にそう言ったのはどの龍だったか。なるほど、言い得て妙だと思ったのを覚えている。
襲いかかってくる狂気や歪虚と戦い続ける日々。
傷付き、寿命よりも早くに星へと還っていく同胞たち。
ある日、生贄の1人が言った。
「何故、龍達ばかりが戦わなければならないのでしょう」
それが、世界の守護者として産まれた我が使命だからだ――そう、答えると彼女は静かに胸の前で両手を祈るように合わせて目を伏せた。
「可哀想な王龍様。どれほど気高く強く正しくとも、世界の為と命を賭して守ろうとも、あなた様のその哀しみを受け止めてくれる存在がいない。可哀想な王龍様」
私は彼女の言葉に強い憤りを感じた。
『可哀想、だと? 人間如き矮小な分際で、私に同情を寄せるというのか!』
「だって王龍様は今日も哀しんでおられた。同胞が何体星に還ったと、昨日は何体だった、一昨日は何体還ったと毎日毎日哀しんでおられる」
当然だ。私は王として、この南の地を守る龍を束ねる者として総数の把握が必要だ。それ以上も以下もない。
「いいえ。王龍様は哀しんでおられます。王龍様はお優しい方だから、亡くなった龍の無念を一身に受け止め、その命の灯火が消えた事を悼み、もう言葉が交わせないことを寂しがっておられる。そんなお優しい王龍様だから、他の龍達もあなた様のことが好きなのです。あなた様の命に命を賭せるのです」
私はその言葉に目を瞠る。
「泣いて良いのです。悲しい、寂しいと嘆いていいのです。どうしてだと問うて良いのです。私は確かに小さく弱い人間です。ですが、王龍様のその哀しみを分かち合うことは出来ます。共に憤ることは出来ます。……沢山の龍が同じようにあなた様の哀しみを感じ、でもそれを見せてくれない事に寂しさを感じているのですよ」
ふと視線を感じ顔を向ければ、まだ若い龍が青い瞳を揺らし、膝を付いた。
『不肖未熟な身ではありますが。このザッハーク、何があろうともこの命尽きるまでメイルストロム様のお側におります』
『……そうか、有り難う』
私の言葉に少女もザッハークも嬉しそうに微笑んだ。
さりとて、良いのだと言われてもすぐに実行に移せるわけでもなく。
私のあまり変わらぬ態度に彼女は少しむくれながら、それでも何かが変わったのだろうか、時折満足そうな笑みを浮かべながら私とザッハークのやり取りを見守っていた。
『王……!』
状況が変わったのはそれからまた季節が何度か回った頃。
相変わらず歪虚共の進軍は変わらず――いや、更に苛烈さを増し、徐々に圧されつつある事実を認めざるを得なかった。
『どうした、騒々しい』
ザッハークが睨みながら飛び込んで来た飛竜を咎める。
『人が……人間が攻めてきています』
『……どういうことだ?』
『この歪虚の侵攻、我々、龍が手引きしているとの噂が広がり、龍こそが悪の根源だと盲信した人間たちが各地の同胞を襲っております』
「酷い……!」
『……放っておけ』
『王!?』『しかし……!』
いつか、そうなるのではないかと予測していた私にとっては『ついに来たか』程度の感想だった。
『人如きの攻撃でやられるような我々では無い。人が来ても反撃はするな。ここに侵入してくるような事があれば追い返すに留めよと、皆に伝えよ』
『……はっ』
飛竜が去り、生贄の少女が頭を垂れた。
「私が行きます。その思考は誤りだと訴えてきます」
『やめておけ。生贄となったはずの者が郷里に帰ればどうなるかは、お前も知っているだろう』
「それでも……!」
『良いのだ。いつかこうなる予感はしていた』
人は1人では大したことはできない。しかし、集団になると恐ろしい威力を発揮することがある。そして、その威力は時として暴走する。そんな人々の暮らしをずっと見守ってきた。
今回はその暴走の矛先が私たちへと向かった……ただそれだけのことなのだ。
彼女は私の言葉納得出来なかったらしい。
翌日、気付いたときには彼女は既に龍の巣から旅立っていた。
しかし、私には彼女を探しに行く余裕は無かった。
ついに狂気がこの龍の巣へと足を踏み入れたからだ。
『……ザッハーク』
『私が探して参りましょう』
『頼んだぞ』
私自らが先陣に立ち、歪虚達を焼き、蹴散らし、押し返す。
一昼夜に渡る激闘の末、歪虚の群れを撤退させることに成功した。
しかし、被害は甚大だった。
そして、再び陽が昇った。
●Unknown
避けようのない悲劇というものは誰しもにある。
それは怪我や病、愛しい者との死別、愛憎渦巻く相手との確執など様々な形で突然に降りかかる。
今、この大陸には最悪の災厄がひたりひたりと迫っていた。
――その事実を知る者は、まだ、誰もいない。
日差しは強く大地を焦がし、水は少なく、作物は育ちにくく、どの生物も常に乾き飢えていた。
その為、何十年かに1度、この大地を浄化する作業が必要だった。
私がこの世に生み出されてから、何回も何十回も何百回と繰り返してきたが、浄化する度に、痛みを覚える度に人や生物はたくましくなっていく。
その成長を見守ることが私の楽しみでもあった。
ところが、次第に人は星の浄化を畏怖し、星と繋がっている私へと生贄を差し出すようになった。
……そんなことをしても何にもならないというのに。
最初のうちは、要らぬと里へと送り返していた。
しかし、それにより『龍神様の不評を買った役立たず』と私刑に遭うのだと知り、驚くより呆れた。
以来、仕方が無いので龍の巣内で好きに暮らせと放置することにした。
人の一生は短い。
「龍神様」
人は脆く壊れやすい。
「龍神様」
マテリアル濃度が濃い関係もあるのだろう。
送られてきた生贄は、春が来て、夏が過ぎ、秋を迎えて、冬を送る。それを十も繰り返すと星へと還っていった。
そして、また新しい生贄が放り込まれる。
ほんの一時、生贄同士で会話をし、共に生活する事もあった。
そして、先に居た生贄が星に還るのを見届けると、私にこう言うのだ。
「彼女は龍神様の元に来られて幸せでした」――と。
ある頃から、おかしなモノが侵入してくるようになった。
それは、そう、強いて言うのなら濃縮した闇のような何かだった。
それに取り憑かれた人や動物は周囲にもそれをばらまくようになった。
元々、人と人とは争い合う生き物だった。
浄化作業直後、何とか生き延びた人は僅かに残った食料を求めて奪い合い、殺し合う。
少し時間が経つと、今度は肥沃な土地を求めて攻め入り、己が領地を守る為に戦い、そして沢山の人が死ぬ。
そこに、この闇が一つ入るとそれは凄惨な虐殺行為となった。
私は龍たちにこれらを排除するように命じた。
この土地を守護する者として見逃せない変化だった。
次第にそれは我が同胞すら取り込み、異形へと変化させ始めた。
狂気――最初にそう言ったのはどの龍だったか。なるほど、言い得て妙だと思ったのを覚えている。
襲いかかってくる狂気や歪虚と戦い続ける日々。
傷付き、寿命よりも早くに星へと還っていく同胞たち。
ある日、生贄の1人が言った。
「何故、龍達ばかりが戦わなければならないのでしょう」
それが、世界の守護者として産まれた我が使命だからだ――そう、答えると彼女は静かに胸の前で両手を祈るように合わせて目を伏せた。
「可哀想な王龍様。どれほど気高く強く正しくとも、世界の為と命を賭して守ろうとも、あなた様のその哀しみを受け止めてくれる存在がいない。可哀想な王龍様」
私は彼女の言葉に強い憤りを感じた。
『可哀想、だと? 人間如き矮小な分際で、私に同情を寄せるというのか!』
「だって王龍様は今日も哀しんでおられた。同胞が何体星に還ったと、昨日は何体だった、一昨日は何体還ったと毎日毎日哀しんでおられる」
当然だ。私は王として、この南の地を守る龍を束ねる者として総数の把握が必要だ。それ以上も以下もない。
「いいえ。王龍様は哀しんでおられます。王龍様はお優しい方だから、亡くなった龍の無念を一身に受け止め、その命の灯火が消えた事を悼み、もう言葉が交わせないことを寂しがっておられる。そんなお優しい王龍様だから、他の龍達もあなた様のことが好きなのです。あなた様の命に命を賭せるのです」
私はその言葉に目を瞠る。
「泣いて良いのです。悲しい、寂しいと嘆いていいのです。どうしてだと問うて良いのです。私は確かに小さく弱い人間です。ですが、王龍様のその哀しみを分かち合うことは出来ます。共に憤ることは出来ます。……沢山の龍が同じようにあなた様の哀しみを感じ、でもそれを見せてくれない事に寂しさを感じているのですよ」
ふと視線を感じ顔を向ければ、まだ若い龍が青い瞳を揺らし、膝を付いた。
『不肖未熟な身ではありますが。このザッハーク、何があろうともこの命尽きるまでメイルストロム様のお側におります』
『……そうか、有り難う』
私の言葉に少女もザッハークも嬉しそうに微笑んだ。
さりとて、良いのだと言われてもすぐに実行に移せるわけでもなく。
私のあまり変わらぬ態度に彼女は少しむくれながら、それでも何かが変わったのだろうか、時折満足そうな笑みを浮かべながら私とザッハークのやり取りを見守っていた。
『王……!』
状況が変わったのはそれからまた季節が何度か回った頃。
相変わらず歪虚共の進軍は変わらず――いや、更に苛烈さを増し、徐々に圧されつつある事実を認めざるを得なかった。
『どうした、騒々しい』
ザッハークが睨みながら飛び込んで来た飛竜を咎める。
『人が……人間が攻めてきています』
『……どういうことだ?』
『この歪虚の侵攻、我々、龍が手引きしているとの噂が広がり、龍こそが悪の根源だと盲信した人間たちが各地の同胞を襲っております』
「酷い……!」
『……放っておけ』
『王!?』『しかし……!』
いつか、そうなるのではないかと予測していた私にとっては『ついに来たか』程度の感想だった。
『人如きの攻撃でやられるような我々では無い。人が来ても反撃はするな。ここに侵入してくるような事があれば追い返すに留めよと、皆に伝えよ』
『……はっ』
飛竜が去り、生贄の少女が頭を垂れた。
「私が行きます。その思考は誤りだと訴えてきます」
『やめておけ。生贄となったはずの者が郷里に帰ればどうなるかは、お前も知っているだろう』
「それでも……!」
『良いのだ。いつかこうなる予感はしていた』
人は1人では大したことはできない。しかし、集団になると恐ろしい威力を発揮することがある。そして、その威力は時として暴走する。そんな人々の暮らしをずっと見守ってきた。
今回はその暴走の矛先が私たちへと向かった……ただそれだけのことなのだ。
彼女は私の言葉納得出来なかったらしい。
翌日、気付いたときには彼女は既に龍の巣から旅立っていた。
しかし、私には彼女を探しに行く余裕は無かった。
ついに狂気がこの龍の巣へと足を踏み入れたからだ。
『……ザッハーク』
『私が探して参りましょう』
『頼んだぞ』
私自らが先陣に立ち、歪虚達を焼き、蹴散らし、押し返す。
一昼夜に渡る激闘の末、歪虚の群れを撤退させることに成功した。
しかし、被害は甚大だった。
そして、再び陽が昇った。
●Unknown
避けようのない悲劇というものは誰しもにある。
それは怪我や病、愛しい者との死別、愛憎渦巻く相手との確執など様々な形で突然に降りかかる。
今、この大陸には最悪の災厄がひたりひたりと迫っていた。
――その事実を知る者は、まだ、誰もいない。
リプレイ本文
●
「ここは……」
リリティア・オルベール(ka3054)が夢と現の境にある頭を振って周囲を見回した。
「竜の巣」
グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)が眼前にそびえる黒い岩山を見て目を見張る。
現実と夢と、こうして見上げるのは何度目になるだろう。
その度に見る場所も人も年月も違ったが、今回はライブラリからここに立つまでに夢を見た事を覚えている。
「赤の龍が出てくる夢を見ました」
神代 誠一(ka2086)が人差し指で眼鏡のブリッジを押し上げながら眼鏡の位置を直す。
「私も見ました……皆さんも?」
アニス・エリダヌス(ka2491)が祈るように胸の前で両手を握り締めながら問う。
「赤の龍が……危ない!!」
リュー・グランフェスト(ka2419)が顔を上げ竜の巣へと走り出す。
「リューさん!?」
その剣幕に驚いた誠一が引き留めようと手を伸ばすが届かない。
「……どうやら皆同じ夢を見たようですね。ならば、私はアルタンの地下遺跡へ向かいます」
「リリティアさん?」
アニスが驚いた様にリリティアの顔を見る。
「赤龍と、ザッハークも気になりますが……知らないといけないですよね、人々が何故龍に弓を引いたのか」
恐らくあの夢にも何か意味があるはずだとリリティアは告げる。
「その為には、人々の中に入る必要があります。任せて下さい。こう見えて、腕っ節には自身があります」
戯けて力こぶを作って見せると、シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)を見て頷いた。
その視線をしっかりと受け止め、シルヴィアも頷き返すと竜の巣を見上げた。
「過去を未来へ繋げるために……行きましょう」
「オルベールさん」
グリムバルドが声をかけた。現実とこの夢は影響しないが、『過去の夢』には繋がりがあったこと。
グリムバルドが見たアルタンの地下遺跡の情報、ムハニエルという壁画師と神霊樹の聖堂。
「彼に会えれば、詳しく話しを聞けるかも知れない」
「なるほど、わかりました。探してみますね」
頷いてリリティアは岩肌を下っていく。
その後ろ姿を見送って、5人は竜の巣を目指した。
竜の巣の通路は多数のリザードマンや四足歩行の龍達によってバリケードが築かれ、王の間へ行こうとするハンター達を妨害していた。
「頼むよ! お前達と戦いたい訳じゃ無いんだ! 王に、赤の龍に逢わせてくれ!!」
リューがリザードマンからの攻撃を躱しながら叫ぶ。
「私達は敵ではありません! 赤龍に危害を加えたりはしません。ですから、お願いです、通して下さい」
アニスもまたディスターブで攻撃を受け止めながら龍達に訴える。
赤の龍達との共闘を望んだ5人は龍達を傷付けないよう、龍達からの攻撃を躱し、受け止めながら声を上げ続けていたが、奥から低いうなり声が響くと、龍達はぴたりと攻撃を止め道を開く。
うなり声のした方向から現れた龍にシルヴィアは見覚えがあった。
「あなたは、あの時の……」
前回、シルヴィア達の質問に首を振って応えてくれた一際大柄の四足歩行の龍だ。
その美しい赤銅色の鱗は見間違えようが無かった。
シルヴィアは兜を外し、その幼さが残る素顔を晒した。
「お願いです、私達を王に逢わせて下さい」
シルヴィアの顔を見ていた龍は一つ頷くように首を上下に振ると、奥へと歩き始める。
それを見て、5人はホッとしたように顔を見合わせるとその後に続いた。
『王、お連れしました』
突然脳内にハスキーな女性の声が響き、5人は目を瞬かせた。
『ここは王の間。ヒトの子も龍との会話が可能となります』
赤銅色の龍はそう告げると5人を奥へと促す。
促された視線の先には、かつて星の傷跡で戦った優に100mを越える巨体が鎮座している。
輝かんばかりの真紅の鱗、向かい合うだけでも圧倒される程の威厳を纏ったマテリアルオーラ。
感情の見えない金色の瞳が5人を捕らえた。
『我に逢いたいというのはお前達か。何用か』
脳内に直接響く声は魂を震わせる。
「赤の龍……生きてる……」
かつてその心核に刃を突き立てた事のあるリューは、今こうして目の前に正しく心身が健康な赤龍と対面出来た歓喜に全身が震えた。
「未来の人の……そして龍のために聞いてください」
最初に一歩前に出たのはシルヴィア。
「私は、未来の貴方たちを知っています」
シルヴィアは自分達が未来から来た事を伝えた。
「自己満足、狂言。どの様に捉えていただいても結構。
ですがどうか、救いの足掛かりを掴むためにも。共に戦うことを許して頂けないでしょうか」
「守護者の意地も、矜持もあるだろう。だが、失ったものの重さは人間も同じなんだ。
龍達を軽んじるつもりはない。この世界に住まうものとして、世界と人と、そして龍の為に共に戦わせて欲しい」
リューの言葉に次いでアニスが頭を垂れた。
「偉大なる赤き龍……人は、悲しき生き物です」
アニスは人と人が争い、奪う。ハンターとして、そんな事件の解決依頼にも関わってきたことを思い出す。
「自分達を守る存在でさえ信じ続けることは難しい。脅威の前で一丸となることも然り、です」
そんな依頼の度に悲しかった。歪虚という脅威を前にしても内輪争いをしているヒトが、どうしようも無く悲しかった。――それでも。
「わたしは信じたい。人を、精霊を、世界を。脅威に抗う者全て、一丸となれると。そのために……世界の守護者たる龍、側で戦うことをお許しください」
そっと武器を地面に置き、龍達に敵意が無い事を示していた誠一が顔を上げた。
「ここまでの経過を夢の中で見ました。それがもしも本当なら……
――危険が迫っているのなら尚のこと。共に行かせてください」
赤龍は二度ゆっくりと瞬きをすると、シルヴィアを見た。
『未来から来たと言ったな。ならば問う。我はこの戦いで滅ぶか』
「……ザッハークや他の龍たちそしてメイルストロム。
多くの貴方たちの「同胞」が抗うことも許されず散っていったのを見ました」
シルヴィアの答えに、赤銅色の龍が『不敬である』と牙を剥くが、それを赤龍は『良い』と一言で退ける。
『なるほど、ザッハークだけで無く、我が名をも知るか。
未来から来たというお前達の言葉に偽りはないのだろう。
だが、共に行く結果が必ずしもお前達の未来に救いをもたらすとは限らないだろう。
それでも、何故此処に留まり、共に行く事を望む?』
赤の龍の淡々とした問いかけに、グリムバルドは少し困ったように首を傾げた。
「どうして此処にいるかって言われたら……後悔しないためかな。
今でも、ずっと考え続けている事があるんだ。あれで良かったと思うけど、もっと他にやれた事があったんじゃないかってな。
だから俺は自分がそうしたいと思う事を遠慮なくする事にしたんだ」
『なるほど。……いかにもヒトらしい答えだ』
赤龍は爪先で己の鱗を剥がすと、それを1人1枚ずつ手渡した。
『それを持っていれば我が眷属はお前達を助け力を貸すだろう』
受け取った鱗は羽根のように軽く、炎のように熱く、石のように硬い。
それぞれが不思議そうに赤みを帯びた半透明な鱗を見つめていると、奥の火口付近から一頭の飛龍が舞い降りてきた。
『敵襲です! 北の上空に狂気の群れ。また、龍の巣の麓にはヒトの群れ再び終結しております』
「いけない……! 王よ、俺にここを去った少女を探しに行かせて下さい」
「赤龍様、俺も行かせて下さい」
気色ばむ誠一とグリムバルドを見て、赤の龍は静かに頷いた。
『“自分がそうしたいと思う事”をするのだろう? 行くが良い』
「「ありがとうございます!」」
誠一とグリムバルドは同時に礼を告げると竜の巣を飛び出そうとするのを、赤の龍が呼び止めた。
『待て。ワティ、メティ』
赤龍が声を掛けると二頭の飛龍が火口側から現れた。
『この者達に助力を』
『承りましょう』『畏まりました』
誠一とグリムバルドは再度礼を告げて飛龍の背に乗った。
更に三体の飛龍の名前が呼ばれ、それぞれリュー、アニスとシルヴィアに宛がわれた。
『私も討って出る。ネフェルティ』
『はい』
名を呼ばれ赤銅色の龍が頭を垂れた。
『ここの守りを頼む』
『畏まりました。ご武運を』
赤龍が火口よりその6枚の翼を広げて空へと舞い上がっていく。
その後を追い飛龍達が皮翼を羽ばたかせる。
さらにザッハーク同様、光の翼を持つ者達が続き、翼無き龍達は通路から龍の巣の外へ出ると、隊を組んで龍の巣を下り始める。
――こうして、狂気と赤龍の最後の戦いは始まったのだ。
●
「まずはザッハークを探そう」
「えぇ、俺もそう思ってました。……えぇと、ワティさん? ザッハークの居る場所は判りますか?」
誠一は自分を乗せている飛龍に問いかける。
『否。が、あの娘を探すなら、ヒトの居る場所から探すだろう』
「なるほど……ではお願いしても良いですか」
『然り』
風を切り、空を舞う。
これほど心躍る体験はそうそうないというのに、状況が状況な為2人とも無言で飛龍の首にしがみついていた。
だが暫くすると彼らの飛翔は非常に安定している事に気付く。
鞍も無く、首と皮翼の間に座る形になるというのに、余程無理な旋回などをしなければその風圧に上半身を持って行かれることも無い。
「これが赤龍様の助け、なのか」
グリムバルドは胸元を押さえ、前を見据える。
胸元に入れた鱗が熱い。だがその熱量は決して火傷するという意味では無く、前を向くためのエネルギーとなる。
『兄弟、いたぞ』
グリムバルドを乗せた飛龍が速度を落としホバリングする。
その下。光の翼を広げ大柄な何かと戦っているザッハークの姿があった。
「歪虚……?」
『然り。あれはもう我が同胞に非ず』
『加勢に入る』
「あぁ、ザッハークを助けるんだ!」
急降下していくワイバーンに座ったまま、2人は抜刀する。
『ザッハーク、避けよ』
二頭の飛龍が同時にブレスを吐く。
それに気付いたザッハークは大きく後ろに下がると、胸元にある何かを大事そうに抱え直す。
「竜……!?」
「狂気に侵されているのか!」
『然り。もう戻らぬ。せめて星に還すのが情け』
すれ違い様にMURASAMEブレイドで顔面を斬り付け、インストーラーで腕を切り落とした。
そこへ、ザッハークのブレスが加わり、竜は塵へと変わった。
「大丈夫か?」
4m近い体躯であるのに傍で見るザッハークは思ったより大きくない……と思ってしまうのは、赤龍が規格外に大きかったからだろうか。
『ヒトが何故メイルストロム様の鱗を持っているのだ……!?』
警戒心いっぱいの瞳で見つめられ、駆け寄ろうとした誠一とグリムバルドは思わず足を止めた。
『王が共闘を受け入れた』
『然り』
飛龍達がフォローを入れると怪訝そうにしつつも『そうか』と一応納得したらしい。
「それより、彼女は無事ですか?」
誠一がザッハークが抱えているのがヒトであるとその手足を見て声をかけた。
『……この者を知っているのか?』
「あぁ、俺達が火口まで運んだんだ……スーレー。わかるか? しっかりしろ!」
ザッハークの手から降ろされたのは、少し背が伸びてはいたが間違いなくアルタンの巫女、スーレーだった。
全身を殴られたのか。酷い青あざとミミズ腫れで、髪は血糊がべたりと凝り固まっている。
誠一がポーションを飲ませようとするが、意識がない為飲ませられない。
「注射がある」
グリムバルドがリペアキットを取り出し、その上腕に皮下注射した。
その刺激にスーレーは眉をしかめ、ゆるりと瞼を開いた。
「初めまして。俺は神代誠一といいます。あなたと龍達を助けに来ました」
誠一の声にスーレーは薄く微笑んだ。
「ていねいに、ありがとうございます」
全身に傷を負っているような状態だが、とくに額の裂傷が酷く、誠一は「失礼」と一つ断りを入れるとバンダナでその傷を覆った。
応急手当の知識があればもう少し具体的な処置が出来たかも知れないが、誠一もグリムバルドもその手技を身につけていなかった。
それでもゆっくりとポーションを飲ませようと試みるが、スーレーの胃がポーションを受け付けず吐き戻してしまう。
「龍は……悪くないのです。悪いのは、あの、不気味な化け物たち。
あれが、龍をとらえてあやつってしまうから、みんなには龍がおそってきたように見えてしまうんです」
ひたりひたりと這い寄る冷たい死の気配を振り払うようにグリムバルドは首を振った。
「判ってる。スーレー。もう無理してしゃべらなくていい。まずは、傷を治そう」
「ザッハーク」
『なんだ』
名を呼ばれ、ザッハークが上から覗き込むようにスーレーを見る。
「王龍様を、あなたたちをまもれなくて、ごめんなさい」
『……』
ザッハークは絶句してスーレーを凝視する。
「王龍様にも、伝えて。おろか者で、ごめんなさい」
『だめだ……死んではならんぞ……! 死ぬな!!』
「でも、かくせいしゃが、きて、くれた、から……きっと……ね」
スーレーは微笑みを浮かべたまま、その瞳からひとすじの涙と引き替えに光を失った。
「スーレー……」
グリムバルドが握っていた小さな手を胸元で組んでやり、誠一が開いたままの瞼を下ろしてやると、傷だらけでありながらも眠っているような安らかな表情だった。
『ザッハーク』
龍の巣から降りてきた赤龍がザッハークと飛龍たちの姿を見つけて近寄ってきた。
『王』
疲れたようなザッハークの声に、赤龍は察したのだろう。『嗚呼』と静かに応えた。
『王……』
『何だ、ザッハーク、お前泣きそうでは無いか』
『……王……っ!』
『彼女が言っていたぞ。泣いて良いのだと。嘆いて良いのだと。どうしてと問うて良いのだと』
それは2人も夢の中で見ていた。
あの言葉が赤龍の心に届いたのを確かに見ていた。
『……私は、星の守護者。六大龍の一柱として長く生きすぎた。
なぁザッハーク。私の代わりに泣いてくれないか。嘆いてくれないか。どうしてと問い、彼女の死を悼んでくれないか』
赤龍の言葉を受けた途端、ザッハークは堰を切ったようにその双眸から涙を零し始めた。
『……が、何をしっ』
大きく息を吸い、その哀しみ全てを握り込んだ拳に込めて、大地を撃った。
『私達が何をした!? 何故私達の国ばかりが攻められなければならないっ。
守護者とは一体何だ、守るべき者に刃を向けられ、心通わせた者を殺され、奪われ続けることが私達の宿命だというのか……!』
両膝を付き、血を吐くようにザッハークは慟哭し続けた。
『有り難うザッハーク。そして、ヒトの子らも』
「いえ……守れず、申し訳ありません」
頭を下げる誠一に赤龍は『謝ることはない』と告げると北の空を見上げた。
『もうすぐ狂気との戦闘になる。飛龍の力を借りれば戦いを逃れることも出来よう』
「いや、最後まで一緒に戦うぜ」
グリムバルドは立ち上がり、胸元の鱗を握る。
「手が届くのに助けない、諦めるなんて選択肢、俺には無いんですよ」
誠一も不敵に笑って立ち上がった。
『そうか。ならば来るが良い』
そう言って赤龍は飛び立つ。ザッハークはスーレーの遺体を枯れ木の傍に横たわらせると無言のまま王の後を追って飛んだ。
2人もまたそれぞれ飛龍に乗ると二体の後を追ったのだった。
●
リリティアは途中湧いて出た雑魔を軽々と神斬で切り捨てながら岩山を下っていた。
(負のマテリアルが濃い……こんなところ、普通の人ならとてもじゃないけど堪えられないはず……)
山を下り、グリムバルドに教えて貰った方角へと進む。
山を下りてからだいぶ負のマテリアルは薄まった気がするが、それでもまだ辛い。
……強いて言うなら、汚水の中を進んでいくような不快感が拭えない。
ようやく奇岩の乱立地帯に辿り着き、地下遺跡の中に入るとアルタンの人々を発見する、が。
(何て生気の無い顔……)
室内では骨が皮を纏ったように痩せ細った女と5つぐらいの子どもが寄り添うように座り込んでいる。
「大丈夫? しっかりして!」
リリティアが声を掛けると、混濁した瞳でゆるゆると女はリリティアを見た。
「……み、ず……」
カサカサに乾いた声だった。
「ごめんなさい、水は持っていないの」
そう告げると女はリリティアに興味を失ったように視線を逸らした。
女の隣にいる子どもは既に息をしていなかった。
リリティアはぎゅっと両目を瞑ってから目を開くと、地下遺跡の中を走った。
(流行病……いいえ、飢餓と水不足かもしれない)
迷宮のように入り組んでいる地下遺跡だが、ここもまたグリムバルドに教えられた通りに目印を進んでいくとほとんど迷うこと無く神霊樹のある聖堂に辿り着いた。
「あぁ……」
聖堂に入った瞬間、涼やかな風が吹いたような気がした。
神霊樹はその枝葉も瑞々しく、幹もしっかりしている。折れたり枯れたりしている様子は無い。
司書パルムと思われる少女型のパルムがふよふよと浮いてリリティアへと近付いて来た。
「あぁ、無事でよかった」
パルムはニコニコとしながらリリティアに撫でられるままになっている。
「……珍しいな、お客さん?」
声の方を見ると、酷く痩せ細って顔色の悪い初老の男がいた。
枯れ枝のようなその腕は、肘から指先まで様々な色が斑に染みついている。
「あなたがムハニエルさん?」
「……僕の名前を知っていると言う事は、覚醒者かな?」
リリティアは頷いて自己紹介を済ませると周囲を見回した。
「もうすぐ仕上げですか?」
今彼が描いているのが『大きな竜と闘うヒトの姿』であったらしい。まだ赤い龍が描き途中で、彼の指先は主に真紅に染まっている。
「そうだね。この戦いの結果を描いたら、僕の仕事はお終い」
「結果?」
「そう、ここに描いているのは僕たちの歴史なんだ」
ムハニエルはカサカサに乾いた唇を引きつるらせるように歪め、右端の絵を指した。
「『赤い龍が山の中で眠っている』間は『ヒトは豊かな緑の世界で暮らしていた』」
リリティアはその絵とムハニエルの言葉に耳を疑った。
「『砂の民から王が誕生する。王はコボルド達を従え国を作り繁栄した』。
しかし『赤い龍が目覚め火山を噴火させる』ようになった。
ゆえに勇敢な岩の民は『龍達と戦うようになった』」
「待って」
「そして遂にヒトは『邪悪な王龍を引き摺り出すことに成功した』。
この戦いに勝利すれば、僕たちはまた穏やかな生活に戻れるハズなんだ」
「違うんです! 龍は、赤の龍達はこの地を守って……!」
「違わない。彼らがいる限り噴火は収まらない。龍が暴れ、化け物が暴れ、土地が奪われる。
雨は降らず、川は干上がって木も草も枯れてしまった。
龍さえいなければ、全ては上手く行くんだ!!」
ひゅぅっとムハニエルの喉が鳴った。荒く肩で息を繰り返している。
その血走った瞳には狂気の色があった。
歪虚の眷属としての“狂気”ではない。
追い詰められた結果の盲信。
彼らなりの『知り得る事象』を重ねた結果の『誤解』を、解く手段も他の事実を知る手段もが彼らにはなかったのだ。
司書パルムが怯えたようにリリティアを見る。
「……クラゲのような……不気味な目がたくさんついた浮遊する敵を知っていますか?」
「あぁ、ここ何年かで一気に増えたね」
「彼らはどこから来ているか判りますか?」
「知らない。僕はただの壁画師で、あなた達のように戦う術を持たないのに、知りようがない」
「……そうですか」
リリティアはパルムの頭を撫で、ムハニエルに礼を言うと聖堂の入口に手をかけた。
「……そう。あなたの絵はこれより400年近く後の世界まで残っています。どうか、良い絵を描いて下さい」
「……有り難う」
壁に向かう痩せた後ろ姿からは絵に対する鬼気迫るものを感じるのに、リリティアには悲しくて仕方が無かった。
誤解で。全ては誤解で。なのにそれを解く方法をリリティアは持ち合わせていない。
言葉による説得は無理だ。何一つとして証拠が無いのだから。
「……行かなくちゃ」
恐らく、生贄となったというあの少女も今の自分と同じ気持ちで竜の巣を飛び出したに違いない。
他にも知りたいことは沢山ある。それを知るために足を運び、自分で見るのだと決めて来たのだ。
リリティアは地下遺跡を飛び出し、竜の巣を見上げた。
白い水蒸気のような白煙が上がる負のマテリアル火山。
竜の巣そのものが酷い負のマテリアルに満ちている。
――恐らく、噴火は近いのだとリリティアは本能的に悟っていた。
●
アニスのピュリフィケーションが狂気に煽動された人々を正気へと戻した。
「ここは危険です。離れて下さい」
アニスの声に人々は戸惑いつつも慌てて家へと帰っていく。
その人々を狙う狂気を飛龍に乗ったシルヴィアとリューが連携を取って確実に仕留めていく。
戦っていた3人が赤龍とザッハーク、そして誠一とグリムバルドの姿を見て、ホッとしたような表情になるが、その表情が暗い事に気付いてリューがそっと誠一に視線で問う。
誠一はそれに首を横に振ることで応え、リューはそっと目を伏せた。
『エジュダハから連絡は?』
『まだありません』
『ならば良い。……一気に押し返すぞ』
猛々しい赤の龍の咆吼は龍達を鼓舞し、5人もまた飛龍と共に戦場ならぬ戦空を舞う。
(死なせたくない)
リューは赤の龍の背を見つめ、思う。
これは夢なんだ、とわかってはいる。けれど、そう思ってしまった。
それほどまでこの気高く優しい孤高の龍に、リューは惹かれていた。
マテリアルを燃やし、狂気を一手に引き付けながらリューは空を翔る。
ずらずらと狂気が後を追う様はまるで百鬼夜行のようだろう。そう思うと少し頬が緩む。
高く舞い上がった後、地面すれすれ急滑降し、再び大地と平行に飛ぶ。そして再び急上昇すると前にはザッハークが待ち構えており、引き連れていた狂気の大半はブレスの餌食となった。
急旋回し、リュー自身も生き残っている狂気を一気に薙ぎ払い、それでもなお生きている狂気には飛龍からブレスで掩護をしてもらう。
「彼の者に正しき安息を与えたまえ」
(赤龍は最後まで抗い、作り替えられて強欲王となってしまった)
星の傷痕で赤の王の心核から直接聞いた事だった。
ならば、ここは必ず勝利を収めなければならないとアニスは複数の大型狂気を巻きこむよう死者を安息へと導く歌を捧げその行動を奪う。
グリムバルドがデルタレイで狂気を穿つと、そこへさらに誠一が斬り込んで一体ずつを確実に仕留めていく。
狂気と戦うのも慣れたもので、狂気に侵された時には互いに(顔は避けボディを)殴り合って早期に正気を取り戻すよう対策もしていた。
5人の活躍で驚くほど順調に狂気達は減っていき、ついに最後の一体を赤龍がその爪で切り裂いた。
「……勝った……?」
アニスが周囲を見回し、狂気がもう一体も飛んでいないことを確認する。
リューもまた呆然としながらシルヴィアを見て、シルヴィアもまたザッハークを見て、赤龍を見た。
『良く持ち堪えてくれた。帰るぞ』
王の言葉に、ザッハークは嬉しそうに『はっ!』と応え、他の龍達へ撤退の指示を飛ばす。
「そうでした……もしあなたが未来の龍と人間に伝えられる言葉があるとしたら……何を伝えたいですか」
戦いが終わった今なら聞ける。そうシルヴィアが赤龍に問うと、赤龍は暫しの沈黙の後、乾涸らびた大地を見つめて言った。
『……信じてはもらえないかも知れないが……私は、この厳しい大地でそれでも生きようとする人々が好きなのだ』
だから、と続けようとした言葉はザッハークの叫び声によって、そして空の割れる音によってかき消された。
誰もが、何が起こったのか理解出来なかった。
突如、空が割れた。
ぱっくりと。
鋭いナイフで切り裂いた傷口のように空が割れた。
その割れ目から、巨大な右手が現れ、赤龍の巨体を掴んだのだ。
「シルヴィア!!」
岩井崎 旭(ka0234)の声が聞こえた気がして一歩引いた為、シルヴィアはその胸元に大きな傷を負うだけで済んだ。
鮮血が、宙に花咲くように広がった。
「シルヴィアさん!!」
アニスが直ぐ様にヒールを施しその命をつなぎ止める。
「その手を……離せーっ!!!!」
リューが全身全霊を乗せてその腕を貫かんと飛龍を駆る。
しかし、その攻撃は全く響いていないようで、赤龍を掴む手はびくともしない。
『王!!』
『来るな、ザッハーク!』
ザッハークが駆け寄ろうとしたが、王の制止に反射的に止まった。
骨が軋み折れる音が響く。それでも、赤龍は叫び声を上げるでも無く、ザッハークを見た。
『お前は、また、そんな顔をして』
笑みを湛えているような、少し呆れているような、仕方が無いヤツだなと言わんばかりの声音が最後だった。
まるで、素手で林檎を握りつぶしたときのような音と共に赤龍は握りつぶされた。
「そ、んな……馬鹿な……」
グリムバルドはその光景を見て呆然と口にした。
アニスはシルヴィアを癒やしながら、その両の瞳が落ちそうなほど目を見開いて。
「リューさん、駄目です!!」
エアルドフリス(ka1856) の祈りが誠一をいち早く冷静にさせ、飛び掛からんとするリューを抑えに行った。
「こんな……こんなのってない……!!」
アニスが叫ぶのと同時に、握り込まれていた手が音も無く開かれた。
その手のひらの上。禍々しい負のマテリアルを纏った球体が渦を巻いて徐々に大きくなっていく。
「……まさか」
その黒い渦が硬い殻となり硬質な音と共にひび割れていくと、中から赤龍が現れた。
『王……!』
「ザッハーク、行っちゃダメだ!!」
ザッハークが赤龍の傍へと駆け寄り、その凶悪な負のマテリアルに思わず顔をしかめた。
『ザッハーク、私はついに理解した。滅びをもたらす事こそが正当な龍の有り様だったのだ』
『王……!?』
大地を、空を揺るがすような嗤い声が赤龍から発せられた。
いや、実際に大地は揺れていた。
リリティアは頑丈な奇岩に掴まりつつも、立っていられないほどの激しい揺れに膝を着いた。
「竜の巣が……!」
白煙を吐いていた火口が、一層大量の白煙を吐いたと思うと、高濃度のマテリアルが溢れ出た。
虹色のとろみのある高濃度のマテリアルは竜の巣を覆い、そこにいた歪虚や雑魔たちだけではない。赤のリザードマンたちすら焼き殺しながら流れ広がっていく。
流れてくるマテリアルは確かに正のマテリアルだ。
あの負のマテリアルプールに溜まっていた高濃度の負のマテリアルは噴火のエネルギーで正のマテリアルへと還元されている。
しかし、強すぎる消毒は全てを殺してしまう。
木も草も、ヒトも鳥もラクダも。全てを平等に飲み込み、全てを殺していく。
「……どうせ死ぬなら、戦って死にたかったわ」
リリティアは忌々しそうに迫り来る高濃度マテリアルを睨み、飲み込まれた。
乾いた大地が虹色の高濃度マテリアルに覆われていく。
それを5人は飛龍の上から赤龍越しになすすべも無く見つめていた。
『ずっと、何故と思っていた』
赤龍は虹色に染まる大地を見ながらうっとりと言った。
『何故、星はこんな不完全な地を用意したのかと。
人々に恨まれ、厭われ、それでも浄化を行わなければならない様な土地を、何故、と。
ずっと問うていたのに、星は一つも答えてはくれなかった』
“星のために”と戦う日々。
『星』の声が聞こえないのに、果たしてこれで正しいのかもわからずに。
『だが、ようやく気付いた。“星は滅びたがっている”』
「違う!!」
リューが叫ぶ。
「星は滅びたがってなんか無い! 俺達が滅ぼさせない。邪神なんかの好きにはさせねぇ!!」
「リューさん!!」
誠一を振り切り、飛龍と共に邪神の手を目指す。
しかし、“万全の赤の龍”がそれを許さなかった。
「え?」
一瞬、強く周囲が光った。
リューの視界は白く染まり、そのまま意識を失った。
「リューさん!」
赤龍から放たれたレーザー光線が飛龍ごとリューを撃ったのだ。
一瞬で消し炭になったリューは飛龍と共に大地へと墜落し、虹色の大地へと落ちて消えた。
(どうしたらいい……? どうすればいい……?)
その時、シルヴィアのルーナマーレが火を吹いた。
連続射撃による弾幕を張ると、「みんな、逃げて下さい!」と叫ぶ。
「シルヴィアさん!?」
アニスが驚き声を上げるが、その弾幕の向こうから再度光線が放たれ、シルヴィアを貫きその後ろにいたアニスもまた貫かれた。
『王、お止め下さい!』
ザッハークがその体で射線を遮る。
『彼らは共闘に値すると、王ご自身がそう判断されたのでは無かったのですか!?』
『だが、覚醒者だ』
三度目のホーミングレーザーはグリムバルドを狙い、それを誠一が庇う。
エイル・メヌエット(ka2807)の祈りが誠一の命は救ったが、飛龍の首が消えた。
「神代さん!」
グリムバルドが誠一の手を取ろうと手を伸ばすが、指先が触れたのみで掴みきれない。
血に染まる栞が胸ポケットからふわりと浮いて、誠一は思わず苦笑いを浮かべ……意識が途切れた。
「……そうか、そうだよな。……最後にはお前が出てくるよな」
『あの邪悪なるモノが現れ、我は負けた』
『アレには取り込んだモノを作り替える能力があるのだろう』
かつて心核と戦った時に赤龍から聞いた言葉を思い出す。
「今は無理でも……絶対いつか邪神、お前を倒してみせる」
グリムバルドの宣誓に邪神の手は楽しそうに揺らめき、空は再び何もなかったように塞がっていく。
それを睨みながらグリムバルドは赤龍のブレスに焼かれ、夢から醒めたのだった。
「ここは……」
リリティア・オルベール(ka3054)が夢と現の境にある頭を振って周囲を見回した。
「竜の巣」
グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)が眼前にそびえる黒い岩山を見て目を見張る。
現実と夢と、こうして見上げるのは何度目になるだろう。
その度に見る場所も人も年月も違ったが、今回はライブラリからここに立つまでに夢を見た事を覚えている。
「赤の龍が出てくる夢を見ました」
神代 誠一(ka2086)が人差し指で眼鏡のブリッジを押し上げながら眼鏡の位置を直す。
「私も見ました……皆さんも?」
アニス・エリダヌス(ka2491)が祈るように胸の前で両手を握り締めながら問う。
「赤の龍が……危ない!!」
リュー・グランフェスト(ka2419)が顔を上げ竜の巣へと走り出す。
「リューさん!?」
その剣幕に驚いた誠一が引き留めようと手を伸ばすが届かない。
「……どうやら皆同じ夢を見たようですね。ならば、私はアルタンの地下遺跡へ向かいます」
「リリティアさん?」
アニスが驚いた様にリリティアの顔を見る。
「赤龍と、ザッハークも気になりますが……知らないといけないですよね、人々が何故龍に弓を引いたのか」
恐らくあの夢にも何か意味があるはずだとリリティアは告げる。
「その為には、人々の中に入る必要があります。任せて下さい。こう見えて、腕っ節には自身があります」
戯けて力こぶを作って見せると、シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)を見て頷いた。
その視線をしっかりと受け止め、シルヴィアも頷き返すと竜の巣を見上げた。
「過去を未来へ繋げるために……行きましょう」
「オルベールさん」
グリムバルドが声をかけた。現実とこの夢は影響しないが、『過去の夢』には繋がりがあったこと。
グリムバルドが見たアルタンの地下遺跡の情報、ムハニエルという壁画師と神霊樹の聖堂。
「彼に会えれば、詳しく話しを聞けるかも知れない」
「なるほど、わかりました。探してみますね」
頷いてリリティアは岩肌を下っていく。
その後ろ姿を見送って、5人は竜の巣を目指した。
竜の巣の通路は多数のリザードマンや四足歩行の龍達によってバリケードが築かれ、王の間へ行こうとするハンター達を妨害していた。
「頼むよ! お前達と戦いたい訳じゃ無いんだ! 王に、赤の龍に逢わせてくれ!!」
リューがリザードマンからの攻撃を躱しながら叫ぶ。
「私達は敵ではありません! 赤龍に危害を加えたりはしません。ですから、お願いです、通して下さい」
アニスもまたディスターブで攻撃を受け止めながら龍達に訴える。
赤の龍達との共闘を望んだ5人は龍達を傷付けないよう、龍達からの攻撃を躱し、受け止めながら声を上げ続けていたが、奥から低いうなり声が響くと、龍達はぴたりと攻撃を止め道を開く。
うなり声のした方向から現れた龍にシルヴィアは見覚えがあった。
「あなたは、あの時の……」
前回、シルヴィア達の質問に首を振って応えてくれた一際大柄の四足歩行の龍だ。
その美しい赤銅色の鱗は見間違えようが無かった。
シルヴィアは兜を外し、その幼さが残る素顔を晒した。
「お願いです、私達を王に逢わせて下さい」
シルヴィアの顔を見ていた龍は一つ頷くように首を上下に振ると、奥へと歩き始める。
それを見て、5人はホッとしたように顔を見合わせるとその後に続いた。
『王、お連れしました』
突然脳内にハスキーな女性の声が響き、5人は目を瞬かせた。
『ここは王の間。ヒトの子も龍との会話が可能となります』
赤銅色の龍はそう告げると5人を奥へと促す。
促された視線の先には、かつて星の傷跡で戦った優に100mを越える巨体が鎮座している。
輝かんばかりの真紅の鱗、向かい合うだけでも圧倒される程の威厳を纏ったマテリアルオーラ。
感情の見えない金色の瞳が5人を捕らえた。
『我に逢いたいというのはお前達か。何用か』
脳内に直接響く声は魂を震わせる。
「赤の龍……生きてる……」
かつてその心核に刃を突き立てた事のあるリューは、今こうして目の前に正しく心身が健康な赤龍と対面出来た歓喜に全身が震えた。
「未来の人の……そして龍のために聞いてください」
最初に一歩前に出たのはシルヴィア。
「私は、未来の貴方たちを知っています」
シルヴィアは自分達が未来から来た事を伝えた。
「自己満足、狂言。どの様に捉えていただいても結構。
ですがどうか、救いの足掛かりを掴むためにも。共に戦うことを許して頂けないでしょうか」
「守護者の意地も、矜持もあるだろう。だが、失ったものの重さは人間も同じなんだ。
龍達を軽んじるつもりはない。この世界に住まうものとして、世界と人と、そして龍の為に共に戦わせて欲しい」
リューの言葉に次いでアニスが頭を垂れた。
「偉大なる赤き龍……人は、悲しき生き物です」
アニスは人と人が争い、奪う。ハンターとして、そんな事件の解決依頼にも関わってきたことを思い出す。
「自分達を守る存在でさえ信じ続けることは難しい。脅威の前で一丸となることも然り、です」
そんな依頼の度に悲しかった。歪虚という脅威を前にしても内輪争いをしているヒトが、どうしようも無く悲しかった。――それでも。
「わたしは信じたい。人を、精霊を、世界を。脅威に抗う者全て、一丸となれると。そのために……世界の守護者たる龍、側で戦うことをお許しください」
そっと武器を地面に置き、龍達に敵意が無い事を示していた誠一が顔を上げた。
「ここまでの経過を夢の中で見ました。それがもしも本当なら……
――危険が迫っているのなら尚のこと。共に行かせてください」
赤龍は二度ゆっくりと瞬きをすると、シルヴィアを見た。
『未来から来たと言ったな。ならば問う。我はこの戦いで滅ぶか』
「……ザッハークや他の龍たちそしてメイルストロム。
多くの貴方たちの「同胞」が抗うことも許されず散っていったのを見ました」
シルヴィアの答えに、赤銅色の龍が『不敬である』と牙を剥くが、それを赤龍は『良い』と一言で退ける。
『なるほど、ザッハークだけで無く、我が名をも知るか。
未来から来たというお前達の言葉に偽りはないのだろう。
だが、共に行く結果が必ずしもお前達の未来に救いをもたらすとは限らないだろう。
それでも、何故此処に留まり、共に行く事を望む?』
赤の龍の淡々とした問いかけに、グリムバルドは少し困ったように首を傾げた。
「どうして此処にいるかって言われたら……後悔しないためかな。
今でも、ずっと考え続けている事があるんだ。あれで良かったと思うけど、もっと他にやれた事があったんじゃないかってな。
だから俺は自分がそうしたいと思う事を遠慮なくする事にしたんだ」
『なるほど。……いかにもヒトらしい答えだ』
赤龍は爪先で己の鱗を剥がすと、それを1人1枚ずつ手渡した。
『それを持っていれば我が眷属はお前達を助け力を貸すだろう』
受け取った鱗は羽根のように軽く、炎のように熱く、石のように硬い。
それぞれが不思議そうに赤みを帯びた半透明な鱗を見つめていると、奥の火口付近から一頭の飛龍が舞い降りてきた。
『敵襲です! 北の上空に狂気の群れ。また、龍の巣の麓にはヒトの群れ再び終結しております』
「いけない……! 王よ、俺にここを去った少女を探しに行かせて下さい」
「赤龍様、俺も行かせて下さい」
気色ばむ誠一とグリムバルドを見て、赤の龍は静かに頷いた。
『“自分がそうしたいと思う事”をするのだろう? 行くが良い』
「「ありがとうございます!」」
誠一とグリムバルドは同時に礼を告げると竜の巣を飛び出そうとするのを、赤の龍が呼び止めた。
『待て。ワティ、メティ』
赤龍が声を掛けると二頭の飛龍が火口側から現れた。
『この者達に助力を』
『承りましょう』『畏まりました』
誠一とグリムバルドは再度礼を告げて飛龍の背に乗った。
更に三体の飛龍の名前が呼ばれ、それぞれリュー、アニスとシルヴィアに宛がわれた。
『私も討って出る。ネフェルティ』
『はい』
名を呼ばれ赤銅色の龍が頭を垂れた。
『ここの守りを頼む』
『畏まりました。ご武運を』
赤龍が火口よりその6枚の翼を広げて空へと舞い上がっていく。
その後を追い飛龍達が皮翼を羽ばたかせる。
さらにザッハーク同様、光の翼を持つ者達が続き、翼無き龍達は通路から龍の巣の外へ出ると、隊を組んで龍の巣を下り始める。
――こうして、狂気と赤龍の最後の戦いは始まったのだ。
●
「まずはザッハークを探そう」
「えぇ、俺もそう思ってました。……えぇと、ワティさん? ザッハークの居る場所は判りますか?」
誠一は自分を乗せている飛龍に問いかける。
『否。が、あの娘を探すなら、ヒトの居る場所から探すだろう』
「なるほど……ではお願いしても良いですか」
『然り』
風を切り、空を舞う。
これほど心躍る体験はそうそうないというのに、状況が状況な為2人とも無言で飛龍の首にしがみついていた。
だが暫くすると彼らの飛翔は非常に安定している事に気付く。
鞍も無く、首と皮翼の間に座る形になるというのに、余程無理な旋回などをしなければその風圧に上半身を持って行かれることも無い。
「これが赤龍様の助け、なのか」
グリムバルドは胸元を押さえ、前を見据える。
胸元に入れた鱗が熱い。だがその熱量は決して火傷するという意味では無く、前を向くためのエネルギーとなる。
『兄弟、いたぞ』
グリムバルドを乗せた飛龍が速度を落としホバリングする。
その下。光の翼を広げ大柄な何かと戦っているザッハークの姿があった。
「歪虚……?」
『然り。あれはもう我が同胞に非ず』
『加勢に入る』
「あぁ、ザッハークを助けるんだ!」
急降下していくワイバーンに座ったまま、2人は抜刀する。
『ザッハーク、避けよ』
二頭の飛龍が同時にブレスを吐く。
それに気付いたザッハークは大きく後ろに下がると、胸元にある何かを大事そうに抱え直す。
「竜……!?」
「狂気に侵されているのか!」
『然り。もう戻らぬ。せめて星に還すのが情け』
すれ違い様にMURASAMEブレイドで顔面を斬り付け、インストーラーで腕を切り落とした。
そこへ、ザッハークのブレスが加わり、竜は塵へと変わった。
「大丈夫か?」
4m近い体躯であるのに傍で見るザッハークは思ったより大きくない……と思ってしまうのは、赤龍が規格外に大きかったからだろうか。
『ヒトが何故メイルストロム様の鱗を持っているのだ……!?』
警戒心いっぱいの瞳で見つめられ、駆け寄ろうとした誠一とグリムバルドは思わず足を止めた。
『王が共闘を受け入れた』
『然り』
飛龍達がフォローを入れると怪訝そうにしつつも『そうか』と一応納得したらしい。
「それより、彼女は無事ですか?」
誠一がザッハークが抱えているのがヒトであるとその手足を見て声をかけた。
『……この者を知っているのか?』
「あぁ、俺達が火口まで運んだんだ……スーレー。わかるか? しっかりしろ!」
ザッハークの手から降ろされたのは、少し背が伸びてはいたが間違いなくアルタンの巫女、スーレーだった。
全身を殴られたのか。酷い青あざとミミズ腫れで、髪は血糊がべたりと凝り固まっている。
誠一がポーションを飲ませようとするが、意識がない為飲ませられない。
「注射がある」
グリムバルドがリペアキットを取り出し、その上腕に皮下注射した。
その刺激にスーレーは眉をしかめ、ゆるりと瞼を開いた。
「初めまして。俺は神代誠一といいます。あなたと龍達を助けに来ました」
誠一の声にスーレーは薄く微笑んだ。
「ていねいに、ありがとうございます」
全身に傷を負っているような状態だが、とくに額の裂傷が酷く、誠一は「失礼」と一つ断りを入れるとバンダナでその傷を覆った。
応急手当の知識があればもう少し具体的な処置が出来たかも知れないが、誠一もグリムバルドもその手技を身につけていなかった。
それでもゆっくりとポーションを飲ませようと試みるが、スーレーの胃がポーションを受け付けず吐き戻してしまう。
「龍は……悪くないのです。悪いのは、あの、不気味な化け物たち。
あれが、龍をとらえてあやつってしまうから、みんなには龍がおそってきたように見えてしまうんです」
ひたりひたりと這い寄る冷たい死の気配を振り払うようにグリムバルドは首を振った。
「判ってる。スーレー。もう無理してしゃべらなくていい。まずは、傷を治そう」
「ザッハーク」
『なんだ』
名を呼ばれ、ザッハークが上から覗き込むようにスーレーを見る。
「王龍様を、あなたたちをまもれなくて、ごめんなさい」
『……』
ザッハークは絶句してスーレーを凝視する。
「王龍様にも、伝えて。おろか者で、ごめんなさい」
『だめだ……死んではならんぞ……! 死ぬな!!』
「でも、かくせいしゃが、きて、くれた、から……きっと……ね」
スーレーは微笑みを浮かべたまま、その瞳からひとすじの涙と引き替えに光を失った。
「スーレー……」
グリムバルドが握っていた小さな手を胸元で組んでやり、誠一が開いたままの瞼を下ろしてやると、傷だらけでありながらも眠っているような安らかな表情だった。
『ザッハーク』
龍の巣から降りてきた赤龍がザッハークと飛龍たちの姿を見つけて近寄ってきた。
『王』
疲れたようなザッハークの声に、赤龍は察したのだろう。『嗚呼』と静かに応えた。
『王……』
『何だ、ザッハーク、お前泣きそうでは無いか』
『……王……っ!』
『彼女が言っていたぞ。泣いて良いのだと。嘆いて良いのだと。どうしてと問うて良いのだと』
それは2人も夢の中で見ていた。
あの言葉が赤龍の心に届いたのを確かに見ていた。
『……私は、星の守護者。六大龍の一柱として長く生きすぎた。
なぁザッハーク。私の代わりに泣いてくれないか。嘆いてくれないか。どうしてと問い、彼女の死を悼んでくれないか』
赤龍の言葉を受けた途端、ザッハークは堰を切ったようにその双眸から涙を零し始めた。
『……が、何をしっ』
大きく息を吸い、その哀しみ全てを握り込んだ拳に込めて、大地を撃った。
『私達が何をした!? 何故私達の国ばかりが攻められなければならないっ。
守護者とは一体何だ、守るべき者に刃を向けられ、心通わせた者を殺され、奪われ続けることが私達の宿命だというのか……!』
両膝を付き、血を吐くようにザッハークは慟哭し続けた。
『有り難うザッハーク。そして、ヒトの子らも』
「いえ……守れず、申し訳ありません」
頭を下げる誠一に赤龍は『謝ることはない』と告げると北の空を見上げた。
『もうすぐ狂気との戦闘になる。飛龍の力を借りれば戦いを逃れることも出来よう』
「いや、最後まで一緒に戦うぜ」
グリムバルドは立ち上がり、胸元の鱗を握る。
「手が届くのに助けない、諦めるなんて選択肢、俺には無いんですよ」
誠一も不敵に笑って立ち上がった。
『そうか。ならば来るが良い』
そう言って赤龍は飛び立つ。ザッハークはスーレーの遺体を枯れ木の傍に横たわらせると無言のまま王の後を追って飛んだ。
2人もまたそれぞれ飛龍に乗ると二体の後を追ったのだった。
●
リリティアは途中湧いて出た雑魔を軽々と神斬で切り捨てながら岩山を下っていた。
(負のマテリアルが濃い……こんなところ、普通の人ならとてもじゃないけど堪えられないはず……)
山を下り、グリムバルドに教えて貰った方角へと進む。
山を下りてからだいぶ負のマテリアルは薄まった気がするが、それでもまだ辛い。
……強いて言うなら、汚水の中を進んでいくような不快感が拭えない。
ようやく奇岩の乱立地帯に辿り着き、地下遺跡の中に入るとアルタンの人々を発見する、が。
(何て生気の無い顔……)
室内では骨が皮を纏ったように痩せ細った女と5つぐらいの子どもが寄り添うように座り込んでいる。
「大丈夫? しっかりして!」
リリティアが声を掛けると、混濁した瞳でゆるゆると女はリリティアを見た。
「……み、ず……」
カサカサに乾いた声だった。
「ごめんなさい、水は持っていないの」
そう告げると女はリリティアに興味を失ったように視線を逸らした。
女の隣にいる子どもは既に息をしていなかった。
リリティアはぎゅっと両目を瞑ってから目を開くと、地下遺跡の中を走った。
(流行病……いいえ、飢餓と水不足かもしれない)
迷宮のように入り組んでいる地下遺跡だが、ここもまたグリムバルドに教えられた通りに目印を進んでいくとほとんど迷うこと無く神霊樹のある聖堂に辿り着いた。
「あぁ……」
聖堂に入った瞬間、涼やかな風が吹いたような気がした。
神霊樹はその枝葉も瑞々しく、幹もしっかりしている。折れたり枯れたりしている様子は無い。
司書パルムと思われる少女型のパルムがふよふよと浮いてリリティアへと近付いて来た。
「あぁ、無事でよかった」
パルムはニコニコとしながらリリティアに撫でられるままになっている。
「……珍しいな、お客さん?」
声の方を見ると、酷く痩せ細って顔色の悪い初老の男がいた。
枯れ枝のようなその腕は、肘から指先まで様々な色が斑に染みついている。
「あなたがムハニエルさん?」
「……僕の名前を知っていると言う事は、覚醒者かな?」
リリティアは頷いて自己紹介を済ませると周囲を見回した。
「もうすぐ仕上げですか?」
今彼が描いているのが『大きな竜と闘うヒトの姿』であったらしい。まだ赤い龍が描き途中で、彼の指先は主に真紅に染まっている。
「そうだね。この戦いの結果を描いたら、僕の仕事はお終い」
「結果?」
「そう、ここに描いているのは僕たちの歴史なんだ」
ムハニエルはカサカサに乾いた唇を引きつるらせるように歪め、右端の絵を指した。
「『赤い龍が山の中で眠っている』間は『ヒトは豊かな緑の世界で暮らしていた』」
リリティアはその絵とムハニエルの言葉に耳を疑った。
「『砂の民から王が誕生する。王はコボルド達を従え国を作り繁栄した』。
しかし『赤い龍が目覚め火山を噴火させる』ようになった。
ゆえに勇敢な岩の民は『龍達と戦うようになった』」
「待って」
「そして遂にヒトは『邪悪な王龍を引き摺り出すことに成功した』。
この戦いに勝利すれば、僕たちはまた穏やかな生活に戻れるハズなんだ」
「違うんです! 龍は、赤の龍達はこの地を守って……!」
「違わない。彼らがいる限り噴火は収まらない。龍が暴れ、化け物が暴れ、土地が奪われる。
雨は降らず、川は干上がって木も草も枯れてしまった。
龍さえいなければ、全ては上手く行くんだ!!」
ひゅぅっとムハニエルの喉が鳴った。荒く肩で息を繰り返している。
その血走った瞳には狂気の色があった。
歪虚の眷属としての“狂気”ではない。
追い詰められた結果の盲信。
彼らなりの『知り得る事象』を重ねた結果の『誤解』を、解く手段も他の事実を知る手段もが彼らにはなかったのだ。
司書パルムが怯えたようにリリティアを見る。
「……クラゲのような……不気味な目がたくさんついた浮遊する敵を知っていますか?」
「あぁ、ここ何年かで一気に増えたね」
「彼らはどこから来ているか判りますか?」
「知らない。僕はただの壁画師で、あなた達のように戦う術を持たないのに、知りようがない」
「……そうですか」
リリティアはパルムの頭を撫で、ムハニエルに礼を言うと聖堂の入口に手をかけた。
「……そう。あなたの絵はこれより400年近く後の世界まで残っています。どうか、良い絵を描いて下さい」
「……有り難う」
壁に向かう痩せた後ろ姿からは絵に対する鬼気迫るものを感じるのに、リリティアには悲しくて仕方が無かった。
誤解で。全ては誤解で。なのにそれを解く方法をリリティアは持ち合わせていない。
言葉による説得は無理だ。何一つとして証拠が無いのだから。
「……行かなくちゃ」
恐らく、生贄となったというあの少女も今の自分と同じ気持ちで竜の巣を飛び出したに違いない。
他にも知りたいことは沢山ある。それを知るために足を運び、自分で見るのだと決めて来たのだ。
リリティアは地下遺跡を飛び出し、竜の巣を見上げた。
白い水蒸気のような白煙が上がる負のマテリアル火山。
竜の巣そのものが酷い負のマテリアルに満ちている。
――恐らく、噴火は近いのだとリリティアは本能的に悟っていた。
●
アニスのピュリフィケーションが狂気に煽動された人々を正気へと戻した。
「ここは危険です。離れて下さい」
アニスの声に人々は戸惑いつつも慌てて家へと帰っていく。
その人々を狙う狂気を飛龍に乗ったシルヴィアとリューが連携を取って確実に仕留めていく。
戦っていた3人が赤龍とザッハーク、そして誠一とグリムバルドの姿を見て、ホッとしたような表情になるが、その表情が暗い事に気付いてリューがそっと誠一に視線で問う。
誠一はそれに首を横に振ることで応え、リューはそっと目を伏せた。
『エジュダハから連絡は?』
『まだありません』
『ならば良い。……一気に押し返すぞ』
猛々しい赤の龍の咆吼は龍達を鼓舞し、5人もまた飛龍と共に戦場ならぬ戦空を舞う。
(死なせたくない)
リューは赤の龍の背を見つめ、思う。
これは夢なんだ、とわかってはいる。けれど、そう思ってしまった。
それほどまでこの気高く優しい孤高の龍に、リューは惹かれていた。
マテリアルを燃やし、狂気を一手に引き付けながらリューは空を翔る。
ずらずらと狂気が後を追う様はまるで百鬼夜行のようだろう。そう思うと少し頬が緩む。
高く舞い上がった後、地面すれすれ急滑降し、再び大地と平行に飛ぶ。そして再び急上昇すると前にはザッハークが待ち構えており、引き連れていた狂気の大半はブレスの餌食となった。
急旋回し、リュー自身も生き残っている狂気を一気に薙ぎ払い、それでもなお生きている狂気には飛龍からブレスで掩護をしてもらう。
「彼の者に正しき安息を与えたまえ」
(赤龍は最後まで抗い、作り替えられて強欲王となってしまった)
星の傷痕で赤の王の心核から直接聞いた事だった。
ならば、ここは必ず勝利を収めなければならないとアニスは複数の大型狂気を巻きこむよう死者を安息へと導く歌を捧げその行動を奪う。
グリムバルドがデルタレイで狂気を穿つと、そこへさらに誠一が斬り込んで一体ずつを確実に仕留めていく。
狂気と戦うのも慣れたもので、狂気に侵された時には互いに(顔は避けボディを)殴り合って早期に正気を取り戻すよう対策もしていた。
5人の活躍で驚くほど順調に狂気達は減っていき、ついに最後の一体を赤龍がその爪で切り裂いた。
「……勝った……?」
アニスが周囲を見回し、狂気がもう一体も飛んでいないことを確認する。
リューもまた呆然としながらシルヴィアを見て、シルヴィアもまたザッハークを見て、赤龍を見た。
『良く持ち堪えてくれた。帰るぞ』
王の言葉に、ザッハークは嬉しそうに『はっ!』と応え、他の龍達へ撤退の指示を飛ばす。
「そうでした……もしあなたが未来の龍と人間に伝えられる言葉があるとしたら……何を伝えたいですか」
戦いが終わった今なら聞ける。そうシルヴィアが赤龍に問うと、赤龍は暫しの沈黙の後、乾涸らびた大地を見つめて言った。
『……信じてはもらえないかも知れないが……私は、この厳しい大地でそれでも生きようとする人々が好きなのだ』
だから、と続けようとした言葉はザッハークの叫び声によって、そして空の割れる音によってかき消された。
誰もが、何が起こったのか理解出来なかった。
突如、空が割れた。
ぱっくりと。
鋭いナイフで切り裂いた傷口のように空が割れた。
その割れ目から、巨大な右手が現れ、赤龍の巨体を掴んだのだ。
「シルヴィア!!」
岩井崎 旭(ka0234)の声が聞こえた気がして一歩引いた為、シルヴィアはその胸元に大きな傷を負うだけで済んだ。
鮮血が、宙に花咲くように広がった。
「シルヴィアさん!!」
アニスが直ぐ様にヒールを施しその命をつなぎ止める。
「その手を……離せーっ!!!!」
リューが全身全霊を乗せてその腕を貫かんと飛龍を駆る。
しかし、その攻撃は全く響いていないようで、赤龍を掴む手はびくともしない。
『王!!』
『来るな、ザッハーク!』
ザッハークが駆け寄ろうとしたが、王の制止に反射的に止まった。
骨が軋み折れる音が響く。それでも、赤龍は叫び声を上げるでも無く、ザッハークを見た。
『お前は、また、そんな顔をして』
笑みを湛えているような、少し呆れているような、仕方が無いヤツだなと言わんばかりの声音が最後だった。
まるで、素手で林檎を握りつぶしたときのような音と共に赤龍は握りつぶされた。
「そ、んな……馬鹿な……」
グリムバルドはその光景を見て呆然と口にした。
アニスはシルヴィアを癒やしながら、その両の瞳が落ちそうなほど目を見開いて。
「リューさん、駄目です!!」
エアルドフリス(ka1856) の祈りが誠一をいち早く冷静にさせ、飛び掛からんとするリューを抑えに行った。
「こんな……こんなのってない……!!」
アニスが叫ぶのと同時に、握り込まれていた手が音も無く開かれた。
その手のひらの上。禍々しい負のマテリアルを纏った球体が渦を巻いて徐々に大きくなっていく。
「……まさか」
その黒い渦が硬い殻となり硬質な音と共にひび割れていくと、中から赤龍が現れた。
『王……!』
「ザッハーク、行っちゃダメだ!!」
ザッハークが赤龍の傍へと駆け寄り、その凶悪な負のマテリアルに思わず顔をしかめた。
『ザッハーク、私はついに理解した。滅びをもたらす事こそが正当な龍の有り様だったのだ』
『王……!?』
大地を、空を揺るがすような嗤い声が赤龍から発せられた。
いや、実際に大地は揺れていた。
リリティアは頑丈な奇岩に掴まりつつも、立っていられないほどの激しい揺れに膝を着いた。
「竜の巣が……!」
白煙を吐いていた火口が、一層大量の白煙を吐いたと思うと、高濃度のマテリアルが溢れ出た。
虹色のとろみのある高濃度のマテリアルは竜の巣を覆い、そこにいた歪虚や雑魔たちだけではない。赤のリザードマンたちすら焼き殺しながら流れ広がっていく。
流れてくるマテリアルは確かに正のマテリアルだ。
あの負のマテリアルプールに溜まっていた高濃度の負のマテリアルは噴火のエネルギーで正のマテリアルへと還元されている。
しかし、強すぎる消毒は全てを殺してしまう。
木も草も、ヒトも鳥もラクダも。全てを平等に飲み込み、全てを殺していく。
「……どうせ死ぬなら、戦って死にたかったわ」
リリティアは忌々しそうに迫り来る高濃度マテリアルを睨み、飲み込まれた。
乾いた大地が虹色の高濃度マテリアルに覆われていく。
それを5人は飛龍の上から赤龍越しになすすべも無く見つめていた。
『ずっと、何故と思っていた』
赤龍は虹色に染まる大地を見ながらうっとりと言った。
『何故、星はこんな不完全な地を用意したのかと。
人々に恨まれ、厭われ、それでも浄化を行わなければならない様な土地を、何故、と。
ずっと問うていたのに、星は一つも答えてはくれなかった』
“星のために”と戦う日々。
『星』の声が聞こえないのに、果たしてこれで正しいのかもわからずに。
『だが、ようやく気付いた。“星は滅びたがっている”』
「違う!!」
リューが叫ぶ。
「星は滅びたがってなんか無い! 俺達が滅ぼさせない。邪神なんかの好きにはさせねぇ!!」
「リューさん!!」
誠一を振り切り、飛龍と共に邪神の手を目指す。
しかし、“万全の赤の龍”がそれを許さなかった。
「え?」
一瞬、強く周囲が光った。
リューの視界は白く染まり、そのまま意識を失った。
「リューさん!」
赤龍から放たれたレーザー光線が飛龍ごとリューを撃ったのだ。
一瞬で消し炭になったリューは飛龍と共に大地へと墜落し、虹色の大地へと落ちて消えた。
(どうしたらいい……? どうすればいい……?)
その時、シルヴィアのルーナマーレが火を吹いた。
連続射撃による弾幕を張ると、「みんな、逃げて下さい!」と叫ぶ。
「シルヴィアさん!?」
アニスが驚き声を上げるが、その弾幕の向こうから再度光線が放たれ、シルヴィアを貫きその後ろにいたアニスもまた貫かれた。
『王、お止め下さい!』
ザッハークがその体で射線を遮る。
『彼らは共闘に値すると、王ご自身がそう判断されたのでは無かったのですか!?』
『だが、覚醒者だ』
三度目のホーミングレーザーはグリムバルドを狙い、それを誠一が庇う。
エイル・メヌエット(ka2807)の祈りが誠一の命は救ったが、飛龍の首が消えた。
「神代さん!」
グリムバルドが誠一の手を取ろうと手を伸ばすが、指先が触れたのみで掴みきれない。
血に染まる栞が胸ポケットからふわりと浮いて、誠一は思わず苦笑いを浮かべ……意識が途切れた。
「……そうか、そうだよな。……最後にはお前が出てくるよな」
『あの邪悪なるモノが現れ、我は負けた』
『アレには取り込んだモノを作り替える能力があるのだろう』
かつて心核と戦った時に赤龍から聞いた言葉を思い出す。
「今は無理でも……絶対いつか邪神、お前を倒してみせる」
グリムバルドの宣誓に邪神の手は楽しそうに揺らめき、空は再び何もなかったように塞がっていく。
それを睨みながらグリムバルドは赤龍のブレスに焼かれ、夢から醒めたのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/04/06 11:57:46 |
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相談卓 リリティア・オルベール(ka3054) 人間(リアルブルー)|19才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/04/11 16:17:52 |